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JP3871013B2 - 錫−銅合金電気めっき浴及びそれを使用するめっき方法 - Google Patents

錫−銅合金電気めっき浴及びそれを使用するめっき方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、錫−鉛合金(半田)めっき材料の代替として有効な錫−銅合金電気めっき浴及びめっき方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、半田付けを必要とする部品、例えばチップ部品、水晶発振子、バンプ、コネクターピン、リードフレーム、各種フープ材、パッケージのリードピン、プリント基板の回路などの電子機器を構成する部品等に対しては、錫めっきや錫−鉛合金めっきを施すことが行われていた。
【0003】
また、プリント基板の製造などにおいて、錫めっきや錫−鉛合金めっき皮膜は、エッチングレジスト用としても広く使用されていた。
【0004】
しかし近年、環境保護問題対策として鉛の使用規制が強まり、錫−鉛合金めっき材料の代替として鉛フリーのめっき浴が望まれるようになった。この場合、錫めっきでは、半田付け性の劣化や錫めっき皮膜にひげ状結晶ウイスカー発生の問題があり、対処できない。
【0005】
従って、錫を含む合金めっきの開発が種々行われており、錫−銅合金めっきも注目されている。この錫−銅合金めっき浴としては、従来から銅が50重量%以上含まれる銅−錫合金めっきが知られており、そのめっき浴はシアン化アルカリ或いはピロリン酸アルカリを錯化剤として用いた強アルカリ性浴(特開平8−27590号公報等)、又は硫酸ベースで錯化剤を使用しない単純浴が開発されてきた。しかし、電子部品やプリント基板に使用されている錫めっき、錫−鉛合金めっきに代わる半田代替めっき浴には使用できなかった。その理由は、薄膜としては銅が0.01〜10重量%の錫−銅合金めっきが必要であるが、そのような錫−銅合金組成を析出させるめっき浴は開発されていなかったことが挙げられる。なおかつ、有機レジストフィルム等を使用しているプリント基板等の被めっき物では、アルカリ性めっき浴中でその剥離が発生しやすくなるので、中性〜酸性浴でなければならないからである。更に、硫酸ベースの単純浴は強酸性であるが、錫、錫−銅合金等の可溶性陽極を使用すると、無通電時に陽極表面の錫が溶出し、銅が析出する置換反応が起こるので、めっき浴管理が難しかった。これに加えて、錫化合物の沈殿が発生しやすく、浴安定性が悪く、長期使用ができなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、錫−鉛合金めっきの代替として、半田付けの必要な各種部品に対して良好な半田付け性を与え、或いはエッチングレジスト用として有効な錫−銅合金めっき皮膜を形成し得る錫−銅合金電気めっき浴及びそれを使用するめっき方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明は、上記目的を達成するため、第1に、水溶性錫塩と、水溶性銅塩と、無機酸及び有機酸並びにそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上と、チオアミド化合物とを含有し、チオアミド化合物の含有量が1〜200g/Lであり、pHが10以下であることを特徴とする錫−銅合金電気めっき浴、第2に、水溶性錫塩と、水溶性銅塩と、カルボン酸,ラクトン化合物,縮合リン酸及びホスホン酸並びにそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上と、チオアミド化合物と、カルボン酸,ラクトン化合物,縮合リン酸及びホスホン酸以外の無機酸及び有機酸並びにそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上とを含有し、チオアミド化合物の含有量が1〜200g/Lであり、pHが10以下であることを特徴とする錫−銅合金電気めっき浴、及び第3に、これを用いためっき方法を提供する。
【0008】
本発明の錫−銅合金電気めっき浴は、半田付け用或いはエッチングレジスト用の錫めっきや錫−鉛合金めっきの代替として、鉛フリー半田めっきを必要とするチップ部品、水晶発振子、バンプ、コネクターピン、リードフレーム、各種フープ材、パッケージのリードピン、プリント基板の回路などの電子機器等を構成するあらゆる部品に対して適用することができる。
【0009】
また、この錫−銅合金めっき浴は、陰極電流密度範囲が広く、バレル、ラック、ラックレス(噴流、フロー等の高速めっき)などの各めっき方法により良好な錫−銅合金めっき皮膜を得ることができ、また、セラミック、鉛ガラス、プラスチック、フェライト等の絶縁性材料を複合化した電子部品の該絶縁性材料に侵食、変形、変質等を生じさせることなく錫−銅合金めっきを行うことができ、しかも錫、錫−銅合金等の可溶性陽極やめっき皮膜への銅の置換析出も起こらず、銅の優先析出が生じないものであり、作業上有利である。
