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JP3713918B2 - エンジンの燃料噴射方法及びその装置 - Google Patents

エンジンの燃料噴射方法及びその装置 Download PDF

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JP3713918B2 JP24752497A JP24752497A JP3713918B2 JP 3713918 B2 JP3713918 B2 JP 3713918B2 JP 24752497 A JP24752497 A JP 24752497A JP 24752497 A JP24752497 A JP 24752497A JP 3713918 B2 JP3713918 B2 JP 3713918B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,コモンレール式燃料噴射システムにおけるコモンレール圧力の制御方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,例えば,エンジンの燃料噴射制御に関して,噴射圧力の高圧化を図り,且つ燃料の噴射タイミング及び噴射量等の噴射特性をエンジンの運転状態に応じて最適に制御する方法として,コモンレール式燃料噴射システムが知られている。燃料噴射システムは,ポンプによって所定圧力に加圧された燃料をコモンレールに貯留し,コモンレールに貯留した燃料をインジェクタから対応する燃焼室内に噴射する燃料噴射システムである。加圧された燃料が各インジェクタにおいてエンジンの運転状態に対して最適な噴射条件で噴射されるように,コントローラが,エンジンの運転状態に応じて,コモンレールの燃料圧と各インジェクタに設けられた制御弁の作動とを制御している。
【0003】
従来のコモンレール燃料噴射システムを図5に基づいて説明する。複数のインジェクタ1への燃料供給は,コモンレール2から,燃料流路の一部を構成する分岐管3を通じて供給される。燃料タンク4からフィルタ5を経てフィードポンプ6によって吸い上げられて所定の吸入圧力に加圧された燃料は,燃料管7を通じて燃料ポンプ8に送られる。燃料ポンプ8は,例えばエンジンによって駆動され,燃料を運転状態等に基づいて定められる高圧に昇圧して燃料管9を通じてコモンレール2に供給する,所謂,プランジャ式のサプライ用の燃料供給ポンプである。供給された燃料は所定圧力に昇圧した状態でコモンレール2に貯留され,コモンレール2から各インジェクタ1に供給される。インジェクタ1は,エンジンの型式(気筒数)に応じて通常,複数個設けられており,コントローラ12の制御によって,コモンレール2から供給された燃料を,最適な噴射時期に最適な燃料噴射量でもって対応する燃焼室に噴射する。インジェクタ1から噴射される燃料の噴射圧はコモンレール2に貯留されている燃料の圧力に略等しいので,噴射圧を制御するにはコモンレール2の燃料圧が制御される。
【0004】
燃料ポンプ8からリリーフされた燃料は,戻し管10を通じて燃料タンク4に戻される。また,分岐管3からインジェクタ1に供給された燃料のうち,燃焼室への噴射に費やされなかった燃料は,戻し管11を通じて燃料タンク4に戻される。電子制御ユニットであるコントローラ12には,エンジン回転数Neを検出するためのエンジン気筒判別センサ及びクランク角度センサ,アクセル操作量Accを検出するためのアクセル開度センサ,冷却水温度を検出するための水温センサ,並びに吸気管内圧力を検出するための吸気管内圧力センサ等のエンジンの運転状態を検出するための各種センサからの信号が入力されている。コントローラ12は,これらの信号に基づいて,エンジン出力が運転状態に即した最適出力になるように,インジェクタ1による燃料の噴射特性,即ち,燃料の噴射タイミング及び噴射量を制御する。また,コモンレール2には圧力センサ13が設けられており,圧力センサ13によって検出されたコモンレール2内の燃料圧の検出信号がコントローラ12に送られる。インジェクタ1から燃料が噴射されることでコモンレール2内の燃料が消費されても,コントローラ12は,コモンレール2内の燃料圧が一定となるように燃料ポンプ8の吐出圧を制御する。
【0005】
