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JP3841886B2 - 1,2−インダンジオール類の製造方法 - Google Patents

1,2−インダンジオール類の製造方法 Download PDF

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JP3841886B2 JP25864296A JP25864296A JP3841886B2 JP 3841886 B2 JP3841886 B2 JP 3841886B2 JP 25864296 A JP25864296 A JP 25864296A JP 25864296 A JP25864296 A JP 25864296A JP 3841886 B2 JP3841886 B2 JP 3841886B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬、樹脂改質等の製造原料として有用な1,2−インダンジオール類を工業的規模で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1,2−インダンジオール類の製造方法としては、例えば、インデンに臭素水を反応させてブロモヒドリン体とし、次いでアルカリ触媒の存在下加水分解する方法(以下プロモヒドリン法と略す;J.Am.Chem.Soc.,57,2022(1935)およびJ.Org.Chem.,37,20,3181(1972))、インデンを大過剰のギ酸を用い過酸化水素により過ギ酸として酸化してギ酸エステル体とし、次いで水を加えて加熱する方法(以下ギ酸エステル法と略す;特開平8−119891)、1,2−エポキシインダンを酸またはアルカリ触媒の存在下水和させる方法(特開平7−165647およびJ.Org.Chem.,39,17,2596(1974))、インデンを直接酸化する方法、例えば酸化オスミウムで酸化する方法(J.Org.Chem.,37,20,3181(1972))、過マンガン塩で酸化する方法(Z.physik,Chem.,113,337(1924))等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ブロモヒドリン法は、臭素水を使用するために安全衛生および廃棄物・廃水処理の面で問題がある。
【0004】
ギ酸エステル法では、大過剰のギ酸を溶媒として使用するため、インデンと過ギ酸を反応させた後、中間体であるギ酸エステル体を取り出すためにギ酸を留去しなければならず、これは未反応の過酸化物を濃縮することになって爆発等の危険性を伴うという欠点を有している。また、酸化反応温度が30〜40℃と低いため、工業的規模で実施するには、酸化に伴う発熱を制御するために、低温まで冷却できる特殊な設備が必要で、そのような設備のない場合は過酸化水素の滴下に非常に長時間かかり経済的ではないという欠点を有している。
【0005】
1,2−エポキシインダンを水和させる方法は、原料である1,2−エポキシインダンの入手に問題がある。1,2−エポキシインダンは、一般的にはブロモヒドリン体から誘導されるが、その場合前述した問題があり、また工程数も多くなり望ましくない。
【0006】
さらに、インデンを直接酸化する方法では、経済的にも廃水処理の面でも問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記欠点を解決すべく鋭意検討を行った結果、インデンまたはそのベンゼン環置換体(以下インデン類と呼ぶ)を有機過酸により酸化する際にインデン類に有機酸を添加し、これに過酸化水素を滴下して反応系内で有機過酸を生成させながら、この有機過酸でインデン類を酸化することにより、1,2−インダンジオール類が高収率で得られ、また酸化反応終了後は反応液を濃縮することがないため、過酸化物濃度が高くなることはなく、安全性の面でも向上され工業的に極めて有用であることを見出した。
【0008】
さらに、このような過酸化水素を滴下して酸化反応を行う場合に、反応溶媒として一定量の水を用いることにより、使用する有機酸量が低減でき、かつ40〜110℃の高温での反応が可能となり、有機酸エステル含有量の少ない1,2−インダンジオール類が一段階で高収率で得られ、工業的に非常に有用な製造方法であることを見出しこの発明を完成したものである。
【0009】
すなわち本発明は、インデンまたはそのベンゼン環置換体に、有機酸及び上記有機酸に対し1〜20倍(重量)の水を添加し、40〜110℃で上記混合物に過酸化水素を滴下して酸化することを特徴とする1,2−インダンジオール類の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で原料として使用されるものはインデン類、すなわちインデンまたはそのベンゼン環置換体である。インデンのベンゼン環置換体とは、インデン骨格のベンゼン環側、すなわち4位、5位、6位、7位の少なくとも一つに置換基を有する化合物のことである。置換基としては、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基およびハロゲン等が挙げられる。
【0011】
