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JP3882034B2 - 腸管吸収制御性リポソーム - Google Patents

腸管吸収制御性リポソーム Download PDF

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JP3882034B2 JP2002022576A JP2002022576A JP3882034B2 JP 3882034 B2 JP3882034 B2 JP 3882034B2 JP 2002022576 A JP2002022576 A JP 2002022576A JP 2002022576 A JP2002022576 A JP 2002022576A JP 3882034 B2 JP3882034 B2 JP 3882034B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品、化粧品をはじめ医学・薬学分野において応用し得る、癌などの標的細胞・組織を認識し局所的に薬剤や遺伝子を患部に送り込むための治療用のドラッグデリバリーシステムや診断用の細胞・組織センシングプローブとして利用できるものであって、特に腸管吸収性に優れた糖鎖修飾リポソーム、およびこれに薬剤あるいは遺伝子等を封入したリポソーム製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
米国の国家ナノテク戦略(NNI)によって実現を目指す具体的目標の一例として、「癌細胞や標的組織を狙い撃ちする薬物や遺伝子送達システム(DDS:ドラッグデリバリーシステム)」を掲げた。日本の総合科学技術会議のナノテクノロジー・材料分野推進戦略でも、重点領域として「医療用極小システム・材料、生物のメカニズムを活用し制御するナノバイオロジー」があり、その5年間の研究開発目標の1つとして「健康寿命延伸のための生体機能材料・ピンポイント治療等技術の基本シーズ確立」が掲げられている。一方、高齢化社会となるに伴い癌の発症率・死亡率は年々増えており、新規な治療材料である標的指向DDSの開発が待望されている。その他の病気においても副作用のない標的指向DDSナノ材料の重要性が注目されており、その市場規模は近い将来に10兆円を超えると予測されている。また、これらの材料は治療とともに診断への利用においても期待されている。
【0003】
医薬品の治療効果は、薬物が特定の標的部位に到達し、そこで作用することにより発現される。その一方で、医薬品による副作用とは、薬物が不必要な部位に作用してしまうことである。従って、薬物を有効かつ安全に使用するためにもドラッグデリバリーシステムの開発が求められている。その中でも特に標的指向(ターゲティング)DDSとは、薬物を「体内の必要な部位に」、「必要な量を」、「必要な時間だけ」送り込むといった概念である。そのための代表的な材料としての微粒子性キャリアーであるリポソームが注目されている。この粒子に標的指向機能をもたせるために、リポソームの脂質の種類、組成比、粒子径、表面電荷を変化させるなどの受動的ターゲティング法が試みられているが、いまだ本法は不十分であり更なる改良が求められている。
【0004】
一方、高機能のターゲティングを可能にするために、能動的ターゲティング法も試みられている。これは"ミサイルドラッグ”ともよばれ理想的なターゲティング法であるが、国内外においていまだ完成されたものはなく今後の発展が大いに期待されているものである。本法は、リポソーム膜面上にリガンドを結合させ、標的組織の細胞膜面上に存在するレセプターに特異的に認識させることによって、積極的にターゲティングを可能にさせる方法である。この能動的ターゲティング法での標的となる細胞膜面上に存在するレセプターのリガンドとしては、抗原、抗体、ペプチド、糖脂質や糖蛋白質などが考えられる。これらのうち、糖脂質や糖蛋白質の糖鎖は、生体組織の発生や形態形成、細胞の増殖や分化、生体防御や受精機構、癌化とその転移機構などの様々な細胞間コミュニケーションにおいて情報分子としての重要な役割を果たしていることが明らかにされつつある。
【0005】
また、その標的となる各組織の細胞膜面上に存在するレセプターとしてのセレクチン、シグレック、ガレクチンなどの各種のレクチン(糖鎖認識蛋白質)についての研究も進んできたことから、各種の分子構造を有する糖鎖は新しいDDSリガンドとして注目されてきている(▲1▼Yamazaki, N., Kojima, S., Bovin, N.V., Andre, S., Gabius, S. and Gabius, H.-J. (2000) Adv. Drug Delivery Rev. 43, 225-244. ▲2▼Yamazaki, N., Jigami, Y., Gabius, H.-J., Kojima, S (2001) Trends in Glycoscience and Glycotechnology 13, 319-329. http://www.gak.co.jp/TIGG/71PDF/yamazaki.pdf)。
【0006】
