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JP4492467B2 - 燃料噴射制御装置 - Google Patents

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JP4492467B2
JP4492467B2 JP2005203830A JP2005203830A JP4492467B2 JP 4492467 B2 JP4492467 B2 JP 4492467B2 JP 2005203830 A JP2005203830 A JP 2005203830A JP 2005203830 A JP2005203830 A JP 2005203830A JP 4492467 B2 JP4492467 B2 JP 4492467B2
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Description

本発明は、燃料を高圧状態で蓄える蓄圧室と、該蓄圧室に燃料を加圧供給する燃料ポンプと、前記蓄圧室に蓄えられた燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える燃料噴射装置を用いて、燃料噴射制御を行なう燃料噴射制御装置に関する。
この種の燃料噴射制御装置として、各気筒に共通のコモンレール(蓄圧室)に高圧燃料を蓄え、コモンレール内の燃料を燃料噴射弁を介して噴射するコモンレール式のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置が周知である。こうした燃料噴射制御装置では、燃料タンク内の燃料を汲み上げてコモンレールへ供給する燃料ポンプを操作することで、コモンレール内の燃圧を目標値に追従させるように制御している。ただし、コモンレール内の燃圧の目標値を変化させる過渡運転時等において、コモンレール内の燃圧が目標値を上回ったとしても、上記燃料ポンプの操作によってはコモンレール内の燃圧が目標値に追従するように制御することができない。
そこで従来は、例えば下記特許文献1に見られるように、コモンレール内の燃圧が目標値を所定以上上回るとき、減圧弁を操作してコモンレール内の燃料を燃料タンクに戻すようにするものも提案されている。これにより、コモンレール内の燃圧の目標値を変化させる場合であっても、コモンレール内の燃圧を目標値に好適に追従させることができる。
ところで、近年、吸入する燃料量の調整によりコモンレールに供給する燃料量が決定される吸入調量式の燃料ポンプが提案されている(特許文献2)。この燃料ポンプを用いると、一旦吸入された燃料は、コモンレールに供給されることとなる。このため、車両の急減速等においては、コモンレール内の燃圧が目標値を大幅に上回る可能性がある。
すなわち、例えば最大に踏み込まれた状態からアクセルペダルが急に放されるに際して、アクセルペダルが放される直前までは、エンジンの高負荷時の燃料噴射量を補うだけの燃料量が、燃料ポンプからコモンレールへの燃料供給量として算出され、これに基づき燃料ポンプが操作される。一方、アクセルペダルが放されると、これに見合った燃料をコモンレールに供給すべく、供給量を低減させるような燃料ポンプの操作がなされる。ただし、減速直前に燃料ポンプに既に吸入された燃料については、アクセルペダルが放された後であってもコモンレールに供給される。そしてこのとき、アクセルペダルが放されることで燃料噴射が停止されると、コモンレールに供給される燃料によって、コモンレール内の燃圧が大きく上昇することとなる。
ここで、上記特許文献1記載の制御装置によれば、コモンレール内の燃圧が目標値よりも所定以上上昇するときには、減圧弁を開弁させることで、上記燃圧のそれ以上の上昇を回避することはできる。しかし、燃圧の目標値がコモンレールの耐圧の上限値に比較的近いときには、減圧弁が開弁する前にコモンレール内の燃圧が上記耐圧の上限に達してしまうおそれがある。ちなみに、上記燃料噴射制御装置としては、その他、例えば特許文献3がある。
