JP3733095B2 - 同期電動機の脱調検出装置及び同期電動機の脱調検出方法及び冷凍空調装置用圧縮機の駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、同期電動機を回転子位置を検出するための位置センサを用いずに駆動する同期電動機駆動装置の脱調検出装置及び脱調検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図12は一般的な従来のインバータ装置の構成を示す図である。図において、1は直流電源部、2はインバータ装置、3a〜3fはスイッチング素子であり、3aはU相上側スイッチング素子、3bはV相上側スイッチング素子、3cはW相上側スイッチング素子、3dはU相下側スイッチング素子、3eはV相下側スイッチング素子、3fはW相下側スイッチング素子である。4はスイッチング素子3のそれぞれと並列に接続された還流ダイオード、5はスイッチング素子3および複数の還流ダイオード4からなるインバータ主回路、6は埋込磁石型同期電動機である。
【0003】
7aは埋込磁石型同期電動機6に流入する電流のうち一相の電流を検出する電流検出手段、7bは電流検出手段7aが検出する相とは異なる相の電流を検出する電流検出手段、8は電流検出手段7a、7bにより検出された電流に基づきインバータ主回路5内のスイッチング素子3をオン・オフ制御するインバータ制御手段である。
【0004】
10は電流検出手段7a、7bにより検出された2相分の電流から3相の電流を求める相電流演算手段、11は相電流演算手段10より求められた3相の電流を励磁電流成分(d軸電流)とトルク電流成分(q軸電流)のd−q座標の電流に変換する座標変換手段、12は座標変換手段11により求められたd−q座標電流を基に埋込磁石型同期電動機6を駆動するためのd−q座標の出力電圧指令値を求める電圧指令値演算手段、13は電圧指令値演算手段12により求められたd−q座標の出力電圧指令値を基に出力電圧ベクトルを求める出力電圧ベクトル演算手段、14はインバータ制御手段8内で求められた出力電圧指令値を基にスイッチング素子3をオン・オフ制御するためのPWM信号を発生させるPWM信号発生手段、15は直流電源部1の直流電圧を検出する直流電圧検出手段、30は相電流の過電流状態を検出する過電流検出手段である。
【0005】
上記のように構成されたインバータ装置および埋込磁石型同期電動機における動作を、図12を用いて説明する。図において、インバータ装置2は埋込磁石型同期電動機6に流入する相電流のうち2相分の電流を電流検出手段7a、7bより検出する。検出した2相分の電流、例えばU相電流IuおよびV相電流Ivを用いて、インバータ制御手段8は、埋込磁石型同期電動機6を駆動するためにインバータ主回路5が出力する電圧値および電圧位相等の出力電圧指令値を演算により求め、インバータ主回路5内のスイッチング素子3をオン・オフ制御するためのPWM信号を出力する。
【0006】
インバータ制御手段8においては、以下に記載する動作にてPWM信号を出力する。電流検出手段7a、7bにより検出された相電流Iu、Ivにより相電流演算手段10にて3相分の相電流Iu、Iv、Iwを求め、座標変換手段11により3相分の相電流Iu、Iv、Iwはd−q座標電流Id、Iqに変換される。電圧指令値演算手段12はd−q座標電流Id、Iqよりd−q座標における出力電圧指令値Vd*、Vq*を演算により求める。出力電圧ベクトル演算手段13はd−q座標の出力電圧指令値Vd*、Vq*より出力電圧ベクトルVx*を演算により求める。PWM信号発生手段9は直流電圧検出手段14より得られた直流電圧Vdcと出力電圧ベクトルVx*よりスイッチング素子3をオン・オフ制御するためのPWM信号を求め出力する。
【0007】
PWM信号発生手段14により出力されたPWM信号に基づきインバータ主回路5内のスイッチング素子3がオン・オフ動作される。スイッチング素子3のオン・オフ動作によりインバータ主回路5より埋込磁石型同期電動機6に電力が供給され、埋込磁石型同期電動機6が駆動される。
【0008】
ここで、上記従来のインバータ装置での脱調検出は以下のように行われる。埋込磁石型同期電動機6が脱調を起こす直前では、通常の同期運転時に比べ相電流のピークレベルが大となる。この現象より電動機の脱調を検出する。例えば、過電流検出手段30により、相電流と過電流レベルを比較し、相電流が過電流レベルを超えた場合、過電流異常とし、過電流異常により脱調検出を行う。ここで、過電流検出手段30はハードウエアあるいはソフトウエアにより構成する。
【0009】
また、従来の同期電動機の脱調検出装置の一例が、特開2001−25282号公報に開示されている。特開2001−25282号公報に開示された同期電動機の脱調検出装置においては、インバータ装置の出力する電圧の周期と、センサレスブラシレスモータに流れる電流の周期を比較し脱調を検出する例について開示してある。また、励磁電流成分であるd軸電流と脱調検出レベルを比較することにより脱調を検出する例についても開示されている。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−25282号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来のインバータ装置での脱調検出は、脱調状態を過電流という現象から検出していたため精度良く脱調検出をすることが困難であった。
【0012】
また、脱調を起こさず同期運転を継続している場合であっても、負荷の増加や速度の過減速等により電流が増加し過電流となる場合もあり、過電流現象から脱調現象を分離することは困難であった。
【0013】
また、過電流検出に用いる過電流レベルは、埋込磁石型同期電動機の回転子に用いる磁石の減磁耐力や、インバータ装置に用いる素子の限界電流のレベルによって設定される値であり、脱調検出に用いる検出レベルを独立に設定することが困難であった。
【0014】
また、インバータ装置と埋込磁石型同期電動機の組み合わせによっては、脱調時の電流が同期状態の電流に比べ小となる場合もあるため過電流による検出が不可能な場合があった。
【0015】
また、特開2001−25282号公報に開示された同期電動機の脱調検出装置においては、インバータ装置の出力する電圧の周期と、センサレスブラシレスモータに流れる電流の周期を比較し脱調を検出するため、脱調時にインバータ装置の出力する電圧周期と、同期電動機に流れる電流の周期に差がないような状態では脱調検出が不可能である。
【0016】
また、励磁電流成分であるd軸電流と脱調検出レベルを比較することにより脱調を検出する手段では、励磁電流は回転数や負荷トルクの条件により変化するため脱調検出レベルを運転条件毎に設定する必要があり、設定が複雑になる。
【0017】
この発明は以上のような問題点を解決するためになされたもので、同期電動機の負荷によらず、精度良く脱調検出を可能とする同期電動機の脱調検出装置及び同期電動機の脱調検出方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、回転子位置を検出するための位置センサを用いずに同期電動機を駆動するインバータ装置において、同期電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段により得られた電流を励磁電流成分であるd軸電流と、トルク電流成分であるq軸電流のd−q座標電流に変換する座標変換手段と、座標変換手段により得られたd−q座標電流の少なくとも一方を第一の所定値と比較する電流比較手段と、d−q座標電流と第一の所定値とが所定時間内に交差する数を計測する交差数計測手段と、交差数計測手段により計測された交差数と第二の所定値との一致回数を計測する一致回数計測手段と、一致回数計測手段で計測された一致回数と第三の所定値を比較し一致回数が第三の所定値以上となった場合に脱調を検出する一致回数比較手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、第一の所定値をd−q座標電流の変動の中心付近に設定したことを特徴とする。
【0020】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、第一の所定値をd−q座標電流に含まれる直流成分としたことを特徴とする。
【0021】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、第一の所定値をd−q座標電流の平均値としたことを特徴とする。
