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JP3867307B2 - ばいじんの処理方法 - Google Patents

ばいじんの処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物焼却時に発生する排ガス中に含まれる塩化水素ガス等を処理するとともに、該排ガスから生成して集塵機等で捕集されるばいじん中の有害金属等を安定化するに有効な排ガス及びばいじんの処理方法に関するものであり、特に、鉛(Pb)の溶出抑制が困難なばいじん中のPb等の有害金属を安定化処理するのに有効な処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、有害金属等を含む産業廃棄物を処分する際には、セメントが処理剤として用いられ、セメントと廃棄物を混合し、水を加えて混練した後、養生固化し、有害金属等の溶出を防ぎ安定化する方法が用いられている。しかしながら、このように単にセメントで固化する従来の廃棄物の処理方法には種々の問題があり、用途を限定しなければ2次公害が発生する恐れがある。特に、ゴミ焼却の際、電気集塵機やバグフィルターで捕集されるばいじんには、Pb等の有害金属が高濃度に含まれているにも拘わらず、従来技術であるセメント処理では充分に溶出を防止できないため、現在では有害金属等の安定化が不充分なまま埋立処理されており、処理後の2次公害の問題が噴出している。
【0003】
このように、今日では、単にセメントによって固化するだけでは有害金属等を含有する産業廃棄物を有害金属等が溶出してこない状態に安定化することが困難なことが国内外で明らかとなってきている。そこで、有害金属等が陸上埋立処分時あるいは海洋投棄処分時においても確実に封入され、有害金属等が再溶出せず2次公害が発生しない処理方法が望まれていた。
【0004】
このような課題に対し、本発明者らは特開平07−185499号等において、セメント類と還元性の金属、更には、硫酸アルミニウムや粉体状アルミニウムシリケートなどを処理剤とする廃棄物処理方法を提案している。又、同様な技術として特公平04−61710号には、水溶性フォスフェート源を含有する処理剤による廃棄物処理方法も開示されている。
【0005】
しかしながら、廃棄物焼却時に生成するばいじんの中には、このような従来技術を用いてさえも、Pb等の有害金属の溶出を実質的に防止することができないばいじんが存在し、又、安定化処理が可能であったとしても、高価な有害金属安定化剤を多量に使用する結果、処理費用が膨大であったり、ばいじん処理物が多量に発生するため埋立地の不足を生じるなど、公益に適合しない場合があり、更なる廃棄物処理技術の革新が求められている。上記問題は、一般ゴミ等の廃棄物の焼却時に発生し、集塵機等で捕集されるばいじんにおいて特に顕著である。この一般ゴミの焼却設備は、代表的には、焼却炉、排ガスの冷却を目的とした熱交換器や水噴霧装置、塩化水素等の酸性ガスの中和を目的とした消石灰吹き込み装置(排ガス誘導管内への吹き込み)、及び集塵機から構成されており、更に硫黄酸化物(SOx )、窒素酸化物(NOx )、ダイオキシンなどの有害成分除去装置、機器が付加されていることもある。又、ばいじんには、粉塵、消石灰と塩化水素等酸性ガスとの反応生成物、及び消石灰の未反応残分、有害な低融点金属等が含有されている。このばいじんは有害金属安定化剤と混合、混練され最終処分廃棄物として埋め立てられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような廃棄物焼却時に発生する最終廃棄物であるばいじんの処理の現状を鑑み、ばいじん中の種々の有害金属を確実に封入し、有害金属等が再溶出しないように安定化することが可能であり、かつ簡便な処理方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の従来技術における問題点を解決する目的で鋭意検討した結果、実質的にPb等の有害金属の溶出を防止できないばいじん、又は多量の有害金属安定化剤を必要とするばいじんには共通の特徴があることを見出した。即ち、比較的容易に有害金属の溶出を防止できるばいじんと比較し、これら処理が困難なばいじんは、アルカリ性化合物を多量に含有していることを知見した。多くのばいじんに含有されるアルカリ性化合物は、焼却炉の排ガス処理装置で塩化水素ガス等の酸性ガスの中和を目的として使用される消石灰の未反応分に起因するものと推定される。そこで、従来使用されている消石灰に比し、反応性の高い消石灰、及び有害金属処理剤を排ガス処理装置において使用することによって、この排ガスから生成し集塵機で捕集されるばいじんに含有されるアルカリ性化合物量を低減せしめ、かつ、ばいじん中のPb等有害金属の溶出を簡便に防止しうる、との発想に基づき本発明を完成させたものである。
