JP3726462B2 - 車両の制動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキペダルが操作されたときに必要に応じ自動的に制動力を増大させ得る車両の制動制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
車両を走行中、ブレーキペダルが急速度で踏み込まれたとき、又はブレーキペダルが深く踏み込まれたときに、自動的に制動力を増大させて運転者のブレーキペダル操作を補助する制動制御装置が知られている。これは、ブレーキアシスト制御と呼ばれるものであり、一般的にバキュームブースタの倍圧機能を制御することが行なわれている。
【0003】
例えば特開平8−230634号公報には、アンチスキッド(ABS)制御用のポンプを用いてブレーキアシスト制御を行なう技術が開示されている。同公報では、バキュームブースタを完全に又は部分的に節約することを目的として、アンチロック制御/トラクション制御系の制御方法及び装置が提案されている。また、同公報では、マスタシリンダと各車輪のホイールシリンダとの間が二系統に分割され、その各々の液圧路に戻しポンプが配設されている。尚、「戻しポンプ及び/又は切換え弁及び/又は吸込み弁の制御を、少くとも、ブレーキペダルの作動を表す信号に依存して行なうことにより解決され」と記載されているが(括弧内の用語及び表現は同公報をそのまま引用)、この記載のみでは構成を特定し得ない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平8−230634号公報に記載のように、マスタシリンダと各車輪のホイールシリンダを二系統に分割して連通接続する液圧路の各々にポンプを配設し、これらを補助液圧源とする車両においては、通常、ポンプの特性にバラツキがあるため、各系統のブレーキ液圧にバラツキが生ずる。このため、特に所謂ダイアゴナル配管(X配管)においては、左右の車輪間で制動力が異なることになるので、そのままでは車両の安定性が損なわれるおそれがある。この問題に対処するためには、上記公報に記載の流入弁及び流出弁を各車輪毎に制御すればよいが、アンチスキッド制御における流入弁及び流出弁の制御に加え、補助液圧のバラツキを解消するため新たに多くの流入弁及び流出弁を駆動制御することになり、弁駆動時の騒音は看過できないものとなる。
【0005】
そこで、本発明は、マスタシリンダと各車輪のホイールシリンダを二系統に分割して連通接続する一対の液圧路の各々に液圧ポンプを配設し、ブレーキペダルが操作されたときに必要に応じ自動的に制動力を増大させ得る車両の制動制御装置において、極力少ない弁を駆動制御し、液圧ポンプから各系統に供給される液圧が等しくなるように制御することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載のように、車両の前方及び後方の各車輪に装着し制動力を付与するホイールシリンダと、該ホイールシリンダの各々に対しブレーキペダルの操作に応じてブレーキ液を昇圧しマスタシリンダ液圧を出力するマスタシリンダと、該マスタシリンダと前記各車輪のホイールシリンダを二系統に分割して連通接続する一対の主液圧路とを備えた車両の制動制御装置において、前記二系統の各々に、前記主液圧路を開閉する第1の開閉弁と、該第1の開閉弁と前記ホイールシリンダとの間に吐出側を接続し前記ホイールシリンダに対し昇圧したブレーキ液を吐出する液圧ポンプと、該液圧ポンプの吸込側を前記マスタシリンダに連通接続する補助液圧路と、該補助液圧路を開閉する第2の開閉弁とを配設すると共に、前記各車輪の車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、該車輪速度検出手段の検出車輪速度に基づき前記各車輪のスリップ率を演算するスリップ率演算手段と、少くとも前記ブレーキペダルが操作状態にあるときに、前記二系統のうち異なる系統に連通接続した一対のホイールシリンダを装着した一対の車輪であって、夫々前記車両の左右に配置した一対の車輪に関し前記スリップ率演算手段が演算したスリップ率の間に所定値を越える差が生じたときには、少くとも一系統側の前記第1及び第2の開閉弁の少くとも一方を、前記一対の車輪のスリップ率が等しくなるように制御する制御手段を備えることとしたものである。例えば、第1の開閉弁を閉位置にすると共に第2の開閉弁をデューティ制御し、又は第2の開閉弁を閉位置にすると共に第1の開閉弁をデューティ制御することによって、一対の車輪の各ホイールシリンダのブレーキ液圧が制御され、各車輪のスリップ率が等しい値とされる。特に、ダイアゴナル配管の車両において、車両前方の左右の車輪に対して有効である。
