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JP3739481B2 - ポリプロピレン系樹脂材料及びその製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂材料及びその製造方法 Download PDF

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JP3739481B2 JP12053496A JP12053496A JP3739481B2 JP 3739481 B2 JP3739481 B2 JP 3739481B2 JP 12053496 A JP12053496 A JP 12053496A JP 12053496 A JP12053496 A JP 12053496A JP 3739481 B2 JP3739481 B2 JP 3739481B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性、耐熱性及び透明性に優れたポリプロピレン系樹脂材料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アイソタクティックな結晶性ポリプロピレン(以下PPと略記する。)は、比較的安価であり、剛性、表面光沢、耐熱性に優れているが、通常の結晶化条件では、結晶化度が十分に上がらない(70%以下)ため、高価でリサイクルの難しいいわゆるエンジニアリングプラスチックを代替できるほどには、剛性、耐熱性が十分ではない。
そこで、PP系材料の剛性、耐熱性を改良する目的で、タルク、ガラス繊維等のフィラーを用いる試みも多く行われているが、密度の上昇により同一成型品では重くなること、外観の悪化等から、量的に制限され、材料として満足するものが得られていない。
また、PET代替等の目的で、コモノマーの共重合、透明核剤等を用いた検討がなされているが、透明性と剛性のバランスを満足するものは未だ得られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、PPの結晶部は、α晶、β晶、γ晶、スメティック晶等の多くの結晶系態を有し、PPの分子構造、結晶核剤の存在、結晶化条件によってそれらの分量が変化する。また、このなかで、α晶がPPの結晶の中で最も安定で耐熱性に優れていることは知られている。
従って、PPの剛性、耐熱性を工業的に改良する為に、α晶の核剤を用いることが行なわれているが、十分な剛性、耐熱性等を発揮しきれていない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、高い剛性、耐熱性、透明性を有するポリプロピレン系樹脂材料およびその製造方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、30℃で等温結晶化したプレス成形品を用いて測定したときのβ晶分率が5%以上であり、
30℃及び100℃でそれぞれ等温結晶化した際のβ晶含有率をβ(30)およびβ(100)とした場合、(式1)を満たし、
(式1) β(30)>β(100)
かつ、メルトフローレートが0.05〜1000g/10分のポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶の少なくとも一部をα晶に転換することを特徴とするポリプロピレン系樹脂材料の製造方法である。
請求項2記載の発明は、メルトフローレートが0.05〜1000g/10分であるポリプロピレン系樹脂70〜99.5重量%と、下記(a)及び(b)の物性を有するポリプロピレン系樹脂に過酸化ラジカルを発生させる処理をした樹脂0.5〜30重量%とを過酸化ラジカルを溶融前に失活させない状態で溶融混練して得られるβ晶分率が5%以上のポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶の少なくとも一部をα晶に転換することを特徴とするポリプロピレン系樹脂材料の製造方法である。
(a)メルトフローレートが5g/10分以下
(b)アイソタクチックペンタッド分率(IPと略す)とメルトフローレート(MFRと略す)が(式2)の関係にあること
(式2) IP>0.0428×log(MFR)+0.97
【0005】
ここで、β晶の少なくとも一部をα晶に転換することで、β晶分率を2%以下とすることが望ましい。
また、転換はα晶核剤の添加によって行なうことが望ましい。
さらに、ポリプロピレン系樹脂組成物は、そのプロピレン連鎖のアイソタクチックペンタッド分率が0.970以上であることが望ましい。
また、α晶核剤の添加量は、ポリプロピレン系樹脂組成物の100重量部に対し、0.01〜30重量部であることが望ましい。
そのα晶核剤としては、アルカリ金属塩が好適である。
さらに、そのアルカリ金属塩としては、フォスフェートアルカリ金属塩が好適である。
さらにまた、そのアルカリ金属塩としては、ナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートが好適である。
【0006】
本発明のポリプロピレン系樹脂材料は、これらの製造方法により得られたことを特徴とするものである。
この際、ポリプロピレン系樹脂材料は、
メルトフローレート(MFR)が0.05〜1000g/10分、
MFRと、示差走査熱量測定法で測定した融解時の吸熱量ΔHmと結晶化時の発熱量ΔHcの比とが(式3)を満足するものが望ましい。
(式3) ΔHm/ΔHc>0.007915log(MFR)+1.032
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂の結晶構造を制御することにより、非常に剛性と耐熱性及び透明性に優れたポリプロピレン系樹脂材料を得ようとするものである。
α晶PPは剛性、耐熱性に優れている一方、β晶PPはα晶より低融点であり、β晶分率が多い程、樹脂の溶融成形時のエネルギーが小さく成形性が向上する。
従って、α晶とβ晶のそれぞれの特徴を生かして、射出成形等の成形前にはβ晶を多く含ませ成形性を向上させ、成形時または成形後にβ晶をα晶に転換して、成形体を高剛性化、高耐熱性化する。
β晶の核剤により、一旦、β晶を形成させた後、Self-Seeding法によりα晶に再結晶化させると、同じα晶から始めた場合より結晶化の際の核発生が促進される(参照:Lotz等(Fillon et.al.,J.Polym.Sci.B,31,1407(1993)))。そこで、本発明ではこの核の増加によって結晶を微細化し、透明性を向上させる。
ところで、β晶は延伸することによりα晶に転換するが、β晶はα晶より不安定なので、この状態から延伸することは、エネルギー的に有利である。
β晶を多量形成させる実用的な手法は、β晶の核剤を用いる手法が知られている(特開平6−1892号公報、特開平6−107875号公報)が、これらの手法においてβ晶の核剤の存在は、着色等の問題が生じ、α晶の核剤を用いた場合でも、β晶からα晶への転換の妨げになるおそれがあるが、本発明であればこれらの不都合を回避できる。
【0008】
本発明は、β晶を5%以上含有する特定のポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶をα晶に転換してポリプロピレン系樹脂材料を得るものである。
本発明において、ポリプロピレン系樹脂材料の基となるポリプロピレン系樹脂組成物は、β晶分率が5%以上のものである。より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上、よりさらに好ましくは30%以上である。β晶を5%以上有することにより、溶融成形時のエネルギーが小さく成形性に優れる。逆に、5%未満であると、たとえβ晶の全てをα晶に転換しても、β晶からα晶への結晶転換量が少なく、十分な物性改良効果が現われない。