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の錫−銅合金電気めっき浴は、水溶性錫塩と、水溶性銅塩と、無機酸及び有機酸並びにそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上と、チオアミド化合物及びチオール化合物から選ばれる1種又は2種以上とを含有する。
【0011】
ここで、錫塩としては第1錫塩と第2錫塩があり、第1錫塩(錫塩(II))としては、メタンスルホン酸第1錫等の有機スルホン酸錫(II)、硫酸錫(II)、塩化錫(II)、臭化錫(II)、ヨウ化錫(II)、リン酸錫(II)、ピロリン酸錫(II)、酢酸錫(II)、クエン酸錫(II)、グルコン酸錫(II)、酒石酸錫(II)、乳酸錫(II)、コハク酸錫(II)、スルファミン酸錫(II)、ホウフッ化錫(II)、ギ酸錫(II)、ケイフッ化錫(II)等が挙げられ、第2錫塩(錫塩(IV))としては、錫酸ナトリウム、錫酸カリウム等が挙げられる。
【0012】
また、銅塩としては、第1銅塩と第2銅塩があり、第1銅塩(銅塩(I))としては、シアン化銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、チオシアン酸銅(I)等が挙げられ、第2銅塩(銅塩(II))としては、メタンスルホン酸銅(II)等の有機スルホン酸銅(II)、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)、リン酸銅(II)、ピロリン酸銅(II)、酢酸銅(II)、クエン酸銅(II)、グルコン酸銅(II)、酒石酸銅(II)、乳酸銅(II)、コハク酸銅(II)、スルファミン酸銅(II)、ホウフッ化銅(II)、ギ酸銅(II)、ケイフッ化銅(II)等が挙げられる。
【0013】
この場合、錫塩のめっき浴中での含有量は、錫として1〜99g/L、特に5〜59g/Lであり、また銅塩の含有量は、銅として0.001〜99g/L、特に0.01〜54g/Lであることが好ましいが、銅が0.01〜30%(重量%、以下同じ)の錫−銅合金めっき皮膜を得る場合は、錫塩の含有量は錫として1〜99g/L、特に5〜59g/L、銅塩の含有量は銅として0.001〜30g/L、特に0.01〜18g/Lとすることが好ましい。
【0014】
次に、無機酸もしくは有機酸又はその水溶性塩としては、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸、リン酸、スルファミン酸、スルホン酸(脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸)、カルボン酸(脂肪族飽和カルボン酸、芳香族カルボン酸、アミノカルボン酸等)、縮合リン酸、ホスホン酸等から選ばれる酸又はそれらの塩の1種又は2種以上が挙げられる。
【0015】
ここで、脂肪族スルホン酸又は芳香族スルホン酸としては、置換又は未置換のアルカンスルホン酸、ヒドロキシアルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などが挙げられる。未置換アルカンスルホン酸は、Cn2n+1SO3H(但し、nは1〜5、好ましくは1又は2である。)で示されるものが使用できる。
【0016】
未置換のヒドロキシアルカンスルホン酸は、下記式で示されるものが使用できる。
【0017】
【化1】
Figure 0003871013
(但し、mは0〜2、kは1〜3である。)
【0018】
置換のアルカンスルホン酸、ヒドロキシアルカンスルホン酸は、そのアルキル基の水素原子の一部がハロゲン原子、アリール基、アルキルアリール基、カルボキシル基、スルホン酸基などで置換されたものが使用できる。
【0019】
一方、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸は、下記式で示されるものである。
【0020】
【化2】
Figure 0003871013
【0021】
置換ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸は、ベンゼン環、ナフタレン環の水素原子の一部が水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、メルカプト基、アミノ基、スルホン酸基などで置換されたものが使用できる。
【0022】
具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、プロパンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、2−ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、クロルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシペンタンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−スルホ酢酸、2−スルホプロピオン酸、3−スルホプロピオン酸、スルホコハク酸、スルホマレイン酸、スルホフマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホサリチル酸、ベンズアルデヒドスルホン酸、p−フェノールスルホン酸などが例示される。
【0023】