【0022】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、ローパスフィルタを用いてd−q座標電流の直流に近い成分のみを取り出して第一の所定値とすることを特徴とする。
【0023】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、ローパスフィルタの遮断周波数を1.5Hzとしたことを特徴とする。
【0024】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、交差数計測手段において、所定時間内にd−q座標電流が第一の所定値を小から大となるように交差する場合と、大から小になるように交差する場合の少なくとも一方の交差数を計測することを特徴とする。
【0025】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、交差数計測手段において、所定時間内にd−q座標電流が第一の所定値を小から大となるように交差する場合と、大から小になるように交差する場合の交差数をそれぞれ計測し、一致回数計測手段において、少なくともいずれか一方の交差数が第二の所定値と一致した場合に、一致と判断することを特徴とする。
【0026】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、一致回数計測手段において交差数と第二の所定値とが連続して一致した回数を一致回数とすることを特徴とする。
【0027】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、交差数計測手段が交差数を計測する所定時間を電動機の1回転周期の倍数としたことを特徴とする。
【0028】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、一致回数計測手段において、交差数と比較を行う第二の所定値は電動機の極数の倍数としたことを特徴とする。
【0029】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、一致回数比較手段における第三の所定値を、2回以上、最大は脱調を数秒で検出できる回数としたことを特徴とする。
【0030】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、電流比較手段において比較に用いるd−q座標電流は高周波成分を除去した後に第一の所定値と比較することを特徴とする。
【0031】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出装置は、同期電動機の最大回転速度の極数倍の周波数を超える高周波成分を除去することを特徴とする。
【0032】
この発明に係る冷凍空調装置用圧縮機の駆動装置は、請求項1〜14の何れかに記載の同期電動機の脱調検出装置を搭載したことを特徴とする。
【0033】
この発明に係る同期電動機の脱調検出方法は、回転子位置を検出するための位置センサを用いずに同期電動機を駆動するインバータ装置において、同期電動機に流れる電流を検出する電流検出ステップと、電流検出手段により得られた電流を励磁電流成分であるd軸電流とトルク電流成分であるq軸電流のd−q座標電流に変換する座標変換ステップと、座標変換ステップにより得られたd−q座標電流の少なくとも一方を第一の所定値と比較するd−q座標電流比較ステップと、d−q座標電流と第一の所定値とが所定時間内に交差する数を計測する交差数計測ステップと、交差数計測ステップより得られた交差数と第二の所定値の一致回数を計測する一致回数計測ステップと、一致回数計測ステップで計測された一致回数と第三の所定値を比較し一致回数が第三の所定値以上となった場合に脱調を検出する一致回数比較ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0034】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出方法は、d−q座標電流比較ステップでは、d−q座標電流の少なくとも一方と第一の所定値との大小を比較して、d−q座標電流の少なくとも一方が第一の所定値より大きい場合と小さい場合の比較結果信号を出力し、交差数計測ステップでは比較結果信号の変化を検出することを特徴とする。
【0035】
また、この発明に係る同期電動機の脱調検出方法は、d−q座標電流比較ステップでは、d−q座標電流の少なくとも一方と第一の所定値との差を求め、その差の符号が正から負または負から正に変化した場合と変化しない場合の比較結果信号を出力し、交差数計測ステップでは比較結果信号から交差数を検出することを特徴とする。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ここでは、埋込磁石型同期電動機を例に挙げて説明するが、これはあくまでも一例であり、d軸とq軸のインダクタンスに差がある突極型の同期電動機であれば、以下に説明する方法により脱調検出が可能である。
【0037】
実施の形態1.
図1は実施の形態1を示す図で、インバータ装置の構成を示す図である。図において、1は直流電源部、2はインバータ装置、3はスイッチング素子であり、3aはU相上側スイッチング素子、3bはV相上側スイッチング素子、3cはW相上側スイッチング素子、3dはU相下側スイッチング素子、3eはV相下側スイッチング素子、3fはW相下側スイッチング素子である。4はスイッチング素子3のそれぞれに並列に接続された還流ダイオード、5はスイッチング素子3およびスイッチング素子3のそれぞれに並列に接続された還流ダイオード4からなるインバータ主回路、6は埋込磁石型同期電動機である。
【0038】
7aは埋込磁石型同期電動機6に流入する電流のうち一相の電流を検出する電流検出手段、7bは電流検出手段7aと異なる相の電流を検出する電流検出手段、8は電流検出手段7a、7bにより検出された電流に基づきインバータ主回路5内のスイッチング素子3をオン・オフ制御するインバータ制御手段である。
【0039】
9はインバータ制御手段8内に設けられた埋込磁石型同期電動機6の駆動制御を行う電動機制御部、10は電流検出手段7a、7bにより検出された2相分の電流から3相の電流を求める相電流演算手段、11は相電流演算手段10より求められた3相の電流をd−q座標の電流に変換する座標変換手段、12は座標変換手段11により求められたd−q座標電流を基に埋込磁石型同期電動機6を駆動するためのd−q座標の出力電圧指令値を求める電圧指令値演算手段、13は電圧指令値演算手段12により求められたd−q座標の出力電圧指令値を基に出力電圧ベクトルを求める出力電圧ベクトル演算手段、14はインバータ制御手段8内で求められた出力電圧指令値を基にスイッチング素子3をオン・オフ制御するためのPWM信号を発生させるPWM信号発生手段、15は直流電源部1の直流電圧を検出する直流電圧検出手段である。
【0040】
16はインバータ制御手段8内に設けられた埋込磁石型同期電動機6の脱調を検出する脱調検出手段で、電流比較手段17、交差数計測手段18、一致回数計測手段19、一致回数比較手段20で構成される。
【0041】
電流比較手段17は座標変換手段11より得られたd−q座標電流と脱調検出のための基準電流となる第一の所定値との大小を比較する。交差数計測手段18は電流比較手段17により得られた比較結果を基に、d−q座標電流が第一の所定値と交差する数を所定時間計測する。一致回数計測手段19は交差数計測手段18より得られた所定時間の交差数と脱調検出の基準となる第二の所定値を比較し交差数と第二の所定値とが一致する回数を計測する。一致回数比較手段20は一致回数計測手段19より得られた一致回数と第三の所定値を比較し、一致回数が第三の所定値以上となった場合に脱調を検出する。
【0042】
上記のように構成されたインバータ装置の動作を図1を用いて説明する。図において、インバータ装置2は埋込磁石型同期電動機6に流入する相電流のうち2相分の電流を電流検出手段7a、7bより検出する。検出した2相分の電流、例えばU相電流IuおよびV相電流Ivを用いて、インバータ制御手段8は、埋込磁石型同期電動機6を駆動するためにインバータ主回路5が出力する電圧値および電圧位相等の出力電圧指令値を演算により求め、インバータ主回路5内のスイッチング素子3をオン・オフ制御するためのPWM信号を出力する。
