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JP3844091B2 - 誘導負荷駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、同一の誘導負荷(コイル)を短時間に複数回駆動する誘導負荷駆動装置及びその駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
同一の誘導負荷を所定時間内に複数回駆動しなければならない場合が多く、この例として、内燃機関の燃料噴射装置のソレノイド駆動や、ステップモータの等価多相駆動方式での相コイル駆動等がある。その中の一つであるディーゼルエンジンの場合を説明すると、ディーゼルエンジンの排気ガス対策、特にはNOX 濃度低減のために、従来から燃料噴射方法の改良が多くなされている。この方法の一つとして、電子制御式ユニットインジェクタにおいて、燃料噴射時にメイン噴射に先立ってパイロット噴射させる方法が提案されている。これは、圧送工程時に、燃料のメイン噴射の直前の所定時期に、所定量をパイロット噴射するものであり、このパイロット噴射時期と噴射量を最適に制御することによって、燃焼が緩やかに行われ、NOX 濃度を低減できると共にエンジンの騒音も低減することができる。従来のパイロット噴射方式によるユニットインジェクタは、燃料噴射を制御するソレノイドバルブを所定のパイロット噴射時期及びメイン噴射時期に合わせて2回連続して駆動しているものである。
【0003】
通常、ソレノイドバルブのような誘導負荷を応答性よく駆動するためには、負荷電流を急速に立ち上げたり、減少させる必要がある。このために、一般的に、負荷電流を速やかに減少させる方法として、電流減少時に抵抗や電圧制限素子等のようなエネルギーを吸収する部品を負荷を含む電流の環流路に挿入し、負荷のインダクタンスに蓄積されたエネルギーを消費する方式が採用されている。また、負荷電流を急速に立ち上げるために、駆動初期に高電圧を印加する方法が多く採用されている。この場合、ソレノイドバルブが動作した後もこの高電圧を印加し続けると、ソレノイドバルブや駆動回路内で発生する熱が大きくなり、負荷としての効率が悪くなる。よって、ソレノイドバルブが動作完了したら、通常は、駆動初期の上記高電圧より低い電圧で駆動するようにしている。
【0004】
このような理由から、従来のユニットインジェクタのソレノイドバルブ駆動装置は、車載バッテリーが供給する電源電圧から上記高電圧を得るための昇圧回路と、ソレノイドバルブが動作完了した後に所定電流値に保持するための保持電流出力回路とを備えている。一般に、この昇圧回路には、負荷駆動初期に必要なエネルギー(負荷に投入するエネルギー、及びアクチュエータとしての負荷の変位に必要なエネルギー)を電荷として蓄積するコンデンサや、磁気エネルギーとして蓄積するインダクタンス等が設けられており、負荷駆動初期にこれらの蓄積エネルギーが速やかに負荷に投入されるようになっている。このようにして、上記パイロット噴射及びメイン噴射時のソレノイドバルブの応答性を良くし、噴射時期の遅れを無くすようにしている。
【0005】
また、ステップモータの場合について説明すると、応答性を改善するためには、通常、相数や極数を増やすことが必要であるが、例えば3相機に対して見掛け上の相数を増やして等価的に12相に増加するような等価多相駆動方式がよく知られている。図22に、この等価12相駆動方式の励磁コイル部の一例の回路図を示している。同図で、1相〜3相に対応してコイル1、2、3が設けられており、それぞれのコイルの一端は電源の正極に接続されている。コイル1の他端と電源の負極の間には、抵抗4aとトランジスタ7aの直列回路、及び抵抗4bとトランジスタ7bの直列回路が並列に接続されている。また、同様に、コイル2の他端と電源の負極の間には、抵抗5aとトランジスタ8aの直列回路、及び抵抗5bとトランジスタ8bの直列回路が並列に、さらに、コイル3の他端と電源の負極の間には、抵抗6aとトランジスタ9aの直列回路、及び抵抗6bとトランジスタ9bの直列回路が並列に接続されている。そして、各トランジスタのベースは図示しない駆動装置に接続されており、この駆動装置は各トランジスタのベースに順次オン信号を出力して各トランジスタを導通させ、各コイル1、2、3に順次励磁電流を流す。このときの各相の電流値は各相の2つの抵抗(例えば、抵抗4a、4b)によって1:2の2通りに設定されており、この電流による各相の励磁シーケンスは図23で示されている。同図において、”1”は各トランジスタの「オン」を表している。同図に示すように、各相の励磁電流値を位相をずらして順次増加及び減少を繰り返すと、各相の起磁力の合成により、各相間に3点の回転子安定位置が設けられ、結果的に等価的な12相駆動が実現されて駆動周波数が改善される。
このとき、例えば図23のシーケンスが9→10、及び10→11に変わるときのI相のように、各相コイルを所定時間内に2回駆動しなければならない。したがって、このような方式のステップモータにおいても、各コイル1、2、3の負荷電流を速やかに立ち上がらせるために、前述と同様に駆動初期に高電圧を印加することが考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のソレノイド駆動装置においては、上述のように同一のソレノイドバルブを短時間に2回駆動しなければならないので、前記昇圧回路はこの短時間内に前記エネルギー蓄積用のコンデンサやインダクタンスに所定量のエネルギーを蓄積して昇圧しなければならない。ところが、このエネルギー蓄積に要する時間が短時間である程、昇圧回路のエネルギー蓄積を行なう各パワーエレクトロ素子(例えば、サイリスタ、トランス等)は大容量のものが必要となる。ところが、大容量の素子を使用すると昇圧回路部が大型になり、これに伴ってコストが大幅に上がるので、十分な容量を有する昇圧回路を構成するのが困難となっている。したがって、従来の駆動回路では、2回目の昇圧が間に合わない場合が生じている。上記燃料噴射の場合には、このときメイン噴射時のソレノイドバルブの応答が遅くなり、パイロット噴射とメイン噴射の間での挙動が不安定となる。この結果、NOX 濃度の低減効果が十分に得られないという問題がある。
【0007】
これと同様に、上記ステップモータの駆動装置でも以下のような問題が発生している。ステップモータの回転が高速になるにつれて、各相コイルを駆動する時間間隔が短くなってくるので、同一の相コイルを短時間に2回駆動しなければならない。このために、昇圧回路は短時間でエネルギー蓄積が可能な大容量の素子が必要となり、昇圧回路の大型化及びコストアップの問題を生じている。
【0008】
本発明は、上記の問題点に着目してなされ、昇圧回路の大型化を伴わずに同一の誘導負荷を所定時間内に複数回駆動できると共に、駆動初期の負荷電流の立ち上がりを高速にできる誘導負荷駆動装置及びその駆動方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、所定時間内に同一の誘導負荷を複数回駆動し、この駆動を繰り返して行なう誘導負荷駆動装置において、エネルギーを蓄積して高電圧に昇圧し、この高電圧を前記同一の誘導負荷に所定時間内に交互に印加してそれぞれ負荷電流を高速に立ち上げる複数の昇圧回路と、この複数の昇圧回路で負荷電流を立ち上げ後に前記同一の誘導負荷に所定電圧を印加し、負荷電流を所定値に保持する保持電流出力回路と、前記複数の昇圧回路及び保持電流出力回路の各出力が交互に前記同一の誘導負荷に接続されるように切り換えられる複数のスイッチ手段と、この複数のスイッチ手段を所定の順序で切り換える制御ロジック回路とを備え、前記同一誘導負荷に所定時間内に複数回流す電流の立ち上げ時間を高速化し、
前記誘導負荷は、ソレノイドバルブにより燃料噴射の開始時期及び終了時期を制御する内燃機関の燃料噴射装置における前記ソレノイドバルブのソレノイドであり、
内燃機関の一気筒に対応した燃料噴射装置のソレノイドをパイロット噴射時に駆動し、かつ、この気筒の次に噴射する気筒に対応したソレノイドをメイン噴射時に駆動し、これらの駆動を繰り返す第1の前記昇圧回路及び第1の前記保持電流出力回路と、
前記一気筒に対応したソレノイドをメイン噴射時に駆動し、かつ、この気筒の次に噴射する気筒に対応したソレノイドをパイロット噴射時に駆動し、これらの駆動を繰り返す第2の前記昇圧回路及び第2の前記保持電流出力回路と、
パイロット噴射時の前記第1の昇圧回路及び第1の保持電流出力回路の出力と、メイン噴射時の前記第2の昇圧回路及び第2の保持電流出力回路の出力、あるいは、メイン噴射時の前記第1の昇圧回路及び第1の保持電流出力回路の出力と、パイロット噴射時の前記第2の昇圧回路及び第2の保持電流出力回路の出力とを切り換える複数の前記スイッチ手段とを備えた構成としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によると、複数の昇圧回路を設け、複数回誘導負荷を駆動する際に各昇圧回路で駆動初期の高圧を印加する。このとき、各昇圧回路が次回印加しなければならない時間までに、余裕を持ってエネルギーを十分に蓄積できるので、誘導負荷の応答遅れが無くなる。また、このエネルギーの蓄積に要する時間は、従来における単一の昇圧回路で複数回誘導負荷を駆動する場合に比べて余裕があるので、昇圧回路の電流容量を従来に比較して大幅に低減できる。したがって、昇圧回路をコンパクトに、かつ、低コストで構成でき、また駆動装置の信頼性も向上する。
また、2つの昇圧回路を設け、各昇圧回路によりパイロット噴射時とメイン噴射時のソレノイドバルブの負荷電流を速やかに立ち上げることができる。このとき、次回の噴射時まで時間的な余裕があるので、素子の電流容量を従来に比較して大きくすることなくエネルギー蓄積が可能となり、これによって、パイロット噴射及びメイン噴射共にソレノイドバルブの応答遅れが無くなる。したがって、燃料噴射時期及び噴射量を精度良く制御できるので、NO X 濃度や騒音を確実に低減できる。
また、第1の昇圧回路及び第1の保持電流出力回路のセットと、第2の昇圧回路及び第2の保持電流出力回路のセットとは、互いに、パイロット噴射及びメイン噴射を交互に分担すると共に、噴射気筒が替わる毎に交互にパイロット噴射とメイン噴射の分担を入れ換えるようにしている。これによって、昇圧回路と保持電流出力回路との各セットによりパイロット噴射時とメイン噴射時のソレノイドバルブの負荷電流を速やかに立ち上げることができる。このとき、次回の噴射時まで時間的な余裕があるので、各昇圧回路の素子の電流容量を従来に比較して大きくすることなくエネルギー蓄積が可能となり、これによって、パイロット噴射及びメイン噴射共にソレノイドバルブの応答遅れが無くなる。したがって、燃料噴射時期及び噴射量を精度良く制御できるので、NO X 濃度や騒音を確実に低減できる。また、2つのセットは全く同一に構成できるので、同一の昇圧回路と保持電流出力回路を備えた駆動回路を2セット使用すれば、互いに互換性を持たせられるので、故障時のバックアップとして使用可能となる。
【0021】
請求項に記載の発明は、所定時間内に同一の誘導負荷を複数回駆動し、この駆動を繰り返して行なう誘導負荷駆動装置において、
