JP3856729B2 - 半導体装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化珪素層を用いた半導体装置に係り、特に、大電流,高耐圧用の炭化珪素半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭化珪素(シリコンカーバイド、SiC)は珪素(Si)に比べて高硬度でワイドバンドギャップを有する半導体であり、パワーデバイスや耐環境デバイス、高温動作デバイス、高周波デバイス等に応用されている材料である。
【0003】
パワーデバイスとしては、Siを用いたスイッチング素子が多く用いられており、スイッチング素子を整流素子として機能させる場合には、耐圧が必要なためにpnダイオードが用いられる。しかし、pnダイオードはスイッチング損失が大きい。このため、よりスイッチング損失の小さいショットキーダイオードが望ましいが、Siの物性的限界から、Siでショットキーダイオードを形成した場合には所望の耐圧が得られない。そこで、高耐圧でスイッチング損失が小さいスイッチング素子の実現のために、ワイドバンドギャップを有するSiCが注目されている。
【0004】
図8は、スイッチング素子として代表的な第1の従来例である,SiCを用いた一般的なショットキーダイオードの断面図である。図8に示すように、この第1の従来例のショットキーダイオード80は、n型の4H−SiCからなる半導体基板81と、半導体基板81の上面上にエピタキシャル成長されたn型の4H−SiC層82と、ボロンやアルミニウムなどが注入されたイオン注入層83と、基板の上面側に設けられ、4H−SiC層82との間でショットキー障壁を形成するニッケル,チタン等からなるショットキー電極84と、半導体基板81の裏面側に設けられたニッケルからなるオーミック電極85と、ショットキー電極84を囲む絶縁体層86とを備えている。
【0005】
ここで、イオン注入層83は電界集中を緩和するガードリング構造を形成するために必要であり、ショットキー電極84の一部とは界面87において接している。このイオン注入層83は、ショットキー電極84がマイナスに、オーミック電極85がプラスになるように両電極84,85間に高電圧を印加した場合の電界集中を緩和する働きを有している。
【0006】
図9は、スイッチング素子として代表的な第2の従来例である,SiCを用いた一般的なショットキーダイオードの断面図である。図9に示すように、この第2の例のショットキーダイオード90は、n型の4H−SiCからなる半導体基板81と、半導体基板81の上面上にエピタキシャル成長されたn型の4H−SiC層82と、ボロンやアルミニウムなどが注入されたイオン注入層83と、基板の上面側に設けられ、4H−SiC層82との間でショットキー障壁を形成するニッケル,チタン等からなるショットキー電極91と、半導体基板81の裏面側に設けられたニッケルからなるオーミック電極85と、ショットキー電極91を囲む絶縁体層86とを備えている。第1の例のショットキーダイオード80とは異なり、第2の例のショットキーダイオード90のショットキー電極91は、絶縁体層86の上面に跨っている。
【0007】
イオン注入層83は電界集中を緩和するガードリング構造を形成するために必要であり、ショットキー電極91の一部とは界面92において接している。このイオン注入層83は、ショットキー電極91がマイナスに、オーミック電極85がプラスになるように両電極85,91間に高電圧を印加した場合の電界集中を緩和する働きを有している。
【0008】
ここで、図8又は図9に示すショットキーダイオード80,90において、イオン注入層83がガードリングとして機能するためには、注入されたボロン等の不純物を高温熱処理により活性化する必要がある。つまり、ショットキーダイオード80,90の製造工程において、ショットキー電極84,91を形成する前に、イオン注入層83の1500℃を越える高温熱処理が必要である。
【0009】
なお、例えば、文献(Ito et al., IEEE Electron Device Letters, Vol.17, No.3 (1996) pp139-141)に開示されているように、比較的低温(1050℃)でイオン注入層83を熱処理する例も報告されている。
【0010】
また、ショットキー電極84,91の特性を安定化させるために、ショットキー電極84,91を構成する金属膜をパターニングする前又はパターニングした後に、例えば400℃程度での熱処理が施される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の半導体装置においては、図8や図9に示すように、ショットキー電極84と絶縁体層86とが接する領域、及びショットキー電極91と絶縁体層86とが接する領域において、それぞれ変質層88,93,94が形成されることがわかってきた。この変質層88,93,94は、ショットキー電極84,91の熱処理の際に、絶縁体層86との接触部においてショットキー電極84,91を構成する金属と絶縁体層86を構成する絶縁体材料とが反応することによって形成される。そして、変質層88,93がイオン注入層86と接している部分に顕著な電界集中が生じると、漏れ電流が誘発されたり、場合によってはダイオード80,90が破壊するおそれがあった。
【0012】
また、上記従来のショットキーダイオード80又は90の製造工程において、イオン注入層83の活性化のために1500℃以上の高温熱処理を行なうと、高温熱処理の影響により、4H−SiC層82の表面に荒れが発生することがあり、ショットキーダイオード80又は90における漏れ電流の原因となったり、表面の平坦性が失われることに起因する製造プロセス上の各種条件が変動するおそれがあった。また、高温熱処理時に炉内の不純物が4H−SiC層82の表面に付着すると、4H−SiC層82とショットキー電極84又は91との界面に不純物が混在することにより、ショットキー障壁の漏れ電流が発生するおそれがある。
【0013】
このような4H−SiC層82の表面の荒れや汚染を防止するためには、4H−SiC層82の上に酸化膜等の保護膜を形成した状態で熱処理を行なうことが好ましいが、1500℃程度の高温熱処理に耐える保護膜の形成は困難である。
【0014】
