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JP3872283B2 - ガラスセラミック基板の製造方法 - Google Patents

ガラスセラミック基板の製造方法 Download PDF

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JP3872283B2
JP3872283B2 JP2000358324A JP2000358324A JP3872283B2 JP 3872283 B2 JP3872283 B2 JP 3872283B2 JP 2000358324 A JP2000358324 A JP 2000358324A JP 2000358324 A JP2000358324 A JP 2000358324A JP 3872283 B2 JP3872283 B2 JP 3872283B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体LSI、チップ部品等を搭載し、それらを相互配線するための多層ガラスセラミック基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体LSI、チップ部品等は小型化、軽量化が進んでおり、これらを実装する配線基板も小型化、軽量化が望まれている。このような要求に対して、基板内に内部電極等を配した多層セラミック基板は、要求される高密度配線が可能となり、かつ薄型化が可能なことから、今日のエレクトロニクス業界において重要視されている。
【0003】
多層セラミック基板としては、アルミナ質焼結体からなり、表面または内部にタングステン、モリブデン等の高融点金属からなる配線層が形成された絶縁基板が従来より広く用いられている。
【0004】
一方、近年の高度情報化時代を迎え、使用される周波数帯域はますます高周波化に移行しつつある。このような高周波の信号の伝送を行なう高周波配線基板においては、高周波信号を高速で伝送する上で、配線層を形成する導体の抵抗が小さいことが要求され、絶縁基板にもより低い誘電率が要求される。
【0005】
しかし、従来のタングステン(W)、モリブデン(Mo)等の高融点金属は導体抵抗が大きく、信号の伝播速度が遅く、また30GHz以上の高周波領域の信号伝播も困難であることから、タングステン、モリブデン等の金属に代えて銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等の低抵抗金属を使用することが必要である。ところが、上記のような低抵抗金属は融点が低いため、800〜1100℃程度の低温で焼成することが必要であることから、該低抵抗金属からなる配線層は、高温焼成が必要なアルミナと同時焼成することができなかった。また、アルミナ基板は誘電率が高いため、高周波回路基板には不適切である。
【0006】
このため、最近では、ガラスとセラミックス(無機質フィラー)との混合物を焼成して得られるガラスセラミックスを絶縁基板として用いることが注目されている。すなわち、ガラスセラミックスは誘電率が低いため高周波用絶縁基板として好適であり、またガラスセラミックスは800〜1100℃の低温で焼成することができることから、銅、銀、金等の低抵抗金属を配線層として使用できるという利点がある。
【0007】
多層ガラスセラミック基板は、ガラスとフィラーとの混合物に有機バインダー、可塑剤、溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりガラスセラミック・グリーンシートを成形した後、銅、銀、金等の低抵抗金属の粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどして前記グリーンシート上に導体パターンを形成し、次いで複数枚のグリーンシートを積層して800〜1100℃の温度で焼成して得られる。
【0008】
ところが、多層ガラスセラミック基板は、焼成過程において焼結に伴う収縮を生じるという問題がある。このような収縮の程度は一様ではなく、使用する基板用無機材料、グリーンシート組成、原料である粉体粒度のバラツキ、導体パターン、内部電極材料等により収縮率や収縮方向が異なってくる。このことは、多層ガラスセラミック基板の作製において、いくつかの問題をひき起こす。
【0009】
先ず、内部電極印刷用のスクリーン版を作製する際、基板の収縮率から逆算してスクリーン版の大きさを決定しなければならないが、上記のように基板の収縮率や収縮方向は一定でないため、スクリーン版は基板の製造ロット毎に作り直さなければならず不経済であり現実的ではない。さらに、上記のようなグリーンシート積層法によって作製される多層ガラスセラミック基板では、グリーンシートの造膜方向によって積層面内の縦方向と横方向の収縮率が異なるため、多層ガラスセラミック基板の作製がより一層困難なものになる。
