JP3724190B2 - 合成繊維編織物 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成繊維からなるものでありながら優れた汗処理性を有する合成繊維編織物に関し、特に運動用衣服に好適な合成繊維編織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に運動用衣服は肌に接触するように着用される。そのため運動用衣服に使用される編織物としては、肌から激しく発汗する汗を長時間にわたり連続的に吸収すると共に、速やかに外気中に蒸散させる乾燥性を有し、また頻繁に行われる洗濯に対し優れたウオッシュアンドウェア性を有するものであることが理想的とされている。
【0003】
しかし、現在市販されている編織物には、これら理想を達成する吸水・透水性、蒸散・速乾性、ウオッシュアンドウェア性の全てを満足なレベルに維持できるようにしたものが、いまだに出現していないのが実状である。
【0004】
例えば、木綿、ウール等の天然繊維100%物は、吸水性や保水性には優れていて汗を良く吸い取るが、いったん吸い取った汗を容易に蒸散させることができないため蒸散・速乾性に劣っており、また洗濯後の脱水が難しく、繊維内部にかなりの水が残って、乾燥に長時間を要するためウオッシュアンドウェア性に劣るという欠点がある。一方、合成繊維100%物は、ウオッシュアンドウェア性には優れてはいるが、水と接触したときの吸水速度が遅く、透水能力に劣り、汗の吸汗・移動が不十分であるため、汗濡れによる不快感やムレ感を招くという問題があった。
【0005】
【発明が解決しょうとする課題】
本発明の目的は、上述した従来の問題を解消し、合成繊維製でありながら肌側の裏面で吸収した汗を表面側へ移動させる吸水・透水性、表面での蒸散・速乾性、かつウオッシュアンドウェア性のいずれにも優れた性能を発揮することができる合成繊維編織物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の合成繊維編織物は、多層構造の編織物であり、該編織物の表面層がH形断面またはΙ形断面であると共に繊維表面に長手方向に沿って複数の凹溝をもつフィラメントを少なくとも30重量%含む糸条から構成され、前記編織物の裏面層が繊維表面に長手方向に沿って延びる凹溝をもたないフィラメント糸条から構成され、前記表面層の前記裏面層に対する吸水表裏保水率比が2倍以上で、かつ吸水表裏拡散面積比が2倍以上であることを特徴とするものである。
【0007】
このように多層構造からなり、表面層を構成する糸条にH形断面またはΙ形断面であると共に繊維表面に長手方向に沿って複数の凹溝をもつフィラメントを少なくとも30重量%含ませる一方で、裏面層を構成する糸条を繊維表面に凹溝をもつフィラメントを含まない構成にしたため、表面層側の糸条の毛細管現象により裏面で吸収した汗を表面側へ移動させやすくし、表面層の前記裏面層に対する吸水表裏保水率比を2倍以上にする結果、汗の吸水・透水効果を増大させ、かつ吸水表裏拡散面積比を2倍以上にする結果、表面層での汗の拡散を促進させて蒸散・速乾性を増大させる。
【0008】
したがって、この編織物を用いて運動用衣服にすると、激しい発汗に対してベタツキ感を軽減し、快適な着用感を得ることができる。また、合成繊維製であるため、優れたウオッシュアンドウェア性を有している。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の合成繊維編織物は、表面層と裏面層との少なくとも2層からなる多層構造体からなるものであれば、特に組織等は限定されるものではない。例えば、編物であれば、シングルジャージ、ダブルジャージ、シングルトリコット、ダブルトリコット、シングルラッセル、ダブルラッセル等で構成することができ、また織物であれば、一重織物、二重織物、ヨコ二重織物、タテ二重織物、タテ・ヨコ二重織物等で構成することができる。
【0010】
本発明で用いる合成繊維の素材としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン等の従来から衣料用に使用されるものであればいずれも使用可能であるが、中でもポリエステルは特に好ましい。ポリエテル繊維は運動用衣服とした場合の寸法安定性、強度、染色堅牢度等が他の繊維よりも特に優れている。また、これら合成繊維は延伸糸、捲縮加工糸或いは他のフィラメント糸条との混繊糸であってもよいが、好ましくは捲縮加工糸またはその混繊糸を使用するとよい。また、捲縮加工糸としては特に仮撚加工糸が好ましい。
【0011】
本発明の編織物において、表面層を構成する糸条には、横断面がH形またはI形であると共に、繊維表面に長手方向に沿って複数の凹溝を形成しているフィラメントを少なくとも30重量%含むものが使用される。このように横断面がH形またはI形で、繊維表面に凹溝をもつフィラメントを包含することにより、糸条が毛細管現象を発生し、フィラメントに沿って水(汗)を移送する作用を有するようになる。これに対して裏面層を構成する糸条には、上記のように繊維表面に凹溝を有するフィラメントを含まないようにする。
【0012】
表面層を構成する糸条の横断面形状のH形またはI形としては、例えば、図1(A)〜(G)の形状を例示することができる。特にこれら図示のものに限定されるものではないが、これらH形またはI形断面の糸条としてはフィラメントであることが必要である。ステープルであっては、フィラメントに比べて毛細管現象作用が低減するだけでなく、紡績糸にした場合に毛羽によりシャープ感が損なわれると同時にピリングが多発するため、運動用衣服として好ましくない。
【0013】