さらに、高温熱処理を行なう際には汎用の装置が使えず、炭化珪素の結晶成長装置のような特殊な高周波誘導加熱装置を用いなければならない。このような高温加熱炉を使用すると、冷却に要する時間も余分に費やすことになるためにスループットが悪く、量産時のコスト面でも不利になる。したがって、イオン注入層83のより低温での熱処理が好ましい。しかし、イオン注入に伴ってエピタキシャル成長層82の表面層にはダメージが生じているので、比較的低温でイオン注入層を熱処理した場合には、イオン注入層83の活性化や結晶構造の回復が不十分である。
【0015】
実用的なショットキーダイオードは、数アンペア以上の順方向電流が要求されるので、大きな電極面積が必要である。その結果、変質層88,93とイオン注入層83とが接している界面の面積も必然的に大きい。したがって、ショットキーダイオードの変質層の影響による素子破壊の確率は決して低くない。
【0016】
なお、図8に示す構造においては絶縁体層86が存在しない例もある。しかし、絶縁体層86が存在しない場合には、イオン注入層83の大部分が外方に露出している状態であるので、半導体装置の組み立て工程において問題を生じる。例えば、ショットキー電極84に金,アルミニウム等のワイヤを接続させる際に、イオン注入層83が露出していると、ワイヤとイオン注入層83が接触したり、ワイヤとショットキー電極84の接触部からワイヤ金属や電極金属が微量ながら飛散することがある。そのために、予期せぬ漏れ電流や素子破壊が生じるおそれがあった。
【0017】
本発明の目的は、炭化珪素層を利用しながら、素子破壊や漏れ電流の発生が比較的少ない半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体装置は、炭化珪素からなる半導体層と、上記半導体層にイオン注入して形成されたイオン注入層と、上記半導体層のうち少なくとも上記イオン注入層を除く領域の上に形成されたショットキー電極と、上記ショットキー電極とは所定の間隙をもって上記イオン注入層の上に形成された絶縁体層とを備えている。
【0019】
これにより、ショットキー電極と絶縁体層との間に間隙が存在しているので、ショットキー電極と絶縁体層との反応による変質層が存在しない構造が実現する。したがって、半導体装置における変質層の存在に起因する漏れ電流の発生を抑制することができ、よって、半導体装置に逆バイアスが印加した場合などにおける半導体装置の破壊を抑制することができる。
【0020】
上記ショットキー電極は、上記半導体層のイオン注入層を除く領域と上記イオン注入層とに跨って形成されていることができる。
【0021】
上記ショットキー電極上に形成され、上記ショットキー電極に接触している上部金属電極をさらに備えていることができる。
【0022】
その場合、上記上部金属電極が上記絶縁体層の少なくとも一部を覆っていることにより、ショットキー障壁部への電界の集中が緩和されるので、ガードリング部のわずかな漏れ電流を抑制することができる。
【0023】
上記ショットキー電極は、上記イオン注入層と接触していないことにより、漏れ電流の抑制機能を顕著に発揮することができる。
【0024】
上記ショットキー電極が熱処理されていることにより、ショットキー障壁の形成を確保することができる。
【0025】
炭化珪素からなる基板をさらに備えている場合には、上記半導体層は上記基板上にエピタキシャル成長されていることが好ましい。
【0026】
また、Siからなる基板をさらに備えている場合には、上記半導体層は上記基板上にエピタキシャル成長されていることが好ましい。
【0027】
上記半導体装置は、ショットキーダイオードとして機能することが好ましい。
【0028】
本発明の第1の半導体装置の製造方法は、炭化珪素からなる半導体層に接するショットキー電極を有する半導体装置の製造工程であって、上記半導体層内にドーパントとなる不純物イオンを注入して、イオン注入層を形成する工程(a)と、上記イオン注入層のうち少なくとも一部の上に、絶縁体層を形成する工程(b)とを含み、上記工程(b)は、1200℃以下の温度で行なわれる。
【0029】
この方法により、高温処理を必要としないので、半導体層の表面の荒れが抑制され、工程の簡略化やスループットの向上を図ることができる。
【0030】
上記工程(b)の前に、上記半導体層のうち少なくとも上記イオン注入層を除く領域を覆う保護膜を形成する工程をさらに含むことにより、半導体層の表面の清浄性を確保することができる。
【0031】
上記保護膜を形成する工程は、上記工程(a)の前に行なわれ、上記保護膜は上記工程(a)におけるイオン注入時のマスクであることが好ましい。
【0032】
上記工程(b)では、上記絶縁体層が酸素を含む高温雰囲気中で形成されることにより、工程(b)でイオン注入層の活性化処理を兼ねることができる。
【0033】
上記工程(b)では、上記絶縁体層が堆積法により形成されることができる。
【0034】
本発明の第2の半導体装置の製造方法は、炭化珪素からなる半導体層に接するショットキー電極を有する半導体装置の製造方法であって、上記半導体層の上にイオン注入用マスクを形成する工程(a)と、上記イオン注入マスクの上方から上記半導体層内にドーパントとなる不純物イオンを注入して、イオン注入層を形成する工程(b)と、上記イオン注入層の上に、絶縁体層を形成する工程(c)と、上記絶縁体層の上に、ショットキー電極を形成しようとする領域に開口部を有するレジスト膜を形成する工程(d)と、上記レジスト膜をマスクとする等方性エッチングにより、上記イオン注入用マスクを除去するとともに、上記絶縁体層に上記レジスト膜の開口部よりも大きい開口部を形成する工程(e)と、上記レジスト膜の上方から金属膜を堆積した後、レジスト膜を除去することにより、上記絶縁体層との間に所定の間隙を有するショットキー電極を残す工程(f)とを含んでいる。
【0035】
この方法により、セルアラインにより、互いに間隙を挟んで対向する絶縁体層とショットキー電極とを形成することが容易となる。
【0036】
上記工程(b)の後で上記工程(d)の前に、1200℃以下の温度で熱処理を行なう工程をさらに含むことが好ましい。