【0043】
インバータ制御手段8内の電動機制御部9では、インバータ装置の電動機駆動の処理を行う。ここでは、以下に記載する動作にて電動機駆動のためのPWM信号を出力する。電流検出手段7a、7bにより検出された相電流Iu、Ivにより相電流演算手段10にて3相分の相電流Iu、Iv、Iwを求め、座標変換手段11により3相分の相電流Iu、Iv、Iwはd−q座標の電流Id、Iqに変換される。電圧指令値演算手段12はd−q座標の電流Id、Iqおよび回転速度指令値f*に基づき、d−q座標における出力電圧指令値Vd*、Vq*を演算により求める。
【0044】
ここで、回転速度指令値f*はインバータ装置の上位装置、例えばインバータ装置の搭載されたシステムのメインマイコンや他のインターフェース(マンマシンインターフェースなど)より与えられる。出力電圧ベクトル演算手段13はd−q座標の出力電圧指令値Vd*、Vq*より出力電圧ベクトルVx*を演算により求める。PWM信号発生手段14は直流電圧検出手段15より得られた直流電圧Vdcと出力電圧ベクトルVx*よりスイッチング素子3をオン・オフ制御するためのPWM信号を求め出力する。
【0045】
PWM信号発生手段14により出力されたPWM信号に基づき、インバータ主回路5内のスイッチング素子3がオン・オフ動作される。スイッチング素子3のオン・オフ動作によりインバータ主回路5より埋込磁石型同期電動機6に電力が供給され、埋込磁石型同期電動機6が駆動される。
【0046】
本発明の最も重要な特徴部分である脱調検出の一例である脱調検出手段16について、以下説明する。
インバータ制御手段8内の脱調検出手段16では、以下に記載する動作により埋込磁石型同期電動機6の脱調検出処理を行う。座標変換手段11より得られたd−q座標電流Id、Iqは、電流比較手段17において第一の所定値である電流基準値Ithとの大小を比較し、比較結果信号Siが出力される。
【0047】
ここで、例えば比較する値としてトルク分電流であるq軸電流Iqを用いるとし、比較結果信号SiはIq≧IthのときSi=1、Iq<IthのときSi=0と出力する。
【0048】
交差数計測手段18は、電流比較手段17より得られた比較結果信号Siが所定時間Tm内に0から1、または1から0に変化する回数である交差数Ncを計測する。
【0049】
一致回数計測手段19では、交差数Ncを第二の所定値である脱調交差数Nerrと比較し交差数Ncと脱調交差数Nerrが一致Nc=Nerrとなる一致回数Neqを計測する。
【0050】
一致回数比較手段20では、一致回数計測手段19より得られた一致回数Neqが脱調検出レベルError_Level以上となった場合、脱調異常信号Sy_errに1を出力する。脱調でない場合の脱調異常信号Sy_errは0である。
【0051】
脱調検出手段16より、脱調異常信号Sy_err=1が出力された場合、PWM信号発生手段14はインバータ主回路5内のスイッチング素子3をすべてオフさせるための信号を出力し、インバータ主回路5から埋込磁石型同期電動機6への電力の供給を停止する。同時に、インバータ制御手段8の動作も停止させる。
【0052】
次に、本発明による脱調検出法の一例を、図1〜図4を用いて詳細に説明する。図2に示す波形図は、埋込磁石型同期電動機6が正常に同期運転している場合の各種波形の一例を示すものである。図2において、波形(a)はインバータ制御手段8の中で用いられている位相角(電気角位相)、波形(b)は座標変換手段11で得られるd−q座標電流のうちのq軸電流Iq、波形(c)は電流比較手段17で比較されるq軸電流Iqと基準電流Ith、波形(d)は電流比較手段17でq軸電流Iqと基準電流Ithとの比較結果である比較結果信号Siを示す。
【0053】
図3に示す波形図は埋込磁石型同期電動機6が正常に同期運転している場合で、特に埋込磁石型同期電動機6に接続された負荷の電動機一回転における変動が大である場合の各種波形の一例を示すものである。電動機一回転における負荷変動の大きなものとして、例えばレシプロ圧縮機などが挙げられる。
【0054】
図3において、波形(a)はインバータ制御手段8の中で用いられている位相角(電気角位相)、波形(b)は座標変換手段11で得られるd−q座標電流のうちのq軸電流Iq、波形(c)は電流比較手段17で比較されるq軸電流Iqと基準電流Ith、波形(d)は電流比較手段17でq軸電流Iqと基準電流Ithとの比較結果である比較結果信号Siを示す。
【0055】
図4に示す波形図は埋込磁石型同期電動機6が、脱調状態の場合の各種波形の一例を示すものである。図4において、波形(a)はインバータ制御手段8の中で用いられている位相角(電気角位相)、 波形(b)は座標変換手段11で得られるd−q座標電流のうちのq軸電流Iq、波形(c)は電流比較手段17で比較されるq軸電流Iqと基準電流Ith、波形(d)は電流比較手段17でq軸電流Iqと基準電流Ithとの比較結果である比較結果信号Siを示す。
【0056】
ここで、図2、図3、図4に示す波形図は埋込磁石型同期電動機6の例として回転子の極数が6極電動機における波形を示している。
【0057】
図2に示すように、同期電動機は同期運転時であれば、d軸電流Id(図示せず)およびq軸電流Iqはほぼ直流となり、Iq=Ithである。このため、基準電流Ithと比較した結果である比較結果信号Siは、基準電流Ithに応じて1となりほぼ変化しない。
【0058】
また、図3に示すように同期運転時であっても、電動機負荷の一回転中の変動が大きい場合(例えばレシプロ圧縮機の場合)、d軸電流Id(図示せず)およびq軸電流Iqに電動機一回転当たり一回の変動が生じる。つまり、電動機の回転周波数に対し、1倍の周波数成分がq軸電流Iqに生じる。この場合、電動機の一回転周期Tm(6極であるので電気角で3周期)にq軸電流Iqと基準電流Ithの交差する回数は2回(0から1に変化が1回、1から0に変化が1回)となる。
【0059】
一方、図4に示すような脱調状態であれば、d軸電流Id(図示せず)、q軸電流Iqに電動機一回転当たり回転子の極数Pm(図4では、Pm=6)と同じ数の変動が生じる。つまり、電動機の回転周波数に対し、6倍の周波数成分がq軸電流Iqに生じる。この場合、電動機の一回転周期Tm(6極であるので電気角で3周期)にq軸電流Iqと基準電流Ithの交差する回数は12回(0から1に変化が6回、1から0に変化が6回)となる。
【0060】
よって、埋込磁石型同期電動機6が脱調している場合はd軸電流Idおよびq軸電流Iqに電動機一回転周波数に相当する電気角周期中に電動機の極数Pmの2倍(比較結果信号Siにおいて0から1の変化と1から0への変化を含めて)の基準電流Ithとの交差が生じる。
【0061】
つまり図2、図3、図4で例に挙げた6極電動機においては、電動機1回転に相当する電気角3周期Tm中に6極の2倍の12回交差数Ncが生じる。
【0062】
以上から、脱調時と同期時とではd−q座標電流の基準電流に対して変動する頻度が異なり、特に脱調時は回転速度に関係なく電動機に応じてその頻度(基準電流との交差数)が一つに決まる。このため、この違いを検出することで脱調を検出することが可能となる。
【0063】
具体的には、所定時間Tm内のq軸電流Iqと基準電流Ithとの交差数Ncを脱調検出周期毎に計測し、交差数Ncが脱調時の交差数Nerrと一致した場合、脱調の可能性があるとし、Nc=Nerrとなる一致回数が第三の所定値である脱調検出回数NG_Level以上となった場合に脱調と判断する。これは、電流検出に含まれるノイズなどの影響により、脱調時以外にNc=Nerrとなる可能性を考慮し、交差数Ncと脱調交差数Nerrとが一致した回数が脱調検出回数NG_Level以上となった場合にのみ脱調と判断するようにする。
【0064】
ここで、一回転当たりの変動の大きな負荷を駆動する電動機において、電動機の回転速度が高くなるに連れて、電動機への負荷変動による影響が小となり、負荷変動に起因したd−q座標電流に生じる変動成分は減少する。この場合、低速運転時に図3のような電流波形であっても、高速運転になるに従い、徐々に図2のようなd−q座標電流に含まれる変動は少なくなる状態へと移行する。但し、高速運転時おいても脱調時のようなq軸電流Iqと基準電流Ithが電動機の極数Pmの倍数で交差することはない。
【0065】
一方、高速回転時の脱調では、q軸電流に生じる電流変動成分の大きさは低速運転時に比べ減少するものの、所定時間のq軸電流Iqと基準電流Ithが電動機の極数Pmの倍数で交差することは低速運転時と同様に生じる。このため、回転速度が変わっても同様の手法で脱調検出を行うことが可能である。