一方、カルボン酸は、脂肪族二重結合を有さないものが好ましい。具体的に脂肪族飽和カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、グルコン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸等のジカルボン酸、クエン酸、トリカルバリル酸等のトリカルボン酸などを挙げることができ、芳香族カルボン酸としては、フェニル酢酸、安息香酸、アニス酸などが挙げられる。また、アミノカルボン酸としては、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸などが挙げられる。縮合リン酸としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ポリリン酸(重合度5以上)、ヘキサメタリン酸などが挙げられ、ホスホン酸としては、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸などが挙げられる。
【0024】
塩としては、上記酸のアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム、リチウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム、カルシウム、バリウム塩等)、アンモニウム塩、有機アミン塩(モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等)などが挙げられる。
【0025】
これら成分のめっき浴中の含有量は50g/L以上、特に100g/L以上が好ましく、また600g/L以下、より好ましくは500g/L以下、更に好ましくは400g/L以下、最も好ましくは300g/L以下であることが好ましい。少なすぎるとめっき浴の安定性が悪くなり、沈殿物が発生しやすくなる傾向となり、多すぎると効果のない過剰量となる傾向となる。
【0026】
この場合、本発明においては、上記無機酸、有機酸又はその水溶性塩として、(A)上記カルボン酸、縮合リン酸、ホスホン酸又はそれらの水溶性塩、更にはこれに加えて、グルコノラクトン、グルコノヘプトラクトン等のラクトン化合物から選ばれる1種又は2種以上を配合すると共に、(B)上記(A)成分以外の無機酸、有機酸又はその水溶性塩、即ち硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸、リン酸、スルファミン酸、上記スルホン酸類などや、それらの水溶性塩の1種又は2種以上を配合することが好ましい。
【0027】
上記(A)成分のカルボン酸、ラクトン化合物、縮合リン酸、ホスホン酸及びそれらの水溶性塩は、その1種を単独で又は2種以上を併用して使用することができるが、特にクエン酸、酒石酸、コハク酸、グルコン酸、リンゴ酸、EDTA、NTA、マロン酸及びそれらの水溶性塩が好ましい。そのめっき浴中の含有量は50〜500g/L、より好ましくは50〜300g/L、特に100〜300g/Lとすることが好ましい。少なすぎるとめっき浴の安定性が悪くなり、沈殿物が発生しやすくなる傾向となる。また、上記の量を超えて配合してもそれ以上の効果はなく、後述する界面活性剤を添加する場合には、界面活性剤が十分に溶解せずに塩析するおそれがある。
【0028】
一方、上記(B)成分の無機酸及び有機酸としては、特に硫酸、塩酸、硝酸が好ましく、また塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩が好ましい。その配合量は、めっき浴中5〜200g/L、より好ましくは30〜200g/L、特に30〜100g/Lであることが好ましく、少なすぎると、バレル法などでは析出するめっき皮膜中の錫と銅の合金比率が安定しない場合が生じ、浴電圧が高くなる傾向がある。また、上記の量を超えて配合しても、それ以上の効果はなく、界面活性剤を配合する場合に界面活性剤が十分に溶解せず、塩析しやすくなる傾向となる。なお、このように(A)成分に加えて上記(B)成分を配合する場合、(B)成分は、導電性塩及び析出めっき薄膜の合金組成安定剤として作用する。
【0029】
本発明のめっき浴には、チオアミド化合物又はチオール化合物を浴安定剤又は錯化剤として添加する。チオアミド化合物又はチオール化合物としては、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジイソプロピルチオ尿素、アセチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3−ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジド、テトラメチルチオ尿素等の炭素数1〜15のチオアミド化合物又はメルカプト酢酸(チオグリコール酸)、メルカプトコハク酸(チオリンゴ酸)、メルカプト乳酸等の炭素数2〜8のチオール化合物を用いることができ、特に、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジイソプロピルチオ尿素、アセチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3−ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジド、テトラメチルチオ尿素、メルカプトコハク酸、メルカプト乳酸、チオグリコール酸又はそれらの水溶性塩(例えばアルカリ金属塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩など)が好ましい。