外膜表面にリガンドを結合したリポソームについては、癌などの標的部位に選択的に薬物や遺伝子などを送達するためのDDS材料として多くの研究がなされてきた。しかしながら、それらは、生体外では標的細胞に結合するが、生体内では期待される標的細胞や組織にターゲティングされないものがほとんどである(▲1▼Forssen, E. and Willis, M. (1998) Adv. Drug Delivery Rev. 29, 249-271.▲2▼高橋俊雄・橋田充編(1999)、今日のDDS・薬物送達システム、159-167頁、医薬ジャーナル社、大阪)。糖鎖の分子認識機能を利用したDDS材料の研究開発においても、糖鎖を有する糖脂質を導入したリポソームについて若干の研究が知られているが、それらの機能評価は生体外(in vitro)によるもののみであり、糖鎖を有する糖蛋白質を導入したリポソームの研究はほとんど進んでいない(▲1▼DeFrees, S.A., Phillips, L., Guo, L. and Zalipsky, S. (1996) J. Am. Chem. Soc. 118, 6101-6104. ▲2▼Spevak, W., Foxall, C., Charych, D.H., Dasqupta, F. and Nagy, J.O. (1996) J. Med. Chem. 39, 1018-1020. ▲3▼Stahn, R., Schafer, H., Kernchen, F. and Schreiber, J. (1998) Glycobiology 8, 311-319. ▲4▼Yamazaki, N., Jigami, Y., Gabius, H.-J., Kojima, S (2001) Trends in Glycoscience and Glycotechnology 13, 319-329. http://www.gak.co.jp/TIGG/71PDF/yamazaki.pdf)。したがって、糖脂質や糖蛋白質の多種多様な糖鎖を結合したリポソームについての調製法と生体内動態(in vivo)解析を含めた体系的な研究は、これまで未開発で今後の進展が期待される重要課題である。
さらに新しいタイプのDDS材料研究として、投与が最も簡便・安価に行える経口投与で使用可能なDDS材料開発も重要課題である。たとえば、ペプチド性医薬品などは一般的に水溶性で高分子量であり消化管の小腸粘膜透過性が低いため酵素分解を受けるなどにより経口投与してもほとんど腸管吸収されない。そこでこれらの高分子量の医薬品や遺伝子などを腸管から血液中へ送達するためのDDS材料としてリガンド結合リポソームの研究が注目されつつある(Lehr, C.-M. (2000) J. Controlled Release 65, 19-29)。しかしながら、これらのリガンドとして糖鎖を用いた腸管吸収制御性リポソームの研究は未だ報告されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、各種組織の細胞表面上に存在する各種のレクチン(糖鎖認識蛋白質)に対して特異的な結合活性を有するとともに、特に腸管吸収性に優れた糖鎖修飾リポソーム複合体、および該リポソームに薬剤や遺伝子を封入したリポソーム製剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者等は鋭意研究の結果、リポソーム表面が特定の糖鎖で修飾されたリポソームが、腸管吸収性に極めて優れ、薬剤、遺伝子の各種組織への生体内輸送において有用な製剤となることを見いだし、本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(7)に係るものである。
(1) ラクトース2糖鎖、2’-フコシルラクトース三糖鎖、ジフコシルラクトース四糖鎖および3-フコシルラクトース三糖鎖から選ばれた糖鎖により修飾されたリポソームであって、上記糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソーム膜に結合していることを特徴とする、リポソーム。
(2)リポソーム表面および/またはリンカー蛋白質が、親水性化されたものである上記(1)に記載のリポソーム。
(3)リポソーム表面および/またはリンカー蛋白質がトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンにより親水性化されたものである上記(2)に記載のリポソーム
(4)リンカー蛋白質がヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンである上記(1)〜(3)のいずれか一に記載のリポソーム。
(5)リポソームが腸管吸収機能を有するものである上記(1)〜(4)のいずれか一に記載のリポソーム。
(6)リポソーム膜上の糖鎖結合量を調整したものである上記(1)〜(5)のいずれか一に記載のリポソーム。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一に記載のリポソームに薬剤または遺伝子を封入したものであるリポソーム製剤。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
リポソームとは、通常、膜状に集合した脂質層および内部の水層から構成される閉鎖小胞を意味する。本発明におけるリポソームは、 ラクトース二糖鎖(Gal.beta.1-4Glc)、2’-フコシルラクトース三糖鎖(Fuc.alpha.1-2Gal.beta.1-4Glc)、ジフコシルラクトース四糖鎖(Fuc.alpha.1-2Gal.beta.1-4(Fuc.alpha.1-3)Glc)および3-フコシルラクトース三糖鎖(Gal.beta.1-4(Fuc.alpha.1-3)Glc)から選ばれた糖鎖により修飾されたものである。なお、これらの糖鎖は市販されている。
本発明においては、これら糖鎖をリンカー蛋白質を介してリポソーム表面に結合していることが好ましい。この場合のリポソームの構造をこれら糖鎖の化学構造とともに図1〜4に示す。なお、これらの図は模式図であり、糖鎖−リンカー蛋白質は、実際にはリポソーム表面に多数結合している。