【0007】
また、請求項2に記載のように、前記二系統の各々に、前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダの各々との間に介装し、少くとも増圧モード及び減圧モードの何れかの液圧モードを選択して前記ホイールシリンダの各々のブレーキ液圧を調整するモジュレータを具備したものとし、前記二系統の各々において前記モジュレータと前記第1の開閉弁との間に前記液圧ポンプの吐出側を連通接続する構成とするとよい。これにより、上記開閉弁に加え、モジュレータを制御することによってアンチスキッド制御等の種々の制御を行なうことができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の制動制御装置の一実施形態の全体構成を示すものであり、車輪FL,FR,RL,RRに夫々ホイールシリンダWfl,Wfr,Wrl,Wrrが装着されている。尚、車輪FLは運転席からみて前方左側の車輪を示し、以下車輪FRは前方右側、車輪RLは後方左側、車輪RRは後方右側の車輪を示している。
【0009】
そして、本実施形態においては、ブレーキペダルBPの操作に応じてバキュームブースタVBを介してマスタシリンダMCが倍圧駆動され、低圧リザーバLRS内のブレーキ液が昇圧されて車輪FR,RL側の液圧系統及び車輪FL,RR側の液圧系統にマスタシリンダ液圧が出力されるように構成されている。マスタシリンダMCはタンデム型のマスタシリンダで、二つの圧力室が夫々各ブレーキ液圧系統に接続されている。即ち、第1の圧力室MCaは車輪FR,RL側のブレーキ液圧系統に連通接続され、第2の圧力室MCbは車輪FL,RR側のブレーキ液圧系統に連通接続される。このように、本実施形態の液圧系統は二系統に分割され、ダイアゴナル配管(X配管)が構成されている。
【0010】
車輪FR,RL側のブレーキ液圧系統においては、第1の圧力室MCaは主液圧路MF及びその分岐液圧路MFr,MFlを介して夫々ホイールシリンダWfr,Wrlに接続されている。主液圧路MFには常開の第1の開閉弁SC1(所謂カットオフ弁として機能するもので、以下、単に開閉弁SC1といい、二系統の開閉弁を代表して表すときはSC*で示す)が介装されている。また、第1の圧力室MCaは補助液圧路MFcを介して後述する逆止弁CV5,CV6の間に接続されている。補助液圧路MFcには常閉の第2の開閉弁SI1(以下、単に開閉弁SI1といい、二系統の開閉弁を代表して表すときはSI*で示す)が介装されている。これらの開閉弁は何れも2ポート2位置の電磁開閉弁で構成されている。主液圧路MFには液圧センサPSが接続されており、マスタシリンダ液圧が検出され、ブレーキペダルBPの操作状態に応じた信号として前述の電子制御装置ECUに供給される。尚、ブレーキペダルBPの操作状態を検出するセンサとして、ブレーキペダルBPのストロークを検出するストロークセンサを用いることとしてもよい。
【0011】
分岐液圧路MFr,MFlには夫々、常開型の2ポート2位置電磁開閉弁PC1及びPC2(以下、単に開閉弁PC1,PC2という)が介装されている。また、これらと並列に夫々逆止弁CV1,CV2が介装されている。逆止弁CV1,CV2は、マスタシリンダMC方向へのブレーキ液の流れを許容しホイールシリンダWfr,Wrl方向へのブレーキ液の流れを制限するもので、これらの逆止弁CV1,CV2及び第1の位置(図示の状態)の開閉弁SC1を介してホイールシリンダWfr,Wrl内のブレーキ液がマスタシリンダMCひいては低圧リザーバLRSに戻されるように構成されている。而して、ブレーキペダルBPが解放されたときに、ホイールシリンダWfr,Wrl内の液圧はマスタシリンダMC側の液圧低下に迅速に追従し得る。また、ホイールシリンダWfr,Wrlに連通接続される排出側の分岐液圧路RFr,RFlに、夫々常閉型の2ポート2位置電磁開閉弁PC5,PC6(以下、単に開閉弁PC5,PC6という)が介装されており、分岐液圧路RFr,RFlが合流した排出液圧路RFはリザーバRS1に接続されている。
【0012】
