JP3871887B2 - サーバ装置、端末装置、および通信端末を用いた塗料および塗料情報提供方法 - Google Patents
サーバ装置、端末装置、および通信端末を用いた塗料および塗料情報提供方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料の販売システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常塗料は、複数の顔料や原色塗料(顔料を溶剤に溶解させたもの)を混合して生成され、所望の発色が得られるように調製され、塗装工場、塗装店等で塗装対象に塗付される。そして、塗料をどのような顔料の組み合わせで調製すべきかを示す配合情報は、塗料メーカにおいて管理されている。したがって、過去に塗付された塗料を再現したい場合、例えば、自動車の破損箇所に塗料を塗付して修理したい場合、塗装店等は、塗料メーカから配布された資料を参考に所望の塗料を調製していた。
【0003】
しかし、このような配合情報に基づいて塗料を調製しても完全には、所望の塗色、例えば、自動車の破損個所の周囲の塗色と同一の塗色を得られないことが多かった。これは、例えば、以下の理由からである。
【0004】
まず、資料を配付する方法では、最新の配合情報を迅速、確実にすべての塗装店等に配布することが困難であった。また、塗膜が経時変化により、本来の塗色から変化する場合がある。したがって、配合情報がいかに正確で塗色に再現性があっても、その配合情報では、所望の塗色が再現できないことがあった。これは、特に紫外線の影響を受けやすい赤色系の塗料において顕著であった。
【0005】
また、塗膜の経時変化がない場合、例えば、購入直後の新車を破損したような場合に上記配合情報にしたがって調製しても破損個所周辺の塗色と同一の塗色が得られないことがあった。この原因は、調製される顔料や原色塗料そのものが必ずしも同一の塗色を有しないことによる。
【0006】
この理由の第1は、顔料や原色塗料自体が製造後の保管状況等に依存し経時変化することである。また、この理由の第2は、製造された顔料がすべて均一であるとは限らないことによる。すべて均一であるとは限らないとは、例えば、顔料の製造ロットに依存し、塗色が微妙に異なることをいう。このため、生成された塗料の塗色も製造ロットに依存し、ロットごとに塗色が微妙に異なっている。
【0007】
また、例えば、発色が全く同一の塗料であっても、塗装者の塗装特性に依存して塗色が異なることがある。例えば、塗料の塗出圧、塗料を塗付する速度、膜圧等に依存し、発色の仕方が異なることがある。
【0008】
このように、単に顔料を組み合わせる配合情報にしたがうだけでは、所望の塗色を有する塗料を得ることが困難な場合があった。このため、従来は、塗装店等において、配合情報にしたがって調製された塗料を塗付した評価用塗板を作成し、その塗色の評価と調製とを繰り返し、所望の塗料を得ていた。そして、塗装店等では、顧客所望の塗色を得るため、顔料の調製作業に人手が費やされていた。このため、塗装費用は高額になっていた。
【0009】
また、このように各塗装店で調製された塗料や塗付された塗膜は、その塗装店等における調製特性、塗装特性の影響を受けている。そのため、すべての塗装店で共通で均一な塗装サービスを提供することは困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来の技術の問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、顧客所望の塗色を再現する塗料を調製し、塗料そのものの特性や塗装店・塗装者の特性による塗膜品質の変動を低減させて塗料を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0012】
本発明は、商品塗料を生成する原塗料の配合情報を端末装置に提供するサーバ装置であり、
原塗料を配合して生成された商品塗料の塗色情報とそのときの原塗料を配合する配合情報とを所定の形式で記録する記録部と、
ネットワークに接続する通信部と、
制御部とを備え、
この制御部は、ネットワークに接続された端末装置からのユーザ所望の商品塗料の塗色情報を受信し、塗色情報を再現する原塗料の配合情報を推定し、推定された配合情報を端末装置に提供するものである。
【0013】
好ましくは、上記制御部は、ネットワーク上の端末装置から、商品塗料による塗装を実行する塗装者の塗装特性に係る情報、塗装に使用される塗装装置の塗装特性に係る情報、原塗料の保管状態に係る情報または原塗料の経時変化に係る情報の少なくとも一つを含む利用者特性情報を受信し、上記利用者特性情報に基づいて配合情報を補正してもよい。
【0014】
好ましくは、上記記録部は、原塗料の製造時の製造ロット間の塗色変動に係る情報を記録しており、
制御部は、この塗色変動に係る情報に基づいて配合情報を補正してもよい。
【0015】
好ましくは、上記制御部は、ネットワーク上の端末装置から、塗装対象の塗色を測定する測定機の機差に係る情報をさらに受信し、この機差に係る情報に基づいて商品塗料の塗色情報を補正してもよい。
【0016】
好ましくは、上記塗色情報は、ユーザ所望の商品塗料が塗付された試料を分光測色装置により測定した反射率を示す情報であり、
上記所定の形式において塗色情報は光学濃度で記述され、
制御部は、受信したユーザ所望の商品塗料の塗色情報を光学濃度に変換し、配合情報を推定してもよい。
【0017】
ここで、分光測色装置とは、例えば、いわゆる多角度分光測色装置または変角分光測色装置をいい、塗板に対する光源からの光の入射角、または塗板から測定器に反射される光の受光角を複数設定して、塗板上の塗料の反射率を測定できる装置をいう。
【0018】
また、本発明は、商品塗料の配合情報を提供する端末装置であり、