【0037】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における半導体装置(ショットキーダイオード)の断面図である。図1に示すように、本実施形態のショットキーダイオード10は、n型の4H−SiCからなる半導体基板11と、半導体基板11の上面上にエピタキシャル成長されたn型の4H−SiC層12と、4H−SiC層12内にボロンを注入して形成されたイオン注入層13と、基板の上面側に設けられ、イオン注入層13の一部を含む4H−SiC層12との間でショットキー障壁を形成するニッケル,チタン等からなるショットキー電極14と、半導体基板11の裏面側に設けられたニッケルからなるオーミック電極15と、ショットキー電極14を囲む熱酸化膜からなる絶縁体層16とを備えている。
【0038】
本実施形態においても、イオン注入層13は電界集中を緩和するガードリング構造を形成するために必要であり、ショットキー電極14の一部に接している。このイオン注入層13は、ショットキー電極14がマイナスに、オーミック電極15がプラスになるように両電極14,15間に高電圧を印加した場合の電界集中を緩和する働きを有している。
【0039】
ここで、本実施形態のショットキーダイオード10の主たる特徴は、ショットキー電極14と絶縁体層16とが非接触であることである。
【0040】
本実施形態では、この構成により、ショットキー電極14と絶縁体層16とが互いに接触することなく、両者間に間隙17が設けられているので、図8又は図9に示す従来のショットキーダイオード80又は90のような変質層88,93,94が生じない。したがって、本実施形態のショットキーダイオード10により、漏れ電流の発生を抑制することができる。
【0041】
次に、本実施形態のショットキーダイオードの製造工程について、図2(a)〜(h)を参照しながら説明する。
【0042】
まず、図2(a)に示す工程の前に、( 0 0 0 1)面から[ 1 1-2 0]方向に8°傾いた面を主面とする直径2インチの4H−SiCからなる半導体基板11を準備する。そして、半導体基板11の上に、4H−SiC層12をエピタキシャル成長させる。このエピタキシャル成長は、炭素源としてプロパンを、珪素源としてシランを、キャリアガスとして水素を、ドーパントとして窒素を用いて行なわれる。4H−SiC基板11はn型で、抵抗率は約0.02Ω・cmである。4H−SiC層12はn型であり、キャリア濃度は約1x1016cm-3であり、膜厚は約9μmである。エピタキシャル成長の終了時には、高温水素雰囲気により、4H−SiC層12の表面処理を行なっている。
【0043】
そして、図2(a)に示す工程で、4H−SiC層12の上に、厚さ約800nmのSiO2 膜を堆積する。次に、フォトリソグラフィー工程により、SiO2 膜の上に、レジストマスクを形成した後、レジストマスクを用いてSiO2 膜をバッファードフッ酸によりエッチングして、4H−SiC層12の上に、注入マスクとなる直径1mmのSiO2 マスク21を形成する。その後、レジストマスクを除去する。
【0044】
次に、図2(b)に示す工程で、SiO2 マスク21の上方から4H−SiC層12内にボロンイオン(B+ )の注入を行なう。このとき、イオン注入の条件は、例えば、傾き角が0度、注入エネルギーが30keV、ドーズ量が1x1015/cm2 、注入時の基板温度が500℃である。これにより、図2(b)に示すように、イオン注入層13が形成される。このとき、SiO2 マスク21にもボロンが注入されるが、SiO2 マスク21は、ボロンイオンがSiO2 マスクを通過してその直下の4H−SiC層12に到達しない程度の厚みを有している。
【0045】
次に、図2(c)に示す工程で、SiO2 マスク21を残したままで、基板を抵抗加熱炉に導入し、抵抗加熱炉内において、窒素雰囲気中,1100℃で90分間熱処理を行なって、イオン注入層13に注入されたボロンを活性化する。
【0046】
その後、基板に、水蒸気を含む酸素雰囲気中、1100℃で60分間熱酸化処理を施した。これにより、図2(c)に示すように、イオン注入層13の表面部が熱酸化され、イオン注入層13の上に、厚さ約20nmの熱酸化膜23が形成される。このとき、SiO2 マスク21があるので、イオン注入層13のうちSiO2 マスク21と接している表面部24は熱酸化の影響を受けにくく、ほとんど酸化されない。
【0047】
次に、図2(d)に示す工程で、4H−SiC基板11の裏面上に、厚さ400nmのニッケル膜(Ni膜)を堆積する。このNi膜が堆積された基板を窒素雰囲気で1000℃、5分間の熱処理を行うことにより、Niからなるオーミック電極15を形成する。
【0048】
次に、図2(e)に示す工程で、フォトリソグラフィー工程を行なって、熱酸化膜23の上に、ショットキー電極を形成しようとする領域を開口したレジストマスクRe1を形成する。レジストマスクRe1の開口の大きさは、例えば直径1.04mmであり、SiO2 マスク21よりもわずかに大きくしておく。
【0049】
次に、図2(f)に示す工程で、バッファードフッ酸(BHF)によるウエットエッチングにより、SiO2 マスク21を除去する。その際、熱酸化膜23のうちレジスト膜Re1の開口部の縁部付近の領域もエッチング作用を受ける。これにより、熱酸化膜23をパターニングして、例えば直径1.041mmの開口部を有する絶縁体層16を形成する。つまり、SiO2 マスク21が除去されてからもウエットエッチングを続けることにより、レジストマスクRe1の開口部(直径約1.04mm)よりも大きい開口部を有する絶縁体層16が形成される。
【0050】
次に、図2(g)に示す工程で、レジストマスクRe1の上方から電子ビーム蒸着により、厚さ約200nmのNi膜14xを堆積する。このとき、レジスト膜Re1の上だけでなく、レジストマスクRe1の開口部内で4H−SiC層12及びイオン注入層13の上にもNi膜14xが堆積される。
【0051】
次に、図2(h)に示す工程で、レジストマスクRe1のリフトオフにより、レジストマスクRe1上のNi膜のみを除去して、イオン注入層13の一部を含む4H−SiC層12の上に、ショットキー電極14を形成する。このとき、絶縁体層16とショットキー電極14の間には0.5μmの間隔17が存在し、両者は接触していない。その後、基板に窒素雰囲気で400℃で5分間の熱処理を行なうことにより、ショットキー電極14と4H−SiC層12との間にショットキー障壁を確実に形成することができる。