なお、上記制御装置に限らず、燃料を高圧状態で蓄える蓄圧室と、該蓄圧室に燃料を加圧供給する燃料ポンプと、前記蓄圧室に蓄えられた燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える燃料噴射装置を用いて燃料噴射制御を行なうものにあっては、蓄圧室内の燃圧が過度に上昇するおそれがあるこうした実情も概ね共通したものとなっている。
特開2002−371940号公報 特開2002−130026号公報 特開2003−307149号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、燃料を高圧状態で蓄える蓄圧室と、該蓄圧室に燃料を加圧供給する燃料ポンプと、前記蓄圧室に蓄えられた燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える燃料噴射装置を用いて燃料噴射制御を行なうに際し、蓄圧室内の燃圧の過度の上昇を好適に抑制することのできる燃料噴射制御装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、燃料を高圧状態で蓄える蓄圧室と、該蓄圧室に燃料を加圧供給する燃料ポンプと、前記蓄圧室に蓄えられた燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える燃料噴射装置を用いて燃料噴射制御を行なう燃料噴射制御装置において、前記燃料ポンプは、吸入する燃料量の調整により前記蓄圧室に供給する燃料量を決定する吸入調量式のポンプであり、前記燃料ポンプは、前記蓄圧室からの以前の燃料の流出態様に基づき前記蓄圧室内の燃圧の低下を見越してこれを補償する制御によって操作されるものであり、前記燃料噴射弁による燃料の噴射に際して前記蓄圧室から流出する出燃料量と前記蓄圧室に供給される入り燃料量との差を、前記燃料ポンプによる燃料の吸入時直前までの指令噴射量に対する該吸入時以降の指令噴射量の変動分に基づき算出する収支算出手段を備えて且つ、前記出燃料量よりも前記入り燃料量が所定以上多くなるか否かを予測する予測手段と、該予測手段により前記所定以上多くなると予測されるとき、前記蓄圧室からの前記出燃料量を強制的に増大させる補正手段とを備えることを特徴とする。
上記構成において、燃料ポンプによる燃料の吸入時以降の指令噴射量が吸入時直前までの指令噴射量よりも減少すると、吸入された燃料量が蓄圧室に供給されることで、蓄圧室内の燃圧がオーバーシュートするおそれがある。この点、上記構成では、こうした状況下、入り燃料量が出燃料量よりも多くなると判断することができる。ここで、上記構成では、蓄圧室内の燃圧が一旦過度に上昇する前に、上記出燃料量よりも上記入り燃料量が所定以上多くなると予測されるときに、出燃料量を強制的に増大させるために、燃圧の過度の上昇を好適に抑制することができる。
特に、上記構成では、燃料ポンプに燃料が吸入されてから、吸入された燃料が蓄圧室に供給されるまでに、タイムギャップがある。そしてこの間に、例えば車両の急減速要求等がなされることで指令噴射量が急減する場合等には、蓄圧室から流出する燃料量が急激に減少する。この場合、吸入された燃料が蓄圧室に供給されることで、蓄圧室に余剰な燃料が供給されることとなる。このため、上記構成では、蓄圧室内の燃圧の過度な上昇が特に生じやすい。このため、上記構成では、補正手段の作用効果を好適に奏することができる構成となっている。
請求項は、請求項記載の発明において、前記予測手段は、前記出燃料量と前記入り燃料量との差を、前記蓄圧室に今回供給される燃料についての前記燃料ポンプによる吸入量の算出時における指令噴射量に対する今回の指令噴射量の変動分に基づき算出する収支算出手段を備えることを特徴とする。
上記構成において、蓄圧室内の燃圧が過度に上昇する主な要因は、指令噴射量が急減することによる。ここで、上記構成によれば、蓄圧室に今回供給される燃料についての前記燃料ポンプによる吸入量の算出時における指令噴射量に対する今回の指令噴射量の変動分に基づき、出燃料量と入り燃料量との差を算出する。このため、今回供給される燃料についての燃料ポンプによる吸入量の算出に際して参照された指令噴射量に対する今回の指令噴射の変動分に基づき、上記差が算出されることとなる。このため、指令噴射量の減少に起因して蓄圧室内の燃圧が過度に上昇する状況にあるか否かを適切に判断することができる。
