JP3865596B2 - 自動等化回路およびそれを用いた受信回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多値デジタル変調信号の復調回路における等化回路に係わり、特に、トレーニング信号により等化特性を自動的に設定する方式の自動等化回路およびその自動等化回路を用いた受信回路(復調回路)に関する。
【0002】
【従来の技術】
多値デジタル変調方式による信号伝送システムも含めて、どのような伝送系でも、波形歪みやエコーなどは少ないに越したことはなく、このため、従来から、多値デジタル変調方式の復調回路に自動等化器を適用した例が知られている。
【0003】
例えば、SHAHID U.H. QURESHI ”ADAPTIVE QUALIZATION”、PROCEEDINGS OF THE IEEE、VOL.73、NO.9、SEPTEMBER 1985、ページ1349〜1355や、村野和夫、海上重之 ”情報・通信におけるディジタル信号処理の応用”、電子通信学会、1981年5月20日、ページ150図6.1、ページ171図6.21にそのような適用事例が開示されている。
【0004】
上述のような多値デジタル変調方式の従来技術による復調回路における自動等化回路の一例について、図11のブロック図により説明する。図11は多値デジタル変調方式の復調回路(受信回路)全体の構成を示す。
【0005】
この図11に示した復調回路では、まず受信された搬送波周波数fの変調波信号は、アナログBPF(帯域ろ波器)1に入力され、ここで帯域制限された上でAGC(自動利得制御部)2により、受信されたときのレベルにかかわらず、一定のレベルにされてからA/Dコンバータ(アナログ−デジタル変換器)3に入力され、デジタル化されて受信電力計算部4と乗算器5に供給される。
【0006】
そして、受信電力計算部4では、A/Dコンバータ3から出力されるデジタル信号に基づいて、受信された信号のレベルが計算され、それがAGC2の制御入力にフィードバックされ、この結果、A/Dコンバータ3には、結果的に一定レベルにされたデジタル信号が入力されるようになる。
【0007】
乗算器5に入力されたデジタル信号は、ここで正弦波発生器7から供給されている周波数fの搬送波信号と夫々乗算され、同相成分(I成分)と直交成分(Q成分)が取り出される。
【0008】
このとき、乗算器5では、正弦波発生器7から直接供給される正弦波信号cos(ωt)と乗算されて得られた同相成分(I成分)の信号と、正弦波発生器7からの正弦波信号cos(ωt)が位相シフト器6を介してπ/2位相シフトされた搬送波信号sin(ωt)と乗算されて得られた直交成分(Q成分)の信号が生成されることで直交復調がなされる。なお、ω=2πfである。
【0009】
乗算器5から出力された同相成分(I成分)の信号と直交成分(Q成分)の信号は、夫々ロールオフフィルタ(ROF)8により波形整形され、出力信号Ir、Qrとして取り出されてタップ係数値を設定することにより等化特性を設定可能な等化器9に供給される。
【0010】
そして、この等化器9により等化されたデータ信号Ia、Qaが識別器10に入力され、ここで送信側で送った送信点を識別し、この識別結果がデータ信号Id、Qdとして出力され、これらがP/S変換器(並列/直列変換器)11により直列信号に変換され、復調された受信データが得られることになる。
【0011】
ここで、等化器9は、伝送路での伝送信号に与えられてしまう波形歪みやエコーなどの影響を除去するために受信した信号を等化する働きをするものであるが、このためには、等化器9に予め所定の等化特性を設定しておく必要がある。
【0012】
ここで、この等化器9としては同相成分と直交成分とからなる複素数で演算を行なう構成によるものが一般的であり、その一例を図5により説明する。
【0013】
この図5に示した等化器9は、2個の加算器201と、4個のトランスバーサルフィルタ202で構成されたものである。
【0014】
さらに、等化器9の各トランスバーサルフィルタ202は、何れも、図6に示すように、(N−1)個の遅延素子2021と、N個の乗算器2022、それに総和器2023からなる一般的なもので、各乗算器2022に設定されるタップ係数C1〜CNが更新されることにより、等化器9の等化特性が設定されるようになっている。
【0015】
いま、各トランスバーサルフィルタ202のタップ係数ベクトルをそれぞれ図のようにCbi、Cbqとする。さらに、Ir、Qrが遅延素子2021の遅延時間ごとに時系列に設定された値のベクトルである、入力信号ベクトルをそれぞれIr、Qrと表わすこととすると、信号複素数で表わした入力信号の値(Ir+j・Qr)とタップ係数ベクトルCbi、Cbqの関係は、次の式で表わせる。
(Ir+j・Qr)・(Cbi+j・Cbq)=(Ir・Cbi−Qr・Cbq)+j・(Ir・Cbq+Qr・Cbi)
【0016】
よって、出力信号Ia、Qaの値は、入力信号ベクトルIr、Qrとタップ係数ベクトルCbi、Cbqにより次式で表わせ、従って、タップ係数ベクトルCbi、Cbqを変えることにより、入力信号Ir、Qrに対する出力信号Ia、Qaの特性、つまり伝達特性を変えることができる。
Ia=Ir・Cbi−Qr・Cbq
Qa=Ir・Cbq+Qr・Cbi
【0017】
ところで、この等化回路における等化特性の設定は、次のようにして行われる。すなわち、所定のフォーマットのトレーニング信号と呼ばれる信号を基準の信号として設定しておき、本来のデータ信号の伝送開始に先立って、まず、このトレーニング信号が送信側から受信側に送信されるようにし、これにより上記した等化特性の設定を行い、設定完了後、本来のデータ信号の伝送処理に移行するのである。
【0018】
ここで、トレーニング信号としては、ベースバンドにおける2値の信号点をM系列等のPNパターンで発生させ、これを直交変調したものをトレーニング信号とするのが一般的である。
【0019】
その2値としては、データ信号でのコンスタレーション平面の信号点の中で、データ信号の平均電力と等しい2つの信号点を選んだものを、その2値の信号とする場合と、トレーニング信号のために特別にデータ信号で使用しない信号点を新たに作成して、それを2値の信号とする場合とがある。後者の場合にも、もちろんデータ信号の平均電力と等しいレベルの信号点を取る。
【0020】
前者の例を16QAMの場合に示すと、図8の示したように、A(+3,+1)とB(−3,−1)とをトレーニング信号用の2点とする。この場合、データ信号の平均電力は、各信号点がそれぞれ同確率で送信されるものとして、((12+12)+2×(12+32)+(32+32))/4=10であり、またA,Bの平均電力は、(32+12)=10となり、等しい。
【0021】
後者の例として、同様に16QAMの場合、図9に示したように、C(+√10,0)とD(−√10,0)とを新しくトレーニング信号の2点とする。データ信号の平均電力が、10であるから、C、Dの振幅を√10とすれば、電力は等しくなる。