【0066】
ここで、図2と図4とを比較すると、一回転中における変動の小さい負荷を駆動する電動機では、図2に示すように同期運転時のd−q座標電流に生じる変動成分(交流成分)は小さく、図4に示す脱調時のd−q座標電流に生じる変動成分(交流成分)は同期時に比べて大い。このように一回転中における変動が小さい負荷を駆動する電動機であれば、d−q座標電流に含まれる交流成分を検出し、その交流成分の大きさが所定値を超えた場合に脱調とすることで、脱調検出を行ってもよい。
【0067】
しかし、図3に示すように一回転中における変動が大きい負荷を駆動する電動機では、同期運転中においてもd−q座標電流に大きな変動が生じる。運転条件によっては脱調時に生じるd−q座標電流の変動成分よりも同期運転時に生じるd−q軸電流の変動成分のほうが大となる場合がある。本発明による同期電動機の脱調検出装置を用いることで、このような、一回転中における変動の大きい負荷を駆動する電動機の場合でも精度良く脱調を検出することができる。
【0068】
ここで、図2〜図4のようにd軸電流Id(図示せず)およびq軸電流Iqに同期時と脱調時に差異が現れる現象について、図5〜図7を用いて以下に説明する。図5に永久磁石型同期電動機の回転子とインバータ制御手段8上の座標の関係を示す。図5において、回転子上でN極側をd軸とし、回転方向に90度進んだ位相をq軸とするのが一般的である。
【0069】
同期電動機の駆動に回転子の位置を検出する位置センサを用いない場合、インバータ制御手段8では回転子のd−q軸を正確に捉えることができないため、インバータ制御手段8側では、推測したd−q軸としてγ−δ軸を定義する。また、3相固定座標のU相から見たインバータ制御手段の位相角を電気角位相θeとする。
【0070】
同期電動機において特に埋込磁石型同期電動機のようなd軸とq軸のインダクタンスが異なる突極型電動機について説明する。同期運転状態では、電動機回転子とインバータの出力電圧位相とに同期が取れている状態である。このため回転子位相(d−q軸)とインバータの出力電圧位相(γ−δ軸)との関係が一定の位相差Δθを保った状態、つまりインバータの出力電圧位相γ−δ軸を基準とした場合、図6のようにγ−δ軸から見たインダクタンスLγ、Lδが一定の状態で動作していることとなり、d軸電流Id(Iγ)とq軸電流Iq(Iδ)はほぼ直流となる。
【0071】
但し、一回転中の変動が大きな負荷を駆動する電動機では、負荷変動に応じて回転むらが生じる。このためインバータの出力電圧位相γ−δ軸と回転子位相d−q軸とが一回転中に変動を起こすためd軸電流Id(Iγ)とq軸電流Iq(Iδ)に一回転毎の変動が発生する。
【0072】
一方、脱調状態では、回転子位相とインバータの出力電圧位相との関係が常に変動する状態、つまり、インバータの出力電圧位相γ−δ軸のみが回転し、回転子位相d−q軸は停止した状態となるため、図7のようにγ−δ軸から見たインダクタンスLγ、Lδが常に変動する状態となり、d軸電流Id(Iγ)およびq軸電流Iq(Iδ)が回転位相毎に変動し、それぞれに変動が発生する。このとき一回転中のインダクタンスの変化が電動機の回転子極数Pmと同じだけ発生する。図5の例では2極であるためLγとLδの変動は1回転2回となる。
【0073】
このように、回転子一回転中のd−q座標電流Id、Iqの変動数を検出することで、回転子の動作状態を把握することができ、これにより同期電動機の脱調が検出可能となる。
【0074】
ここで、第一の所定値である基準電流Ithの設定方法の一例を以下に示す。以上に説明したように、本発明による脱調検出では、q軸電流Iqと基準電流Ithの交差数から脱調を検出する方法である。このため、基準電流Ithはq軸電流の変動の中心付近に設定すれば良い。例えば、q軸電流Iqの平均値Iq_fil、またはq軸電流の直流成分Iq_dcとすればよい。q軸電流をローパスフィルタなどを用いてq軸電流の直流成分あるいは低周波数成分を抽出し基準電流Ithとすれば良い。直流に近い成分のみを取り出すにはローパスフィルタの遮断周波数として、例えば1.5Hzとすればよい。
【0075】
このように、基準電流Ithを演算で求める場合の制御ブロック図を図8に示す。図8は図1の脱調検出手段16のみを取り出したものを示しており、符号の同じものは図1と同じ手段を示す。図8のように電流比較手段17に用いる基準電流Ithは、基準電流演算手段21によりq軸電流Iqの平均値Iq_fil、またはq軸電流の直流成分Iq_dcが演算により求められる。
【0076】
また、第二の所定値である脱調交差数Nerr及び交差数計測の所定時間Tmの設定方法の一例を以下に示す。以上の説明より、脱調時は回転子一回転当たりに電動機の極数Pmの2倍の交差数Ncが生じる。以上より所定時間Tmは回転子一回転当たりの電気角周期Teのn倍とし、脱調交差数Nerrは電動機極数Pmの2n倍とすればよい。
【0077】
ただし、所定時間Tmを回転子一回転当たりの電気角周期Teのn倍とした場合、回転子の回転速度によりTmの値は異なることになる。これにより、交差数Ncは所定時間Tmの周期で計測・更新されることとなる。前記した例で示したように、6極電動機(Pm=6)を対象とするのであれば、所定時間Tmを回転子一回転(n=1)の時間(回転周波数により異なる)とし、このときの脱調交差数はNerr=Pm×2×n=6×2×1=12とすればよい。
【0078】
交差数計測の際に比較結果信号Siの変化のうち、立下り(1から0に変化)または立上がり(0から1へ変化)の少なくともどちらか一方を用いて脱調交差数を計測してもよい。この場合、所定時間Tmを回転子一回転当たりの電気角周期Teのn倍とすれば、脱調交差数Nerrは電動機極数Pmのn倍とすればよい。前記した例に示したように6極電動機(Pm=6)を対象とするのであれば、所定時間Tmを回転子一回転(n=1)の時間(回転周波数により異なる)とし、このときの脱調交差数はNerr=Pm×n=6×1=6とすればよい。以上から脱調交差数Nerrおよび所定時間(交差数計測時間)Tmは電動機の極数に基づき設定すればよい。
【0079】
ここで、図4に示す波形において、交差数計測時間(所定時間Tm)の計測開始時(あるいは計測終了時)がq軸電流(あるいはd軸電流)と基準電流Ithの交差時とほぼ一致した場合、交差数が適切に検出できない場合がある。このような場合は、前記のように比較結果信号Siの変化のうち、所定時間Tm内の立下り(1から0に変化)または立上がり(0から1へ変化)の数をそれぞれ測定し、少なくともどちらか一方がNerrと一致した場合に交差数が脱調交差数と一致Nc=Nerrと判断し、一致回数Neqを1増加させればよい。
【0080】
また、第三の所定値である脱調検出回数NG_Levelの設定方法の一例を以下に示す。前述したように交差数Ncと脱調交差数Nerrがノイズ等の影響ににより一致する可能性がある。これを回避するため、Nc=Nerrが脱調検出回数NG_Level以上となった場合に脱調を検出するようにする。脱調時は脱調検出周期毎に連続してNc=Nerrとなるため、Nc=Nerrが連続して脱調検出NG_Level回以上発生した場合に脱調とすればよい。
【0081】
誤検出を防ぐためにも連続発生時のみとしたほうが良い。その方法として、例えば前回計測した所定時間Tm内の交差数Ncが脱調交差数Nerrと一致Nc=Nerrで、今回もNc=Nerrであれば、一致回数Neqに1を加える。前回がNc=Nerrで今回Nc≠Nerrの場合は一致回数Neqを0にクリアすればよい。
【0082】
脱調検出回数NG_Levelの設定例を以下に示す。ノイズによる誤検出回避のため、最低でもNG_Level≧2とする。また、NG_Levelを大きくすると脱調が検出されるまでの時間が長くなることとなる。電動機の最低回転速度を脱調状態が継続することで電動機や電動機の負荷となる装置が破損する可能性や脱調により振動や騒音が生じる可能性がある場合は数秒単位で脱調を検出する必要がある。6極電動機で所定時間Tmを回転子一回転の時間とし、回転子の最低回転数が20Hzである場合、脱調を5秒以内で検出するためにNG_Level≦100とすればよい。
【0083】