エネルギーを蓄積して高電圧に昇圧し、この高電圧を前記同一の誘導負荷に所定時間内に交互に印加してそれぞれ負荷電流を高速に立ち上げる複数の昇圧回路と、
この複数の昇圧回路で負荷電流を立ち上げ後に前記同一の誘導負荷に所定電圧を印加し、負荷電流を所定値に保持する保持電流出力回路と、
前記複数の昇圧回路及び保持電流出力回路の各出力が交互に前記同一の誘導負荷に接続されるように切り換えられる複数のスイッチ手段と、
この複数のスイッチ手段を所定の順序で切り換える制御ロジック回路とを備え、前記同一誘導負荷に所定時間内に複数回流す電流の立ち上げ時間を高速化し、
前記誘導負荷は、ソレノイドバルブにより燃料噴射の開始時期及び終了時期を制御する内燃機関の燃料噴射装置における前記ソレノイドバルブのソレノイドであり、
内燃機関の各気筒に対応した燃料噴射装置の各ソレノイドをパイロット噴射時に駆動する第1の前記昇圧回路と、パイロット噴射した上記同一のソレノイドをメイン噴射時に駆動する第2の前記昇圧回路と、前記同一のソレノイドをパイロット噴射時及びメイン噴射時に保持電流を駆動し、かつ、この駆動を気筒順序の一つ置きに繰り返す第1の前記保持電流出力回路と、前記同一のソレノイドをパイロット噴射時及びメイン噴射時に保持電流を駆動し、かつ、この駆動を気筒順序の一つ置きに前記第1の保持電流出力回路と交互に繰り返す第2の前記保持電流出力回路と、前記第1の昇圧回路、第1の保持電流出力回路、第2の昇圧回路、及び、第2の保持電流出力回路のそれぞれの出力を切り換えると共に、メイン噴射時の保持電流期間とパイロット噴射時の保持電流期間とが一部重複可能に切り換える前記スイッチ手段とを備えた構成としている。
【0022】
請求項に記載の発明によると、複数の昇圧回路を設け、複数回誘導負荷を駆動する際に各昇圧回路で駆動初期の高圧を印加する。このとき、各昇圧回路が次回印加しなければならない時間までに、余裕を持ってエネルギーを十分に蓄積できるので、誘導負荷の応答遅れが無くなる。また、このエネルギーの蓄積に要する時間は、従来における単一の昇圧回路で複数回誘導負荷を駆動する場合に比べて余裕があるので、昇圧回路の電流容量を従来に比較して大幅に低減できる。したがって、昇圧回路をコンパクトに、かつ、低コストで構成でき、また駆動装置の信頼性も向上する。
また、2つの昇圧回路を設け、各昇圧回路によりパイロット噴射時とメイン噴射時のソレノイドバルブの負荷電流を速やかに立ち上げることができる。このとき、次回の噴射時まで時間的な余裕があるので、素子の電流容量を従来に比較して大きくすることなくエネルギー蓄積が可能となり、これによって、パイロット噴射及びメイン噴射共にソレノイドバルブの応答遅れが無くなる。したがって、燃料噴射時期及び噴射量を精度良く制御できるので、NO X 濃度や騒音を確実に低減できる。
また、各気筒の噴射時期の前後が一部重なったとき、この気筒に対応したそれぞれのソレノイドに保持電流を流せるように、独立の保持電流出力回路と、スイッチ手段とを備えている。これによって、エンジン回転が高速になって各気筒の噴射時期が重なった場合でも対応可能となり、パイロット噴射及びメイン噴射の噴射時期及び噴射量を精度良く制御できるので、NOX 濃度や騒音を確実に低減できる。
【0023】
請求項に記載の発明は、所定時間内に同一の誘導負荷を複数回駆動し、この駆動を繰り返して行なう誘導負荷駆動装置において、
エネルギーを蓄積して高電圧に昇圧し、この高電圧を前記同一の誘導負荷に所定時間内に交互に印加してそれぞれ負荷電流を高速に立ち上げる複数の昇圧回路と、
この複数の昇圧回路で負荷電流を立ち上げ後に前記同一の誘導負荷に所定電圧を印加し、負荷電流を所定値に保持する保持電流出力回路と、
前記複数の昇圧回路及び保持電流出力回路の各出力が交互に前記同一の誘導負荷に接続されるように切り換えられる複数のスイッチ手段と、
この複数のスイッチ手段を所定の順序で切り換える制御ロジック回路とを備え、前記同一誘導負荷に所定時間内に複数回流す電流の立ち上げ時間を高速化し、
前記誘導負荷は、ソレノイドバルブにより燃料噴射の開始時期及び終了時期を制御する内燃機関の燃料噴射装置における前記ソレノイドバルブのソレノイドであり、
奇数気筒の内燃機関の各気筒に対応した燃料噴射装置の各ソレノイドを、パイロット噴射時に又はメイン噴射時に交互に駆動する第1の昇圧回路及び第2の昇圧回路と、前記各ソレノイドを専用的に駆動する各気筒毎の保持電流出力回路と、前記第1の昇圧回路、前記第2の昇圧回路、及び、前記各気筒毎の保持電流出力回路の各出力を切り換えると共に、メイン噴射時の保持電流期間とパイロット噴射時の保持電流期間とが一部重複可能に切り換える前記スイッチ手段とを備えた構成としている。
【0024】
請求項に記載の発明によると、複数の昇圧回路を設け、複数回誘導負荷を駆動する際に各昇圧回路で駆動初期の高圧を印加する。このとき、各昇圧回路が次回印加しなければならない時間までに、余裕を持ってエネルギーを十分に蓄積できるので、誘導負荷の応答遅れが無くなる。また、このエネルギーの蓄積に要する時間は、従来における単一の昇圧回路で複数回誘導負荷を駆動する場合に比べて余裕があるので、昇圧回路の電流容量を従来に比較して大幅に低減できる。したがって、昇圧回路をコンパクトに、かつ、低コストで構成でき、また駆動装置の信頼性も向上する。
また、2つの昇圧回路を設け、各昇圧回路によりパイロット噴射時とメイン噴射時のソレノイドバルブの負荷電流を速やかに立ち上げることができる。このとき、次回の噴射時まで時間的な余裕があるので、素子の電流容量を従来に比較して大きくすることなくエネルギー蓄積が可能となり、これによって、パイロット噴射及びメイン噴射共にソレノイドバルブの応答遅れが無くなる。したがって、燃料噴射時期及び噴射量を精度良く制御できるので、NO X 濃度や騒音を確実に低減できる。
また、各気筒の噴射時期の前後が一部重なったとき、この気筒に対応したそれぞれのソレノイドに保持電流を流せるように、各気筒毎に専用の保持電流出力回路と、この保持電流を独立に流せるようなスイッチ手段とを備えている。これによって、エンジン回転が高速になって各気筒の噴射時期が重なった場合でも対応可能となり、パイロット噴射及びメイン噴射の噴射時期及び噴射量を精度良く制御できるので、NOX 濃度や騒音を確実に低減できる。
【0025】
請求項に記載の発明は、所定時間内に同一の誘導負荷を複数回駆動し、この駆動を繰り返して行なう誘導負荷駆動装置において、
エネルギーを蓄積して高電圧に昇圧し、この高電圧を前記同一の誘導負荷に所定時間内に交互に印加してそれぞれ負荷電流を高速に立ち上げる複数の昇圧回路と、
この複数の昇圧回路で負荷電流を立ち上げ後に前記同一の誘導負荷に所定電圧を印加し、負荷電流を所定値に保持する保持電流出力回路と、
前記複数の昇圧回路及び保持電流出力回路の各出力が交互に前記同一の誘導負荷に接続されるように切り換えられる複数のスイッチ手段と、
この複数のスイッチ手段を所定の順序で切り換える制御ロジック回路とを備え、前記同一誘導負荷に所定時間内に複数回流す電流の立ち上げ時間を高速化し、
前記誘導負荷は、ソレノイドバルブにより燃料噴射の開始時期及び終了時期を制御する内燃機関の燃料噴射装置における前記ソレノイドバルブのソレノイドであり、
奇数気筒の内燃機関の各気筒に対応した燃料噴射装置の各ソレノイドを、パイロット噴射時に又はメイン噴射時に交互に駆動する第1の昇圧回路及び第2の昇圧回路と、前記各ソレノイドを、噴射気筒が替わる毎に交互に駆動する第1の保持電流出力回路及び第2の保持電流出力回路と、前記第1の昇圧回路、前記第2の昇圧回路、前記第1の保持電流出力回路、及び、前記第2の保持電流出力回路の出力を切り換えると共に、メイン噴射時の保持電流期間とパイロット噴射時の保持電流期間とが一部重複可能に切り換える前記スイッチ手段とを備えた構成としている。
【0026】
請求項に記載の発明によると、複数の昇圧回路を設け、複数回誘導負荷を駆動する際に各昇圧回路で駆動初期の高圧を印加する。このとき、各昇圧回路が次回印加しなければならない時間までに、余裕を持ってエネルギーを十分に蓄積できるので、誘導負荷の応答遅れが無くなる。また、このエネルギーの蓄積に要する時間は、従来における単一の昇圧回路で複数回誘導負荷を駆動する場合に比べて余裕があるので、昇圧回路の電流容量を従来に比較して大幅に低減できる。したがって、昇圧回路をコンパクトに、かつ、低コストで構成でき、また駆動装置の信頼性も向上する。
また、2つの昇圧回路を設け、各昇圧回路によりパイロット噴射時とメイン噴射時のソレノイドバルブの負荷電流を速やかに立ち上げることができる。このとき、次回の噴射時まで時間的な余裕があるので、素子の電流容量を従来に比較して大きくすることなくエネルギー蓄積が可能となり、これによって、パイロット噴射及びメイン噴射共にソレノイドバルブの応答遅れが無くなる。したがって、燃料噴射時期及び噴射量を精度良く制御できるので、NO X 濃度や騒音を確実に低減できる。
また、エンジンの気筒数が奇数の場合に、各気筒の噴射時期の前後が一部重なったとき、この気筒に対応したそれぞれのソレノイドに保持電流を流せるように、噴射気筒が替わる毎に交互に保持電流を駆動する2つの保持電流出力回路と、この保持電流を独立に流せるようなスイッチ手段とを備えている。これによって、エンジン回転が高速になって各気筒の噴射時期が重なった場合でも対応可能となり、パイロット噴射及びメイン噴射の噴射時期及び噴射量を精度良く制御できるので、NOX 濃度や騒音を確実に低減できる。
【0027】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の誘導負荷駆動装置において、前記第1の保持電流出力回路と前記第2の保持電流出力回路とを一つの保持電流出力回路で共用し、この一つの保持電流出力回路がパイロット噴射時及びメイン噴射時の保持電流を駆動するようにしている。
【0028】
請求項に記載の発明によると、パイロット噴射用の保持電流出力回路と、メイン噴射用の保持電流出力回路とを共用化して、一つの保持電流出力回路により保持電流を駆動するようにしている。これにより、駆動回路全体の構成が簡素化されるので、さらに小型化されると共に、経済的に構成できる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
図1〜図17は、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置におけるソレノイドバルブの駆動例を示している。
図1は本実施形態に係わる電子制御ソレノイドバルブ式ユニットインジェクタの断面図を示しており、各気筒毎に各ユニットインジェクタが設けられる。ノズルホルダ101に穿設された圧力室103には、図示しないカムにより往復動作を行なうプランジャ102が嵌入されている。ノズルホルダ101の先端には噴射ノズル104が装着されており、圧力室103と噴射ノズル104とは噴射燃料回路105により連通されている。ノズルホルダ101の側面には燃料入口106が設けられており、この燃料入口106には図示しない燃料フィードポンプから燃料が送給される。また、ノズルホルダ101内には、燃料入口106に連通する燃料供給回路107が配設されている。
【0040】