【0022】
後者は、変調器内でトレーニング信号用のための回路が必要となる。他方、データ信号と同じ信号点が使用できる前者は回路として小規模になるので、前者を採用する場合が多い。
【0023】
そのようなトレーニング信号が受信された場合、受信側では、受信されたトレーニング信号を、トレーニング信号発生器18から発生されているトレーニング信号と比較し、その差を誤差としてこの誤差に応じて等化器9のタップ係数値を逐次変えて行き、その誤差が最も小さくなったとされたところで、等化器9は伝送路の歪みを等化する状態になっている。
【0024】
このため、図11に示すようにトレーニング信号同期検出器12とスイッチ回路16−3’、それに加算器17−1を設ける。
【0025】
トレーニング信号同期検出器12は相関器で構成しても良い。トレーニング信号は、M系列のPNパターンを用いるのが一般的である。このPNパターンの一部のパターンを相関器の係数としておき、ロールオフフィルタ8の出力信号Ir,Qrを相関器に入力して相関を取る。パターンが一致したときに相関値が大きく出力され、相関が取れない、つまりパターンが一致しないときには、出力される相関値が小さい。相関器の出力を図示しない比較器で所定の閾値と比較して、閾値を越えた時、トレーニング信号の特定パターンを受信したとみなせる。特定パターンの位置がトレーニング信号のどの位置にあるかは、最初から分かっているので、これにより、受信している信号のフレーム構成が分かり、次のフレームからトレーニング信号の先頭位置がわかることになる。
【0026】
トレーニング信号が受信され、それがトレーニング信号同期検出器12で検出されたらスイッチ回路16−3’を接点b側に切換えると共に、タップ係数更新器15に検出信号を供給し、上に述べたような等化特性を変えていくことを開始するようにしてある。
【0027】
この結果、送信側から送信されたトレーニング信号が受信側で検出されている間は、等化器9の出力信号Ia、Qaが加算器17−1に供給されるが、このとき加算器17−1の減算入力には、送信側で発生されているトレーニング信号のフォーマットと同じフォーマットのトレーニング信号It、Qtがトレーニング信号発生器18から供給されている。
【0028】
そこで、これらの加算器17−1の出力には、等化器9の出力Ia、Qaと、基準トレーニング信号It、Qtの夫々の差である等化誤差信号Ei、Eqが取り出される。これにより、タップ係数更新器15は、これら加算器17−1出力信号を等化誤差信号Ei、Eqとして入力し、所定の最小誤差法による等化処理アルゴリズムに従って等化器9のタップ係数を逐次更新する。
【0029】
このタップ係数は、上述の図6に示されているN個の乗算器2022に与えられている係数C1〜CNのことで、これらの各タップ係数C1〜CNを以下に示す式に従って、等化誤差値Eが最小になるように更新して行くことにより、必要な等化が与えられた出力信号Ia、Qaが得られることになる。
CN(T+1)=CN(T)−g・X*・E
X*:入力信号の複素共役数=Ir−j・Qr
E :Ebi+j・Ebq=(Ia−Id)+j・(Qa−Qd)
g:定数(スカラー量)
CN(T):時刻Tにおけるタップ係数Cl〜CN
CN(T+1):時刻T+1におけるタップ係数C1〜CN
ここで、jは複素数の虚数部を表わす。
【0030】
なお、この等化特性設定のアルゴリズムは当該技術分野で周知であるが、その詳細については、例えば次の文献に開示されている。
電子通信学会編、宮川洋外著
『デジタル信号処理』
昭和50年11月、pp231〜243
タップ係数更新器15によるタップ係数値の更新処理は1/変調速度の周期で実施され、この所定の周期毎に繰り返され、この結果、等化誤差Ei、Eqは逐次減少して零に近づいていく。
【0031】
従って、等化誤差Ei、Eqが充分に小さな値になったら、伝送路の状態によって発生することがある波形歪み等の影響をなくすようにするため、受信側で受信された信号が等化器9により等化され、誤りのないデータの再生が可能になっている状態が得られたことになり、最適な等化特性が得られることになる。
【0032】
ところで、このようにして受信側での等化特性が得られたら、ここでスイッチ回路16−3’を接点a側に戻し、本来のデータの伝送動作に移行するのであるが、このとき、送信側では、受信側で等化特性の設定が終わった時点を知る術がない。
【0033】
そこで、従来は、受信側でのトレーニング信号による等化特性の設定にかかる時間を見込んで、予めトレーニング信号の送出時間を決めておき、この時間が経過したら、その時点でトレーニング信号の送信を止め、本来のデータの伝送動作に移行するようにしている。
【0034】
そして、このようにしてトレーニング信号が途切れると、これが受信側のトレーニング信号同期検出器12により検出され、この時点でスイッチ回路16−3’を接点a側に切換える。
【0035】
従って、この後は、データ信号Ia、Qaが識別器10に入力されるようになり、この結果、P/S変換器11から直列データ信号が出力されるという通常のデータ伝送動作に移行することになる。
【0036】
ところで、このようにして、等化器9の等化特性の設定を終え、データ伝送処理に移行した後で、データ信号が受信されている状態のとき、例えば位相ヒットや振幅ヒット、瞬断などが発生し、伝送路の状態が急変したとすると、その影響で等化器9では等化状態でなくなり、いわゆる発散状態になってしまうことがある。
【0037】
この場合、トレーニング信号を用いないでデータ信号によって等化器9を等化状態にすることは難しく、たとえ何らかの方法により等化状態にすることができたとしても、それまでには非常に長い時間がかかってしまう。
【0038】
ここで、データの伝送に代えて、送信側からトレーニング信号を送信してやれば、短時間で再び受信側の等化器9を等化状態にすることができるが、このためには、受信側で等化器9の発散状態が生じたことを送信側で検出する必要がある。
【0039】
このとき、データの伝送が双方向に行なわれている場合には、この等化器9が発散状態となったことも、何らかの方法により受信側から送信側に伝送できるかも知れないが、データ伝送が片方向の場合には、これも不可能である。
【0040】
そこで、従来では、図10に示すように、受信側での等化器の等化状態とは無関係に、トレーニング信号DTを常時、所定の周期で、本来のデータ信号DAと交互に送信し、受信側では、トレーニング信号DTが受信されたら、たとえ自動等化器が発散していなくても、このトレーニング信号DTによる等化器の等化設定処理が実行されるようにしていた。
【0041】
等化器に発散が発生したときは、受信側では正しいデータの再生ができなくなるので、ビット誤りとなってしまう。
【0042】
