JP3878383B2 - 負極の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は二次電池用の負極の製造法に関し、より詳細には、特定の被覆膜を有する黒鉛性炭素物質を負極活物質とする二次電池用の負極の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カメラ一体型VTR装置、オーディオ機器、携帯型コンピュータ、携帯電話等様々な機器の小型化、軽量化が進んでおり、これら機器の電源としての電池に対する高性能化の要請が高まっている。中でも高電圧、高エネルギー密度の実現が可能なリチウム二次電池の開発が盛んになっている。
リチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極と負極、及び非水電解質を含有する電解質層とからなり、従来、非水電解質として非水系有機物からなる液体が用いられていた。ところが、このような非水系電解液を用いたリチウム二次電池は、リチウムデンドライトの析出による内部短絡からくる発熱、発火など、漏液や発火の危険を有していた。そこで近年では安全性を向上させるために、非水電解液、例えばゲル状ポリマ−に含有させ非流動化させたポリマ−電解質の開発が行われてきた。
【0003】
また、負極材料としては、最初にリチウム金属を用いることが試みられたが、充放電を繰り返すうちにデンドライト状のリチウムが析出してセパレータを貫通して、正極にまで達し、短絡して発火事故を起こす可能性があることが判明した。そのため、現在では、充放電過程における非水溶媒の出入りを層間で行ない、リチウム金属の析出を防止できる炭素材料を負極材料として使用することが注目されている。
【0004】
この炭素材料としては、特開昭57−208079号公報に、黒鉛材料を使用することが提案されている。特に、結晶性のよい黒鉛をリチウム二次電池用の炭素負極材料として用いると、黒鉛のリチウム吸蔵の理論容量である372 mAh/gに近い容量が得られ、材料として好ましいことは知られていた。しかし、黒鉛材料は、電解液に対し活性であるため、初回の充放電時に、皮膜形成や副反応による数十mAh/g以上の不可逆容量を示すのが一般的であった。
特開平5−299074号公報には炭素材料に無機酸、または加温した水酸化ナトリウムで化学的前処理を施した後、800℃以上の温度で真空加熱処理を施す事で充放電サイクル効率を向上させることが可能である事が開示されている。また、特開平6−20690号公報には薬液酸化、電解酸化、または気相酸化により表面を酸化しつつ非晶質化した炭素質材料を作り、負極容量の増加を計る方法が開示されており、更に、特開平6−44959号公報には炭素質材料に酸を添加し、加熱して黒鉛の理論容量に近い容量(370mAh/g)を得る方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、黒鉛はリチウムイオンの黒鉛結晶中へのインターカレーションを充放電の原理として使用するため、常温、常圧下では最大リチウム導入化合物のLiC6 から算出される372mAh/g以上の容量が得られないという問題がある。従って、何れの方法によっても黒鉛の理論容量である372mAh/gを超える容量は得られていない。しかも、電解液との黒鉛材料の濡れ性の低さは、充放電初期のリチウム脱ドープ容量が、本来黒鉛材料が発現できるはずの350mAh/g以上の容量よりも低くなるという問題を持っていた。
また、特開平7−022037号公報などには、黒鉛性炭素質物の表面を炭素化可能な有機物で被覆、焼成した炭素質物が開示されている。この材料は、充放電時の電位が、黒鉛のそれと同様リチウム金属の酸化還元電位に近く、しかも黒鉛性炭素質物より高容量を得られるという利点があるが、やはり黒鉛の理論容量である372mAh/gを超える容量は得られていない。
さらに、高容量で耐レート特性に優れた電極材料として、特開平10−284080号公報等には、黒鉛性炭素質物の表面を炭素化可能な有機物で被覆し、焼成し、粉砕した後、酸性またはアルカリ性溶液で処理した炭素質物が開示されている。しかしながら、該炭素物質を活物質として含む負極は、充電時にガス発生が起こるという問題を有していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物を活物質とし、充電時のガス発生が抑制された負極のより簡便な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、より簡便な非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物を活物質とする負極の製造方法を求め鋭意検討した結果、被覆膜の原料として熱可塑性樹脂を用いることにより、焼成後の粉砕工程を経ることなく負極を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明の第1の要旨は、平均粒径4〜40μmで、比表面積(BET法)0.1〜20m 2 /gの黒鉛性炭素質物100重量部に対し、200℃にて溶融状態になる熱可塑性樹脂10〜150重量部が配合された混合物を加熱処理し、該熱可塑性樹脂を溶融させた後、700℃以上で焼成し、焼成物の粉砕工程を経ることなく得られる非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物及びバインダーを、該バインダーを溶解しうる溶剤を用いて分散塗料となし、その塗料を集電体上に塗布、乾燥することを特徴とする負極の製造方法に存する。