従来,特公昭60−60020号公報に記載されているように,コモンレール式燃料噴射装置では,運転状態に応じて噴射圧力を目標値に制御するとともに,この運転状態に応じた噴射特性,即ち,燃料噴射量(燃料噴射圧力と燃料噴射期間とで定まる)と燃料噴射時期とを算出し,その算出結果に応じて高圧燃料を噴射するインジェクタの開弁を制御することによって,運転状態に対応した燃料噴射特性を実現している。燃料圧力は,ポンプによって昇圧され且つ圧力調整弁で所定噴射圧に調整される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
コモンレール式燃料噴射装置においては,通常(定常)の運転状態では,排気ガス性能が適切となるように,コモンレール圧力の目標値が設定されている。しかし,コモンレールの目標圧力が一定の目標値ではなく過渡状態にあるときには,圧力制御が適切でないと,排気ガス性能が悪化するという問題がある。即ち,コモンレール式燃料噴射装置では,燃料噴射圧力を上昇させるには,燃料ポンプの制御弁を操作することによってコモンレール圧力を上昇させれば容易に制御することができるが,コモンレール圧力を減少させるには,インジェクタによる燃料の噴射,或いはコモンレール等の噴射系から燃料がリークすることによる以外に手段がない。
【0007】
そのため,エンジンを搭載した車両が高速走行から急減速する場合のように,アクセルペダルを急激に戻す,又はそのような状態から燃料がインジェクタから噴射されない程度にアクセルを戻すようなアクセル操作量の場合には,エンジンの出力回転が減少していくが,アクセルペダル踏込み量の検出結果に基づいてコントローラが定めるコモンレールの目標圧力が急に小さくなるのに対して,コモンレールの実際の圧力,即ち,実圧力が目標値の急減に追従できずに高止まりとなる。即ち,インジェクタからの燃料の噴射は停止しているため,コモンレール内の燃料は消費されず,また,コモンレールからインジェクタに至る噴射系からの燃料のリークも短時間内には期待できないので,コモンレールの圧力が高い状態が続く。このような状態では,インジェクタからの燃料噴射が再開されると,高い圧力で燃料が噴射されるため,NOX が増加して排気ガス性能が悪化する。
【0008】
上記のようなコモンレール圧力の目標圧力に対する減圧方向の応答性が不充分であることに対処するため,特開昭63−117147号公報には,コモンレールに急速減圧用のシステムを組み入れたものが開示されている。この急速減圧用のシステムは,燃料タンクから可変容量燃料ポンプによって燃料蓄圧器に燃料を送り出し,燃料蓄圧器から燃料噴射弁に燃料を供給し,圧力センサによって検出された燃料蓄圧器の燃料圧が,機関の運転状態に応じて定められる目標燃料圧に対応するように,可変容量燃料ポンプの吐出量を制御する内燃機関の燃料噴射制御装置であって,圧力センサによって検出された燃料蓄圧器の燃料圧が目標燃料圧よりも所定値以上に大きくなったときに,燃料蓄圧器に設けられた減圧用のリリーフ弁(電磁弁)を開弁させて燃料蓄圧器の高圧燃料をリリーフ管からリリーフさせている。この内燃機関の燃料噴射制御装置によれば,車両の急減速時に燃料圧は高圧状態から低圧状態に速やかに移行し,減速時における燃料消費が少ないことによる燃料蓄圧器の減圧の遅れを防止している。しかしながら,コモンレールに急速減圧用のシステムは,減圧用のリリーフ弁やリリーフ管を必要とし,部品点数が増加するため燃料噴射制御装置のコストアップを招く。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的は,特開昭63−117147号公報に開示されているようなリリーフ弁やリリーフ管等の別途の部品を必要とせず,既存のシステムをそのまま利用することで上記課題を解決することである。即ち,アクセルペダル踏込み量を急速にゼロにするときのように,燃料噴射量が急速に減少する場合,エンジン出力や排気ガス性能に影響を与えない範囲で,燃料噴射量を僅かに増加することにより,コモンレール圧力を迅速に低下させることを可能としたエンジンの燃料噴射方法及びその装置を提供することである。
【0010】
この発明は、上記の目的を解決するため、以下のように構成されている。即ち、この発明によるエンジンの燃料噴射方法は、燃料ポンプによって送り出された燃料をコモンレールに貯留し、エンジン運転状態に基づいて基本燃料噴射量と前記コモンレールの目標圧力とを求め、前記コモンレールから供給される前記燃料をインジェクタに形成された噴孔から前記基本燃料噴射量に基づいて燃焼室に噴射し、前記コモンレールの圧力を前記コモンレールの目標圧力に一致させるように前記燃料ポンプを制御するエンジンの燃料噴射方法において、前記コモンレールの前記圧力が前記コモンレールの前記目標圧力よりも予め定めた値以上の圧力であるとの圧力条件を満た且つ前記基本燃料噴射量エンジン無負荷時にエンジン回転数を安定させるための第1燃料噴射量を下回る第2燃料噴射量未満となるときに、前記インジェクタから噴射される前記燃料噴射量を前記第2燃料噴射量とすることを特徴とする
