JP3875499B2 - 静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機及びプリンターに用いられる静電荷像現像用トナーに関する。さらに詳しくは、定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性に優れ、得られた画像の光沢性、OHP透明性が良好な静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法において従来一般に広く用いられてきた静電荷像現像用トナーは、スチレン/アクリレート系共重合体に、カーボンブラックや顔料のような着色剤、帯電制御剤及び/または磁性体を含む混合物を押出機により溶融混練し、ついで粉砕・分級することによって製造されてきた。しかし、上記のような溶融混練/粉砕法で得られる従来のトナーは、トナーの粒径制御に限界があり、実質的に10μm以下、特に8μm以下の平均粒径のトナーを歩留まり良く製造することが困難であり、今後電子写真に要求される高解像度化を達成するためには十分なものとは言えなかった。
【0003】
また、低温定着性を達成するために、混練時に低軟化点のワックスをトナー中にブレンドする方法が提案されているが、混練/粉砕法に於いては5%程度のブレンドが限界であり、十分な低温定着性能のトナーを得ることができなかった。特開昭63−186253号公報には、粒径制御の問題を克服し、高解像度を達成するために乳化重合/凝集法によるトナーの製造方法が提案されている。しかしながら、この方法に於いても凝集工程で導入できるワックスの量に限界があり、低温定着性に関しては十分な改良効果は得られていなかった。
【0004】
すなわち、該特許に基づいて本発明者らがワックスの添加量をふって検討したところ、ワックスの添加量を増やしていくと、得られたトナーの粒径分布が二山となったり、1μm以下の微粉が残存する等の問題点があり、凝集工程後に分級工程が必要となった。
特開平6−329947号公報に開示された方法は、凝集工程で凝集剤と同時に水に無限溶解する有機溶媒を添加することにより粒径分布の狭い凝集粒子を得ることが可能な方法であるが、制御因子が多いために再現性が悪く、また廃水処理の負担が大きい、等の問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来用いられていた静電荷像現像用トナーの欠点を克服し、高解像度、低温定着性を満足させる新規のトナーを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、乳化重合して得られる重合体一次粒子に含まれるワックス微粒子の粒径を制御することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、体積平均粒径が0.3〜1.5μmのワックス微粒子の存在下にモノマー混合物を乳化重合して重合体一次粒子を作製する工程、及び、少なくとも該重合体一次粒子及び着色剤微粒子を凝集して体積平均粒径3〜10μmの粒子凝集体とする工程を経ることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法に存する。
【0007】
また、本発明の別の要旨は、少なくとも重合体一次粒子及び着色剤微粒子を凝集して粒子凝集体とする工程を経て得られる静電荷像現像用トナーにおいて、重合体一次粒子が、体積平均粒径0.3〜1.5μmのワックス微粒子の存在下にモノマー混合物を乳化重合して得られたものである静電荷像現像用トナーに存する。
【0008】
また、本発明の別の要旨は、ワックスの存在下で酸性極性基又は塩基性極性基を有するモノマーを含むモノマー混合物を逐次添加してシード乳化重合を行い、ついで得られた重合体一次粒子分散液と着色剤一次粒子及び/又は帯電制御剤一次粒子を含有する分散液とを混合し、粒子を凝集させて粒子凝集体とする事を特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法に存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のトナーに用いられるワックスは、公知のワックス類の任意のものを使用することができるが、具体的には低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、パラフィンワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス、水添ひまし油カルナバワックス等の植物系ワックス、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン、アルキル基を有するシリコーン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、長鎖脂肪酸アルコール、ペンタエリスリトール等の長鎖脂肪酸多価アルコール、及びその部分エステル体、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、等が例示され、好ましくは、総炭素数20〜50の脂肪族カルボン酸アルキルエステルが用いられる。