リンカー蛋白質としては、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)等の動物の血清アルブミンが挙げられるが、特にヒト血清アルブミンを使用する場合は、各組織に対する取り込みが多いことがマウスについての実験により確かめられている。
【0010】
本発明のリポソームを構成する脂質としては、例えば、フォスファチジルコリン類、フォスファチジルエタノールアミン類、フォスファチジン酸類、ガングリオシド類または糖脂質類またはフォスファチジルグリセロール類、コレステロール等が挙げられ、フォスファチジルコリン類としては、ジミリストイルフォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、ジステアロイルフォスファチジルコリン等が、また、フォスファチジルエタノールアミン類としては、ジミリストイルフォスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン等が、フォスファチジン酸類としては、ジミリストイルフォスファチジン酸、ジパルミトイルフォスファチジン酸、ジステアロイルフォスファチジン酸、ジセチルリン酸等が、ガングリオシド類としては、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGD1a、ガングリオシドGT1b等が、糖脂質類としては、ガラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、ラクトシルセラミド、スルファチド、グロボシド等が、フォスファチジルグリセロール類としては、ジミリストイルフォスファチジルグリセロール、ジパルミトイルフォスファチジルグリセロール、ジステアロイルフォスファチジルグリセロール等が好ましい。
【0011】
本発明において使用するリポソームは、通常のものでも使用できるが、その表面は親水性化されていることが望ましい。
【0012】
リポソーム自体は、周知の方法に従い製造することができるが、これには、薄膜法、逆層蒸発法、エタノール注入法、脱水−再水和法等をを挙げることができる。
【0013】
また、超音波照射法、エクストルージョン法、フレンチプレス法、ホモジナイゼーション法等を用いて、リポソームの粒子径を調節ことも可能である。本発明のリポソーム自体の製法について、具体的に述べると、例えば、まず、フォスファチジルコリン類、コレステロール、フォスファチジルエタノールアミン類、フォスファチジン酸類、ガングリオシド類または糖脂質類またはフォスファチジルグリセロール類を配合成分とする脂質と界面活性剤コール酸ナトリウムとの混合ミセルを調製する。
【0014】
とりわけ、フォスファチジルエタノールアミン類の配合は親水性化反応部位として、ガングリオシド類または糖脂質類またはフォスファチジルグリセロール類の配合はリンカー蛋白質の結合部位として必須のものである。そして、これにより得られる混合ミセルの限外濾過を行うことによりリポソームを作製する。続いて、リポソーム膜の脂質フォスファチジルエタノールアミン上に架橋用の2価試薬とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとを用いてリポソーム表面を親水性化する。
【0015】
リポソームの親水性化は、従来公知の方法、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体等を共有結合により結合させたリン脂質を用いてリポソームを作成する方法(特開20010−302686号)等も用いることが可能ではあるが、本発明においては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いてリポソーム表面を親水性化することが特に好ましい。
【0016】
本発明のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いる手法は、ポリエチレングリコールなどを用いる従来の親水性化方法と比較していくつかの点で好ましい。例えば、本発明のように糖鎖をリポソーム上に結合してその分子認識機能を標的指向性に利用するものでは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンは低分子量物質であるので従来のポリエチレングリコールなどの高分子量物質を用いる方法に比べて、糖鎖に対する立体障害となりにくく標的細胞膜面上のレクチン(糖鎖認識蛋白質)による糖鎖分子認識反応の進行を妨げないので特に好ましい。
【0017】
また、本発明によるリポソームは該親水化処理後においても粒径分布や成分組成、分散特性が良好であり、長時間の保存性や生体内安定性も優れているのでリポソーム製剤化して利用するために好ましい。
【0018】
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いてリポソーム表面を親水性化するには、例えばジミリストイルフォスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン等の脂質を用いて、常法により得たリポソーム溶液にビススルフォスクシニミヂルスベラート、ジスクシニミヂルグルタレート、ジチオビススクシニミヂルプロピオネート、ジスクシニミヂルスベラート、3,3'-ジチオビススルフォスクシニミヂルプロピオネート、エチレングリコールビススクシニミヂルスクシネート、エチレングリコールビススルフォスクシニミヂルスクシネート等の2価試薬加えて反応させることにより、リポソーム膜上のジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン等の脂質に2価試薬を結合させ、次いでトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを、該2価試薬の一方の結合手と反応させることにより、リポソーム表面にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを結合せしめる。
