本発明は、積層コンデンサや積層セラミック配線基板等のような電子部品の製造方法に関するものである。
近年、電子機器の小型化に伴い、積層コンデンサや積層セラミック配線基板のような電子部品において、小型化および高性能化が望まれている。例えば、積層コンデンサにおいては小型化および高容量化のためにより薄い誘電体層および導体層を多層化したものが求められている。また、積層セラミック配線基板においては小型化および配線導体の高密度化のためにより薄い絶縁層および配線導体層を多層に形成し、配線導体層の幅および間隔もより微細なものが求められている。
このような電子部品は、セラミック粉末に有機バインダー、可塑剤、溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を成形した後、金属粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどして前記グリーンシート上に導体層を形成し、ついで複数枚の導体層が形成されたグリーンシートを積層して加圧することにより圧着して積層体を得て、この積層体を焼成することで得られる。
電子部品に対する要求に対応して導体層が形成されたグリーンシートを多数積層すると、導体層が形成された領域が重なる部分とそうでないない部分ではその厚み差が大きくなる。このため積層されたグリーンシートを厚み方向に加圧した場合、導体層が形成された領域が重なる部分においては加圧力が十分に加わるものの、そうでない部分においては加圧力が十分に加わりにくくなるので、不十分な圧着となってしまいやすい。その結果、そのような積層体を焼成すると、圧着が不十分な部分でデラミネーション(層間剥離)が発生するという問題があった。
このようなデラミネーションが電子部品の内部に存在すると、容量値の変化や絶縁破壊が起りやすくなるので電気的な特性が確保できないという問題があった。
この問題に対して、特許文献1では、加圧された際の流動性が高い高流動性部分を有する積層体を用いることが提案されている。積層体を厚み方向に加圧した際に、内部電極が積層されている領域に存在する高流動性部分が残りの部分に移動して残りの部分の厚みが増大しようとすることにより、加圧力が全体に均一に加わることとなるので、デラネーションが生じ難くなるものである。
また、グリーンシート上に形成された導体層の上に別のグリーンシートを積層する場合、この導体層の断面形状にグリーンシートが追従し難いために導体層の周辺に空隙が発生し、この空隙を起因とするデラミネーションが発生しやすいという問題があった。特に導体層の間隔が微細な場合は、導体層間に空隙が発生しやすかった。
この問題に対しては、特許文献2では、グリーンシート上に導体層を形成した後、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することが提案されている。このような方法を用いれば、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することで導体層とグリーンシートとの段差をなくすことができる。このため、導体層の周辺や配線導体層間に空隙が発生することを抑え、空隙に起因するデラミネーションの発生も抑えることが可能となる。また、導体層が形成されたグリーンシートを複数枚積層しても厚み差が発生しないので、ムラなく加圧して圧着することが可能となり、圧着が不十分な部分が発生することを抑え、デラミネーションの発生を抑えることが可能となる。
特許第3344100号公報
特開平5−217448号公報
しかしながら、従来の高流動性部分を有する積層体を用いる方法においては、高流動性部分を移動させてデラミネーションが発生しないような圧着を行なうためには、例えば厚み方向に180MPaという高い圧力を加える必要がある。このような高い圧力を導体層が形成されたグリーンシートに加えると、グリーンシートや導体パターンの形状が変形してしまうこととなる。その結果、基板の所望の寸法精度が得られないために基板上への部品実装が困難となったり、設計通りの導体パターンの形状が得られないために、特に高周波用配線基板等ではインピーダンス整合等の電気的特性が得られなくなるという問題があった。さらに、配線導体層の間隔が微細な場合の配線導体層間に発生する空隙の問題は解決されないままであった。
また、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷する方法においては、導体層が形成されたグリーンシート上にさらにセラミックペーストを印刷するという工程が加わるばかりでなく、配線導体層の間隔が微細な場合は配線導体層間にセラミックペーストを印刷することが困難であった。このため配線導体層の上にもセラミックペーストが印刷されてしまい、配線導体層上に印刷されたセラミックペーストにより、積層されて上下に配置される配線導体層間を接続するための貫通導体が配線導体層と接続されなくなるという問題があった。
さらには、キャビティを有するような電子部品を製造する場合は、キャビティとなる貫通穴を形成したグリーンシートとキャビティの底部となる貫通穴が形成されていないグリーンシートとを積層して圧着すると、グリーンシート積層体のキャビティ底部が反ってしまうという問題があった。これは、圧着するための加圧によりキャビティの周囲だけに圧力が加わり、キャビティ周囲のリーンシートが加圧により伸びるのに対して、キャビティ底部には圧力が加わらないのでキャビティ底部のグリーンシートは周囲から押されてしまうことによるものである。これは、電子部品がより小型でキャビティ底部の厚みがより薄い場合により発生しやすいものであった。キャビティ底部が反ってしまうと、水晶振動子やICチップ等の電子素子を搭載することが困難となってしまう。搭載できても搭載された部品が傾いてしまうので、CCDやC−MOS等の光半導体素子を搭載した場合は受光精度が悪くなってしまうという問題があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、デラミネーションがなく、かつ高い寸法精度を有する電子部品の製造方法を提供することである。
本発明の電子部品の製造方法は、支持体上に第1のセラミックグリーンシート層を形成する工程と、この第1のセラミックグリーンシート層上に第2のセラミックグリーンシート層を形成してセラミックグリーンシートを形成する工程と、前記セラミックグリーンシートの前記第2のセラミックグリーンシート層上に導体層を形成する工程と、前記導体層が形成された前記セラミックグリーンシートを複数枚積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備しており、前記第1のセラミックグリーンシート層は、前記セラミックグリーンシート積層体を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有していることを特徴とする。