ここで、β晶分率とはポリプロピレン系樹脂組成物の結晶部全体に占めるβ晶の比率をいう。
特に断らない場合、β晶分率は30℃で等温結晶化したプレス成形品(プレスシート)について測定する。プレス成形品は0.5mmtで、10cm×10cmの専用金型を用い230℃で5分間余熱後、脱気し、60kg/cm2で5分加圧した後、30℃の冷却プレスを用いて10分間60kg/cm2で加圧して作製する。 β晶分率を求めるには、まず、線源として、X線発生装置(理化電気社製RU−200)のNiフィルターで単色化したCuK線を用いて、50kV、150mAの条件で、散乱角度(2θ)が10〜30°の範囲でX線プロファイルを測定する。β晶分率の算出は、得られた散乱プロファイルに空気散乱の補正を行った後、A. Turner Jones et al; Macromol. Chem. 75, 134(1964)に記載されている方法に従って算出する。
すなわち、非晶部の散乱を差し引いた後の、α晶の(110)、(040)、(130)、β晶の(300)の結晶部の散乱に対応するピークの高さをそれぞれh〔α〕(110)、h〔α〕(040)、h〔α〕(130)、h〔β〕(300)とし、β晶分率(k)を下記の式より算出した。
k=h〔β〕(300)/(h〔α〕(110)+h〔α〕(040)+h〔α〕(130)+h〔β〕(300))
【0009】
請求項1記載の発明においては、ポリプロピレン系樹脂組成物は、30℃と100℃でそれぞれ等温結晶化(プレス成形)した際のβ晶含有率をβ(30)およびβ(100)とすると、(式1)を満たす。
(式1) β(30)>β(100)
すなわち、プレス成形品は0.5mmtで、10cm×10cmの専用金型を用い230℃で5分間余熱後、脱気し、60kg/cm2で5分加圧した後、30℃及び100℃の冷却プレスを用いてそれぞれ10分間60kg/cm2で加圧して作製した2種の成形品についてβ晶分率を測定した場合に、30℃でのβ晶含有率が100℃でのβ晶含有率よりも大きいことが必要である。
この(式1)を満足するということは、低温で成形を行う方がより高いβ晶を生成することを示し、低温で成形して高いβ晶分率を有する一次成形物が得られる一方、高温ではβ晶ができにくいことを意味している。これは、従来のポリプロピレン系樹脂にない特徴である。詳細は明かでないが、この結果、これから得られた一時成形物のβ晶の熱処理や延伸、核剤の溶融混練によるα晶への転換(比較的高温下で行われる)がより促進され、最終成形体の物性の向上効果がにつながると考えられる。
【0010】
請求項2記載の発明は、MFRが0.05〜1000g/10分であるポリプロピレン系樹脂((A1)成分と称する)と、下記(a),(b)の物性を有するポリプロピレン系樹脂に過酸化ラジカルを発生させる処理をした樹脂((A2)成分と称する)とを過酸化ラジカルを溶融前に失活させない状態で溶融混練するものである。
本発明での(A1)成分及び(A2)成分に用いられるポリプロピレン系樹脂は高い立体規則性をもつ程よく、これを得る触媒系は特に限定しないが、チーグラー系の触媒を用いる場合、特に高立体特異性のマグネシウム担持型触媒系を用いることが好ましい。
過酸化ラジカルを発生させる手法は特に限定しないが、電離線照射、特にγ線照射が好ましい。
【0011】
本発明での(A1)成分のポリプロピレン系樹脂としては、ホモポロプロピレン、またはプロピレンを主体とし、少量(全体の10重量%以下)のエチレン、ブテン−1、ペンテン−1等のα−オレフィンとのランダム共重合体、あるいはプロピレンとエチレン、ブテン−1等のα−オレフィンとのブロック共重合体が挙げられる。
ブロック共重合体においては、該共重合体中に占めるプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体ゴム成分の割合が5〜80重量%のものが好適であり、該ゴム成分中のプロピレン含量は30〜70重量%のものが望ましい。これらは1種類で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、(A1)成分のポリプロピレン系樹脂はMFRが0.05〜1000g/10分であり、好ましくは、0.1〜500g/10分である。MFRが0.05g/10分以下では成形性が悪く、一方、1000g/10分を越えると5%以上のβ晶分率が得られない。
本発明の(A1)成分のポリプロピレン連鎖の立体規則性は特に限定しないが、高立体規則性のポリプロピレン系樹脂の方がより好ましい結果が得られる。
【0012】
本発明の(A2)成分の過酸化ラジカルを発生させる処理をしたポリプロピレン系樹脂を得る方法の一つとして下記(a)及び(b)の物性を有するポリプロピレン系樹脂にγ線処理する方法が挙げられる。
(a)メルトフローレート(MFR) 5g/10分以下
(b)アイソタクチックペンダット分率(IP)とMFRが(式2)の関係にあること
(式2) IP>0.0428×log(MFR)+0.97
(A2)成分に用いられるポリプロピレン系樹脂のMFRを5g/10分以下としたのは、MFRが5g/10分を越えると5%以上のβ晶分率が得られないからである。
また、IPとMFRとの関係が上記式を満足しない場合にはβ晶分率が5%以上ものが得られない。
なお、IPとは同位体元素による核磁気共鳴(13C−NMR)を利用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンダッド単位でのアイソタクチック分率をいい、その測定法は、A. Zambelli; Macromolecules, 6, 925(1973)、同,8,687,(1975)、同,13,267(1980)に詳細な記載がある。すなわち、13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタンド単位でのアイソタクチック分率であり、プロピレンモノマー単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレンモノマー単位の分率を意味する。
【0013】
上記(式2)を満足するポリプロピレン系樹脂を得る方法としては、例えば触媒として、マグネシウム化合物、チタン化合物、ハロゲン含有化合物および電子供与性化合物を必須成分とする固体触媒を更に一般式TiXa・Yb(式中、XはCl、Br、Iのハロゲン原子を、Yはフタル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル等の電子供与性化合物を、aは3もしくは4の整数、bは3以下の整数をそれぞれ表す)で示されるチタン化合物で処理後、ハロゲン含有化合物で洗浄し、さらに炭化水素で洗浄して得られる重合触媒を用いて重合した高立体規則性ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。
該ポリプロピレン系樹脂はホモポリプロピレン、またはプロピレンを主体とし、少量(全体の10重量%以下)のエチレン、ブテン−1、ペンテン−1等のα−オレフィンとのランダム共重合体、あるいは前述のプロピレンとエチレン、ブテン−1等のα−オレフィンとのブロック共重合体が選ばれる。これらのポリプロピレン系樹脂は1種類で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
本発明の(A2)成分であるポリプロピレン系樹脂は上記の(a)と(b)を満たすポリプロピレンを過酸化ラジカルを発生させる処理をして得られるものである。