【0010】
これに対して、収縮誤差を許容するように必要以上に大きい面積の電極を形成する場合には、高密度な配線ができなくなる。
【0011】
また、多層ガラスセラミック基板のサイズは多種多様であるが、携帯電話等の小型化、軽量化の進む製品に用いられる配線基板等は基板の一辺が10mm程度のものがある。このような小さな基板を製造する場合は、多数個の配線基板の導体パターンが縦横に格子状に配列されて形成されたグリーンシートを積層し、その積層体の片面または両面にカッター刃や金型で個々の配線基板に分割できるように格子状の分割溝を形成し、焼成後にその溝に沿って分割することにより所定の大きさ、形状のセラミックス基板を多数個得る、いわゆる多数個取りの手法が採用されている。これは、多数個取りの手法により多数の小型セラミック基板が効率よく得られ、また分割する前の多数個取り基板のままでその上にチップ部品等を実装することにより実装効率も良くなるというメリットがあるためである。
【0012】
このような多数個取り基板においては、上述したような基板内の不均一な収縮が生じることにより、分割溝間の寸法バラツキつまり個々の配線基板の寸法バラツキの問題と、分割せずに多数個取り基板のままでチップ部品等を実装する際の実装位置ズレの問題をもたらすこととなる。
【0013】
これらの収縮変化を小さくするためには、回路設計による基板の収縮率の傾向を調べたり、製造工程において基板材料およびグリーンシート組成の管理、粉体粒度のバラツキ、プレス圧や温度等の積層条件を充分管理する必要がある。しかし、一般に収縮率の誤差は±0.5%程度は存在するといわれている。
【0014】
このことは多層ガラスセラミック基板にかかわらずセラミックスやガラスセラミックス等の焼結に伴うものに共通する課題である。このような課題を解決するために、特開平4−243978号公報、特開平5−28867号公報、特開平5−102666号公報では、以下の(1)〜(4)の工程を含む基板の製造方法が提案されている。
【0015】
(1)ガラスセラミック成分とバインダー、可塑剤等の有機成分とを含むガラスセラミック・グリーンシートに導体パターンを形成したものを所望枚数積層し、
(2)得られたガラスセラミック・グリーンシートの積層体の両面または片面に、前記ガラスセラミック成分の焼成温度では焼結しない無機材料とバインダー、可塑剤等の有機成分とを含む拘束グリーンシートを積層し、
(3)これらガラスセラミック・グリーンシートの積層体と拘束グリーンシーとの積層体を加熱して、まず有機成分を除去し、次いで焼成して、それぞれガラスセラミック基板および拘束シートとなし、
(4)最後に、ガラスセラミック基板から拘束シートを除去する。
【0016】
この方法によれば、前記拘束グリーンシートがガラスセラミック・グリーンシートの焼成時の収縮を拘束するため、積層体の厚さ方向のみに収縮が起こり、積層面の縦・横方向には収縮が起こらなくなり、ガラスセラミック基板の寸法精度が向上すると考えられている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法では、ガラスセラミック・グリーンシートと拘束グリーンシートとの結合は、それらのグリーンシート内に含有されているバインダー等の有機成分により行われる。しかし、(3)の焼成工程において、バインダー、可塑剤等の有機成分が分解し揮散した後は、拘束グリーンシート中の粉体とガラスセラミック・グリーンシート中の粉体とが単に密着して接触しているだけであり、それらのシート間にはファンデルワールス力による弱い結合が働いているだけである。
【0018】
このような弱い結合は、(4)の工程における拘束シートの除去が簡単になるという利点があるものの、(3)の焼成工程でガラスセラミック・グリーンシート積層体から拘束グリーンシートがそれらの熱膨張差等により不用意に剥離するおそれがある。
【0019】
焼成途中で拘束グリーンシートが剥離すると、ガラスセラミック・グリーンシートの焼結収縮を防止できなくなる。また、拘束グリーンシートの剥離がたとえ一部であっても、当該部分において収縮が起こるためガラスセラミック基板の変形が発生することになる。
【0020】
また、ガラスセラミック・グリーンシート積層体と拘束グリーンシートとは結合力が小さいため、焼成前のそれらの密着状態や、ガラスセラミック成分の種類によるガラスセラミック・グリーンシート中のガラス成分の拘束グリーンシート内への浸透性によってはそれらの結合力にムラが生じやすい。結合力にムラがあると、ガラスセラミックの焼結収縮を拘束する力にムラができ、収縮ムラが起こり、ガラスセラミック基板の反り、変形等が発生することになる。その結果、寸法精度の高い基板が得られないという問題がある。