これらのワックスは、単独で用いても混合して用いても良い。また、これらのワックスの中で定着性を改善するためにより好ましいのは、融点が100℃以下のワックスであり、更に好ましいワックスの融点は40〜90℃の範囲、特に好ましいのは50〜80℃の範囲である。融点が100℃を越えると定着温度低減の効果が乏しくなる。
【0010】
本発明の静電荷像現像用トナーは、これらワックスの体積平均粒径として0.4〜1.5μmの微粒子の存在下にモノマー混合物を乳化重合して得られた重合体一次粒子を用いることを特徴としている。本発明の好ましい実施態様では、上記ワックス類を乳化剤の存在下に分散してエマルションとし、樹脂のシード重合に供する。シードとして用いるワックス微粒子の体積平均粒径は、0.3〜1.5μmであり、好ましくは0.5〜1.2μmである。なお、平均粒径は、例えば、日機装社製マイクロトラックUPAを用いて測定することができる。ワックスエマルションの平均粒径が1.5μmよりも大きい場合にはシード重合して得られる重合体粒子の平均粒径の制御が困難となり、また、エマルションの平均粒径が0.3μmよりも小さい場合には、シード重合後の重合体一次粒子中のワックス含有量が低くなりワックスの効果が出にくくなり、定着幅が狭くなる。
【0011】
本発明で用いるワックス微粒子は、上記ワックスを公知のカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤の中から選ばれる少なくともひとつの乳化剤の存在下で乳化して得られる。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。
カチオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、等があげられる。
【0012】
また、アニオン界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等があげられる。
【0013】
さらに、ノニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖、等があげられる。
【0014】
ワックスエマルションの存在下でシード乳化重合をするに当たっては、逐次、極性基を有するモノマー(ブレンステッド酸性基を有するモノマーもしくはブレンステッド塩基性基を有するモノマー)、及び、その他のモノマーとを添加する事により、ワックスを含有するエマルション内で重合を進行させる。この際、モノマー同士は別々に加えても良いし、予め複数のモノマー混合しておいて添加しても良い。更に、モノマー添加中にモノマー組成を変更することも可能である。また、モノマーはそのまま添加しても良いし、予め水や界面活性剤などと混合、調整した乳化液として添加することもできる。界面活性剤としては、前記の界面活性剤から1種又は2種以上の併用系が選択される。
【0015】
ワックス微粒子をシードとして乳化重合を進行するにあたっては、乳化剤を一定量ワックスエマルションに添加してもかまわない。また重合開始剤の添加時期は、モノマー添加前、モノマーと同時添加、モノマー添加後のいずれでも良く、またこれらの添加方法の組み合わせであっても構わない。
【0016】
以上の様にして得られる重合体一次粒子は、実質的にワックスを包含した形の重合体粒子であるが、そのモルフォロジーとしては、コアシェル型、相分離型、オクルージョン型、等いずれの形態をとっていてもよく、またこれらの形態の混合物であってもよい。特に好ましいのはコアシェル型である。ワックスは、通常、バインダー樹脂100重量部に対して3〜40重量部で用いられ、好ましくは5〜35重量部、更に好ましくは10〜30重量部で用いられる。また、本発明の趣旨をはずれない範囲では、ワックス以外の成分、例えば顔料、帯電制御剤、等を同時にシードとして用いても構わない。さらに着色剤をモノマー又はワックスに溶解又は分散させて用いても構わない。
【0017】
本発明で用いられるブレンステッド酸性基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、等のカルボキシル基を有するモノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー、スチレンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有するモノマー等があげられる。
【0018】