しかし、データ信号伝送中、等化器に発散が生じたとしても、所定期間後にはトレーニング信号が必ず送信されるので、周期毎に送られてくる次のトレーニング信号が受信された時点で等化処理が実行され、再び等化状態に復旧することができる。
【0043】
従って、この従来の自動等化技術によれば、たとえ等化器が発散状態になったとしても、データ信号の伝送にビット誤りが生じるのは、次にトレーニング信号が受信され、再び等化状態になるまでの期間に限定され、トレーニング信号が受信されて、等化状態になった後は、また誤りのない正しいデータ信号を再生することができる。
【0044】
ところで、伝送されたトレーニング信号を受信して等化器を等化状態にするための等化器のタップ更新動作としては、トレーニング信号のシンボル数分の回数だけタップ更新演算を実行する必要がある。一般的に、トレーニング信号のシンボル数としては、数十から数百のシンボルが用いられている。ここで1シンボルとは、ベースバンド伝送信号におけるコンスタレーション平面上に表される信号点ごとの信号のことであり、このシンボルは、所定期間、すなわち、1/変調速度の周期ごとに1シンボルが変調され送信されるものである。
【0045】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の自動等化技術によっては、上記の式に示した演算をタップ毎に実行するとなると、複素数構成であるために、かつ、同相成分および直交成分も共に実施しなければならないので、その処理量は非常に膨大な処理量となる。そのため、このタップ更新をソフトウェアにて実現する場合には、処理時間やプログラム自身が大きなものになるし、ハードウェアで実現する場合には、その回路規模が大きなものとなってしまう。
【0046】
本発明の目的は、同じ等化引き込み性能を保持しつつ、ソフトウェアで実現する場合には、その処理時間やプログラム容量を少なくし、ハードウェアで実現する場合には、その回路規模をすくなくした自動等化回路およびその自動等化回路を用いた受信回路(復調回路)を提供することである。
【0047】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の課題を解決するために、デジタルトレーニング信号とデジタルデータ信号とを受信し、等化されたデジタルデータ信号を出力する自動等化回路において、前記デジタルトレーニング信号と前記デジタルデータ信号とを入力し前記デジタルデータ信号を等化する、第1等化器を含む第1自動等化ユニットと、前記デジタルトレーニング信号を記録するメモリと、前記メモリに接続し、更新信号を出力する第2自動等化ユニットであって、前記更新信号を出力する第2等化器と、同相成分および直交成分のいずれか一方の成分のみで他方が無成分のトレーニング信号を出力するトレーニング信号発生器と、前記第2等化器に接続し、前記メモリからのデジタルトレーニング信号と前記トレーニング信号発生器からの出力信号とを比較してタップ係数値を出力するタップ係数計算ユニットと、前記第1自動等化ユニットの入力信号と出力信号、前記メモリに入力する前記デジタルトレーニング信号および前記第2等化器から出力される前記更新信号のうちいずれか一つを位相回転する位相回転器とを有し、前記第2等化器からの前記更新信号が前記第1等化器に供給されて、前記第1等化器の等化特性が更新されるものである。
【0048】
また、本発明は、前記第2等化器の構成が前記第1等化器の構成と同じかあるいはほぼ同じで有るとしてもよく、また、所定の遅延時間の遅延回路を通って前記デジタルトレーニング信号と前記デジタルデータ信号とが前記第1自動等化ユニットに入力したり、前記第1等化器と前記第2等化器はフィードフォワード形等化器であり、さらに、前記第1自動等化ユニットの出力端子に接続された第3等化器と、前記トレーニング信号発生器に接続された第4等化器とを有し、前記第3等化器と第4等化器はフィードバック形等化器であって、前記第3等化器の等化特性を更新するために前記第4等化器の出力信号が前記第3等化器に入力されるとしてもよい。
【0049】
また、本発明は、前記位相回転器として、前記第1等化器と前記第2等化器の間にあって、前記第2等化器からの更新信号の位相を回転させ、または、前記メモリに接続され、前記メモリに入力される前記入力信号を通過させ、前記メモリへのデジタルトレーニング信号の位相を回転させ、あるいは、前記第1等化器に接続され、前記第1等化器に入力される前記デジタルデータ信号と前記デジタルトレーニング信号とを通過させるとしたり、前記第1等化器に接続され、前記第1自動等化ユニットから出力されるデジタルデータ信号を通過させるとしてもよい。
【0050】
また、本発明は、前記デジタルトレーニング信号が、データ信号コンスタレーション平面上の、前記デジタルデータ信号の平均電力と実質的に等しい電力となる、2つの信号点に対応する信号であるとしてもよい。
【0051】
また、本発明は、上述の課題を解決するために、デジタル多値変調システムにより変調されたトレーニング信号とデータ信号とを再生するための受信回路において、前記トレーニング信号とデータ信号とが入力し、デジタルトレーニング信号とデジタルデータ信号とを生成する信号処理ユニットと、前記デジタルトレーニング信号と前記デジタルデータ信号とを入力し前記デジタルデータ信号を等化する、第1等化器を含む第1自動等化ユニットと、前記デジタルトレーニング信号を記録するメモリと、前記メモリに接続し、更新信号を出力する第2自動等化ユニットであって、前記更新信号を出力する第2等化器と、同相成分および直交成分のいずれか一方の成分のみで他方が無成分のトレーニング信号を出力するトレーニング信号発生器と、前記第2等化器に接続し、前記メモリからのデジタルトレーニング信号と前記トレーニング信号発生器からの出力信号とを比較してタップ係数値を出力するタップ係数計算ユニットと、前記第1自動等化ユニットの入力信号と出力信号、前記メモリに入力する前記デジタルトレーニング信号および前記第2等化器から出力される前記更新信号のうちいずれか一つを位相回転する位相回転器とを有し、前記第2等化器からの前記更新信号が前記第1等化器に供給されて、前記第1等化器の等化特性が更新されるとしてもよい。
【0052】
さらに、本発明は上述の課題を解決するために、受信されたトレーニング信号に基いて、データ信号の復調に必要な等化特性を自動的に更新設定する方式の自動等化回路において、前記トレーニング信号と比較するための、前記自動等化器で発生するトレーニング信号を同相成分のみもしくは直交成分のみの信号とし、前記同相成分および直交成分のいずれか一方の成分のみを入力して演算量を軽減した自動等化器でもってタップ係数の更新を行ない、その等化引き込みが達成された時点で得られたタップ係数値を位相回転するものである。
【0053】