【0030】
チオアミド化合物又はチオール化合物のめっき浴中の含有量は1〜200g/L、特に5〜100g/Lとすることが好ましい。少なすぎるとその添加効果が十分に発揮し得ない場合があり、多すぎると析出するめっき皮膜の結晶の微細化を阻害する場合がある。
【0031】
本発明のめっき浴には、必要に応じて非イオン界面活性剤を配合することができる。
非イオン界面活性剤は、めっき皮膜表面を平滑緻密化させ、析出合金組成を均一化するものとして作用する。この非イオン界面活性剤としては、アルキレンオキシド系のものが好適であり、ポリオキシエチレンβ−ナフトールエーテル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコールエーテル、ポリエチレングリコールなどを使用することができる。その配合量は、めっき浴中0.01〜50g/L、特に2〜10g/Lであることが好ましく、少なすぎると高電流密度でヤケやコゲが発生する場合があり、多すぎるとめっき皮膜が黒っぽくなったり、色ムラが発生するなどの不利を生じる場合がある。
【0032】
本発明のめっき浴には、必要に応じ更に陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の1種又は2種以上を配合することができる。この場合、陽イオン界面活性剤の例としては、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデセニルジメチルエチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルアンモニウムベタイン、オクタデシルジメチルアンモニウムベタイン、ジメチルベンジルドデシルアンモニウム塩、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ドデシルピコリニウム塩、ドデシルイミダゾリウム塩、オレイルイミダゾリウム塩、オクタデシルアミンアセテート、ドデシルアミンアセテートなどが挙げられ、陰イオン界面活性剤の例としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、(ポリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、ドデシル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO12)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエテレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられ、両性界面活性剤の例としては、ベタイン、スルホベタイン、イミダゾリウムベタインなどが挙げられ、また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化或いはスルホン化付加物も使用できる。これらの界面活性剤の配合量は、めっき液中0〜50g/L、好ましくは0.01〜50g/L、特に2〜10g/Lが好ましい。
【0033】
また、本発明のめっき浴には、めっき皮膜表面の平滑剤及び2価の第1錫イオンの酸化防止剤として、メルカプト基含有芳香族化合物、ジオキシ芳香族化合物及び不飽和カルボン酸化合物の1種又は2種以上を添加することができる。この場合、メルカプト基含有芳香族化合物としては、2−メルカプト安息香酸、メルカプトフェノール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトエチルアミン、メルカプトピリジン等が挙げられ、ジオキシ芳香族化合物としては、ジオキシベンゾフェノン、3,4−ジオキシフェニルアラニン、レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、ジオキシヘキサン、ジパリン等が挙げられ、不飽和カルボン酸化合物としては、安息香酸、フマル酸、フタル酸、アクリル酸、シトラコン酸、メタクリル酸等が挙げられる。これら成分のめっき液中の配合量は0.001〜20g/L、特に0.001〜5g/Lとすることが好ましい。
【0034】
更に、本発明のめっき浴には、めっき薄膜表面の光沢剤としてアルデヒド化合物を1種又は2種以上添加することができる。この場合、アルデヒド化合物としては、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、2,4−ジクロロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、サリチルアルデヒド、2−チオフェンアルデヒド、3−チオフェンアルデヒド、o−アニスアルデヒド、m−アニスアルデヒド、p−アニスアルデヒド、サリチルアルデヒドアリルエーテル等が挙げられる。これら成分のめっき液中の配合量は0.001〜10g/L、特に0.05〜0.5g/Lとすることが好ましい。