(A2)成分としてMFRが5g/10分以下のポリプロピレン系樹脂に過酸化ラジカルを発生させる処理を行い、(A1)成分と、発生した過酸化ラジカルを溶融前に失活させない状態で溶融混合しポリプロピレン系樹脂組成物を得た場合、ポリプロピレンのβ晶分率の生成が5%以上のものになる。MFRが低くアイソタクチックペンタッド分率(IP)が高いほど(A1)成分と溶融混合し一次成形物にしたときのβ晶分率は高く、上記のMFRとIPの関係式を満たしていればさらに高いβ晶分率のものが得られる。たとえば、MFR=4g/10分ではIP=0.996以上、MFR=3.0g/10分ではIP=0.990以上、MFR=2.0g/10分ではIP=0.983以上、およびMFR=1.5g/10分ではIP=0.978以上である場合等が挙げられる。
【0015】
本発明の(A2)成分は、好ましくはポリプロピレンの重合パウダーまたはペレットを空気中または活性酸素を1%以上含む不活性ガス雰囲気下でγ線照射したものである。好ましくは3%以上であり、さらに好ましくは5%以上である。上記の条件が満たされない場合、本発明の特徴であるβ晶が5%以上のポリプロピレン系樹脂組成物が得られない。
照射線量は5〜100kGyであり、好ましくは8〜80kGy、とりわけ10〜70kGyが好適である。5kGy未満では、β晶分率を高めることができないからである。100kGyよりも多くする必要はなく、また、100kGy以上では分子量切断が生じると共に、ゲルが発生し易くなる。
(A2)成分であるポリプロピレン系樹脂は、γ線照射後は過酸化ラジカルを有していることが重要である。これは、図4に示すように、ESR測定から観測される。
尚、ESRは試料中に含まれるラジカルを検出する周知の装置であり、その原理は例えば、電子スピン共鳴序説(M. Bersohn, J.C. Baird著、藤原鎮男、渡辺徳子訳、東京化学同人)に示されている。また、スペクトルの解釈については、例えば電子スピン共鳴(大矢博昭、山内淳、講談社サイエンティフィック)に示されている。
【0016】
この過酸化ラジカルは、図4に示すように、熱処理等を行うと失活してしまうので、これらの失活処理を行うことなく、(A1)成分との混合が行われることが重要である。
本発明の(A1)成分と(A2)成分から構成されるポリプロピレン系樹脂組成物の合計量における(A2)成分の組成割合は、0.5〜30重量%であり、1〜20重量%が好ましく、とりわけ3〜15重量%が好ましい。(A2)成分の割合が0.5重量%未満ではβ晶分率5%以上のポリプロピレン系樹脂組成物が得られない。一方、30重量%を越えるとコスト高となり好ましくない。
本発明での、上記(A1)成分と上記(A2)成分からなるポリプロピレン系樹脂組成物を得る方法について述べる。
まず、(A1)成分と(A2)成分を溶融混練りする。具体的には例えばヘンシェルミキサー、タンブラー、リボンミキサーなどの混合機を用いてドライブレンドした後、バンバリー、ニーダー、押出機を用いて溶融混合を行う。押出機は単軸、2軸いずれの押出機を用いてもよい。溶融混合する温度は一般に170〜300℃であり、180〜280℃で行うのが好ましい。
【0017】
溶融混練後、−15〜120℃の温度範囲において冷却を行う。冷却温度は低いほどよく、好ましくは−15〜60℃、より好ましくは−15〜40℃である。冷却温度が低い方がβ晶の生成率が高くなる。
また、このときできるだけ分子配向の少ない状態で冷却を行うことが望ましい。配向の少ない状態で結晶化を行う方法としてプレス成形、押出成形等が挙げられる。押出機で溶融混練した樹脂を冷却して、目的のポリプロピレン系樹脂組成物を得るにはできるだけ配向がかからないように押出速度が遅い方が好ましい。押出機の種類によって好適な押出速度は異なるが、配向がかからないような押出速度で行うことが好ましい。
上記方法により得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、MFRが0.05〜1000g/10分を示す。
【0018】
さらに、目的である高剛性、高耐熱性でかつ高透明性のポリプロピレン系樹脂材料を得るには、前記のポリプロピレン系樹脂組成物のプロピレン連鎖のアイソタクティックペンタッド分率(IP)が0.970以上であることが望ましい。好ましくは、0.975以上、更に好ましくは0.980以上である。IPが0.970以下では、十分な剛性、耐熱性、透明性を有する成形体が得られない。
なお、本発明でいうポリプロピレン系樹脂組成物は(A1)成分と(A2)成分からなる材料をいい、ペレット状であっても、シート状などその他どのような形態のものであってもよい。
本発明でのポリプロピレン系樹脂組成物はβ晶分率が5%以上を満たす限りにおいて、所望により慣用の各種添加剤、例えば酸化防止剤、耐候性安定剤、帯電防止剤、滑剤、防曇剤、電気特性安定剤、加工改良剤、顔料、柔軟剤などを本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
また、低MFRの(A1)成分を用いた場合においても、低MFRのポリプロピレン系樹脂をベースとする(A2)成分を少量添加した場合は組成物のMFRがほとんど変わらないか、むしろ低下する。この分子量低下の抑制は、酸化マグネシウムや酸化亜鉛等の添加によりさらに顕著になる。
【0019】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物は、(A1)成分と(A2)成分のポリプロピレン系樹脂を溶融混練りを経たペレット状のもの、一度プレス成形したものを裁断したもの、製品の形状に射出成形したもの等、種々の形態をとってよい。
ポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶をα晶に転換させる手法としては、ポリプロピレン系樹脂組成物に、α晶核剤を添加する方法、熱処理してそのまま成形体とする方法、延伸する方法等がある。
熱処理してそのまま成形体とする方法は、オーブン、オイル中等で130℃以上で、融解温度未満の温度で行うことが好ましい。
延伸する手法としては、通常工業的に用いられるあらゆる延伸手法(紡糸、ロール延伸、一軸及び二軸延伸、インフレーション成形等)が適用できる。
【0020】
本発明のα晶核剤について以下に説明する。
α晶核剤としては、ポリエチレン、長鎖分岐を有するポリプロピレン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等の高分子化合物である。また、タルク、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、マイカ、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ナトリウムベンゾエイト、アルミニウム−p−t−ブチルベンゾエイト等のカルボン酸の金属塩、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、等のジベンジリデンソルビトール誘導体、またナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2、2'−エチリデン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−ビス(4−t−メチルフェニル)フォスフェート、カリウム−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート等のフォスフェートアルカリ金属塩等のアルカリ金属塩を用いることが有効である。
剛性向上には、フォスフェートアルカリ金属塩が好ましく、さらに好ましくはナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを用いるのが良い。透明性向上にはソルビトール系核剤を用いることが好ましい。