【0052】
以上の工程により、図1に示すショットキーダイオード10が形成される。
【0053】
なお、例えば図2(e)に示すレジストマスクRe1を形成することなく、熱酸化膜23をパターニングして、SiO2 マスク21の除去と同時に、大きめの開口部を有する絶縁体層を形成した後、基板上にNi膜を堆積,パターニングすることにより、絶縁体層の開口部よりも小さいショットキー電極を形成することも可能である。しかし、その場合には、ショットキー電極を形成するためのマスクと、熱酸化膜をパターニングするためのマスクとの位置ずれによって、ショットキー電極と熱酸化膜との間の間隙の寸法が位置によってばらつくことになる。
【0054】
それに対し、本実施形態の製造工程により、図2(g)に示すように、セルフアラインによりショットキー電極14と絶縁体層16との間に、ほぼ均一な寸法の間隙17を容易に形成することができる。
【0055】
また、SiO2 マスク21を残した状態で熱酸化膜からなる絶縁体層16を形成することにより、SiO2 マスク21直下の4H−SiC層12の表面を清浄に維持しつつ、イオン注入層13の表面部に生じたダメージ層を除去することができる。しかも、ダメージ層の存在により、酸化が促進されるので、比較的厚い熱酸化膜を形成することができる。
【0056】
−実験例−
ここで、本実施形態のショットキーダイオードの効果を確認するために、以下の実験を行なった。
【0057】
比較のため、図8に示す従来例のショットキーダイオードについても作製した。図1に示すショットキーダイオードと異なる点は、絶縁体層としてプラズマCVDによるSiO2 層を用いたことと、絶縁体のウェットエッチングの際にオーバーエッチングを行わない条件、つまりエッチング時間を最小限にとどめて、絶縁体層86とショットキー電極84とを接触させていることである。以下、本実施形態のショットキーダイオードをダイオードAとし、従来のショットキーダイオードをダイオードBとして表記する。
【0058】
ダイオードAおよびBについて電流電圧特性(I−V特性)を評価したところ、両者の順方向I−V特性にはほとんど差が見られなかった。しかし、両者の逆方向I−V特性には、大きな差が見られた。ダイオードAでは、逆方向電圧で−600Vを印加した際に破壊した素子が10%以下であった。破壊の原因はショットキーダイオードの構造によるものではなく、半導体基板11の結晶やエピタキシャル成長層である4H−SiC層12内の欠陥によるものである。
【0059】
それに対し、ダイオードBでは、ダイオードAに比べて漏れ電流が若干多く、また−500V以上の逆バイアスを印加するとそのほとんどが破壊した。以上のような相違が生じる理由は、以下のように考えられる。
【0060】
ダイオードBにおいては、イオン注入層の活性化温度が1100℃と比較的低温であることから、イオン注入層にはイオン注入に伴うダメージが残存し、結晶欠陥が完全には回復していない。この状態で、図8に示すような変質層88がイオン注入層83と接しているとその部分に電界が集中しやすくなり、局所的な漏れ電流を引き起こす原因となり破壊が生じやすいと考えられる。それに対し、ダイオードAにおいては、図1に示すように、絶縁体層16とショットキー電極14とが接触していないので、変質層が形成されないことから、破壊確率が低いと考えられる。
【0061】
もっとも、従来のショットキーダイオード80においても、より高温の熱処理によりイオン注入層83の活性化を十分行なうことはでき、その場合には破壊の確率は減少する。しかし、より高温の熱処理を行なった場合にも、本実施形態のような変質層の存在しない構造の方がより漏れ電流が少なく、破壊の確率が小さい。しかも、あまりに高温の熱処理によって、表面の荒れが激しくなると、それに伴って従来の技術の欄で説明したような不具合が生じるので、それほど高温の熱処理を行なうことは回避すべきである。
【0062】
−第1の実施形態のプロセスの第1の変形例−
第1の実施形態においては、イオン注入層13を1100℃で熱処理した後に熱酸化膜を形成したが、熱処理工程と熱酸化工程を同じ装置内で行なってもよい。例えば、第1の実施形態のプロセスの第1の変形例として、第1の実施形態におけるショットキーダイオードの製造工程において、図2(b)に示すように、イオン注入層13を形成した後、基板を熱酸化炉に導入し、熱酸化炉中にアルゴンや窒素等の不活性ガスを導入して1100℃に昇温して一定時間保持する熱処理により、イオン注入層13を活性化し、続いて、不活性ガス雰囲気を、酸素を含む雰囲気に置換してそのまま熱酸化工程に移行することにより、イオン注入層13の形成と熱酸化膜23の形成を連続的に行なってもよい。これにより、製造工程の短縮化が可能となる。
【0063】
−第1の実施形態のプロセスの第2の変形例−
第1の実施形態のプロセスの第1の変形例においては、イオン注入された4H−SiC層の熱処理工程と熱酸化工程を同じ装置内で行なったが、熱処理工程と熱酸化工程を同時に行なってもよい。例えば、第1の実施形態のプロセスの第2の変形例として、上記第1の実施形態のプロセスの第1の変形例で示したショットキーダイオードの製造工程において、図2(b)に示すように、イオン注入層13を形成した後、基板を熱酸化炉に導入し、酸素を含む雰囲気中でそのまま所望の温度で熱処理を行なうことにより、酸化雰囲気中での加熱によるイオン注入層13の活性化と熱酸化膜23の形成を同時に行なってもよい。もちろん、熱処理時間が不足の場合は、例えば酸素を含む雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換してさらに熱処理時間を追加してもよい。これにより、製造工程のさらなる短縮化が可能となる。ただし、熱処理工程と熱酸化工程を同時におこなう場合には、イオン注入層13内にイオン注入によるダメージがあるために、イオン注入層13の全部が熱酸化されることがある。そこで、イオン注入時の注入エネルギーをより大きくするか、または、多段注入によりイオン注入層13の注入深さをより大きくすることにより、イオン注入層13の全部が熱酸化されないようにすることが好ましい。
【0064】
また、本実施形態における半導体装置の製造方法においては、イオン注入後の熱処理温度や熱酸化処理温度を1100℃としたが、汎用の抵抗加熱炉やランプアニール装置や熱酸化炉が使用できれば、他の特別な加熱装置を必要としないので、その意味で、イオン注入後の熱処理温度や熱酸化処理温度は1200℃以下であることが望ましい。