請求項は、請求項記載の発明において、前記収支算出手段は、前記出燃料量と前記入り燃料量との差を、前記算出時における指令噴射量及び該算出時における前記燃料噴射弁からのリーク量と今回の指令噴射量及び該今回の前記リーク量との差として算出することを特徴とする。
上記構成において、急減速時等には、指令噴射量の急減に加えてリーク量も急減する。このため、急減前の指令噴射量やリーク量に基づく制御により、急減速時には余剰な燃料が供給されることとなる。この点、上記構成によれば、指令噴射量やリーク量が減少する場合であれ、これに起因して蓄圧室に余剰な燃料が供給されることに起因した燃圧の過度の上昇を好適に抑制することができる。
請求項は、請求項記載の発明において、前記蓄圧室内の燃圧を検出する検出手段の検出結果を取り込む手段と、前記蓄圧室内の目標燃圧を算出する目標燃圧算出手段と、前記検出される燃圧を目標燃圧に制御すべく前記燃料ポンプを操作する操作手段とを更に備え、前記入り燃料量は、前記検出される燃圧と前記目標燃圧との差分と、前記指令噴射量とに基づき算出されるものであって、前記収支算出手段は、前記出燃料量と前記入り燃料量との差を、前記算出時における前記入り燃料量から少なくとも今回の指令噴射量を減算することで算出することを特徴とする。
上記構成では、今回蓄圧室に供給される燃料量である上記算出時における入り燃料量から少なくとも今回の指令噴射量を減算することで、上記出燃料量と入り燃料量との差を算出する。このため、少なくとも指令噴射量の急減に伴って蓄圧室内に余剰な燃料が供給されることに起因した蓄圧室内の燃圧の過度の上昇を好適に抑制することができる。
請求項記載の発明は、請求項又は記載の発明において、前記蓄圧室内の燃圧を検出する検出手段の検出結果を取り込む手段と、前記蓄圧室内の目標燃圧を算出する目標燃圧算出手段と、前記検出される燃圧を目標燃圧に制御すべく前記燃料ポンプを操作する操作手段とを更に備え、前記入り燃料量は、前記検出される燃圧と前記目標燃圧との差分と、前記指令噴射量とに基づき算出されるものであって、前記収支算出手段は、前記出燃料量と前記入り燃料量との差を、前記入り燃料量についての前記算出時における値と今回の値との差として算出することを特徴とする。
上記入り燃料量には、それ以前に蓄圧室から流出した燃料量のみならず、蓄圧室内の実際の燃圧を目標とする燃圧とするための燃料量も含まれる。このため、入り燃料量についての上記差は、今回の目標燃圧に対して実際の燃圧を上昇させる燃料量となる。このため、入り燃料量についての上記差を用いることで、目標燃圧に対する追従性を高めることも可能となる。
請求項は、請求項1〜のいずれかに記載の発明において、前記出燃料量と前記入り燃料量との差に基づき、前記蓄圧室内の燃圧を算出する燃圧予測手段を更に備え、前記予測手段は、前記所定以上多くなるか否かの予測を、前記燃圧予測手段により算出される前記蓄圧室内の燃圧が所定の上限値近傍まで上昇するか否かの予測として行なうことを特徴とする。
上記構成によれば、燃圧予測手段によって予測される燃圧が所定の上限値近傍まで上昇するときに、補正手段によって出燃料量の強制的な増大がなされるために、蓄圧室内の燃圧の過度の上昇を好適に抑制することができる。
請求項は、請求項1〜のいずれか記載の発明において、前記蓄圧室には、燃料を貯蔵する燃料タンクに前記蓄圧室内の燃料を戻す減圧弁が備えられており、前記補正手段は、前記減圧弁を強制的に開弁させることで、前記出燃料量を強制的に増大させることを特徴とすることを特徴とする。
上記構成では、蓄圧室内の燃料が燃料タンクに戻されることで、蓄圧室内の燃圧の上昇を好適に抑制することができる。
請求項は、請求項1〜のいずれか記載の発明において、前記補正手段は、前記エンジンの出力に寄与しないタイミングで前記燃料噴射弁を介して燃料を噴射することで、前記出燃料量を強制的に増大させることを特徴とする。
上記構成では、エンジンの出力を増大させることなく、蓄圧室内の燃圧の上昇を好適に抑制することができる。