また、図2に示すように、電動機の負荷において電動機の一回転中の負荷変動がほとんどない場合は、d軸電流(図示せず)Idおよびq軸電流Iqには理想的には変動が生じない。しかし、実際に電動機を駆動する場合は、Id、Iqに変動成分(交流成分)が重畳する。この場合、基準電流Ithと、様々な外乱によりId、Iqが頻繁に交差することとなり、交差数Ncが乱数的に変化する。この場合脱調条件である脱調交差数Nerrと交差数Ncが一致する可能性は極めて低い。また、たとえNc=Nerrとなったとしても、これが連続して発生しその回数が脱調検出回数NG_Level以上となることはさらに低くなる。このようにNc=Nerrとなることが連続してNG_Level以上発生するときのみ脱調とすることで脱調検出の信頼性を上げることができる。
【0084】
また、d−q座標電流Id、Iqに含まれる交流成分において、電動機の一回転中の負荷変動による変動成分や脱調時に発生する変動成分以外に、PWMによる電流の歪や、永久磁石の着磁波形の歪などの外乱により発生する変動成分が含まれることがある。電流比較手段17でd−q座標電流Id、Iqと基準電流Ithを比較する際にこれらのノイズによって交差が生じる場合がある。この場合、交差数の検出精度が低下するため脱調検出能力も低下する。このような場合は、基準電流Ithと比較するd−q座標電流Id、Iqに対しフィルタ処理を行い、ノイズ成分を除去することで検出精度の低下を抑制すればよい。
【0085】
このような場合、脱調検出に必要な周波数成分は回転周波数の極数倍なので、脱調検出に必要となる電動機の最大回転速度の極数倍の周波数成分を超える成分を除去することで、ノイズによる検出精度の低下を抑制すればよい。例えば、6極の電動機に対して、回転子の最大回転速度が80Hzの場合、80×6=480Hzを超える周波数成分をカットするようなローパスフィルタとすればよい。
【0086】
このようにのd−q座標電流Id、Iqに対しノイズ除去(ローパスフィルタ)を構成した場合の制御ブロック図を図9に示す。図9は図1の脱調検出手段16のみを取り出したものを示しており、符号の同じものは図1と同じ手段を示す。図9のように電流比較手段17で用いるq軸電流Iqに対しノイズ除去手段22(ローパスフィルタ)を用いて脱調検出に関係のない周波数成分(高周波成分)を除去した値Iq_filを用いることで、ノイズに対する脱調検出精度の低下を抑制すればよい。
【0087】
本発明による脱調検出の流れを、図10を用いて説明する。図10において、STP1は脱調検出処理を開始する脱調検出開始ステップ、STP2は脱調検出の周期を管理する脱調検出周期判断ステップである。STP3は埋込磁石型同期電動機6に流入する電流を検出する相電流検出ステップであり、図1の相電流検出手段7a,7bで行う動作に相当する。STP4は3相分の相電流を演算する相電流演算ステップであり、図1の相電流演算手段10で行う動作に相当する。STP5は3相電流をd−q座標電流に変換する座標変換ステップであり、図1の座標変換手段11で行う動作に相当する。
【0088】
STP6はd−q座標電流と第一の所定値である基準電流とを比較し、比較結果出力信号を出力する電流比較ステップであり、図1の電流比較手段17で行う動作に相当する。電流比較ステップSTP6は、図10のようには構成される。電流比較ステップSTP6の内部でSTP6aはd−q座標電流と第一の所定値である基準電流Ithとを比較する電流比較判断ステップ、STP6bは電流比較ステップSTP6aの結果に基づき比較結果信号を出力する比較結果信号出力ステップ1、STP6cは電流比較判断ステップSTP6aの結果に基づき比較結果信号を出力する比較結果信号出力ステップ2である。
【0089】
STP7は電流比較ステップSTP6ので得られる比較結果信号から所定時間におけるd−q座標電流と第一の所定値である基準電流Ithとの交差数を計測する交差数計測ステップであり、図1の交差数計測手段18で行う動作に相当する。交差数計測ステップSTP7は、図10のように構成される。交差数計測ステップSTP7の内部において、STP7aは電流比較ステップSTP6で得られる比較結果出力信号からd−q座標電流と第一の所定値である基準電流Ithの交差を検出する交差検出ステップ、STP7bは交差検出ステップSTP7aで交差が検出された場合に交差数をカウントする交差数カウントステップ、STP7cは交差数の計測時間を更新する計測時間更新ステップ、STP7dは現在の計測時間が所定時間内か否かを計測する所定時間計測ステップである。
【0090】
STP8は所定時間内の交差数が第二の所定値である脱調交差回数と一致する回数を計測する一致回数計測ステップであり、図1の一致回数計測手段19で行う動作に相当する。一致回数計測ステップSTP8は、図10のように構成される。一致回数計測ステップSTP8において、STP8aは交差数Ncと第二の所定値である脱調交差数Nerrを比較する交差数比較ステップ、STP8bは交差数比較ステップSTP8aの結果が一致であった場合、一致回数をカウントする一致回数カウントステップ、STP8cは交差数比較ステップSTP8aの結果が一致でなかった場合に脱調検出に用いた変数をクリアする変数クリアステップである。
【0091】
STP9は一致回数計測ステップSTP8で得られた一致回数を第三の所定値である脱調検出回数Nerrと比較し脱調の発生の有り無しを検出する一致回数比較ステップであり、図1の一致回数比較手段20での処理に相当する。一致回数比較ステップSTP9は、図10のように構成される。一致回数比較ステップSTP9において、STP9aは一致回数計測ステップSTP8で得られた一致回数を第三の所定値である脱調検出回数Nerrと比較し脱調か同期かを判断する一致回数比較判断ステップ、STP9bは一致回数比較判断ステップSTP9aでの結果が同期であった場合に脱調検出に使用した変数をクリアする変数クリアステップである。
【0092】
STP10は一致回数比較ステップの結果が脱調であった場合PWMの出力を停止させるPWM出力停止ステップ、STP11は脱調異常としてインバータを停止される停止ステップである。
【0093】
脱調検出の流れは以下のようになる。STP1の脱調検出開始ステップで、電動機の駆動制御とともに脱調検出処理が開始される。STP2の脱調検出周期判断ステップでは脱調検出周期Tsを管理し脱調検出周期Ts毎に、STP3以降の脱調検出処理を実行する。STP3の相電流検出ステップでは電流検出手段7a、7bにより埋込磁石型同期電動機6に流入する電流の少なくとも2相分例えばU相電流Iu、V相電流Ivを検出する。STP4の相電流演算ステップでは相電流検出ステップSTP3で得られた相電流Iu、Ivから相電流演算手段10より3相分の相電流Iu、Iv、Iwを演算する。STP5の座標変換ステップは相電流演算ステップSTP4で得られた3相電流Iu、Iv、Iwを座標変換手段11によりd−q座標電流Id、Iqに座標変換する。ここで、相電流演算ステップSTP4は省略可能であり、電流検出ステップSTP3から座標変換ステップSTP5へ進むことも可能である。
【0094】
STP6の電流比較ステップでは、電流比較手段17にて座標変換ステップSTP4で得られたd−q座標電流Id、Iqを第一の所定値である基準電流Ithと比較し比較結果信号Siを求める。詳しくは、STP6aの電流比較判断ステップで、d−q座標電流の例えばq軸電流Iqと第一の所定値による基準電流Ithと大小を比較する。Iq>Ithの場合STP6bに進みそれ以外の場合はSTP6cに進む。STP6bの比較結果信号出力ステップ1では比較結果信号SiをSi=1と出力し、STP6cの比較結果信号出力ステップ2では比較結果信号SiをSi=0と出力する。
【0095】
STP7の交差数計測ステップでは、交差数計測手段18にて、電流比較ステップSTP6で得られた比較結果信号Siより所定時間Tmのd−q座標電流Id,Iqと基準電流Ithの交差数Ncを計測する。詳しくはSTP7aの交差検出ステップで比較結果信号Siの変化を検出する。比較結果信号Siが0から1(立上がり)あるいは1から0(立下り)と変化した場合、STP7bに進み、変化しなかった場合(0から0あるいは1から1)STP7cに進む。STP7bの交差数カウントステップでは、比較結果信号Siに変化があったとして、交差数Ncに1を加えSTP7cに進む。STP7cの計測時間更新ステップでは、計測時間tkに脱調検出周期Tsを加え計測時間tkを更新する。STP7dの所定時間計測ステップは計測時間tkが所定時間Tmになったか否かを判断し、所定時間Tmを経過した場合は、STP8の一致回数計測ステップに進む。所定時間Tmを経過していない場合はSTP2の脱調検出周期判断ステップに戻る。