【0021】
さらに、多数個取り基板の場合は、分割溝の部分で拘束シートの剥離が生じるとその部分が溝の部分以外より更に変形しやすくなるという問題がある。これは溝の部分以外での小さな剥離の場合は、剥離部の全周囲が拘束されるために剥離部も収縮が抑えられるのに対して、溝の部分にかかる剥離の場合は剥離部の周囲のうち溝の部分は拘束されないために収縮が抑えられずに変形し、その変形によりさらに剥離部の周辺も剥離してしまうためであると考えられる。
【0022】
本発明の目的は、ガラスセラミック・グリーンシートの積層面内での焼結収縮を確実に拘束して、寸法精度の高い多数個の配線基板を効率よく作製できるガラスセラミック基板を得る方法を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(I)拘束グリーンシートとガラスセラミック・グリーンシートとの間にガラス成分を含有させた密着剤層を介在させておくと、そのガラス成分が焼成過程でガラスセラミック・グリーンシートと拘束グリーンシートとを結合する結合材として作用するため、それらの間の結合力が高まり、拘束グリーンシートが剥離するのを防止できること、(II)密着剤層中のガラス成分の含有量は焼成後に拘束シートとともにガラスセラミック基板から除去される量であること、その結果、(III)拘束グリーンシートによりガラスセラミック・グリーンシート積層体の収縮が確実に抑えられ、分割溝の形成された多数個取り基板においても寸法精度の高いガラスセラミック基板を得ることができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに到った。
【0024】
すなわち、本発明のガラスセラミック基板の製造方法は、(i)有機バインダーを含有し表面に多数個の基板領域を配列形成するように導体パターンが形成されたガラスセラミック・グリーンシートの複数枚を積層してガラスセラミック・グリーンシート積層体を作製する工程と、(ii)前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体の少なくとも一方の表面に前記多数個の基板領域を個々に分割するための溝を形成する工程と、(iii)難焼結性無機材料と有機バインダーとを含む拘束グリーンシートにガラスと溶剤とを含む密着剤を塗布する工程と、( iv 前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に、前記拘束グリーンシートと前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体との間に前記塗布したガラスと溶剤とを含む密着剤層を設けて、前記密着剤を塗布した拘束グリーンシートを積層する工程と、(v)前記拘束グリーンシートとガラスセラミック・グリーンシート積層体との積層体から有機成分を除去し、次いで焼成して拘束シートを保持したガラスセラミック基板を作製する工程と、(vi)前記ガラスセラミック基板から拘束シートを除去する工程とを含み、(vii)前記密着剤中のガラス含有量が、前記密着剤成分のうち5〜 50 重量%であり、前記密着剤中に含有されるガラスの軟化点が、前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体の焼成温度以下であることを特徴とする。
【0025】
本発明において、前記密着剤中に含有されるガラスの軟化点は、前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体の焼成温度以下であるのがよい。これにより、焼成工程で拘束グリーンシート中のガラスが軟化し、結合力が高まる。
【0026】
また、前記密着剤中に含有されるガラスの軟化点は、前記有機成分の除去温度よりも高いのがよい。前記ガラスの軟化点が有機成分の除去温度よりも低い場合には、分解・揮散した有機成分が通過するための除去経路が軟化したガラスによって閉塞されてしまうおそれがある。
【0027】
前記密着剤中のガラス含有量は、密着剤成分のうち5〜50重量%であるのがよい。通常はこの範囲が積層時に前記ガラスセラミック・グリーンシートと拘束グリーンシートの密着性を損なわず、焼成時に前記ガラスセラミック・グリーンシートと結合しかつ焼成後に拘束シートとともにガラスセラミック基板から除去される量となる。5重量%より少ない場合は焼成時に結合剤として働くガラス量が少ないために拘束シートとガラスセラミック・グリーンシートの結合が不十分となる。50重量%より多い場合はガラス量が多いために積層時に拘束グリーンシートとガラスセラミック・グリーンシートが密着する面積が小さくなり焼成前の密着性が悪くなるおそれがある。また、焼成後に拘束シートを除去する際にはガラスセラミック基板上に強固なガラス層が形成されるために拘束シートの除去が困難になる