原塗料を配合して生成された商品塗料の塗色情報とそのときの配合情報との組み合わせとからなるカラーマッチングデータをネットワークを介して受信する通信部と、
カラーマッチングデータを所定の形式で記録する記録部と、
ユーザ所望の商品塗料の塗色情報を入力する入力部と、
入力された塗色情報を再現する原塗料の配合情報を推定する制御部とを備え、
推定された配合情報を提供するものでもよい。
【0019】
また、本発明は、ネットワークに接続されたサーバ装置であり、
原塗料を配合して生成される商品塗料の識別情報およびその商品塗料に対する原塗料の配合を指定する配合情報を記録する記録部と、
ネットワークに接続する通信部と、
制御部とを備え、
この制御部は、ネットワークに接続された端末装置から商品塗料を識別する識別情報を受信し、その識別情報により識別される商品塗料の配合情報を検索し、検索された配合情報を端末装置に提供するものでもよい。
【0020】
また、本発明は、ネットワークに接続された端末装置であり、
原塗料を配合して生成される商品塗料を識別する識別情報を入力する入力部と、
上記識別情報をサーバ装置に送信し、その識別情報により識別される商品塗料を配合する配合情報をサーバ装置から受信する通信部と、
受信した配合情報を表示する表示部とを備えるものである。
【0021】
ここで、識別情報とは、特定の商品塗料を識別するための情報であり、例えば、商品塗料コード、または、その商品塗料が塗付される商品の型式と塗付される部位等である。
【0022】
また、本発明は、商品塗料の提供方法であり、
ユーザ所望の商品塗料の塗色情報を測定するステップと、
複数の商品塗料に対して、原塗料を配合して生成された商品塗料の塗色情報とそのときの原塗料を配合する配合情報とを有するデータベースを参照するステップと、
ユーザ所望の塗色情報を再現する原塗料の配合情報を推定するステップとからなるものでもよい。
【0023】
また、本発明は、商品塗料の提供方法であり、
ユーザ所望の商品塗料の塗色の識別情報を入力するステップと、
商品塗料により塗装を行う塗装者の塗装者特性または塗装に使用される塗装装置特性を含む利用者特性を参照するステップと、
商品塗料を生成する原塗料の特性を参照するステップと、
1以上の原塗料を調製して商品塗料を生成する、そのような商品塗料の配合情報を前記識別情報をキーにして参照するステップと、
少なくとも前記利用者特性または前記原塗料の特性に基づいて配合情報を補正するステップと、
その配合情報を提供するステップとからなるものでもよい。
【0024】
また、本発明は、以上のいずれかの機能をコンピュータに実現させるプログラムであってもよい。
【0025】
このように、本発明は、ユーザ所望の商品塗料が塗付された試料を測定して配合情報を求めるので、塗膜が経時変化した場合でも、その塗色の再現性を高くすることができる。
【0026】
また、本発明は、そのような塗色を測定する測定機の機差を補正するので、塗色の再現性を高めることができる。
【0027】
また、本発明は、商品塗料による塗装を実行する塗装者の塗装特性に係る情報、塗装に使用される塗装装置の塗装特性に係る情報、原塗料の保管状態に係る情報または原塗料の経時変化に係る情報の少なくとも一つを含む利用者特性情報に基づいて配合情報を補正するので、塗色の再現性を高めることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1から図7の図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は本実施の形態の塗色配合情報提供システムのシステム構成図であり、図2は、図1に示した利用者特性情報のデータ構成図であり、図3は、図1に示した測定機13の機差校正手順を示す図であり、図4は、図1に示した配合ステーション1の配合推定処理の概要図であり、図5から図7は塗色配合情報提供システムの変形例を示すシステム構成図である。
【0030】
<システム構成>
図1に、塗色配合情報提供システムのシステム構成図を示す。このシステムは、塗装店3に設置され塗装対象の配合推定を行う配合ステーション1と、塗装対象の塗色を測定し、その塗色情報を配合ステーション1に入力する測定機13と、配合ステーション1が推定した配合情報にしたがい配合された塗料を塗付する塗装機14と、ネットワークを介して配合ステーション1と接続される中央サーバ2とから構成される。
【0031】
この配合情報提供システムは、さらに、カスタマーサポートセンタ4のホストコンピュータ、塗料ディリバリーセンタ5のホストホストコンピュータ、および工場の品質管理サーバ6と接続され、塗料販売サービスシステムを構成している。
【0032】
配合ステーション1は、測定機13が測定した塗装対象の塗色情報を入力され、カラーマッチングプログラムを実行し、その塗色を発色する顔料の配合を推定する。図1のように配合ステーション1は、配合情報タンク12を有している。
【0033】
配合情報タンク12には、カラーマッチングデータが格納されている。このカラーマッチングデータは、基礎データと実績データとを含んでいる。ここで、基礎データとは、光輝剤により顔料濃度を変化させた各顔料に対する分光反射率から求めた光学濃度データである。また、実績データとは、そのような複数の顔料を実際に混合したときの、分光反射率から求めた光学濃度データである。
【0034】
カラーマッチングプログラムは、入力された塗色情報とカラーマッチングデータとからその塗色を生成する顔料の配合情報を推定する。推定された配合情報は塗装店3に提供され、塗料の配合を支援する。
【0035】
また、配合ステーション1は、測定機状態管理記録、塗料保管状態記録、塗装特性記録を含む利用者特性情報を利用者特性情報記録部11に蓄積する。そして、配合ステーション1は、この利用者特性情報を所定の時期に中央サーバ2に転送する。
【0036】