本発明の電子部品の製造方法は、好ましくは前記溶融成分の融点が35乃至100℃であることを特徴とする。
また本発明の電子部品の製造方法は、好ましくは第1のセラミックグリーンシート層の厚みが10乃至200μmであることを特徴とする。
また本発明の電子部品の製造方法は、好ましくは前記第2のセラミックグリーンシート層の引っ張り特性が降伏点強度0.5MPa以上でかつ降伏点伸度50%以下であることを特徴とする。
また本発明の電子部品の製造方法は、好ましくは前記第1のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が50%以下であることを特徴とする。
また本発明の電子部品の製造方法は、好ましくは前記セラミックグリーンシートに打抜き加工により貫通孔を形成する工程を含み、打抜き開始面側のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度は50%以下で、打抜き終了面側のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度は20%乃至50%であることを特徴とする。
また本発明の電子部品の製造方法は、好ましくは前記第2のセラミックグリーンシート層のコッブサイズ度が50乃至500g/m2であることを特徴とする。
本発明の電子部品の製造方法によれば、第1のセラミックグリーンシート層は加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、導体層が形成されたセラミックグリーンシートを積層して加熱した際に第1のセラミックグリーンシート層が軟化するので、第1のセラミックグリーンシート層はその下に位置するセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層およびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形することとなる。その結果、導体層周囲や導体層間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート同士が密着することとなり、セラミックグリーンシート積層体を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシート層は、加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、加熱のみで第1のセラミックグリーンシート層が軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がない。そして、導体パターンの形成される第2のセラミックグリーンシート層は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート層は加熱時に変形することはなく、積層したセラミックグリーンシートが位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート層を第2のセラミックグリーンシート層およびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しないものである。よって、セラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体パターン形状が変形することがなく、得られるセラミックグリーンシート積層体およびそれを焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
また、加熱時に溶融する溶融成分の融点が35℃乃至100℃であるものを用いた場合は、常温では第1のセラミックグリーンシート層が軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となり、加熱時にセラミックグリーンシート中のバインダーや可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによりデラミネーションが発生してしまうことがなく、より好ましいものとなる。
また、キャビティを有する電子部品を製造する場合は、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がないので、キャビティ周囲部とキャビティ底部との加圧によるグリーンシートの伸びの違いによるキャビティ底部の反りの発生を抑えることが可能となり、キャビティ底部に電子素子を精度よく確実に搭載することが可能な電子部品を得ることができる。
また、第1のセラミックグリーンシート層の厚みが10〜200μmであれば、第1のセラミックグリーンシート層は、積層時にその下に位置する別のセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層およびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形し、かつ積層時の変形を抑制できる。
また、第2のグリーンシート層の引っ張り特性が降伏点強度0.5MPa以上であれば、加熱時に軟化した第1のセラミックグリーンシート層を第2のセラミックグリーンシート層3でクラックや欠陥なく保持でき、かつ降伏点伸度50%以下であれば第1のセラミックグリーンシート層2が軟化しても、セラミックグリーンシート4は積層時に変形することなく高精度の寸法を保つことができる。
また、第1のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が50%以下であれば、打抜き加工によりセラミックグリーンシートに貫通孔を形成しても、第1のセラミックグリーンシート層が変形しにくいので形成される貫通孔の変形を抑制できる。
また、セラミックグリーンシートに打抜き加工により貫通孔を形成する工程を含む場合、打抜き開始面側のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度は50%以下であり、打抜き終了面側のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度は20%乃至50%であれば、貫通孔の変形、打抜き開始面のバリの発生および打抜き終了面の貫通孔周辺のクラックの発生を抑制できる。