さらに、ノズルホルダ101の上部にはソレノイド111を有する電磁弁装置140が配設されており、ソレノイド111の下方にはシート142を有するバルブ141が上下移動自在に設けられている。また、ソレノイド111の下部にはアマチュア室112が設けられており、アマチュア室112は燃料の低圧回路113を介して燃料供給回路107と連通されている。そして、燃料の高圧回路115は弁座114を介してシート142と当接し、アマチュア室112はバルブ141及び高圧回路115を介して圧力室103と連通されている。バルブ141は戻しばね143によって弁座114とシート142の間を開く方向に付勢されており、バルブ141の戻り位置はストッパ146により規制されている。また、回路145によりアマチュア室112と連通するスピル室144が設けられており、スピル室144はスピル回路116及び圧力制御弁117を介してオイルパン118に接続されている。なお、圧力制御弁117は、燃料を5〜8Kg/cm2 の圧力になるように制御している。
【0041】
このような構成のユニットインジェクタの作動を、以下に説明する。ソレノイド111が作動していないときはバルブ141は戻しばね143により下側に付勢されており、弁座114とシート142の間は開いている。図示しないフィードポンプから送給された燃料は燃料入口106から燃料供給回路107、低圧回路113を経てアマチュア室112に入り、さらに回路145、スピル室144、スピル回路116及び圧力制御弁117を経てオイルパン118に戻る。その際、圧力は圧力制御弁117によって5〜8Kg/cm2 の低圧に制御される。また、アマチュア室112の燃料の一部は弁座114とシート142との隙間を通り、高圧回路115を経て圧力室103に充満される。
【0042】
ソレノイド111を作動すると、バルブ141は引き上げられてシート142と弁座114の間は閉じられる。図示しないカムによりプランジャ102は押し下げられ、圧力室103の燃料は高圧となり、噴射燃料回路105を経て噴射ノズル104から気筒内に噴射される。ソレノイド111の作動を停止すると、バルブ141は戻しばね143によって押し下げられてシート142と弁座114の間は開き、高圧力の燃料はアマチュア室112からスピル回路116に逃げ、燃料圧力は低圧となり燃料噴射は終了する。このようにして、ソレノイド111の作動時期と時間とを制御することにより、燃料噴射の時期と量とは制御される。
【0043】
図2は第1実施形態に係わる上記ソレノイドを駆動する誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示し、図3は各構成部の動作を説明する信号タイミングチャートを示している。なお、ここでは、6気筒エンジンの例について説明しているが、本発明は気筒数に限定されるものではない。同図において、初期駆動信号出力部11は、エンジン回転に同期して、かつ、所定の噴射気筒順序に従って、各気筒に対応するソレノイドバルブ13a〜13f(上記ソレノイド111に相当)の逐次噴射指令信号DRVn (n=1〜6)を駆動信号処理出力部12に出力する。駆動信号処理出力部12には、各ソレノイドバルブ13a〜13fに対応した信号分配器14a〜14fが設けられている。各信号分配器14a〜14fは、上記逐次噴射指令信号DRVn に基づいて、パイロット噴射を指令する駆動信号SPn 及びメイン噴射を指令する駆動信号SMn (n=1〜6)を生成し、これらの駆動信号SPn 、SMn をそれぞれ第1の駆動回路20及び第2の駆動回路30に出力する。
【0044】
第1の駆動回路20及び第2の駆動回路30は、それぞれパイロット噴射及びメイン噴射を行なうために、各ソレノイドバルブ13a〜13fを駆動する。第1の駆動回路20と第2の駆動回路30は同じ構成をしており、その内部にそれぞれ昇圧回路21、31と、保持電流出力回路22、32と、制御ロジック回路23、33と、スイッチ手段29、39とを備えている。制御ロジック回路23、33は昇圧回路21、31及び保持電流出力回路22、32の出力をスイッチ手段29、39により切り換えて、各ソレノイドバルブ13a〜13fに対応した出力線に所定電圧を出力する。第1の駆動回路20及び第2の駆動回路30の各ソレノイドバルブに対応する出力線は、並列に各ソレノイドバルブに接続されている。
【0045】
図3において、第1の駆動回路20は、前記駆動信号SPn が入力されている間、この駆動信号SPn に対応するソレノイドバルブに駆動電流を流して燃料をパイロット噴射する。これによって噴射圧力が少し上昇し初期燃焼が行われる。また、第2の駆動回路30は、前記駆動信号SMn が入力されている間、この駆動信号SMn に対応するソレノイドバルブに駆動電流を流して燃料をメイン噴射する。これによって噴射圧力が緩やかに上昇してメイン燃焼が行われる。
【0046】
図4は、本実施形態に係わる第1の駆動回路20及び第2の駆動回路30の回路ブロック構成図を示している。第1の駆動回路20及び第2の駆動回路30は同じ構成をしており、ここでは、まず第1の駆動回路20の説明を行なう。
昇圧回路21は電源(すなわち、車載バッテリー)からエネルギーを供給され、このエネルギーを所定時間内にコンデンサ24に蓄積して所定の高電圧を生成している。コンデンサ24はスイッチ手段25a〜25fの各入力端子に接続され、このスイッチ手段25a〜25fの各出力端子はダイオード27a〜27fのアノードに接続されている。各ダイオード27a〜27fのカソード側は駆動回路の出力端子OUT1〜6となっている。また、保持電流出力回路22は上記高電圧より低い電圧で負荷に所定電流を供給するものであり、通常は、電源電圧を直接印加するようにしている。上記所定電流によって、負荷すなわちソレノイドバルブの開状態が保持される。保持電流出力回路22の出力はスイッチ手段26a〜26fの各入力端子に接続され、このスイッチ手段26a〜26fの各出力端子は上記スイッチ手段25a〜25fと同様にダイオード27a〜27fのアノードに接続されている。なお、スイッチ手段25a〜25f及びスイッチ手段26a〜26fは例えば半導体スイッチで構成され、サイリスタやFET等を使用することができる。
【0047】
制御ロジック回路23は上記の各スイッチ手段25a〜25f及びスイッチ手段26a〜26fの開閉を制御しており、図5はその信号タイミングチャートを示している。ここで、制御ロジック回路23は各ソレノイドバルブに対応したパイロット噴射を指令する前記駆動信号SPn を入力して高電圧印加指令SWPn 及び保持電圧印加指令SWHn を生成すると、この高電圧印加指令SWPn を対応したスイッチ手段25a〜25fの制御入力端子に出力し、保持電圧印加指令SWHn を対応したスイッチ手段26a〜26fの制御入力端子に出力する。スイッチ手段25a〜25fはこの高電圧印加指令SWPn を受けたとき導通状態となり、コンデンサ24の高電圧エネルギーを対応するソレノイドバルブ13a〜13fに供給する。また、スイッチ手段26a〜26fは保持電圧印加指令SWHn を受けたとき導通状態となり、対応するソレノイドバルブ13a〜13fに所定の保持電流を流す。よって、ソレノイドバルブの駆動初期電流が速やかに立ち上がり、応答良く燃料のパイロット噴射が行われる。なお、スイッチ手段としてサイリスタやFET等が使用されている場合は、これらの半導体スイッチのゲート端子に上記高電圧印加指令SWPn や保持電圧印加指令SWHn 信号が入力される。
【0048】
第2の駆動回路30の構成も同様であり、昇圧回路31と、保持電流出力回路32と、制御ロジック回路33と、コンデンサ34と、スイッチ手段35a〜35fと、スイッチ手段36a〜36fと、及びダイオード37a〜37fとからなっている。ただし、メイン噴射時の保持電流出力時間はパイロット噴射時の保持電流出力時間より通常長いので、保持電流出力回路の平均的な出力耐量(熱容量)は必然的にメイン噴射用の保持電流出力回路32の方を大きくする必要がある。このことから、経済的な効果を考慮して、パイロット噴射用の保持電流出力回路22の方の容量を小さくできる。
【0049】
制御ロジック回路33は各ソレノイドバルブに対応した前記駆動信号SMn を入力して前記同様の高電圧印加指令SWPn 及び保持電圧印加指令SWHn を生成し、この高電圧印加指令SWPn を対応したスイッチ手段35a〜35fの制御入力端子に出力し、保持電圧印加指令SWHn を対応したスイッチ手段36a〜36fの制御入力端子に出力する。スイッチ手段35a〜35fはこの高電圧印加指令SWPn を受けたとき導通状態となり、コンデンサ24の高電圧エネルギーを対応するソレノイドバルブ13a〜13fに供給する。また、スイッチ手段36a〜36fは保持電圧印加指令SWHn を受けたとき導通状態となり、対応するソレノイドバルブ13a〜13fに所定の保持電流を流す。よって、ソレノイドバルブの駆動初期電流が速やかに立ち上がり、応答良く燃料のメイン噴射が行われる。
【0050】
このように、第1の駆動回路20をパイロット噴射専用とし、第2の駆動回路30をメイン噴射専用として構成したので、パイロット噴射時期とメイン噴射時期との時間間隔が短い場合でも、それぞれの駆動回路に独立に設けられた昇圧回路によって各気筒に対応したソレノイドバルブ13a〜13fに高電圧を印加できる。そして、各昇圧回路のコンデンサ24にエネルギーを蓄積する時間をエンジン最大回転数の各気筒間の噴射時間間隔を考慮して十分に間に合うように設定してあるので、次に噴射されるべき気筒に対しては確実に昇圧される。したがって、毎回、各気筒のソレノイドバルブ13a〜13fの負荷電流が速やかに立ち上がるので、パイロット噴射及びメイン噴射が共に応答性良く行われる。また、このときの各駆動回路の平均的出力耐量(熱的容量)は、短時間で昇圧が可能なような大容量の素子を設けた駆動回路に比較して非常に小さくなるので、全体としてコンパクトに、かつ、コストが大幅に増加せずに構成される。さらに、駆動回路の熱的容量を小さくしたので、信頼性も向上される。
【0051】
ここで、本発明に係わる上記駆動回路20、30が上述のように小型化され、また、信頼性が向上する理由を、以下に説明する。
図6は各気筒毎のパイロット噴射とメイン噴射の時間間隔を表した図であり、同図で横軸はエンジンのクランク軸の回転角度、又はこれと等価的な時間を表し、縦軸は各ソレノイドバルブ13a〜13fの負荷電流値を表している。また、気筒番号は噴射順序を表しており、同図では代表的に気筒1と気筒5の噴射を示している。各気筒毎に、パイロット噴射時の負荷電流28とメイン噴射時の負荷電流38とが所定クランク回転角度の時に流れている。各気筒間のクランク軸回転角度は例えば6気筒では120°であり、エンジンが所定回転数で回転しているとき、この120°の回転に所定時間T2 を要する。また、このときの各気筒でのパイロット噴射時とメイン噴射とのクランク回転角度をθ1 とし、この所要時間をT1 とする。
【0052】
いま、一つの駆動回路によって駆動する場合、すなわち、一つの昇圧回路21と一つの保持電流出力回路22とによってパイロット噴射及びメイン噴射を行なう場合には、少なくとも時間T1 の間にメイン噴射のために昇圧を完了しなければならない。このときにコンデンサ24に蓄積すべきエネルギー(ソレノイドバルブを速やかに動作させるのに必要なエネルギー)をA(J) とすると、昇圧回路21の所要出力は、その効率を100%として数式「W1 (W) =A(J) /T1 」で表される。一方、本実施形態で示したように、二つの駆動回路によってパイロット噴射及びメイン噴射を分担して行なう場合には、時間T2 の間に次回のパイロット噴射又はメイン噴射のために昇圧を完了すればよい。したがって、このときの昇圧回路21の所要出力は、その効率を100%として数式「W2 (W) =A(J) /T2 」で表される。よって、上記2つの場合の効率の比は、数式「W2 /W1 =T1 /T2 」で表される