配合ステーション1は、配合推定に使用するカラーマッチングデータ、配合推定時の補正情報を中央サーバ2から所定の時期に受信する。この補正情報は、分光反射率測定値補正ベクトル、光学濃度混合則補正値、塗色基礎データ補正、ロット間補正データ等である。
【0037】
測定機13は、ハンディタイプのいわゆる多角度分光測色装置である。測定機13は、塗板上に設置され、その状態で白色光を塗板に入射させ、数種類の受光角において、塗板上の塗料の分光反射率を複数の波長について測定する。
【0038】
2以上の受光角で分光反射率を測定するのは、光輝材を含む塗料の分光反射率を測定するためである。光輝材を含む塗料の塗膜では、受光角により色彩、すなわち、分光反射率が異なる。このため、光輝材を含む塗料の配合を推定するためには、複数の受光角における分光反射率が必要になる。
【0039】
ただし、複数の受光角において測定する代わりに、受光角を1点に固定し、入射角を変更して分光反射率を測定してもよい。これによって、複数の受光角で測定した分光反射率と類似または等価な測定結果が得られる。
【0040】
なお、測定機13は、自己診断プログラムを定期的に実行し、配合ステーション1に報告する。この自己診断は、温度、湿度等の環境に関する情報、および測定機13の自身が有する白色光源からの白色光を分光分析した分光特性を含む。
【0041】
また、作業者は、定期的に標準の塗板(以下機差修正試験板という)を測定機13に挿入し、その塗色に対して多角度分光反射率を測定する。測定結果は、配合ステーション1に転送される。
【0042】
塗装機14は、投入された塗料を塗装対象に塗付する。その際、塗装者は、複数のノズル形状から所望のものを選択して使用する。また、塗装者は、塗装機14に対して塗料塗出圧力、単位時間当たりの塗出量を指定する。
【0043】
塗装者は、日々の塗装作業記録を配合ステーション1に入力する。配合ステーション1は、この塗装作業記録に基づいて利用者特性情報を蓄積する。また、配合ステーション1は、日々の塗料保管状態を確認する。塗料保管状態とは、例えば、塗料の温度、納入後の経過日数等である。
【0044】
中央サーバ2は、工場に設置された品質管理サーバ6から塗料ロット情報を受信し、保持する。この塗料ロット情報は、更新があったときに、配合ステーションに配信される。中央サーバ2は、この塗料ロット情報に基づき、配合推定時の補正データ(塗色基礎データ補正値、ロット間補正データ等)を作成する。
【0045】
また、中央サーバ2は、配合ステーション1から利用者特性情報を所定の時期に受信する。所定の時期は、例えば、毎日午前5時、毎週月曜日の午前5時、毎月1日の午前5時、毎年所定の日の午前5時のように設定される。ただし、特定の配合ステーション1から送信要求があった時期に受信してもよい。
【0046】
また、中央サーバ2は、特定の配合ステーション1に対して現状の利用者特性情報を送信するように要求してもよい。中央サーバ2は、利用者特性情報から塗装店3に保管された塗料の異常を認識すると、その塗装店3に設置された配合ステーション1にアラームを発して報知する。
【0047】
カスタマーサポートセンタ4は、定期的に塗装店3にコンタクトし、各塗装店3の塗料の保存状態、保存量、または受注の有無等を確認する。また、カスタマーサポートセンタ4は、中央サーバ2からの塗料補充確認指示、アラーム対応指示を受信し、所定の対応を取る。
【0048】
例えば、中央サーバ2から塗料補充確認の指示を受信すると、カスタマーサポートセンタ4は、指定された塗装店3にコンタクトし、塗料を補充するか否かを確認する。塗料を補充する必要がある場合、カスタマーサポートセンタ4は、塗料デリバリーセンタ5に塗料の配送を指示する。
【0049】
また、中央サーバ2からアラーム対応指示を受信すると、カスタマーサポートセンタ4は、指定された塗装店3にコンタクトし、塗料の保存状態を確認する。
【0050】
塗料デリバリーセンタ5は、カスタマーサポートセンタ4からの指示にしたがい、指定された販売店へ塗料を配送する。
【0051】
工場に設置された品質管理サーバ6は、中央サーバ2、カスタマサポートセンタ4および塗料デリバリセンタ5のホストコンピュータからの塗料ロット情報に対する要求を受信すると、その要求された塗料ロット情報を返信する。また、品質管理サーバ6は、塗料ロット情報が更新されたときに、更新された情報を中央サーバ2、カスタマサポートセンタ4および塗料デリバリセンタ5のホストコンピュータに送信する。
【0052】
<塗料販売・塗装サービスにおけるデータフロー>
以下図1にしがって、塗料販売と塗装サービスにおけるデータフローを説明する。ここでは、自動車の板金修理時の塗装サービスを考える。いま、顧客が破損した自動車とともに塗装店3に訪れたとする。
【0053】
塗装店3は、自動車の破損部分周辺から塗膜を採取し、測定機13を用いて多角度分光反射率の測定を行う。測定された多角度分光反射率は、オンラインまたはオフラインで配合ステーション1に入力される。
【0054】
配合ステーション1は、カラーマッチングプログラムを実行し、多角度分光反射率から配合情報を求める。カラーマッチングプログラムは、多角度分光反射率を光学濃度に変換し、その光学濃度に適合する顔料(原塗料に相当)の組み合わせを算出する。
【0055】
上述のように配合情報タンク12は、カラーマッチングデータを保持している。カラーマッチングデータは、多数の顔料に対して、その1以上を組み合わせた配合情報(各顔料の配合比率で示されるため、これを配合ベクトルという)と、その配合における塗料の光学濃度とからなる。
【0056】
光学濃度は、顔料の配合において線形計算可能である。そこで、カラーマッチングプログラムは、目的の光学濃度に適合するように多次元空間である配合ベクトルの空間において配合情報の探索処理(以下配合推定という)を実行する。この配合推定については、特開平10−227696、特開平10−48611号公報等に詳述されている。