【0096】
STP8の一致回数計測ステップでは、一致回数計測手段19にて交差数計測ステップSTP7で得られた所定時間Tmの交差回数Ncが第二の所定値である脱調検出回数Nerrと一致した回数Neqを脱調検出周期Ts毎に計測する。詳しくは、STP8aの交差数比較ステップでは、交差数計測ステップSTP7で得られた所定時間Tmの交差回数Ncと第二の所定値である脱調検出回数Nerrとを比較する。この結果Nc=Nerrであった場合、STP8bに進み、Nc≠Nerrの場合STP8cに進む。STP8bの一致回数カウントステップでは、交差回数Ncと脱調検出回数Nerrの一致回数Neqに1を加える。STP8cの変数クリアステップでは、Nc≠Nerrの結果から脱調の可能性はないとし、次の所定時間の脱調検出処理を行うため計測時間tk、交差数Ncを0にクリアし、STP2の脱調検出周期判断ステップに戻る。STP8cで一致回数Neqも同時にクリアするとNc=Nerrが所定時間Tm毎に連続して発生したときのみ脱調検出を行うようにすることができる。
【0097】
STP9の一致回数比較ステップでは、一致回数比較手段20にて一致回数計測ステップSTP8で得られた一致回数Neqと第三の所定値である脱調検出回数NG_Levelを比較し、脱調か同期かを判断する。詳しくは一致回数比較判断ステップSTP9aにて一致回数計測ステップSTP8で得られた一致回数Neqと第三の所定値である脱調検出回数NG_Levelを比較しNeq≧NG_Levelとなった場合に脱調と判断し、STP10に進む。これ以外の場合は、同期運転と判断し、STP9b進む。変数クリアステップSTP9bでは、一致回数比較判断ステップSTP9aにて同期と判断された場合、次の所定時間の脱調検出処理を行うため計測時間tk、交差数Ncを0にクリアし、STP2の脱調検出周期判断ステップに戻る。
【0098】
STP10のPWM停止ステップでは、一致回数比較ステップSTP9にて脱調を検出した場合にインバータの電圧出力を停止するため、PWM信号発生手段14のPWM信号出力を停止させる。
【0099】
STP11のインバータ停止ステップでは、インバータ制御手段8の動作も停止させ、異常表示をするなどしてインバータ装置の動作を停止させる。
【0100】
ここで、以上で説明した脱調検出の流れにおいては、所定時間Tmの計測に脱調検出周期Tsを用いて求める手法について示しているが、図2または図3または図4に示したように、インバータ制御手段8で用いている電気角位相θeを用いても同様に所定時間Tmを求めることができる。図2から図4までの例のように6極の電動機であれば計測開始からの電気角位相が360×3=1080度となったときがTmに相当することとなる。
【0101】
また、図10に示した脱調検出の流れと異なる脱調検出の流れを図11に示す。図11に示す脱調検出の流れにおいては、図10の特に電流比較ステップSTP6および交差数計測ステップSTP7の別方法について説明するものである。図11において、図10と同じ記号のステップは同一の処理を示す。このため、図10と同一記号の処理については説明を省略する。
【0102】
図11において、STP12は図10でSTP6に相当する電流比較ステップである。電流比較ステップSTP12において、STP12aは座標変換ステップSTP5で得られたd−q座標電流と第一の所定値である基準電流Ithとを比較する電流比較判断ステップ、STP12bは電流比較判断ステップ12aの結果に基づき比較結果信号を出力する比較結果信号出力ステップ1、STP12cは電流比較判断ステップSTP12aの結果に基づき比較結果出力信号を出力する比較結果信号出力ステップ2である。
【0103】
STP13は電流比較ステップSTP12で得られる比較結果信号から所定時間におけるd−q座標電流と第一の所定値である基準電流Ithとの交差数を計測する交差数計測手段である。交差数計測手段STP13において、STP13aは電流比較ステップSTP12で得られた出力結果信号と交差数を加え交差数をカウントする交差数カウントステップ、STP12bは交差数の計測時間を更新する計測時間更新ステップ、STP12cは現在の計測時間が所定時間内か否かを計測する所定時間計測手段である。
【0104】
図11に示す脱調検出法の流れについて説明する。図10と同一記号の処理は動作の流れも同一であるため説明は省略する。STP12の電流比較ステップでは電流比較手段17にて座標変換ステップSTP5で得られたd−q座標電流Id、Iqを第一の所定値である基準電流Ithと比較し比較結果信号Siを求める。詳しくは、STP6aの電流比較ステップでd−q座標電流の例えばq軸電流Iqと第一の所定値による基準電流Ithと大小を比較する。例えばIq−Ithの値を求める。1周期前の脱調検出周期時に求めたIq−Ithの値の符号が正から負あるいは負から正と変化していた場合、q軸電流が第一の所定値である基準電流Ithを交差したこととなるのでSTP12bに進み、それ以外の場合はSTP12cに進む。STP12bの比較結果信号出力ステップ1では比較結果信号SiをSi=1と出力し、STP12cの比較結果信号出力ステップ2では比較結果信号SiをSi=0と出力する。
【0105】
STP13の交差数計測ステップでは、電流比較ステップSTP12で得られた比較結果信号Siより所定時間Tm内のd−q座標電流Id,Iqと基準電流Ithの交差数Ncを計測する。詳しくはSTP13aの交差数カウントステップで比較結果信号Siを交差数Ncに加え交差数Ncを更新する。STP13bの計測時間更新ステップでは、計測時間tkに脱調検出周期Tsを加え計測時間tkを更新する。STP13cの所定時間計測ステップは計測時間tkが所定時間Tmになったか否かを判断し、所定時間Tmを経過した場合は、STP8の一致回数計測ステップに進む。所定時間Tmを経過していない場合はSTP2の脱調検出周期判断ステップに戻る。一致回数計測ステップSTP8以降は図10の場合と同様である。
【0106】
以上のように正常運転時と脱調時とのd−q座標電流に生じる変動を基準電流Ithに対する交差数Ncから同期電動機の脱調を検出するようにしたため、従来の過電流による脱調検出法や、d−q座標電流の大きさによる脱調検出に比べより精度良く脱調検出が可能である。また、一回転中における負荷変動の大きい負荷を駆動する電動機であっても精度良く脱調検出が可能となる。
【0107】
また、電動機に流入する電流の出力トルク成分に相当するq軸電流Iqは出力トルクに比例するためq軸電流Iqのレベルで脱調を検出すると誤検出を起こす可能性があり脱調レベルの設定が困難になる。そこでIqの変動の頻度を検出することで、負荷トルクによらず脱調の検出を精度良く行うことが可能となる。
【0108】
また、電動機モデルや特定周波数成分抽出のためのFFT演算のような脱調検出のための複雑な演算は不要であり、単に、インバータ制御手段8で用いられるd−q座標電流をそのまま利用し、基準電圧との交差数を計測するだけの簡単な処理ですむ。このため、インバータ制御手段8に用いるマイコンに高性能な演算能力を必要としないため、安価なマイコンを用いることができる。これにより装置の低コスト化が可能となる。
【0109】
また、本発明による同期電動機の脱調検出装置をインバータ装置に組み込むことで、精度良く脱調検出が可能な信頼性の高い安価なインバータ装置が実現できる。
【0110】
冷凍空調装置において、圧縮機用電動機が脱調を継続すると冷凍空調装置の能力が得られず、また、圧縮機や電動機、冷媒配管、インバータ回路などに損傷を与えるなど装置に悪影響を与える場合がある。本発明による同期電動機の脱調検出装置を冷凍空調装置の圧縮機駆動用インバータに搭載することで、圧縮機の脱調を精度良く検出することが可能となり、前記のような冷凍空調装置に対する悪影響を抑制することが可能となる。これにより冷凍空調装置の信頼性を向上することが可能となる。
【0111】
また、本発明による同期電動機の脱調検出装置を冷凍空調装置の圧縮機駆動用インバータに搭載することで、一回転当たりの変動が大きな負荷を駆動する電動機においても精度良く脱調検出が可能となるため、レシプロ圧縮機のような一回転当たりの負荷変動が大きな圧縮機に対しても精度のよい脱調検出が行える。負荷変動の大きなレシプロ圧縮機から負荷変動の小さなスクロール圧縮機まで幅広い負荷に対して脱調検出が精度良く行うことが可能となる。電動機負荷によらず信頼性の高い冷凍空調機のインバータ装置を実現できる。