また、第2のセラミックグリーンシート層のコッブサイズ度が50乃至500g/m2である場合、セラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層上に導体ペーストを印刷することにより導体層を形成する際に、印刷された導体ペースト中の溶剤の第2のセラミックグリーンシート層への吸収が適度なものとなるので、にじみ、乾燥不良、カスレ、欠損といった導体層の不良を発生させることなく形成することが可能となる。また、導体ペースト中の溶剤が第2のセラミックグリーンシート層を通り、第1のセラミックグリーンシート層に浸透することにより、第1のセラミックグリーンシート層の軟化する温度が低下するのを防ぐことができる。
このように、本発明の製造方法によれば、セラミックグリーンシート間に空隙を発生させることがなく、セラミックグリーンシートや導体層の変形を抑えたセラミックグリーンシート積層体を得ることが可能となり、本発明の製造方法により作製された電子部品はデラミネーションがなく、高い寸法精度を有する電子部品となる。
本発明の電子部品の製造方法について以下に詳細に説明する。
図1は本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図であり、1は支持体、2は第1のセラミックグリーンシート層、3は第2のセラミックグリーンシート層、4はセラミックグリーンシート、5は導体層、6はセラミックグリーンシート積層体である。
まず図1(a)に示すように、支持体1上に第1のセラミックグリーンシート層2を形成し、ついで図1(b)に示すように、第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成してセラミックグリーンシート4を形成する。
本発明における第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3は、セラミック粉末、有機バインダー、溶剤等を混合したものが用いられる。第1のセラミックグリーンシート層はさらに溶融成分を含有する。第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3ともに、さらに可塑剤を添加してセラミックグリーンシート4の硬度や強度を調整してもよい。
セラミック粉末としては、例えばセラミック配線基板であれば、Al2O3,AlN,ガラスセラミック粉末(ガラス粉末とフィラー粉末との混合物)等が挙げられ、積層コンデンサであればBaTiO3系,PbTiO3系等の複合ペロブスカイト系セラミック粉末が挙げられ、電子部品に要求される特性に合わせて適宜選択される。
ガラスセラミック粉末のガラス成分としては、例えばSiO2−B2O3系、SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は上記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(ただし、M3はLi、NaまたはKを示す,SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(ただし、M3は上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
また、ガラスセラミック粉末のフィラー粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
セラミックグリーンシート層4に配合される有機バインダーとしては、従来よりセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
第1のセラミックグリーンシート層2に含有される溶融成分は、セラミックグリーンシート積層体6を作製する際の加熱時に溶融状態となるものであり、炭化水素,脂肪酸,エステル,脂肪アルコール,多価アルコール等が挙げられる。スラリーを調整する際の溶媒への溶解性を考慮すると、分子量が小さくかつ極性を有する炭化水素,エステル,脂肪アルコール,多価アルコールが好ましい。さらに上述したアクリルバインダーとの相溶性を考慮すると、エステル,脂肪アルコール,多価アルコールがより好ましい。
溶融成分は前記のものの中でも、その融点が35乃至100℃であるものが好ましい。これは、この範囲の融点のものを用いると、常温では第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となり、セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程における加熱時にセラミックグリーンシート4中のバインダーや可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによりデラミネーションが発生してしまうことがないからである。融点が35乃至100℃である溶融成分としては具体的には、ヘキサデカノール,ポリエチレングリコール,ポリグリセロール,ステアリルアミド,オレイルアミド,エチレングリコールモノステアレート,パラフィン,ステアリン酸,シリコーン等が挙げられる。
第1のセラミックグリーンシート層2に含有される溶融成分の含有量は、使用するバインダー成分およびその量や使用する溶融成分により異なるが、溶融成分が溶融した状態で第1のセラミックグリーンシート層2が軟化し、その下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形するような量であればよい。
また、第1のセラミックグリーンシート層2の厚みは10〜200μmであることが好ましい。これは、この範囲内の厚みであれば、第1のセラミックグリーンシート層2が、積層体6を作成する工程において、その下に位置する別のセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形し、かつ積層時の変形を抑制できるからである。
また、第2のセラミックグリーンシート層3の引っ張り特性が、降伏点強度0.5MPa以上でかつ降伏点伸度50%以下であることが好ましい。これは、積層体6を作製する工程において、第2のセラミックグリーンシート層3の引っ張り特性が降伏点強度0.5MPa以上であれば、加熱時に軟化した第1のセラミックグリーンシート層を第2のセラミックグリーンシート層3でクラックや欠陥なく保持でき、かつ降伏点伸度50%以下であれば第1のセラミックグリーンシート層2が軟化しても、セラミックグリーンシート4は積層時に変形することなく高精度の寸法を保てるからである。
また、第1のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が50%以下であることが好ましい。これは、打抜き加工によりセラミックグリーンシートに貫通孔を形成する工程を含む場合、第1のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が50%より大きいと、打ち抜く際に貫通孔の変形が生じやすいからである。