【0053】
ここで、上記のクランク回転角度θ1 を例えば3°とし、エンジン回転数を1000rpm とすると、時間T1 は0.5(ms)であり、時間T2 は20(ms)である。よって、このときの上記2つの場合の効率の比は、上記数式から数式「W2 /W1 =1/40」で表される。また、一定の電源電圧V(例えば、バッテリー電圧24(V) )で所定の時間T1 又は時間T2 の間にこれらを出力するためには、それぞれ充電電流「W1 /V」又は「W2 /V」を流さなければならない。したがって、本実施形態での昇圧回路21が扱う最大電流値は従来に比して1/40となり、2つの駆動回路によってパイロット噴射及びメイン噴射を分担して行なう方が、各駆動回路の扱う電流容量が格段に小さくなる。これによって、コンデンサ24、34にエネルギーを投入する昇圧回路の各素子の電流容量を大きくしなくても良いので、構成が小型化されると共に、素子の信頼性が向上する。以上が、小型化された駆動回路を2セット使用する方が全体としてコンパクトに、かつ、信頼性が高く構成できる理由である。なお、このことは、一般的な誘導負荷駆動についても同様である。
【0054】
次に、図7に基づいて第2実施形態を説明する。第2実施形態は、二つの駆動回路をパイロット噴射用及びメイン噴射用の専用とせずに、互いに交互にパイロット噴射とメイン噴射を分担する方式を示している。図7は本実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示しており、図2と同じ構成には同一の符号を付してここでの説明を省く。
第1の駆動回路20及び第2の駆動回路30の内部の構成は、図4で示したものと同じとする。駆動信号処理出力部12の各信号分配器14a〜14fは、初期駆動信号出力部11からの逐次噴射指令信号DRVn に基づいて、パイロット噴射を指令する駆動信号SPn 及びメイン噴射を指令する駆動信号SMn (n=1〜6)を生成する。各駆動信号SPn 及び駆動信号SMn は各気筒毎のソレノイドバルブ13a〜13fに対応しており、第1の駆動回路20及び第2の駆動回路30が交互にパイロット噴射及びメイン噴射を行なうように、制御ロジック回路23、33に入力されている。すなわち、各気筒をC1〜C6とし、気筒の噴射順序をC1→C5→C3→C6→C2→C4→C1とすると、上記駆動信号SP1 は第2の駆動回路30に、駆動信号SM1 、SP5 は第1の駆動回路20に、そして駆動信号SM5 、SP3 は第2の駆動回路30に、のように交互に入力される。以下同様にして、最後の駆動信号SM4 は第2の駆動回路30に入力される。
【0055】
この実施形態での各信号のタイミングチャートは図3と同じであり、以下図3、図4及び図7を参照して作用を説明する。
図3、図7において、例えば、逐次噴射指令信号DRV1 は第1気筒C1の噴射指令であり、クランク軸の回転に同期して所定の噴射時期に出力される。逐次噴射指令信号DRV1 に基づいて生成された駆動信号SP1 及び駆動信号SM1 は、第2の駆動回路30及び第1の駆動回路20にそれぞれ入力される。
図4において、第2の駆動回路30では、制御ロジック回路33は駆動信号SP1 を入力して高電圧印加指令SWP1 及び保持電圧印加指令SWH1 を生成すると、高電圧印加指令SWP1 をスイッチ手段35aに出力し、所定時間後に保持電圧印加指令SWH1 を対応するスイッチ手段36aに出力する。これによって、スイッチ手段35aはコンデンサ34の高電圧エネルギーをソレノイドバルブ13aに供給し、所定時間後にスイッチ手段36aはソレノイドバルブ13aに保持電流を流す。この結果、第1気筒C1のソレノイドバルブ13aの駆動初期電流が速やかに立ち上がり、応答良く燃料のパイロット噴射が行われる。
【0056】
また、第1の駆動回路20では、制御ロジック回路23は駆動信号SM1 を入力して高電圧印加指令SWP1 及び保持電圧印加指令SWH1 を生成すると、高電圧印加指令SWP1 をスイッチ手段25aに出力し、所定時間後に保持電圧印加指令SWH1 を対応するスイッチ手段26aに出力する。これによって、スイッチ手段25aはコンデンサ24の高電圧エネルギーをソレノイドバルブ13aに供給し、所定時間後にスイッチ手段26aはソレノイドバルブ13aに保持電流を流す。この結果、第1気筒C1のソレノイドバルブ13aの駆動初期電流が速やかに立ち上がり、応答良くメイン噴射が行われる。
【0057】
第1気筒C1の次に、第5気筒C5の逐次噴射指令信号DRV5 がクランク軸が所定角度に回転したときに出力される。逐次噴射指令信号DRV5 に基づいて生成された駆動信号SP5 及び駆動信号SM5 は、第1の駆動回路20及び第2の駆動回路30にそれぞれ入力される。このとき、第1気筒C1の噴射完了時点からこの時点までの間に、第1の駆動回路20のコンデンサ24及び第2の駆動回路30のコンデンサ34へのエネルギー蓄積は完了している。
【0058】
第1の駆動回路20では、制御ロジック回路23は駆動信号SP5 を入力して高電圧印加指令SWP5 及び保持電圧印加指令SWH5 を生成すると、高電圧印加指令SWP5 をスイッチ手段25eに出力し、所定時間後に保持電圧印加指令SWH5 をスイッチ手段26eに出力する。これによって、前記同様に第5気筒C5のソレノイドバルブ13eの駆動初期電流が速やかに立ち上がり、応答良くパイロット噴射が行われる。
第2の駆動回路30では、制御ロジック回路33は駆動信号SM5 を入力して高電圧印加指令SWP5 及び保持電圧印加指令SWH5 を生成すると、高電圧印加指令SWP5 をスイッチ手段35eに出力し、所定時間後に保持電圧印加指令SWH5 をスイッチ手段36eに出力する。これによって、同様に第5気筒C5のソレノイドバルブ13eの駆動初期電流が速やかに立ち上がり、応答良くメイン噴射が行われる。
【0059】
第5気筒C5の次に、第3気筒C3の逐次噴射指令信号DRV3 が所定のクランク軸回転角度のときに出力される。逐次噴射指令信号DRV3 に基づいて生成された駆動信号SP3 及び駆動信号SM3 は、第2の駆動回路30及び第1の駆動回路20にそれぞれ入力される。このとき、前記と同様に、第5気筒C5の噴射完了時点からこの時点までの間に、各駆動回路のコンデンサ24及びコンデンサ34へのエネルギー蓄積は完了している。そして、前記と同様にして、第2の駆動回路30によって第3気筒C3のソレノイドバルブ13cの駆動初期電流が速やかに立ち上がり、応答良くパイロット噴射が行われ、第1の駆動回路20によって第3気筒C3のソレノイドバルブ13cの駆動初期電流が速やかに立ち上がり、応答良くメイン噴射が行われる。
【0060】
以上のように、第1の駆動回路20と第2の駆動回路30は、パイロット噴射とメイン噴射とを互いに交互に分担しているので、昇圧回路21、31は十分に昇圧が可能となる。また、これによって、各噴射時のソレノイドバルブの応答性が良くなり、パイロット噴射及びメイン噴射の遅れ時間が無くなる。この結果、適切なNOX 濃度の制御が可能となる。さらに、各駆動回路がコンパクトに、かつ、安価に構成され、また信頼性が向上する。
なお、本実施形態では、第1の駆動回路20と第2の駆動回路30は全く同一のもので構成することができるので、故障時に互いにバックアップが可能となる。この場合、正常な駆動回路の方のみを使用して、噴射ソレノイドを駆動することで可能となる。
【0061】
次に、図8及び図9に基づいて、第3実施形態を説明する。本実施形態は、経済的な効果をねらいとして駆動回路を構成したものである。図8は本実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示しており、これまで説明した構成と同じものには同一の符号を付して説明を省く。また、ここでも、6気筒の例を説明している。
初期駆動信号出力部11は、前実施形態と同様に、逐次噴射指令信号DRVn (n=1〜6)を出力する。この逐次噴射指令信号DRVn は、一つの駆動回路40に入力される。
【0062】
駆動回路40内には、二つの昇圧回路21、31と一つの保持電流出力回路43が設けられている。この保持電流出力回路43は前実施形態の保持電流出力回路22と略同一のものである。昇圧回路21、31の出力はそれぞれコンデンサ24、34を介してスイッチ手段46、47に接続されている。また、保持電流出力回路43の出力はダイオード48のアノードに接続されている。そして、スイッチ手段46、47の各出力端子及びダイオード48のカソードは共に各スイッチ手段49a〜49fの入力端子に接続されており、各スイッチ手段49a〜49fの出力端子は駆動回路40の出力端子となっている。また、保持電流出力回路43は前記保持電流出力回路22と同様に保持電流を供給するが、制御ロジック回路44からの保持電圧印加指令を入力したときにこの保持電流を出力するようになっている。なお、スイッチ手段46、47及びスイッチ手段49a〜49fは、前述同様に半導体スイッチ等で構成される。
【0063】
前記逐次噴射指令信号DRVn はそれぞれスイッチ手段49a〜49fのゲートに入力されており、各気筒の噴射時期に合わせて直接スイッチ手段49a〜49fの開閉を制御している。また、逐次噴射指令信号DRVn は論理和回路45に入力され、論理和回路45の出力信号は制御ロジック回路44に入力される。制御ロジック回路44はこの論理和信号に基づいて、所定の制御信号をスイッチ手段46、47及び保持電流出力回路44に出力する。
【0064】
図9はその各信号のタイミングチャートを示しており、同図に従って作用を説明する。逐次噴射指令信号DRVn は、各気筒の噴射時期に同期して出力される。逐次噴射指令信号DRVn がオンすると、スイッチ手段49a〜49fの内の対応したいずれかが導通状態になると共に、論理和回路45から駆動信号が出力される。制御ロジック回路44は、この駆動信号に基づいて、パイロット噴射を指令する駆動信号SPを所定噴射時間だけスイッチ手段46に出力し、この駆動信号SPの後に保持電圧印加指令SWHを所定時間だけ保持電流出力回路43に出力する。これによって、逐次噴射指令信号DRVn に対応するソレノイドバルブに昇圧回路21から高電圧が印加されて初期負荷電流が速やかに立ち上がった後に、保持電流出力回路43から保持電流が出力され、パイロット噴射が応答性良く行われる。さらに、保持電圧印加指令SWHの所定時間後にメイン噴射を指令する駆動信号SMを所定噴射時間だけスイッチ手段47に出力し、この駆動信号SMの後に保持電圧印加指令SWHを所定時間だけ保持電流出力回路43に出力する。これによって、上記パイロット噴射と同一のソレノイドバルブに昇圧回路31から高電圧が印加されて初期負荷電流が速やかに立ち上がった後に、保持電流出力回路43から保持電流が出力され、メイン噴射が応答性良く行われる。そして、逐次噴射指令信号DRVn がオフすると、対応するスイッチ手段49a〜49fがオフすると共に保持電流がオフし、対応する気筒の燃料噴射が終了する。