【0008】
即ち本発明は、
比表面積30m2/g以上の消石灰と、
セメント類;硫酸塩、水酸化アルミニウム、塩化鉄、リン酸の内から選択される1種以上の中和剤;比表面積が200m2/g以上の粉体状アルミニウムシリケート;ジメチルジチオカルバミン酸塩、ジエチルジチオカルバミン酸塩、ジブチルジチオカルバミン酸塩、タンニン酸の内から選択される1種以上のキレート剤;水ガラス;およびリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を主たる構成成分とする有害金属安定化剤とを、
廃棄物焼却設備に付属する排ガス誘導管内に噴霧して排ガスを処理することで、廃棄物焼却時に発生する排ガス中の塩化水素ガス等の酸性ガスを処理するとともに、該排ガスから生成して集塵機等で捕集されるばいじんに対し水を添加、混合することで、ばいじん中のPbの溶出を防止してなるばいじんの処理方法を内容とするものである。
【0009】
【発明の実施の態様】
本発明で用いられる比表面積30m2 /g以上の消石灰は、塩化水素ガスとの反応効率を考慮する点で比表面積が大きいものが好ましいが、工業的入手の容易性から比表面積30〜60m2 /g程度のものが好ましく、特公平06−8194号によって開示されている方法等によって作製することができる。この方法は、微細塊状の、又は粉砕された、軽度に焼成された石灰を、水と反応を遅延せしめる有機溶剤とからなる消和液体に強力かつ均一に混合することにより上記石灰を消和することによって、乾燥水酸化カルシウムを製造する方法において、水30ないし50容量部及び有機溶剤50ないし70容量部よりなる消和液体と石灰との混合を混合容器内で45℃以下の温度において行い、次いで反応混合物を主反応容器に移し、その中で加熱装置によって50ないし70℃の温度となし、そして最終反応を第2の反応容器内で行い、その際前記混合容器内における石灰対消和液体の割合を、前記第2の反応容器において85ないし110℃の反応温度が達成されるように選択するものであり、更に、次いで脱ガス工程において、仕上げられた水酸化カルシウムから付着している溶剤を真空の適用及び/又は不活性ガスを用いるバージにより除去するというものである。このような高比表面積の消石灰としては、具体的には、奥多摩工業株式会社製消石灰「タマカルク」の使用が工業的には好適である。消石灰の使用に際しては、粉体状で使用する方法、溶媒に分散して使用する方法等が考えられ、特に塩化水素ガスとの反応性を考慮すると水に分散して使用することが好適な態様である。尚、高比表面積消石灰は、比表面積が20m2 /g以上であれば効果は確認できるが、比表面積が高いほど効果が顕著であり、30m2 /g以上が好ましいことを付記しておく。
【0010】
前記した比表面積30m2 /g以上の消石灰の使用量は、排ガス中の塩化水素ガス濃度、排ガスの温度、流量、及び最終的に屋外へ排出する塩化水素ガス濃度等によって適宜設定しなければならないが、従来一般的に使用されるJIS特号消石灰(比表面積14.5m2 /g)に比し比表面積が約2倍であることから、塩化水素ガスとの反応効率が高く、おおよそJIS特号消石灰の約半分(重量)の添加で、最終的に排出する塩化水素ガス濃度を同程度とすることができる。
【0011】
本発明で有害金属安定化剤として用いられる前記セメント類には焼き石膏、ポルトランドセメント、早強セメント、ジェットセメント、高炉セメント、アルミナセメント等が例示でき、これらを単独で又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0012】
本発明で有害金属安定化剤として用いられる前記中和剤には、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、炭酸、ほう酸等の汎用の酸、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、非結晶質水酸化アルミニウム、塩化鉄、リン酸等が例示できるが、価格、工業的入手の容易性、実使用の容易さから、硫酸塩、水酸化アルミニウム、塩化鉄が好ましく、更に、ばいじん中のPb化合物と反応し不溶性の化合物を形成しうるリン酸が特に好ましい。又、これら中和剤は水溶液として使用することも、粉末として使用することも、更には水分散状態で使用することもできる。