【0035】
本発明の錫−銅合金電気めっき浴には、更に水溶性金塩、水溶性銀塩、水溶性亜鉛塩、水溶性ビスマス塩、水溶性ニッケル塩、水溶性コバルト塩、水溶性パラジウム塩から選ばれる1種又は2種以上の水溶性塩を配合することが好ましい。これらの水溶性金属塩を配合することにより、該金属が錫、銅と共に共析して緻密な錫−銅−該金属系3元合金めっきを形成したり、或いは微量重金属剤として働き、緻密な錫−銅合金めっき皮膜を形成し、半田濡れ性が向上し、熱処理後の変色を防止する。
【0036】
上記水溶性金属塩として、具体的には、亜硫酸金(I)ナトリウム、塩化銀(I)、硫酸銀(I)、メタンスルホン酸銀(I)、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸ビスマス(III)、メタンスルホン酸ビスマス(III)、塩化ニッケル(II)・6水和物、硫酸ニッケル(II)・6水和物、スルファミン酸ニッケル(II)・4水和物、塩化コバルト(II)・6水和物、硫酸コバルト(II)・7水和物、スルファミン酸コバルト(II)・4水和物、塩化パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)等が挙げられる。
【0037】
上記水溶性金属塩の配合量は、めっき浴中に0.001〜99g/L、特に0.005〜18g/Lとすることが望ましい。この場合、水溶性金属塩は、微量(0.001〜2g/L、好ましくは0.001〜1g/L、より好ましくは0.005〜1g/L)の使用でめっき皮膜の半田濡れ性を改良し、熱処理後の変色を防止することができる。
【0038】
本発明のめっき浴のpHは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは7以下であることが好ましい。pHの下限は特に制限されないが、カルボン酸、ラクトン化合物、縮合リン酸及びホスホン酸並びにそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上と、カルボン酸、ラクトン化合物、縮合リン酸及びホスホン酸以外の無機酸及び有機酸並びにそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上とを併用する場合は、pH2以上、特に4以上であることが好ましい。
【0039】
本発明のめっき浴においては、pHを2.0以上とすることができるため、pHが2.0未満の強酸性浴では、絶縁物質にガラス、セラミック、プラスチック等を用いた電子部品において、その部分に侵食・変質・変形等が起こりやすく、使用し難いような場合にも有効である。
【0040】
本発明のめっき浴を用いて電気めっきする方法としては常法が採用し得、ラック法でもバレル法でもよく、高速めっき法を採用することもできる。陰極電流密度は、これらめっき法によって0.01〜100A/dm2、特に0.01〜20A/dm2の範囲で適宜選定されるが、ラック法の場合は通常0.5〜5A/dm2、特に1〜4A/dm2であり、バレル法の場合は通常0.01〜1A/dm2、特に0.05〜0.5A/dm2である。めっき温度は10〜50℃、特に15〜40℃とすることができ、撹拌は無撹拌でもよいが、カソードロッキング、スターラーによる撹拌、ポンプによる液流動などの方法が採用し得る。陽極としては、可溶性陽極、即ち、錫、銅、錫に銅、金、銀、亜鉛、ビスマス、ニッケル、コバルト、パラジウムから選ばれる1種又は2種以上の金属を合金化した錫合金を用いることができる。これらの可溶性陽極を用いることにより、この可溶性陽極を構成する金属からそれに相応する金属イオンを補給することができる。なお、本発明のめっき浴においては、無通電下でも錫や錫−銅合金陽極に銅の置換析出が生じるおそれはない。上記錫に合金化される上記金属の含有量は、めっき浴中に必要とする当該金属イオンの量に応じて選定される。また、陽極は、炭素、白金等の不溶性陽極でもよい。なお、本発明のめっき浴の陰極電流効率は、通常80〜99%である。
【0041】
被めっき物の種類は、特に制限されず、電気めっき可能な導電性部分を有するものであればよく、金属等の導電性材料とセラミック、鉛ガラス、プラスチック、フェライト等の絶縁性材料が複合したものであってもよい。これら被めっき物は、その材質に応じた適宜な前処理を施した後、めっきに供される。なお、本発明のめっき浴によれば、銅が優先析出したり、めっき皮膜に銅の置換析出が生じたりすることはなく、また、上記絶縁性材料を複合化した電子部品等の被めっき物をめっきする際、この絶縁性材料に侵食、変形、変質等を生じさせることはない。
【0042】
具体的には、被めっき物として、チップ部品、水晶発振子、コネクターピン、リードフレーム等のフープ材、パッケージのリードピン、バンプ、プリント基板の回路等のあらゆる電子部品やその他の製品の半田材料必要部分に錫−銅合金めっき皮膜を形成し得る。
【0043】