−第1の実施形態の構造の第1,第2の変形例−
図3(a),(b)は、第1の実施形態の構造の第1,第2の変形例における半導体装置の断面図である。
【0065】
図3(a),(b)に示すように、第1,第2の変形例においては、いずれもショットキー電極14上に、上部金属電極31を設けている。これらの変形例のショットキーダイオード30a,30bにおけるその他の要素は、第1の実施形態のショットキーダイオード10と同じであるので、図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0066】
図3(a)に示すように、構造の第1の変形例のショットキーダイオード30aにおいては、第1の実施形態と同様に、ショットキー電極14が4H−SiC層12の非イオン注入領域とイオン注入層13とに跨っており、ショットキー電極14を覆うように、上部金属電極31が形成されている。この変形例のショットキーダイオード30aにおけるその他の要素は、第1の実施形態のショットキーダイオード10と同じであるので、図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。この変形例においては、ショットキー電極14は、イオン注入層13と4H−SiC層12の非イオン注入領域との両方に接しているが、絶縁体層16とショットキー電極14とは非接触であり、上部金属電極31が絶縁体層16の少なくとも一部を覆っている。予めショットキー電極14を所望の温度で熱処理しておいて、その後上部金属電極31を形成することにより、4H−SiC層12とショットキー電極14との界面には安定なショットキー界面が形成されるので、上部金属電極31を形成した後に特に熱処理を必要としない。したがって、ショットキー電極14と絶縁体層16の間隙17に上部金属電極31が入り込んでも、絶縁体層16と上部金属電極31との間に変質層が形成されることはほとんどない。
【0067】
また、4H−SiC層12との間にショットキー障壁を形成する必要があるために、ショットキー電極14を構成する金属材料の種類はある程度限定されるが、上部金属電極31を構成する金属材料の種類は特に限定されないので、絶縁体層16に対して変質層を形成しにくい材料を容易に選択することができる。
【0068】
なお、図3(a)に示す第1の変形例において、ショットキー電極14とイオン注入層13との接触部32の面積は小さい方が好ましい。イオン注入層13の熱処理温度が低温である場合には、接触部32からわずかながら漏れ電流が観測されることがあるからである。一方、上部金属電極31と絶縁体層16との接触部33の面積はある程度大きい方が好ましい。絶縁体層16の一部を上部金属電極31が覆っていることにより、上部金属電極31と絶縁体層16との接触部33が電界集中を緩和するように作用するので、イオン注入層13上に絶縁体層16が存在することで、ガードリング部のわずかな漏れ電流をさらに低減することが可能となる。
【0069】
図3(b)に示す構造の第2の変形例に係るショットキーダイオード30bにおいては、ショットキー電極14が、4H−SiC層12の非イオン注入領域のみに接し、イオン注入層13には接していない構成となっている。この第2の変形例においては、漏れ電流をより効果的に低減することが可能になる。
【0070】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態における半導体装置(ショットキーダイオード)の断面図である。図4に示すように、本実施形態のショットキーダイオード40は、第1の実施形態における熱酸化膜からなる絶縁体層16に代えて、熱CVD法により形成されたSiO2 膜からなる絶縁体層41を備えている。本実施形態のショットキーダイオード40におけるその他の要素は、第1の実施形態のショットキーダイオード10と同じであるので、図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
本実施形態においても、ショットキー電極14と絶縁体層41とが互いに接触することなく、両者間に間隙17が設けられているので、図8又は図9に示す従来のショットキーダイオード80又は90のような変質層88,93,94が生じない。したがって、本実施形態のショットキーダイオード40により、漏れ電流の発生を抑制することができる。
【0072】
次に、本実施形態のショットキーダイオードの製造工程について、図5(a)〜(e)を参照しながら説明する。
【0073】
図5(a),(b)に示す工程における処理は、第1の実施形態に示す図2(a),(b)に示す処理と同じであるので説明を省略する。
【0074】
本実施形態においては、図5(c)に示す工程で、SiO2 マスク21を残したままで、基板を抵抗加熱炉に導入し、抵抗加熱炉内において、窒素雰囲気中,1100℃で90分間熱処理を行なって、イオン注入層13に注入されたボロンを活性化する。
【0075】
その後、CVD装置を用いて、図5(c)に示すように、熱CVD法により、イオン注入層13およびSiO2 マスク21の上に、厚さ約200nmのSiO2 膜51を堆積する。熱CVDの際、シランガスと一酸化二窒素とを用い、基板温度を850℃程度に維持する。
【0076】
次に、図5(d)に示す工程で、4H−SiC基板11の裏面上に、厚さ400nmのニッケル膜(Ni膜)を堆積した。このNi膜が堆積された基板を窒素雰囲気で1000℃、5分間の熱処理を行うことにより、Niからなるオーミック電極15を形成する。
【0077】
その後、図5(e)に示す工程で、図2(e)〜図2(h)に示す工程と同様のリフトオフ工程を行なって、4H−SiC層12の非イオン注入領域及びイオン注入層13に跨るショットキー電極14を形成する。また、SiO2 膜51をパターニングして絶縁体層41を形成する。このとき、絶縁体層41とショットキー電極14の間には2μmの間隔17が存在し、両者は接触していない。その後、基板に窒素雰囲気で400℃で5分間の熱処理を行なうことにより、ショットキー電極14と4H−SiC層12との間にショットキー障壁が確実に形成される。
【0078】