車輪FR,RL側のブレーキ液圧系統においては、上記開閉弁PC1,PC2及び開閉弁PC5,PC6によって夫々本発明にいうモジュレータが構成されている。また、開閉弁PC1,PC2の上流側で分岐液圧路MFr,MFlに連通接続する液圧路MFpに、液圧ポンプHP1が介装され、その吸込側には逆止弁CV5,CV6を介してリザーバRS1が接続されている。また、液圧ポンプHP1の吐出側は、逆止弁CV7を介して夫々開閉弁PC1,PC2に接続されている。液圧ポンプHP1は、液圧ポンプHP2と共に一つの電動モータMによって駆動され、吸込側からブレーキ液を導入し所定の圧力に昇圧して吐出側から出力するように構成されている。リザーバRS1は、マスタシリンダMCの低圧リザーバLRSとは独立して設けられるもので、アキュムレータということもでき、ピストンとスプリングを備え、後述する種々の制御に必要な容量のブレーキ液を貯蔵し得るように構成されている。
【0013】
マスタシリンダMCは補助液圧路MFを介して液圧ポンプHP1の吸込側の逆止弁CV5と逆止弁CV6との間に連通接続されている。逆止弁CV5はリザーバRS1へのブレーキ液の流れを阻止し、逆方向の流れを許容するものである。また、逆止弁CV6,CV7は液圧ポンプHP1を介して吐出されるブレーキ液の流れを一定方向に規制するもので、通常は液圧ポンプHP1内に一体的に構成されている。而して、開閉弁SI1は、図1に示す常態の閉位置でマスタシリンダMCと液圧ポンプHP1の吸込側との連通が遮断され、開位置でマスタシリンダMCと液圧ポンプHP1の吸込側が連通するように切り換えられる。
【0014】
更に、開閉弁SC1に並列に、マスタシリンダMCから開閉弁PC1,PC2方向へのブレーキ液の流れを制限し、開閉弁PC1,PC2側のブレーキ液圧がマスタシリンダMC側のブレーキ液圧に対し所定の差圧以上大となったときにマスタシリンダMC方向へのブレーキ液の流れを許容するリリーフ弁RV1と、ホイールシリンダWfr,Wrl方向へのブレーキ液の流れを許容し逆方向の流れを禁止する逆止弁AV1が介装されている。而して、リリーフ弁RV1によって、液圧ポンプHP1から吐出される加圧ブレーキ液がマスタシリンダMCの出力液圧より所定の差圧以上大となったときには、マスタシリンダMCを介して低圧リザーバLRSにブレーキ液が還流され、主液圧路MF内のブレーキ液圧が所定の圧力以上に上昇しないように調圧される。また、逆止弁AV1の存在により、開閉弁SC1が閉位置であっても、ブレーキペダルBPが踏み込まれた場合にはホイールシリンダWfr,Wrl内のブレーキ液圧が増圧される。尚、液圧ポンプHP1の吐出側にダンパDP1が配設され、後輪側のホイールシリンダWrlに至る液圧路にプロポーショニングバルブPV1が介装されている。
【0015】
車輪FL,RR側のブレーキ液圧系統においても同様に、リザーバRS2、ダンパDP2及びプロポーショニングバルブPV2をはじめ、常開型の2ポート2位置電磁開閉弁SC2(第1の開閉弁)、常閉型の2ポート2位置電磁開閉弁SI2(第2の開閉弁),PC7,PC8、常開型の2ポート2位置電磁開閉弁PC3,PC4、逆止弁CV3,CV4,CV8乃至CV10、リリーフ弁RV2並びに逆止弁AV2が配設されている。液圧ポンプHP2は、電動モータMによって液圧ポンプHP1と共に駆動され、電動モータMの起動後は両液圧ポンプHP1,HP2は連続して駆動される。上記開閉弁SC1,SC2,SI1,SI2並びに開閉弁PC1乃至PC8は前述の電子制御装置ECUによって駆動制御され、アンチスキッド制御等の制御モードが実行される。
【0016】
上記の構成になるブレーキ液圧系において、通常のブレーキ作動時においては、各電磁弁は図1に示す常態位置にあり、電動モータMは停止している。この状態でブレーキペダルBPが踏み込まれると、マスタシリンダMCの第1及び第2の圧力室MCa,MCbから、マスタシリンダ液圧が夫々車輪FR,RL側及び車輪FL,RR側の液圧系統に出力され、開閉弁SC1,SC2並びに開閉弁PC1乃至PC8を介して、ホイールシリンダWfr,Wrl,Wfl,Wrrに供給される。車輪FR,RL側及び車輪FL,RR側の液圧系統は同様の構成であるので、以下、代表して車輪FR,RL側の液圧系統について説明する。
【0017】