【0065】
この後、次に噴射すべき気筒に対応する逐次噴射指令信号DRVn がオンすると、同様にして、スイッチ手段49a〜49fの内の対応したいずれかが導通状態になると共に、昇圧回路21によりパイロット噴射時の高電圧が出力され、また所定時間後に昇圧回路31によりメイン噴射時の高電圧が出力される。このとき、昇圧回路21及び昇圧回路31はコンデンサ24、34にエネルギーを十分蓄積しているので、ソレノイドバルブの遅れがなく燃料噴射時期及び噴射量が正確に制御される。また、一つの保持電流出力回路43でパイロット噴射とメイン噴射の保持電流を供給するので、コンパクトに、かつ、コスト的に安価に構成できる。
【0066】
次に、図10〜図11に基づいて第4実施形態を説明する。本実施形態は、前記第3実施形態の構成に比してさらに経済的な効果が得られるものを示している。
図10は本実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示しており、図8と同じ構成には同一の符号を付して説明を省く。また、本実施形態では、図8の構成に対してコンデンサ24、34に関する接続のみが異なっており、以下この異なる接続部のみを説明する。
昇圧回路21の出力は2つのダイオード151、152のアノードに並列に接続されており、ダイオード151のカソードはコンデンサ24を介してスイッチ手段46に、またダイオード152のカソードはコンデンサ34を介してスイッチ手段47に接続されている。したがって、昇圧回路21からのエネルギーは、ダイオード151、152を介して2つのコンデンサ24、34に蓄積されるようになっている。なお、他の構成は図8と同様である。
【0067】
次に、上記構成による作用を図11を参照して説明する。
いま、2つのコンデンサ24、34に等しい量の電荷が蓄積されているものとする。前実施形態同様に、逐次噴射指令信号DRVn が各気筒の噴射時期に同期して出力され、逐次噴射指令信号DRVn がオンすると、スイッチ手段49a〜49fの内の対応したいずれかが導通状態になると共に、論理和回路45から駆動信号が出力される。制御ロジック回路44は、この駆動信号に基づいて、パイロット噴射を指令する駆動信号SPを所定噴射時間だけスイッチ手段46に出力した後に、保持電圧印加指令SWHを所定時間だけ保持電流出力回路43に出力する。これによって、コンデンサ24に蓄積された高電圧エネルギー(つまり、電荷)が逐次噴射指令信号DRVn に対応するソレノイドバルブに投入されて初期負荷電流が速やかに立ち上がった後に、保持電流出力回路43から保持電流が出力され、パイロット噴射が応答性良く行われる。このとき、コンデンサ24の電荷Q1 は駆動信号SPが出力されている間に略零の状態まで放電し、出力電圧V1 もこの放電に伴って略0ボルトまで低下する。また、コンデンサ34に蓄積されている電荷は、ダイオード152によって、コンデンサ24側に移行するのが防止されている。そして、駆動信号SPの出力がオフされるとスイッチ手段46がオフし、コンデンサ24に昇圧回路21からエネルギーが供給され、電荷Q1 及び出力電圧V1 は徐々に増加して行く。
【0068】
さらに、制御ロジック回路44は、保持電圧印加指令SWHの所定時間後にメイン噴射を指令する駆動信号SMを所定噴射時間だけスイッチ手段47に出力し、この駆動信号SMの後に保持電圧印加指令SWHを所定時間だけ保持電流出力回路43に出力する。これによって、上記パイロット噴射と同一のソレノイドバルブに、コンデンサ34に蓄積された高電圧エネルギーが投入されて初期負荷電流が速やかに立ち上がった後に、保持電流出力回路43から保持電流が出力され、メイン噴射が応答性良く行われる。このとき、コンデンサ34の電荷Q2 は駆動信号SMが出力されている間に略零の状態まで放電し、この出力電圧V2 もこの放電に伴って略0ボルトまで低下する。また、出力電圧V2 が低下しているとき、コンデンサ24には、出力電圧V1 が出力電圧V2 より高くなるまで昇圧回路21からエネルギーが供給されるとともに、この蓄積された電荷Q1 は、ダイオード151によって、コンデンサ34側に移行するのが防止される。そして、駆動信号SMの出力がオフされるとスイッチ手段47がオフし、コンデンサ34に昇圧回路21からエネルギーが供給されて電荷Q2 及び出力電圧V2 は徐々に増加して行く。
【0069】
この後、コンデンサ34の出力電圧V2 がコンデンサ24の出力電圧V1 と等しくなった時点で、昇圧回路21の出力エネルギーはダイオード151、152を介して2つのコンデンサ24、34に分配されて蓄積されるので、両者の電荷Q1 、Q2 及び出力電圧V1 、V2 はそれぞれ同一の立ち上がり速度で所定値まで増加して行く。
【0070】
そして、逐次噴射指令信号DRVn がオフすると、対応するスイッチ手段49a〜49fがオフすると共に保持電流がオフし、対応する気筒の燃料噴射が終了する。次の噴射気筒の噴射時期に来たとき、対応する逐次噴射指令信号DRVn が出力され、上記と同様にして、次の噴射気筒のパイロット噴射及びメイン噴射が応答性良く行われる。
【0071】
ここで、2つのコンデンサ24、34に高電圧エネルギーを蓄積する時間が充分にあれば、出力電圧V1 、V2 を所望の高電圧まで昇圧することができる。いま、噴射時期が隣接する気筒の駆動信号SP間の時間、及び、駆動信号SM間の時間をそれぞれT3 及びT4 とすると、時間T3 及び時間T4 の間に出力電圧V1 、V2 を所望の高電圧まで昇圧すればよい。したがって、対象とするエンジンの最大回転数仕様から最短の時間T3 、T4 を算出し、この最短の時間T3 、T4 以内に出力電圧V1 、V2 が所望の高電圧になるように、昇圧回路21の出力電流容量を設定すればよい。このとき、昇圧回路21は、前述までの実施形態におけるコンデンサ24、34と同一の容量をそれぞれ有する2つのコンデンサ24、34に略同一の時間T3 又は時間T4 内に充電する必要がある。よって、昇圧回路21の出力電流容量は、前実施形態と比較して略2倍となる。しかしながら、本発明が対象としているように、パイロット噴射時期とメイン噴射時期との間の時間T1 が気筒間の噴射時期間隔T2 よりも、つまり時間T3 及び時間T4 よりも非常に短いときには、従来技術にあるような昇圧回路に比して非常に小さい出力電流容量で上記の性能を満足させることができる。また、時間T1 と時間T3 及び時間T4 との関係によっては、2つの昇圧回路の場合と1つの昇圧回路の場合と比較すると、1つの昇圧回路にすることにより生じる「出力容量の増加」の面よりも、「昇圧回路の設定スペースの減少」及び「コスト低減」の効果が大きくなり、よって、1つの昇圧回路にした方が有利となる場合がある。この結果、装置全体のコスト低減及び小型化が図られ、また信頼性も向上できる。
【0072】
次に、図12及び図13に基づいて第5実施形態を説明する。図12は、本実施形態での誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示している。ここでも、前実施形態と同じ構成には同一の符号を付して説明を省く。
昇圧回路21はパイロット噴射用であり、その出力はコンデンサ24を介してスイッチ手段54a〜54fに接続されている。また、昇圧回路31はメイン噴射用であり、その出力はコンデンサ34を介してスイッチ手段55a〜55fに接続されている。さらに、保持電流出力回路22、32はそれぞれパイロット噴射用とメイン噴射用を兼ねており、保持電流出力回路22の出力はスイッチ手段56a〜56cに接続され、保持電流出力回路32の出力はスイッチ手段57d〜57fに接続されている。そして、スイッチ手段54a〜54fの出力、及びスイッチ手段55a〜55fの出力はそれぞれソレノイドバルブ13a〜13fに並列に接続される。スイッチ手段56a〜56cの出力はそれぞれソレノイドバルブ13a〜13cに、また、スイッチ手段57d〜57fの出力はそれぞれソレノイドバルブ13d〜13fに接続される。ここで、各ソレノイドバルブ13a〜13fに対応した気筒をC1〜C6とし、気筒噴射順序をC1→C5→C3→C6→C2→C4→C1とすると、上記スイッチ手段56a〜56cのグループとスイッチ手段57d〜57fのグループは、交互に噴射される二つの気筒グループ(C1、C2、C3と、C4、C5、C6)に専用に割り当てられている。
【0073】
また、制御ロジック回路53は、初期駆動信号出力部11から各気筒に対応した逐次噴射指令信号DRVn (n=1〜6)を入力し、この逐次噴射指令信号DRVn に基づいて高電圧印加指令SWPAn 、SWPBn 及び保持電圧印加指令SWHn を生成し、これらの指令によって上記各スイッチ手段の開閉を制御する。高電圧印加指令SWPAn はスイッチ手段54a〜54fに入力され、高電圧印加指令SWPBn はスイッチ手段55a〜55fに入力され、また、保持電圧印加指令SWHn はスイッチ手段56a〜56c及びスイッチ手段57d〜57fにそれぞれ入力される。
【0074】
図13は本実施形態の各信号のタイミングチャートを示しており、同図に従って作用を説明する。逐次噴射指令信号DRVn は、各気筒の噴射時期に合わせて出力される。いま、第1気筒C1の噴射時期になったとき、逐次噴射指令信号DRV1 がオンされたとする。制御ロジック回路53は、逐次噴射指令信号DRV1 に基づいて、第1気筒C1のパイロット噴射を指令する高電圧印加指令SWPA1 を所定噴射時間だけスイッチ手段54aに出力し、この高電圧印加指令SWPA1 の後に保持電圧印加指令SWH1 を所定時間だけスイッチ手段56aに出力する。これによって、ソレノイドバルブ13aに昇圧回路21から高電圧が印加されて初期負荷電流が速やかに立ち上がった後に、保持電流出力回路22から保持電流が出力される。こうして、パイロット噴射が応答性良く行われる。さらに、保持電圧印加指令SWH1 の所定時間後にメイン噴射を指令する高電圧印加指令SWPB1 を所定噴射時間だけスイッチ手段55aに出力し、この高電圧印加指令SWPB1 の後に保持電圧印加指令SWH1 を逐次噴射指令信号DRV1 がオンしている間スイッチ手段56aに出力する。これによって、ソレノイドバルブ13aに昇圧回路31から高電圧が印加されて初期負荷電流が速やかに立ち上がった後に、保持電流出力回路22から保持電流が出力される。こうして、メイン噴射が応答性良く行われる。そして、逐次噴射指令信号DRV1 がオフすると、スイッチ手段56aがオフして保持電流の出力がオフし、第1気筒C1の燃料噴射が終了する。
【0075】
この後、次に噴射すべき第5気筒C5に対応する逐次噴射指令信号DRV5 がオンするので、上記と同様にして、逐次噴射指令信号DRV5 に基づいて、順次、高電圧印加指令SWPA5 がスイッチ手段54eに出力され、保持電圧印加指令SWH5 がスイッチ手段57eに出力され、高電圧印加指令SWPB5 がスイッチ手段55eに出力され、保持電圧印加指令SWH5 がスイッチ手段57eに出力される。このようにして、パイロット噴射及びメイン噴射が応答性良く行われる。以下、他の気筒についても同様の作用となる。
【0076】