セラミックグリーンシート層の引っ張り特性を降伏点強度0.5MPa以上でかつ降伏点伸度50%以下、または降伏点伸度50%以下とするには、セラミックグリーンシート層に含まれる有機バインダーや可塑剤の量、有機バインダーのガラス転移点を調整することにより可能である。例えば有機バインダーや可塑剤の量を増加させると、降伏点伸度が大きくなる方向に、有機バインダーのガラス転移点を上げると、降伏点強度が増加する方向に調整できる。
さらに、第2のセラミックグリーンシート層のコッブサイズ度が50乃至500g/m2であることが好ましい。この場合、セラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層上にスクリーン印刷法やグラビア印刷法にて導体ペーストを印刷することにより導体層を形成する場合、第2のセラミックグリーンシート層への導体ペースト中の溶剤の吸収が適度なものとなるので、欠陥のない高精度な導体層を形成することが可能となる。また、導体ペースト中の溶剤が第2のセラミックグリーンシート層を通り、第1のセラミックグリーンシート層に浸透することにより、第1のセラミックグリーンシート層の軟化する温度が低下することを防ぐことが可能となる。
コッブサイズ度が50g/m2より小さいと、第2のセラミックグリーンシート層への導体ペースト中の溶剤の吸収が少ないので、吸収しきれない導体ペーストの溶剤によって導体層のにじみや乾燥不良が発生しやすくなる。よって、セラミックグリーンシートの導体層を重ねて積層する際に、にじみや乾燥不良が発生した導体層が隣接する導体層と短絡したり、隣接する導体層の間隔が狭くなってセラミックグリーンシート積層体を焼成して成る電子部品搭載用基板の配線導体の配線間の絶縁不良の原因となってしまう。
コッブサイズ度が500g/m2より大きいと、第2のセラミックグリーンシート層への導体ペースト中の溶剤の吸収が多く、導体ペースト中の溶剤が第2のセラミックグリーンシート層を通り抜けて第1のセラミックグリーンシート層まで溶剤が浸透し、溶融成分が上記溶剤に溶解、膨潤して溶融成分の凝固点(融点)降下を発生させてしまう場合がある。これにより、第1のセラミックグリーンシート層が、加熱をしない常温の状態で軟化して接着性を持つようになり、積層工程までの加工時や搬送時のハンドリングが悪くなる場合がある。また、第2のセラミックグリーンシート層への導体ペースト中の溶剤の吸収が多く、かつ速いので、印刷された導体ペーストが流動してレべリングにより導体パターン形状になる前に、導体ペーストが流動するための溶剤がなくなることとなり、導体層のカスレや欠損が発生しやすくなる。
第2のセラミックグリーンシート層のコッブサイズ度を50乃至500g/m2とするには、第2のセラミックグリーンシート層に含まれる有機バインダーの量を増加したり、可塑剤を加えたりすることにより調整できる。
第1のセラミックグリーンシート層2は、上記セラミック粉末,有機バインダー,溶融成分に溶剤(有機溶剤,水等)、必要に応じて所定量の可塑剤,分散剤を加えてスラリーを得、これをPETフィルム等の支持体上にドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等により成形することによって得られる。第1のセラミックグリーンシート層2の厚さは、導体層とセラミックグリーンシートとの段差を埋めるために、導体層の厚みより厚くなるように形成される。
第2のセラミックグリーンシート層3は、第1のセラミックグリーンシート層2に用いるスラリーに対して、溶融成分を含まないスラリーを用いて形成される。
第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成する方法は、(1)第1のセラミックグリーンシート層2と同様に成形した第2のセラミックグリーンシート層3を第1のセラミックグリーンシート層2の上に積層して形成する方法、(2)支持体1上に形成された第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート3のスラリーを塗布して形成する方法、(3)支持体1上に塗布された第1のセラミックグリーンシート層2のスラリー上に第2のセラミックグリーンシート層3のスラリーを塗布して形成する方法が挙げられる。
第1のセラミックグリーンシート層2上への第2のセラミックグリーンシート層3の積層の際に、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3との間に空隙を発生させる可能性があり、また第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3との密着性を向上させるためには上記(2)または(3)の方法が好ましい。さらには、上記(3)の方法では第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3の形成がほぼ同時に行なわれるので、工程が簡略化されるのでより好ましい。この(3)の方法においては、ダイコーター法やリップコーター法等の押し出し式の方法を用いるとよく、これらは非接触式の塗布方法であり、また溶剤の少ない、比較的粘度の高いスラリーを用いることができるので、第1のセラミックグリーンシート層2のスラリーと第2のセラミックグリーンシート層3のスラリーが混ざり合うことなくセラミックグリーンシート4を形成することができるのでよい。
次に図1(c)に示すように、セラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3上に導体層4を形成する。セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する方法としては、例えば導体材料粉末をペースト化したものをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により印刷したり、めっき法や蒸着法等により所定パターン形状の金属膜を形成するようなセラミックグリーンシート4上に直接形成する方法、あるいは印刷により所定パターン形状に形成した導体厚膜や所定パターン形状に加工した金属箔、めっき法や蒸着法等により形成した所定パターン形状の金属膜をセラミックグリーンシート4上に転写する方法がある。導体材料としては、例えばW,Mo,Mn,Au,Ag,Cu,Pd(パラジウム),Pt(白金)等の1種または2種以上が挙げられ、2種以上の場合は混合、合金、コーティング等のいずれの形態であってもよい。
導体層5はセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3上に形成される。これは、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に変形することはないので、その上に導体層5を形成することにより導体層5を変形させないようにするためである。