ここで、トレーニング信号として用いられる2値の信号のそれぞれが、πの位相で対称になっていることに着目すると、トレーニング信号を受信した時に等化引き込みのためのリファレンス信号を発生として、同相成分だけ、もしくは直交成分だけの成分であるリファレンス信号を発生して、これを基にして、タップ更新を実施する。そして、トレーニング信号によるタップ係数更新終了時に、タップ係数値を位相回転することにより、複素数構成あるいは複素数演算が簡素化されて、タップ係数更新および自動等化器のフィルタ演算が少なくなる。また、タップ係数更新終了時にタップ係数値をもとのトレーニング信号と同じ位相になるように回転して戻せば、データ信号受信時には、従来と同様にデータ信号を再生することができる。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に言及して説明する。なお、図面において、上述の構成部分と同様な構成部分には同様な参照符号を付し、更なる説明は省略する。
【0055】
まず、本発明を適用する、判定帰還型の等化器を内蔵する自動等化回路を含む復調回路(受信回路)を図12に示して説明する。なお、本発明はこれに限定されず、他の型の自動等化回路にも適用できることは言うまでもない。
【0056】
図12において、参照番号9,12,13,14,15,16−1,16−2,16−3,17−1,17−2,17−3,18,19,20’,21’を付した構成部分が自動等化回路を構成する。
【0057】
アナログBPF1、AGC2、A/Dコンバータ3、受信電力計算部4、乗算器5、位相シフト器6、正弦波発生器7、ロールオフフィルタ8は受信処理部を構成する。
【0058】
アナログBPF1、AGC2、A/Dコンバータ3、受信電力計算部4、乗算器5、位相シフト器6、正弦波発生器7、ロールオフフィルタ8、識別器10、P/S変換器11からなるアナログBPF1からP/S変換器11までの構成は図11の受信回路のそれと同じである。
【0059】
等化器14,19,20’、タップ係数更新器15,21’、加算器17−1,17−2,17−3、トレーニング信号発生器18はタップ係数更新部を構成する。
【0060】
図12において、図11と異なる点は、主に、メモリ13、フィードフォワード形等化器14、フィードバック形等化器19および20’、タップ係数更新器21’、スイッチ16−1および16−2、加算器17−3の各ブロックが追加されていることであることと、2接点のスイッチ16−3’の代わりに1接点のスイッチ16−3が用いられている点である。
【0061】
それら追加されている各ブロックの構成としては、識別器10の出力信号Id、Qdがフィードバック形等化器19に入力され、そこで入力された信号が等化器20’の場合と同様に波形等化され、その波形等化された信号が加算器17−2へ入力される。また、等化器9からの信号も加算器17−2へ入力され、そこでI成分、Q成分どうしそれぞれ加算されて、その加算信号が新たに信号Ia、Qaとされてスイッチ16−3をへて識別器10へ入力される。ロールオフフィルタ8の出力信号Ir、Qrは、さらに、スイッチ16−1を介してメモリ13へ入力される。メモリ13へ入力された信号は信号Ir’、Qr’としてフィードフォワード形等化器14へ入力される。一方、トレーニング信号発生器18で発生されるトレーニング信号It、Qtは、加算器17−1とフィードバック形等化器20’およびタップ係数更新器21’へ入力される。フィードバック形等化器20’では入力された信号が等化器19の場合と同様に波形等化され、その波形等化された信号が加算器17−3へ入力される。加算器17−3では、加算器17−2と同様な加算機能を有し、等化器14からの出力信号と等化器20’からの出力信号とを加算して、信号Ia’、Qa’を生成し出力する。その信号Ia’、Qa’は加算回路17−1へ入力され、そこで信号Ia’、Qa’と信号It、Qtとが各々加算され、等化誤差Ei、Eqが得られる。そして、等化誤差Ei、Eqはタップ係数更新器15と同じくタップ係数更新器21’とに入力される。タップ係数更新器15は、図11における同符号を付したものと同様なものであり、ここで生成されたタップ係数が等化器14へ入力されることで等化器14が等化状態にされ、さらに、等化状態になった等化器14からスイッチ16−2を介して、等化器9へその等化状態のときのタップ係数値が出力され、等化器9ではその入力されたタップ係数値を用いることで等化状態にされる。一方、タップ係数更新器21’は、入力された等化誤差Ei、Eqおよびトレーニング信号It、Qtをもとに、タップ係数を生成し、ここで生成されたタップ係数が等化器20’へ入力されることで等化器20’が等化状態にされ、さらに、等化状態になった等化器20’からスイッチ16−2を介して、等化器19へその等化状態のときのタップ係数値が出力され、等化器19ではその入力されたタップ係数値を用いることで等化状態にされる。なお、スイッチ16−1、スイッチ16−2、スイッチ16−3、タップ係数更新器15、トレーニング信号発生器18は、トレーニング信号同期検出器12で検出された受信されたトレーニング信号のタイミングに応じて動作する。
【0062】
なお、このようにフィードバック形の等化器およびフィードフォワード形の等化器を用いるようにした、いわゆる判定帰還形の自動等化器については、例えば、文献 オーム社刊 笹岡 秀一編著『移動通信』pp257−263に詳しく説明されている。
【0063】
フィードフォワード形等化器およびフィードバック形等化器は、上述の図5に示した場合と同様に、複素数演算を行うようにした構成が用いられている。この図5に示した等化器20’は、2個の加算器201と、4個のトランスバーサルフィルタ202で構成されたものである。なお、図5における入力信号および出力信号のうち、それぞれIr、Qr、Ia、Qaとなっているのは等化器9の場合についてのものであり、等化器20’の場合はそれぞれIt、Qt、Iab’、Qab’と置き換えられる。
【0064】
また、フィードフォワード形等化器およびフィードバック形等化器内における各トランスバーサルフィルタ202は、何れも、図6に示すように、(N−1)個の遅延素子2021と、N個の乗算器2022、それに総和器2023からなる一般的なもので、各乗算器2022に設定されるタップ係数C1〜CNが更新されることにより、自動等化器の等化特性が設定されるようになっている。
【0065】
また、等化引き込みを行うようにフィードバック形等化器20’のタップ係数を更新するためのタップ係数更新器21’は、図4に示すように、入力された等化誤差Ei、Eqおよびトレーニング信号It、Qtをもとに、複素数演算を行うようにした構成が用いられている。図4において、24,26は乗算器、25,27は加算器、28は遅延回路を示す。
【0066】