【0019】
本発明における、糖鎖によるリポソームの修飾手段について具体的に述べると、例えば、糖鎖はリンカー蛋白質を介してリポソーム結合させるが、リンカー蛋白質をリポソームに結合する手段としては、まず、リポソームを、NaIO、Pb(OCCH)、NaBiO等の酸化剤で処理して、リポソーム膜面に存在するガングリオシドを酸化し、次いで、NaBHCN、NaBH等の試薬を用いて、リンカー蛋白質とリポソーム膜面上のガングリオシドを、還元的アミノ化反応により結合させる。
【0020】
このリンカー蛋白も、親水性化するのが好ましく、これには リンカー蛋白質にヒドロキシ基を有する化合物を結合させるが、例えば、ビススルフォスクシニミヂルスベラート、ジスクシニミヂルグルタレート、ジチオビススクシニミヂルプロピオネート、ジスクシニミヂルスベラート、3,3'-ジチオビススルフォスクシニミヂルプロピオネート、エチレングリコールビススクシニミヂルスクシネート、エチレングリコールビススルフォスクシニミヂルスクシネート等の2価試薬を用いて、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンをリポソーム上のリンカー蛋白質と結合させればよい。具体的に述べると、まず、リンカー蛋白質の全てのアミノ基に架橋用2価試薬の一端を結合する。そして、各種糖鎖の還元末端をグリコシルアミノ化反応して得られる糖鎖グリコシルアミン化合物を調製し、この糖鎖のアミノ基とリポソーム上の上記で結合された架橋2価試薬の一部分の他の未反応末端とを結合する。次に、このようにして得られる糖鎖結合リポソーム膜面上蛋白質の表面に糖鎖が結合していない未反応で残っている大部分の2価試薬未反応末端を用いて親水性化処理を行う。つまり、このリポソーム上蛋白質に結合している2価試薬の未反応末端とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの結合反応を行い、リポソーム表面を親水性化することにより本発明のリポソームを得ることができる。
【0021】
リポソーム表面およびリンカー蛋白質の親水性化は、各種組織への移行性、および各種組織での帯留性を向上させる。これは、リポソーム表面およびリンカー蛋白質表面が親水性化されることによって、糖鎖以外の部分が、各組織等においてはあたかも生体内水分であるかのように見え、これにより、標的以外の組織等に認識されず、糖鎖のみがその標的組織のレクチン(糖鎖認識蛋白質)により認識されることに起因するものと思われる。
【0022】
次いで、糖鎖を、上記リポソーム上のリンカー蛋白質と結合させる。例えば、まず、糖鎖を構成する糖類の還元末端を、NHHCO、NHCOONH等のアンモニウム塩を用いてグリコシルアミノ化し、次いで、ビススルフォスクシニミヂルスベラート、ジスクシニミヂルグルタレート、ジチオビススクシニミヂルプロピオネート、ジスクシニミヂルスベラート、3,3'-ジチオビススルフォスクシニミヂルプロピオネート、エチレングリコールビススクシニミヂルスクシネート、エチレングリコールビススルフォスクシニミヂルスクシネート等の2価試薬を用いて、リポソーム膜面上に結合したリンカー蛋白質と、上記グリコシルアミノ化された糖類とを結合させ、図1〜4に示されるようなリポソームを得る。
【0023】
また、本発明のリポソームは、全般的に腸管吸収性は極めて高いものの、さらに、リポソーム上の糖鎖の密度の調節を行うことにより、腸管吸収性を制御し、より効率的に標的部位へ薬剤を移行させることが可能となり、副作用の軽減化を図ることができる。例えば、実施例における図6〜9においては、上記4種の糖鎖修飾リポソームにおける糖鎖結合量を3段階に変更した場合における、腸管から血中への移行性(すなわち腸管吸収性)を示す。
【0024】
なお、この糖鎖結合量の変更は、リンカー蛋白質結合リポソームに対して糖鎖を3段階の濃度で(▲1▼50μg、▲2▼200μg、▲3▼1mg)で結合せしめることにより行ったものである。これによれば、ラクトース二糖鎖の場合、糖鎖密度を高くするにつれ、腸管吸収性が順次低下するが、2’-フコシルラクトース三糖鎖およびジフコシルラクトース四糖鎖の場合は腸管吸収性が逆に上昇する。
【0025】
また、3-フコシルラクトース三糖鎖が、一度低下しまた上昇する。これらのことは、腸管吸収性は、リポソーム上の糖鎖の結合量により、糖鎖の種類毎に異なることを示す。したがって、糖鎖の種類毎にリポソーム上の糖鎖結合量を適宜設定することにより、腸管吸収性を制御することが可能となる。
【0026】
本発明の糖鎖修飾リポソームに、抗癌剤等の薬剤あるいは遺伝子治療のための遺伝子等を封入するには、周知の方法を用いればよく、例えば、薬剤等の含有溶液とフォスファチジルコリン類、フォスファチジルエタノールアミン類の脂質を用いてリポソームを形成することにより、薬剤等はリポソーム内に封入される。
【0027】
以下、本発明の実現性を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0028】
【実施例1】
リポソームの調製