なお、導体層5を形成する前に必要に応じて上下の層間の導体層5同士を接続するためのビアホール導体やスルーホール導体等の貫通導体を形成してもよい。これら貫通導体は、打ち抜き加工やレーザ加工等によりセラミックグリーンシート4に形成した貫通孔に、導体材料粉末をペースト化したもの(導体ペースト)を印刷やプレス充填により埋め込む等の手段によって形成される。
セラミックグリーンシート4に打抜き加工により貫通孔を形成する工程を含む場合、打抜き開始面側のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度は50%以下であり、打抜き終了面側のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度は20%乃至50%であることが好ましい。これは、打抜き終了面側のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が20%未満であると、セラミックグリーンシートが打ち抜かれる際に、打抜き終了面側は打抜き用金型やピン等により引っ張られるので、その応力によりクラックが生じやすくなり、50%より大きいと、打ち抜く際に貫通孔の変形が生じやすいからであるからである。また、セラミックグリーンシート4が打ち抜かれた後、打抜き用金型やピンをセラミックグリーンシート4から抜く際には、貫通孔の内壁面と打抜き用金型やピンの側面との摩擦により打抜き開始面側の貫通孔開口周辺が引っ張られるが、そのとき打抜き開始面側のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が50%より大きいと、引っ張られた部分が延びてバリになりやすいので、貫通孔の開口部にバリが生じやすくなるからである。打抜き開始面側においては、降伏点伸度が小さくても、打抜き開始面より下のセラミックグリーンシート4により打ち抜き時の応力は分散されるので、打抜き開始面でのクラックの発生は抑えられやすい。
また、より好ましくは第2のセラミックグリーンシート層3を打抜き開始面側とし、第1のセラミックグリーンシート層2を打抜き終了面側とするのが好ましい。これは、繰り返し打ち抜きを行うことにより打抜き用金型やピンの温度が上昇することにより、打抜き用金型やピンの第1のセラミックグリーンシート層2に当接する面に第1のセラミックグリーンシート層2が付着してしまい、良好な貫通孔の形成ができなくなってしまう場合があるからである。
キャビティを有する電子部品を製造する場合は、次の積層体を作製する工程より前に、キャビティ形状の貫通穴を金型による打ち抜き等によりセラミックグリーンシート4の一部に形成しておく。貫通穴の形成は、キャビティの内壁面への導体層5の形成の有無や形成方法に応じて、導体層5を形成する前でもよいし、形成した後でもよい。
次に図1(d)に示すように、位置合わせして積み重ねたセラミックグリーンシート4を、溶融成分が溶融状態となり第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して変形する程度の温度つまり溶融成分の融点程度の温度で加熱することでセラミックグリーンシート積層体6を作製する。また、このとき、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート層2を第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5のパターン形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度の加圧を行なうと、より精度よく確実な圧着が可能となる。
セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程において、第1のセラミックグリーンシート層2は加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、導体層5が形成されたセラミックグリーンシート4を積層して加熱した際に第1のセラミックグリーンシート層2が軟化するので、第1のセラミックグリーンシート層2はその下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して変形することとなる。これにより導体層5の周囲や導体層5間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート4同士が密着することとなり、セラミックグリーンシート積層体6を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシート層2は、加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、加熱のみで第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシート4を圧着させる必要がない。そして、導体層5の形成される第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に変形することはなく、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート層2を第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5のパターンの形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しないものである。よって、セラミックグリーンシート4およびその上に形成された導体層の形状が変形することがなく、さらに加圧によるグリーンシートへの歪がなく得られるセラミックグリーンシート積層体6およびそれを焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
例えば、加熱時に溶融する溶融成分を含有しない第1のセラミックグリーンシート層2を用いた場合、セラミックグリーンシート積層体6および電子部品の寸法精度は±0.5%程度であったが、本発明の溶融成分を含有する第1のセラミックグリーンシート層2を用いた場合、セラミックグリーンシート積層体6および電子部品の寸法精度は±0.3%程度となり、大幅に向上することが実験により判明した。
また、キャビティを有する電子部品を製造する場合は、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がないので、キャビティ周囲部とキャビティ底部との加圧によるグリーンシートの伸びの違いによるキャビティ底部の反りの発生を抑えることが可能となり、キャビティ底部に電子素子を精度よく確実に搭載することが可能な電子部品を得ることができる。