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明のガラスセラミック基板の製造方法について以下に詳細に説明する。
【0029】
本発明におけるガラスセラミック・グリーンシートは、ガラス粉末、フィラー粉末(セラミック粉末)、さらに有機バインダー、可塑剤、有機溶剤等を混合したものが用いられる。
【0030】
ガラス成分としては、例えばSiO2−B23系、SiO2−B23−Al23系、SiO2−B23−Al23−MO系(但し、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)、SiO2−Al23−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)、SiO2−B23−Al23−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである)、SiO2−B23−M3 2O系(但し、M3はLi、NaまたはKを示す)、SiO2−B23−Al23−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである)、Pb系ガラス、Bi系ガラス等が挙げられる。
【0031】
また、前記フィラーとしては、例えばAl23、SiO2、ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、Al23およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル、ムライト、コージェライト)等が挙げられる。
【0032】
上記ガラスとフィラーの混合割合は通常のガラスセラミック基板材料に用いられる割合であり、重量比で40:60〜99:1であるのが好ましい。
【0033】
ガラスセラミック・グリーンシートに配合される有機バインダーとしては、従来よりセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等)、ポリビニルブチラ−ル系、ポリビニルアルコール系、アクリル−スチレン系、ポリプロピレンカーボネート系、セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0034】
ガラスセラミック・グリーンシートは、上記ガラス粉末、フィラー粉末、有機バインダーに必要に応じて所定量の可塑剤、溶剤(有機溶剤、水等)を加えてスラリーを得、これをドクターブレード、圧延、カレンダーロール、金型プレス等により厚さ約50〜500μmに成形することによって得られる。
【0035】
ガラスセラミック・グリーンシート表面に導体パターンを形成するには、例えば導体材料粉末をペースト化したものをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により印刷するか、あるいは所定パターン形状の金属箔を転写する等の方法が挙げられる。導体材料としては、例えばAu、Ag、Cu、Pd(パラジウム)、Pt(白金)等の1種または2種以上が挙げられ、2種以上の場合は混合、合金、コーティング等のいずれの形態であってもよい。
【0036】
なお、表面の導体パターンには、上下の層間の導体パターン同士を接続するためのビア導体やスルーホール導体等の貫通導体が表面に露出した部分も含まれる。これら貫通導体は、パンチング加工等によりガラスセラミック・グリーンシートに形成した貫通孔に、導体材料粉末をペースト化したもの(導体ペースト)を印刷により埋め込む等の手段によって形成される。
【0037】
ガラスセラミック・グリーンシートの積層には、積み重ねたグリーンシートに熱と圧力を加えて熱圧着する方法、有機バインダー、可塑剤、溶剤等からなる接着剤をシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。
【0038】
次いで、ガラスセラミック・グリーンシート積層体表面の多数個の各基板領域の境界に、これら基板領域を個々に分割するための溝(分割溝)を形成する。また、多数個の基板領域の外周と捨て代との間にも同様の溝を形成する。なお、積層体の両面に溝を形成する場合は両面の溝の位置を合わせることはいうまでもない。これらの溝は、カッター刃等の溝形成手段と各基板領域との位置合わせを行なってから形成される。この位置合わせは導体パターン形成時に同時に形成された分割位置を示す印に合わせることにより容易になる。
【0039】