【0112】
以上に示した実施の形態1では、同期電動機として埋込磁石型同期電動機(IPMSM)の例を示したが、同様に用いられる他の同期電動機として、ブラシレスDCモータ(BLDCM)、リラクタンスモータ(RM)、シンクロナスリラクタンスモータ(SyRM)、スイッチドリラクタンスモータ(SRM)などのd軸とq軸のインダクタンスに差がある電動機であれば同様の構成にて脱調検出が可能である。
【0113】
また、以上に示した実施の形態1では脱調検出に用いたパラメータをd−q座標電流のq軸電流として説明したが、d軸電流や、d軸電流およびq軸電流より求められた別の値を用いても同様の脱調検出が行える。
【0114】
【発明の効果】
この発明の請求項1に係る同期電動機の脱調検出装置は、同期電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段により得られた電流を励磁電流成分であるd軸電流と、トルク電流成分であるq軸電流のd−q座標電流に変換する座標変換手段と、座標変換手段により得られたd−q座標電流の少なくとも一方を第一の所定値と比較する電流比較手段と、d−q座標電流と第一の所定値とが所定時間内に交差する数を計測する交差数計測手段と、交差数計測手段により計測された交差数と第二の所定値との一致回数を計測する一致回数計測手段と、一致回数計測手段で計測された一致回数と第三の所定値を比較し一致回数が第三の所定値以上となった場合に脱調を検出する一致回数比較手段と、を備えたことにより、同期電動機の脱調を簡単な構成で、精度良く検出することが可能となる。また、一回転中の変動の大きな負荷を駆動する同期電動機に対しても精度良く脱調を検出することが可能となる。
【0115】
また、この発明の請求項2に係る同期電動機の脱調検出装置は、第一の所定値をd−q座標電流の変動の中心付近に設定したことにより、同期電動機の運転状態に応じて脱調検出のための基準信号を容易に求めることが可能となり、簡単な構成で精度良く脱調を検出することが可能となる。
【0116】
また、この発明の請求項3に係る同期電動機の脱調検出装置は、第一の所定値をd−q座標電流に含まれる直流成分としたことにより、同期電動機の運転状態に応じて脱調検出のための基準信号を容易に求めることが可能となり、簡単な構成で精度良く脱調を検出することが可能となる。
【0117】
また、この発明の請求項4に係る同期電動機の脱調検出装置は、第一の所定値をd−q座標電流の平均値としたことにより、同期電動機の運転状態に応じて脱調検出のための基準信号を容易に求めることが可能となり、簡単な構成で精度良く脱調を検出することが可能となる。
【0118】
また、この発明の請求項5に係る同期電動機の脱調検出装置は、ローパスフィルタを用いてd−q座標電流の直流に近い成分のみを取り出して第一の所定値とすることにより、同期電動機の運転状態に応じて脱調検出のための基準信号を容易に求めることが可能となり、簡単な構成で精度良く脱調を検出することが可能となる。
【0119】
また、この発明の請求項6に係る同期電動機の脱調検出装置は、ローパスフィルタの遮断周波数を1.5Hzとしたことにより、同期電動機の運転状態に応じて脱調検出のための基準信号を容易に求めることが可能となり、簡単な構成で精度良く脱調を検出することが可能となる。
【0120】
また、この発明の請求項7に係る同期電動機の脱調検出装置は、交差数計測手段において、所定時間内にd−q座標電流が第一の所定値を小から大となるように交差する場合と、大から小になるように交差する場合の少なくとも一方の交差数を計測することにより、検出電流に含まれるノイズの影響があっても良好に脱調を検出することが可能となり、信頼性の高い、脱調検出装置が可能となる。
【0121】
また、この発明の請求項8に係る同期電動機の脱調検出装置は、交差数計測手段において、所定時間内にd−q座標電流が第一の所定値を小から大となるように交差する場合と、大から小になるように交差する場合の交差数をそれぞれ計測し、一致回数計測手段において、少なくともいずれか一方の交差数が第二の所定値と一致した場合に、一致と判断することにより、交差数計測時間の計測開始時あるいは計測終了時がd−q座標電流と基準電流の交差時とほぼ一致した場合でも、交差数を適切に検出できる。
【0122】
また、この発明の請求項9に係る同期電動機の脱調検出装置は、一致回数計測手段において交差数と第二の所定値とが連続して一致した回数を一致回数とすることにより、検出電流に含まれるノイズの影響による脱調の誤検出を抑制することが可能となり、信頼性の高い脱調検出装置が得られる。
【0123】
また、この発明の請求項10に係る同期電動機の脱調検出装置は、交差数計測手段が交差数を計測する所定時間を電動機の1回転周期の倍数としたことにより、インバータ接続対象となる同期電動機が変更になった場合においても、電動機の定数がわかれば容易に交差数を計測する所定時間を設定することが可能となり、簡単な構成で精度良く脱調を検出することが可能となる。
【0124】
また、この発明の請求項11に係る同期電動機の脱調検出装置は、一致回数計測手段において、交差数と比較を行う第二の所定値は電動機の極数の倍数としたことにより、電動機の定数がわかれば容易に脱調検出の基準となる脱調交差数である第二の所定値を設定することが可能となり、簡単な構成で精度良く脱調を検出することが可能となる。
【0125】
また、この発明の請求項12に係る同期電動機の脱調検出装置は、一致回数比較手段における第三の所定値を、2回以上、最大は脱調を数秒で検出できる回数としたことにより、ノイズによる誤検出を回避できると共に、同期電動機や同期電動機の負荷となる装置の破損、脱調による振動や騒音を防止できる。
【0126】
また、この発明の請求項13に係る同期電動機の脱調検出装置は、電流比較手段において比較に用いるd−q座標電流は高周波成分を除去した後に第一の所定値と比較することにより、検出電流に含まれるノイズの影響により脱調の誤検出を抑制することが可能となり、信頼性の高い、脱調検出装置が可能となる。
【0127】
また、この発明の請求項14に係る同期電動機の脱調検出装置は、同期電動機の最大回転速度の極数倍の周波数を超える高周波成分を除去することにより、検出電流に含まれるノイズの影響により脱調の誤検出を抑制することが可能となり、信頼性の高い、脱調検出装置が可能となる。
【0128】
この発明の請求項15に係る冷凍空調装置用圧縮機の駆動装置は、請求項1〜14の何れかに記載の同期電動機の脱調検出装置を搭載したことにより、圧縮機の脱調を精度良く検出することができ、冷凍空調装置に対する悪影響を抑制することが可能となる。これにより冷凍空調装置の信頼性を向上することができる。
【0129】
この発明の請求項16に係る同期電動機の脱調検出方法は、同期電動機に流れる電流を検出する電流検出ステップと、電流検出手段により得られた電流を励磁電流成分であるd軸電流とトルク電流成分q軸電流のd−q座標電流に変換する座標変換ステップと、座標変換ステップにより得られたd−q座標電流の少なくとも一方を第一の所定値と比較するd−q座標電流比較ステップと、d−q座標電流と第一の所定値とが所定時間内に交差する数を計測する交差数計測ステップと、交差数計測ステップより得られた交差数と第二の所定値の一致回数を計測する一致回数計測ステップと、一致回数計測ステップで計測された一致回数と第三の所定値を比較し一致回数が第三の所定値以上となった場合に脱調を検出する一致回数比較ステップと、を備えたことにより、同期電動機の脱調を簡単な構成で、精度良く検出することが可能となる。また、一回転中の変動の大きな負荷を駆動する同期電動機に対しても精度良く脱調を検出することが可能となる。
【0130】
また、この発明の請求項17に係る同期電動機の脱調検出方法は、d−q座標電流比較ステップでは、d−q座標電流の少なくとも一方と第一の所定値との大小を比較して、d−q座標電流の少なくとも一方が第一の所定値より大きい場合と小さい場合の比較結果信号を出力し、交差数計測ステップでは比較結果信号の変化を検出することにより、同期電動機の脱調を簡単な構成で、精度良く検出することが可能となる。
【0131】
また、この発明の請求項18に係る同期電動機の脱調検出方法は、d−q座標電流比較ステップでは、d−q座標電流の少なくとも一方と第一の所定値との差を求め、その差の符号が正から負または負から正に変化した場合と変化しない場合の比較結果信号を出力し、交差数計測ステップでは比較結果信号から交差数を検出することにより、同期電動機の脱調を簡単な構成で、精度良く検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1を示す図で、同期電動機のインバータ装置の構成を示す図である。