【0013】
本発明で有害金属安定化剤として用いられる前記無機吸着剤には、各種活性白土、合成ケイ酸、天然ケイ酸加工物、活性炭等が例示できるが、比表面積200m2 /g以上の粉体状アルミニウムシリケート、粉体状二酸化ケイ素が好ましい。更には、工業的入手の容易性の観点から、比表面積200〜1000m2 /gのものが好ましい。尚、比表面積が200m2 /g以上の無機吸着剤は、嵩高くハンドリング困難なものが多く、事前に造粒等の加工を行うことも好適である。
【0014】
本発明で有害金属安定化剤として用いられる前記キレート剤には、−OH、−CSSH、−SH、=NH、−COOH、−NH2 等、有害金属に対するキレート配位子を構造中に有する化合物、及びそれらの塩等が例示できるが、特にPb溶出防止性能の点でジメチルジチオカルバミン酸塩、ジエチルジチオカルバミン酸塩、ジブチルジチオカルバミン酸塩、タンニン酸が好ましい。工業的に入手可能なものとして、(株)荏原製作所製「アッシュクリーンC−300」、ミヨシ油脂(株)製「Newエポルバ−800」、日本曹達(株)製「ハイジオン」、不二サッシ(株)製「アルサイトL−101」、オルガノ(株)製「オルガナイト2050」、住友化学工業(株)製「スミキレートAC−20」、オリエンタル技研(株)製「オリトール」、内外化学(株)製「ヒバイブロック」等が例示できる。これらキレート剤は水溶液として使用することも、粉末として使用することも、更には水分散状態で使用することもできる。
【0015】
本発明で有害金属安定化剤として用いられる前記水ガラスとしては、汎用の水溶性ケイ酸塩、即ちケイ酸ソーダ、ケイ酸カリウム等が例示でき、モル比(SiO2 /M2 O組成比:但し、Mはアルカリ金属)は、市販の0.5〜4.2の範囲で任意に選択することができる。この中で、Pb溶出防止性能、価格を考慮するとケイ酸ソーダであることが好ましく、更にはモル比が約3のJIS規格3号水ガラスを用いることが好ましい。又、この水ガラスは、水溶液として使用することも、粉末として使用することも、更には水分散状態で使用することもできる。更に、水ガラスに炭酸ナトリウム等の、カルシウムイオンと反応して不溶性あるいは難溶性のカルシウム化合物を生成する化合物、更には硫酸等、水ガラスと反応してゲル化する化合物を適量添加することも、Pb溶出防止性能を向上させる目的で有効である。
【0016】
本発明で有害金属安定化剤として用いられる前記リン酸塩としては、正リン酸塩、正リン酸水素塩、縮合リン酸塩、及び縮合リン酸水素塩等が例示でき、更にナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が例示できるが、水溶性塩であることが好ましく、水溶性のリン酸ソーダが好ましい。
【0017】
更に、本発明で有害金属安定化剤として用いられる、Pb等の有害金属化合物と反応し難溶性あるいは不溶性の化合物を生成する化合物としては、硫化ソーダ等の硫化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、クロム酸塩等が例示できる。工業的に入手可能なものとして、例えば、栗田工業(株)製「アッシュナイトRシリーズ」等が例示できる。
【0018】
上記のように、本発明で用いられる有害金属安定化剤は、上記セメント類、中和剤、無機吸着剤、キレート剤、水ガラス、リン酸塩、及びPb等の有害金属化合物と反応し難溶性あるいは不溶性の化合物を生成する化合物の内から選択される1種以上を主たる構成成分とするものであるが、不可避的不純物の他、有害金属イオン還元剤等の各種添加剤を含むこともできる。又、構成成分が2種以上の場合、事前に混合して使用することもできるし、ばいじんに対して別々に噴霧することもできる。選択した2種以上の構成成分相互で反応し、有害金属安定化効果を阻害したり、有害ガスを発生するような場合には、ばいじんに対して別々に噴霧することが好ましい。
【0019】
本発明で用いられる有害金属安定化剤の噴霧量は、適用するばいじんの性状、及び目標とするPb溶出量によって適宜設定しなければならないが、通常、ばいじん100重量部に対し、1〜20重量部でよい。
【0020】
本発明で用いられる比表面積30m2 /g以上の消石灰、及び有害金属安定化剤は、事前に混合した後、排ガス誘導管内に噴霧することもできるし、別々に噴霧することもできる。選択した有害金属安定化剤と消石灰が反応し、有害金属安定化効果を阻害したり、塩化水素ガス等の酸性ガス中和効果を阻害したり、有害なガスが発生したりするような場合には、別々に噴霧することが好ましい。
【0021】
【作用】