ガラスセラミック・グリーンシート積層体の表面に、多数個の基板領域を個々に分割するための溝を形成する方法は、従来から用いられている、一方または両方の表面にカッター刃や金型等の溝形成手段で格子状その他の所望パターンの溝を形成する方法等が採用可能である。溝の深さは、焼成後のガラスセラミック基板の分割のしやすさにより異なるが、通常は一方の表面側で積層体の厚みの5分の1から2分の1程度の深さとなるように形成する。溝の幅は、確実に分割可能となり、分割後にバリやクラックが発生せず寸法精度に影響を与えないような範囲の大きさに適宜設定すればよい。
【0040】
本発明における拘束グリーンシートは、難焼結性無機材料からなる無機成分に有機バインダー、可塑剤、溶剤等を加えたスラリーを成形して得られる。難焼結性無機材料としては、Al23およびSiO2から選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0041】
また、拘束グリーンシート中に密着剤層と同じガラス成分を含有させて拘束グリーンシートとガラスセラミック・グリーンシートの結合力をより高めるようにしてもよい。その場合のガラス成分の量は、焼成時に拘束グリーンシートをその積層面内で実質的に収縮させない量であるのがよい。
【0042】
ガラスセラミック・グリーンシートの両面に積層される拘束グリーンシートの厚さは、片面だけでガラスセラミック・グリーンシート積層体の厚さに対して10%以上であるのが好ましく、これよりも薄いと拘束グリーンシートの拘束性が低下するおそれがある。また、有機成分の揮散を容易にしかつガラスセラミック基板からの拘束シートの除去を考慮すると、拘束グリーンシートの厚さはガラスセラミック・グリーンシート積層体の厚さの約200%以下であるのがよい。また、積層される拘束シートは1枚のものであってもよく、あるいは所定の厚みになるように複数枚を積層したものであってもよい。
【0043】
拘束グリーンシートは、ガラスセラミック・グリーンシートの作製と同様にして、有機バインダー、可塑剤、溶剤等を用いて成形することによって得られる。有機バインダー、可塑剤および溶剤としては、ガラスセラミック・グリーンシートで使用したのと同様な材料が使用可能である。ここで、可塑剤を添加するのは、拘束グリーンシートに可撓性を付与し、積層時にガラスセラミック・グリーンシートとの密着性を高めるためである。
【0044】
密着剤層形成用の密着剤は、ガラス粉末、有機溶剤等を混合したものが用いられる。さらに、有機バインダー成分を含有させて焼成前のグリーンシート間の結合力を高めたり、塗布しやすい粘度に調整したりすることもできる。また、分散剤等を添加して密着剤中のガラスの分散性を良くすることもできる。
【0045】
密着剤中のガラスについても、特に制限されるものではなく、前記したガラスセラミック・グリーンシートに配合されるガラスと同様のものが使用可能である。また、密着剤中のガラスは、ガラスセラミック・グリーンシート中のガラスと同一組成のものであってもよく、異なる組成のものであってもよい。
【0046】
密着剤中のガラスの軟化点は、ガラスセラミック・グリーンシート積層体の焼成温度以下で、かつグリーンシート中の有機成分の分解・揮散温度よりも高いのが好ましい。具体的には、密着剤中のガラスの軟化点は450〜1100℃程度であるのが好ましい。ガラスの軟化点が450℃未満の場合には、ガラスセラミック・グリーンシートからの有機成分の除去時に、軟化したガラスが分解・揮散した有機成分の除去経路を塞ぐことになり有機成分を完全に除去できないおそれがある。一方、ガラスの軟化点が1100℃を超える場合には、通常のガラスセラミック・グリーンシートの焼成条件では該グリーンシートへの結合材として作用しなくなるおそれがある。
【0047】
密着剤中のガラスの粒径は10μm以下であることが望ましい。これより大きいと、グリーンシート積層時にガラス粒子がガラスセラミック・グリーンシート上の導体パターンに食い込むことがあり、それにより焼成後の導体の表面粗さが大きくなったり、導体中に欠陥が発生したりするおそれがあるからである。なお、拘束グリーンシートが導体パターンより軟らかく、ガラスが拘束グリーンシートの方に食い込む場合はこのような制限を受けるものではない。
【0048】
密着剤中の溶剤はガラスを均一に分散させ、グリーンシート間の結合性を阻害しないものであれば特に制限されるものではない。また、複数の溶剤を混合して用いることもできる。グリーンシートに可撓性を付与したり、グリーンシート表面を膨潤させたり、溶解させたりしてグリーンシート間の結合力を高めるようなものを用いるとよいが、具体的にはジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)、フタル酸ジ−n−ブチル(dibutyl phthalate:DBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(di-sec-octyl phthalate:DOP)、テルピネオール、トルエン、酢酸ブチル、酢酸エチル等が挙げられるが、グリーンシートにより適当な溶剤として異なるものを使用してもよい。