これに対して、裏面層側を構成する糸条の横断面形状は、図2(A)〜(E)に示すように丸型、三角型、五角型、八角型等であり、いずれも表面層側の糸条のH形やΙ形のように繊維表面に長手方向に沿う凹溝を有しておらず、毛細管現象作用を殆どもっていないことで特徴づけられる。また、これら糸条は延伸糸、捲縮加工糸或いはこれらの混繊糸のいずれであってもよい。
【0014】
このように裏面層を毛細管現象作用を持たない糸条で構成する一方、表面層を毛細管現象作用を有する糸条で構成することにより、裏面から表面側への毛細管現象による水(汗)の移動効果を一層増大させることができる。この場合、表面層の糸条には、上記H形断面またはI形断面のフィラメントが少なくとも30重量%含まれることが必要であり、30%未満では裏面から表面側への水(汗)の移送効果を十分に得ることができない。望ましくは、上記H形断面またはI形断面のフィラメントを50重量%以上を含むようにするのがよい。
【0015】
この表面層の糸条にH形断面またはI形断面フィラメント以外の他の合成繊維を配合する場合の繊維としては特に限定されるものではなく、交編織として配置すればよい。また、H形断面またはI形断面のフィラメントは編織物の表面層に配置されることが重要であり、裏面層の肌側に使用すると、逆毛細管現象を生じて、肌側がベタツキ、目的とする汗処理性能が得られなくなる。
【0016】
上記のように編織物の裏面層と表面層に使用される糸条の単繊維繊度としては、裏面層と表面層とで互いに同一であってもよいが、好ましくは裏面層よりも表面層側を細繊度にすることが好ましい。このような組み合わせにより、裏面層から表面層への毛細管現象を一層大きく作用させ、吸水・透水性、拡散・乾燥性をより優れたものにすることができる。
【0017】
表面層を構成する糸条の単繊維繊度としては、1〜5デニールの範囲が好ましい。単繊維繊度が1デニール未満では、抗ピリング性、抗スナッグ性が低下する傾向がある。また、単繊維繊度が5デニールより大きくなると、風合いが粗硬になる傾向がある。裏面層の糸条の単繊維繊度は表面層と同一繊度であるか、または表面層よりも太繊度であることが好ましいが、一般的には5デニール以下の範囲にすることが肌触り等の観点から好ましい。
【0018】
表面層および裏面層を構成する糸条の総繊度は、特に限定されないが、運動用衣服として薄地のシャツ類から中厚地のトレーニングウェア、野球ユニフォーム類まで含めると、30デニールから300デニール程度までの範囲を好ましく使用することができる。
【0019】
編織物の裏面層は平坦面であるよりも、多数の凸部が分散した凹凸面形状にすることが好ましい。このように裏面層を凹凸面形状にすると、運動用衣服にして着用した場合、その凸部が肌と点接触するため、液状の汗を発汗してもベタツキ感がなく、かつ、編織物の表面層の密度が密となるのに対して、裏面層の密度が粗になるため、液状の汗が毛細管現象により裏面から表面側へより効率的に移動し、吸水・透水性および表面での拡散・乾燥性を向上することができる。
【0020】
また、裏面層に凹凸部があることにより、凹部で空気が暖められるため、寒い時期にも保温性を有する運動用衣服として着用することができる。
本発明における編織物の目付としては、薄地のシャツ類から中厚地のトレーニングウェア、野球ユニフォーム類までを含め、100〜300g/m2 の範囲にすることが好ましい。また、本発明の編織物は、染色加工工程で吸水加工を付与するようにすれば、素地の性能にさらに優れた吸水・透水性、拡散・乾燥性が加算されて、一層すぐれた性能にすることができる。
【0021】
また、編織物の裏面層は起毛されていてもよい。裏面層を起毛することにより裏面層の繊維拘束度が粗になるため、毛細管現象作用をより促進させ、汗の吸水・透水効果、拡散・乾燥効果をより増大させると同時に、保温性と肌触り性を向上させることができる。起毛の方法としては、通常の起毛工程を通せばよく、針布起毛やバフ加工のいずれであってもよい。
【0022】
上記のように構成される本発明の合成繊維編織物は、下記に定義する吸水表裏保水率比を2倍以上にすると共に、同じく裏面層に対する表面層の吸水表裏拡散面積比を2倍以上にすることができる。
【0023】
〔吸水表裏保水率比〕
編織物からサイズ10cm×10cmに切り出したサンプルを3枚用意する。ガラス板上に蒸留水1.0ccを滴下し、その上にサンプル1枚をその裏面を蒸留水に接するように載せ、60秒間放置したのち別のガラス板上に移し、このサンプルの両面を同一サイズにカットした濾紙2枚にてサンドイッチ状に挟み、5g/m2 の荷重下で60秒間放置する。
【0024】
その後、吸水前後のサンプル重量の差から得たサンプルの保水重量と、表面と裏面に接した各々の濾紙の含水重量とから、サンプル(編織物)の表面層と裏面層との保水率を算出する。この操作を残り2枚のサンプルについて同様に行い、3枚のそれぞれ表裏の保水率の平均値より、(表面層の保水率)/(裏面層の保水率)の値を「吸水表裏保水率比」として算出する。
【0025】
〔吸水表裏拡散面積比〕
上記と同様に編織物からサイズ10cm×10cmに切り出したサンプルを3枚用意する。ガラス板上に市販のインクを2倍に水で希釈したインク液を0.1cc滴下し、その上にサンプル1枚をその裏面側をインク液に接するように載せ、60秒間放置したのち、別のガラス板上に移す。ここでも裏面側を下にして3分間放置する。
【0026】
このようにして得たサンプルの表面と裏面のインク液拡散面積をそれぞれ測定する。この操作を残り2枚のサンプルについても同様に行い、3枚のそれぞれ表裏のインク液拡散面積の平均値より、(表面層の拡散面積)/(裏面層の拡散面積)の値を「吸水表裏拡散面積比」として算出する。
【0027】