また、本発明で使用する有機酸としては低級脂肪族カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸等が挙げられる。使用する有機酸の濃度は、有機酸が純分として所定量あれば問題なく、使用する水の量にもよるが、その使用量は、原料のインデン類に対して0.2〜10当量、好ましくは0.5〜5当量である。使用量が少なすぎると、反応速度が遅くなり反応に長時間かかり好ましくない。逆に多すぎても、効果はなく経済的ではない。
【0012】
本発明では水を溶媒としてインデン類の酸化を行うが、使用する水としては、工業用水、イオン交換水、純水、蒸留水等いずれでも使用でき、特に限定はしない。その使用量は、有機酸に対し重量で1〜20倍、好ましくは1〜10倍である。使用量が多すぎると、反応速度が遅くなり反応に長時間かかり好ましくない。また少なすぎると、副反応が増え収率が低下する。
【0013】
本発明はインデン類を有機過酸により酸化して1,2−インダンジオール類を製造する方法であるが、その際、インデン類、水及び有機酸の混合物に、過酸化水素を滴下して有機過酸を生成させながら酸化反応を行うことを特徴としている。
【0014】
過酸化水素としては3〜90重量%の過酸化水素水を使用できるが、通常は市販の30〜35重量%の過酸化水素水を使用する。この使用量は、原料のインデン類に対し0.5〜5当量、好ましくは0.8〜3当量である。使用量が少なすぎると、原料のインデン類の転化が不十分となる。ただし、過酸化水素量を少なくして全量転化させ、原料のインデン類を残して後で回収することもできるので、このような方式をとる場合は、この限りではない。また逆に多すぎても未反応の過酸化水素が残るだけで経済的ではない。
【0015】
また、過酸化水素の滴下温度および反応温度は40〜110℃である。この温度が低すぎると、反応速度が遅くなり反応に長時間かかり好ましくない。また本発明においては、水の存在下、過酸化水素を滴下して有機過酸を生成させながら酸化反応を行うことにより、従来法に比べて高温度でも安全に操作することができるが、温度があまり高すぎると、過酸化物の分解が激しくなり、また爆発の危険性も増大する。
【0016】
過酸化水素の滴下時間は、特に限定はせず冷却能力に合わせて決定すればよいが、通常0.5〜24時間程度である。酸化反応は、滴下終了後直ぐに反応を終了させてもよいが、好ましくは撹拌を0.5〜5時間継続して反応を完結させる。
【0017】
酸化反応液は、次いで冷却することにより1,2−インダンジオール類の結晶が析出してくる。冷却温度は特に限定はしないが、より低温の方が1,2−インダンジオール類収率が向上する。析出した結晶は、例えば遠心分離、減圧濾過等の常法にしたがって回収される。また、高純度の1,2−インダンジオール類が必要であれば、回収した結晶を再結晶もしくは蒸留等の手段を用いて精製することも可能である。
【0018】
さらに、分離した後の濾液の中には、まだ一部の1,2−インダンジオール類および大部分のギ酸が含まれている。これらは、次回にリサイクルすることにより1,2−インダンジオール類収率を高めることができ、ギ酸使用量も低減することができる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例に基いて、本発明方法を具体的に説明する。
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた内容積200ミリリットルのフラスコに、インデン(98.6%)23.2g(0.2モル)、90重量%ギ酸15.3g(0.3モル)、水30gを仕込み、70℃で34.5重量%過酸化水素水23.7g(0.24モル)を0.4時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で2.6時間撹拌を継続した。
【0020】
反応終了後、反応液をガスクロマトグラフにより分析したところ、インデンはほぼ全量転化しており、1,2−インダンジオール濃度は23.0重量%で、収率は71.4モル%であった。また反応液中の1,2−インダンジオールのモノギ酸エステル濃度は1.0%であった。結果を表1に示す。
【0021】
[実施例2]
インデン(98.6%)11.6g(0.1モル)、90重量%ギ酸15.3g(0.3モル)、水45gを仕込み、70℃で34.5重量%過酸化水素水12.8g(0.13モル)を1時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で1時間撹拌を継続した。
【0022】
反応終了後、反応液をガスクロマトグラフにより分析したところ、インデンはほぼ全量転化しており、1,2−インダンジオール濃度は14.2重量%で、収率は81.3モル%であった。また反応液中の1,2−インダンジオールのモノギ酸エステル濃度は0.4%であった。結果を表1に示す。
【0023】
[実施例3〜6]
インデン、90重量%ギ酸、水、34.5重量%過酸化水素水量および反応温度を変えて、実施例2と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003841886
【0025】
[実施例7]