リポソームは既報の手法(Yamazaki, N., Kodama, M. and Gabius, H.-J. (1994) Methods Enzymol. 242, 56-65)により、改良型コール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルフォスフェート、ガングリオシド及びジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:15:5の割合の合計脂質量45.6mgにコール酸ナトリウムを46.9mg添加し、クロロホルム/メタノール溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をTAPS緩衝液(pH 8.4)3mlに懸濁、超音波処理して、透明なミセル懸濁液を得た。さらに、ミセル懸濁液をPM10膜(Amicon Co.,USA)とPBS緩衝液(pH 7.2)を用いた限外濾過にかけ均一リポソーム(平均粒径100nm)10mlを調製した。
【0029】
【実施例2】
リポソーム脂質膜面上の親水性化処理
実施例1で調製したリポソーム溶液10mlをXM300膜(Amicon Co.,USA)とCBS緩衝液(pH 8.5)を用いた限外濾過にかけ溶液のpHを8.5にした。次に、架橋試薬bis(sulfosuccinimidyl)suberate (BS3; Pierce Co.,USA)10mlを加え、25℃で2時間攪拌した。その後、更に7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンとBS3との化学結合反応を完結した。そして、このリポソーム液をXM300膜とCBS緩衝液(pH 8.5)で限外濾過にかけた。次に、CBS緩衝液(pH 8.5)1mlに溶かしたtris(hydroxymethyl)aminomethane 40mgをリポソーム液10mlに加えて、25℃で2時間攪拌後、7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質に結合したBS3とtris(hydroxymethyl)aminomethaneとの化学結合反応を完結した。これにより、リポソーム膜の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン上にtris(hydroxymethyl)aminomethaneの水酸基が配位して水和親水性化された。
【0030】
【実施例3】
リポソーム膜面上へのヒト血清アルブミン(HSA)の結合
既報の手法(Yamazaki, N., Kodama, M. and Gabius, H.-J. (1994) Methods Enzymol. 242, 56-65)により、カップリング反応法を用いて行った。すなわち、この反応は2段階化学反応で行い、まずはじめに、実施例2で得られた10mlのリポソーム膜面上に存在するガングリオシドを1mlのTAPS緩衝液(pH 8.4)に溶かしたメタ過ヨウ素酸ナトリウム43mgを加えて室温で2時間攪拌して過ヨウ素酸酸化した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH 8.0)で限外濾過することにより酸化されたリポソーム10mlを得た。このリポソーム液に、20mgのヒト血清アルブミン(HSA)を加えて25℃で2時間攪拌し、次にPBS(pH 8.0)に2M NaBH3CN 100μlを加えて10℃で一晩攪拌してリポソーム上のガングリオシドとHSAとのカップリング反応でHSAを結合した。そして、XM300膜とCBS緩衝液(pH 8.5)で限外濾過をした後、HSA結合リポソーム液10mlを得た。
【0031】
【実施例4】
リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのラクトース二糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
ラクトース二糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(▲1▼50μg、又は、▲2▼200μg、又は、▲3▼1mg)を0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してラクトース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、(実施例3)で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’-dithiobis(sulfosuccinimidyl propionate (DTSSP; Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH 8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のラクトース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH 7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにラクトース二糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図1で示されるラクトース二糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称: ▲1▼LAC−1、▲2▼LAC−2,▲3▼LAC−3 )各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0032】
【実施例5】
リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上への2’-フコシルラクトース三糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
2’-フコシルラクトース三糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(▲1▼50μg、又は、▲2▼200μg、又は、▲3▼1mg)を0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結して2’-フコシルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、(実施例3)で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’-dithiobis(sulfosuccinimidyl propionate (DTSSP; Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH 8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSA に結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記の2’-フコシルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH 7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPに2’-フコシルラクトース三糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図2で示される2’-フコシルラクトース三糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称: ▲1▼2FL−1、▲2▼2FL−2,▲3▼2FL−3 )各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0033】
【実施例6】
リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのジフコシルラクトース四糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
ジフコシルラクトース四糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(▲1▼50μg、又は、▲2▼200μg、又は、▲3▼1mg)を0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してジフコシルラクトース四糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、(実施例3)で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’-dithiobis(sulfosuccinimidyl propionate (DTSSP; Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH 8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のジフコシルラクトース四糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH 7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにジフコシルラクトース四糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図3で示されるジフコシルラクトース四糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称: ▲1▼DFL−1、▲2▼DFL−2,▲3▼DFL−3 )各 2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0034】
【実施例7】
リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上への3-フコシルラクトース三糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
3-フコシルラクトース三糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(▲1▼50μg、又は、▲2▼200μg、又は、▲3▼1mg)を0.25gのNH4HCO3を溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結して3-フコシルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、(実施例3)で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’-dithiobis(sulfosuccinimidyl propionate (DTSSP; Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH 8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記の3-フコシルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH 7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPに3-フコシルラクトース三糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図4で示される3-フコシルラクトース三糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称: ▲1▼3FL−1、▲2▼3FL−2,▲3▼3FL−3 )各 2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0035】