したがって、上記吸水表裏保水率比は蒸留水の吸収状態を示すものであり、表面層の保水率が大きく、かつ吸水表裏保水率比が大きいものは滴下された蒸留水を効率よく表面側に移動させ、透水能力が優れていることを表す。すなわち、吸水表裏保水率比は、一定量の水を吸水した編織物における表面層側の保水率の裏面層側の保水率に対する比であるので、表面層の保水率に比べて裏面層の保水率が小さいほど、すなわち比率が大きいほど吸水・透水性に優れベタツキ感が少なくなり、着用が快適になる。したがって、吸水表裏保水率比が2倍未満であっては、編織物の肌側に当たる裏面面がベタツキ着用感を低下させる。この吸水表裏保水率比の上限としては20倍程度とする。
【0028】
また、上記吸水表裏拡散面積比はインク液の吸収状態を示すものであり、表面の拡散面積が大きく、かつ吸水表裏拡散面積比が大きいものはインク液を効率よく表面側に移動させる吸水・透水及び拡散能力に優れていることを表す。すなわち、吸水表裏拡散面積比は、一定量の水を吸水した編織物の表面側の水拡散面積の裏面側の水拡散面積に対する比であり、表面の拡散面積に比べて裏面側の拡散面積が小さいほど、すなわち比率が大きいほど、表面の拡散・乾燥性が優れベタツキ感が少なくなり、着用が快適である。したがって、吸水表裏拡散面積比が2より小さくては、編織物の肌側に当たる裏面側のベタツキ着用感が低下することになる。この吸水表裏拡散面積比の上限としては40倍程度にするのがよい。
【0029】
本発明において、吸水表裏保水率比と吸水表裏拡散面積比との両値は、それぞれ2倍以上であることが好ましいが、必ずしも同一比率である必要は無く、肌側のベタツキ感の軽減には、吸水表裏保水率比の大小が、より影響する。一方、速乾性には、吸水表裏拡散面積比の大小が、より影響する特性となる。
上述した本発明の編織物は、運動用衣服に好ましく使用される。運動用衣服の種類は特に限定されないが、例えば、スポーツウェア類であるトレーニングウェア、野球ユニフォーム、ハーフパンツ、競技シャツ・パンツ、テニスシャツ、ゴルフシャツ等は勿論のこと、作業服などのように運動を伴うものに着用するもの等にも適用することができる。
【0030】
【実施例】
以下に説明する実施例および比較例において、評価に使用した特性は次の方法によって測定した。
【0031】
〔着用感〕
着用した際の肌側(裏面)の「ベタツキ感」および人工気象室での「着用快適感」の優劣を、それぞれ次の基準により評価した。
(1)肌側(裏面)の「ベタツキ感」
◎:全く「ベタツキ」を感じない
○:「ベタツキ」をほとんど感じない
△:「ベタツキ」を若干感じる
×:「ベタツキ」を感じる
(2)人工気象室での「着用快適感」
○:着用して快適である
×:着用して不快である
(3)「総合評価」
○:運動用衣服として優れている
×:運動用衣服として適していない
【0032】
実施例1
22ゲージ両面丸編機を用い、図3に示す一完全組織NO.1からNO.8の8口給糸からなるリバーシブル編組織において、それぞれ表面編組織用の給糸口NO.2、3、6、7の糸条a、bの糸に、150デニール、72フィラメントのH形断面のポリエステル仮撚加工糸を、また裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に、150デニール、72フィラメントの丸型断面のポリエステル仮撚加工糸をそれぞれ配して編成した。
【0033】
その後、通常のポリエステル編地の染色加工条件に準じて、精練、染色、吸水加工、仕上げセットを行い、目付265g/m2 である編地を得た。この編地表面層におけるH形断面糸の混率は100重量%であり、かつ吸水表裏保水率比は8.8倍、吸水表裏拡散面積比は9.3倍であった。
この編地を用いてトレーニングウェアを試作し、初夏の環境条件である28℃×65%RHに設定された人工気象室で青年男女12名により、トレッドミルを用いた10km/hrのランニング実験を20分間行ったところ、表1に示す評価結果の通り、肌側のベタツキ感がなく、優れた着用快適性を有していた。
【0034】
実施例2
実施例1と同一の丸編機、同一編組織で、表面編組織用の給糸口NO.2、3、6、7の糸条a、bの糸に150デニール、72フィラメントのΙ型断面のポリエステル延伸糸、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に150デニール、72フィラメントの丸型断面のポリエステル仮撚加工糸を配して編成した。
【0035】
得られた編地を実施例1と同一条件で染色加工を行い、目付271g/m2 の編地を得た。この編地表面層におけるΙ型断面糸の混率は100重量%であり、吸水表裏保水率比は11.4倍、吸水表裏拡散面積比は13.7倍であった。
この編地を使用して実施例1と同様にトレーニングウェアを試作し、ランニング実験を行ったところ、表1に示す評価結果の通り、全く問題のないものであった。
【0036】
実施例3
実施例1と同一の丸編機、同一編組織で、表面編組織用の給糸口NO.2、7の糸条aの糸に150デニール、72フィラメントのH形断面のポリエステル仮撚加工糸を、給糸口NO.3、6の糸条bの糸に150デニール、72フィラメントの丸型断面のポリエステル仮撚加工糸を、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に150デニール、48フィラメントの三角型断面のポリエステル仮撚加工糸をそれぞれ配して編成した。
【0037】
得られた編地を実施例1と同一条件で染色加工を行い、目付282g/m2 の編地を得た。この編地におけるH形断面糸の混率は50重量%であり、吸水表裏保水率比は15.3倍、吸水表裏拡散面積比は17.9倍であった。
この編地を実施例1と同様にトレーニングウェアを試作し、ランニング実験を行った結果、表1の評価結果に示す通り、全く問題のないものであった。
【0038】
実施例4