【0011】
また、この発明によるエンジンの燃料噴射装置は、燃料ポンプによって送り出された燃料を貯留するコモンレール、前記コモンレールから供給される前記燃料を燃焼室に噴射する噴孔が形成されたインジェクタ、エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段、前記コモンレールの圧力を検出する圧力センサ、前記運転状態検出手段が検出した前記エンジンの運転状態に基づいて基本燃料噴射量と前記コモンレールの目標圧力とを決定すると共に前記圧力センサが検出した前記コモンレールの圧力を前記コモンレールの前記目標圧力に一致させるように前記燃料ポンプを制御するコントローラを備えてなるエンジンの燃料噴射装置において、前記コントローラは、前記コモンレールの前記圧力が前記コモンレールの前記目標圧力よりも予め定めた値以上の圧力であるとの圧力条件満た且つ前記基本燃料噴射量エンジン無負荷時にエンジン回転数を安定させるための第1燃料噴射量を下回る第2燃料噴射量未満となるときに、前記インジェクタから噴射される前記燃料噴射量を前記第2燃料噴射量とすることを特徴とする
【0012】
この発明によるエンジンの燃料噴射方法及びその装置は、上記のように構成されているので、コモンレールの圧力がコモンレールの目標圧力よりも予め定めた値以上の圧力であるとの圧力条件が満たされると、インジェクタから噴射される燃料噴射量をエンジン無負荷時にエンジン回転数を安定させるための第1燃料噴射量を下回る第2燃料噴射量とするので、エンジンの回転数が着実に低下する。第2燃料噴射量は、第1燃料噴射量(一定でもよいが、回転数に応じて定めてもよい)に1未満の係数を乗じた噴射量である。コモンレールからは、第2燃料噴射量に相当する燃料がインジェクタに供給されてインジェクタから噴射されることで消費され続けるため、コモンレール圧力を着実に低下させることが可能となる。したがって、次にアクセルを操作して積極的な燃料噴射を行うときに、異常に高いコモンレール圧力、即ち、燃料噴射圧力で燃料の噴射が行われることが回避され、排気ガス特性を悪化させることがない。また、前記圧力条件が満たされている場合において、基本燃料噴射量が第2燃料噴射量未満という極少量の燃料噴射量となっているときに、燃料噴射量は、第2燃料噴射量にまで僅かに増加する。したがって、コモンレールからの燃料の供給量が増加するので、コモンレールの圧力が迅速に低下する。
【0014】
また,このエンジンの燃料噴射方法及びその装置において,前記圧力条件が満たされるときには,圧力条件が満たされないときよりも,インジェクタから燃料が噴射される燃料噴射時期が遅らされる。前記圧力条件が満たされる場合には,コモンレールの圧力がコモンレールの目標圧力よりも予め定めた値以上の圧力であるので,前記圧力条件が満たされない場合と比較して高い噴射圧でインジェクタの噴孔から燃料が噴射される。したがって,短い噴射期間であっても多量の燃料を噴射可能である。燃料噴射期間の早期に多量の燃料を噴射すると,ノッキング等のエンジン特性上好ましくない現象が生じるので,燃料噴射時期を遅らせて燃料を噴射する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下,添付図面を参照しつつ,この発明の実施例を説明する。図1はこの発明によるエンジンの燃料噴射方法及びその装置における燃料噴射の制御内容の一例を示すメインルーチンのフローチャートであり,図2は図1におけるフローチャートの燃料噴射量制御の内容を示すサブルーチンのフローチャートであり,図3は図1におけるフローチャートの噴射時期制御の内容を示すサブルーチンのフローチャートである。なお,コモンレール式燃料噴射システムとしては,図5に示す従来のものをそのまま用いてよい。
【0016】
図1に示すメインルーチンについて説明する。このルーチンは,実際には,割り込み処理等の中で実行される。
(1)エンジンの出力軸の回転に伴って発生するパルス(例えば,出力軸に固定した歯車の歯に近接するピックアップセンサによって検出する)によって,エンジン回転数Neを算出する(ステップ1,以下S1と略す)。