本実施形態により、第1の実施形態と同様に、セルフアラインによる絶縁体層41とショットキー電極21との間隙17を均一に確保することができる。
【0079】
−実験例−
次に、本実施形態の効果を確認するために行なった実験について説明する。以下の説明においては、第2の実施形態におけるショットキーダイオードをダイオードCと略して表記する。
【0080】
ダイオードCについてもI−V特性を評価した。ダイオードCの順方向I−V特性は、ダイオードAやBとほとんど差が見られなかった。ダイオードCの逆方向I−V特性はダイオードAと同様に優れており、逆方向電圧で−600Vを印加した際に破壊した素子が10%以下であった。破壊の原因はショットキーダイオードの構造によるものではなく、半導体基板11の結晶や4H−SiC層12内の欠陥によるものである。
【0081】
ダイオードBにおいては、イオン注入層の活性化温度が1100℃と比較的低温であることから、イオン注入層にはイオン注入に伴うダメージが残存し、結晶欠陥が完全には回復していない。この状態で、図8に示すような変質層88がイオン注入層83と接しているとその部分に電界が集中しやすくなり、局所的な漏れ電流を引き起こす原因となり破壊が生じやすいと考えられる。それに対し、ダイオードCにおいては、図4に示すように、絶縁体層41とショットキー電極14とが接触していないので、変質層が形成されないことから、破壊確率が低いと考えられる。
【0082】
−第2の実施形態のプロセスの第1の変形例−
第2の実施形態においては、イオン注入層13を1100℃で熱処理した後にCVD装置を用いてSiO2 膜を形成したが、熱処理工程とSiO2 膜形成工程とを同じ装置内で行なってもよい。例えば、第2の実施形態のプロセスの第1の変形例として、第2の実施形態におけるショットキーダイオードの製造工程において、図5(b)に示すように、イオン注入層13を形成した後、基板をCVD装置に導入し、CVD装置中にアルゴンや窒素等の不活性ガスを導入して1100℃に昇温して一定時間保持する熱処理により、イオン注入層13を活性化し、続いて、不活性ガス雰囲気を、シランや一酸化二窒素を含む反応ガス雰囲気に置換してそのままSiO2 膜形成工程に移行することにより、イオン注入層13の形成とSiO2 膜51の形成とを連続的に行なってもよい。これにより、製造工程の短縮化が可能となる。
【0083】
−第2の実施形態のプロセスの第2の変形例−
第2の実施形態の製造工程の第1の変形例においては、イオン注入された4H−SiC層の熱処理工程とSiO2 膜形成工程とを同じ装置内で行なったが、熱処理工程とSiO2 膜形成工程とを同時に行なってもよい。例えば、第2の実施形態の第2の変形例として、上記第2の実施形態のプロセスの第1の変形例で示したショットキーダイオードの製造工程において、図5(b)に示すように、イオン注入層13を形成した後、基板をCVD装置に導入し、反応性ガスを含む雰囲気中でそのまま所望の温度でSiO2 膜の堆積を行なうことにより、SiO2 膜形成のための加熱によるイオン注入層13の活性化とSiO2 膜51の形成とを同時に行なってもよい。これにより製造工程のさらなる短縮化が可能となる。もちろん、熱処理時間が不足の場合は、例えば反応ガス雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換してさらに熱処理時間を追加してもよいし、熱処理温度が低すぎる場合には、さらに所望の温度まで加熱して熱処理を行なってもよい。
【0084】
また、本実施形態における半導体装置の製造方法においては、イオン注入後の熱処理温度や熱CVD温度を1100℃,850℃としたが、汎用の抵抗加熱炉やランプアニール装置が使用できれば、他の特別な加熱装置を必要としないので、その意味で、イオン注入後の熱処理温度やSiO2 膜形成温度は1200℃以下であることが望ましい。
【0085】
また、第2の実施形態及びプロセスの第1,第2の変形例においては、絶縁体層をSiO2 膜から形成したが、他の絶縁性材料からなる絶縁体層を形成してもよい。
【0086】
また、第2の実施形態においては、絶縁体層を構成するSiO2 膜51を熱CVD法により形成したが、プラズマCVD法やスパッタリング法やその他の堆積法を利用してもよい。
【0087】
−第2の実施形態の構造の第1,第2の変形例−
図6(a),(b)は、第2の実施形態の構造の第1,第2の変形例における半導体装置の断面図である。
【0088】
図6(a),(b)に示すように、第1,第2の変形例においては、いずれもショットキー電極14上に、上部金属電極61を設けている。これらの変形例のショットキーダイオード60a,60bにおけるその他の要素は、第2の実施形態のショットキーダイオード40と同じであるので、図4と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0089】
図6(a)に示すように、構造の第1の変形例のショットキーダイオード60aにおいては、第2の実施形態と同様に、ショットキー電極14が4H−SiC層12とイオン注入層13とに跨っており、ショットキー電極14を覆うように、上部金属電極61が形成されている。この変形例においては、ショットキー電極14は、イオン注入層13と4H−SiC層12の非イオン注入領域の両方に接しているが、絶縁体層41とショットキー電極14とは非接触であり、上部金属電極61が絶縁体層41の少なくとも一部を覆っている。予めショットキー電極14を所望の温度で熱処理しておいて、その後上部金属電極61を形成することにより、4H−SiC層12とショットキー電極14との界面には安定なショットキー界面が形成されるので、上部金属電極61を形成した後に特に熱処理を必要としない。したがって、ショットキー電極14と絶縁体層41の間隙17に上部金属電極61が入り込んでも、絶縁体層41と上部金属電極61との間に変質層が形成されることはほとんどない。
【0090】
また、4H−SiC層12との間にショットキー障壁を形成する必要があるために、ショットキー電極14を構成する金属材料の種類はある程度限定されるが、上部金属電極61を構成する金属材料の種類は特に限定されないので、絶縁体層41に対して変質層を形成しにくい材料を容易に選択することができる。
【0091】