【0021】
本発明でのポリプロピレン系樹脂組成物及びα晶核剤からなるポリプロピレン系樹脂組成物を得る方法は、公知の方法、例えば押出機で溶融混練りして得る場合、単軸、2軸いずれの押出機を用いて行なっても良い。
上記のポリプロピレン系樹脂組成物とα晶核剤を溶融混合することにより、ポリプロピレン系樹脂組成物中のβ晶をα晶に転換させる。
α晶核剤はポリプロピレン系樹脂組成物にそのまま添加するか、必要に応じて少量のポリプロピレン系樹脂と混練して作製したマスターバッチを添加してもよい。
より効果を上げるためには、α晶核剤をポリプロピレン系樹脂のβ晶形成後のポリプロピレン100重量部に対し、0.01〜30重量部添加しておくことが好ましい。0.01重量部以下では、効果が小さく、30重量部以上では分散が不良となり好ましくない。より好ましくは、0.05〜20重量部である。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶は、少なくとも一部が、即ち、その一部または全部がα晶に転換されて本発明でのポリプロピレン系樹脂材料の構成要素となる。
また、ポリプロレン系樹脂組成物のβ晶分率は、その転換後には2%以下となっていることが好ましく、1%以下であればより好ましい。2%以下であれば、最終的に得られるポリプロピレン系樹脂材料の物性、剛性、耐熱性、透明性がより良好となる。
またポリプロピレンのα晶にはα1とα2の結晶形態が存在し、α2がより安定であることが知られている。この結晶形態が多いことは高剛性でかつ高耐熱性であることを示す。
【0023】
また、本発明で得られたポリプロピレン系樹脂材料は、厚み2mmtで18mm×20mmの専用金型を用いて230℃で5分間余熱後、脱気し、30℃冷却プレスを用いて、5分間50kg/cm2加圧して作製したサンプルを160℃で2時間アニールしたときの、X線で測定したときのα2及びα1に由来する散乱の強度(I2)とα1に由来する散乱の強度(I1)の比R=I2/I1(Rはα2の量の目安である。)が1以上であることを特徴とする。好ましくは1.1以上である。
X線散乱プロファイルは、線源として、理化電気社製X線発生装置(RU−200)のNiフィルターで単色化したCuK線を用いて測定した。α1のα2に対する量の目安Rは、G. Guerra, V. Petraccone, P. Corradini, C. De Rosa, R.Napoliano, and B. Pirozzi, J. Polm. Sci., Polm. Phys. Ed., Vol. 22, 1029(1984)の文献に従い下記の様にして求めた。すなわち、CuK線を用いて測定したX線プロファイルに、同文献の図1に従ってベースラインを引いた後、そのベースラインより上の2θ=33.4°から36.0°の間の散乱(α1とα2に由来する)の積分強度であるI2と、2θ=36.4°〜38.0°の間の散乱(α1のみに由来する)の積分強度であるI1を求めた。それらの比R=I2/I1をα2の量の指標とした。
【0024】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂材料においては、JIS K-7210、表1、条件14に基づいて求めたMFR(g/10分)と、示差走査熱量測定法(20℃/分)で測定した融解時の吸熱量(ΔHm(J/g))と、結晶化時の発熱量(ΔHc(J/g))の比(ΔHm/ΔHc)が次式(式3)を満たすことが望ましい。
(式3) ΔHm/ΔHc>0.007915log(MFR)+1.032
この特定の条件で求まる融解時の吸熱量(ΔHm)に比較して結晶化時の発熱量(ΔHc)が相対的に小さいことは、本発明の組成物の結晶化挙動の中には、上記の示差走査熱量測定法では検出できない部分がより多く存在し、それが結晶化挙動に影響を及ぼす結果、本発明の組成物の物性が向上する一因となっていると思われる。
【0025】
本発明のポリプロピレン系樹脂材料を得る際、ポリプロピレン系樹脂組成物が溶融混練りを経たペレット状のもの、一度プレス成形したものを裁断したもの等である場合、必要に応じて、ポリプロピレン系樹脂材料を得る前に通常のポリプロピレン系樹脂に配合される熱酸化安定剤、上記以外の核剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、等全ての添加剤を使用できる。また、条件を満たす範囲で過酸化剤等のラジカル開始剤や不飽和カルボン酸等の変性剤を用いて部分的に変性してよい。更に、各種ポリエチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のオレフィン系共重合体、エチレンブロックとエチレン−ブテンブロックを有するブロック共重合体(水添−ブタジエン−ブロック共重合体)、スチレンブロックとエチレン−ブテンのブロックを有するブロック共重合体(水添−スチレン−ブタジエン−ブロック共重合体)等のブロック共重合体、タルク、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、マイカ、グラスファイバー、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム等の無機充填剤を混合して使用することもできる。
また、ポリプロピレン系樹脂組成物を得る段階で前記の添加、変性又は混合が行われてもよい。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、諸物性の測定は、以下の方法によって行なった。
【0027】
(1)アイソタクティックペンタッド分率(IP)の測定
13C−NMRにより求められたデータを用い、上記A.Zambelli等の方法(Macromolecules,6,925(1973))によって算出した。
(2)MFR
JIS K−7210、表1、条件14(試験温度230℃、試験荷重2.16kgf)により測定した。
(3)曲げ弾性率
ASTMD790により測定した。
(4)HDT
ASTMD648により測定した。
(5)ヘーズ(曇価)の測定
サンプルとしてプレス成形品を用いて行った。プレス成形品は0.5mmtで、10cm×10cmの専用金型を用い、230℃で5分間余熱後、脱気し、60kg/cm2で5分間加圧した後、30℃の冷却プレスを用い5分間60kg/cm2で加圧して作製し、JIS K−7105に準拠し、スガ試験機社製ヘーズメータにより求めた。
【0028】
(6)β晶分率測定(X線回析法)
X線源としてNiフィルターで単色化した理学電気社製のX線発生装置(RU−200)で得たCukの線を用い、50KV、150mAの測定条件で、散乱角度(2θ)=10〜30degの範囲で試料のX線散乱プロファイルを求めた。β晶分率の算出は、得られた散乱プロファイルに空気散乱の補正を行なった後、上記Macromol. Chem.75,134(1964)に従って行なった。
測定はサンプルとしてプレス成形品を用いて行った。プレス成形品は0.5mmtで、10cm×10cmの専用金型を用い230℃で5分間余熱後、脱気し、60kg/cm2で5分加圧した後、30℃及び100℃の冷却プレスを用いてそれぞれ10分間60kg/cm2で加圧して作製した。特に断らない場合、β晶分率は30℃で作製したものの値をいう。また、30℃及び100℃で作製したもののβ晶分率をぞれぞれβ(30)及びβ(100)とした。
(7)ESR測定
測定は、日本電子社製のJeol JES-FE1XGを用い、X−Bond用サンプル管(石英製)に顆粒状にした樹脂を入れて室温、空気中、3360G及び100Gの磁場と磁場掃引幅で測定した。変調磁場の周波数は100kHz、大きさは6.3G、レスポンスは0.01秒である。