本発明の処理方法がばいじん中のPb等を安定化する機構は必ずしも明らかではないが、次のようにに推定できる。即ち、一般的にPb化合物はアルカリ雰囲気中で溶解し易い傾向があることから、廃棄物焼却時に発生するばいじんの場合、塩化水素ガスの中和に使用される消石灰の未反応残分がPbの溶出を促進する大きな要因と考えられる。そこで、本発明では、反応効率の高い高比表面積の消石灰を使用することにより、この未反応残分を低減せしめること、及びこの排ガスに有害金属安定化剤を適用することの相乗効果によって、排ガスから生成して集塵機等で捕集されるばいじん中の有害金属の溶出をより効果的に防止しうるものと考えられる。
【0022】
【発明の効果】
本発明の排ガス及びばいじんの処理方法を用いてばいじんを処理することにより、有害金属、特に廃棄物焼却時に発生するばいじん中のPbが安定化され、溶出量が減少する。
【0023】
【実施例】
(比較例)
一般ゴミ焼却場に於いて、排ガス中和の目的で、JIS特号消石灰を796kg/日の割合で煙道に吹き込んだ。このとき、消石灰吹き込み口前の排ガス中の塩化水素ガス濃度は平均800ppm、消石灰吹き込み口後の排ガス中の塩化水素ガス濃度は平均37ppmであった。又、この時の排ガスからバグフィルターで捕集されたばいじん生成量は、平均2100kg/日であった。このばいじんに対し、表1に示す有害金属安定化剤を表1に示す添加量で添加、混合し、更に適宜水を添加して混練したものを、20℃(室温)で7日間静置した後、環境庁告示13号法(日本)のPb溶出試験を行った。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003867307
【0025】
(実施例)
一般ゴミ焼却場に於いて、排ガス中和の目的で、奥多摩工業株式会社製消石灰「タマカルク」(比表面積35〜40m2/g)を410kg/日と、表2に示す有害金属安定化剤を表2の割合で煙道に吹き込んだ。このとき、消石灰吹き込み口前の排ガス中の塩化水素ガス濃度は平均820ppm、消石灰吹き込み口後の排ガス中の塩化水素ガス濃度は平均10〜35ppmであった。このばいじんに対し水を添加、混合したものを20℃(室温)で7日間静置した後、環境庁告示13号法(日本)のPb溶出試験を行った。結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
Figure 0003867307
【0027】
上記表1、表2の結果から、JIS特号消石灰を用いて処理した排ガスから捕集したばいじんを有害金属安定化剤によって処理を行う従来法に比べ、高比表面積消石灰と有害金属安定化剤を噴霧して処理した排ガスから捕集したばいじんを単に水で処理する本発明方法の方が、同程度の有害金属安定化剤使用量でより有効にPbの溶出を防止できることがわかる。又、JIS特号消石灰に比し、高比表面積消石灰は約半分の吹き込み量で排ガス中の塩化水素ガス濃度を同程度以下にすることができ、ばいじん処理物(有害金属安定化剤を施した最終廃棄物)の発生量も低減することができることから、埋め立て処分場の延命化にも有効である。
【0028】
以上により、本発明の排ガス及びばいじんの処理方法が、排ガス中の塩化水素ガス等の酸性ガスの低減、及びこの排ガスから生成するばいじん中の有害金属の溶出防止に極めて有効であることが明らかとなった。

Claims (3)

  1. 比表面積30m2/g以上の消石灰と、
    セメント類;硫酸塩、水酸化アルミニウム、塩化鉄、リン酸の内から選択される1種以上の中和剤;比表面積が200m2/g以上の粉体状アルミニウムシリケート;ジメチルジチオカルバミン酸塩、ジエチルジチオカルバミン酸塩、ジブチルジチオカルバミン酸塩、タンニン酸の内から選択される1種以上のキレート剤;水ガラス;およびリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を主たる構成成分とする有害金属安定化剤とを、
    廃棄物焼却設備に付属する排ガス誘導管内に噴霧して排ガスを処理することで、廃棄物焼却時に発生する排ガス中の塩化水素ガス等の酸性ガスを処理するとともに、該排ガスから生成して集塵機等で捕集されるばいじんに対し水を添加、混合することで、ばいじん中のPbの溶出を防止してなるばいじんの処理方法。
  2. 上記水ガラスが、ケイ酸ソーダである請求項1記載のばいじんの処理方法。
  3. 上記リン酸塩が、水溶性リン酸ソーダである請求項1記載のばいじんの処理方法。
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