ここで図5に示した等化器のうち等化器20’の場合を例として、その入力と出力の関係について説明する。図5の各トランスバーサルフィルタ202のタップ係数ベクトルをそれぞれ図のようにCbi、Cbqとする。これらタップ係数ベクトルは、上述のタップ係数C1〜CNにより構成されている。さらに、入力信号It、Qtが、遅延素子2021の遅延期間ごとに時系列に設定されたベクトルである、入力信号ベクトルとしてそれぞれIt、Qtと表わす。そうすると、複素数で表わした入力信号ベクトル(It+j・Qt)とタップ係数ベクトルCbi、Cbqの関係は、次の式で表わせる。
(It+j・Qt)・(Cbi+j・Cbq)=(It・Cbi−Qt・Cbq)+j・(It・Cbq+Qt・Cbi)
よって、出力信号Iab’、Qab’の値は、入力信号ベクトルIt、Qtとタップ係数ベクトルCbi、Cbqにより次式で表わせ、従って、タップ係数ベクトルCbi、Cbqを変えることにより、入力信号It、Qtに対する出力信号Iab’、Qab’の特性、つまり伝達特性を変えることができる。
Iab’=It・Cbi−Qt・Cbq
Qab’=It・Cbq+Qt・Cbi
【0067】
なお、上述のフィードバック形等化器の例では、図5の各トランスバーサルフィルタ202のタップ係数ベクトルをそれぞれCbi、Cbqとしたが、フィードフォワード形等化器の場合は、各トランスバーサルフィルタ202のタップ係数ベクトルをそれぞれCfi、Cfqとする。
【0068】
さらに、この等化特性の設定される様子について詳しく説明する。
まず、所定のフォーマットのトレーニング信号と呼ばれる信号を基準の信号として設定しておき、本来のデータ信号の伝送開始に先立って、このトレーニング信号が図示しない送信機(変調器)から受信機(復調器)に送信されるようにし、これにより上記した等化特性の設定を行い、設定完了後、本来のデータ信号の伝送処理に移行するのである。
【0069】
このとき、受信側では、受信されたトレーニング信号を、トレーニング信号発生器18から発生されているトレーニング信号と比較し、その差を誤差としてこの誤差に応じて等化器9のタップ係数値を逐次変えて行き、等化引き込み達成時の最終タップ係数値を等化器9に設定するようになっている。
【0070】
この等化特性の設定のためのタップ係数更新動作については、所定の等化アルゴリズムに従った演算が行なわれるものであるが、例えば、最小誤差法に係わる等化アルゴリズムを用いてタップ係数更新動作を行うための演算方法について以下説明する。
【0071】
フィードフォワード形等化器の場合、タップ係数ベクトルをCfi、Cfqとすると、
Cf(n+1)=Cf(n)−g・X*・E
ここで、
Cf(n+1):(n+1)時点のタップ係数
Cf(n):(n)時点のタップ係数
X*:入力信号の複素共役数
X*=Ir−j・Qr
( j=√(−1) )
E:等化誤差
E=Ei+j・Eq
g:タップ更新ゲイン
また、フィードバック形等化器の場合は、タップ係数ベクトルをCbi、Cbqとすると、
Cb(n+1)=Cb(n)−g・R*・E
ここで、
Cb(n+1):(n+1)時点のタップ係数
Cb(n+1)=Cbi(n+1)+j・Cbq(n+1)
Cb(n):(n)時点のタップ係数
Cb(n)=Cbi(n)+j・Cbq(n)
R*:参照トレーニング信号の複素共役数
R*=It−j・Qt
E:等化誤差
E=Ei+j・Eq
g:タップ更新ゲイン
である。
【0072】
このフィードバック形等化器の場合のタップ係数ベクトルを求める式を具現化したものが図4のタップ係数更新器21’である。
【0073】
以上説明したように図12の自動等化回路では、図11の自動等化回路に比べて、等化器が発散しても等化状態に復旧するまでの時間を短くすることができる。しかしながら、図11の場合と同様に、自動等化器やタップ係数更新器における複素数構成の演算をタップ毎に実行するとなると、同相成分および直交成分も共に実施しなければならないので、その処理量は非常に膨大な処理量となる。そのため、このタップ更新をソフトウェアにて実現する場合には、処理時間やプログラム自身が大きなものになるし、ハードウェアで実現する場合には、その回路規模が大きなものとなってしまう。
【0074】
そのため、図11の自動等化回路と同じ等化引き込み性能を保持しつつ、ソフトウェアで実現する場合には、その処理時間やプログラム量を少なくし、ハードウェアで実現する場合には、その回路規模をすくなくした本発明の一実施例の自動等化回路を含む復調回路(受信回路)のブロック構成を図1に示す。
【0075】
図1において、受信した信号をアナログBPF1により帯域制限した後、AGC2により、受信レベルの大小にかかわらず、一定のレベルにしてA/Dコンバータ3に出力する。A/Dコンバータ3によりデジタル化された信号は受信電力計算器4で受信電力計算が行なわれ、その計算結果がフィードバックされてAGC2のゲインを制御する。またA/Dコンバータ3の出力が乗算器5で正弦波発生器7から発生された変調波(fc)の周波数の正弦波cos(ωc・t)と乗算されると共に、この正弦波cos(ωc・t)を位相シフト器6によりπ/2位相シフトした正弦波sin(ωc・t)とも乗算されることにより、直交復調が行なわれる。ここでωc=2・π・fcである。これら乗算結果である同相成分(I)と直交成分(Q)の出力をロールオフフィルタ8にそれぞれ通過させて、波形整形を行ない、等化器9に入力する。
【0076】
図1において、乗算器5の出力信号つまり復調された信号Im、Qmをロールオフフィルタ8で波形整形して得た信号Ir、Qrからトレーニング信号同期検出器12により、受信したトレーニング信号を検出して同期を取る。トレーニング信号を受信している間、ロールオフフィルタ8の出力信号Ir、Qrをメモリ13に格納するために、スイッチ16−1をONにする。フィードフォワード形等化器9およびフィードバック形等化器19とそれぞれ構成が等しいフィードフォワード形等化器14およびフィードバック形自動等化器20との合成出力信号Ia'、Qa'と、トレーニング信号発生回路18から発生された信号Itとの差を取り誤差信号Eiとする。等化器14と等化器20との合成出力信号Qa’はそのまま誤差信号Eqとする。すなわち、
Ei=Ia'−It
Eq=Qa'
【0077】
この誤差信号を用いて等化器14のタップ更新を行なう。フィードフォワード形等化器9、14およびフィードバック形等化器19、20は、図5に示したような複素数構成である。つまり、フィードバック形等化器について説明すると、(It+j・Qt)・(Cbi+j・Cbq)=(It・Cbi−Qt・Cbq)+j・(It・Cbq+Qt・Cbi)
従って、
Iab'=It・Cbi−Qt・Cbq
Qab'=It・Cbq+Qt・Cbi
さらにトランスバーサルフィルタ202は、図6に示したような一般的によくある構成となっている。
【0078】
等化器14、20のタップ係数値は、タップ係数更新器15、21によって、それぞれ更新され徐々に等化状態となっていく。例えば、タップ更新のアルゴリズムとして、最小誤差法を採用した場合、各タップごとに下記の計算を実施する。