【0057】
本発明の特徴は、このようなカラーマッチングプログラムによる配合推定において、各種の補正を行う点にある。例えば、測定機13の標準機に対する機差の補正、製造された顔料のロット間補正、販売された顔料の保管状態に依存した経時変化に対する補正、または、塗装を実施する塗装者および塗装装置の特性に対する補正等である。
【0058】
このような補正により、正確な配合情報が推定され塗装店3の塗装者に提示される。塗装者は、この配合情報にしたがい、顔料を配合して目的の塗色の塗料を生成する。そして、塗装者は、塗装機14を使用して生成した塗料を塗装対象に塗付する。
<データ構成>
図2に利用者特性情報のデータ構成を示す。図2は、そのデータ項目とデータ例とを併記して示している。利用者特性情報は、作業番号、日付、作業者、使用した塗料の記録、塗装機、および塗装方法を有している。
【0059】
作業番号は、各塗装作業を区別するユニークな文字列である。日付は、その塗装作業が行われた日付である。作業者は、その塗装作業を遂行した塗装者を識別する文字列である。
【0060】
使用した塗料は、その作業で用いられた塗料の種類と使用量を示す情報である。本実施形態では、塗料コード、ロット番号、および使用量の組み合わせで使用した塗料を記述する。ただし、複数種類の塗料が使用された場合、その種類の数だけ上記組み合わせが列記される。
【0061】
塗料コードとは、塗料の種類を識別するユニークな文字列である。ロット番号は、その塗料が製造されたロットの番号である。使用量は、当該作業において使用したその塗料の使用量である。
【0062】
塗装機は、その塗装作業において使用した塗装機の種類を示すコードである。塗装方法は、塗装時の作業状態を示す記録である。例えば、塗料塗出圧(Output pressure)、単位時間当たりの塗出量(Flow speed)、噴射パターン形(Nozzle shape)、塗出時間(Working time)等が記録される。
【0063】
<測定機13の機差補正処理>
図3に、測定機13の多角度分光反射率測定における機差補正手順を示す。分光反射率は、測定対象塗板を反射する反射光の強度と参照塗板を反射する反射光の強度との各波長における比率である。また、多角度分光反射率は、試料に対する光の入射角または受光角を変えて、このような分光反射率を測定した結果である。
【0064】
本実施形態では、このような多角度分光反射率により物体の塗色を定義する。しかし、このような多角度分光反射率を測定する測定機13(多角度分光測色装置)には一般に機差が存在する。したがって、カラーマッチングを行うためのカラーマッチングデータ(中央サーバ2から配布されるデータ)作成に使用した測定機と配合推定のため、目的試料の測定に使用した測定機13との間に機差があると正確な配合情報が得られない。
【0065】
図3は、そのような機差の補正を行う手順を示す図である。配合ステーション1は、中央サーバ2のカラーマッチングデータを測定した測定機(以下標準機という)の分光反射率(これを標準機反射率という)を有している。標準機反射率は、標準機が複数の機差修正用試験板に対して多角度分光反射率を測定した結果である。標準機反射率は、予め、中央サーバ2から配合ステーション1に送信される。なお、この標準機反射率は、リムーバルメディア、例えばCD−R等に格納し、オフラインで各塗装店3に配布してもよい。
【0066】
また、塗料店には、標準機反射率測定時に使用されるものと同一の機差修正用試験板が予め用意されている。塗装店3では、定期的、例えば、毎朝、機差修正用試験板を用いて多角度分光反射率が測定される。これによって、日ごとの測定機13の誤差状態が記録される。また、測定機13の分光反射率と標準機反射率との関係から機差校正曲線100が作成される。配合ステーション1は、測定機13の測定結果を機差校正曲線100によって補正すればよい。これによって、図3に示したように例えば、測定機13によって測定された分光反射率曲線101が校正後の分光反射率曲線102のように校正される。
【0067】
<光輝材を含む塗料の配合推定と補正>
なお、塗装される塗料が光輝材を含む場合、塗装対象部から反射される光線の角度、すなわち、測定機13が受光する角度により分光反射率が異なる。したがって、光輝材を含む塗料に対しては、複数の受光角で分光反射率を測定し、上記で述べた補正を各角度について繰り返す。
【0068】
また、光輝材に対する配合推定においては、各角度ごとに配合推定による解(配合情報)が異なる場合がある。そのような場合には、所定の基準により、一つの解(配合情報)が選択される。所定の基準とは、例えば、すべての受光角において、誤差が所定値内に収まるか否か等である。
【0069】
<その他の補正>
他の補正も上記の測定機13の機差の校正と同様に考えることができる。例えば、ロット間補正は、同一の種類の塗料におけるロットごとの塗料の差異を補正する。これは、各ロットごとに摘出したサンプル塗料に対して予め標準機により、多角度分光反射率を測定しておく。これは、例えば、特定の受光角において、図3の曲線101のように測定される。このような測定が多数の角度において各色の顔料に対して測定される。
【0070】
塗装店3に保管されている顔料のロット番号は中央サーバ2において既知である。したがって、塗装店3に保管された顔料製造時のロットサンプルにおける多角度分光反射率は、既知である。
【0071】
一方、カラーマッチングに使用するカラーマッチングデータの多角度分光反射率(これを標準反射率という)は、例えば、図3の曲線102のように測定されているとする。すると、各角度、各波長におけるロット間誤差ベクトル(ΔE1,ΔE2,...ΔEn)を得ることができる。ここで、ΔEiは波長λiにおける標準反射率とサンプル塗料における反射率の光学濃度空間における差である。このロット間誤差ベクトルを配合ステーション1に保持し、このロット間誤差ベクトルに基づき、配合情報を補正すればよい。