また、ブレンステッド塩基性基を有するモノマーとしては、アミノスチレン等のアミノ基を有するモノマー、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、等の窒素含有複素環基を有するモノマー、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、等のジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。
これらのうち、ブレンステッド酸性基を有するモノマーを用いることが好ましく、中でもアクリル酸及びメタクリル酸が更に好ましい。アクリル酸及び/又はメタアクリル酸を用いる場合の使用量は、モノマー混合物全体に対して好ましくは0.5〜10%、更に好ましくは1〜5%である。
【0019】
その他のコモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチルヘキシル、等の(メタ)アクリル酸エステル、を挙げることができる。この中で、スチレン、ブチルアクリレート、等が特に好ましい。
【0020】
これらのモノマーは単独、または混合して用いられるが、その際、重合体のガラス転移温度が40〜80℃となることが好ましい。ガラス転移温度が80℃を越えると定着温度が高くなりすぎたり、OHP透明性の悪化が問題となることがあり、一方重合体のガラス転移温度が40℃未満の場合は、トナーの保存安定性が悪くなりすぎて問題を生じる。本発明では、酸性極性基を持つモノマーとしてアクリル酸が、その他のモノマーとしてスチレン、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルが好適に使用される。
【0021】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、等の過硫酸塩、及び、これら過硫酸塩を一成分として酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4‘−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロペーオキサイド、等の水溶性重合開始剤、及び、これら水溶性重合性開始剤を一成分として第一鉄塩等の還元剤と組み合わせたレドックス開始剤系、過酸化ベンゾイル、2,2‘−アゾビス−イソブチロニトリル、等が用いられる。これら重合開始剤はモノマー添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加しても良く、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせても良い。
【0022】
本発明では、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することができるが、その様な連鎖移動剤の具体的な例としては、t―ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン、等があげられる。連鎖移動剤は単独または2種類以上の併用でもよく、重合性単量体に対して0〜5重量%用いられる。
【0023】
重合体一次粒子の平均粒径は、通常0.05〜1μmの範囲であり、好ましくは0.1〜0.6μm、更に好ましくは0.15〜0.4μmである。なお、平均粒径は、例えば、日機装社製マイクロトラックUPAを用いて測定することができる。粒径が上記範囲より小さくなると凝集速度の制御が困難となり好ましくない。また、上記範囲より大きいと凝集して得られるトナー粒径が大きくなりすぎるため、トナーとして高解像度を要求される用途には不適当である。
【0024】
ここで、ワックス微粒子の存在下にモノマー混合物の乳化重合を行い、ワックスを含有した重合体一次粒子を作製する工程において、ワックス微粒子の粒径よりも、できあがった重合体一次粒子の粒径の方が小さい場合がしばしばある。これは、乳化重合の工程において、ワックス微粒子中のワックス(分子)が、モノマーと共に水中へ拡散するため、ワックス微粒子が次第に小さくなっていき、最終的にはミセルの数に応じてワックスを含有した重合体一次粒子の粒径が制御されているものと推定している。
【0025】
本発明では、重合体一次粒子を得る際に顔料をワックスと同時にシードとして用いたり、着色剤をモノマー又はワックスに溶解又は分散させて用いたりしても構わないが、重合体一次粒子と同時に着色剤一次粒子を凝集させて会合粒子を形成し、トナーとすることが好ましい。この時、ワックスを内包化した重合体一次粒子を用いるが、必要に応じて2種類以上の重合体一次粒子を用いても良い。また、ここで用いられる着色剤としては、無機顔料又は有機顔料、有機染料のいずれでも良く、またはこれらの組み合わせでもよい。これらの具体的な例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染顔料など、公知の任意の染顔料を単独あるいは混合して用いることができる。フルカラートナーの場合にはイエローはベンジジンイエロー、モノアゾ系、縮合アゾ系染顔料、マゼンタはキナクリドン、モノアゾ系染顔料、シアンはフタロシアニンブルーをそれぞれ用いるのが好ましい。着色剤は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して3〜20重量部となるように用いられる。