【0049】
成形された拘束グリーンシートをガラスセラミック・グリーンシートの両面に積層するには、密着剤層をシート間に形成して例えば圧着する方法を採用する。例えば、密着剤をスクリーン印刷で拘束グリーンシートに塗布し、ガラスセラミック・グリーンシート積層体に積層して熱圧着する方法である。
【0050】
積層された拘束グリーンシートはガラスセラミック・グリーンシート積層体の表面に形成された溝に対して入り込んでも、入り込まなくてもよい。拘束グリーンシートが軟らかい場合は入り込みやすくなり、入り込んだ拘束グリーンシートにより溝の保形性が高まるという効果が期待できる。しかし、入り込まない場合でも、本発明の拘束グリーンシートは含有しているガラス成分によりガラスセラミック・グリーンシート積層体の溝の周辺の表面との結合力が高いため、溝の保形性は十分に確保できる。
【0051】
拘束グリーンシートを積層してなる積層体を作製した後、有機成分の除去と焼成を行なう。有機成分の除去は100〜800℃の温度範囲でこの積層体を加熱することによって行ない、有機成分を分解・揮散させる。また、焼成温度はガラスセラミック組成により異なるが、通常は約800〜1100℃の範囲内である。焼成は通常、大気中で行なうが、導体材料にCuを使用する場合には100〜700℃の水蒸気を含む窒素雰囲気中で有機成分の除去を行ない、次いで窒素雰囲気中で焼成を行なう。
【0052】
また、焼成時には、特に積層体のコーナー部分における反りを防止するために、積層体上面に重しを載せる等して荷重をかけてもよい。荷重は50Pa〜1MPa程度が適当である。荷重が50Pa未満である場合は、積層体のコーナー部分に対する反り抑制作用が充分でないおそれがある。また、荷重が1MPaを超える場合は、使用する重しが大きくなるため焼成炉に入らなかったり、また焼成炉に入っても熱容量不足になり焼成できないなどの問題をひき起こすおそれがある。重しとしては、分解した有機成分の揮散を妨げないように、例えば多孔質のセラミックスや金属等を使用するのが好ましい。積層体の上面に多孔質の重しを置き、その上に非多孔質の重しを置いてもよい。
【0053】
焼成後、拘束シートを除去する。ここで、密着剤層は拘束シートとともに除去できる。除去方法としては、ガラスセラミック基板の表面に結合した拘束シートおよび密着剤層を除去できる方法であれば特に制限はなく、例えば超音波洗浄、研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
【0054】
得られた多層ガラスセラミック基板は、焼成時の収縮が拘束グリーンシートによって厚さ方向だけに抑えられているので、その積層面内の収縮をおよそ0.5%以下にも抑えることが可能となり、しかもガラスセラミック・グリーンシートは拘束グリーンシートによって全面にわたって均一にかつ確実に結合されているので、拘束グリーンシートの一部剥離等によって反りや変形が起こるのを防止することができる。
【0055】
そして、得られた多数個取りガラスセラミック基板を分割溝に沿って分割することにより、寸法バラツキの小さな個々の配線基板を得ることができる。また、分割前の多数個取り基板は反りや変形のない寸法精度の高い基板であるから、個々の配線基板にチップ部品等を搭載するための半田ペースト等の印刷や部品の搭載も多数個一括で可能となり、また基板寸法に合わせた複数枚の製版を用意する必要もない。このようにしてチップ部品が一括実装されたガラスセラミック基板を分割することにより、効率よく小型モジュール基板を作製することが可能となる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明の方法を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
ガラスセラミック成分として、SiO2−Al23−MgO−B23−ZnO系ガラス粉末60重量%、CaZrO3粉末20重量%、SrTiO3粉末17重量%およびAl23粉末3重量%を使用した。このガラスセラミック成分100重量部に有機バインダーとしてアクリル樹脂12重量部、フタル酸系可塑剤6重量部および溶剤としてトルエン30重量部を加え、ボールミル法により混合しスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ300μmのガラスセラミック・グリーンシートを成形した。