図1(d)の最下部に位置するセラミックグリーンシートとしては、第2のセラミックグリーンシート層3のみで構成されるセラミックグリーンシート4’を用いればよい。積層コンデンサのように表面に導体層5が露出しないような電子部品の場合は、図1(d)の最上部に位置するセラミックグリーンシート4には導体層5が形成されていないセラミックグリーンシート4を用いればよく、積層セラミック配線基板のような両面に導体層5が露出するような電子部品の場合は、最下部のセラミックグリーンシート4’の両面に導体層5を形成したものを用いればよい。
そして最後に、セラミックグリーンシート積層体6を焼成することにより本発明の電子部品が作製される。焼成する工程は有機成分の除去とセラミック粉末の焼結とから成る。有機成分の除去は100〜800℃の温度範囲でセラミックグリーンシート積層体6を加熱することによって行い、有機成分を分解、揮発させ、焼結温度はセラミック組成により異なり、約800〜1600℃の範囲内で行なう。焼成雰囲気はセラミック粉末や導体材料により異なり、大気中、還元雰囲気中、非酸化性雰囲気中等で行なわれ、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
焼成後の電子部品はその表面に露出した導体層5の表面には、導体層5の腐食防止のために、または半田や金属ワイヤ等の外部基板や電子部品との接続手段の良好な接続のために、NiやAuのめっきを施すとよい。
セラミック材料としてガラスセラミックスのような低温焼結材料を用いる場合は、セラミックグリーンシート積層体6の上下面にさらに拘束グリーンシートを積層して焼成し、焼成後に拘束シートを除去するようにすれば、より高寸法精度のセラミック基板を得ることが可能となる。拘束グリーンシートは、Al2O3等の難焼結性無機材料を主成分とするグリーンシートであり、焼成時に収縮しないものである。この拘束グリーンシートが積層された積層体は、収縮しない拘束グリーンシートにより積層平面方向(xy平面方向)の収縮が抑制され、積層方向(z方向)にのみ収縮するので、焼成収縮に伴う寸法ばらつきが抑制される。このときの拘束グリーンシートも本発明のセラミックグリーンシート6と同様の第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3とを有する構成にすると、拘束グリーンシートを積層して圧着する際にも大きな加圧力を必要とせず、得られる電子部品はより高寸法精度のものとなるのでよい。
また、拘束グリーンシートには難焼結性無機成分に加えて、焼成温度以下の軟化点を有するガラス成分、例えばセラミックグリーンシート4中のガラスと同じガラスを含有させるとよい。焼成中にこのガラスが軟化してセラミックグリーンシート4と結合することによりセラミックグリーンシート4と拘束グリーンシートとの結合が強固なものとなり、より確実な拘束力が得られるからである。このときのガラス量は難焼結性無機成分とガラス成分を合わせた無機成分に対して0.5〜15質量%とすると拘束力が向上し、かつ拘束グリーンシートの焼成収縮が0.5%以下に抑えられる。
焼成後、拘束シートを除去する。除去方法としては、例えば研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
以上のような方法で作製された電子部品は、その内部にデラミネーションを有さず寸法精度の高いものであるので、電子部品として要求される優れた電気特性や気密性の高いものとなる。
以下、本発明を具体的例によって詳細に説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
最初に第1のセラミックグリーンシート層用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量%、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物とを合わせて10質量%の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸イソブチル樹脂を固形分で10質量部、融点が48℃である溶融成分としてヘキサデカノールを10質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調整した。
次に第2のセラミックグリーンシート層用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量%、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)を合わせて10質量%の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を固形分で10質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調製した。
これらのスラリーからダイコーターシート成形機を用いて、成形速度2m/分、成形シート幅が250mmの条件にて第1のセラミックグリーンシート層を厚み10,20,40,50,100,150,200,250μmで各々成形した上にそのまま第2のセラミックグリーンシート層を50μmの厚みで成形し、セラミックグリーンシートを成形した。
このセラミックシートの第2のセラミックグリーンシート層上に、タングステン粉末を主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷し、導体層を形成した。
導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製し、積層前後の寸法を3次元測定機で測定した。寸法バラツキとして積層前後の測定値の平均値に対する最大誤差を算出することで変形バラツキを評価し、その値が±0.3%以内を良品とした。
それから、得られたセラミックグリーンシート積層体中の有機バインダ等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持する熱処理を行った後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間保持して評価用のセラミック焼結体を作製した。
この焼結体のクロスセクションを行い、セラミック層間のデラミネーションの発生の有無を調査した。
第1のセラミックグリーンシート層の各厚み別の評価の結果を表1に示す。
表1の内層デラミネーションの欄において、「○」は焼結体の内部にデラミネーションが見られず優れていたことを示す。また、「△」は積層体の形成に問題は無いものの、焼結体の内部にデラミネーションが見られたことを示す。