【0026】
これらの着色剤も乳化剤の存在下で水中に乳化させエマルションの状態で用いるが、平均粒径としては、0.01〜3μm、好ましくは0.1〜1μmのものを用いる。
帯電制御剤としては、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができる。カラートナー適応性(帯電制御剤自体が無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正荷電性としては4級アンモニウム塩化合物が、負荷電性としてはサリチル酸もしくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩、金属錯体や、ベンジル酸の金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物、4,4’−メチレンビス〔2−〔N−(4−クロロフェニル)アミド〕−3−ヒドロキシナフタレン〕等のヒドロキシナフタレン化合物等が好ましい。その使用量はトナーに所望の帯電量により決定すればよいが、通常はバインダー樹脂100重量部に対し0.01〜10重量部用い、更に好ましくは0.1〜10重量部用いる。
【0027】
本発明では、重合体一次粒子を得る際に、帯電制御剤をワックスと同時にシードとして用いたり、帯電制御剤をモノマー又はワックスに溶解又は分散させて用いても構わないが、重合体一次粒子と同時に帯電制御剤一次粒子を凝集させて会合粒子を形成し、トナーとすることが好ましい。この場合、帯電制御剤も水中で平均粒径0.01〜3μm、好ましくは0.1〜1μmのエマルションとして使用する。添加する時期は、重合体一次粒子と着色剤一次粒子を凝集させる工程で同時に添加して凝集させてもよいし、これらの一次粒子が会合して粒子凝集体が生成した段階で加えてもよいし、さらには粒径が最終的なトナーの粒径まで粒子凝集体が成長した後に添加してもよい。
【0028】
本発明のトナーを製造するに当たっては、凝集粒子の粒径が実質的に最終的なトナーの粒径まで成長した後に、更に同種又は異なった種類のバインダー樹脂エマルションを添加し、粒子を表面に付着させることにより、表面近傍のトナー性状を修飾する事も可能である。
また、本発明のトナーは、必要により流動化剤等の添加剤と共にもちいることができ、そのような流動化剤としては、具体的には、疎水性シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の微粉末を挙げることができ、通常、バインダー樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部用いられる。
本発明のトナーは乳化重合/凝集法により製造されるため、粒度分布がシャープなものとなるが、画像の高解像度を達成するには、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1〜1.3であることが好ましく、1〜1.25であることが更に好ましく、1〜1.2であることが特に好ましい。
【0029】
さらに、本発明のトナーは、マグネタイト、フェライト、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、導電性チタニア等の無機微粉末やスチレン樹脂、アクリル樹脂等の抵抗調節剤や滑剤などが内添剤又は外添剤として用いられる。これらの添加剤の使用量は所望する性能により適宜選定すれば良く、通常バインダー樹脂100重量部に対し0.05〜10重量部程度が好適である。
【0030】
本発明の静電荷像現像用トナーは2成分系現像剤又は非磁性1成分系現像剤のいずれの形態で用いてもよい。2成分系現像剤として用いる場合、キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉等の磁性物質またはそれらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性キャリア等公知のものを用いることができる。樹脂コーティングキャリアの被覆樹脂としては一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、またはこれらの混合物等が利用できる。
【0031】
【実施例】
以下の例で「部」とあるのは「重量部」を意味する。また、重合体粒子の平均粒径及び分子量は、それぞれ下記の方法により測定した。
平均粒径:マイクロトラック社製、UPA、またはコールター社製、サブミクロン粒子アナライザーN4S(コールターカウンターと略)によって測定した。重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。(溶媒:THF、検量線:標準ポリスチレン)