請求項は、請求項1〜のいずれか記載の発明において、前記補正手段は、アクセル操作量に基づき算出される前記指令噴射量に、前記流出させる燃料量を加算したものを最終的な指令噴射量とすることで、前記出燃料量を強制的に増大させることを特徴とする。
上記構成では、蓄圧室から強制的に流出させる燃料をエンジンの駆動力として有効利用することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる燃料噴射制御装置をディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置に適用した第1の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1に、上記燃料噴射制御装置等の構成を示す。
図示されるように、燃料を貯蔵する燃料タンク2の燃料は、燃料ポンプ10によって汲み上げられ、供給通路21を介してコモンレール30に供給される。ここで、燃料ポンプ10は、燃料タンク2の燃料を汲み上げる低圧ポンプ11と、低圧ポンプ11とその下流側とを連通及び遮断する調量制御弁12と、調量制御弁12を介して低圧ポンプ11から送られてくる燃料を外部へと供給する高圧ポンプ15とを備えている。ここで、高圧ポンプ15は、調量制御弁12の下流側において2つに分岐した燃料通路である第1通路13及び第2通路14に対応して、これら各通路の燃料を吸入する第1プランジャ16及び第2プランジャ17の設けられたプランジャ部18を備えている。このプランジャ部18の内部の空洞部19には、ディーゼルエンジンの出力軸と連結された回転体20が設けられている。そして、回転体20の回転により、第1プランジャ16と第2プランジャ17とが交互に上死点から下死点へ向けて変位することで、第1通路13と第2通路14との燃料が交互に高圧ポンプ15に吸入される。
すなわち、図2(a)に示すように、第2プランジャ17が下死点へと変位するときには、第2通路14の燃料が、第2プランジャ17の変位に伴って吸引される。一方、このときには、第1プランジャ16は上死点に向けて変位するために、第1通路13を介して燃料が外部へと加圧供給される。そして、図2(b)に示すように、第1プランジャ16が下死点へと変位するときには、第1通路13を介して燃料が吸入される。一方、このときには、第2プランジャ17は上死点に向けて変位するために、第2通路14を介して燃料が外部へと加圧供給される。
なお、図1に示すように、第1通路13、第2通路14はその下流で合流して上記供給通路21に接続されている。また、第1通路13、第2通路14の上流側には、それぞれ逆止弁22、23が備えられている。そしてこれにより、第1プランジャ16や第2プランジャ17が上死点へ向けて変位する際の燃料の逆流を回避している。
この燃料ポンプ10により供給される燃料は、燃料ポンプ10に吸入される燃料量(より正確には、高圧ポンプ15に吸入される燃料量)によって決定される。すなわち、第1プランジャ16又は第2プランジャ17が下死点へ向けて変位するときに調量制御弁12を開弁させることで、高圧ポンプ15に燃料が吸入される。そして、この吸入量は、調量制御弁12の閉弁タイミングによって決定される。換言すれば、調量制御弁12の閉弁タイミングによって、燃料ポンプ10から外部に供給される燃料量が決定される。
一方、コモンレール30に供給される燃料は、高圧燃料通路32を介して、各気筒(ここでは、4気筒を例示)の燃料噴射弁40に供給される。この燃料噴射弁40の構成を図3に示す。
燃料噴射弁40の先端に円柱状のニードル収納部42が設けられている。そして、ニードル収納部42には、その軸方向に変位可能なノズルニードル44が収納されている。ノズルニードル44は、燃料噴射弁40の先端部に形成されている環状のニードルシート部46に着座することで、ニードル収納部42を外部(エンジンの燃焼室)から遮断する一方、ニードルシート部46から離座することで、ニードル収納部42を外部と連通させる。また、ニードル収納部42には、コモンレール30から高圧燃料通路32を介して高圧燃料が供給される。