【実施例8】
リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合
比較試料としてのリポソームを調製するために、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’-dithiobis(sulfosuccinimidyl propionate (DTSSP; Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH 8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液にtris(hydroxymethyl)aminomethane(Wako Co.,Japan)13mgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH 7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合を行った。この工程で既に大過剰である13mgのtris(hydroxymethyl)aminomethaneが存在するのでリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上の親水性化処理も同時に完結した。その結果、最終産物である親水性化処理された図5で示されるtris(hydroxymethyl)aminomethaneとヒト血清アルブミンとリポソームとが結合した比較試料としてのリポソーム(略称:TRIS ) 2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
【0036】
【実施例9】
リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上の親水性化処理実施例4〜7の手段により調整された各12種類の糖鎖が結合したリポソームについて、それぞれ別々に以下の手順によりリポソーム上のHSA 蛋白質表面の親水性化処理を行った。12種の糖鎖結合リポソーム2mlに、別々に、tris(hydroxymethyl)aminomethane 13mgを加えて、25℃で2時間、その後7℃で一晩攪拌した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH 7.2)で限外濾過し未反応物を除去して、最終産物である親水性化処理された12種類の糖鎖結合リポソーム複合体(略称: LAC−1、 LAC−2、 LAC−3、 2FL−1、 2FL−2、 2FL−3、 DFL−1、 DFL−2、 DFL−3、 3FL−1、 3FL−2、 3FL−3)各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)を得た。
【0037】
【実施例10】
各種の糖鎖結合リポソーム複合体によるレクチン結合活性阻害効果の測定実施例4〜7および実施例9の手段により調製した各12種の糖鎖結合リポソーム複合体のin vitroでのレクチン結合活性は、常法(Yamazaki,N.(1999) Drug Delivery System, 14, 498-505)に従いレクチン固定化マイクロプレートを用いた阻害実験で測定した。すなわち、レクチン(E-selectin; R&D Systems Co.,USA)を96穴マイクロプレートに固化定した。このレクチン固定化プレートに、比較リガンドであるビオチン化したフコシル化フェチュイン0.1μgとともに、濃度の異なる各種の糖鎖結合リポソーム複合体(蛋白質量として、0.01μg、0.04μg、0.11μg、0.33μg、1μg)を加え、4℃で2時間インキュベートした。PBS(pH 7.2)で3回洗浄した後、horseradish peroxidase(HRPO)結合ストレプトアビジンを添加し、さらに4℃で1時間インキュベート、PBS(pH 7.2)で3回洗浄し、ペルオキシダーゼ基質を添加して室温で静置、405nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(Molecular Devices Corp.,USA)で測定した。フコシル化フェチュインのビオチン化は、sulfo-NHS-biotin reagent(Pierce Co.,USA)処理後、Centricon-30(Amicon Co.,USA)により精製した。HRPO結合ストレプトアビジンは、HRPOの酸化とNaBH3CNを用いた還元アミノ化法によるストレプトアビジンの結合により調製した。この測定結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0003882034
【0038】
【実施例11】
クロラミンT法による各種糖鎖結合リポソームの125I標識