【0079】
フィードフォワード側の場合は、
Cf(n+1)=Cf(n)−g・X*・E
ここで、
Cf(n+1):(n+1)時点のタップ係数
Cf(n):(n)時点のタップ係数
X*:入力信号の複素共役数
X*=Ir−j・Qr
( j=√(−1) )
E:等化誤差
E=Ei+j・Eq
g:タップ更新ゲイン
また、フィードバック側の場合は、
Cb(n+1)=Cb(n)−g・R*・E
ここで、
Cb(n+1):(n+1)時点のタップ係数
Cb(n+1)=Cbi(n+1)+j・Cbq(n+1)
Cb(n):(n)時点のタップ係数
Cb(n)=Cbi(n)+j・Cbq(n)
R*:参照トレーニング信号の複素共役数
R*=It−j・Qt
E:等化誤差
E=Ei+j・Eq
g:タップ更新ゲイン
【0080】
以上の式に従って、タップ係数更新を繰り返すと段々と等化状態になっていき、等化誤差がほぼ0になる時点で等化状態となる。
【0081】
更新計算をしたタップ係数値を次のトレーニング信号を受信したときに、等化器9のタップに係数値として書き込む。トレーニング信号の終わり時点からデータへの切り替わり時点でスイッチ16−3をONにして、フィードフォワード形等化器9およびフィードバック形等化器19の合成出力信号Ia、Qaを識別器10に入力して、等化された信号を識別して、この出力信号をP/S変換器11により、シリアルの受信データとして出力する。
【0082】
ここで、受信するトレーニング信号の信号点が図8に示したようなA,Bである場合、トレーニング信号発生器18から出力されるトレーニング信号は、図9に示したC,Dとする。そうすると、同相成分は±√10となるが、直交成分は0でよい。そうするとItは±√10、Qtは0である。
【0083】
図5に示したような複素数構成のフィードバック等化器20’のQt入力が0であるので、この場合、図3に示したようなより簡単な回路構成の自動等化器20でもって本発明の自動等化回路を実現することができる。また、図4に示したようなタップ係数更新器21’についても、Qt入力が0とすることができるので、図2に示したようなより簡単な回路構成のタップ係数更新器21でもって本発明の自動等化回路を実現することができる。
【0084】
すなわち、図8に示すAとBが受信トレーニング信号の信号点であるとき、トレーニング信号発生器18から出力される信号点は、相対的に図9に示すCとDの位置に回転され、そうすることで、例えば、図1に示すように信号発生器18の直交成分信号Qtを出力する必要がなくなる。
【0085】
そうすることにより、等化器20やタップ係数更新器21の回路構成が等化器20’やタップ係数更新器21’と比べて非常に簡単となり、その演算量は各構成とも約1/2となる。
【0086】
ところで、この図1の自動等化回路の受信した信号点がA、Bであるのに対して、トレーニング信号発生器18からのトレーニング信号(参照トレーニング信号)がC,Dであることでは、それらの位相はθ分異なることになる。従って、タップ更新をして等化状態になる場合には、−θ分位相回転したタップ係数値となるので、フィードフォワード形等化器14から、フィードフォワード形等化器9へ、タップ係数値を設定する前に、位相θ分回転しておいてやれば、参照トレーニング信号をA,Bにしたときと同じタップ係数値となり、フィードフォワード形等化器9、フィードバック形等化器19で正しく等化される状態になる。
【0087】
ここで、位相を回転させるには、下記の式に示したようにすればθ分位相回転させることができる。
Cf(n+1)’=Cf(n+1) × ej・θ
ここで、
Cf(n+1)’=Cfi(n+1)’+j・Cfq(n+1)’
Cf(n+1)=Cfi(n+1)+j・Cfq(n+1)
ej・θ=cosθ+j・sinθ
Cf(n+1) × ej・θ=(Cfi(n+1)・cosθ−Cfq(n+1)・sinθ)+j・(Cfi(n+1)・sinθ+Cfq(n+1)・cosθ)
したがって、
Cfi(n+1)’=Cfi(n+1)・cosθ−Cfq(n+1)・sinθ
Cfq(n+1)’=Cfi(n+1)・sinθ+Cfq(n+1)・cosθ
【0088】
なお、これら2つの式の動作を信号処理して実現するための位相回転器31のブロック構成を図7に示す。図7において、29は乗算器を、30は加算器を表す。
【0089】
図1において、自動等化器14からの等化引き込みしたタップ係数値Cf(n+1)を位相回転器31で上記のように、θ位相回転することでCf(n+1)’として、スイッチ16−2がON時にフィードフォワード形等化器9に設定する。
【0090】
図13は本発明の自動等化器を含む受信回路の別の実施例を示す図13では、メモリ13、フィードフォワード形等化器14に入力する信号を位相回転器33により、−θ位相回転させておく。そうすると、フィードフォワード形等化器14に入力されるトレーニング信号は、受信した信号点A,Bが位相回転され、丁度、図9に示したような信号点C、Dと同様の位相となる。トレーニング信号発生器18から出力されるトレーニング信号も同じ位相の信号であり、そのタップ係数値をそのままフィードフォワード形等化器9およびフィードバック形等化器19に設定すれば、図12で示した構成の場合と同じタップ係数値が設定されることになる。
【0091】
図14は、本発明の自動等化回路を含む受信回路の更に別の実施例を示す。図14では、図12で示した構成の場合と同様に、等化器14、20で等化引き込みを行ない、このタップ係数値を位相回転せずに、等化器9、19にそれぞれ設定する。タップ係数値としては、−θ分位相回転している。そこで、位相回転器34で受信信号を+θ分位相回転させておけば、識別器10では位相回転のない信号が入力されて正しく受信信号を再生することができる。
【0092】
図15は、本発明の自動等化回路を含む受信回路の更に別の実施例を示す。図15では、識別器10の入力で位相回転器35により、受信信号を+θ分位相回転をさせることでも、図14に示す場合と同様な効果を得る。
【0093】
以上の図13〜15に示した受信回路における自動等化回路の構成では、図1に示したものと同様にQtを0とするので、図2、図3に示したような簡単な構成のタップ係数更新器や自動等化器を用いることで、より簡便な構成の自動等化回路を実現可能である。
【0094】
図16は、本発明の自動等化回路を含む受信回路の更に別の実施例を示す。変調器から送信するトレーニング信号の信号点が図9に示したような、C、Dの場合には、自動等化回路の構成を図16に示すようなものにして、回路構成によって位相回転をすることなく、図2、図3に示したような簡単な構成のタップ係数更新器や自動等化器を用いることが可能で、より簡便な構成の自動等化回路を実現することができる。
【0095】