【0008】
本発明の第2の要旨は、平均粒径4〜40μmで、比表面積(BET法)0.1〜20m 2 /gの黒鉛性炭素質物100重量部に対し、200℃にて溶融状態になる熱可塑性樹脂10〜150重量部が配合された混合物を加熱処理し、該熱可塑性樹脂を溶融させた後、700℃以上で焼成し、焼成物を粉砕工程に付することなく非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物を得ることを特徴とする非水系二次電池の負極用炭素質物の製造方法に存する。
また、本発明の好ましい実施態様としては、熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンであることを特徴とする上記の製造方法が挙げられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における負極の活物質である非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物とは、表層に非晶性の炭素皮膜を有する黒鉛系炭素質物を意味する。
本発明におけるこの非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物を生成するために使用される黒鉛性炭素質物としては、高結晶性の天然黒鉛、高結晶性の人造黒鉛、又は天然黒鉛や人造黒鉛の再熱処理品、膨張黒鉛の再熱処理品、或いはこれらの黒鉛の高純度精製品が好ましい。
【0010】
黒鉛性炭素物質の種類としては、下記(1)〜(4)に例示するものが挙げられ、これらの中から選択可能である。
(1)高結晶性の天然黒鉛や人造黒鉛、
(2)天然黒鉛、人造黒鉛、或いは膨張黒鉛の2000℃以上での再熱処理品、
(3)黒鉛化可能な有機物原料の黒鉛化により得る上記(1)、(2)と同等の性能を持つ黒鉛であり、例えば、コールタールピッチ、石炭系重質油、常圧残油、石油系重質油、芳香族炭化水素、窒素含有環状化合物、硫黄含有環状化合物、ポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、天然高分子、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂から選ばれる1 種以上の有機物を2500℃以上3200℃以下の焼成温度で黒鉛化したもの、
【0011】
(4)上記(3)の黒鉛化可能な有機物をリチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、珪素、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、ニッケル、白金、パラジウム、コバルト、ルテニウム、錫、鉛、鉄、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、バリウム、タンタル、タングステン及びレニウムから選ばれる少なくとも一種以上の粉体或いは薄膜などの触媒存在下で、400 ℃以上2500℃以下、より好ましくは1000℃以上2000℃以下で焼成することで黒鉛化したもの。
【0012】
黒鉛性炭素質物の平均粒径は、通常4μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常40μm以下、好ましくは30μm以下である。粒径が小さすぎると塗膜の充填密度を上げにくく、大きすぎると電極の表面性が低下しセパレ−タ−との接着性が低下する。
黒鉛性炭素質物の比表面積は、BET法の比表面積で、通常0.1m2/g以上、好ましくは1m2/g以上であり、通常20m2/g以下、好ましくは10m2/g以下である。比表面積が小さすぎると急速充放電特性が低下し、大きすぎると塗膜の強度が低下し安全性も低下する。
【0013】
本発明において使用される熱可塑性樹脂としては、200℃にて溶融状態になる樹脂が好ましく、具体的にはポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられ、特に好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0014】
黒鉛性炭素質物と熱可塑性樹脂の混合割合は、熱可塑性樹脂が少なすぎるとガス発生抑制効果が低下するので、黒鉛性炭素質物100重量部に対し、熱可塑性樹脂を焼成前の重量で通常少なくとも10重量部、好ましくは20重量部以上、より好ましくは40重量部以上使用され、また、使用量があまり多すぎると放電時の電圧降下及び容量低下を生ずることもあるので、黒鉛性炭素質物100重量部に対し、通常150重量部以下、好ましくは80重量部以下、より好ましくは60重量部以下で用いられる。使用する熱可塑性樹脂の種類に応じて、これらの範囲から適宜選択されるが、一般に、黒鉛性炭素質物100重量部に対し10〜150重量部、好ましくは20〜100重量部、特に好ましくは40〜60重量部である。
【0015】
黒鉛性炭素質物と熱可塑性樹脂との混合は、乾式にて、V型混合機等、公知の混合装置を用いればよく、より精密な混合を行うという観点から、せん断力を付与できるボールミルやハンマーミル等の装置を用いるのが好ましい。
なお、黒鉛性炭素質物のまわりに熱可塑性樹脂が均一に行き渡るように、黒鉛性炭素質物と熱可塑性樹脂を混合する際に、黒鉛性炭素質物と熱可塑性樹脂との混合物を180〜220℃で加熱処理し、該熱可塑性樹脂を溶融することが好ましい。
【0016】