以上のような構成により、次の噴射気筒に対する噴射時期のとき、昇圧回路21及び昇圧回路31はコンデンサ24、34にエネルギーを十分蓄積しているので、各ソレノイドバルブの応答遅れがなく燃料噴射時期及び噴射量が正確に制御される。
【0077】
また、本実施形態では、エンジン回転が高速になって逐次噴射指令信号DRV1 がオンしている内に次の逐次噴射指令信号DRV5 がオンした場合に、スイッチ手段56aによるソレノイドバルブ13aの保持電流とは独立して、スイッチ手段57eによるソレノイドバルブ13eの保持電流を流すことが可能である。このように、交互に噴射する気筒グループに対応して、専用の保持電流出力回路22、32と、この保持電流の専用ライン58、59と、専用のスイッチ手段56a〜56cのグループ及びスイッチ手段57d〜57fのグループとを設けているので、各気筒の噴射時期の前後が互いに重なる場合があっても、保持電流を継続させることができる。
【0078】
また、本実施形態においても、前記第4実施形態の図10で示したように、1つの昇圧回路21から各ダイオード151、152を介して2つのコンデンサ24、34にエネルギーを供給するようにしてもよい。このとき、2つのコンデンサ24、34に高電圧エネルギーを蓄積する作用は前述同様であり、また、このときの構成全体による作用及び効果は上述したことと変わらない。
【0079】
次に、図14及び図15に基づいて第6実施形態を説明する。本実施形態は各気筒の噴射時期の前後が互いに重なることを可能にした例を示しており、ここでは3気筒エンジンの例を説明する。
図14において、昇圧回路21はパイロット噴射用であり、その出力はコンデンサ24を介してスイッチ手段65a〜65cに接続されている。また、昇圧回路31はメイン噴射用であり、その出力はコンデンサ34を介してスイッチ手段66a〜66cに接続されている。スイッチ手段65a、66aの出力はソレノイドバルブ13aに、スイッチ手段65b、66bの出力はソレノイドバルブ13bに、また、スイッチ手段65c、66cの出力はソレノイドバルブ13cに、それぞれ並列に接続される。また、保持電流出力回路61、62、63はそれぞれ各気筒に対応したソレノイドバルブ13a〜13c専用となっており、パイロット噴射用とメイン噴射用を兼ねている。保持電流出力回路61の出力はダイオード67aのアノードに接続され、ダイオード67aのカソードはソレノイドバルブ13aに接続されている。同様に、保持電流出力回路62の出力はダイオード67bを経由してソレノイドバルブ13bに接続され、保持電流出力回路63の出力はダイオード67cを経由してソレノイドバルブ13cに接続されている。
【0080】
また、制御ロジック回路64は、初期駆動信号出力部11から各気筒に対応した逐次噴射指令信号DRVn (n=1〜3)を入力し、この逐次噴射指令信号DRVn に基づいて高電圧印加指令SWPAn 、SWPBn 及び保持電圧印加指令SWHn を生成し、これらの指令によって上記各スイッチ手段の開閉、及び保持電流出力回路61、62、63の出力時期を制御する。高電圧印加指令SWPAn はスイッチ手段65a〜65cに入力され、高電圧印加指令SWPBn はスイッチ手段66a〜66cに入力され、また、保持電圧印加指令SWHn は各保持電流出力回路61、62、63にそれぞれ入力される。
【0081】
図15は、本実施形態の各信号のタイミングチャートを示している。各気筒の噴射時期に合わせて逐次噴射指令信号DRVn がオンされたとすると、制御ロジック回路64は、逐次噴射指令信号DRVn に基づいて、パイロット噴射を指令する高電圧印加指令SWPAn を対応する気筒のスイッチ手段65a〜65cに所定噴射時間だけ出力し、この高電圧印加指令SWPAn の後に保持電圧印加指令SWHn を対応する保持電流出力回路61、62、63に所定時間だけ出力する。これによって、対応するソレノイドバルブ13a〜13cにコンデンサ24から高電圧が印加されて初期負荷電流が速やかに立ち上がった後に、対応する保持電流出力回路61、62、63から保持電流が出力される。こうして、パイロット噴射が応答性良く行われる。さらに、保持電圧印加指令SWHn の所定時間後にメイン噴射を指令する高電圧印加指令SWPBn を対応する気筒のスイッチ手段66a〜66cに所定噴射時間だけ出力し、この高電圧印加指令SWPBn の後に保持電圧印加指令SWHn を対応する保持電流出力回路61、62、63に逐次噴射指令信号DRVn がオンしている間出力する。これによって、対応するソレノイドバルブ13a〜13cにコンデンサ34から高電圧が印加されて初期負荷電流が速やかに立ち上がった後に、対応する保持電流出力回路61、62、63から保持電流が出力される。こうして、メイン噴射が応答性良く行われる。そして、逐次噴射指令信号DRVn がオフすると、保持電圧印加指令SWHn がオフして保持電流の出力がオフし、この気筒の燃料噴射が終了する。
【0082】
この後、次に噴射すべき気筒に対応する逐次噴射指令信号DRVn がオンすると、同様にして、逐次噴射指令信号DRVn に基づいて順次、高電圧印加指令SWPAn 、保持電圧印加指令SWHn 、高電圧印加指令SWPBn 及び保持電圧印加指令SWHn が出力される。このとき、昇圧回路21及び昇圧回路31はコンデンサ24、34にエネルギーを十分蓄積しているので、ソレノイドバルブの遅れがなく、燃料噴射時期及び噴射量が正確に制御される。
【0083】
また、ある気筒に対応する逐次噴射指令信号DRVn がオンしている間に、次に噴射すべき気筒の逐次噴射指令信号DRVn がオンした場合には、各気筒に対応して、専用の保持電流出力回路61、62、63と、この保持電流の専用ライン68a、68b、68cとを設けているので、各気筒の噴射時期の前後が互いに重なる場合があっても、保持電流を継続させることができる。
なお、本実施形態は3気筒の場合に限定されずに、任意の気筒数の場合でも各気筒毎に専用の保持電流出力回路と保持電流の専用ラインを設けることによって実施可能である。
【0084】
また、本実施形態においても、前記第4実施形態の図10で示したように、1つの昇圧回路21から各ダイオード151、152を介して2つのコンデンサ24、34にエネルギーを供給するようにしてもよい。このとき、2つのコンデンサ24、34に高電圧エネルギーを蓄積する作用は前述同様であり、また、このときの構成全体による作用及び効果は上述したことと変わらない。
【0085】
次に、図16及び図17に基づいて第7実施形態を説明する。本実施形態は、3気筒エンジンの各気筒の噴射時期の前後が互いに重なることを可能にした別の例を示している。
図16において、昇圧回路21はパイロット噴射用であり、その出力はコンデンサ24を介してスイッチ手段74a〜74cに接続されている。また、昇圧回路31はメイン噴射用であり、その出力はコンデンサ34を介してスイッチ手段75a〜75cに接続されている。また、保持電流出力回路71、72はそれぞれパイロット噴射用とメイン噴射用を兼ねており、かつ、各気筒に対しては交互に割り当てられるようになっている。保持電流出力回路71の出力はスイッチ手段76a〜76cの入力端子に接続され、保持電流出力回路72の出力はスイッチ手段77a〜77cの入力端子に接続されている。そして、各スイッチ手段74a、75a、76a、77aの出力はソレノイドバルブ13aに、スイッチ手段74b、75b、76b、77bの出力はソレノイドバルブ13bに、また、スイッチ手段74c、75c、76c、77cの出力はソレノイドバルブ13cに、それぞれ並列に接続されている。
【0086】
また、制御ロジック回路73は、初期駆動信号出力部11から各気筒に対応した逐次噴射指令信号DRVn (n=1〜3)を入力し、この逐次噴射指令信号DRVn に基づいて高電圧印加指令SWPAn 、SWPBn 及び保持電圧印加指令SWHAn 、SWHBn を生成し、これらの指令によって上記各スイッチ手段の開閉を制御する。高電圧印加指令SWPAn はスイッチ手段74a〜74cの制御端子に入力され、高電圧印加指令SWPBn はスイッチ手段75a〜75cの制御端子に入力されている。また、保持電圧印加指令SWHAn はスイッチ手段76a〜76cの制御端子に入力され、保持電圧印加指令SWHBn はスイッチ手段77a〜77cの制御端子に入力されている。
【0087】
図17は、本実施形態の各信号のタイミングチャートを示している。逐次噴射指令信号DRVn は、各気筒の噴射時期に同期してオンされる。いま、各気筒番号をC1〜C3、また噴射順序をC1→C2→C3と仮定し、第1気筒C1に対する逐次噴射指令信号DRV1 がオンされたとする。制御ロジック回路73は、逐次噴射指令信号DRV1 を受けて、パイロット噴射を指令する高電圧印加指令SWPA1 をスイッチ手段74aに出力し、保持電圧印加指令SWHA1 をスイッチ手段76aに出力する。これによって、ソレノイドバルブ13aにコンデンサ24から高電圧が印加されて初期負荷電流が速やかに立ち上がった後に、保持電流出力回路71から保持電流が出力される。こうして、パイロット噴射が応答性良く行われる。さらに、保持電圧印加指令SWHA1 の所定時間後にメイン噴射を指令する高電圧印加指令SWPB1 をスイッチ手段75aに出力し、この高電圧印加指令SWPB1 の後に保持電圧印加指令SWHA1 をスイッチ手段76aに逐次噴射指令信号DRV1 がオンの間出力する。これによって、ソレノイドバルブ13aにコンデンサ34から高電圧が印加されて初期負荷電流が速やかに立ち上がった後に、保持電流出力回路71から保持電流が出力され、メイン噴射が応答性良く行われる。そして、逐次噴射指令信号DRV1 がオフすると、保持電圧印加指令SWHA1 がオフして保持電流の出力がオフし、この気筒の燃料噴射が終了する。
【0088】
この後、次に噴射すべき第2気筒C2に対応する逐次噴射指令信号DRV2 がオンすると、制御ロジック回路73は、逐次噴射指令信号DRV2 を受けて順次、高電圧印加指令SWPA2 をスイッチ手段74bに出力し、保持電圧印加指令SWHB2 をスイッチ手段77bに出力し、そして高電圧印加指令SWPB2 をスイッチ手段75bに出力し、次に保持電圧印加指令SWHB2 をスイッチ手段77bに逐次噴射指令信号DRV2 がオンの間出力する。これにより、パイロット噴射及びメイン噴射が応答性良く行われる。このとき、昇圧回路21及び昇圧回路31はコンデンサ24、34にエネルギーを十分蓄積しているので、ソレノイドバルブの遅れがなく燃料噴射時期及び噴射量が正確に制御される。
【0089】
ここで、第1気筒C1及び第2気筒C2に対応して、それぞれ保持電流出力回路71、72と、この保持電流の専用ライン78、79とが使用され、さらにスイッチ手段76a、77bが別々にオンされる。したがって、上記逐次噴射指令信号DRV1 がオンしている間に次の逐次噴射指令信号DRV2 がオンした場合のように、各気筒の噴射時期の前後が互いに重なる場合があっても、保持電流を継続させることができる。
以後、第3気筒C3に対しても同様にして、昇圧回路21はパイロット噴射専用に、昇圧回路31はメイン噴射専用に使用され、これに対応して、スイッチ手段74c及びスイッチ手段75cによってソレノイドバルブ13cに高電圧を印加する。本実施形態においては、各気筒に対応する逐次噴射指令信号DRVn の前後が重なった場合でも保持電流を流せるように、保持電流についてはスイッチ手段76a〜76c、77a〜77cを交互に使用するようにしている。すなわち、スイッチ手段76a〜76c、77a〜77cの保持電流に係わる順序が76a→77b→76c→77a→76b→77c→76aとなるように、制御ロジック回路73は保持電圧印加指令SWHA1 〜SWHA3 、SWHB1 〜SWHB3 の出力先を制御している。