【図2】 実施の形態1を示す図で、同期運転時の各種波形を説明する図である。
【図3】 実施の形態1を示す図で、同期運転時で負荷変動の大きな負荷を駆動した際の各種波形を説明する図である。
【図4】 実施の形態1を示す図で、脱調時の各種波形を説明する図である。
【図5】 実施の形態1を示す図で、電動機の回転子とインバータ制御手段出で用いる電気角位相および座標の関係を示す図である。
【図6】 実施の形態1を示す図で、同期時のインバータ制御手段を基準とした場合のインダクタンスと電流の変化を示す図である。
【図7】 実施の形態1を示す図で、脱調時のインバータ制御手段を基準とした場合のインダクタンスと電流の変化を示す図である。
【図8】 実施の形態1を示す図で、脱調検出手段の構成を示す図である。
【図9】 実施の形態1を示す図で、脱調検出手段の別構成を示す図である。
【図10】 実施の形態1を示す図で、脱調検出処理の流れ図である。
【図11】 実施の形態1を示す図で、脱調検出処理の別の流れ図である。
【図12】 従来の同期電動機の脱調検出装置の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 直流電源部、2 インバータ装置、3 スイッチング素子、3a U相上側スイッチング素子、3b V相上側スイッチング素子、3c W相上側スイッチング素子、3d U相下側スイッチング素子、3e V相下側スイッチング素子、3f W相下側スイッチング素子、4 還流ダイオード、5 インバータ主回路、6 埋込磁石型同期電動機、7a,7b 電流検出手段、8 インバータ制御手段、9 電動機駆動手段、10 相電流演算手段、11 座標座標変換手段、12 電圧指令値演算手段、13 出力電圧ベクトル演算手段、14 PWM信号発生手段、15 直流電圧検出手段、16 脱調検出手段、17 電流比較手段、18 交差数計測手段、19 一致回数計測手段、20 一致回数比較手段、21 基準電流演算手段、22 ノイズ除去手段、30 過電流検出手段。
Claims (18)
- 回転子位置を検出するための位置センサを用いずに同期電動機を駆動するインバータ装置において、
前記同期電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段により得られた電流を励磁電流成分であるd軸電流と、トルク電流成分であるq軸電流のd−q座標電流に変換する座標変換手段と、
前記座標変換手段により得られたd−q座標電流の少なくとも一方を第一の所定値と比較する電流比較手段と、
前記d−q座標電流と前記第一の所定値とが所定時間内に交差する数を計測する交差数計測手段と、
前記交差数計測手段により計測された交差数と第二の所定値との一致回数を計測する一致回数計測手段と、
前記一致回数計測手段で計測された一致回数と第三の所定値を比較し一致回数が第三の所定値以上となった場合に脱調を検出する一致回数比較手段と、
を備えたことを特徴とする同期電動機の脱調検出装置。 - 前記第一の所定値をd−q座標電流の変動の中心付近に設定したことを特徴とする請求項1に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 前記第一の所定値をd−q座標電流に含まれる直流成分としたことを特徴とする請求項2に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 前記第一の所定値をd−q座標電流の平均値としたことを特徴とする請求項2に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- ローパスフィルタを用いてd−q座標電流の直流に近い成分のみを取り出して前記第一の所定値とすることを特徴とする請求項2に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 前記ローパスフィルタの遮断周波数を1.5Hzとしたことを特徴とする請求項5に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 前記交差数計測手段において、所定時間内にd−q座標電流が第一の所定値を小から大となるように交差する場合と、大から小になるように交差する場合の少なくとも一方の交差数を計測することを特徴とする請求項1に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 前記交差数計測手段において、所定時間内にd−q座標電流が第一の所定値を小から大となるように交差する場合と、大から小になるように交差する場合の交差数をそれぞれ計測し、前記一致回数計測手段において、少なくともいずれか一方の交差数が第二の所定値と一致した場合に、一致と判断することを特徴とする請求項1に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 前記一致回数計測手段において前記交差数と前記第二の所定値とが連続して一致した回数を一致回数とすることを特徴とする請求項1に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 前記交差数計測手段が交差数を計測する所定時間を電動機の1回転周期の倍数としたことを特徴とする請求項1に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 前記一致回数計測手段において、交差数と比較を行う第二の所定値は電動機の極数の倍数としたことを特徴とする請求項1に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 前記一致回数比較手段における第三の所定値を、2回以上、最大は脱調を数秒で検出できる回数としたことを特徴とする請求項1に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 前記電流比較手段において比較に用いるd−q座標電流は高周波成分を除去した後に前記第一の所定値と比較することを特徴とする請求項1に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 同期電動機の最大回転速度の極数倍の周波数を超える高周波成分を除去することを特徴とする請求項13に記載の同期電動機の脱調検出装置。
- 請求項1〜14の何れかに記載の同期電動機の脱調検出装置を搭載したことを特徴とする冷凍空調装置用圧縮機の駆動装置。
- 回転子位置を検出するための位置センサを用いずに同期電動機を駆動するインバータ装置において、
前記同期電動機に流れる電流を検出する電流検出ステップと、
前記電流検出手段により得られた電流を励磁電流成分であるd軸電流とトルク電流成分q軸電流のd−q座標電流に変換する座標変換ステップと、
前記座標変換ステップにより得られたd−q座標電流の少なくとも一方を第一の所定値と比較するd−q座標電流比較ステップと、
前記d−q座標電流と前記第一の所定値とが所定時間内に交差する数を計測する交差数計測ステップと、
前記交差数計測ステップより得られた交差数と第二の所定値の一致回数を計測する一致回数計測ステップと、
前記一致回数計測ステップで計測された一致回数と第三の所定値を比較し一致回数が第三の所定値以上となった場合に脱調を検出する一致回数比較ステップと、
を備えたことを特徴とする同期電動機の脱調検出方法。 - 前記d−q座標電流比較ステップでは、d−q座標電流の少なくとも一方と第一の所定値との大小を比較して、前記d−q座標電流の少なくとも一方が前記第一の所定値より大きい場合と小さい場合の比較結果信号を出力し、前記交差数計測ステップでは前記比較結果信号の変化を検出することを特徴とする請求項16に記載の同期電動機の脱調検出方法。
- 前記d−q座標電流比較ステップでは、d−q座標電流の少なくとも一方と第一の所定値との差を求め、その差の符号が正から負または負から正に変化した場合と変化しない場合の比較結果信号を出力し、前記交差数計測ステップでは前記比較結果信号から交差数を検出することを特徴とする請求項16に記載の同期電動機の脱調検出方法。
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