例えば、ブレーキ作動中にアンチスキッド制御に移行し、例えば車輪FR側がロック傾向にあると判定されると、開閉弁SC1は開位置のままで、開閉弁PC1が閉位置とされると共に、開閉弁PC5が開位置とされる。而して、ホイールシリンダWfrは開閉弁PC5を介してリザーバRS1に連通し、ホイールシリンダWfr内のブレーキ液がリザーバRS1内に流出し減圧される。
【0018】
ホイールシリンダWfrがパルス増圧モードとなると、開閉弁PC5が閉位置とされると共に開閉弁PC1が開位置とされ、マスタシリンダMCからマスタシリンダ液圧が開位置の開閉弁PC1を介してホイールシリンダWfrに供給される。そして、開閉弁PC1が断続制御され、ホイールシリンダWfr内のブレーキ液は増圧と保持が繰り返されてパルス的に増大し、緩やかに増圧される。ホイールシリンダWfrに対し急増圧モードが設定されたときには、開閉弁PC5が閉位置とされた後、開閉弁PC1が開位置とされ、マスタシリンダMCからマスタシリンダ液圧が供給される。そして、ブレーキペダルBPが解放され、ホイールシリンダWfrの液圧よりマスタシリンダ液圧の方が小さくなると、ホイールシリンダWfr内のブレーキ液が逆止弁CV1及び開位置の開閉弁SC1を介してマスタシリンダMC、ひいては低圧リザーバLRSに戻る。このようにして、車輪毎に独立した制動力制御が行なわれる。
【0019】
車輪FR,RL,FL,RRには夫々車輪速度センサWS1乃至WS4が配設され、これらが電子制御装置ECUに接続されており、各車輪の回転速度、即ち車輪速度に比例するパルス数のパルス信号が電子制御装置ECUに入力されるように構成されている。更に、ブレーキペダルBPが踏み込まれたときオンとなるブレーキスイッチBS等が電子制御装置ECUに接続されている。また、本実施形態では電子制御装置ECUに液圧センサPSが接続されており、マスタシリンダ液圧を表す信号が電子制御装置ECUに入力するように構成されている。
【0020】
本実施形態の電子制御装置ECUは、バスを介して相互に接続されたプロセシングユニット(CPU)、メモリ(ROM,RAM)、入力ポート及び出力ポート等から成るマイクロコンピュータ(図示せず)を備えている。上記車輪速度センサWS1乃至WS4、ブレーキスイッチBS等の出力信号は増幅回路(図示せず)を介して夫々入力ポートからプロセシングユニットに入力されるように構成されている。また、出力ポートからは駆動回路(図示せず)を介して後述する各開閉弁に制御信号が出力されるように構成されている。電子制御装置ECUにおいては、メモリ(ROM)は種々の処理に供するプログラムを記憶し、プロセシングユニット(CPU)は図示しないイグニッションスイッチが閉成されている間当該プログラムを実行し、メモリ(RAM)は当該プログラムの実行に必要な変数データを一時的に記憶する。
【0021】
上記のように構成された本実施形態の制御作動を説明すると、イグニッションスイッチ(図示せず)が閉成されると図2及び図3のフローチャートに対応したプログラムの実行が開始し、電子制御装置ECUによりブレーキアシスト制御、アンチスキッド制御等の一連の処理が行なわれる。図2は制動制御作動の全体を示すもので、先ずステップ101にて初期化され、各種の演算値がクリアされる。次にステップ102において、車輪速度センサWS1乃至WS4の検出信号等が読み込まれる。
【0022】
続いてステップ103に進み、各車輪の車輪速度Vw** (**は各車輪FR等を表す)が演算されると共に、これらが微分され各車輪の車輪加速度DVw** が求められる。そして、ステップ104において各車輪の車輪速度Vw** の最大値が車両重心位置での推定車体速度Vsoとして演算される(Vso=MAX( Vw**))。また、各車輪の車輪速度Vw** に基づき各車輪毎に推定車体速度Vso**が求められ、必要に応じ、車両旋回時の内外輪差等に基づく誤差を低減するため正規化が行われる。更に、推定車体速度Vsoが微分され、車両重心位置での推定車体減速度DVsoが演算される(ここでは説明の便宜上、推定車体減速度としたが、符号を逆にすれば推定車体加速度となる)。
【0023】