また、寸法バラツキ性の欄において、「○」は積層前後の各寸法の測定値の平均値に対する最大誤差を算出することで変形バラツキを評価し、その値が±0.3%以内で優れていたことを示す。また、「△」は±0.3%を超えてしまったことを示す。
表1より、第1のセラミックグリーンシート層の厚みが20μm未満の試料No.1には焼結体の内部にデラミネーションが発生した。
また、第1のセラミックグリーンシート層の厚みが200μmより大きい試料No.8,9においては、寸法バラツキが0.3%を超えていた。
これに対して、第1のセラミックグリーンシート層の厚み20〜200μmの試料No.2〜7はデラミネーションが無く、寸法ばらつきが±0.3%未満で優れたものであった。
実施例1と同様に、最初に第1のセラミックグリーンシート層用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量%、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物とを合わせて10質量%の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸イソブチル樹脂を固形分で10質量部、融点が48℃である溶融成分としてヘキサデカノールを10質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調整した。
次に、第2のセラミックグリーンシート層用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量%、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)を合わせて10質量%の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を固形分で10質量部、第2のセラミックグリーンシート層の引っ張り特性調整用に可塑剤としてフタル酸ジブチルを1〜10質量部添加した。
その後、トルエンおよび酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調製した。
これらのスラリーからダイコーターシート成形機を用いて、成形速度2m/分、成形シート幅が250mmの条件にて第1のセラミックグリーンシート層を50μmの厚みで成形した上にそのまま第2のセラミックグリーンシート層を50μmの厚みで成形し、総厚み100μmのセラミックグリーンシートを成形した。
このセラミックシートの第2のセラミックグリーンシート層上に、タングステン粉末を主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により所定パターンに印刷し、導体層を形成した。
導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製し、積層後の寸法を3次元測定機で測定した。寸法バラツキとして積層前後の測定値の平均値に対する最大誤差を算出することで変形バラツキを評価し、その値が±0.3%以内を良品とした。
第2のセラミックグリーンシート層の引っ張り特性別の評価の結果を表2に示す。
表2のクラックの欄において、「○」は積層体にクラックが見られず優れていたことを示す。また、「△」は積層体としての機能に問題は無いものの、積層体にクラックが見られたことを示す。
また、寸法バラツキ合否の欄において、「○」は積層前後の各寸法の測定値の平均値に対する最大誤差を算出することで変形バラツキを評価し、その値が±0.3%以内で優れていたことを示す。また、「△」は±0.3%を超えていたことを示す。
また、総合判定の欄において、「○」は積層体のクラックも無く、積層前後の変形バラツキも±0.3%以内であり優れていたことを示す。また、「△」は積層体のクラックが見られた、または、積層前後の変形バラツキが±0.3%を超えていたことを示す。
表2の結果から明らかなように、第2のセラミックグリーンシート層の降伏点強度0.5MPa未満の試料No.1,8には積層体にクラックが生じた。第1のセラミックグリーンシート層が軟化して変形することにより、降伏点強度の弱い第2のセラミックグリーンシート層では保持できなかったと考えられる。
また、第2のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が50%を超えた試料No.7においては変形バラツキが0.3%をわずかに超えていた。
これに対し、第2のセラミックグリーンシート層の降伏点強度0.5MPa以上で降伏点伸度50%未満の試料No.2,3,4,5,6は積層時にクラック発生せず、変形ばらつきが±0.3%未満で優れたものであった。
実施例1と同様に、最初に第1のセラミックグリーンシート層用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量%、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量%の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸イソブチル樹脂を固形分で10質量部、融点が48℃である溶融成分としてヘキサデカノールを10質量部添加し、トルエンおよび酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調製した。
次に、第2のセラミックグリーンシート層用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量%、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物を合わせて10質量%の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を固形分で10質量部、第2のセラミックグリーンシート層の引っ張り特性調整用に可塑剤としてフタル酸ジブチルを1〜10質量部添加した。その後、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調製した。
これらのスラリーからダイコーターシート成形機を用いて、成形速度2m/分、成形シート幅が250mmの条件にて第1のセラミックグリーンシート層を50μmの厚みで成形した上にそのまま第2のセラミックグリーンシート層を50μmの厚みで成形し、総厚み100μmのセラミックグリーンシートを成形した。
このセラミックグリーンシートを直径60μmのピンを用いて、1mmピッチで第2セラミックグリーンシート層側から打ち抜いて貫通孔を形成した際の打ち抜き性の評価の結果を表3に示す。