クロラミンT(Wako Pure Chemical Co.,Japan)溶液並びに二亜硫酸ナトリウム溶液をそれぞれ3mg/ml 並びに5mg/ml となるように用事調製して用いた。 (実施例4)から(実施例9)により調製した13種の糖鎖結合リポソーム並びにtris(hydroxymethyl)aminomethane結合リポソームとを50μl ずつ別々にエッペンチューブに入れ、続いて125I-NaI(NEN Life Science Product,Inc.USA)を15μl、クロラミンT溶液を10μl 加え反応させた。5 分ごとにクロラミンT溶液10μl を加え、この操作を2 回繰り返した後15 分後に還元剤として二亜硫酸ナトリウム100μl 加え、反応を停止させた。次に、Sephadex G-50(Phramacia Biotech.Sweden)カラムクロマト上に乗せ、PBS で溶出、標識体を精製した。最後に、非標識-リポソーム複合体を添加して比活性(4 x 106 Bq/mg protein)を調整して13種類の125I標識リポソーム液を得た。
【0039】
【実施例12】
各種の糖鎖結合リポソーム複合体のマウスでの腸管から血中への移行量の測定
一昼夜水分以外絶食した雄性ddYマウス(7週齢)に、(実施例11)により125I標識された13種の糖鎖結合並びにtris(hydroxymethyl)aminomethane結合リポソーム複合体0.2mlを蛋白質量として3μg/一匹の割合になるように、マウス用経口ゾンデで腸管内に強制投与した後、10分後にネンブタール麻酔下で下大動脈より血液1mlを採血した。そして、血中の125I放射能をガンマーカウンター(Alola ARC300)で測定した。さらに、各種のリポソーム複合体の生体内安定性を調べる目的で、各血液の血清をSephadex G-50で再クロマトしたが、いずれも大半の放射能が高分子量のボイドフラクションにみられ、各種のリポソーム複合体は生体内においても安定性を有していた。なお、腸管から血中への放射能移行量は、投与全放射能に対する血液1ml当たりの放射能の割合(%投与量/ml血液)で表示した。この結果を図6から図9に示す。
【0040】
【発明の効果】
本発明の上記糖鎖修飾リポソームは腸管吸収性に優れ、腸管を経由するという、従来のリポソーム使用製剤にはみられない新たな投与形態で投与可能なものであるという点で画期的なものである。さらに、腸管吸収性は、リポソームに対する糖鎖結合量の設定と、糖鎖の選択によって制御することができ、これにより、効率的、かつ副作用がなく安全に、薬剤あるいは遺伝子等を腸管経由で生体組織に移行することが可能となり、医学、薬学分野において特に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、ラクトース二糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
【図2】は、2’-フコシルラクトース三糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
【図3】は、ジフコシルラクトース四糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
【図4】は、3-フコシルラクトース三糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
【図5】は、比較試料としてtris(hydroxymethyl)aminomethaneを結合したリポソームの模式図である。
【図6】は、ラクトース二糖鎖の結合量を変えた3種のリポソーム複合体の腸管内投与10分後の血中への移行量をコントロールとともに示す図である。
【図7】は、2’-フコシルラクトース三糖鎖の結合量を変えた3種のリポソーム複合体の腸管内投与10分後の血中への移行量をコントロールとともに示す図である。
【図8】は、ジフコシルラクトース四糖鎖の結合量を変えた3種のリポソーム複合体の腸管内投与10分後の血中への移行量をコントロールとともに示す図である。
【図9】は、3-フコシルラクトース三糖鎖の結合量を変えた3種のリポソーム複合体の腸管内投与10分後の血中への移行量をコントロールとともに示す図である。

Claims (7)

  1. ラクトース2糖鎖、2’-フコシルラクトース三糖鎖、ジフコシルラクトース四糖鎖および3-フコシルラクトース三糖鎖から選ばれた糖鎖により修飾されたリポソームであって、上記糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソーム膜に結合していることを特徴とする、リポソーム。
  2. リポソーム表面および/またはリンカー蛋白質が、親水性化されたものである請求項1に記載のリポソーム。
  3. リポソーム表面および/またはリンカー蛋白質がトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンにより親水性化されたものである請求項2に記載のリポソーム
  4. リンカー蛋白質がヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンである請求項1〜3のいずれか一項に記載のリポソーム。
  5. リポソームが腸管吸収機能を有するものである請求項1〜4のいずれか一項に記載のリポソーム。
  6. リポソーム膜上の糖鎖結合量を調整したものである請求項1〜5のいずれか一項に記載のリポソーム。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のリポソームに薬剤または遺伝子を封入したものであるリポソーム製剤。
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