ノズルニードル44の背面側(ニードルシート部46と対向する側の反対側)には、背圧室50が形成されている。背圧室50には、高圧燃料通路32を介してコモンレール30から高圧燃料が供給される。また、ノズルニードル44の中間部には、ニードルスプリング48が備えられており、ニードルスプリング48によりノズルニードル44は燃料噴射弁40の先端側へ押されている。
一方、低圧燃料通路34は、先の図1に示すように燃料タンク2に連通しており、低圧燃料通路34と背圧室50との間は、弁体54によって連通及び遮断される。すなわち、背圧室50と低圧燃料通路34とを連通するオリフィス52が弁体54によって塞がれることで、背圧室50と低圧燃料通路34とが遮断される一方、オリフィス52が開放されることで背圧室50と低圧燃料通路34とが連通される。
弁体54は、バルブスプリング56によって燃料噴射弁40の先端側へ押されている。また、弁体54は、電磁ソレノイド58の電磁力により吸引されることで、燃料噴射弁40の後方側に変位可能となっている。
こうした構成において、電磁ソレノイド58が通電されず電磁ソレノイド58による吸引力が働いていないときには、弁体54は、バルブスプリング56の力によって、オリフィス52を塞ぐこととなる。一方、ノズルニードル44は、ニードルスプリング48によって燃料噴射弁40の先端側へ押され、ニードルシート部46に着座した状態(燃料噴射弁40の閉弁状態)となる。
ここで、電磁ソレノイド58が通電されると、電磁ソレノイド58による吸引力により弁体54は燃料噴射弁40の後方側へ変位し、オリフィス52を開放する。これにより、背圧室50の高圧燃料は、オリフィス52を介して低圧燃料通路34へと移動する。このため、背圧室50の高圧燃料がノズルニードル44へ印加する圧力は、ニードル収納部42内の高圧燃料がノズルニードル44に印加する圧力よりも小さくなる。そして、この圧力差によってノズルニードル44を燃料噴射弁40の後方へ押す力が、ニードルスプリング48がノズルニードル44を燃料噴射弁40の先端側へ押す力よりも大きくなると、ノズルニードル44がニードルシート部46から離座した状態(燃料噴射弁40の開弁状態)となる。
先の図1に示すように、コモンレール30には、その内部と低圧燃料通路34とを連通及び遮断させる減圧弁36が備えられている。また、コモンレール30には、その内部の燃圧を検出する燃圧センサ38が設けられている。
燃圧センサ38の検出値や、アクセルペダル62の踏み込み量(アクセル操作量)を検出するアクセルセンサ64の検出値等、各種センサの検出値は、電子制御装置60に取り込まれる。この電子制御装置60は、中央処理装置や適宜のメモリを備えて構成されており、各種センサの検出値に基づき、調量制御弁12や、減圧弁36、燃料噴射弁40等の各種アクチュエータを操作する。特に、電子制御装置60は、燃料噴射弁40を操作することで、燃料噴射制御を行っている。図4に、燃料噴射制御にかかる機能ブロックを示す。
図4において、実線のブロックは電子制御装置60の内部を示し、また、破線のブロックは電子制御装置60の外部を示す。
噴射量指令値演算部M1は、ユーザによるアクセルペダル62の踏み込み量(アクセル操作量)と、ディーゼルエンジンの出力軸の回転速度とに基づき、燃料噴射弁40を介して噴射される燃料量の指令値(指令噴射量)を算出する。ここで算出される指令噴射量は、通電時間演算部M2において、燃料噴射弁40(詳しくは、電磁ソレノイド58)の通電時間に変換される。そして、ここで算出される通電時間に従って、駆動回路M3により燃料噴射弁40の通電がなされる。
一方、目標圧力演算部M4は、指令噴射量と回転速度とに基づき、コモンレール30内の燃圧の目標値(目標燃圧)を設定する。ちなみに、目標燃圧は、アイドル時において低く、中高速回転に移行するにつれて高圧となる。そして、コモンレール30内の燃圧の検出値が目標値に追従するように、PID制御がなされる。詳しくは、PID制御によって算出される操作量は、燃料ポンプ10の調量制御弁12のデューティ比として算出される。そして、これに基づき、駆動回路M5により調量制御弁12が操作されることで、コモンレール30内の燃圧が制御される。