以上の説明では、トレーニング信号発生器から発生するトレーニング信号として同相成分が0でなく、直交成分が0であるとしたが、同相成分が0で、直交成分が0でないトレーニング信号を使うことができるのはいうまでもない。
【0096】
次に、本発明の別の実施例について、図17により説明する。
この図17の実施例は、図示のように、各ロールオフフィルタ8と、等化器9の間に、夫々遅延回路89を挿入したもので、その他の構成は、図1の実施例と同じである。
【0097】
遅延回路89は夫々所定の遅延時間τを有し、ロールオフフィルタ8の出力信号Ir、Qrに、この所定の遅延時間τを与え、遅延出力信号IrD、QrDとして等化器9に供給する働きをする。
【0098】
ここで、この所定の遅延時間τは、1フレーム分のデータ信号の伝送に要する時間、つまりトレーニング信号DTとデータ信号DAの1回分の伝送時間、すなわちτ=tt+td 時間(図10参照)に設定してある。
【0099】
次に、図17の実施例の動作について、図18のタイミング図により説明する。説明のため、図18の(a)に示してあるトレーニング信号DTとデータ信号DAに番号0、1、2、……、が付してあり、これに対応して、図18の(h)でのトレーニング信号DTとデータ信号DAにも番号0、1、2、……、が付してあり、図18の(a)と図18の(h)で、同じ番号の信号が対応していることを表している。
【0100】
いま、ここで、図18の(a)の時刻t0で、ロールオフフィルタ8から出力されたトレーニング信号がDT1であったとすると、このトレーニング信号DT1が、図18の(b)に示すようにしてメモリ13に取込まれ、これにより等化器14による等化引き込み処理、すなわち、タップ係数更新が、図18の(c)に示すように実行され、こうして得られたタップ係数値が、図18の(d)に示すように、時刻t3で位相回転器31とスイッチ回路16−2とを経由して等化器9に書き込まれる。
【0101】
ところが、等化器9に対しては、ロールオフフィルタ8の出力信号Ir、Qrが遅延回路89により1フレーム分遅延されて入力されるので、タップ更新したときに使用したトレーニング信号DT1及びそれに続くデータ信号DA1に対して、遅延出力信号IrD、QrDでのトレーニング信号DT1及びそれに続くデータ信号DA1が丁度同期した形で等化器9にタップ係数値が書き込まれるようになる。
【0102】
この場合、タップ係数更新処理までに1フレーム分の時間を要しているが、等価的には、トレーニング信号DT1により等化引き込みをした後、すぐに同一フレームのデータ信号DA1に等化特性が反映した形でタップ係数更新処理が与えられることになり、従って、この図17の実施例によれば、各フレーム毎に、トレーニング信号DTによるタップ係数更新処理の結果から直ちに、同一フレーム内のデータ信号DAの等化が得られることになる。
【0103】
図1の実施例では、或る時点、例えば時刻t0で受信されたトレーニング信号DT1によって等化引き込み動作が行なわれた場合、その更新計算に時間がかかるため、そのタップ係数値が等化器9に反映されるのは、次のフレームのデータ信号DA2になってしまい、1フレーム時間遅れてタップ係数値の更新がなされる。
【0104】
これでも、伝送路があまり変化しない場合には問題はないが、伝送路が短期間で変化しているときは、1フレーム前の信号で求めた収束したタップ係数値での等化特性では、伝送路の変化に追従が遅れ、正確な等化が得られなくなる虞れがあるが、この図17の実施例では、すぐに反映された形になるので、伝送路の変化に対して十分追従することができる。
【0105】
従って、図17の実施例によれば、等化器に対するタップ係数値の設定が、受信信号に同期した状態にでき、この結果、追従特性が大きく改善され、伝送路の変化が多いときでも常に正しい受信データを容易に再生することができる。
【0106】
なお、以上の説明では、遅延回路89の遅延時間τを1フレーム分の伝送時間に設定したが、フレームの長さとタップ係数値の更新処理時間との関係で、遅延時間を2フレーム以上にしなければならない場合もあるが、その場合には遅延回路89の遅延時間を、その時間に合わせて延ばせばよい。
【0107】
図19は本発明の別の実施例の自動等化回路を含む多値デジタル信号受信回路(復調回路)の構成を示す。
【0108】
図19において、メモリ13から読み出したIr’、Qr’をタップ係数更新器15に入力する。更に、等化器14の出力信号Ia’とトレーニング信号発生回路18の出力信号Itとを加算器17−1に供給して得た誤差信号Ei’と、等化器14のもう一方の出力信号Qa’とをタップ係数更新器15に供給する。即ち、Ia’−It=Eiで、Qa’=Eqとなる。
【0109】
図21はこれを説明するためのI−Q平面図である。図において、黒点で示したトレーニング信号発生回路18の出力ポイント(信号点)はI軸上にあるので直交成分Qtは0である。一方、受信ポイント(信号点)は図のX印の位置にあるとすると、式Qa’−Qt=EqにおいてQtは0なのでQa’=Eqとなる。また、I軸上の同相成分Iaとトレーニング信号点
Itとの差Ia’−ItはEiとなる。
【0110】
動作において、この自動等化器14に、所定の時点で、メモリ13から読出したトレーニング信号を入力し、タップ係数更新器15を動作させ、所定の等化状態が得られるまで、等化器14のタップ係数を更新して行くようにする。
【0111】
こうして自動等化器14によりトレーニング処理を行った結果、タップ係数が更新され、所定の等化状態が得られたら、その後、このタップ更新結果を等化器9に与え、この時点で始めて等化器9のタップ係数が設定され、等化状態が得られるようにしてある。
【0112】
このため、一方ではスイッチ回路16−3を設け、これによりトレーニング信号が受信されているときは、等化器9の出力信号Ia、Qaが識別器10の入力から切り離されるように構成し、他方ではスイッチ16−2を設け、これにより所定の時点で、等化器14に設定されたタップ係数設定結果が等化器9に与えられるように構成してある。
【0113】
従って、スイッチ回路16−1は、トレーニング信号同期検出器12により、トレーニング信号が検出されている期間だけ閉じるように制御され、スイッチ回路16−3は、反転回路260の存在により、スイッチ回路16−1とは反対に、トレーニング信号が検出されている期間だけ開くように制御される。
【0114】
上記構成により、誤差Eqは等化器14の一方の出力であるQa’そのものなので、誤差Eqが簡単に求められると言う利点が得られる。なお、この場合、タップ係数更新器15は図4の構成のものを使うことが出来る。但し、入力It,Qtの代わりにIr’,Qr’を用いる。なお、等化トレーニング用等化器14はデータ再生用等化器9と同じ構成である。
【0115】
図19に示す受信回路の実施例を基として、図20の受信回路に示すように、等化器9の入力側に図17の実施例と同様な遅延回路89を加えた実施例としてもよい。