【0058】
次いで、このグリーンシート上に銀−パラジウムペーストを用いて導体パターンをスクリーン印刷にて形成した。導体パターンは15mm×12mmの配線基板が格子状に5×6個配列されたパターンを用いた。導体ペーストとしては、Ag:Pdが重量比で85:15である合金粉末(平均粒径1.0μm)100重量部に対してAl23粉末2重量部および前記ガラスと同組成のガラス粉末2重量部、さらにビヒクル成分として所定量のエチルセルロース系樹脂、テルピネオールを加え、3本ロールにより適度な粘度になるように混合したものを用いた。
【0059】
そして、表面に導体パターンを形成したガラスセラミック・グリーンシートの所定枚数を積み重ねてガラスセラミック・グリーンシート積層体を得た。その積層体の両面に金型により15mm×12mmの格子状の分割用溝を形成した。溝の深さは片側で積層体の4分の1の深さとした。
【0060】
一方、無機成分としてAl23粉末を用いて、ガラスセラミック・グリーンシートと同様にしてスラリーを作製し、次いで成形して厚さ250μmの拘束グリーンシートを得た。
【0061】
次いで、分割用溝の形成されたガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に密着剤を塗布した拘束グリーンシートを重ね合わせ、温度55℃、圧力20MPaで圧着して積層体を得た。
【0062】
密着剤は、軟化点720℃のSiO2−Al23−MgO−B23−ZnO系ガラス粉末25重量%とDBP39重量%、BCA31.2重量%、アクリル系バインダー4.8重量%を混合したものを用いた。
【0063】
得られた積層体をアルミナセッターに載置し、大気中500℃で2時間加熱して有機成分を除去した後、900℃で1時間焼成した。焼成後は、ガラスセラミック基板の両面に拘束シートが付着していた。この状態では、軽く叩いても拘束シートが剥がれることはなかった。
【0064】
ガラスセラミック基板の表面に付着した拘束シートは、擦り取ることにより大部分は除去できたが、ガラスセラミック基板表面に薄く残留していた。この残留した拘束シートを、球状Al23微粉末と水との混合物を高圧の空気圧で投射するウェットブラスト法により除去した。拘束シートを除去した後のガラスセラミック基板の表面は、表面粗さ(算術平均粗さ)Raが1μm以下の平滑な面となり、導体の半田濡れ性も問題なかった。
【0065】
また、得られたガラスセラミック基板の積層面内での収縮は0.5%以下であり、基板に反りや変形も認められなかった。
【0066】
(実施例2および実施例3)
軟化点が600℃および700℃のガラスをそれぞれ用いて密着剤を作製した以外は実施例1と同様にしてガラスセラミック基板を得た。
【0067】
(比較例1)
ガラスを含有しない密着剤を作製した以外は実施例1と同様にしてガラスセラミック基板を得た。
【0068】
(比較例2)
軟化点が920℃のガラスを用いて密着剤を作製した以外は実施例1と同様にしてガラスセラミック基板を得た。
【0069】
(比較例3)
軟化点が400℃のガラスを用いて密着剤を作製した以外は実施例1と同様にしてガラスセラミック基板を得た。
【0070】
その結果、実施例2および実施例3で得たガラスセラミック基板は、実施例1と同様に積層面内での収縮が0.5%以下(すなわち、収縮率99.5%以上)であり、基板に反りや変形は認められなかった。
【0071】
これに対して、比較例1および比較例2で得たガラスセラミック基板は、使用した密着剤層がガラスを含まないか、あるいは焼成温度よりも高い軟化点を有するガラスを含んでいるために、いずれも焼成後のガラスセラミック基板から拘束グリーンシートが簡単に剥がれてしまった。また、ガラスセラミック・グリーンシートと拘束グリーンシートとの間の結合力が弱いため、ガラスセラミック基板の積層面内での収縮率は85%程度になるか、基板の一部のみが拘束シートに結合されているためにガラスセラミック基板は大きく変形した。
【0072】
一方、比較例3では、密着剤層に含まれるガラスの軟化点が低いため、有機成分が完全に除去されず、このためガラスセラミック基板の積層面内での収縮は0.5%以下と良好であったが、ガラスセラミック基板の色調が灰色になった。
【0073】
(実施例4〜7)
ガラスセラミック成分として、SiO2−MgO−CaO−Al23系ガラス粉末70重量%、Al23粉末30重量%を使用した。このガラスセラミック成分100重量部に有機バインダーとしてアクリル樹脂9.0重量部、フタル酸系可塑剤4.5重量部および溶剤としてトルエン30重量部を加え、ボールミル法により混合しスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ300μmのガラスセラミック・グリーンシートを成形した。