【0072】
経時変化についても同様である。各塗装店3またはカスタマーサポートセンタ4は、各塗装店3に保管されている塗料を用いて定期的に塗板を作成し、上記ロット間補正と同様に多角度分光反射率を測定すればよい。この測定結果の光学濃度空間における標準反射率との差異を経時変化誤差ベクトル(ΔE1,ΔE2,...ΔEn)のように得ることができる。したがって、顔料の経時変化による誤算も標準反射率からの差異としてロット間誤差と同様に補正できる。
【0073】
塗装者の特性、塗装機の特性による誤差も同様に補正できる。例えば、カラーマッチングに使用するカラーマッチングデータの多角度分光反射率、すなわち、標準反射率を測定した塗板を塗付した塗装者および塗装機を標準塗装者、および標準塗装機とする。
【0074】
そして、定期的、例えば、一年に一度、塗装者ごと塗装機ごとの色合わせを実行すればよい。まず、標準塗装者、および標準塗装機によって塗板を作成し、多角度分光反射率を測定する。このとき使用された塗料と同一ロットで製造された塗料をカスタマーサポートセンタ4または各塗装店3に配布する。
【0075】
次に、同一ロットの塗料を使用して塗板を作成し、多角度分光反射率を測定する。そして、上記標準塗装者および標準塗装機による塗板の多角度分光反射率と各塗装店3における塗装者および塗装機14による塗板の多角度分光反射率との光学濃度空間における差異を塗装特性誤差ベクトルして定義し、配合推定の結果を補正すればよい。
【0076】
なお、このような誤差ベクトルを塗装機14の塗料塗出圧、単位時間当たりの塗出量、噴射パターン形、塗出時間等を変化させて計測してもよい。そして、例えば、塗装機14の塗料塗出圧に対する誤差ベクトルの依存性を求めて補正してもよい。このような作業方法に基づく標準反射率との差異を測定すれば、すべての塗装者に対して、色合わせ、すなわち、塗装特性誤差ベクトルを測定する必要はない。
<配合推定処理>
図4は、配合ステーション1の配合推定処理の概要を示す図である。ここでは、カラーマッチングデータとして、基礎データベース20と、実績データベース21と、ロット管理データベース22等を参照し配合推定を行う例を示す。基礎データベース20、実績データベース21とロット管理データベース22等のデータは、事前にオンラインまたはオフラインで中央サーバ2から配合ステーション1に配布される。これらのデータに基づき、配合ステーション1は、カラーマッチングプログラムを実行し、図4の処理を実行する。
【0077】
基礎データベース20には、各原色の顔料ごと、所定の顔料濃度ごとに光学濃度が記録される。この顔料は、目的の塗色の塗料を生成するために合成される塗料である。また、光学濃度は、上述の標準塗装者が標準塗装機により塗付した塗板を標準機により測定した多角度分光反射率から求められる。
【0078】
顔料濃度は、各顔料に含まれる光輝剤の量により調製する。すなわち、以下の(式1)により顔料濃度を定義する。
【0079】
顔料濃度=顔料質量/(顔料質量+光輝材質量)(式1)
基礎データベース20は、このような光学濃度を予め多数の原色を発色する顔料に対して求めた結果を保持している。
【0080】
実績データベース21は、異なる顔料濃度における1以上の顔料を配合した塗料を塗付した塗板から多角度分光反射率を求め、光学濃度に換算した実績データを有している。カラーマッチングを正確に行うためには、このような実績データを極力多く保有することが望ましい。
【0081】
ロット管理データベース22は、過去の製造ロットごとの顔料から得られる塗色情報のサンプルデータである。ロット管理データベース22と、基礎データベース20または実績データベース21の対応する顔料種類、顔料濃度による光学濃度の差からロット間誤差ベクトルが算出される。なお、ロット間誤差ベクトルを予め中央サーバ2で作成しておき、配合ステーション1に配布してもよい。
【0082】
機差構成データベースは、図3に示した機差校正曲線100を保持している。また、経時変化データベースは、塗装店3に保管中の顔料の最新の分光反射率データを保持している。配合ステーション1は、この保管中の顔料の最新の分光反射率データと標準反射率との差から経時変化誤差ベクトルを算出する。ただし、中央サーバ2が経時変化データベースのデータを収集し、経時変化誤差ベクトルを算出し、配合ステーション1に配布するようにしてもよい。
【0083】
また、塗装特性データベースは、当該塗装店3の塗装機14を使用した塗装者による最新の色合わせ時の分光反射率データを有している。色合わせとは、図3で説明したように、定期的に、塗装店3の塗装者ごと塗装機ごとに作成した塗板の多角度分光反射率を測定し、標準塗装者、および標準塗装機によるものと比較する処理である。
【0084】
配合ステーション1は、この比較結果から塗装特性誤差ベクトルを算出する。ただし、中央サーバ2が塗装特性データベースのデータを収集し、塗装特性誤差ベクトルを算出し、配合ステーション1に配布するようにしてもよい。
【0085】
配合推定処理では、まず、測定機13から目標色の分光反射率が入力される。配合ステーション1は、機差校正曲線100により分光反射率の機差を補正する。さらに、配合ステーション1は、機差が補正された分光反射率を光学濃度に変換する。
【0086】
次に、配合ステーション1は、カラーマッチングプログラムを実行し、目標の光学濃度に適合する顔料の配合を求める。このとき、上記経時変化データベース、および塗装特性データベースにより経時変化誤差ベクトルおよび塗装者特性誤差ベクトルが参照され、各誤差が補正される。また、ロット管理データベース22が参照され、ロット間の誤差が補正される。
【0087】