【0029】
(8)R=I2/I1(R:α2の量の指標)の測定
測定用のサンプルは厚み2mmtで18mm×20mmの専用金型を用いて230℃で5分間余熱後、脱気し、30℃冷却プレスを用いて、5分間50kg/cm2加圧して作製した。
X線散乱プロファイルは、線源として、理化電気社製X線発生装置(RU−200)のNiフィルターで単色化したCuK線を用いて測定した。α1のα2に対する量の目安は、上述したように、G. Guerra, V. Petraccone, P. Corradini, C. De Rosa, R.Napoliano, and B. Pirozzi, J. Polm. Sci., Polm. Phys. Ed., Vol. 22, 1029(1984)の文献に従い求めた。
(9)示差走査熱量測定(DSC)
パーキンエルマー社製のDSC7を用い、フィルム状にした約4mgの試料を230℃、5分間保持した後、30℃まで20℃/分で降温した。その後、30℃で5分間保持した後、20℃/分で昇温した。
ΔHc(J/g)は、図1に示すように、降温の際に得られた発熱量に対応する曲線において、発熱が開始する温度(Tcs(℃))と、そのTscから40℃低い温度とを直線(ベースライン)で結び、そのベースラインと発熱量曲線とで囲まれる面積S1を積分して求めた。
ΔHm(J/g)は、図2に示すように、昇温の際に得られた吸熱量に対応する曲線において、吸熱が終了する温度(Tme(℃))と、そのTmeから65℃低い温度とを直線(ベースライン)で結び、そのベースラインと吸熱量曲線とで囲まれる面積S2を積分して求めた。
【0030】
[重合体の作製]
固体触媒成分の調製
(工程1)固体成分の調製
窒素雰囲気下、無水塩化マグネシウム47.6g(500mmol)、デカン259ミリリットルおよび2−エチルヘキシルアルコール234ミリリットル(1.5mol)を130℃で2時間加熱反応を行い均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸11.1g(75mmol)を添加し、130℃にて更に1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を該均一溶液に溶解させた。得られた均一溶液を室温に冷却した後、−20℃に保持された四塩化チタン2.0リットル(18mol)中に1時間にわたって全量滴下した。滴下終了後、混合溶液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に到達したところでフタル酸ジイソブチル26.8ミリリットル(125mmol)を添加し、2時間110℃で攪拌反応させた。反応終了後、熱時濾過にて固体成分を採取し、その後、この反応物に四塩化チタン2.0リットル(18mol)を懸濁させた後、110℃で2時間処理させた。処理終了後、再度、熱時濾過にて固体成分を採取し、110℃のデカン2.0リットルで7回、室温のヘキサン2.0リットルで3回で洗浄した。
【0031】
(工程2)TiCl4[C64(COOi492]の調製
四塩化チタン19g(100mmol)を含むヘキサン1.0リットルの溶液にフタル酸ジイソブチル27.8g(100mmol)を0℃を維持しながら約30分間滴下した。滴下終了後、40℃に昇温し30分間反応させた。反応終了後、固体成分を採取し、ヘキサン500ミリリットルで5回洗浄し、目的物を得た。
(工程3)TiCl4[C64(COOi492]による処理
上記工程1で得られた固体成分40gをトルエン600ミリリットルに懸濁させ、25℃でTiCl4[C64(COOi492]10.3g(22mmol)と1時間反応させた。反応終了後、四塩化チタン200ミリリットル(1.8mol)を加えて、110℃で2時間反応させた。反応終了後、熱時濾過にて固体成分を採取し、その後、この反応物にトルエン600ミリリットル、四塩化チタン200ミリリットル(1.8mol)を懸濁させた後、110℃で2時間反応させた。反応終了後、再度熱時濾過にて固体成分を採取し、110℃のトルエン1.0リットルで7回、室温のヘキサン1.0リットルで3回で洗浄した。
【0032】
予備重合触媒成分の調製
窒素雰囲気下、内容積3リットルのオートクレーブ中に、n−ヘプタン500ミリリットル、トリエチルアルミニウム6.0g(0.053mol)、t−ブチルトリメトキシシラン3.1g(0.017mol)、及び上記で得られた固体触媒成分100gを投入し、0〜5℃の温度範囲で5分間攪拌した。次に固体成分1gあたり10gのプロピレンが重合するようにプロピレンをオートクレーブ中に供給し、0〜5℃の温度範囲で1時間予重合した。得られた予重合触媒は、n−ヘプタン500ミリリットルで3回洗浄を行い、以下の重合に使用した。
【0033】
[プロピレンの重合(A1成分)]
(PP−1)
窒素雰囲気下、内容積60リットルの攪拌機付きオートクレーブ1機を用いて、以下の様に重合を行った。上記の方法で調製された予備重合触媒成分2.0g、トリエチルアルミニウム11.4g(100mmol)、t−ブチルトリメトキシシラン5.9g(33mmol)をいれ、ついでプロピレン18kg、ポリマーのMFRが0.5g/10分になるように水素を供給し、70℃で30分間重合を行った。未反応ガスをパージして目的のポリプロピレンを得た。PPのアイソタクティックペンタッド分率は0.994であった。得られたPPのMFRは0.5g/10分であった。
(PP−2)
東ソー・アクゾ社製AA形三塩化チタン6g、ジエチルアルミニウムクロライド23.5gを触媒成分として用い、プロピレン18kg、ポリマーのMFRが0.5g/10分になるように水素を供給し、85℃で30分間重合を行った。未反応ガスをパージして目的のポリプロピレンを得た。PPのアイソタクティックペンタッド分率は0.941であった。得られたPPのMFRは0.5g/10分であった。
【0034】
(PP−3)
窒素雰囲気下、内容積60リットルの攪拌機付きオートクレーブ1機を用いて、以下のように重合を行った。上記の方法で調製された予備重合触媒成分2.0g、トリエチルアルミニウム11.4g(100mmol)、t−ブチルトリメトキシシラン5.9g(33mmol)をいれ、ついでプロピレン18kg、ポリマーのMFRが30g/10分になるように水素を供給し、70℃で30分間重合を行った。未反応ガスをパージして目的のポリプロピレンを得た。得られたPPのアイソタクティックペンタッド分率は0.994であった。得られたPPのMFRは32.8g/10分であった。
(PP−4)
窒素雰囲気下、内容積60リットルの攪拌機付きオートクレーブ1機を用いて、以下のように重合を行った。上記の方法で調製された予備重合触媒成分2.0g、トリエチルアルミニウム11.4g(100mmol)、t−ブチルトリメチキシシラン5.9g(33mmol)をいれ、ついでプロピレン18kg、ポリマーのエチレン含量が2.0重量%、MFRが2.5g/10分になるように、エチレンおよび水素を供給し、70℃で30分間重合を行った。未反応ガスをパージして目的のプロピレン−エチレン共重合体を得た。得られたランダム共重合体のMFRは2.2g/10分、エチレン含量は1.7重量%であった。
【0035】
上記各A1成分のポリプロピレン系樹脂の性状を表1に示す。
【表1】
Figure 0003739481
【0036】
[γ線照射ポリプロピレン系樹脂(A2成分)の作製]
(γPP−1)
上記のPP−1(MFR=0.5g/10分、IP=0.994:本文中の(式2)を満足する)をコーガアイソトープ(株)のγ線照射装置(自動照射台)を使用し、活性酸素濃度が5.6%の雰囲気下で50kGy(最低線量47.5kGy、最高線量52.6kGy、パースペックス線計で測定)照射した。照射後のMFRは5.6g/10分であった。過酸化ラジカルが存在することをESR測定で確認した。