(2)アクセル開度センサ(例えば,アクセルペダル踏込み量センサ)によって検出された信号からアクセル操作量Accを算出する(S2)。
(3)S1で算出したエンジン回転数Ne,及びS2で算出したアクセル操作量Accに基づいて基本燃料噴射量Qbを算出する(S3)。エンジン回転数Ne及びアクセル操作量Accが,エンジンの運転状態を表している。
(4)コモンレールに設けた圧力センサ13が検出した信号からコモンレール2の圧力(即ち,実際の圧力である実圧力)Pfを算出する(S4)。
(5)S1で算出したエンジン回転数Ne,及びS3で算出した基本燃料噴射量Qbに基づいて,コモンレール2の目標圧力Pf0 を算出する(S5)。
(6)S1〜S5で算出した各情報に基づいて,そのときの運転状態に応じてインジェクタ1から噴射すべき最終燃料噴射量Qfinを求める(S6)。なお,詳細については,図2のフローチャートに基づいて説明する。
(7)S1〜S5で算出した各情報に基づいて,そのときの運転状態に応じてインジェクタ1から噴射すべき燃料噴射時期Tを求める(S7)。なお,詳細については,図3のフローチャートに基づいて説明する。
(8)コモンレール2の目標圧力Pf0 とコモンレール2の実圧力Pfとの偏差からコモンレール圧力のフィードバック制御を行う(S8)。なお,フィードバック制御としては,PID制御が一般的である。
【0017】
図2に示したフローチャートに基づいて,燃料噴射量制御の詳細を説明する。
(1)エンジン回転数Neとアクセル操作量Accとから,基本燃料噴射量Qbを算出する(S10=S3)。
(2)S4で算出したコモンレール2の実圧力PfとS5で算出したコモンレール2の目標圧力Pf0 との差(Pf−Pf0 )が,予め定めた値α(正の値)よりも大であるか否かを比較する(S11)。
(3)S11における比較において,差(Pf−Pf0 )が,予め定めた値αよりも大であると判定されると,S11で算出した基本燃料噴射量Qbが第1燃料噴射量Qpdに一定の割合k(0<k<1)を乗じた値(第2燃料噴射量)よりも小であるか否か比較される(S12)。ここで,第1燃料噴射量Qpdは,無負荷状態にあるエンジンの回転数が安定するときの燃料噴射量である。第1燃料噴射量Qpdは,エンジン回転数Neによらず一定の値としてもよいが,エンジンの回転数Neの関数(エンジンの回転数Neの増加に従って増加する関数)とするのが,より実際のエンジンに適合して好ましい。なお,予め,エンジンの運転をしてこの関数をマップ化しておき,コントローラに入力しておく。
(4)S12において,S10で算出した基本燃料噴射量Qbが第2燃料噴射量よりも小である,即ち,
Qb<Qpd×k
であると判断されると,このことは,S11の判断から,コモンレール2の実圧力Pfが,急激に低下しているコモンレール2の目標圧力Pf0 に比べて高いという状態で,更にS12の判断で,燃料噴射量が非常に少ないためにコモンレールからの燃料の供給によっては緩慢にしか圧力降下せず,コモンレール2の目標圧力Pf0 への追従が遅くなることを意味している。この場合,最終燃料噴射量Qfinは,第2燃料噴射量であるQpd×k(ここで,k<1)に補正して設定される(S13)。燃料噴射量は,Qpd×kより小さい基本燃料噴射量QbからQpd×kに,即ち,基本燃料噴射量Qbよりも大きいがQpdよりも小さい第2燃料噴射量にまで増加することになる。この結果,コモンレール2からの燃料の供給量が増加してコモンレール圧力の低下が促進される。一方,エンジンの回転数Neは,第2燃料噴射量が無負荷状態にあるエンジンの回転数が安定するときの第1燃料噴射量Qpd未満であるので,エンジンの運転状態から求められる通り,次第に低下していく。
(5)S11において,差(Pf−Pf0 )が,予め定めた値α以下であると判断された場合,及びS12において,基本燃料噴射量Qbが第1燃料噴射量Qpdに一定の割合k(k<1)を乗じた値以上である場合には,最終燃料噴射量Qfinは,S10で算出した基本燃料噴射量Qbに設定される。即ち,コモンレール2の目標圧力Pf0 はコモンレール2の実圧力Pfと比較して急激に減少しておらず,又は燃料噴射量,即ち,コモンレール2からの燃料の供給量がある一定以上の量であって,コモンレール圧力の低下が期待できる場合には,燃料噴射量を補正することはせず,最終燃料噴射量Qfinを基本燃料噴射量Qbとする(S14)。
【0018】
次に,図3の記載に基づいて,燃焼サイクルにおける燃料噴射のタイミング,即ち,燃料噴射時期制御について説明する。