混合物の焼成は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気において行う。焼成の温度は、炭素化が完了する温度以上であればよく、通常700℃以上、好ましくは750℃以上であり、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃以下、特に好ましくは950℃以下である。温度が低すぎると炭素化が不十分で、電極活物質としての充分な性能が得られない。また、温度が高すぎると黒鉛の結晶性が高くなりすぎる場合がある。結晶性が高すぎるとガスが発生する場合がある。なお、昇温速度は特に限定はないが、10〜500℃/h、好ましくは20〜100℃/hである。
【0017】
焼成により得られた非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物は、焼成後粉砕工程を経ることなく、バインダーとともに該バインダーを溶解しうる溶剤を用いて分散塗料化される。通常、黒鉛性炭素質物粉末と合成樹脂、ピッチ、油類などの炭化水素が主成分のバインダ−を混合すると黒鉛性炭素質物粉末同士が強固に結合される。ところで黒鉛系炭素質物を負極材として利用する場合は、黒鉛系炭素質物を粉末として使用する必用があることから、通常粉砕機等を用いて粉砕する必用があるが、粉砕工程を用いると微粒子成分の発生による収率の低下、表面被服されていない新たな界面が生成するという問題が発生する。本発明方法で得られる焼成後の非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物では粉砕機を用いることなく、具体的には振動ふるい等の緩い力を与えるだけで容易に解砕出来き、得られた非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物をそのまま次の工程に用いることが出来る。
【0018】
本発明におけるバインダーとしては、電解液等に対して安定である必要があり、耐候性、耐薬品性、耐熱性、難燃性等の観点から各種の材料が使用される。具体的には、シリケート、ガラスのような無機化合物や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1,1−ジメチルエチレンなどのアルカン系ポリマー;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの不飽和系ポリマー;ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリドンなどのポリマー鎖中に環構造を有するポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミドなどのアクリル誘導体系ポリマー;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニドなどのCN基含有ポリマー;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ポリマー;ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどが使用できる。
【0019】
また上記のポリマーなどの混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体などであっても使用できる。これらの樹脂の重量平均分子量は、通常10,000〜3,000,000、好ましくは100,000〜1,000,000程度である。低すぎると塗膜の強度が低下する傾向にある。一方高すぎると粘度が高くなり電極の形成が困難になることがある。好ましいバインダー樹脂としては、フッ素系樹脂、CN基含有ポリマーが挙げられ、より好ましくはポリフッ化ビニリデンである。
【0020】
バインダーの使用量は、非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上であり、また通常30重量部以下、好ましくは20重量部以下である。バインダーの量が少なすぎると電極の強度が低下する傾向にあり、バインダーの量が多すぎるとイオン伝導度が低下する傾向にある。
本発明における溶剤としては、使用するバインダーを溶解しうるものを適宜選択すればよく、例えばN−メチルピロリドンや、ジメチルホルムアミドを挙げることができ、好ましくはN−メチルピロリドンである。塗料中の溶剤濃度は、少なくとも10重量%より大きくするが、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上である。また、上限としては、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下である。溶剤濃度が低すぎると塗布が困難になることがあり、高すぎると塗布膜厚を上げることが困難になると共に塗料の安定性が悪化することがある。
【0021】
分散塗料化には通常用いられる分散機が使用でき、ボールミル、サンドミル、二軸混練機などが使用できる。
本発明では、このように調製した分散塗料を、集電体上に塗布、乾燥することにより負極を製造する。
集電体上に塗料を塗布する塗布装置に関しては特に限定されず、スライドコーティングやエクストルージョン型のダイコーティング、リバースロール、グラビアコーター、ナイフコーター、キスコーター、マイクログラビアコーター、ロッドコーター、ブレードコーターなどが挙げられるが、塗料粘度および塗布膜厚等を考慮するとエクストルージョン方式が最も好ましい。