28ゲージ両面丸編機を用い、実施例1と同一の一完全組織NO.1からNO.8の8口給糸からなる編組織において、表面編組織用の給糸口NO.2、3、6、7の糸条a、bの糸に75デニール、36フィラメントのΙ型断面のポリエステル延伸糸を、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に75デニール、36フィラメントの五角型断面のポリエステル延伸糸を配して編成した。
【0039】
その後、通常のポリエステル編地の染色加工条件に準じて、精練、染色、吸水加工、仕上げセットを行い、目付165g/m2 の編地を得た。この編地表面層のΙ型断面糸の混率は100重量%であり、吸水表裏保水率比は9.1倍、吸水表裏拡散面積比は9.9倍であった。
得られた編地から実施例1と同様に競技シャツ・パンツを試作し、ランニング実験を行った結果、表1に示す評価結果に示す通り、全く問題のないものであった。
【0040】
実施例5
70デニール、24フィラメントのH形断面のナイロン延伸糸を表面層に、70デニール、24フィラメントの丸型断面のナイロン延伸糸を裏面層に配置される二重織物を試作した。
その後、通常のナイロン織物の染色加工条件に準じて、精練、染色、吸水加工、仕上げセットを行い、目付220g/m2 の織物を得た。この織物表面層のH形断面糸の混率は100重量%であり、吸水表裏保水率比は6.6倍、吸水表裏拡散面積比は7.2倍であった。
【0041】
得られた編地から実施例1と同様にテニス用ウォームアップスーツを試作し、ランニング実験を行ったところ、表1の評価結果に示す通り、全く問題のないものであった。
【0042】
【表1】
【0043】
比較例1
実施例1と同一の丸編機、同一編組織で、表面編組織用の給糸口NO.2、3、6、7の糸条a、bの糸に150デニール、72フィラメントの丸型断面きポリエステル仮撚加工糸を、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に150デニール、72フィラメントの丸型断面のポリエステル仮撚加工糸を配して編成した。
【0044】
この編地を実施例1と同一条件で染色加工を行い、目付261g/m2 の編地を得た。この編地表面層におけるH形またはΙ形断面糸の混率は0%であり、吸水表裏保水率比は0.9倍、吸水表裏拡散面積比は1.0倍であった。
この編地から実施例1と同様にトレーニングウェアを試作し、ランニング実験を行ったところ、表2の評価結果に示す通り、ベタツキ感が激しく、着用快適性に劣るものであった。
【0045】
比較例2
実施例1と同一の丸編機、同一編組織で、表面編組織用の給糸口NO.2、3、6、7の糸条a、bの糸に150デニール、72フィラメントの三角型断面ポリエステル仮撚加工糸を、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に150デニール、72フィラメントのH形断面のポリエステル延伸糸を配して編成した。
【0046】
この編地を実施例1と同一条件で染色加工を行い、目付273g/m2 の編地を得た。この編地表面層におけるH形またはΙ形断面糸の混率は0%であり、吸水表裏保水率比は0.2倍、吸水表裏拡散面積比は0.5倍であった。
この編地から実施例1と同様にトレーニングウェアを試作し、ランニング実験を行ったところ、表2に示す評価結果に示す通り、ベタツキ感が激しく、着用快適性に劣るものであった。
【0047】
比較例3
実施例1と同一の丸編機、同一編組織で、表面編組織用の給糸口NO.2の糸条aと給糸口NO.3、6の糸条bの糸に、それぞれ150デニール、72フィラメントのH形断面のポリエステル仮撚加工糸を、給糸口NO.7の糸条aの糸に150デニール、72フィラメントの丸型断面のポリエステル仮撚加工糸を、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に150デニール、72フィラメントの三角型断面のポリエステル仮撚加工糸をそれぞれ配して編成した。
【0048】
この編地を実施例1と同一条件で染色加工を行い、目付266g/m2 である編地を得た。この編地表面におけるH形断面糸の混率は25重量%であり、吸水表裏保水率比は1.5倍、吸水表裏拡散面積比は1.7倍であった。
この網がから実施例1と同様にトレーニングウェアを試作し、ランニング実験を行ったところ、表2に示す評価結果に示す通り、ベタツキ感を感じ、着用快適性に劣るものであつた。
【0049】
【表2】
【0050】
【発明の効果】
上述したように本発明の合成繊維編織物によれば、運動用衣服等に用いた際に、肌側から汗を表側に素速く吸水・透水・拡散させることによりベタツキ感がなく、良好な着用快適性を得ることができ、また合成繊維製であるため優れたウオッシュアンドウェア性等の取り扱い性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(G)は、それぞれ本発明の編織物の表面層に使用するフィラメント糸の断面形状をモデル的に示す概略断面図である。
【図2】(A)〜(E)は、それぞれ本発明の編織物の裏面層に使用するフィラメント糸の断面形状をモデル的に示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施例および比較例に用いた編地の編組織をモデル的に示す編方概略図である。
【符号の説明】
NO.1〜8 編組織の各給糸NO
C1〜C10 表編部を編成するための編針(シリンダー針)
D1〜D10 裏編部を編成するための編針(ダイヤル針)
a、b 表編部を形成する糸
c、d 裏編部を形成する糸
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成繊維からなるものでありながら優れた汗処理性を有する合成繊維編織物に関し、特に運動用衣服に好適な合成繊維編織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に運動用衣服は肌に接触するように着用される。そのため運動用衣服に使用される編織物としては、肌から激しく発汗する汗を長時間にわたり連続的に吸収すると共に、速やかに外気中に蒸散させる乾燥性を有し、また頻繁に行われる洗濯に対し優れたウオッシュアンドウェア性を有するものであることが理想的とされている。