本発明のめっき浴から得られる錫−銅合金めっき皮膜は、その外観が、銅含有率の多少及び光沢成分や微量の水溶性金属塩添加の有無によって、均一で緻密な白色から灰白色まで及び光沢から半光沢或いは無光沢まで選択可能である。また、めっき浴中の第1錫イオンと銅イオンとの割合、めっき条件により合金組成で錫99.99〜10重量%、銅0.01〜90重量%のものを得ることができ、その合金組成は、使用目的によって選定し得るが、半田付け用途、エッチングレジスト用途等には、錫50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上であり、銅は0.01重量%以上、特に0.1重量%以上である。
【0044】
この場合、特にカルボン酸、ラクトン化合物、縮合リン酸、ホスホン酸又はそれらの水溶性塩と、これら以外の無機酸、有機酸又はそれらの水溶性塩とを併用する場合、陰極電流密度が0.01〜0.5A/dm2の範囲で使用した場合、析出するめっき皮膜中の錫と銅の合金比率が銅0.5±0.2〜10.0±0.5重量%の範囲で安定するため、陰極電流密度が平均0.01〜0.5A/dm2で使用するバレル法などで特に有効である。
【0045】
【実施例】
以下、実施例と参考例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0046】
[実施例,参考例,比較例I]
表1,2に示す組成の錫−銅合金めっき浴を調製した。このめっき浴に、常法によって前処理を施した銅及び鉄−ニッケル42合金のリードフレームを浸漬し、これを陰極として表1,2に示す条件でラック法により電気めっきを行った。なお、めっき浴組成において、pH調整は硫酸溶液、水酸化ナトリウム溶液等を用いて行った。
表1,2にめっき薄膜の諸特性を示す。
【0047】
【表1】
Figure 0003871013
【0048】
【表2】
Figure 0003871013
Figure 0003871013
【0049】
[実施例,比較例II]
表3,4に示す組成の錫−銅合金めっき浴を調製した。このめっき浴に、常法によって前処理を施した銅及び鉄−ニッケル42合金のリードフレームを浸漬し、これを陰極とし、陽極に錫−銅合金を用いて表3,4に示す条件でラック法により電気めっきを行った。なお、めっき浴組成において、pH調整は硫酸溶液、水酸化ナトリウム溶液等を用いて行った。
表3,4にめっき薄膜の諸特性を示す。
【0050】
【表3】
Figure 0003871013
【0051】
【表4】
Figure 0003871013
Figure 0003871013
【0052】
[実施例,参考例III]
表5,6に示す組成の錫−銅合金めっき浴を調製した。このめっき浴に、常法によって前処理を施した銅及び鉄−ニッケル42合金のリードフレームを浸漬し、これを陰極として表5,6に示す条件により電気めっきを行った。なお、めっき浴組成において、pH調整は硫酸溶液、水酸化ナトリウム溶液等を用いて行った。
表5,6にめっき薄膜の諸特性を示す。
【0053】
【表5】
Figure 0003871013
【0054】
【表6】
Figure 0003871013
(注1)pHは硫酸溶液、水酸化ナトリウム溶液等を用いて調整した
(注2)陽極
A:錫−銅合金
B:白金めっきチタン
(注3)撹拌
a:カソードロッカー
b:めっき液の噴流
c:バレル
(注4)めっき外観
○:均一で緻密
△:少し色調ムラ有り
×:色調ムラとヤケ有り
(注5)めっき薄膜中の錫/銅析出比率安定性
○:使用する陰極電流密度の変動に伴う錫/銅析出比率の変動幅が
±10%以内である
△:使用する陰極電流密度の変動に伴う錫/銅析出比率の変動幅が
±30%以内である
×:使用する陰極電流密度の変動に伴う錫/銅析出比率の変動幅が
±50%以内である
(注6)半田濡れ性
◎:Sn−Pb合金めっきと同等の半田濡れ性
○:SnめっきとSn−Pb合金めっきとの中間の半田濡れ性
△:Snめっきと同等の半田濡れ性
×:Snめっきより劣る半田濡れ性
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、チップ部品、水晶発振子、コネクターピンやリードフレームのフープ材、パッケージのバンプやリードピン、パッケージ、プリント基板等の電子機器を構成する部品などに、錫−鉛合金めっき材料の代替として錫−銅合金めっき皮膜を形成できる。

Claims (13)

  1. 水溶性錫塩と、水溶性銅塩と、無機酸及び有機酸並びにそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上と、チオアミド化合物とを含有し、チオアミド化合物の含有量が1〜200g/Lであり、pHが10以下であることを特徴とする錫−銅合金電気めっき浴。
  2. 水溶性錫塩と、水溶性銅塩と、カルボン酸,ラクトン化合物,縮合リン酸及びホスホン酸並びにそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上と、チオアミド化合物と、カルボン酸,ラクトン化合物,縮合リン酸及びホスホン酸以外の無機酸及び有機酸並びにそれらの水溶性塩から選ばれる1種又は2種以上とを含有し、チオアミド化合物の含有量が1〜200g/Lであり、pHが10以下であることを特徴とする錫−銅合金電気めっき浴。