なお、図6(a)に示す第1の変形例において、ショットキー電極14とイオン注入層13との接触部62の面積は小さい方が好ましい。イオン注入層13の熱処理温度が低温である場合には、接触部62からわずかながら漏れ電流が観測されることがあるからである。一方、上部金属電極61と絶縁体層41との接触部63の面積はある程度大きい方が好ましい。絶縁体層41の一部を上部金属電極61が覆っていることにより、上部金属電極61と絶縁体層41との接触部63が電界集中を緩和するように作用するので、イオン注入層13上に絶縁体層41が存在することで、ガードリング部のわずかな漏れ電流をさらに低減することが可能となる。
【0092】
図6(b)に示す構造の第2の変形例に係るショットキーダイオード60bにおいては、ショットキー電極14が、4H−SiC層12に接し、イオン注入層13には接していない構成となっている。この第2の変形例においては、漏れ電流をより効果的に低減することが可能になる。
【0093】
なお、第1,第2の実施形態において説明した半導体装置およびその製造方法においては、4H−SiC層12の非イオン注入領域は、ショットキー電極が炭化珪素と接する面であり、ゴミや不純物等の混入を極力さける必要がある。そのために、半導体装置の製造プロセスにおいて、ショットキー電極を形成する前に4H−SiC層12の表面が保護層によって覆われていれば、その保護層をショットキー電極形成工程の直前に除去することにより、プロセスの途中で混在するゴミや不純物を除去することが可能となる。よって、第1,第2の実施形態では、絶縁体層を形成する工程において、イオン注入されていない4H−SiC層12の上に保護膜であるSiO2 マスク21を有しているので、4H−SiC層12の表面の清浄性を確保することができる。
【0094】
特に、第1,第2の実施形態の製造工程のごとく、保護膜であるSiO2 マスク21がイオン注入マスクとして機能するので、プロセスの簡略化を図ることができる。
【0095】
特に、第1の実施形態において、絶縁体層16となる熱酸化膜23を形成する際に、イオン注入されていない4H−SiC層12の上に保護膜であるSiO2 マスクが存在していることにより、ショットキー電極14と接する4H−SiC層12の表面部が熱酸化されるのを抑制することができる。イオン注入されていない4H−SiC層12の表面部が直接熱酸化された場合、その熱酸化膜はショットキー電極14を形成する前に除去する必要があるが、4H−SiC層12の表面にマイクロパイプの端部等の顕著な欠陥が存在している場合には、熱酸化膜の除去により、欠陥部分が拡大される。そして、この欠陥部分により、後にショットキーダイオードを形成したときの漏れ電流がさらに発生する可能性がある。よって、熱酸化膜の形成の際には、4H−SiC層12の上が保護膜によって覆われていることが好ましい。
【0096】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態における半導体装置(ショットキーダイオード)の断面図である。図7に示すように、本実施形態のショットキーダイオード70のイオン注入層71は、ショットキー電極14の中央部付近の下方に離散的に形成された部分を有している。本実施形態のショットキーダイオード70におけるその他の要素は、第1の実施形態のショットキーダイオード10と同じであるので、図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0097】
本実施形態においても、ショットキー電極14と絶縁体層16とが互いに接触することなく、両者間に間隙17が設けられているので、図8又は図9に示す従来のショットキーダイオード80又は90のような変質層88,93,94が生じない。したがって、本実施形態のショットキーダイオード70により、漏れ電流の発生を抑制することができる。
【0098】
また、本実施形態においても、図3(a),(b)に示す上部金属電極31を設けた変形例の構造を採用することができる。
【0099】
(その他の実施形態)
第1,第2の実施形態で説明した半導体装置およびその製造方法においては、半導体基板として4H−SiC基板を用いたが、6H−SiC基板や、15R−SiC基板、Si基板を用いてもよい。また、半導体層として、4H−SiC層に代えて、15R−SiC基板上にエピタキシャル成長された15R−SiC層や、Si基板上にエピタキシャル成長された3C−SiC層を用いてもよい。もちろん、これ以外の組み合わせであってもよく、2層以上の積層構造であってもよい。例えば、絶縁体基板の上にエピタキシャル成長されたSiC層(半導体層)を備えている基板を用いてもよい。つまりは、ショットキー電極がSiC層上に形成されていればよい。
【0100】
上記第1,第2の実施形態において、この絶縁体層16とショットキー電極14との間の間隙17の寸法は、0.1μm以下程度以下になると変質層の形成を確実に防止することが困難になるので、0.1μm以上であることが好ましく、より確実に変質層の形成を防止するためには0.5μm以上であることが好ましい。一方、リフトオフ工程を確実に行なうためには、間隙17が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。よって、間隙17の寸法は、0.1μm〜20μmの範囲にあることが好ましく、0.5〜10μmの範囲にあることがより好ましい。
【0101】
第1,第2の実施形態で説明した半導体装置およびその製造方法においては、オーミック電極、ショットキー電極を構成する材料としてNiを用いたが、それぞれオーミック特性、ショットキー特性を得られる材料であればいかなる材料であってもかまわない。
【0102】
第1,第2の実施形態で説明した半導体装置およびその製造方法においては、ショットキー電極やオーミック電極として、単層構造ではなく、積層構造の電極を設けてもよい。また、電極の大きさは、特に制限されるものではない。
【0103】
第1,第2の実施形態で説明した半導体装置およびその製造方法においては、ショットキー電極の形成方法としてリフトオフ法を用いたが、他の方法であってももちろんかまわない。
【0104】
第1,第2の実施形態の半導体装置の製造工程において用いたプロセスの条件やガス種に代えて、他の条件やガス種を採用してもよい。
【0105】