上記塗料を集電体上に塗布した後、塗膜を、例えば120℃で10分間乾燥させる。乾燥温度が低いとバインダ−の結晶化が起こりにくく塗膜強度が低下する。また時間が短く乾燥が不十分だと残存溶媒が電池特性に悪影響を与える。逆に温度が高い又は乾燥時間が長すぎると集電体が酸化され電池特性を劣化させる。
通常は、80〜140℃、5〜20分乾燥される。
【0022】
電極中には、電極の導電性や機械的強度を向上させるため、導電性材料、補強材など各種の機能を発現する添加剤、粉体、充填材などを含有させても良い。
導電性材料としては、上記非晶質炭素被覆黒鉛に適量混合して導電性を付与できるものであれば特に制限は無いが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末や、各種の金属のファイバー、箔などが挙げられる。炭素粉末導電性材料のDBP吸油量は120cc/100g以上が好ましく、特に150cc/100g以上が電解液を保持するという理由から好ましい。
添加剤としては、トリフルオロプロピレンカーボネート、1,6−ジオキサスピロ[4,4]ノナン−2,7−ジオン、12−クラウン−4−エーテル、ビニレンカーボネート、カテコールカーボネートなどが電池の安定性、寿命を高めるために使用することができる。補強材としては各種の無機、有機の球状、繊維状フィラーなどが使用できる。
【0023】
負極の厚さは、一般的に0.05〜200μm程度である。この範囲の中でも、通常10μm以上、好ましくは20μm以上であり、通常200μm以下、好ましくは150μm以下である。薄すぎると電池の容量が小さくなりすぎることがある。一方、あまりに厚すぎるとレート特性が低下しすぎることがある。なお、上記における負極とは、活物質(非晶質炭素被覆黒鉛)を含む層を意味し、集電体は含まない。
【0024】
本発明における集電体としては、電気化学的に溶出等の問題が生じず、電池の集電体として機能しうる各種のものを使用でき、通常は金属や合金が用いられる。例えば、負極の集電体としては、銅箔を用いる場合が多い。
これら集電体の表面を予め粗面化処理しておくことは、電極材料層との結着効果を向上させることができるので好ましい方法である。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理や粗面ロールにより圧延するなどの方法、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤ−ブラシなどで集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。
【0025】
また、二次電池の重量を低減させる、すなわち重量エネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの基材を使用することもできる。この場合、その開口率を変更することで重量も自在に変更可能となる。また、このような穴あけタイプの基材の両面に接触層を形成した場合、この穴を通しての塗膜のリベット効果により塗膜の剥離がさらに起こりにくくなる傾向にあるが、開口率があまりに高くなった場合には、塗膜と基材との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。
集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50以下である。あまりに厚すぎると、電池全体の容量が低下しすぎることになり、逆に薄すぎると取り扱いが困難になることがある。
【0026】
集電体上にアンダーコートプライマー層を形成することもできる。プライマー層の機能は、集電体に対する負極の接着性を向上させることであり、プライマー層を設けない場合に比べ、接着性向上による電池内部抵抗の低減、充放電サイクル試験過程における基材からの塗膜脱離による急速な容量低下を防ぐものである。アンダーコートプライマー層は、例えば、導電性材料とバインダーと溶剤を含むアンダーコートプライマー材料塗料を集電体上に塗布した後、これを乾燥することによって形成することができる。
アンダーコートプライマー層に使用する導電性材料としては、カーボンブラック、グラファイト等の炭素材料、金属粉体、導電性の有機共役系樹脂等を挙げることができるが、好ましくは、電極の活物質としても機能しうるカーボンブラック、グラファイト等の物質である。
【0027】
アンダーコートプライマー層に使用するバインダーや溶剤は、前記電極材料の塗料に使用するバインダーや溶剤と同様のものを使用することができる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物等の導電性樹脂は、前記導電性材料とバインダーとの両方の機能を兼ね備えることが可能なので、これを導電性材料とバインダーの両者を兼ねてアンダーコートプライマー層に用いることができる。無論、アンダーコートプライマー層に使用するバインダーや溶剤は、電極材料の塗料に使用するものと同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
導電性材料とバインダーとをそれぞれ用いた場合、導電性材料に対するバインダーの割合は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、また通常300重量%以下、好ましくは100重量%以下である。あまりに低すぎると、電池使用時、工程上での剥離などが生じやすく、他方、あまりに高すぎると伝導度が低下して電池特性が低下することがある。