【0003】
しかし、現在市販されている編織物には、これら理想を達成する吸水・透水性、蒸散・速乾性、ウオッシュアンドウェア性の全てを満足なレベルに維持できるようにしたものが、いまだに出現していないのが実状である。
【0004】
例えば、木綿、ウール等の天然繊維100%物は、吸水性や保水性には優れていて汗を良く吸い取るが、いったん吸い取った汗を容易に蒸散させることができないため蒸散・速乾性に劣っており、また洗濯後の脱水が難しく、繊維内部にかなりの水が残って、乾燥に長時間を要するためウオッシュアンドウェア性に劣るという欠点がある。一方、合成繊維100%物は、ウオッシュアンドウェア性には優れてはいるが、水と接触したときの吸水速度が遅く、透水能力に劣り、汗の吸汗・移動が不十分であるため、汗濡れによる不快感やムレ感を招くという問題があった。
【0005】
【発明が解決しょうとする課題】
本発明の目的は、上述した従来の問題を解消し、合成繊維製でありながら肌側の裏面で吸収した汗を表面側へ移動させる吸水・透水性、表面での蒸散・速乾性、かつウオッシュアンドウェア性のいずれにも優れた性能を発揮することができる合成繊維編織物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の合成繊維編織物は、多層構造の編織物であり、該編織物の表面層がH形断面またはΙ形断面であると共に繊維表面に長手方向に沿って複数の凹溝をもつフィラメントを少なくとも30重量%含む糸条から構成され、前記編織物の裏面層が繊維表面に長手方向に沿って延びる凹溝をもたないフィラメント糸条から構成され、前記表面層の前記裏面層に対する吸水表裏保水率比が2倍以上で、かつ吸水表裏拡散面積比が2倍以上であることを特徴とするものである。
【0007】
このように多層構造からなり、表面層を構成する糸条にH形断面またはΙ形断面であると共に繊維表面に長手方向に沿って複数の凹溝をもつフィラメントを少なくとも30重量%含ませる一方で、裏面層を構成する糸条を繊維表面に凹溝をもつフィラメントを含まない構成にしたため、表面層側の糸条の毛細管現象により裏面で吸収した汗を表面側へ移動させやすくし、表面層の前記裏面層に対する吸水表裏保水率比を2倍以上にする結果、汗の吸水・透水効果を増大させ、かつ吸水表裏拡散面積比を2倍以上にする結果、表面層での汗の拡散を促進させて蒸散・速乾性を増大させる。
【0008】
したがって、この編織物を用いて運動用衣服にすると、激しい発汗に対してベタツキ感を軽減し、快適な着用感を得ることができる。また、合成繊維製であるため、優れたウオッシュアンドウェア性を有している。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の合成繊維編織物は、表面層と裏面層との少なくとも2層からなる多層構造体からなるものであれば、特に組織等は限定されるものではない。例えば、編物であれば、シングルジャージ、ダブルジャージ、シングルトリコット、ダブルトリコット、シングルラッセル、ダブルラッセル等で構成することができ、また織物であれば、一重織物、二重織物、ヨコ二重織物、タテ二重織物、タテ・ヨコ二重織物等で構成することができる。
【0010】
本発明で用いる合成繊維の素材としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン等の従来から衣料用に使用されるものであればいずれも使用可能であるが、中でもポリエステルは特に好ましい。ポリエテル繊維は運動用衣服とした場合の寸法安定性、強度、染色堅牢度等が他の繊維よりも特に優れている。また、これら合成繊維は延伸糸、捲縮加工糸或いは他のフィラメント糸条との混繊糸であってもよいが、好ましくは捲縮加工糸またはその混繊糸を使用するとよい。また、捲縮加工糸としては特に仮撚加工糸が好ましい。
【0011】
本発明の編織物において、表面層を構成する糸条には、横断面がH形またはI形であると共に、繊維表面に長手方向に沿って複数の凹溝を形成しているフィラメントを少なくとも30重量%含むものが使用される。このように横断面がH形またはI形で、繊維表面に凹溝をもつフィラメントを包含することにより、糸条が毛細管現象を発生し、フィラメントに沿って水(汗)を移送する作用を有するようになる。これに対して裏面層を構成する糸条には、上記のように繊維表面に凹溝を有するフィラメントを含まないようにする。
【0012】
表面層を構成する糸条の横断面形状のH形またはI形としては、例えば、図1(A)〜(G)の形状を例示することができる。特にこれら図示のものに限定されるものではないが、これらH形またはI形断面の糸条としてはフィラメントであることが必要である。ステープルであっては、フィラメントに比べて毛細管現象作用が低減するだけでなく、紡績糸にした場合に毛羽によりシャープ感が損なわれると同時にピリングが多発するため、運動用衣服として好ましくない。
【0013】
これに対して、裏面層側を構成する糸条の横断面形状は、図2(A)〜(E)に示すように丸型、三角型、五角型、八角型等であり、いずれも表面層側の糸条のH形やΙ形のように繊維表面に長手方向に沿う凹溝を有しておらず、毛細管現象作用を殆どもっていないことで特徴づけられる。また、これら糸条は延伸糸、捲縮加工糸或いはこれらの混繊糸のいずれであってもよい。
【0014】
