JP3876961B2 - 表面処理剤及び撥水・撥油性物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス、ガラスレンズ、鏡、プラスチック、プラスチックレンズ、金属、セラミックス、磁器、陶器等の表面に処理し、粘着感がなく、ほこり等が付着しにくく、撥水性、撥油性を兼ね備えた防汚性皮膜を形成する表面処理剤及びこの表面処理剤にて表面処理された物品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
例えば、眼鏡用レンズ、カメラ用レンズ等の光学レンズに防汚性、撥水性を与えるために、その最表層にシリコーン系及び/又はフッ素系の重合物からなる硬化物質層を設けることが知られている。その処理剤としては、例えば特開昭60−221470号公報には、C8F17C2H4SiCl3、C4F9C2H4Si(NH)3/2のような3官能性の有機ケイ素化合物、あるいは、その部分加水分解物が提案されている。
【0003】
しかし、このような3官能性のものを単独で処理したものは、表面が3次元構造を持つ重合物のみで覆われるため、表面が柔らかい、あるいは、粘着感があることにより、かえって、ほこりが付着したり、手で触れたあとの指紋が脱落しにくくなってしまうという欠点があった。
【0004】
そのため特開平11−116809号公報、特開平11−116810号公報では、3官能性の含フッ素シラザン化合物とアルコキシ基等の加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサンを含有する表面処理剤が提案されているが、アルコキシ基等の加水分解性基では、硬化性に問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので、防汚性、撥水性、撥油性を与え、かつ、硬化性に優れ、表面に粘着感がなく、ほこり等が付着しにくい防汚性皮膜を形成し得る表面処理剤及びこの表面処理剤で表面処理された物品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物と下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物との混合物をアンモニアと反応させることにより得られる反応生成物、あるいは、下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物をアンモニアと反応させることにより得られる反応生成物と、下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物をアンモニアと反応させることにより得られる反応生成物との混合物を表面処理剤として用いることにより、ガラス、ガラスレンズ、鏡、プラスチック、プラスチックレンズ、金属、セラミックス、磁器、陶器等の表面に、粘着感がなく、ほこり等が付着しにくく、撥水性、撥油性を兼ね備えた防汚性皮膜を形成する表面処理剤が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
【化4】
(式中、Rfは炭素数1〜12の含フッ素有機基、R1は炭素数1〜10の1価炭化水素基、Xはハロゲン原子、aは0,1又は2である。)
【0008】
【化5】
(式中、R2は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の1価炭化水素基、R3はフッ素原子を含んでもよい炭素数1〜10の1価炭化水素基、R4は下記一般式(3)で表される加水分解性基、R5、R6はR2又はR4であり、kは0〜100、mは0〜100、nは0〜5の整数であり、k+m+nは0〜200であるが、式(2)の化合物は1分子中に少なくとも1個のR4を含む。)
【0009】
【化6】
(式中、R8は炭素数2〜10の2価炭化水素基又は酸素原子を示す。Xはハロゲン原子である。)
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明に係る第1の表面処理剤は、
(A)下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物と、
(B)下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物と
の混合物をアンモニアと反応させることにより得られる反応生成物
を含有することを特徴とする。
【0011】
【化7】
(式中、Rfは炭素数1〜12の含フッ素有機基、R1は炭素数1〜10の1価炭化水素基、Xはハロゲン原子、aは0,1又は2である。)
【0012】
【化8】
(式中、R2は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の1価炭化水素基、R3はフッ素原子を含んでもよい炭素数1〜10の1価炭化水素基、R4は下記一般式(3)で表される加水分解性基、R5、R6はR2又はR4であり、kは0〜100、mは0〜100、nは0〜5の整数であり、k+m+nは0〜200であるが、式(2)の化合物は1分子中に少なくとも1個のR4を含む。)
【0013】
【化9】
(式中、R8は炭素数2〜10の2価炭化水素基又は酸素原子を示す。Xはハロゲン原子である。)
【0014】
ここで、式(1)において、Rfの含フッ素有機基は、炭素数1〜12の範囲内のものであれば、特に制限はないが、ケイ素原子に直接又はアルキレン基を介して結合するパーフルオロアルキレン基等とすることができ、特に、