  3. カルボン酸,ラクトン化合物,縮合リン酸,ホスホン酸又はそれらの水溶性塩が、ギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、グルコン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、トリカルバリル酸、フェニル酢酸、安息香酸、アニス酸、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グルコノラクトン、グルコノヘプトラクトン、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ポリリン酸、ヘキサメタリン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸又はそれらの水溶性塩であることを特徴とする請求項2記載の錫−銅合金電気めっき浴。
  4. 無機酸、有機酸又はそれらの水溶性塩が、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸、リン酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、プロパンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、2−ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、クロルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシペンタンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−スルホ酢酸、2−スルホプロピオン酸、3−スルホプロピオン酸、スルホコハク酸、スルホマレイン酸、スルホフマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホサリチル酸、ベンズアルデヒドスルホン酸、p−フェノールスルホン酸又はそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくは有機アミン塩であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の錫−銅合金電気めっき浴。
  5. 水溶性銅塩が、シアン化銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)又はチオシアン酸銅(I)であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の錫−銅合金電気めっき浴。
  6. チオアミド化合物が、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジイソプロピルチオ尿素、アセチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3−ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジド又はテトラメチルチオ尿素であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の錫−銅合金電気めっき浴。
  7. 非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の錫−銅合金電気めっき浴。
  8. 陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の錫−銅合金電気めっき浴。
  9. めっき薄膜表面の平滑剤として、メルカプト基含有芳香族化合物、ジオキシ芳香族化合物及び不飽和カルボン酸から選ばれる添加剤の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の錫−銅合金電気めっき浴。
  10. めっき薄膜表面の光沢剤として、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、2,4−ジクロロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、サリチルアルデヒド、2−チオフェンアルデヒド、3−チオフェンアルデヒド、o−アニスアルデヒド、m−アニスアルデヒド、p−アニスアルデヒド、サリチルアルデヒドアリルエーテルから選ばれるアルデヒド化合物の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の錫−銅合金電気めっき浴。
  11. 水溶性金塩、水溶性銀塩、水溶性亜鉛塩、水溶性ビスマス塩、水溶性ニッケル塩、水溶性コバルト塩及び水溶性パラジウム塩から選ばれる1種又は2種以上の水溶性金属塩を含有する請求項1乃至10のいずれか1項記載の錫−銅合金電気めっき浴。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項記載のめっき浴を用いて被めっき物をめっきすることを特徴とする錫−銅合金電気めっき方法。
  13. 使用する陽極が錫又は錫に銅、金、銀、亜鉛、ビスマス、ニッケル、コバルト及びパラジウムから選ばれる1種又は2種以上を含有する錫合金である請求項12記載の錫−銅合金電気めっき方法。
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