ここで、本実施形態にかかる燃料噴射制御について、図5を用いて更に説明する。
図5(a)に、電子制御装置60による燃料ポンプ10の燃料供給量(燃料吸入量)の算出タイミングを示す。また、図5(b)に、第1プランジャ16による燃料の吸入、供給態様の推移を、図5(c)に、第2プランジャ17による燃料の吸入、供給態様の推移をそれぞれ示す。更に、図5(d)〜図5(g)に、1番気筒から4番気筒の燃料の噴射タイミングをそれぞれ示す。
図示されるように、第1プランジャ16、第2プランジャ17のいずれかが上死点から下死点へ向けて変位し始めたときに、燃料ポンプ10による吸入量が算出される。これにより、第1プランジャ16や、第2プランジャ17が下死点へ向けて変位しているときの調量制御弁12の操作態様により吸入量が決定されることとなる。
また、本実施形態では、第1プランジャ16からコモンレール30に燃料が供給されるときと対応して3番気筒又は4番気筒に対応する燃料噴射弁40を介して燃料が噴射される。また、第2プランジャ17からコモンレール30に燃料が供給されるときと対応して1番気筒又は2番気筒に対応する燃料噴射弁40を介して燃料が噴射される。このように、本実施形態では、燃料ポンプ10によるコモンレール30への燃料の供給のタイミングと、燃料噴射弁40を介した燃料の噴射のタイミングとが1対1に対応している。
ところで、ユーザによりアクセルペダル62が急に放される急減速時等には、燃料噴射弁40を介した燃料の噴射が停止される。しかし、急減速直後には、急減速直前に算出された吸入量の燃料が燃料ポンプ10に吸入され、これがコモンレール30に供給されることとなる。詳しくは、この供給される燃料は、急減速時以前に燃料ポンプ10により既に吸入された燃料が燃料ポンプ10の出口部よりコモンレール30側へ余剰に供給される燃料量と、急減速時において燃料ポンプ10からコモンレール30入り口までの間の配管内の慣性高圧波によりコモンレール30側へ余剰に供給される燃料量とからなる。そして、急減速直後には燃料の噴射が停止されているため、コモンレール30に供給される燃料は、コモンレール30内の燃圧の上昇に寄与することとなる。
一方アクセルペダル62を最大限踏み込んだ状態から同アクセルペダル62が急に放されたとき等には、急減速直前のコモンレール30の燃圧がその上限値(耐圧の上限値)に比較的近い値に制御されている。このため、コモンレール30に供給される燃料がコモンレール30内の燃圧の上昇に寄与すると、コモンレール30内の燃圧が上限値近傍まで上昇するおそれがある。
そこで本実施形態では、燃料噴射弁40による燃料の噴射に際してコモンレール30から流出する出燃料量よりもコモンレール30に供給される入り燃料量が所定以上多くなると予測されるとき、コモンレール30から流出する燃料量を強制的に増大させるようにする。以下、これについて、詳述する。
図6に、上記コモンレール30から流出する燃料量の強制的な増大にかかる処理の手順を示す。この処理は、電子制御装置60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS2において、アクセル操作量とエンジンの回転速度とに基づき、指令噴射量を算出する。この処理は、先の図4の噴射量指令値演算部M1によって行なわれるものである。続くステップS4においては、指令噴射量とエンジンの回転速度とに基づき、コモンレール30内の目標燃圧を算出する。この処理は、先の図4の目標圧力演算部M4によって行なわれるものである。
これらステップS2、S4の処理は、アクセル操作量を検出するセンサの値をA/D変換する周期に同期して、例えば「8msec」等、所定の時間周期で行なわれる。これに対し、ステップS6の処理は、所定のクランク角周期(ここでは、「180°CA」)で行なわれるものである。ちなみに、ステップS2、S4の処理の周期は、ステップS6の処理の周期よりも短いことが望ましい。
ステップS6では、ステップS2で算出された指令噴射量と、ステップS4で算出された燃圧の目標値とに基づき、燃料ポンプ10の吸入量を推定算出する。ここでは、先の図4に示したように、コモンレール30内の実際の燃圧が目標燃圧にPID制御によりフィードバック制御されていることに鑑みて吸入量を推定する。詳しくは、PID制御による燃料ポンプ10の吸入量には、以下の燃料量が含まれると考えられる。