CpF2p+1CqH2q−
(式中、pは1〜8、好ましくは4〜8の整数、qは0〜10、好ましくは2又は3であり、p+q=1〜12である。)
のものが好ましい。具体例としては、CF3−C2H4−基、C4F9−C2H4−基、C8F17−C2H4−基、C8F17−C3H6−基等が例示される。また、R1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0015】
また、式(2)、(3)において、R2、R3、R7の1価炭化水素基としては、R1と同様のものを例示することができる。この場合、R3の1価炭化水素基はフッ素原子を含むものであってもよく、上記したアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、Rfと同様のもの、特に上記CpF2p+1CqH2q−で表されるものを挙げることができる。R8の2価炭化水素基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン等のアルキレン基を挙げることができる。Xのハロゲン原子としては、Cl、Br等が例示され、特にClが好ましい。kは0〜100、好ましくは0〜50、mは0〜100、好ましくは0〜25、nは0〜5であり、k+m+nは0〜200、好ましくは0〜70である。
【0016】
上記一般式(2)の有機ケイ素化合物は、少なくとも1個のR4、即ち、式(3)の加水分解性基を有するものであるが、この場合、この加水分解性基はポリシロキサン分子の側鎖に存在しても末端に存在しても、両方に存在してもよい。
【0017】
上記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を例示すると、下記の通りである。
【0018】
【化1】
(式中、R2、R3 、R8、X、k、m、nは上記と同じである。)
【0019】
【化11】
【0020】
上記一般式(1)の有機ケイ素化合物(A)と、一般式(2)の有機ケイ素化合物(B)との混合比は、特に制限はないが、重量比として1:0.1〜0.1:1、特には0.5:1〜1:0.5が望ましい。この場合、一般式(1)の有機ケイ素化合物が少ないと、特に撥油性が劣り、一般式(2)の有機ケイ素化合物が少ないと、基材表面に粘着感が出て、それぞれ目的とする防汚性が発揮されない場合がある。
【0021】
上記式(1)、(2)の有機ケイ素化合物の混合物にアンモニアを反応させる場合は、この混合物を予め適当な溶剤に溶解して使用することができる。使用する溶剤に特に制限はないが、メタキシレンヘキサフルオライド、ペンタフルオロジクロロプロパン、オクタデカフルオロオクタンのような含フッ素化合物が、溶解性がよく、好ましい。
【0022】
アンモニアを反応させる場合は、この混合物にアンモニアガスを吹き込み、上記式(1)、(2)の有機ケイ素化合物のハロゲン原子にアンモニアを反応させるものである。この場合、反応条件としては、室温乃至溶剤の沸点の温度でハロゲン原子に対し等モル以上のアンモニアを反応させればよく、反応は短時間で終了する。
【0023】
上記のように反応させた後は、生じた塩化アンモニウムを濾別し、必要により上記したような溶剤に更に希釈し、表面処理剤として用いることができる。
【0024】
次に、本発明に係る第2の表面処理剤は、
(A’)上述した(A)成分、即ち式(1)の有機ケイ素化合物をアンモニアと反応させることにより得られる反応生成物と、
(B’)上述した(B)成分、即ち式(2)の有機ケイ素化合物をアンモニアと反応させることにより得られる反応生成物と
の混合物を含有することを特徴とする。
【0025】
上記(A)成分、(B)成分とアンモニアとの反応は、それぞれ上記した方法と同様の方法を採用し得、得られた両反応生成物を混合することにより、表面処理剤を得ることができる。
【0026】
その混合割合としては、特に制限はないが、第2の表面処理剤に用いる(A’)成分の反応生成物と(B’)成分の反応生成物とを、重量比として1:0.1〜0.1:1、特には0.5:1〜1:0.5の割合で混合することが好ましい。(A’)成分が少ないと、特に撥油性が劣り、(B’)成分が少ないと、基材表面に粘着感が出て、それぞれ目的とする防汚性が発揮されない場合がある。
【0027】
なお、この第2の表面処理剤も、上述したような溶剤に溶解して使用し得ることは、上記と同様である。
【0028】
この場合、上記(A’)成分の反応生成物は、主として下記一般式(4)で表される化合物を含み、(B’)成分の反応生成物は、主として下記一般式(5)で表される化合物を含む。また、上記(A)、(B)成分の混合物のアンモニアとの反応生成物も、これら式(4)、(5)の化合物を含み得る。
【0029】
【化12】
(式中、Rf、R1、aは上記と同じ。)
【0030】
【化13】
(式中、R2、R3、k、m、nは上記と同じ。R9は下記式(6)で表される加水分解性基、R10、R11はR2又はR9であり、式(5)の化合物は1分子中に少なくとも1個のR9を含む。)
【0031】
【化2】
(式中、R 8 は上記と同じ。)
【0032】
ここで、上記式(5)の化合物としては、特に下記式の化合物を挙げることができる。
【0033】
【化3】
(式中、R2、R3、R8、k、m、nは上記と同じである。)
具体的には、下記のものを例示することができる。
【0034】
【化16】
【0035】