【0090】
また、本実施形態においても、前記第4実施形態の図10で示したように、1つの昇圧回路21から各ダイオード151、152を介して2つのコンデンサ24、34にエネルギーを供給するようにしてもよい。このとき、2つのコンデンサ24、34に高電圧エネルギーを蓄積する作用は前述同様であり、また、このときの構成全体による作用及び効果は上述したことと変わらない。
【0091】
以下、ステップモータの実施形態を示す。
まず、図18及び図19を参照して第8実施形態を説明する。本実施形態は、3相ステップモータの等価12相駆動方式の例を示している。図18は本実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を、図19は各信号のタイミングチャートを示しており、以下、これらの図に基づいて詳細に説明する。
ドライブ信号発生器81はステップモータの駆動周波数に同期させて各相コイルの励磁電流を制御するものであり、各相コイルの電流値を指令する駆動指令DRVn (n=1〜3)を駆動装置80に出力する。ここで、駆動指令DRVn はアナログ信号(例えば、電圧信号の大きさで励磁電流値の大きさを指令する)又はディジタル信号(例えば、数値データの大きさで励磁電流値の大きさを指令する)のいずれでも実現可能である。図19にはアナログ信号の駆動指令DRVn の例を示しており、ステップ状信号の各レベルによって励磁電流値の大きさを表している。
【0092】
駆動装置80には、各相コイル89a、89b、89cをそれぞれ駆動する駆動回路80a、80b、80cが設けられている。各駆動回路80a、80b、80cの構成は同様であり、ここでは、代表して駆動回路80aを説明する。
駆動回路80aは、第1の昇圧回路82aと、第2の昇圧回路83aと、レベル変化検出器84aと、定電流出力回路85aとを備えている。第1の昇圧回路82a及び第2の昇圧回路83aには、前実施形態でのコンデンサ24のような高電圧を発生させるためのエネルギー蓄積用コンデンサがそれぞれ内蔵されているものとする。第1の昇圧回路82aの出力はスイッチ手段86aを介して、また第2の昇圧回路83aの出力はスイッチ手段87aを介して、第1の相コイル89aに接続されている。
制御ロジック回路としてレベル変化検出器を備えており、このレベル変化検出器84aは第1の相コイル89aの駆動指令DRV1 を入力し、駆動指令DRV1 の信号レベルの変化を検出する。レベル変化検出器84aは所定のレベル変化に基づいて高電圧印加指令SWPA1 、SWPB1 を生成し、各高電圧印加指令SWPA1 、SWPB1 をスイッチ手段86a及びスイッチ手段87aにそれぞれ所定時間出力する。また、一般的なステップモータでは、各相コイルの励磁電流の保持には定電流駆動を行っているので、保持電流出力回路として定電流出力回路を備えている。この定電流出力回路85aは駆動指令DRV1 を入力し、駆動指令DRV1 の信号レベルに相当する定電流を出力する。この定電流は、ダイオード88aを介して第1の相コイル89aに供給される。
【0093】
同様にして、駆動回路80bには、第1の昇圧回路82bと、第2の昇圧回路83bと、レベル変化検出器84bと、定電流出力回路85bと、スイッチ手段86bと、スイッチ手段87bと、ダイオード88bとが設けられ、駆動回路80cには、第1の昇圧回路82cと、第2の昇圧回路83cと、レベル変化検出器84cと、定電流出力回路85cと、スイッチ手段86cと、スイッチ手段87cと、ダイオード88cとが設けられている。
【0094】
図19を参照して、作用を説明する。各レベル変化検出器84a、84b、84cは、各相コイルに対応する駆動指令DRVn をそれぞれ入力すると、駆動指令DRVn のレベル変化を検出し、レベルが第1レベルになったとき、高電圧印加指令SWPAn をスイッチ手段86a、86b、86cに所定時間出力する。これによって、第1の昇圧回路82a、82b、82cから第1の高電圧が各相コイル89a、89b、89cに印加され、励磁電流が速やかに立ち上がる。定電流出力回路85a、85b、85cは、高電圧印加指令SWPAn の完了後に、駆動指令DRVn の第1レベル信号が継続している間、このレベルに相当する第1の定電流を出力する。
【0095】
また、駆動指令DRVn のレベルが第2レベルになったとき、各レベル変化検出器84a、84b、84cは、高電圧印加指令SWPBn をスイッチ手段87a、87b、87cに所定時間出力する。このとき、第2の昇圧回路83a、83b、83cのエネルギー蓄積用コンデンサには十分なエネルギーが蓄積されている。これによって、第2の昇圧回路83a、83b、83cから第2の高電圧が各相コイル89a、89b、89cに印加され、励磁電流が速やかに立ち上がる。定電流出力回路85a、85b、85cは、高電圧印加指令SWPBn の完了後に、駆動指令DRVn の第2レベル信号が継続している間、このレベルに相当する第2の定電流を出力する。
この後、駆動指令DRVn のレベルが第1レベルに戻ったときは、定電流出力回路85a、85b、85cは直ちに第1の定電流を出力し、さらに、駆動指令DRVn がオフした(レベルが検出されなくなった)ときは、定電流出力回路85a、85b、85cは直ちに出力を停止する。
【0096】
上記のように、各駆動回路80a、80b、80cには、第1のレベルに励磁電流を速やかに立ち上げるための第1の昇圧回路82a、82b、82cと、第2のレベルに励磁電流を速やかに立ち上げるための第2の昇圧回路83a、83b、83cとを専用に設けている。したがって、ステップモータの回転数が大きくなり、第1のレベルから第2のレベルまでの時間が短時間になった場合でも、各レベルの励磁電流への立ち上がりが遅れることが無くなり、応答性が良い等価12相駆動が得られる。
【0097】
また、本実施形態の各駆動回路80a、80b、80cにおいても、前記第4実施形態と同様にして、1つの昇圧回路(例えば、昇圧回路82a)によって2つのダイオードを介して、第1の励磁電流レベル用と第2の励磁電流レベル用の2つのコンデンサ(前述のコンデンサ24、34に相当する)にそれぞれ高電圧エネルギーを供給するようにしてもよい。このとき、2つのコンデンサに高電圧エネルギーを蓄積する作用は前述同様であり、また、このときの構成全体による作用及び効果は本実施形態で上述したことと変わらない。
【0098】
次に、図20及び図21に基づいて、第9実施形態を説明する。本実施形態は、第8実施形態をさらに一般化した等価多相駆動方式の場合を示している。図20は本実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を、図21は各信号のタイミングチャートを示しており、以下、これらの図に基づいて詳細に説明する。
ドライブ信号発生器91は、前記ドライブ信号発生器81と同様に各相コイルの励磁電流を制御するものであり、N相ステップモータの各相コイルの電流値を指令する駆動指令DRVn (n=1〜N)を各相毎の駆動回路90n に出力する。ここで、駆動指令DRVn は前述同様にアナログ信号又はディジタル信号のいずれでも実現可能である。図21には、アナログ信号の駆動指令DRVn の例を示している。
【0099】
各駆動回路90n は、対応する相コイル99n を駆動するものであり、M個の昇圧回路92n-1 、92n-2 …92n-M と、レベル変化検出器94n と、定電流出力回路95n と、スイッチ手段96n-1 、96n-2 …96n-M と、ダイオード98n とが設けられている。ここで、Mは2以上の自然数とし、各昇圧回路92n-1 、92n-2 …92n-M には、前述のような高電圧を発生させるためのエネルギー蓄積用コンデンサがそれぞれ内蔵されているものとする。各昇圧回路92n-1 、92n-2 …92n-M の出力はぞれぞれスイッチ手段96n-1 、96n-2 …96n-M を介して第nの相コイル99n に接続されている。
【0100】
各レベル変化検出器94n は、第n相コイル99n の駆動指令DRVn の信号レベルの変化を検出する。レベル変化検出器94n は所定のレベル変化に基づいて高電圧印加指令SWPn-1 、SWPn-1 …SWPn-M を生成し、各高電圧印加指令SWPn-1 、SWPn-1 …SWPn-M をスイッチ手段96n-1 、96n-2 …96n-M にそれぞれ所定時間出力する。また、各定電流出力回路95n は駆動指令DRVn を入力し、駆動指令DRVn の信号レベルに相当する定電流を出力する。この定電流は、ダイオード98n を介して第n相コイル99nに供給される。
【0101】
図21を参照して、作用を説明する。各レベル変化検出器94n は、第n相コイル99n に対応する駆動指令DRVn をそれぞれ入力すると、駆動指令DRVn のレベル変化を検出し、レベルが第1レベルになったとき、高電圧印加指令SWPn-1 をスイッチ手段96n-1 に所定時間出力する。これによって、第1の昇圧回路92n-1 から第1の高電圧が第n相コイル99n に印加され、励磁電流が速やかに立ち上がる。定電流出力回路95n は、上記高電圧印加指令SWPn-1 の完了後に、駆動指令DRVn の第1レベル信号が継続している間、このレベルに相当する第1の定電流を出力する。
そして、駆動指令DRVn のレベルが順次第2レベルから第Mレベルへ変化すして行く。このレベルが第Mレベルになったとき、各レベル変化検出器94n は、高電圧印加指令SWPn-M をスイッチ手段96n-M に所定時間出力する。これによって、第Mの昇圧回路92n-M から第M番目の高電圧が第n相コイル99n に印加され、励磁電流が速やかに立ち上がる。定電流出力回路95n は、上記高電圧印加指令SWPn-M の完了後に、駆動指令DRVn の第Mレベル信号が継続している間、このレベルに相当する第M番目の定電流を出力する。
この後、駆動指令DRVn が順次低い電流値レベルに戻って行ったときは、定電流出力回路95n は直ちに順次低いレベルの定電流を出力して行き、さらに、駆動指令DRVn がオフしたときは、定電流出力回路95n は直ちに出力を停止する。
【0102】
上記のように、各駆動回路90n には、各レベルに励磁電流を速やかに立ち上げるために、各レベルに対応したM個の昇圧回路92n-1 、92n-2 …92n-M を専用に設けている。したがって、ステップモータの回転が速くなり、各レベル間の経過時間が短時間になった場合でも、各レベルの励磁電流への立ち上がりが遅れることが無くなり、応答性が良い等価多相駆動が得られる。
【0103】
また、本実施形態の各駆動回路90n においても、前記第4実施形態と同様にして、1つの昇圧回路(例えば、昇圧回路92n-1 )によってM個のダイオードを介して、M段階の各励磁電流レベル用のM個のコンデンサ(前述のコンデンサ24、34に相当する)にそれぞれ高電圧エネルギーを供給するようにしてもよい。このとき、M個のコンデンサに高電圧エネルギーを蓄積する作用は前述同様であり、また、このときの構成全体による作用及び効果は本実施形態で上述したことと変わらない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる第1実施形態の電子制御ソレノイドバルブ式ユニットインジェクタの断面図を示す。