また、第1,第2の実施形態の半導体装置およびその製造方法においては、イオン注入種としてボロンを用いたが、イオン注入層が高抵抗層になればよいので、ボロン以外の注入種であってももちろんかまわない。
【0106】
第1,第2の実施形態における製造工程では、イオン注入後の熱処理温度や熱酸化処理温度を1200℃以下で形成するようにしているが、絶縁体層とショットキー電極とが非接触である構造を有するならば、1200℃を越える温度でイオン注入後の熱処理を行なっても、変質層の形成を防止することは可能である。例えば、イオン注入後に1500℃以上の温度で熱処理を行なっても、第1,第2の実施形態の構造又は製造方法により、変質層の形成を防止することが可能である。
【0107】
さらに、本発明の半導体装置はショットキーダイオードに限らず、イオン注入による電界集中緩和構造を有する素子であれば、トランジスタ等の他の素子形態であってもよい。
【0108】
さらに、本発明の半導体装置の製造方法においては、もちろん他の構成を有する半導体装置へも応用できる。例えば、図9に示した従来の構成を有する半導体装置を形成する場合であっても、第1,第2の実施形態の製造方法を用いることにより、高温熱処理を必要としないために、半導体装置の製造工程の簡略化やスループットを向上させることができ、漏れ電流の低減を図ることができる。
【0109】
【発明の効果】
本発明の半導体装置又はその製造方法によると、漏れ電流の少ない耐圧性の大きい半導体装置又はその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態におけるショットキーダイオードの断面図である。
【図2】(a)〜(h)は、第1の実施形態におけるショットキーダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図3】(a),(b)は、第1の実施形態の構造の第1,第2の変形例における半導体装置の断面図である。
【図4】第2の実施形態におけるショットキーダイオードの断面図である。
【図5】(a)〜(e)は、第2の実施形態におけるショットキーダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図6】(a),(b)は、第2の実施形態の構造の第1,第2の変形例における半導体装置の断面図である。
【図7】第3の実施形態におけるショットキーダイオードの断面図である。
【図8】スイッチング素子として代表的な第1の従来例である,SiCを用いた一般的なショットキーダイオードの断面図である。
【図9】スイッチング素子として代表的な第2の従来例である,SiCを用いた一般的なショットキーダイオードの断面図である。
【符号の説明】
10 ショットキーダイオード
11 半導体基板
12 4H−SiC層
13 イオン注入層
14 ショットキー電極
15 オーミック電極
16 絶縁体層
23 熱酸化膜
Claims (11)
- 炭化珪素からなる半導体層と、
上記半導体層にイオン注入して形成されたイオン注入層と、
上記半導体層のうち少なくとも上記イオン注入層を除く領域の上に形成されたショットキー電極と、
上記ショットキー電極とは所定の間隙をもって上記イオン注入層の上に形成された絶縁体層と
を備えている半導体装置。 - 請求項1に記載の半導体装置において、
上記ショットキー電極は、上記半導体層のイオン注入層を除く領域と上記イオン注入層とに跨って形成されていることを特徴とする半導体装置。 - 請求項1又は2に記載の半導体装置において、
上記ショットキー電極上に形成され、上記ショットキー電極に接触している上部金属電極をさらに備えていることを特徴とする半導体装置。 - 請求項3に記載の半導体装置において、
上記上部金属電極は、上記絶縁体層の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする半導体装置。 - 請求項1に記載の半導体装置において、
上記ショットキー電極は、上記イオン注入層と接触していないことを特徴とする半導体装置。 - 請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
上記ショットキー電極が熱処理されていることを特徴とする半導体装置。 - 請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
炭化珪素からなる基板をさらに備え、
上記半導体層は上記基板上にエピタキシャル成長されていることを特徴とする半導体装置。 - 請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
Siからなる基板をさらに備え、
上記半導体層は上記基板上にエピタキシャル成長されていることを特徴とする半導体装置。 - 請求項1〜8のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
上記半導体装置は、ショットキーダイオードとして機能することを特徴とする半導体装置。 - 炭化珪素からなる半導体層に接するショットキー電極を有する半導体装置の製造方法であって、
上記半導体層の上にイオン注入用マスクを形成する工程(a)と、
上記イオン注入マスクの上方から上記半導体層内にドーパントとなる不純物イオンを注入して、イオン注入層を形成する工程(b)と、
上記イオン注入層の上に、絶縁体層を形成する工程(c)と、
上記絶縁体層の上に、ショットキー電極を形成しようとする領域に開口部を有するレジスト膜を形成する工程(d)と、
上記レジスト膜をマスクとする等方性エッチングにより、上記イオン注入用マスクを除去するとともに、上記絶縁体層に上記レジスト膜の開口部よりも大きい開口部を形成する工程(e)と、
上記レジスト膜の上方から金属膜を堆積した後、レジスト膜を除去することにより、上記絶縁体層との間に所定の間隙を有するショットキー電極を残す工程(f)と
を含む半導体装置の製造方法。 - 請求項10に記載の半導体装置の製造方法において、
上記工程(b)の後で上記工程(d)の前に、1200℃以下の温度で熱処理を行なう工程をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
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