得られたトナーは定着試験を下記の方法により実施した。
【0032】
未定着のトナー像を担持した記録紙を用意し、加熱ローラの表面温度を100℃から220℃まで変化させ、定着ニップ部(ニップ幅4mmおよび31mm)に搬送し、排出されたときの定着状態を観察した。定着時に加熱ローラにトナーのオフセットが生じず、定着御の記録紙上のトナーが十分に記録紙に接着している温度領域を定着温度領域とする。このオフセットが生じない定着温度の下限温度をTL、上限温度をTUとしたとき、TU−TLをその定着温度幅とした。定着機の加熱ローラは、離型層がPFA(テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)でできており、シリコンオイルの塗布なしに、ニップ幅は4mmと31mmで評価した。
【0033】
OHP透過性:上記定着ローラを用い、OHPシート状の未定着のトナー像を、シリコンオイルの塗布なしで定着させ、分光光度計(日立製作所社製 U−3210)で、400〜700nmの波長範囲で透過率を測定し、最も透過率の高かった波長における透過率(最大透過率(%))と最も透過率の低かった波長における透過率(最小透過率(%))の差(最大透過率−最小透過率)値として用いた。
【0034】
[実施例−1]
(ワックス分散液−1)
脱塩水68.33部、モンタン酸グリセライド30部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル5部を混合し、90℃で高圧剪断をかけ乳化し、エステルワックスの分散液を得た。LA−500(堀場製作所製、レーザー回折式粒度分布測定装置)で測定した平均粒径は900nmであった。
(重合体一次粒子分散液−1)攪拌装置(3枚後退翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(容積3リットル、内径150mm)にワックス分散液−1 35部、脱塩水393部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温して、8%過酸化水素水溶液1.6部、8%アスコルビン酸水溶液1.6部を添加した。その後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
【0035】
【表1】
[モノマー類]
スチレン 79部
アクリル酸ブチル 21部
アクリル酸 3部
ブロモトリクロロメタン 0.5部
2−メルカプトエタノール 0.01部
ジビニルベンゼン 0.2部
[乳化剤水溶液]
15%ネオゲンSC水溶液 1部
脱塩水 25部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 10.5部
8%アスコルビン酸水溶液 10.5部
【0036】
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体分散液を得た。重合体のTHF可溶分の重量平均分子量は160,000、UPAで測定した平均粒子径は280nm、Tgは55℃であった。
(着色剤微粒子分散液−1)
ピグメントブルー15:3の水分散液(EP−700 Blue GA、大日精化製、固形分35%)UPAで測定した平均粒径は150nmであった。
(帯電制御剤微粒子分散液−1)
ボロントンE−82 5部、アルキルナフタレンスルホン酸塩4部、脱塩水76部をサンドグラインダーミルにて分散し、帯電制御剤微粒子分散液を得た。UPAで測定した平均粒径は200nmであった。
【0037】
【表2】
現像用トナーの製造−1
重合体一次粒子分散液−1 120部(固形分として)
着色剤微粒子分散液−1 7部(固形分として)
帯電制御剤微粒子分散液−1 5部(固形分として)
15%ネオゲンSC水溶液 0.5部(固形分として)
【0038】
上記の各成分を用いて、以下の手順によりトナーを製造した。
反応器(容積1リットル、バッフル付きアンカー翼)に重合体一次粒子分散液と15%ネオゲンSC水溶液を仕込み、均一に混合してから着色剤微粒子分散液を添加し、均一に混合した。得られた混合分散液を撹拌しながら硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(固形分として0.5部)。その後撹拌しながら25分かけて50℃に昇温して1時間保持し、さらに40分かけて61℃に昇温して10分保持した。帯電制御剤微粒子分散液、硫酸アルミニウム水溶液(固形分として0.1部)の順に添加し、10分かけて63℃に昇温して30分保持した。15%ネオゲンSC水溶液(固形分として3部)を添加してから25分かけて96℃に昇温して1時間保持した。その後冷却し、濾過、水洗し、乾燥することによりトナー(トナー−1)を得た。
このトナー100部に対し、疎水性の表面処理をしたシリカを0.6部混合撹拌し、現像用トナー(現像用トナー−1)を得た。