このように裏面層を毛細管現象作用を持たない糸条で構成する一方、表面層を毛細管現象作用を有する糸条で構成することにより、裏面から表面側への毛細管現象による水(汗)の移動効果を一層増大させることができる。この場合、表面層の糸条には、上記H形断面またはI形断面のフィラメントが少なくとも30重量%含まれることが必要であり、30%未満では裏面から表面側への水(汗)の移送効果を十分に得ることができない。望ましくは、上記H形断面またはI形断面のフィラメントを50重量%以上を含むようにするのがよい。
【0015】
この表面層の糸条にH形断面またはI形断面フィラメント以外の他の合成繊維を配合する場合の繊維としては特に限定されるものではなく、交編織として配置すればよい。また、H形断面またはI形断面のフィラメントは編織物の表面層に配置されることが重要であり、裏面層の肌側に使用すると、逆毛細管現象を生じて、肌側がベタツキ、目的とする汗処理性能が得られなくなる。
【0016】
上記のように編織物の裏面層と表面層に使用される糸条の単繊維繊度としては、裏面層と表面層とで互いに同一であってもよいが、好ましくは裏面層よりも表面層側を細繊度にすることが好ましい。このような組み合わせにより、裏面層から表面層への毛細管現象を一層大きく作用させ、吸水・透水性、拡散・乾燥性をより優れたものにすることができる。
【0017】
表面層を構成する糸条の単繊維繊度としては、1〜5デニールの範囲が好ましい。単繊維繊度が1デニール未満では、抗ピリング性、抗スナッグ性が低下する傾向がある。また、単繊維繊度が5デニールより大きくなると、風合いが粗硬になる傾向がある。裏面層の糸条の単繊維繊度は表面層と同一繊度であるか、または表面層よりも太繊度であることが好ましいが、一般的には5デニール以下の範囲にすることが肌触り等の観点から好ましい。
【0018】
表面層および裏面層を構成する糸条の総繊度は、特に限定されないが、運動用衣服として薄地のシャツ類から中厚地のトレーニングウェア、野球ユニフォーム類まで含めると、30デニールから300デニール程度までの範囲を好ましく使用することができる。
【0019】
編織物の裏面層は平坦面であるよりも、多数の凸部が分散した凹凸面形状にすることが好ましい。このように裏面層を凹凸面形状にすると、運動用衣服にして着用した場合、その凸部が肌と点接触するため、液状の汗を発汗してもベタツキ感がなく、かつ、編織物の表面層の密度が密となるのに対して、裏面層の密度が粗になるため、液状の汗が毛細管現象により裏面から表面側へより効率的に移動し、吸水・透水性および表面での拡散・乾燥性を向上することができる。
【0020】
また、裏面層に凹凸部があることにより、凹部で空気が暖められるため、寒い時期にも保温性を有する運動用衣服として着用することができる。
本発明における編織物の目付としては、薄地のシャツ類から中厚地のトレーニングウェア、野球ユニフォーム類までを含め、100〜300g/m2 の範囲にすることが好ましい。また、本発明の編織物は、染色加工工程で吸水加工を付与するようにすれば、素地の性能にさらに優れた吸水・透水性、拡散・乾燥性が加算されて、一層すぐれた性能にすることができる。
【0021】
また、編織物の裏面層は起毛されていてもよい。裏面層を起毛することにより裏面層の繊維拘束度が粗になるため、毛細管現象作用をより促進させ、汗の吸水・透水効果、拡散・乾燥効果をより増大させると同時に、保温性と肌触り性を向上させることができる。起毛の方法としては、通常の起毛工程を通せばよく、針布起毛やバフ加工のいずれであってもよい。
【0022】
上記のように構成される本発明の合成繊維編織物は、下記に定義する吸水表裏保水率比を2倍以上にすると共に、同じく裏面層に対する表面層の吸水表裏拡散面積比を2倍以上にすることができる。
【0023】
〔吸水表裏保水率比〕
編織物からサイズ10cm×10cmに切り出したサンプルを3枚用意する。ガラス板上に蒸留水1.0ccを滴下し、その上にサンプル1枚をその裏面を蒸留水に接するように載せ、60秒間放置したのち別のガラス板上に移し、このサンプルの両面を同一サイズにカットした濾紙2枚にてサンドイッチ状に挟み、5g/m2 の荷重下で60秒間放置する。
【0024】
その後、吸水前後のサンプル重量の差から得たサンプルの保水重量と、表面と裏面に接した各々の濾紙の含水重量とから、サンプル(編織物)の表面層と裏面層との保水率を算出する。この操作を残り2枚のサンプルについて同様に行い、3枚のそれぞれ表裏の保水率の平均値より、(表面層の保水率)/(裏面層の保水率)の値を「吸水表裏保水率比」として算出する。
【0025】
〔吸水表裏拡散面積比〕
上記と同様に編織物からサイズ10cm×10cmに切り出したサンプルを3枚用意する。ガラス板上に市販のインクを2倍に水で希釈したインク液を0.1cc滴下し、その上にサンプル1枚をその裏面側をインク液に接するように載せ、60秒間放置したのち、別のガラス板上に移す。ここでも裏面側を下にして3分間放置する。
【0026】
このようにして得たサンプルの表面と裏面のインク液拡散面積をそれぞれ測定する。この操作を残り2枚のサンプルについても同様に行い、3枚のそれぞれ表裏のインク液拡散面積の平均値より、(表面層の拡散面積)/(裏面層の拡散面積)の値を「吸水表裏拡散面積比」として算出する。
【0027】
したがって、上記吸水表裏保水率比は蒸留水の吸収状態を示すものであり、表面層の保水率が大きく、かつ吸水表裏保水率比が大きいものは滴下された蒸留水を効率よく表面側に移動させ、透水能力が優れていることを表す。すなわち、吸水表裏保水率比は、一定量の水を吸水した編織物における表面層側の保水率の裏面層側の保水率に対する比であるので、表面層の保水率に比べて裏面層の保水率が小さいほど、すなわち比率が大きいほど吸水・透水性に優れベタツキ感が少なくなり、着用が快適になる。したがって、吸水表裏保水率比が2倍未満であっては、編織物の肌側に当たる裏面面がベタツキ着用感を低下させる。この吸水表裏保水率比の上限としては20倍程度とする。
【0028】