続いて、ステップ105において、上記ステップ103及び104で求められた各車輪の車輪速度Vw** と推定車体速度Vso**(あるいは、正規化推定車体速度)に基づき各車輪の実スリップ率Sa** がSa** =(Vso**−Vw** )/Vso**として求められる。次に、ステップ106おいて、ブレーキアシスト制御が行なわれる。ここでは、液圧センサPSの検出マスタシリンダ液圧に応じた減速度Gmに対し、ブレーキアシスト制御用として所定の液圧に応じた減速度Δgが加算され、目標車体減速度G*が設定されるが、ブレーキペダルBPのストロークを検出し、これに基づいて設定することとしてもよい。そして、この目標車体減速度G*と、実車体減速度として用いる推定車体減速度DVsoとの偏差ΔG(=G*−DVso)が演算され、この減速度偏差ΔGを制御偏差として、ブレーキアシスト制御量の演算が行なわれる。例えば、図4に示すように減速度偏差ΔGに応じて開閉弁SI*,SC*のデューティDi,Dcが設定される。而して、ステップ106においては、ΔGが正であれば開閉弁SC*が閉位置とされると共に、開閉弁SI*がデューティDiに応じて制御され、ΔGが負であれば開閉弁SI*が閉位置とされると共に、開閉弁SC*がデューティDcに応じて制御される。
【0024】
続いてステップ107にて開閉弁SI*,SC*の制御が行なわれるが、これについては図3を参照して後述する。そして、ステップ108に進みアンチスキッド制御を初めとする各種制御モードが設定され、各種制御モードに供する目標スリップ率が設定される。この目標スリップ率に基づき、ステップ109にて液圧サーボ制御が行なわれ、各開閉弁が制御され各車輪に対する制動力が制御された後、ステップ102に戻る。電動モータMが駆動され、液圧ポンプHP1,HP2からブレーキ液が吐出される。
【0025】
図3は図2のステップ107における開閉弁SI*,SC*の制御の具体的処理内容を示すもので、先ずステップ201においてブレーキアシスト制御中か否かが判定される。ブレーキアシスト制御中である場合にはステップ202に進み、ステップ105にて演算された車両前方右側の車輪FRの実スリップ率SaFR と左側の車輪FLの実スリップ率SaFL の差ΔSaF(=SaFR −SaFL )が求められ、この差ΔSaFの絶対値が所定値Ksと比較される。この結果、差ΔSaFの絶対値が所定値Ksを越えていると判定された場合にはステップ203に進み、そうでなければそのまま図2のメインルーチンに戻る。また、ステップ201においてブレーキアシスト制御中でないと判定された場合にも、そのままメインルーチンに戻る。
【0026】
ステップ203においては、開閉弁SI*,SC*のデューティDi,Dcがスリップ率SaFR とスリップ率SaFL の差ΔSaFに応じて修正される。この場合において、二つの液圧系統における開閉弁SI*,SC*の両者のデューティDi,Dcを修正してもよいが、開閉弁SI*のデューティDiのみを修正することとしてもよく、更に一方の系統側の開閉弁SI*のデューティDiのみを修正することとしてもよい。例えば、右側の車輪FRのホイールシリンダWfrを含む系統に配設された開閉弁SI*については、図4で得られるデューティDiに対しK1・(SaFL −SaFR )/2が加算されたデューティに修正される。また、左側の車輪FLのホイールシリンダWflを含む系統については、図4で得られるデューティDiに対しK2・(SaFR −SaFL )/2が加算されたデューティに修正される。尚、K1,K2は定数である。
【0027】
従って、例えば差ΔSaFが正の値であれば右側の車輪FRのスリップ率SaFR の方が大であるので、左側の車輪FLのホイールシリンダWflを含む系統側の開閉弁SI*に対するデューティDiが大きい値に修正され、図4の特性に比しホイールシリンダWflを含む系統のブレーキ液圧が増圧傾向に調整され、あるいは右側の車輪FRのホイールシリンダWfrを含む系統側の開閉弁SI*に対するデューティDiが小さい値に修正され、図4の特性に比しホイールシリンダWfrを含む系統のブレーキ液圧が減圧傾向に調整され、二系統の主液圧路MF内の液圧が等しくなるように制御される。
【0028】
以上のように、本実施形態においては、開閉弁PC1乃至PC8を制御することなく(これらの開閉弁は図1の状態としたままで)、開閉弁SI*,SC*を開閉制御することによって二系統の主液圧路内の液圧が等しくなるように制御されるので、弁駆動時の騒音を最小限に抑えることができる。更に、常開型の開閉弁PC1乃至PC4を閉じることなく上記制御を行なうことができるため、制御中に運転者がブレーキペダルを増し踏みした場合、マスタシリンダ液圧を逆止弁AV1,AV2及び開閉弁PC1乃至PC4を介してホイールシリンダに即座に供給することができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明の車両の制動制御装置においては、二系統のうち異なる系統に連通接続した一対のホイールシリンダを装着した一対の車輪であって、夫々車両の左右に配置した一対の車輪に関し、スリップ率の間に所定値を越える差が生じたときには、少くとも一系統側の第1及び第2の開閉弁のデューティを、一対の車輪のスリップ率が等しくなるように制御することとしているので、第1及び第2の開閉弁の少くとも一方を駆動制御するのみで、液圧ポンプから各系統に供給される液圧が等しくなるように制御することができ、弁駆動に伴う騒音を抑えることができる。