【図2】本発明に係わる第1実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示す。
【図3】本発明に係わる第1実施形態の各信号のタイミングチャートを示す。
【図4】本発明に係わる第1実施形態の駆動回路の回路ブロック構成図を示す。
【図5】第1実施形態の制御ロジック回路の信号タイミングチャートを示す。
【図6】一般的なパイロット噴射とメイン噴射の時間間隔を表した図である。
【図7】本発明に係わる第2実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示す。
【図8】本発明に係わる第3実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示す。
【図9】本発明に係わる第3実施形態の各信号のタイミングチャートを示す。
【図10】本発明に係わる第4実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示す。
【図11】本発明に係わる第4実施形態の各信号のタイミングチャートを示す。
【図12】本発明に係わる第5実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示す。
【図13】本発明に係わる第5実施形態の各信号のタイミングチャートを示す。
【図14】本発明に係わる第6実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示す。
【図15】本発明に係わる第6実施形態の各信号のタイミングチャートを示す。
【図16】本発明に係わる第7実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示す。
【図17】本発明に係わる第7実施形態の各信号のタイミングチャートを示す。
【図18】本発明に係わる第8実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示す。
【図19】本発明に係わる第8実施形態の各信号のタイミングチャートを示す。
【図20】本発明に係わる第9実施形態の誘導負荷駆動装置の構成ブロック図を示す。
【図21】本発明に係わる第9実施形態の各信号のタイミングチャートを示す。
【図22】従来技術に係わるステップモータの等価12相駆動方式の回路図例である。
【図23】従来技術に係わるステップモータの等価12相駆動方式の励磁シーケンス図である。
【符号の説明】
11 初期駆動信号出力部
12 駆動信号処理出力部
13a〜13f ソレノイドバルブ
14a〜14f 信号分配器
20 第1の駆動回路
21、31、92n-1 、92n-2 〜92n-M 昇圧回路
22、32、43、61、62、63、71、72 保持電流出力回路
23、33、44、53 制御ロジック回路
24、34 コンデンサ
25a〜25f、26a〜26f、29、35a〜35f、36a〜36f、39、46、47、49a〜49f、54a〜54f、55a〜55f、56a〜56c、57d〜57f スイッチ手段
30 第2の駆動回路
40、80a〜80c、90n 駆動回路
45 論理和回路
68a〜68c、78、79 専用ライン
81 ドライブ信号発生器
82a〜82c 第1の昇圧回路
83a〜83c 第2の昇圧回路
84a〜84c、94n レベル変化検出器
85a〜85c、95n 定電流出力回路
89a〜89c、96n-1 、99n 相コイル
151、152 ダイオード

Claims (5)

  1. 所定時間内に同一の誘導負荷を複数回駆動し、この駆動を繰り返して行なう誘導負荷駆動装置において、
    エネルギーを蓄積して高電圧に昇圧し、この高電圧を前記同一の誘導負荷に所定時間内に交互に印加してそれぞれ負荷電流を高速に立ち上げる複数の昇圧回路と、
    この複数の昇圧回路で負荷電流を立ち上げ後に前記同一の誘導負荷に所定電圧を印加し、負荷電流を所定値に保持する保持電流出力回路と、
    前記複数の昇圧回路及び保持電流出力回路の各出力が交互に前記同一の誘導負荷に接続されるように切り換えられる複数のスイッチ手段と、
    この複数のスイッチ手段を所定の順序で切り換える制御ロジック回路とを備え、前記同一誘導負荷に所定時間内に複数回流す電流の立ち上げ時間を高速化し、
    前記誘導負荷は、ソレノイドバルブにより燃料噴射の開始時期及び終了時期を制御する内燃機関の燃料噴射装置における前記ソレノイドバルブのソレノイドであり、
    内燃機関の一気筒に対応した燃料噴射装置のソレノイドをパイロット噴射時に駆動し、かつ、この気筒の次に噴射する気筒に対応したソレノイドをメイン噴射時に駆動し、これらの駆動を繰り返す第1の前記昇圧回路及び第1の前記保持電流出力回路と、
    前記一気筒に対応したソレノイドをメイン噴射時に駆動し、かつ、この気筒の次に噴射する気筒に対応したソレノイドをパイロット噴射時に駆動し、これらの駆動を繰り返す第2の前記昇圧回路及び第2の前記保持電流出力回路と、
    パイロット噴射時の前記第1の昇圧回路及び第1の保持電流出力回路の出力と、メイン噴射時の前記第2の昇圧回路及び第2の保持電流出力回路の出力、あるいは、メイン噴射時の前記第1の昇圧回路及び第1の保持電流出力回路の出力と、パイロット噴射時の前記第2の昇圧回路及び第2の保持電流出力回路の出力とを切り換える複数の前記スイッチ手段とを備えた
    ことを特徴とする誘導負荷駆動装置。
  2. 所定時間内に同一の誘導負荷を複数回駆動し、この駆動を繰り返して行なう誘導負荷駆動装置において、
    エネルギーを蓄積して高電圧に昇圧し、この高電圧を前記同一の誘導負荷に所定時間内に交互に印加してそれぞれ負荷電流を高速に立ち上げる複数の昇圧回路と、
    この複数の昇圧回路で負荷電流を立ち上げ後に前記同一の誘導負荷に所定電圧を印加し、負荷電流を所定値に保持する保持電流出力回路と、
    前記複数の昇圧回路及び保持電流出力回路の各出力が交互に前記同一の誘導負荷に接続されるように切り換えられる複数のスイッチ手段と、
    この複数のスイッチ手段を所定の順序で切り換える制御ロジック回路とを備え、前記同一誘導負荷に所定時間内に複数回流す電流の立ち上げ時間を高速化し、
    前記誘導負荷は、ソレノイドバルブにより燃料噴射の開始時期及び終了時期を制御する内燃機関の燃料噴射装置における前記ソレノイドバルブのソレノイドであり、
    内燃機関の各気筒に対応した燃料噴射装置の各ソレノイドをパイロット噴射時に駆動する第1の前記昇圧回路と、
    パイロット噴射した前記同一のソレノイドをメイン噴射時に駆動する第2の前記昇圧回路と、
    前記同一のソレノイドをパイロット噴射時及びメイン噴射時に保持電流を駆動し、かつ、この駆動を気筒順序の一つ置きに繰り返す第1の前記保持電流出力回路と、
    前記同一のソレノイドをパイロット噴射時及びメイン噴射時に保持電流を駆動し、かつ、この駆動を気筒順序の一つ置きに前記第1の保持電流出力回路と交互に繰り返す第2の前記保持電流出力回路と、
    前記第1の昇圧回路、第1の保持電流出力回路、第2の昇圧回路、及び、第2の保持電流出力回路のそれぞれの出力を切り換えると共に、メイン噴射時の保持電流期間とパイロット噴射時の保持電流期間とが一部重複可能に切り換える前記スイッチ手段とを備えたことを特徴とする誘導負荷駆動装置。
  3. 所定時間内に同一の誘導負荷を複数回駆動し、この駆動を繰り返して行なう誘導負荷駆動装置において、
    エネルギーを蓄積して高電圧に昇圧し、この高電圧を前記同一の誘導負荷に所定時間内に交互に印加してそれぞれ負荷電流を高速に立ち上げる複数の昇圧回路と、
    この複数の昇圧回路で負荷電流を立ち上げ後に前記同一の誘導負荷に所定電圧を印加し、負荷電流を所定値に保持する保持電流出力回路と、
    前記複数の昇圧回路及び保持電流出力回路の各出力が交互に前記同一の誘導負荷に接続されるように切り換えられる複数のスイッチ手段と、
    この複数のスイッチ手段を所定の順序で切り換える制御ロジック回路とを備え、前記同一誘導負荷に所定時間内に複数回流す電流の立ち上げ時間を高速化し、
    前記誘導負荷は、ソレノイドバルブにより燃料噴射の開始時期及び終了時期を制御する内燃機関の燃料噴射装置における前記ソレノイドバルブのソレノイドであり、
    奇数気筒の内燃機関の各気筒に対応した燃料噴射装置の各ソレノイドを、パイロット噴射時に又はメイン噴射時に交互に駆動する第1の昇圧回路及び第2の昇圧回路と、
    前記各ソレノイドを専用的に駆動する各気筒毎の保持電流出力回路と、
    前記第1の昇圧回路、前記第2の昇圧回路、及び、前記各気筒毎の保持電流出力回路の各出力を切り換えると共に、メイン噴射時の保持電流期間とパイロット噴射時の保持電流期間とが一部重複可能に切り換える前記スイッチ手段とを備えたことを特徴とする誘導負荷駆動装置。
  4. 所定時間内に同一の誘導負荷を複数回駆動し、この駆動を繰り返して行なう誘導負荷駆動装置において、
    エネルギーを蓄積して高電圧に昇圧し、この高電圧を前記同一の誘導負荷に所定時間内に交互に印加してそれぞれ負荷電流を高速に立ち上げる複数の昇圧回路と、
    この複数の昇圧回路で負荷電流を立ち上げ後に前記同一の誘導負荷に所定電圧を印加し、負荷電流を所定値に保持する保持電流出力回路と、
    前記複数の昇圧回路及び保持電流出力回路の各出力が交互に前記同一の誘導負荷に接続されるように切り換えられる複数のスイッチ手段と、
    この複数のスイッチ手段を所定の順序で切り換える制御ロジック回路とを備え、前記同一誘導負荷に所定時間内に複数回流す電流の立ち上げ時間を高速化し、
    前記誘導負荷は、ソレノイドバルブにより燃料噴射の開始時期及び終了時期を制御する内燃機関の燃料噴射装置における前記ソレノイドバルブのソレノイドであり、
    奇数気筒の内燃機関の各気筒に対応した燃料噴射装置の各ソレノイドを、パイロット噴射時に又はメイン噴射時に交互に駆動する第1の昇圧回路及び第2の昇圧回路と、
    前記各ソレノイドを、噴射気筒が替わる毎に交互に駆動する第1の保持電流出力回路及び第2の保持電流出力回路と、
    前記第1の昇圧回路、前記第2の昇圧回路、前記第1の保持電流出力回路、及び、前記第2の保持電流出力回路の出力を切り換えると共に、メイン噴射時の保持電流期間とパイロット噴射時の保持電流期間とが一部重複可能に切り換える前記スイッチ手段とを備えたことを特徴とする誘導負荷駆動装置。
  5. 請求項1に記載の誘導負荷駆動装置において、
    前記第1の保持電流出力回路と前記第2の保持電流出力回路とを一つの保持電流出力回路で共用し、この一つの保持電流出力回路がパイロット噴射時及びメイン噴射時の保持電流を駆動するようにしたことを特徴とする誘導負荷駆動装置。
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