また、上記吸水表裏拡散面積比はインク液の吸収状態を示すものであり、表面の拡散面積が大きく、かつ吸水表裏拡散面積比が大きいものはインク液を効率よく表面側に移動させる吸水・透水及び拡散能力に優れていることを表す。すなわち、吸水表裏拡散面積比は、一定量の水を吸水した編織物の表面側の水拡散面積の裏面側の水拡散面積に対する比であり、表面の拡散面積に比べて裏面側の拡散面積が小さいほど、すなわち比率が大きいほど、表面の拡散・乾燥性が優れベタツキ感が少なくなり、着用が快適である。したがって、吸水表裏拡散面積比が2より小さくては、編織物の肌側に当たる裏面側のベタツキ着用感が低下することになる。この吸水表裏拡散面積比の上限としては40倍程度にするのがよい。
【0029】
本発明において、吸水表裏保水率比と吸水表裏拡散面積比との両値は、それぞれ2倍以上であることが好ましいが、必ずしも同一比率である必要は無く、肌側のベタツキ感の軽減には、吸水表裏保水率比の大小が、より影響する。一方、速乾性には、吸水表裏拡散面積比の大小が、より影響する特性となる。
上述した本発明の編織物は、運動用衣服に好ましく使用される。運動用衣服の種類は特に限定されないが、例えば、スポーツウェア類であるトレーニングウェア、野球ユニフォーム、ハーフパンツ、競技シャツ・パンツ、テニスシャツ、ゴルフシャツ等は勿論のこと、作業服などのように運動を伴うものに着用するもの等にも適用することができる。
【0030】
【実施例】
以下に説明する実施例および比較例において、評価に使用した特性は次の方法によって測定した。
【0031】
〔着用感〕
着用した際の肌側(裏面)の「ベタツキ感」および人工気象室での「着用快適感」の優劣を、それぞれ次の基準により評価した。
(1)肌側(裏面)の「ベタツキ感」
◎:全く「ベタツキ」を感じない
○:「ベタツキ」をほとんど感じない
△:「ベタツキ」を若干感じる
×:「ベタツキ」を感じる
(2)人工気象室での「着用快適感」
○:着用して快適である
×:着用して不快である
(3)「総合評価」
○:運動用衣服として優れている
×:運動用衣服として適していない
【0032】
実施例1
22ゲージ両面丸編機を用い、図3に示す一完全組織NO.1からNO.8の8口給糸からなるリバーシブル編組織において、それぞれ表面編組織用の給糸口NO.2、3、6、7の糸条a、bの糸に、150デニール、72フィラメントのH形断面のポリエステル仮撚加工糸を、また裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に、150デニール、72フィラメントの丸型断面のポリエステル仮撚加工糸をそれぞれ配して編成した。
【0033】
その後、通常のポリエステル編地の染色加工条件に準じて、精練、染色、吸水加工、仕上げセットを行い、目付265g/m2 である編地を得た。この編地表面層におけるH形断面糸の混率は100重量%であり、かつ吸水表裏保水率比は8.8倍、吸水表裏拡散面積比は9.3倍であった。
この編地を用いてトレーニングウェアを試作し、初夏の環境条件である28℃×65%RHに設定された人工気象室で青年男女12名により、トレッドミルを用いた10km/hrのランニング実験を20分間行ったところ、表1に示す評価結果の通り、肌側のベタツキ感がなく、優れた着用快適性を有していた。
【0034】
実施例2
実施例1と同一の丸編機、同一編組織で、表面編組織用の給糸口NO.2、3、6、7の糸条a、bの糸に150デニール、72フィラメントのΙ型断面のポリエステル延伸糸、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に150デニール、72フィラメントの丸型断面のポリエステル仮撚加工糸を配して編成した。
【0035】
得られた編地を実施例1と同一条件で染色加工を行い、目付271g/m2 の編地を得た。この編地表面層におけるΙ型断面糸の混率は100重量%であり、吸水表裏保水率比は11.4倍、吸水表裏拡散面積比は13.7倍であった。
この編地を使用して実施例1と同様にトレーニングウェアを試作し、ランニング実験を行ったところ、表1に示す評価結果の通り、全く問題のないものであった。
【0036】
実施例3
実施例1と同一の丸編機、同一編組織で、表面編組織用の給糸口NO.2、7の糸条aの糸に150デニール、72フィラメントのH形断面のポリエステル仮撚加工糸を、給糸口NO.3、6の糸条bの糸に150デニール、72フィラメントの丸型断面のポリエステル仮撚加工糸を、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に150デニール、48フィラメントの三角型断面のポリエステル仮撚加工糸をそれぞれ配して編成した。
【0037】
得られた編地を実施例1と同一条件で染色加工を行い、目付282g/m2 の編地を得た。この編地におけるH形断面糸の混率は50重量%であり、吸水表裏保水率比は15.3倍、吸水表裏拡散面積比は17.9倍であった。
この編地を実施例1と同様にトレーニングウェアを試作し、ランニング実験を行った結果、表1の評価結果に示す通り、全く問題のないものであった。
【0038】
実施例4
28ゲージ両面丸編機を用い、実施例1と同一の一完全組織NO.1からNO.8の8口給糸からなる編組織において、表面編組織用の給糸口NO.2、3、6、7の糸条a、bの糸に75デニール、36フィラメントのΙ型断面のポリエステル延伸糸を、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に75デニール、36フィラメントの五角型断面のポリエステル延伸糸を配して編成した。
【0039】
その後、通常のポリエステル編地の染色加工条件に準じて、精練、染色、吸水加工、仕上げセットを行い、目付165g/m2 の編地を得た。この編地表面層のΙ型断面糸の混率は100重量%であり、吸水表裏保水率比は9.1倍、吸水表裏拡散面積比は9.9倍であった。