(γPP−2)
上記のPP−2(MFR=0.5g/10分、IP=0.941:本文中の(式2)を満足しない)をコーガアイソトープ(株)のγ線照射装置(自動照射台)を使用し、活性酸素濃度4.8%の窒素雰囲気下で50kGy(最低線量47.5kGy、最高線量52.6kGy、パースペックス線計で測定)照射した。照射後のMFRは17.0g/10分であった。過酸化ラジカルが存在することをESRで確認した。
【0037】
【表2】
Figure 0003739481
【0038】
[β晶分率の温度依存性]
(A1)成分として、上記PP−1を90重量%、(A2)成分として上記γPP−1を10重量%のポリプロピレン系樹脂組成物の100重量部に対し、ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を0.08重量部、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ブチルヒドロキシフェニル)プロピオネート](「イルガノックス1010」日本チバガイギー社製)を0.05重量部、ステアリン酸カルシウム(「カルシウムステアレート」)を0.1重量部を混合し、230℃でペレット化した。
これを高圧プレス機(庄司鉄工(株)製)を用い、プレス温度を230℃で予熱5分間、脱気30秒行なった後、60Kg/cm2で5分間放置後、特定の冷却温度(30℃〜100℃)で10分間結晶化し、厚み0.5mmtで10cm×10cmのプレスシートを作製した。得られたプレスシートのβ晶分率の温度依存性を図3に「−○−」で示した。
比較として、次の2種のポリプロピレン系樹脂組成物からなるペレットについても、同様の評価を行い、図3に示した。
100重量部のPP一1に対し、BHT0.08重量部、イルガノックス1010を0.05重量部、カルシウムステアレート0.1重量部を加え混合し、2軸押出機(「KTX−37」神戸製鋼所製)を使用して230℃で溶融混練りしてペレットを作製、同様の評価を実施した。図3中に「−●−」で示す。
さらに、100重量部のPP一1に対し、BHT0.08重量部、イルガノックス1010を0.05重量部、カルシウムステアレートを0.1重量部、β晶核剤(「エヌシェスターNU−100」新日本理化(株)製)を加え、2軸押出機(「KTX−37」)を使用して230℃で溶融混練りしてペレットを作製し、同様の評価を実施した。図3中に「−□−」で示す。
図3から明らかなように、本発明でのポリプロピレン系樹脂組成物(−○−)は、比較例のポリプロピレン系樹脂組成物と異なリ、むしろ、低温でβ晶が多く生成されるという特徴を有している。
【0039】
[ポリプロピレン系樹脂材料の作製]
実施例1〜11、比較例2、3、6、7〜15、19
表1及び2に種類及び配合量が示されている(A1)成分のポリプロピレン系樹脂と、(A2)成分のγ線照射したポリプロピレン系樹脂ならびにBHTを0.05重量部、イルガノックス1010を0.1重量%およびカルシウムステアレートを0.1重量部配合し、スーパーミキサー(「SMV20型」川田製作所社製)を用いて混合し、二軸押出機(「AS30型」中谷機械社製)を用い、温度230℃(PP−3を用いたものは200℃)でペレット化した。押出機のスクリュー回転数は100rpmであった。
【0040】
実施例1および2(熱処理によるβ晶からα晶への結晶転換を利用した例)、比較例1〜3
(実施例1)
(A1)成分としてPP−1を97重量%、(A2)成分としてγPP−1を3重量%の樹脂100重量部に対し、BHTを0.05重量部、イルガノックス1010を0.1重量部およびカルシウムステアレートを0.1重量部配合したものを用いて上記の方法によりペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。このペレットを用いて上記β晶分率測定用の試験片を作成した(得られたプレス試験片のβ晶分率は43%であった)。この試験片を、窒素雰囲気下、150℃に温調したオーブン中で2時間加熱した後、室温に冷却し、ポリプロピレン系樹脂材料(β晶分率は0%であった)を得た。状態調節の後、この試験片の物性を測定した。結果を表3に示した。
【0041】
(実施例2)
(A1)成分としてPP−1を90重量%、(A2)成分としてγPP−1を10重量%用いた以外は、実施例1と同様に行った。熱処理前のプレス試験片のβ晶分率は47%であった。
(比較例1)
100重量部のPP−1に対し、市販の安定剤であるBHT0.08重量部、イルガノックス1010を0.05重量部、カルシウムステアレート0.1重量部を加え、2軸押出機(「KTX−37」)を使用して230℃で溶融混練りし、ペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を作製した。このペレットを用いて上記β晶分率測定用の試験片を作成した(得られたプレス試験片のβ晶分率は0%であった)。この試験片を窒素雰囲気下、150℃に温調したオーブン中で2時間加熱した後、室温に冷却した。試験片の状態調節の後、物性を測定した。結果を表3に示した。
(比較例2)
(A1)成分としてPP−2(MFR=0.6g/10分、IP=0.941)90重量%、(A2)成分として上記のγPP−2を10重量%用いた以外は、実施例1と同様に行った。熱処理前のプレス試験片のβ晶分率は2%であった。
【0042】
(比較例3)
実施例2の熱処理前の試験片(β晶分率=47%)の物性を測定した。結果を表3に示した。
【表3】
Figure 0003739481
実施例3〜9(α晶核剤によるβ晶からα晶への結晶転換を利用した例)、比較例4〜15
(実施例3)
(A1)成分としてPP−1を99重量%、(A2)成分としてγPP−1を1重量%用いて上記の方法によりペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。このペレットより上記β晶分率測定用の試験片を作成した。
得られた試験片(β晶分率26%)を裁断したもの100重量部に対して、α晶の核剤としてナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(旭電化社製「NA11」)を0.4重量部を加え、2軸押出機(KTX−37)を使用して230℃で溶融混練りし、ポリプロピレン系樹脂材料を得た。得られたポリプロピレン系樹脂材料(β晶分率0%)を用いて試験片を作製し、物性を測定した。結果を表4に示した。
【0043】
(実施例4)
(A1)成分としてPP−1を98重量%、(A2)成分としてγPP−1を2重量%用いた以外は、実施例3と同様に行った。ポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶分率は39%、α晶の核剤であるナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(「NA11」)を0.4重量部添加して作製したポリプロピレン系樹脂材料のβ晶分率は0%であった。結果を表4に示した。
(実施例5)
(A1)成分としてPP−1を97重量%、(A2)成分としてγPP−1を3重量%用いた以外は、実施例3と同様に行った。ポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶分率は42%、α晶の核剤であるナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(「NA11」)を0.4重量部添加して作製したポリプロピレン系樹脂材料のβ晶分率は0%であった。結果を表4に示した。
【0044】
(実施例6)