【0116】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トレーニング信号による等化引き込みにおける、復調回路(受信回路)で発生する参照トレーニング信号を同相成分単独または直交成分単独にすることにより、性能を落とすことなく、同等な等化機能の自動等化器のフィルタ演算およびタップ更新演算が可能で、かつ、回路構成がより簡略化される。そうすることで、ソフトウェアによる実現方法では、その処理量やプログラム量を減らすことができ、またハードウェアによる実現方法では、ハードウェア量を減らすことができる。
【0117】
さらに、処理時間が減ることにより、今までは完全にリアルタイム処理ができなかった処理についても、リアルタイム処理化することが可能である。あるいは、もし、リアルタイム処理が不可能であったとしても、自動等化器の追従性能が向上するなどの利点がある。
【0118】
さらに、ハードウェア量が減ることにより、小形化・低消費電力化することが可能となる。
【0119】
本発明は特に優先的な実施例に関して開示されており、そのため、当該技術分野における当業者によって、形態やその細部における様々な変更や省略が、本発明の範囲内でもってもたらされることが容易であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動等化回路を含む受信回路の一実施例のブロック構成を示す図。
【図2】本発明によるタップ係数更新器のブロック図。
【図3】本発明による自動等化器のブロック図。
【図4】図12の受信回路の自動等化回路に用いるタップ係数更新器の構成例のブロック図。
【図5】図12の受信回路に用いるタップ係数設定可能な等化器の構成例のブロック図。
【図6】トランスバーサル・フィルタのブロック構成例を示す図。
【図7】本発明による位相回転器のブロック図。
【図8】16QAMの場合のコンスタレーション表示例を示す図。
【図9】16QAMの場合のコンスタレーション表示例を示す図。
【図10】トレーニング信号とデータ信号の繰り返し伝送のようすを説明する図。
【図11】従来の技術の自動等化回路のブロック構成例を示す図。
【図12】判定帰還型自動等化回路を含む復調回路(受信回路)のブロック構成を示す図。
【図13】本発明の復調回路の別の実施例のブロック構成を示す図。
【図14】本発明の復調回路の別の実施例のブロック構成を示す図。
【図15】本発明の復調回路の別の実施例のブロック構成を示す図。
【図16】本発明の復調回路の別の実施例のブロック構成を示す図。
【図17】本発明の復調回路(受信回路)の別の実施例のブロック構成を示す図。
【図18】図17の復調回路の動作を説明するためのタイミング図。
【図19】本発明の復調回路(受信回路)の別の実施例のブロック構成を示す図。
【図20】本発明の復調回路(受信回路)の別の実施例のブロック構成を示す図。
【図21】図19の復調回路の動作を説明するためのI−Q平面図。
【符号の説明】
1:アナログBPF(ANALOG BPF)、 2:AGC、 3:A/Dコンバータ、 4:受信電力計算部(POWER CALCULATION)、 5,24,26,29,2022:乗算器、 6:位相シフト器(PHASE SHIFTER)、 7:正弦波発生器(SINE WAVE GENERATOR)、 8:ロールオフフィルタ(ROF)、 9,14:フィードフォワード形等化器(EQUALIZER)、 10:識別器(IDENTIFIER)、 11:P/S変換器(P/S CONVERTER)、 12:トレーニング信号同期検出器(TRAINING SIGNAL SYNCHRONIZATION DETECTOR)、 13:メモリ(MEMORY)、15,21,21’:タップ係数更新器(TAP COEFFICIENT UPDATING UNIT)、 16−1,16−2,16−3,16−3’:スイッチ回路、 17−1,17−2,17−3,25,27,30,201:加算器、 2023:総和器、 18:トレーニング信号発生器(TRAINING SIGNAL GENERATOR)、 19,20,20’:フィードバック形自動等化器(EQUALIZER)、 28,89:遅延回路、 31,33,34,35:位相回転器(PHASE ROTATOR)、 202:トランスバーサルフィルタ、 260:反転回路、 2021:遅延素子。
Claims (2)
- デジタルトレーニング信号とデジタルデータ信号とを受信し、等化されたデジタルデータ信号を出力する自動等化回路において、前記デジタルトレーニング信号と前記デジタルデータ信号とを入力し前記デジタルデータ信号を等化する、第1等化器を含む第1自動等化ユニットと、前記デジタルトレーニング信号を記録するメモリと、前記メモリに接続し、更新信号を出力する第2自動等化ユニットであって、前記更新信号を出力する第2等化器と、同相成分および直交成分のいずれか一方の成分のみで他方が無成分のトレーニング信号を出力するトレーニング信号発生器と、前記第2等化器に接続し、前記メモリからのデジタルトレーニング信号と前記トレーニング信号発生器からの出力信号とを比較してタップ係数値を出力するタップ係数計算ユニットと、前記第1自動等化ユニットの入力信号と出力信号、前記メモリに入力する前記デジタルトレーニング信号および前記第2等化器から出力される前記更新信号のうちいずれか一つを位相回転する位相回転器とを有し、前記第2等化器からの前記更新信号が前記第1等化器に供給されて、前記第1等化器の等化特性が更新されることを特徴とする自動等化回路。
- デジタル多値変調システムにより変調されたトレーニング信号とデータ信号とを再生するための受信回路において、前記トレーニング信号とデータ信号とが入力し、デジタルトレーニング信号とデジタルデータ信号とを生成する信号処理ユニットと、前記デジタルトレーニング信号と前記デジタルデータ信号とを入力し前記デジタルデータ信号を等化する、第1等化器を含む第1自動等化ユニットと、前記デジタルトレーニング信号を記録するメモリと、前記メモリに接続し、更新信号を出力する第2自動等化ユニットであって、前記更新信号を出力する第2等化器と、同相成分および直交成分のいずれか一方の成分のみで他方が無成分のトレーニング信号を出力するトレーニング信号発生器と、前記第2等化器に接続し、前記メモリからのデジタルトレーニング信号と前記トレーニング信号発生器からの出力信号とを比較してタップ係数値を出力するタップ係数計算ユニットと、前記第1自動等化ユニットの入力信号と出力信号、前記メモリに入力する前記デジタルトレーニング信号および前記第2等化器から出力される前記更新信号のうちいずれか一つを位相回転する位相回転器とを有し、前記第2等化器からの前記更新信号が前記第1等化器に供給されて、前記第1等化器の等化特性が更新されることを特徴とする受信回路。
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