表3のクラックの欄において、「○」は貫通孔周辺のセラミックグリーンシート層にクラックが見られず優れていたことを示す。また、「△」は貫通孔としての機能に問題は無いものの、貫通孔周辺のグリーンシート層にクラックが見られたことを示す。
また、変形の欄において、「○」は貫通孔の変形が見られず優れていたことを示す。また、「△」は貫通孔としての機能に問題は無いものの、セラミックグリーンシート層に伸びが生じたことにより、貫通孔の横断面形状が変形していたことを示す。
また、バリの欄において、「○」は貫通孔の開口部にバリが見られず優れていたことを示す。また、「△」は貫通孔としての機能に問題は無いものの、貫通孔の開口部にバリが生じていたことを示す。
表3の結果から明らかなように、第1のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が20%未満の試料No.1にはクラックが発生した。
また、第1のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が50%より大きい試料No.7には貫通孔の変形が発生した。
また、第2のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が50%より大きい試料No.6においては、バリおよび貫通孔の変形が発生した。
これに対して、第1のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が20%乃至50%であり、かつ第2のセラミックグリーンシート層の降伏点伸度が50%以下の試料No.2,3,5,6はクラック,貫通孔の変形,バリの無い優れたものであった。
また、このセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層上に、Wを主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷して導体層を形成し、導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。得られたセラミックグリーンシート積層体中の有機バインダー等の有機成分や、有機成分が分解した後に残留するカーボンを除去するため、7.33×103Paの水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持する熱処理を行なった後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間保持してセラミック焼結体を作製したがデラミネーションを有さず寸法精度の高いものであることを確認できた。
まず、第1のセラミックグリーンシート層用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量%、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物(三酸化クロム)とを合わせて10質量%の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸イソブチル樹脂を固形分で10質量部、融点が48℃である溶融成分としてヘキサデカノールを10質量部添加し、トルエンおよび酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調製した。
また、第2のセラミックグリーンシート層用に、第1のスラリーと同様のセラミック粉末100質量部に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を固形分で10質量部、第2のセラミックグリーンシート層のコッブサイズ度の調整用に可塑剤としてフタル酸ジブチルを1〜10質量部添加した。その後、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調製した。
次に、ダイコーターシート成形機を用いて、成形速度2m/分にて250mmの幅で第1のスラリーを塗工し、その上に第2のスラリーを塗工して乾燥することにより、第1のセラミックグリーンシート層の厚みが50μm、第2のセラミックグリーンシート層の厚みが50μmのセラミックグリーンシートを作製した。
このセラミックグリーンシートの第1のセラミックグリーンシート層に、導体成分がタングステン粉末、有機バインダーとしてセルロース樹脂、溶剤をα−テルピネオールで調製した導体ペーストを用いて、スクリーン印刷法で100μm線幅、厚み20μmの配線導体層を形成した。
印刷された導体層について、3次元測定機により線幅を測定し、導体層のにじみやカスレの状態から印刷性を評価した。
また、導体層を形成したセラミックグリーンシートから第1のセラミックグリーンシート層を削り取って試料とし、示差熱分析にて第1のセラミックグリーンシート層の溶融成分の降下した融点を測定した。
第2のセラミックグリーンシート層の印刷性、第1のセラミックグリーンシート層の融点の測定結果を表4に示す。
表4の印刷性の欄において、「△」は、導体層としての機能には問題ないものの、導体層の100μm線幅に対し+20μmを超えるか、または−20μmより小さい線幅の箇所が発生したことを示す。「○」は、導体層の100μm線幅に対してどの箇所も±20μm以内であったことを示す。融点の欄において、「○」は、第1のセラミックグリーンシート層の溶融成分の融点が常温(25℃)を超えていることを示す。「△」は、溶融成分の融点が常温より低くなってしまったことを示す。
表4より、第2のセラミックグリーンシート層のコッブサイズ度が50g/m2未満の試料No.1、およびコッブサイズ度が500g/m2より大きい試料No.7,8は、線幅が100μmに対して±20μm以内とはならなかった。試料No.1は、にじみにより線幅が大きくなった部分があり、試料No.8は、カスレにより線幅が小さくなった部分があった。加えて試料No.7,8は、第1のセラミックグリーンシート層の溶融成分の融点が常温(25℃)より低くなり、常温で接着性が発現した。
これに対して、第2のセラミックグリーンシート層のコッブサイズ度が50乃至500g/m2の試料No.2〜6は、導体層のにじみ、カスレがなく、導体層の100μm線幅に対してどの箇所も±20μm以内と印刷性が優れ、かつ常温で接着性が発現せず、加工時や搬送時にハンドリングしやすいものであった。
(a)〜(d)は、本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図である。
符号の説明
1・・・支持体
2・・・第1のセラミックグリーンシート層
3・・・第2のセラミックグリーンシート層
4・・・セラミックグリーンシート
5・・・導体層
6・・・セラミックグリーンシート積層体