(A1)成分としてPP−1を95重量%、(A2)成分としてγPP−1を5重量%用いた以外は、実施例3と同様に行った。ポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶分率は43%、α晶の核剤であるナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(「NA11」)を0.4重量部添加して作製したポリプロピレン系樹脂材料のβ晶分率は0%であった。結果を表4に示した。
(実施例7)
(A1)成分としてPP−1を90重量%、(A2)成分としてγPP−1を10重量%用いた以外は、実施例3と同様に行った。ポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶分率は47%、α晶の核剤であるナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(「NA11」)を0.4重量部添加して作製したポリプロピレン系樹脂材料のβ晶分率は0%であった。結果を表5に示した。
【0045】
(実施例8)
(A1)成分としてPP−1を85重量%、(A2)成分としてγPP−1を15重量%用いた以外は、実施例3と同様に行った。ポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶分率は47%、α晶の核剤であるナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(「NA11」)を0.4重量部添加して作製したポリプロピレン系樹脂材料のβ晶分率は0%であった。結果を表5に示した。
(実施例9)
(A1)成分としてPP−3を90重量%、(A2)成分としてγPP−1を10重量%用いた以外は、実施例3(但し、200℃で溶融混練)と同様に行った。ポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶分率は17%、α晶の核剤であるナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(「NA11」)を0.4重量部添加して作製したポリプロピレン系樹脂材料のβ晶分率は0%であった。結果を表5に示した。
【0046】
【表4】
Figure 0003739481
【0047】
【表5】
Figure 0003739481
【0048】
(比較例4)
100重量部のPP−1に対し、市販の安定剤であるBHT0.08重量部、イルガノックス1010を0.05重量部、カルシウムステアレート0.1重量部を加え、2軸押出機(KTX−37)を使用して230℃で溶融混練りし、ペレット状のポリプロピレンを作製した。このペレット(β晶分率0%)100重量部に対し、α晶の核剤としてナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(旭電化社製「NA11」)を0.4重量部を加え、2軸押出機(KTX−37)を使用して230℃で溶融混練りし、ポリプロピレン系樹脂材料を作製した。これを用いて試験片を作製し、物性を測定した。結果を表6に示した。
(比較例5)
PP−1の代わりにPP−3を用いた以外は、比較例4と同様(但し、200℃で溶融混練)に行った。ポリプロピレン系樹脂組成物にあたるペレットのβ晶分率は0%であった。ポリプロピレン系樹脂材料を用いて試験片を作製し、物性を測定した。結果を表6に示した。
【0049】
(比較例6)
(A1)成分としてPP−1を99重量%、(A2)成分としてγPP−1を1重量%用いて上記の方法により、2軸押出機(KTX−37)を使用して230℃で溶融混練りした後、溶融した状態で、α晶の核剤としてナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(旭電化社製「NA11」)を0.4重量部を加え、ペレット状のポリプロピレン系樹脂材料を作製した。これを用いて試験片を作製し、物性を測定した。結果を表6に示した。
(比較例7)
(A1)成分としてPP−1を98重量%、(A2)成分としてγPP−1を2重量%用いた以外は、比較例6と同様に行った。結果を表6に示す。
(比較例8)
(A1)成分としてPP−1を97重量%、(A2)成分としてγPP−1を3重量%用いた以外は、比較例6と同様に行った。結果を表7に示す。
【0050】
(比較例9)
(A1)成分としてPP−1を95重量%、(A2)成分としてγPP−1を5重量%用いた以外は、比較例6と同様に行った。結果を表7に示す。
(比較例10)
(A1)成分としてPP−1を90重量%、(A2)成分としてγPP−1を10重量%用いた以外は、比較例6と同様に行った。結果を表7に示す。
(比較例11)
(A1)成分としてPP−1を85重量%、(A2)成分としてγPP−1を15重量%用いた以外は、比較例6と同様に行った。結果を表7に示す。
(比較例12)
(A1)成分としてPP−3を90重量%、(A2)成分としてγPP−1を10重量%用いた以外は、比較例6(但し、200℃で溶融混練)と同様に行った。結果を表8に示す。
(比較例13)
(A1)成分としてPP−2を90重量%、(A2)成分としてγPP−2を10重量%用いて上記の方法によりペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。このペレットより、上記のβ晶分率測定用の試験片を作製した。得られた試験片(β晶分率2%)を裁断したもの100重量部に対して、α晶の核剤としてナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(旭電化社製「NA11」)を0.4重量部を加え、2軸押出機(KTX−37)を使用して230℃で溶融混練りし、ポリプロピレン系樹脂材料を得た。得られたポリプロピレン系樹脂材料を用いて試験片を作製し、物性を測定した。結果を表8に示した。
【0051】
(比較例14)
(A1)成分としてPP−1を97重量%、(A2)成分としてγPP−1を3重量%用いて上記の方法によりペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。このペレットより、上述した[β晶分率の温度依存性]の欄に示した方法に基づいて、厚み0.5mmtで10cm×10cmのプレスシートをプレス温度135℃で作製した。得られたプレスシート(β晶分率0%)を裁断した一次成形物100重量部に対して、α晶核剤としてナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(旭電化社製「NA11」)を0.4重量部を加え、2軸押出機(KTX−37)を使用して230℃で溶融混練りし、ポリプロピレン系樹脂材料を得た。得られた樹脂材料を用いて試験片を作製し、物性を測定した。結果を表8に示した。
(比較例15)
(A1)成分としてPP−1を90重量%、(A2)成分としてγPP−1を10重量%用いた以外は、比較例14と同様に行った。得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシート(一次成形物)のβ晶分率は0%であった。結果を表8に示した。
【0052】
(比較例16)
100重量部のPP−3に対し、市販の安定剤であるBHT0.08重量部、イルガノックス1010を0.05重量部、カルシウムステアレート0.1重量部、β晶の核剤として新日本理化社製「エヌジェスターNU−100」を0.2重量部を加え、2軸押出機(KTX−37)を使用して200℃で溶融混練りし、ペレットを作製した。このペレットより、上記のβ晶分率測定用のプレスシート(但し、100℃で結晶化)を作製した。