(1)燃焼噴射量と同様に,S4で算出したコモンレール2の実圧力PfとS5で算出したコモンレール2の目標圧力Pf0 との差(Pf−Pf0 )が,予め定めた値α(正の値)よりも大であるか否かを比較する(S15=S11)。
(2)差(Pf−Pf0 )がα以下である,即ち,コモンレール2の実圧力Pfがコモンレール2の目標圧力Pf0 に比較的に近いと判断される場合には,基本燃料噴射量Qbとエンジン回転数Neとから定められる噴射時期Tを関数G1(Qb,Ne)によって求める(S16)。関数G1は,予め排気ガス性能,エンジン出力が適切になるような値に予めマップ化されている。
(3)差(Pf−Pf0 )がαよりも大である,即ち,コモンレール2の実圧力Pfがコモンレールの目標圧力Pf0 よりも相当高くなっていると判断される場合には,基本燃料噴射量Qbとエンジン回転数Neとから定められる噴射時期Tを関数G2(Qb,Ne)によって求める(S17)。関数G2は,NOX 性能が低下していることを予め考慮して定められたタイミングとなっており,関数G1で定まる噴射タイミングよりもリタードしている,即ち遅く噴射するように定められている。コモンレール圧力が高いので,短い燃料噴射期間でも多くの燃料が噴射可能である。この場合には,燃料噴射サイクルにおいてエンジンの燃焼特性がより安定している遅い時期に燃料を噴射することになる。
【0019】
図4の記載に基づいて,この発明によるエンジンの燃料噴射方法及びその装置における燃料噴射制御の作動について説明する。図4は,時刻t1 において,アクセル開度Acc,即ち,アクセルペダル踏込み量を一定の踏込み量からゼロにしたときの,エンジン回転数Ne,燃料噴射量Q,及びコモンレール圧力Pの変化の様子を示したグラフである。時刻t1 においてアクセルペダル踏込み量Accを一定の踏込み量からゼロにすると,実線で示す基本燃料噴射量Qbが急減(例えば,ゼロ)し,エンジン回転数Neが次第に低下し始める。しかしながら,基本燃料噴射量Qb,即ち,コモンレール2からの燃料の供給が急減するので,コモンレール2の実圧力Pfは,例えば,インジェクタ1からのリーク燃料に相当する分で低下するのみであり,その低下速度は緩慢である。
【0020】
あるエンジン回転数となる時刻t2 には,次の燃料噴射時における排気ガス性能が適切となるように,予め定められたマップから求められるコモンレール2の目標圧力Pf0 がコモンレール2の実圧力Pfに対して低下する。アクセルペダル踏込み量Accとエンジン回転数Neから算出される目標圧力Pf0 は,比較的速く低下するが,実圧力Pfはそれに追従できず,時刻t3 には,差Pf−Pf0 が予め定めたαよりも大きくなる。また,基本燃料噴射量Qbが,第2燃料噴射量,即ち,第1燃料噴射量Qpdに一定の係数k(0<k<1)を掛けた値よりも小さくなっている。したがって,実圧力Pfの低下が期待できないと判断され,最終燃料噴射量Qfinを破線で示したように,第2燃料噴射量Qpd×kに増加する。これによって,実圧力Pfは,破線で示すように,目標圧力Pf0 により近くなるべく,早期に低下する。その結果,次に燃料噴射量が増加するときに燃料噴射量が過大になって排気ガス性能を低下することが回避される。
【0021】
時刻t4 には,差Pf−Pf0 は予め定めたαよりも再び小さくなる。この場合には,S11の判断により,最終燃料噴射量Qfinを基本燃料噴射量Qbとしてもよいが,基本燃料噴射量Qbが暫く後に上昇することが期待される場合には,第2燃料噴射量Qpd×kを維持する,即ち,図4に示すように燃料噴射量の制御に,補正によって燃料噴射量が増加する場合は直ちに増加させるが,補正を停止することによって燃料噴射量が減少する場合は,直ちに減少させることなく,増加した燃料噴射量を暫く維持するというヒステリシス性を導入してもよい。こうすることによって,燃料噴射量の頻繁な変動を抑制して,燃料噴射量の滑らかな制御を行うことが可能となる。なお,時刻t5 においてアクセルを再度踏み込むと,目標圧力Pf0 は,二点鎖線で示すように時刻t5 以後に上昇する。コモンレール圧力Pの補正前では,時刻t6 まで実圧力Pfが依然として目標圧力Pf0 より大きく,排気ガス悪化の原因となっているが,補正後では実圧力Pfが既に低下しており,排気ガスの悪化が改善されることが分かる。
【0022】
【発明の効果】