配合推定では、目標の光学濃度に近い複数種類の配合情報が特定される。このような目標の光学濃度に近い配合を近似色群という。配合ステーション1は、得られた近似色群内で、光学濃度の顔料濃度依存性を補正する。
【0088】
理論的には、各顔料や原塗料の光学濃度の加算に対して線形であることが望ましい。しかし、光学濃度は、配合、すなわち、顔料ごとの比率の他、顔料の濃度そのものにも依存する。すなわち、複数の顔料や原塗料を混合する場合、混合された塗料の光学濃度は、実際上は、非線形性を有する。
【0089】
そこで、顔料濃度の変化に対する光学濃度の変化が線形と見なせる微小範囲で顔料濃度を変化させ、この微小変化の範囲で、複数種類の顔料を混合した光学濃度の加算値の変化を求め、上記非線形性を補正する。
【0090】
次に、配合ステーション1は、顔料の配合を推定し、結果を出力し、配合を支援する。
【0091】
以上述べたように、配合ステーション1は、塗装対象箇所の塗膜の多角度分光反射率を入力され、カラーマッチングにより配合推定を行い、塗装店3における配合を支援する。このため、塗装対象箇所周辺の塗膜に経時変化があっても、現状の塗色に合わせて塗装をすることができる。
【0092】
その際、配合ステーション1は、測定機13の機差補正、塗料や顔料のロット間補正、顔料の経時変化に対する補正、塗装者の特性、塗装機14の特性の補正を実行する。このため、破損部分の塗色を高精度で再現できる。
【0093】
また、これらのカラーマッチングで使用するカラーマッチングデータ、例えば、基礎データ、実績データ、ロット管理データ等のデータは中央サーバ2で一元的に管理され、配合ステーション1に定期的に配信される。このため、異なる塗装店3、異なる塗装者が塗装作業を行っても、全国一律に品質の変動が少ない塗膜を形成し、塗装サービスを提供できる。
【0094】
<コンピュータグラフィックス画像による変形例>
上記の実施の形態では、測定機13が測定した多角度分光反射率に基づいて配合推定を行った。しかし、本発明の実施はこのような構成には限定されない。例えば、分光反射率をコンピュータグラフィックス画像データから求めてもよい。このような、コンピュータグラフィックス画像データから分光反射率を求める手順は、特開平10−222653号公報に詳述されている。図5は、そのようなコンピュータグラフィックス画像データから分光反射率を求める染色デザイン端末30を配合ステーション1および配合ステーション1の塗装機14とネットワークで接続したシステムである。
【0095】
この染色デザイン端末30のオペレータは、不図示の画面上に塗装対象に塗料を塗付して表示させる。顧客は、染色デザイン端末30の画面上で塗色を確認する。
【0096】
染色デザイン端末30から配合ステーション1へは、塗色特性値、例えば、多角度分光反射率やBRDF(bidirectional reflectance distribution function)が送信される。配合ステーション1は、これらの塗色特性値を光学濃度に変換し、配合推定を行う。推定された配合情報は、塗色デザイン端末30に返信される。
【0097】
また、この配合情報を塗装ステーションに送信して塗板作成支援情報として提供してもよい。 塗装ステーションの塗装機14は、提供された配合情報にしたがい顔料から塗料を合成し、塗装すればよい。
【0098】
この場合、デザイン端末30と配合ステーション1とを接続するネットワークとしては、電話回線、CATVネットワーク、無線LAN、LAN等を利用できる。そのときの通信プロトコルは、TCP/IPのファイル転送でもよい、電子メールでもよい。
【0099】
<塗料番号による変形例>
上記実施形態では、塗装対象箇所周辺の塗膜を試料とし、多角度分光測色装置により、分光反射率を求め、配合推定を行った。しかし、本発明の実施は、このような構成には限定されない。
【0100】
例えば、塗料メーカが販売する塗料には、塗料の配合を指定する番号(以下、塗料番号という。識別番号に相当)が定義され、その塗料番号に基づき、本来の塗料製造時の配合情報を得ることができる。したがって、塗料の塗料番号が分かればカラーマッチングによってあえて配合推定を行う必要はないともいえる。
【0101】
また、例えば、自動車の塗料であれば、その型式、年式が分かれば使用された塗料の塗料番号は、管理されている。そこで、ネットワークを介して、そのような型式、年式、塗装部位により塗料を指定できれば便宜である。
【0102】
しかし、上記実施の形態で述べたように、ロット間誤差、経時変化、塗装者の特性、塗装機の特性により、単に塗料番号に基づいて塗装しただけでは、所望の塗色を得られない場合もある。
【0103】
そのような場合には、上述したような顔料のロット間誤差ベクトル、経時変化時の誤差ベクトルにより、本来の標準顔料に対する配合を補正すればよい。
【0104】
図6にこのような配合情報の推定や補正を行う塗色配合情報提供システムの例を示す。図6のシステムは、塗装店3の配合ステーション1と、中央サーバ2と品質管理サーバ6とをネットワークで接続して構成される。
【0105】
品質管理サーバ6は、すべての種類の塗料に対する配合情報を管理する。中央サーバ2は、各配合ステーション1に対する配合情報の配信を管理する。塗装店3の配合ステーション1は、定期的、または、バッチ的に配合情報の更新を中央サーバ2に要求する。
【0106】
すると、中央サーバ2は、さらに、最新の配合情報を品質管理サーバ6に要求する。これに対して、品質管理サーバ6は、最新の配合情報を返信する。中央サーバ2は、このようにして得られた最新の配合情報を配合ステーション1に返信する。
【0107】
配合ステーション1は、保管している顔料のロット番号、ロット間誤差ベクトル、経時変化誤差ベクトル、塗装特性誤差ベクトルを有している。配合ステーション1は、中央サーバ2から送信された配合情報をこれらの誤差ベクトルに基づいて補正して塗板の作成を支援する配合情報を出力すればよい。
