JP3840661B2 - ボールエンドミル - Google Patents
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Description
次に、ボール刃から変曲して延伸する切れ刃の逃げ面の外周側の切れ刃のボール刃上の点を、軸心から0.015mm以上離れた位置に設けたのは、ボール刃から変曲して延伸する切れ刃に十分な強度を得るためであり、エンドミル先端の摩滅量を抑制し、アール精度及び切削性を維持しつつ、高精度な加工が持続できる。好ましくは0.025mm以上が望ましい。また、0.25mm以下、即ち、軸心側にすることにより、軸心部における異なる逃げ面の面積を小さくでき、被加工物とのクリアランスが少ない部分を減少でき、切削抵抗が減少し、高精度な加工ができ、好ましくは0.15mm以下が望ましい。ここで、ボール刃から変曲して延伸する切れ刃までボール刃の刃溝を延伸させても良く、切り屑の排出性及び切削性が向上し、一層、加工精度及び加工面粗さが向上する。また、心残し部を設けることにより、エンドミル先端の摩滅量を抑制し、アール精度及び切削性を維持しつつ、軸心部付近の強度が向上し、一層、高精度な加工が持続できる。
更に、該エンドミル底面視で、該変曲させる位置を、該エンドミルの軸心を中心とする略同一円上に設けることにより、各ボール刃における切削負荷が均一となり、加工面が規則的になり、良好な加工面が得られる。更に、ボール刃から変曲して延伸する切れ刃を略多角形状に設けることにより、略多角形状をなす切れ刃とボール刃との差が無くなり、切削性がより安定し、加工面が規則的になり、良好な加工面が得られる。エンドミル母材に超硬合金やサーメット等の超硬質合金やCBN、ダイヤモンド等の高硬度焼結体を用いたり、TiAlN等の硬質皮膜やCr系の潤滑皮膜を施すことにより、長寿命化が計れる。以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。
図1、図2は、本発明例1を示し、ボール半径2mm、刃数3枚刃の超微粒子超硬合金製、TiAlNコ−ティングを3μm被覆したソリッドボールエンドミルであり、軸心部2に心残し部3を設けている。軸心部2付近の切れ刃は、ボール刃1から変曲して延伸する切れ刃6であり、ボール刃の逃げ面4と変曲して延伸する切れ刃6を構成する逃げ面5の間に有し、変曲させる位置を、該エンドミル底面視で、軸心を中心とする直径0.1mmの略同一円上、即ち、軸心から0.05mm離れた位置に設けたものである。従来例2は、特許文献1記載の親子刃、従来例3は、特許文献2記載の軸心合わせ、従来例4は、特許文献3記載のノッチを設けたの3枚刃のボールエンドミルを同寸法で製作し、アール精度を測定後、切削試験を行った。切削条件は、被削材に硬さHRC40のプリハードン鋼を用い、回転数8000min−1、送り速度2400mm/min、切り込み量をエンドミル軸方向に0.2mm、ピック方向に0.1mmとし、水溶性の切削液を用いた湿式切削による3次元形状の仕上げ加工を行い、加工精度及び加工面の調査を行った。その結果、本発明例1のアール精度は、軸心部付近を含め、ボール半径2mmに対し、±0.005mmの範囲であり、軸心部には突起が存在せず、良好なアール精度であった。切削試験においても、軸心部付近の摩滅量が切削長100mではほとんどなく、切削長500mで、0.003mm程度と微小であり、加工精度、即ち、3次元形状のフォーム誤差が5μm以下、加工面粗さが最大高さ面粗さRzで3μmと共に良好であった。従来例2は、アール精度±0.005mmと本発明例1とほぼ同等であったが、親刃に切削初期にチッピングや欠損を生じ、加工精度、加工面粗さが得られず、寿命となった。従来例3は、軸心部のアール精度が+0.025mmと劣り、加工精度がフォーム誤差で30μmを越え、この突起により、加工面に深い傷を生じ、加工面粗さが最大高さ面粗さRzで37μmと劣った。従来例4は、ノッチ部でアール精度が大きくマイナスしており、切り込み過ぎや、削り残しを生じることから、3次元形状の仕上げ加工に使用できる状態ではなかった。
本発明例1と同様の仕様で、ボール刃1の逃げ面と、変曲して延伸する切れ刃6の変曲させる位置を、軸心を中心とする円の直径を比較例5として0.01mm、本発明例6として0.03mm、本発明例7として0.05mm、本発明例8として0.3mm、本発明例9として0.5mm、本発明例10として0.7mmであるボールエンドミルを製作し、実施例1と同様にアール精度を測定後、切削試験を行った。ここで、切れ刃6は、各ボール刃上の点から一旦、軸心部方向に伸延させ、各ボール刃上の点付近より軸心部付近の曲率が大きい凹曲線状としたことにより、逃げ角が異なる逃げ面の切れ刃6の各ボール刃1上の各点を軸心から大きく離しても、良好なアール精度を維持できるようにした。
その結果、本発明例6〜10は全て、±0.003〜0.005mmの良好なアール精度であり、軸心部付近の摩滅量は、切削長500m時において、本発明例7〜10が0.03mm以下で、本発明例6が0.05mmで若干劣ったが微小であり、フォーム誤差が5μm以下と良好な加工精度であった。また、加工面粗さについては、本発明例6が、摩滅の影響により最大高さ面粗さRzで5μm、本発明例7、8が、本発明例1と同様の3μm、本発明例9、10が、ムシレにより、各々8μm、10μmであった。これに対し、比較例5は、アール精度は±0.005mmと遜色なかったが、軸心部付近の摩滅の進行が早く、切削長500m時においては、摩滅量が0.1mmを越え、フォーム誤差が20μm、加工面にはムシレを生じ、最大高さ面粗さRzで22μmと劣った。