得られた編地から実施例1と同様に競技シャツ・パンツを試作し、ランニング実験を行った結果、表1に示す評価結果に示す通り、全く問題のないものであった。
【0040】
実施例5
70デニール、24フィラメントのH形断面のナイロン延伸糸を表面層に、70デニール、24フィラメントの丸型断面のナイロン延伸糸を裏面層に配置される二重織物を試作した。
その後、通常のナイロン織物の染色加工条件に準じて、精練、染色、吸水加工、仕上げセットを行い、目付220g/m2 の織物を得た。この織物表面層のH形断面糸の混率は100重量%であり、吸水表裏保水率比は6.6倍、吸水表裏拡散面積比は7.2倍であった。
【0041】
得られた編地から実施例1と同様にテニス用ウォームアップスーツを試作し、ランニング実験を行ったところ、表1の評価結果に示す通り、全く問題のないものであった。
【0042】
【表1】
【0043】
比較例1
実施例1と同一の丸編機、同一編組織で、表面編組織用の給糸口NO.2、3、6、7の糸条a、bの糸に150デニール、72フィラメントの丸型断面きポリエステル仮撚加工糸を、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に150デニール、72フィラメントの丸型断面のポリエステル仮撚加工糸を配して編成した。
【0044】
この編地を実施例1と同一条件で染色加工を行い、目付261g/m2 の編地を得た。この編地表面層におけるH形またはΙ形断面糸の混率は0%であり、吸水表裏保水率比は0.9倍、吸水表裏拡散面積比は1.0倍であった。
この編地から実施例1と同様にトレーニングウェアを試作し、ランニング実験を行ったところ、表2の評価結果に示す通り、ベタツキ感が激しく、着用快適性に劣るものであった。
【0045】
比較例2
実施例1と同一の丸編機、同一編組織で、表面編組織用の給糸口NO.2、3、6、7の糸条a、bの糸に150デニール、72フィラメントの三角型断面ポリエステル仮撚加工糸を、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に150デニール、72フィラメントのH形断面のポリエステル延伸糸を配して編成した。
【0046】
この編地を実施例1と同一条件で染色加工を行い、目付273g/m2 の編地を得た。この編地表面層におけるH形またはΙ形断面糸の混率は0%であり、吸水表裏保水率比は0.2倍、吸水表裏拡散面積比は0.5倍であった。
この編地から実施例1と同様にトレーニングウェアを試作し、ランニング実験を行ったところ、表2に示す評価結果に示す通り、ベタツキ感が激しく、着用快適性に劣るものであった。
【0047】
比較例3
実施例1と同一の丸編機、同一編組織で、表面編組織用の給糸口NO.2の糸条aと給糸口NO.3、6の糸条bの糸に、それぞれ150デニール、72フィラメントのH形断面のポリエステル仮撚加工糸を、給糸口NO.7の糸条aの糸に150デニール、72フィラメントの丸型断面のポリエステル仮撚加工糸を、裏面編組織用の給糸口NO.1、4、5、8の糸条c、dの糸に150デニール、72フィラメントの三角型断面のポリエステル仮撚加工糸をそれぞれ配して編成した。
【0048】
この編地を実施例1と同一条件で染色加工を行い、目付266g/m2 である編地を得た。この編地表面におけるH形断面糸の混率は25重量%であり、吸水表裏保水率比は1.5倍、吸水表裏拡散面積比は1.7倍であった。
この網がから実施例1と同様にトレーニングウェアを試作し、ランニング実験を行ったところ、表2に示す評価結果に示す通り、ベタツキ感を感じ、着用快適性に劣るものであつた。
【0049】
【表2】
【0050】
【発明の効果】
上述したように本発明の合成繊維編織物によれば、運動用衣服等に用いた際に、肌側から汗を表側に素速く吸水・透水・拡散させることによりベタツキ感がなく、良好な着用快適性を得ることができ、また合成繊維製であるため優れたウオッシュアンドウェア性等の取り扱い性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(G)は、それぞれ本発明の編織物の表面層に使用するフィラメント糸の断面形状をモデル的に示す概略断面図である。
【図2】(A)〜(E)は、それぞれ本発明の編織物の裏面層に使用するフィラメント糸の断面形状をモデル的に示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施例および比較例に用いた編地の編組織をモデル的に示す編方概略図である。
【符号の説明】
NO.1〜8 編組織の各給糸NO
C1〜C10 表編部を編成するための編針(シリンダー針)
D1〜D10 裏編部を編成するための編針(ダイヤル針)
a、b 表編部を形成する糸
c、d 裏編部を形成する糸
Claims (4)
- 多層構造の編織物であり、該編織物の表面層がH形断面またはΙ形断面であると共に繊維表面に長手方向に沿って複数の凹溝をもつフィラメントを少なくとも30重量%含む糸条から構成され、前記編織物の裏面層が繊維表面に長手方向に沿って延びる凹溝をもたないフィラメント糸条から構成され、前記表面層の前記裏面層に対する吸水表裏保水率比が2倍以上で、かつ吸水表裏拡散面積比が2倍以上である合成繊維編織物。
- 前記裏面層を多数の凸部が分散する凹凸表面に形成した請求項1に記載の合成繊維編織物。
- 前記裏面層を起毛構造にした請求項1または2に記載の合成繊維編織物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の合成繊維編織物からなる運動用衣服。
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