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた内容積2リットルのフラスコに、インデン(98.6%)474g(4モル)、98重量%ギ酸282g(6モル)、水682.5gを仕込み、70℃で32重量%過酸化水素水552.5g(5.2モル)を2.4時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で1時間撹拌を継続した。
【0026】
反応終了後、反応液をガスクロマトグラフにより分析したところ、インデンはほぼ全量転化しており、1,2−インダンジオール濃度は20.8重量%で、収率は71.2モル%であった。また反応液中の1,2−インダンジオールのモノギ酸エステル濃度は1.1%であった。
【0027】
[実施例8]
インデン(98.6%)237g(2モル)、98重量%ギ酸282g(6モル)、水625.2gを仕込み、70℃で33.7重量%過酸化水素水262.2g(2.6モル)を1.2時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で0.8時間撹拌を継続した。
【0028】
反応終了後、反応液をガスクロマトグラフにより分析したところ、インデンはほぼ全量転化しており、1,2−インダンジオール濃度は15.7重量%で、収率は75.1モル%であった。また反応液中の1,2−インダンジオールのモノギ酸エステル濃度は1.2%であった。
【0029】
[実施例9]
インデン(98.6%)474g(4モル)、98重量%ギ酸282g(6モル)、水626.4gを仕込み、50℃で34.5重量%過酸化水素水433.5g(4.4モル)を4時間かけて滴下し、滴下終了後50℃で5時間撹拌を継続した。
【0030】
反応終了後、反応液をガスクロマトグラフにより分析したところ、インデンはほぼ全量転化しており、1,2−インダンジオール濃度は23.7重量%で、収率は72.7モル%であった。また反応液中の1,2−インダンジオールのモノギ酸エステル濃度は1.9%であった。
【0031】
[比較例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた内容積100ミリリットルのフラスコに、インデン(98.6%)23.2g(0.2モル)、90重量%ギ酸30.7g(0.6モル)を仕込み、水を添加せず、70℃で32重量%過酸化水素水25.5g(0.24モル)を1.7時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で1時間撹拌を継続した。
【0032】
反応終了後、反応液をガスクロマトグラフにより分析したところ、インデンはほぼ全量転化していたが、1,2−インダンジオール濃度は12.8重量%で、収率は34.4モル%であった。また反応液中の1,2−インダンジオールのモノギ酸エステル濃度は4.0%であった。結果を表2に示す。
【0033】
[比較例2]
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた内容積200ミリリットルのフラスコに、インデン(98.6%)23.2g(0.2モル)、90重量%ギ酸15.3g(0.3モル)、水30.0gを仕込み、30℃で34.5重量%過酸化水素水23.7g(0.24モル)を1時間かけて滴下し、滴下終了後30℃で6時間撹拌を継続した。
【0034】
反応終了後、反応液をガスクロマトグラフにより分析したところ、インデン転化率は86.5%であり、1,2−インダンジオール濃度は15.4重量%で、収率は46.5モル%であった。また反応液中の1,2−インダンジオールのモノギ酸エステル濃度は2.2%であった。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
Figure 0003841886
【0036】
[実施例10]
5−メチルインデン13.0g(0.1モル)、90重量%ギ酸15.3g(0.3モル)、水45gを仕込み、70℃で34.5重量%過酸化水素水12.8g(0.13モル)を1時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で1時間撹拌を継続した。
【0037】
反応終了後、反応液をガスクロマトグラフにより分析したところ、5−メチル−1,2−インダンジオール濃度は14.6重量%で、収率は76.4モル%であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、有機酸量の使用量を低減することができ、従来のギ酸エステル法よりも高温での反応が可能となり1,2−インダンジオール類が一段階で高収率で得られる。また酸化反応終了後は反応液を濃縮して過酸化物濃度を高める工程がないので、安全性が高く工業的に極めて有用である。

Claims (1)

  1. インデンまたはそのベンゼン環置換体に、有機酸及び上記有機酸に対し1〜20倍(重量)の水を添加し、40〜110℃で上記混合物に過酸化水素を滴下して酸化することを特徴とする1,2−インダンジオール類の製造方法。
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