【0108】
さらに、塗装対象の元の塗料のロット番号が既知の場合には、そのロット番号をキーにして、ロット間誤差ベクトルを検索し、配合情報を補正すればよい。このためには、例えば、自動車においては、メーカ、型式、年式とともにその塗装に使用した塗料の塗料番号とロット番号とを記録しておけばよい。
【0109】
また、例えば、ロット間誤差が補正された塗料の配合情報を品質管理サーバ6がロットごとに保持するようにしてもよい。その場合には、配合ステーション1は、中央サーバ2を介して品質管理サーバ6から与えられた配合情報に自身が保管する顔料に対する補正のみ行えばよい。
【0110】
図7は、塗装店3の配合端末32と配合情報サーバ33とからなる塗色配合情報提供システムの例である。このシステムでは、配合端末32は、配合情報サーバ33に塗料番号、塗色の種類、ロット番号、現在保管している顔料のロット番号等を指定して配合情報を問い合わせる。
【0111】
すると、配合情報サーバ33は、配合端末32に対して該当配合情報、塗料作成注意情報等を回答する。また、このとき、配合情報サーバ33は、指定されたロット番号からロット間補正ベクトルを生成し、ロット間補正を行った配合情報を返信するようにしてもよい。また、配合情報サーバ33は、上記実施形態と同様、経時変化誤差ベクトル、塗装特性誤差ベクトルによる補正を行っても良い。
【0112】
また、配合端末32がロット番号を指定する代わりに、各塗装店3で保管中の顔料のロット番号を配合情報サーバ33で管理してもよい。
【0113】
なお、配合端末32から配合情報サーバ33へ配合情報を問い合わせる場合、上記のように塗料番号等を指定する代わりに、塗装対象の製品、その部位、色の種別等を指定してもよい。例えば、「自動車メーカA社、車種B、○○年式車、白の車種のドア部分」のように問い合わせてもよい。配合情報サーバ33は、そのような指定に対して、メーカ、車種、年式、色、部位等の情報に基づき配合情報を検索し、返信すればよい。
【0114】
<測定機13の変形>
上記実施形態では、測定機13として、いわゆる多角度分光測色装置を使用した。しかし、本発明の実施はそのような構成には限定されない。例えば、測定機13として、いわゆる変角分光測色装置を用いてもよい。
【0115】
変角分光測色装置は、試料に照明光を投影し、その反射光から試料表面の反射率を測定する。照明光は、白色であり、多数の可視波長を含む。また、変角分光測色装置は、試料を回転させ、複数の入射角(およびその試料表面の法線に対して対象な受光角)において試料表面の反射率を測定する。
【0116】
すなわち、変角分光測色装置は、複数の波長における複数の受光角において試料表面の分光反射率を測定する。変角分光測色装置による試料(塗膜)の変角分光反射率の測定方法については、例えば、特開平10−227696号公報に詳述されている。
【0117】
<その他の変形例>
上記実施の形態では、測定機13に対する校正は、配合ステーション1で行った。しかし、このような校正を配合ステーション1内で行ってもよい。配合ステーション1の不図示のCPUにおいて図3に示した機差校正曲線100による校正処理を行う校正プログラムを実行させるようにしてもよい。
【0118】
上記実施形態では、配合推定結果または配合情報検索結果に対して、ロット間誤差、経時変化、塗装者の特性、塗装機の特性により補正を行う例を説明した。しかし、本発明の実施はそのような手順には限定されない。例えば、要求される精度やコストを勘案し、配合情報の検索のみを実行し、その補正は実行しないようなシステムを構築してもよい。また、配合情報の推定のみを実行し、その補正は実行しないようなシステムを構築してもよい。このようなシステムにより、ネットワークを通じて塗料の配合情報一元的に管理し、塗装店等に提供できる。0上記実施形態では、顔料から塗料を配合する場合の配合推定の例を示した。しかし、本発明の実施は、そのような手順には、限定されない。例えば、顔料に代えて、顔料を溶剤に溶解させた原色塗料から塗料を配合する場合おいても本発明の実施は、可能である。ただし、原色塗料から配合推定する場合には、溶剤に含まれる顔料比率、すなわち、顔料濃度が制約されるため、発色できる色域が制限される。
【0119】
上記実施形態では、中央サーバ2において、各種誤差ベクトル等の補正データを生成、配合ステーション1に配信した。しかし、本発明の実施は、このような構成や手順には、限定されない。例えば、ロットごとの塗料の分光反射率、または光学濃度含む塗料ロット情報を配合ステーション1に配信し、配合ステーション1においてロット間補正データ生成してもよい。また、配合ステーション1において利用者特性情報から補正情報を生成してもよい。
【0120】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、顧客所望の塗色を再現し、塗装店・塗装者の特性に依存せず均一な塗装サービスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る塗色配合情報提供システムのシステム構成図
【図2】 利用者特性情報のデータ構成図
【図3】 測定機13の機差校正手順を示す図
【図4】 配合ステーション1の配合推定処理の概要図
【図5】 変形例に係る塗色配合情報提供システムのシステム構成図(1)
【図6】 変形例に係る塗色配合情報提供システムのシステム構成図(2)
【図7】 変形例に係る塗色配合情報提供システムのシステム構成図(3)
【符号の説明】
1 配合ステーション
2 中央サーバ
3 塗装店
4 カスタマーサポートセンタ
5 塗料デリバリーセンタ
6 品質管理サーバ
11 利用者特性情報記録部
12 配合情報タンク
13 測定機
14 塗装機
15 保管塗料
20 基礎データベース
21 実績データベース
22 ロット管理データベース
Claims (2)