この発明は,上記のように構成されているので,次のような効果を奏する。即ち,この発明によるエンジンの燃料噴射方法及びその装置によれば,コモンレール式燃料噴射システムにおいて,コモンレールの実圧力がコモンレールの目標圧力よりも予め定めた値以上の圧力であるとの圧力条件を満たすときに,インジェクタから噴射される燃料噴射量をエンジン無負荷時にエンジン回転数を安定させるための第1燃料噴射量を下回る第2燃料噴射量としているので,エンジンの回転数を着実に低下させることができる。また,コモンレールからは,第2燃料噴射量に相当する燃料がインジェクタに供給され続けるため,コモンレール圧力を着実に低下させることができる。したがって,次にアクセルを操作して積極的な燃料噴射を行うときに,異常に高いコモンレール圧力で燃料を噴射することがなく,排気ガス特性を悪化させることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるエンジンの燃料噴射方法及びその装置における燃料噴射の制御内容の一例を示すメインルーチンのフローチャートである。
【図2】図1におけるフローチャートの燃料噴射量制御の内容を示すサブルーチンのフローチャートである。
【図3】図1におけるフローチャートの噴射時期制御の内容を示すサブルーチンのフローチャートである。
【図4】アクセル開度,即ち,アクセルペダル踏込み量を一定の踏込み量からゼロにしたときの,エンジン回転数,燃料噴射量,及びコモンレール圧力の変化の様子を示したグラフである。
【図5】コモンレール式燃料噴射システムを示す概略図である。
【符号の説明】
1 インジェクタ
2 コモンレール
8 燃料ポンプ
12 コントローラ
13 圧力センサ
Ne エンジン回転数
Acc アクセル操作量
Pf コモンレールの圧力(実圧力)
Pf0 コモンレールの目標圧力
α 予め定めた値
Qb 基本燃料噴射量
Qfin 最終燃料噴射量
Qpd 第1燃料噴射量
Qpd×k 第2燃料噴射量

Claims (4)

  1. 燃料ポンプによって送り出された燃料をコモンレールに貯留し、エンジン運転状態に基づいて基本燃料噴射量と前記コモンレールの目標圧力とを求め、前記コモンレールから供給される前記燃料をインジェクタに形成された噴孔から前記基本燃料噴射量に基づいて燃焼室に噴射し、前記コモンレールの圧力を前記コモンレールの目標圧力に一致させるように前記燃料ポンプを制御するエンジンの燃料噴射方法において、
    前記コモンレールの前記圧力が前記コモンレールの前記目標圧力よりも予め定めた値以上の圧力であるとの圧力条件を満た且つ前記基本燃料噴射量エンジン無負荷時にエンジン回転数を安定させるための第1燃料噴射量を下回る第2燃料噴射量未満となるときに、前記インジェクタから噴射される前記燃料噴射量を前記第2燃料噴射量とすることを特徴とするエンジンの燃料噴射方法。
  2. 前記圧力条件が満たされるときには、前記圧力条件が満たされないときよりも、前記インジェクタから燃料が噴射される燃料噴射時期を遅らせることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料噴射方法。
  3. 燃料ポンプによって送り出された燃料を貯留するコモンレール、前記コモンレールから供給される前記燃料を燃焼室に噴射する噴孔が形成されたインジェクタ、エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段、前記コモンレールの圧力を検出する圧力センサ、前記運転状態検出手段が検出した前記エンジンの運転状態に基づいて基本燃料噴射量と前記コモンレールの目標圧力とを決定すると共に前記圧力センサが検出した前記コモンレールの圧力を前記コモンレールの前記目標圧力に一致させるように前記燃料ポンプを制御するコントローラを備えてなるエンジンの燃料噴射装置において
    前記コントローラは、前記コモンレールの前記圧力が前記コモンレールの前記目標圧力よりも予め定めた値以上の圧力であるとの圧力条件を満たし、且つ前記基本燃料噴射量がエンジン無負荷時にエンジン回転数を安定させるための第1燃料噴射量を下回る第2燃料噴射量未満となるときに、前記インジェクタから噴射される前記燃料噴射量を前記第2燃料噴射量とするものであることを特徴とするエンジンの燃料噴射装置。
  4. 前記コントローラは、前記圧力条件が満たされるときには、前記圧力条件が満たされないときよりも、前記インジェクタから燃料が噴射される燃料噴射時期を遅らせるものであることを特徴とする請求項3に記載のエンジンの燃料噴射装置。
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