アンダーコートプライマー層の厚さは、一般的に0.05〜200μm程度である。この範囲の中でも、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは1μm以下である。薄すぎると均一性が確保しにくくなり、あまりに厚すぎると電池の体積容量が低下しすぎることがある。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれら実施例により何等制限されるものではない。
【0030】
実施例1
黒鉛粉末(平均粒径15μm、比表面積5m2/g)100重量部に対し、粉末状のポリ塩化ビニル50重量部をAl2O3製のボールミルを用いて室温にて30分間乾式混合し、混合した混合粉を黒鉛製のルツボに移しふたをかぶせて900℃まで300℃/hで昇温し、900℃にて1時間保持し、非晶質炭素被覆黒鉛を得た。
得られた非晶質炭素被覆黒鉛100重量部(非晶質炭素被覆黒鉛は、焼成後粉砕することなく用いた)に対して、ポリフッ化ビニリデン(バインダー)10重量部、N−メチル−2−ピロリドン(溶剤)100重量部を調合し、混練機により2時間混練し負極用分散塗料とした。
負極用分散塗料を、20μm厚の銅集電体基材上にエクストルージョン型のダイコーティングによって塗布し、120℃にて10分間乾燥し、負極を作製した。
【0031】
実施例2
ポリ塩化ビニルの配合量を、黒鉛粉末100重量部に対して100重量部とした以外は実施例1と同様にして負極を作製した。
実施例3
ポリ塩化ビニルのかわりにポリビニルアルコールを用いた以外は実施例1と同様にして負極を作製した。
【0032】
実施例4
ポリ塩化ビニルのかわりにポリビニルピロリドンを用いた以外は実施例1と同様にして負極を作製した。
比較例1
ポリ塩化ビニルを配合しなかった以外は実施例1と同様にして負極を作製した。
【0033】
電池の形成
最初に以下の塗料を調製した。
[正極塗料]
上記の全ての原料について、混練機により2時間混練し正極用ペーストとした。
【0034】
[電解質塗料]
組成
テトラエチレングルコールジアクリレート 14部
ポリエチレンオキシドトリアクリレート 7部
過塩素酸リチウム 21部
重合開始剤 1部
添加剤(スピロジラクトン) 14部
電解液(プロピレンカーボネート) 120部
電解液(エチレンカーボネート) 120部
上記組成分全部を混合攪拌溶解し、電解質塗料とした。
【0035】
次いで正極塗料を20μm厚のアルミニウム集電体基材上に、エクストルージョン型のダイコーティングによって塗布、乾燥し、活物質がバインダーによって集電体上に結着された多孔質膜を作成した。
ついで、ロールプレス(カレンダー)をもちいて、線圧100kgf/cmの条件で圧密することによって正極を作製した。
【0036】
この正極ならびに実施例1〜4および比較例1で製造した負極に電解質塗料を塗布し、別に電解質塗料に浸した電極よりやや面積の広い高分子多孔質フィルムを間に挟んで積層し、電解質塗料を添加して挟んだ状態で90℃にて10分加熱することにより電解質を非流動化して、正極、負極を有し、非流動化された電解質成分を有する平板状の単位電池素子を形成した。その後単位電池素子に電流を取り出すタブを接続し、アルミニウム膜と高分子フィルムからなるラミネートフィルムを対向成形した袋状ケースに真空シールして収納することによって平板状電池とした。
【0037】
電池性能試験
得られた平板状電池を0.5mA/cm2で4.2Vまで充電し、目視にてガス発生の有無を確認した。ガス発生がある場合は、ケースに膨らみが生じる。その結果を下記表に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、高容量の電池、特に二次電池用の炭素質負極として有用な非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物を活物質とする負極を、黒鉛性炭素質物と熱可塑性樹脂の混合物の焼成後に粉砕工程を経ることなく、より簡便な工程で製造することが出来る。
Claims (4)
- 平均粒径4〜40μmで、比表面積(BET法)0.1〜20m2/gの黒鉛性炭素質物100重量部に対し、200℃にて溶融状態になる熱可塑性樹脂10〜150重量部が配合された混合物を加熱処理し、該熱可塑性樹脂を溶融させた後、700℃以上で焼成し、焼成物の粉砕工程を経ることなく得られる非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物及びバインダーを、該バインダーを溶解しうる溶剤を用いて分散塗料となし、その塗料を集電体上に塗布、乾燥することを特徴とする負極の製造方法。
- 平均粒径4〜40μmで、比表面積(BET法)0.1〜20m2/gの黒鉛性炭素質物100重量部に対し、200℃にて溶融状態になる熱可塑性樹脂10〜150重量部が配合された混合物を加熱処理し、該熱可塑性樹脂を溶融させた後、700℃以上で焼成し、焼成物を粉砕工程に付することなく非晶質炭素被覆黒鉛系炭素質物を得ることを特徴とする非水系二次電池の負極用炭素質物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1に記載の負極の製造方法。
- 熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項2に記載の負極用炭素質物の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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