【0039】
トナーの評価−1
現像用トナー−1のコールターカウンターによる体積平均粒径は8.8μm、体積平均粒径と数平均粒径の比は1.11であった。50%円形度は0.96であった。トナー−1の帯電量は−5μ C/g、現像用トナー−1の帯電量は−17μ C/gだった。現像用トナー−1のOHP透明性は65%であった。
【0040】
[実施例−2]
(ワックス分散液−2)脱塩水68.33部、モンタン酸グリセライドとベヘン酸ベヘニル(ユニスターM2222SL、日本油脂製)との50対50の混合物30部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル5部を混合し、90℃で高圧剪断をかけ乳化し、エステルワックスの分散液を得た。LA−500(堀場製作所製、レーザー回折式粒度分布測定装置)で測定した平均粒径は900nmであった。
(重合体一次粒子分散液−2)攪拌装置(3枚後退翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(容積3リットル、内径150mm)にワックス分散液−2 35部、脱塩水393部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温して、8%過酸化水素水溶液1.6部、8%アスコルビン酸水溶液1.6部を添加した。その後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
【0041】
【表3】
[モノマー類]
スチレン 79部
アクリル酸ブチル 21部
アクリル酸 3部
ブロモトリクロロメタン 0.5部
2−メルカプトエタノール 0.01部
ジビニルベンゼン 0.2部
[乳化剤水溶液]
15%ネオゲンSC水溶液 1部
脱塩水 25部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 10.5部
8%アスコルビン酸水溶液 10.5部
【0042】
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体分散液を得た。重合体のTHF可溶分の重量平均分子量は160,000、UPAで測定した平均粒子径は280nm、Tgは55℃であった。
(着色剤微粒子分散液−2)
着色剤微粒子分散液−1と同じ物を使用した。
(帯電制御剤微粒子分散液−2)
帯電制御剤微粒子分散液−1と同じ物を使用した。
【0043】
【表4】
現像用トナーの製造−2
重合体一次粒子分散液−2 120部(固形分として)
着色剤微粒子分散液−1 7部(固形分として)
帯電制御剤微粒子分散液−1 5部(固形分として)
15%ネオゲンSC水溶液 0.5部(固形分として)
【0044】
上記の各成分を用いて、以下の手順によりトナーを製造した。
反応器(容積1リットル、バッフル付きアンカー翼)に重合体一次粒子分散液と15%ネオゲンSC水溶液を仕込み、均一に混合してから着色剤微粒子分散液を添加し、均一に混合した。得られた混合分散液を撹拌しながら硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(固形分として0.5部)。その後撹拌しながら25分かけて50℃に昇温して1時間保持し、さらに40分かけて61℃に昇温して10分保持した。帯電制御剤微粒子分散液、硫酸アルミニウム水溶液(固形分として0.1部)の順に添加し、10分かけて63℃に昇温して30分保持した。15%ネオゲンSC水溶液(固形分として3部)を添加してから25分かけて96℃に昇温して1時間保持した。その後冷却し、濾過、水洗し、乾燥することによりトナー(トナー−2)を得た。
このトナー100部に対し、疎水性の表面処理をしたシリカを0.6部混合撹拌し、現像用トナー(現像用トナー−2)を得た。
【0045】
トナーの評価−2
現像用トナーのコールターカウンターによる体積平均粒径は8.8μm、体積平均粒径と数平均粒径の比は1.11であった。50%円形度は0.96であった。トナー−2の帯電量は−3μ C/g、現像用トナー−2の帯電量は−15μ C/gだった。現像用トナー−2のOHP透明性は70%であった。
【0046】
[実施例3]
<重合体一次粒子の製造>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えたガラス製反応器にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、脱塩水400部、及びワックス分散液−2 10部仕込み、窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、下記のモノマー類、開始剤を添加し、7時間乳化重合を行った。
【0047】
【表5】
(モノマー類)
スチレン 79部
アクリル酸ブチル 21部
アクリル酸 3部
トリクロロブロモメタン 1部
(架橋剤)
ジビニルベンゼン 0.2部