【0030】
更に、請求項2に記載のように、モジュレータを具備し、二系統の各々においてモジュレータと第1の開閉弁との間に液圧ポンプの吐出側を連通接続する構成とした場合には、第1及び第2の開閉弁の少くとも一方を駆動制御するのみで、液圧ポンプから各系統に供給される液圧が等しくなるように制御することができると共に、モジュレータの制御によって種々の制御モードを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制動制御装置の一実施形態の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態における車両の制動制御の全体を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態における開閉弁SI*,SC*の制御を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態における車両前方の車輪のホイールシリンダ液圧を制御する際の開閉弁SC*,SI*の駆動状態の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
BP ブレーキペダル
PS 液圧センサ, BS ブレーキスイッチ
MC マスタシリンダ
MF 主液圧路, MFc 補助液圧路
M 電動モータ
HP1,HP2 液圧ポンプ
RS1,RS2 リザーバ
Wfr,Wfl,Wrr,Wrl ホイールシリンダ
WS1〜WS4 車輪速度センサ
FR,FL,RR,RL 車輪
SC1,SC2,SC* 第1の開閉弁
SI1,SI2,SI* 第2の開閉弁
PC1〜PC8 開閉弁
ECU 電子制御装置
Claims (2)
- 車両の前方及び後方の各車輪に装着し制動力を付与するホイールシリンダと、該ホイールシリンダの各々に対しブレーキペダルの操作に応じてブレーキ液を昇圧しマスタシリンダ液圧を出力するマスタシリンダと、該マスタシリンダと前記各車輪のホイールシリンダを二系統に分割して連通接続する一対の主液圧路とを備えた車両の制動制御装置において、前記二系統の各々に、前記主液圧路を開閉する第1の開閉弁と、該第1の開閉弁と前記ホイールシリンダとの間に吐出側を接続し前記ホイールシリンダに対し昇圧したブレーキ液を吐出する液圧ポンプと、該液圧ポンプの吸込側を前記マスタシリンダに連通接続する補助液圧路と、該補助液圧路を開閉する第2の開閉弁とを配設すると共に、前記各車輪の車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、該車輪速度検出手段の検出車輪速度に基づき前記各車輪のスリップ率を演算するスリップ率演算手段と、少くとも前記ブレーキペダルが操作状態にあるときに、前記二系統のうち異なる系統に連通接続した一対のホイールシリンダを装着した一対の車輪であって、夫々前記車両の左右に配置した一対の車輪に関し前記スリップ率演算手段が演算したスリップ率の間に所定値を越える差が生じたときには、少くとも一系統側の前記第1及び第2の開閉弁の少くとも一方を、前記一対の車輪のスリップ率が等しくなるように制御する制御手段を備えたことを特徴とする車両の制動制御装置。
- 前記二系統の各々に、前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダの各々との間に介装し、少くとも増圧モード及び減圧モードの何れかの液圧モードを選択して前記ホイールシリンダの各々のブレーキ液圧を調整するモジュレータを具備し、前記二系統の各々において前記モジュレータと前記第1の開閉弁との間に前記液圧ポンプの吐出側を連通接続したことを特徴とする請求項1記載の車両の制動制御装置。
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