得られたプレスシート(β晶分率47%)を裁断したもの100重量部に対して、α晶核剤としてナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート(旭電化社製「NA11」)を0.4重量部を加え、2軸押出機(KTX−37)を使用して200℃で溶融混練りし、ぺレット状のポリプロピレン系樹脂材料を得た。この樹脂材料のβ晶分率は6%であった。この樹脂材料を用いて試験片を作製し、物性を測定した。結果を表9に示した。
【0053】
【表6】
Figure 0003739481
*:β晶含有ペレットを経ずにPP系樹脂材料を製造したもの。
【0054】
【表7】
Figure 0003739481
*:β晶含有ペレットを経ずにPP系樹脂材料を製造したもの。
【0055】
【表8】
Figure 0003739481
*:β晶含有ペレットを経ずにPP系樹脂材料を製造したもの。
**:α晶核剤添加前の一次成形体(130℃結晶化)のβ晶分率は0%。
【0056】
【表9】
Figure 0003739481
なお、剛性、耐熱性は樹脂のMFRにも大きく依存する。実施例1〜8及び比較例1〜4、6〜11、13〜15が低MFRの場合、実施例9及び比較例5、12、16が高MFRの場合に相当する。表3〜9から同程度のMFRでは、実施例のポリプロピレン系樹脂材料であると、比較例のポリプロピレン系樹脂材料よりも剛性、耐熱性に優れることがわかる。
【0057】
実施例10、11(α晶核剤によるβ晶からα晶への結晶転換を利用した例)、比較例19
(実施例10)
(A1)成分としてPP−1を95重量%、(A2)成分としてγPP−1を5重量%用い、α晶核剤として1,3,2,4−ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール(新日本理化社製「ゲルオールMD−R」)を0.3重量%用いた以外は実施例3と同様に行なった。結果を表10に示した。
(実施例11)
(A1)成分としてPP−4を95重量%用い、(A2)成分としてγPP−1を5重量%用い、α晶核剤として「ゲルオールMD−R」を0.25重量%用いた以外は実施例3と同様に行った。結果を表10に示した。
(比較例19)
PP−1を95重量%と、γPP−1を5重量%用い、α晶核剤として「ゲルオールMD−R」を0.3重量%用いた以外は比較例9と同様に行った。結果を表10に示す。
【0058】
【表10】
Figure 0003739481
*:β晶含有ペレットを経ずにPP系樹脂材料を製造したもの。
【0059】
(比較例17)
100重量部のPP−1を用い、核剤を用いない以外は比較例4と同様に行った。結果を表11に示した。
(比較例18)
100重量部のPP−1を用い、α晶核剤として「ゲルオールMD−R」を0.3重量%用いた以外は、比較例4と同様の方法を行なった。結果を表11に示した。
(比較例20)
100重量部のPP−4を用い、核剤を用いない以外は比較例4と同様に行った。結果を表11に示した。
(比較例21)
100重量部のPP−4を用い、α晶核剤として「ゲルオールMD−R」を0.25重量%用いた以外は比較例4と同様に行った。結果を表11に示した。
【0060】
【表11】
Figure 0003739481
【0061】
【発明の効果】
本発明のポリプロピレン系樹脂材料は、従来のものと比較して、剛性、耐熱性、透明性が非常に優れている。従って、特に、射出成形、中空成形、シート成形、真空成形等に用いられる構造材料用の素材として、エンジニアリングプラスチックの代替として用いるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】示差走査熱量測定法による結晶化時の発熱量曲線を示すグラフである。
【図2】示差走査熱量測定法による融解時の吸熱量曲線を示すグラフである。
【図3】β晶分率のプレス温度依存性を示すグラフである。
【図4】ポリプロピレンのESRのスペクトルである。

Claims (9)

  1. 30℃で等温結晶化したプレス成形品を用いて測定したときのβ晶分率が5%以上であり、
    30℃及び100℃でそれぞれ等温結晶化した際のβ晶含有率をβ(30)およびβ(100)とした場合、(式1)を満たし、
    (式1) β(30)>β(100)
    かつ、メルトフローレートが0.05〜1000g/10分のポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶の少なくとも一部を、該ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜30重量部のアルカリ金属塩又はジベンジリデンソルビトール誘導体からなるα晶核剤の添加、または、130℃以上で熱処理する方法のいずれかにより、α晶に転換することを特徴とするポリプロピレン系樹脂材料の製造方法。
  2. メルトフローレートが0.05〜1000g/10分であるポリプロピレン系樹脂70〜99.5重量%と、下記(a)及び(b)の物性を有するポリプロピレン系樹脂に、空気中または活性酸素1%以上含む不活性ガス雰囲気下でγ線照射して過酸化ラジカルを発生させる処理をした樹脂0.5〜30重量%とを過酸化ラジカルを溶融前に失活させない状態で溶融混練して得られるβ晶分率が5%以上のポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶の少なくとも一部をα晶に転換することを特徴とするポリプロピレン系樹脂材料の製造方法。
    (a)メルトフローレートが5g/10分以下
    (b)アイソタクチックペンタッド分率(IPと略す)とメルトフローレート(MFRと略す)が(式2)の関係にあること
    (式2) IP>0.0428×log(MFR)+0.97
  3. β晶の少なくとも一部をα晶に転換し、β晶分率を2%以下とすることを特徴とする請求項1または2記載のポリプロピレン系樹脂材料の製造方法。
  4. 前記ポリプロピレン系樹脂組成物のプロピレン連鎖のアイソタクチックペンタッド分率が0.970以上であることを特徴とする請求項1または2記載のポリプロピレン系樹脂材料の製造方法。
  5. アルカリ金属塩がフォスフェートアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項記載のポリプロピレン系樹脂材料の製造方法。
  6. アルカリ金属塩がナトリウム−2、2'−メチレン−ビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートであることを特徴とする請求項記載のポリプロピレン系樹脂材料の製造方法。
  7. 前記ジベンジリデンソルビトール誘導体が、1,3,2,4−ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトールであることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂材料の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載された製造方法により得られたことを特徴とするポリプロピレン系樹脂材料。
  9. 請求項8記載のポリプロピレン系樹脂材料において、
    メルトフローレートが0.05〜1000g/10分、
    メルトフローレート(MFR)と、示差走査熱量測定法で測定した融解時の吸熱量ΔHmと結晶化時の発熱量ΔHcの比とが(式3)を満足することを特徴とするポリプロピレン系樹脂材料。
    (式3) ΔHm/ΔHc>0.007915log(MFR)+1.032
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