(開始剤)
8%過酸化水素水溶液 10.5部
8%アスコルビン酸水溶液 10.5部
【0048】
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子エマルションを得た。(重合体一次粒子分散液−3)
得られたエマルションの平均粒子径は300nm、重合体の重量平均分子量は160000であった。
(着色剤微粒子分散液−3)
着色剤微粒子分散液−1と同じ物を使用した。
(帯電制御剤微粒子分散液−3)
帯電制御剤微粒子分散液−1と同じ物を使用した。
【0049】
【表6】
現像用トナーの製造−3
重合体一次粒子分散液−3 120部(固形分として)
着色剤微粒子分散液−1 7部(固形分として)
帯電制御剤微粒子分散液−1 5部(固形分として)
【0050】
以上の混合物をディスパーザーで分散攪拌しながら30〜40℃に2時間保持した。その後、更に攪拌しながら70℃に昇温して3時間保持し、更に会合粒子の結合強度を上げるため、95℃に昇温して3時間保持した。その後得られた会合粒子のスラリーを冷却し、桐山ロートで濾過、水洗し、45℃の送風乾燥機で10時間乾燥することによりトナーが得られた。このようにして得られるトナーは、広い温度範囲でオフセットのない鮮明な画像が得られ、高いOHP透明性を示した。
[比較例1]
ワックスエマルジョンとして、モンタン酸グリセライドとベヘン酸ベヘニルの混合物をノニオン系界面活性剤で乳化したエマルション(粒径200nm)を使用して樹脂エマルジョン(樹脂エマルジョンCと呼ぶ)を製造する以外は実施例1と同様にして、樹脂エマルジョン、トナー粒子を製造する。
このようにして得られるトナーは、非オフセット領域が狭くなり安定した定着性が得られにくい。
【0051】
以上のようにして得られたトナーをCASIO社製Color PageprestoN4−612IIに搭載しOHP及び普通紙にて画像形成を行った。
定着温度幅の評価は、上記の装置にて現像工程まで行い、未定着のトナー像を担持した記録紙を取り出し、次に、別に用意した定着装置にて加熱ローラの表面温度を100℃から220℃まで変化させ、定着ニップ部に搬送し、排出されたときの定着状態を観察した。加熱ローラは、離型層がPFA(テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)でできており、シリコンオイルの塗布なしで評価した。
定着時に加熱ローラにトナーのオフセットが生じず、定着後の記録紙上のトナーが十分に記録紙に接着している温度領域を定着温度幅とする。定着装置の加熱ローラは35mmφ、プロセススピード120mm/s、ニップ幅は4mmと31mmの2通りで評価した。結果を第1表に示す。
【0052】
【表7】
【0053】
【発明の効果】
本発明により定着温度幅の大きいトナーを提供することができる。また、本発明のトナーは、高解像度用のプリンター、複写機等に適用することができる。
Claims (7)
- 体積平均粒径が0.3〜1.5μmのワックス微粒子の存在下にモノマー混合物を乳化重合して重合体一次粒子を作製する工程、及び、少なくとも該重合体一次粒子及び着色剤微粒子を凝集して体積平均粒径3〜10μmの粒子凝集体とする工程を経ることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 体積平均粒径が0.3〜1.5μmのワックス微粒子の存在下にモノマー混合物を乳化重合して重合体一次粒子を作製する工程、及び、少なくとも該重合体一次粒子、着色剤微粒子及び帯電制御剤微粒子を凝集して体積平均粒径3〜10μmの粒子凝集体とする工程を経ることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 重合体一次粒子の体積平均粒径が0.05〜1μmである請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- モノマー混合物が、ブレンステッド酸性基を有する化合物を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 重合体一次粒子が、ワックスを3〜40%含有する請求項1乃至4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 少なくとも重合体一次粒子及び着色剤微粒子を凝集して粒子凝集体とする工程を経て得られる静電荷像現像用トナーにおいて、重合体一次粒子が、体積平均粒径0.3〜1.5μmのワックス微粒子の存在下にモノマー混合物を乳化重合して得られたものである静電荷像現像用トナー。
- トナーの体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1〜1.3である請求項6に記載の静電荷像現像用トナー。
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