を生じることから、3次元形状の仕上げ加工に使用できる状態ではなかった。
本発明例11は、図3、図4に示し、本発明例1と同様の仕様で、ボール刃1と連続して軸心部2の方向に延びるチゼルエッジ状の稜7を有し、心残し部の面が、3つの変曲して延伸する切れ刃6を構成する逃げ面5で構成され、変曲させる位置を頂点とした切れ刃6が形成する略正3角形をなすボールエンドミルを製作し、実施例1と同様にアール精度を測定後、切削試験を行った。その結果、本発明例11のアール精度は、軸心部付近を含め、ボール半径2mmに対し、±0.003mmの範囲であり、軸心部には突起が存在せず、良好なアール精度であった。切削試験においても、本発明例1より更に安定した切削ができ、軸心部付近の摩滅量が切削長100m時ではほとんどなく、切削長500m時においても、0.005mm程度と微小であり、加工精度、即ち、3次元形状のフォーム誤差が5μm以下、加工面粗さが最大高さ面粗さRzで3μmと共に良好であった。
本発明例1と同様の仕様で、エンドミルの軸心部付近、即ち、変曲して延伸する切れ刃5の逃げ角が、本発明例12として0.5°、本発明例13として1°、本発明例14として3°、本発明例15として5°、本発明例16として7°、であるボールエンドミルを製作し、実施例1と同様にアール精度を測定後、切削試験を行った。その結果、本発明例12〜14は、本発明例1と同様、±0.0030mmの良好なアール精度であり、切削試験においても、軸心部付近の摩滅量が切削長100m時ではほとんどなく、切削長500m時においても、0.005mm程度と微小であり、加工精度、即ち、3次元形状のフォーム誤差が5μm以下、加工面粗さが最大高さ面粗さRzで3μmと共に良好であった。本発明例15は±0.0050mmで若干劣るものの良好なアール精度であり、切削長500m時で摩滅量が0.008mmとなり、加工精度がフォーム誤差で10μm以下と若干劣る結果となった。本発明例16は、軸心部に凸状の突起部が僅かに残り、軸心部のアール精度が+0.012mmと劣り、加工精度がフォーム誤差で15μmであり、この突起により、加工面に傷を生じ、加工面粗さが最大高さ面粗さRzで22μmと劣る結果となった。
本発明例1と同仕様で、心残し部の外接円の直径が、本発明例17として0.01mm、本発明例18として0.02mm、本発明例19として0.04mm、本発明例20として0.06mm、本発明例21として0.08mm、本発明例22として0.1mm、本発明例23して0.15mm、本発明例24として0.2mm、本発明例25として0.25mm、本発明例26として0.3mm、本発明例27として0.35mmであるボールエンドミルを製作し、実施例1と同様にアール精度を測定後、切削試験を行った。その結果、本発明例17〜27は全て、±0.003〜0.005mmの良好なアール精度であり、軸心部付近の摩滅量が、切削長500m時においても、0.007mm以下と微小であり、特に本発明例18〜20が0.005mm以下、本発明例21〜27が0.003mm以下であり、フォーム誤差が5μm以下と良好な加工精度であった。また、加工面粗さについては、本発明例25、26が僅かにムシレを生じ、本発明例27がムシレ、ビビリにより、最大高さ面粗さRzで7〜12μm若干劣った他は、5μm以下の良好な加工面粗さであった。
本発明例1と同仕様で、本発明例28として、3枚のボール刃を各々115°、120°、125°の分割角度で不等分割に配置したボールエンドミルを製作し、実施例2と同様にアール精度を測定後、切削試験を行った。その結果、アール精度は、軸心部付近を含め、ボール半径2mmに対し、±0.003mmの範囲であり、本発明例1と同等の良好なアール精度であり、切削状態は、切削抵抗が少なくなり、ビビリ振動もなく、非常に安定しており、加工精度、及び、加工面粗さが一層向上した。
2 軸心部
3 心残し部
4 ボール刃の逃げ面
5 変曲して延伸する切れ刃を構成する逃げ面
6 切れ刃
7 チゼルエッジ状の稜
Claims (6)
- エンドミル先端に複数のボール刃を有するボールエンドミルにおいて、該エンドミル底面視で、該エンドミルの軸心部付近に、該ボール刃から変曲して、該ボールエンドミルの回転方向の次刃まで延伸させた切れ刃を設け、該切れ刃の逃げ角はボール刃の逃げ角より小さくし、該変曲させる位置をボール刃上の点とし、且つ、軸心から0.015mm以上離れた位置としたことを特徴とするボールエンドミル。
- 請求項1記載のボールエンドミルにおいて、該ボール刃はセンタカット、等底刃であることを特徴とするボールエンドミル。
- 請求項1又は2記載のボールエンドミルにおいて、該ボール刃の刃数が3枚以上の多刃であることを特徴とするボールエンドミル。
- 請求項3記載のボールエンドミルにおいて、該ボール刃を不等分割に配置したことを特徴とするボールエンドミル。
- 請求項1記載のボールエンドミルにおいて、該エンドミル底面視で、該変曲させる位置を、該エンドミルの軸心を中心とする略同一円上に設けたことを特徴とするボールエンドミル。
- 請求項3又は4記載のボールエンドミルにおいて、各ボール刃から変曲して延伸する切れ刃が略多角形状をなすことを特徴とするボールエンドミル。
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