- 分光測色装置および塗装機と連係する端末装置であり、
原塗料を配合して生成される商品塗料の塗色を配合比率の線形計算が可能な光学濃度の形式で記述した塗色情報とそのときの配合比率を含む配合情報との組み合わせとからなるカラーマッチングデータをネットワークを介してサーバ装置から受信する通信部と、
前記カラーマッチングデータを記録するとともに、前記商品塗料による塗装を実行する塗装者および塗装装置の塗装特性に係る情報、前記原塗料の保管状態に係る情報および前記原塗料の経時変化に係る情報の少なくとも一つを含む、そのような利用者特性情報、および塗装対象の塗色を測定して塗色情報を出力する分光測色装置の機差に係る情報の少なくとも1つを記録する記録部と、
ユーザ所望の商品塗料が塗付された試料を分光測色装置により測定した反射率を示す塗色情報を入力する入力部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記入力部から入力されたユーザ所望の商品塗料の塗色情報を光学濃度に変換し、前記変換された光学濃度をえるための複数の原塗料を組合せた配合比率からなる配合情報を前記記録部に記録されたカラーマッチングデータから探索するとともに、
ネットワーク上のサーバ装置から前記通信部を通じて前記原塗料の製造時の製造ロット間の塗色変動に係る情報を受信し、
前記製造ロット間の塗色変動に係る情報は、それぞれの波長(λ1,λ2,...λn)に対する標準反射率として規定される原塗料の分光反射率とロット番号で特定されるロットサンプルの原塗料の分光反射率との光学濃度空間における第1の誤差ベクトル(ΔE1,ΔE2,...ΔEn)として記述され、
前記商品塗料による塗装を実行する塗装者および塗装機の塗装特性に係る情報は、所定の標準サンプルと前記塗装機に係るそれぞれの塗装者によって塗装された塗装サンプルとの光学濃度空間における、分光反射率の第2の誤差ベクトルとして記述され、
前記原塗料の保管状態に係る情報および前記原塗料の経時変化に係る情報は、所定の標準サンプルと、前記塗装機に係るそれぞれの保管先の原塗料を定期的に測色することによって作成されたサンプルとの光学濃度空間における、分光反射率の第3の誤差ベクトルとして記述され、
塗装対象の塗色を測定する分光測色装置の機差に係る情報は、標準機として規定される
分光測色装置による分光反射率と前記分光測色装置による分光反射率の対応関係から、それぞれの分光測色装置の測定結果を校正する機差校正曲線の情報として記述され、
前記制御部は、前記第1から第3の誤差ベクトルの少なくとも1つを用いた前記探索された配合情報のそれぞれの波長の誤差ベクトルで得られる誤差の補正、および前記分光測色装置による測定結果を、前記分光測色装置に対する標準機の分光反射率を記録した前記前記校正曲線の情報によって校正することによる前記探索された配合情報の校正のいずれか1以上を実行する端末装置。 - 分光測色装置および塗装機と連係し、
原塗料を配合して生成される商品塗料の塗色を配合比率の線形計算が可能な光学濃度の形式で記述した塗色情報とそのときの配合比率を含む配合情報との組み合わせとからなるカラーマッチングデータをネットワークを介してサーバ装置から受信する通信部と、
前記カラーマッチングデータを記録するとともに、前記商品塗料による塗装を実行する塗装者および塗装装置の塗装特性に係る情報、前記原塗料の保管状態に係る情報および前記原塗料の経時変化に係る情報の少なくとも一つを含む、そのような利用者特性情報、および塗装対象の塗色を測定して塗色情報を出力する分光測色装置の機差に係る情報の少なくとも1つを記録する記録部と、
ユーザ所望の商品塗料が塗付された試料を分光測色装置により測定した反射率を示す塗色情報を入力する入力部と、
制御部と、を備えるコンピュータが、実行する配合計算方法であり、
前記制御部は、前記入力部から入力されたユーザ所望の商品塗料の塗色情報を光学濃度に変換し、前記変換された光学濃度をえるための複数の原塗料を組合せた配合比率からなる配合情報を前記記録部に記録されたカラーマッチングデータから探索するとともに、
ネットワーク上のサーバ装置から前記通信部を通じて前記原塗料の製造時の製造ロット間の塗色変動に係る情報を受信し、
前記製造ロット間の塗色変動に係る情報は、それぞれの波長(λ1,λ2,...λn)に対する標準反射率として規定される原塗料の分光反射率とロット番号で特定されるロットサンプルの原塗料の分光反射率との光学濃度空間における第1の誤差ベクトル(ΔE1,ΔE2,...ΔEn)として記述され、
前記商品塗料による塗装を実行する塗装者および塗装機の塗装特性に係る情報は、所定の標準サンプルと前記塗装機に係るそれぞれの塗装者によって塗装された塗装サンプルとの光学濃度空間における、分光反射率の第2の誤差ベクトルとして記述され、
前記原塗料の保管状態に係る情報および前記原塗料の経時変化に係る情報は、所定の標準サンプルと、前記塗装機に係るそれぞれの保管先の原塗料を定期的に測色することによって作成されたサンプルとの光学濃度空間における、分光反射率の第3の誤差ベクトルとして記述され、
塗装対象の塗色を測定する分光測色装置の機差に係る情報は、標準機として規定される分光測色装置による分光反射率と前記分光測色装置による分光反射率の対応関係から、それぞれの分光測色装置の測定結果を校正する機差校正曲線の情報として記述され、
前記制御部は、前記第1から第3の誤差ベクトルの少なくとも1つを用いた前記探索された配合情報のそれぞれの波長の誤差ベクトルで得られる誤差の補正、および前記分光測色装置による測定結果を、前記分光測色装置に対する標準機の分光反射率を記録した前記前記校正曲線の情報によって校正することによる前記探索された配合情報の校正のいずれか1以上を実行する配合計算方法。
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