【0074】
次いで、このグリーンシート上に実施例1と同じ銀−パラジウムペーストを用いて導体パターンをスクリーン印刷にて形成した。
【0075】
拘束グリーンシートは実施例1と同じ物を準備した。
【0076】
一方、密着剤は軟化点720℃のSiO2−MgO−CaO−Al23系ガラス粉末とDBP、BCA、アクリル系バインダーをそれぞれ表1に示す割合で混合したものを用いて作製した。
【0077】
表面に導体パターンを形成したガラスセラミック・グリーンシートの所定枚数を積み重ねてガラスセラミック・グリーンシート積層体を得、実施例1と同様に分割用溝を形成したガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に、積層体との被着面にスクリーン印刷により密着剤を塗布して密着剤層を形成した拘束グリーンシートを重ね合わせ、温度55℃、圧力20MPaで圧着して積層体を得た。
【0078】
得られた積層体をアルミナセッターに載置し、大気中500℃で2時間加熱して有機成分を除去した後、850℃で1時間焼成した。次いで、ガラスセラミック基板の表面に付着した拘束シートを除去した。得られたガラスセラミック基板の表面は、表面粗さ(算術平均粗さ)Raが1μm以下の平滑な面となり、導体の半田濡れ性も問題なかった。
【0079】
また、得られたガラスセラミック基板の積層面内での収縮率を表1に併せて示す。なお、ガラスセラミック基板に反りや変形は認められず、多数個の配線基板に正確かつ容易に分割できた。
【0080】
【表1】
Figure 0003872283
【0081】
表1から、実施例4〜7の各密着剤を使用して得られたガラスセラミック基板は焼成時の収縮が抑制され、高い寸法精度を有していることがわかる。
【0082】
【発明の効果】
本発明によれば、多数個取り用の分割溝が形成されたガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に、焼成時に結合剤として働くガラスを含む密着剤層を介してこの積層体と結合し、かつ焼成時に実質的に収縮しない拘束グリーンシートを積層して焼成するので、ガラスセラミック・グリーンシート基板の積層面内の収縮を確実に抑えることができ、また密着剤層は拘束シートとともに除去されることから、反りや変形のない寸法精度の高い多数個取りのガラスセラミック基板が得られ、寸法精度の高い多数個の配線基板を効率よく作製できるという効果がある。

Claims (3)

  1. 有機バインダーを含有し表面に多数個の基板領域を配列形成するように導体パターンが形成されたガラスセラミック・グリーンシートの複数枚を積層してガラスセラミック・グリーンシート積層体を作製する工程と、
    前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体の少なくとも一方の表面に前記多数個の基板領域を個々に分割するための溝を形成する工程と、
    難焼結性無機材料と有機バインダーとを含む拘束グリーンシートにガラスと溶剤とを含む密着剤を塗布する工程と、
    前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体の両面に、前記拘束グリーンシートと前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体との間に前記塗布したガラスと溶剤とを含む密着剤層を設けて、前記密着剤を塗布した拘束グリーンシートを積層する工程と、
    前記拘束グリーンシートとガラスセラミック・グリーンシート積層体との積層体から有機成分を除去し、次いで焼成して拘束シートを保持したガラスセラミック基板を作製する工程と、
    前記ガラスセラミック基板から拘束シートを除去する工程とを含み、
    前記密着剤のガラス含有量が、前記密着剤成分のうち5〜50重量%であり、前記密着剤中に含有されるガラスの軟化点が、前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体の焼成温度以下であることを特徴とするガラスセラミック基板の製造方法。
  2. 前記密着剤中に含有されるガラスの軟化点が、前記有機成分の揮発温度よりも高い請求項1記載のガラスセラミック基板の製造方法。
  3. 前記拘束グリーンシートの厚さが片面で前記ガラスセラミック・グリーンシート積層体の厚さに対して10%以上である請求項1記載のガラスセラミック基板の製造方法。
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