従って、本発明は、上記式(4)、(5)の化合物を含有する表面処理剤をも提供するが、この場合、式(4)の化合物と式(5)の化合物とは、重量比として1:0.1〜0.1:1、特には0.5:1〜1:0.5の割合で混合することが好ましく、式(4)の化合物が少ないと、特に撥油性が劣り、式(5)の化合物が少ないと、基材表面に粘着感が出て、それぞれ目的とする防汚性が発揮されない場合がある。この表面処理剤を含フッ素化合物等の溶剤に溶解して使用し得ることは、上記と同様である。
【0036】
なお、本発明の表面処理剤中の(A)、(B)成分の混合物の反応生成物又は(A)、(B)成分の反応生成物の混合物の濃度は、処理方法により適当な値にすることができるが、十分な撥水、防汚機能を得るためには、0.1重量%以上、特に0.5重量%以上が望ましい。
【0037】
本発明で得られる表面処理剤を処理する基材に制限はなく、ガラス、ガラスレンズ、鏡、金属、セラミックス、磁器、陶器等の無機材料、ゴム、プラスチック等の有機材料、プラスチックレンズ、液晶用フィルター等の光学機能材料等が例示される。
【0038】
本発明の表面処理剤の処理方法に特に制限はなく、布等に浸み込ませて、そのまま拭き込む方法、刷毛塗り、浸漬法、スピンコート法、カーテンコート法、真空蒸着法等が例示される。
【0039】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0040】
[実施例、比較例]
下記基材を下記表面処理剤で処理し、その性能を評価した。結果を表1に示す。
<基材>
ガラス:予め表面をアセトンにて洗浄したフロートガラス
プラスチックレンズ:ポリカーボネート製レンズの表面にハードコートを施し、更にシリカを蒸着したもの
PETフィルム:シリカを蒸着したポリエステルフィルム
<処理方法>
下記表面処理剤に基材を5分間浸漬し、取り出した後、該溶液に用いた溶剤と同じ溶剤に1分間ずつ2回浸漬することにより洗浄し、100℃×10分間乾燥した。
【0041】
<表面処理剤の構造>
有機ケイ素化合物溶液1−1(C4F9C2H4SiCl3とアンモニアとを反応させることにより合成)
C4F9C2H4Si(NH)3/2の3%メタキシレンヘキサフルオライド溶液
有機ケイ素化合物溶液1−2(C8F17C2H4SiCl3とアンモニアとを反応させることにより合成)
C8F17C2H4Si(NH)3/2の3%メタキシレンヘキサフルオライド溶液
【化17】
表面処理剤1−1
有機ケイ素化合物溶液1−1:1重量部、有機ケイ素化合物溶液2−1:1重量部の混合物
表面処理剤1−2
有機ケイ素化合物溶液1−2:3重量部、有機ケイ素化合物溶液2−2:1重量部の混合物
表面処理剤1−3
有機ケイ素化合物溶液1−2:3重量部、有機ケイ素化合物溶液2−3:1重量部の混合物
表面処理剤2−1
C4F9C2H4SiCl3:3重量部
下記式(I):3重量部
メタキシレンヘキサフルオライド:94重量部
の混合物に、60℃でアンモニアガス2.8重量部を吹き込み、冷却後、生じた塩化アンモニウムを濾別して得られた溶液を、更にメタキシレンヘキサフルオライドで3倍に希釈したシラザン化合物溶液
【化18】
表面処理剤2−2
C8F17C2H4SiCl3:3重量部
下記式(II):1重量部
メタキシレンヘキサフルオライド:96重量部
の混合物に、60℃でアンモニアガス1.8重量部を吹き込み、冷却後、生じた塩化アンモニウムを濾別して得られた溶液を、更にメタキシレンヘキサフルオライドで2倍に希釈したシラザン化合物溶液
【化19】
表面処理剤2−3
C8F17C2H4SiCl3:3重量部
下記式(III):1重量部
メタキシレンヘキサフルオライド:96重量部
の混合物に、60℃でアンモニアガス1.6重量部を吹き込み、冷却後、生じた塩化アンモニウムを濾別して得られた溶液を、更にメタキシレンヘキサフルオライドで2倍に希釈したシラザン化合物溶液
【化20】
表面処理剤3−1
有機ケイ素化合物溶液1−2
表面処理剤3−2
有機ケイ素化合物溶液2−1
【0042】
<評価方法>
水の接触角:
協和界面科学株式会社製の接触角計CA−X150型を用いて測定した。
指紋拭き取り性:
処理した基材に、右手親指を押し付け、1時間後、付着した指紋をティッシュペーパーで10回拭いたときの状態。
A:指紋が脱落している
B:指紋が少量付着している
C:指紋が殆ど脱落していない
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
本発明で得られる表面処理剤で処理した基材は、高撥水、高撥油性であるばかりでなく、付着した汚れの拭き取り性が向上しているものである。
Claims (4)
- (A)下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物と、
(B)下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物と
の混合物をアンモニアと反応させることにより得られる反応生成物
を含有することを特徴とする表面処理剤。
- (A’)請求項1記載の(A)成分をアンモニアと反応させることにより得られる反応生成物と、
(B’)請求項1記載の(B)成分をアンモニアと反応させることにより得られる反応生成物と
の混合物を含有することを特徴とする表面処理剤。 - フッ素系溶剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の表面処理剤。
- 請求項1乃至3のいずれか1項記載の表面処理剤で表面処理された撥水・撥油性物品。
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