a.指令噴射量(これは、定常状態においては、主に積分項によって算出される。すなわち、燃料噴射によるコモンレール30の燃料の以前の流出態様(燃圧の以前の低下態様)に基づき、コモンレール30内の燃圧の低下を見越してこれを補償する制御が積分項によってなされるために、指令噴射量は積分項に含まれることとなる。)
b.燃料噴射に伴う燃料のリーク量…このリーク量は、燃料噴射に伴って低圧燃料通路34側へリークする燃料量を意味する。すなわち、先の図3に示したノズルニードル44がニードルシート部46から離座することで燃料噴射が行なわれる際には、オリフィス52を介して背圧室50の燃料が低圧燃料通路34に流出する。このため、この燃料噴射弁40では、燃料の噴射に際して、低圧燃料通路34への燃料のリークを伴う構成となっている。ちなみに、このリーク量も、定常状態においては主に積分項によって算出される。
c.コモンレール30内の実際の燃圧を目標燃圧に制御するための燃料量(これは、主に比例制御と微分制御とによって算出される。)
このため、ステップS6では、実際の燃圧と目標燃圧との差圧ΔPC(=目標燃圧−実際の燃圧)を補償するための燃料量と、指令噴射量とリーク量との和として上記吸入量を推定算出する。ちなみに、上記差圧ΔPCを補償するための燃料量は、燃料ポンプ10からコモンレール30までの間の燃料通路の容積とコモンレール30の容積との和Vと、燃料の体積膨張係数Eとを用いて、ΔPC×V/Eとして算出される。
続くステップS8では、前前回のステップS6において算出された燃料ポンプ10の吸入量(前前回の吸入時の値)から、今回の指令噴射量と、同指令噴射量の噴射に伴うリーク量とを減算した値Aを算出する。また、前前回のステップS6において算出された燃料ポンプ10の吸入量から、前前回のステップS6において参照された指令噴射量と、同噴射量の噴射に伴うリーク量とを減算した値Bを算出する。
ここで、前前回の吸入量を用いるのは、先の図5に示したように、今回の燃料噴射のタイミングでコモンレール30に供給される燃料量が、燃料ポンプ10による前前回の燃料の吸入量となっているからである。
上記値Bは、コモンレール30から流出する燃料量と同コモンレール30に供給される燃料量との差分についての上記前前回の算出時において想定された値である。これは、必ずしもゼロではない。例えばコモンレール30内の燃圧の検出値が目標値を下回るときには、フィードバック制御により、コモンレール30から流出する燃料量よりもコモンレール30に供給する燃料量が多くなる。一方、値Aは、燃料ポンプ10による吸入量の今回の算出時におけるコモンレール30からの流出燃料量と、コモンレール30へ今まさに供給されようとしている値との差分である。
続くステップS10では、コモンレール30内の燃圧のオーバーシュート量ΔPを算出する。このオーバーシュート量ΔPは、コモンレール30から流出する燃料量の算出値が、前前回の燃料ポンプ10の吸入時と比べて今回の吸入時に減少することに起因した量として算出される。
詳しくは、差「A−B」をコモンレール30内の燃圧の上昇量に換算することでオーバーシュート量ΔPを算出する。ここで、差「A−B」を用いるのは、コモンレール30から流出される燃料量の減少量によるコモンレール30内の燃圧の上昇を算出するためである。すなわち、上述したように、値Bには、コモンレール30内の燃圧を意図的に変えるための燃料量が含まれ得るため、この値Bを値Aから減算することで、燃料ポンプ10による燃料の吸入時から燃料ポンプ10からコモンレール30への供給時までの間におけるコモンレール30から流出される燃料量の減少量を算出する。
この差「A−B」に、体積膨張係数Eを乗算し、コモンレール30内の容積と、燃料ポンプ10からコモンレール30までの間の燃料通路の容積との和Vを除算することで、オーバーシュート量ΔPを算出する。
続くステップS12では、燃圧センサ38による燃圧の検出値に、上記オーバーシュート量ΔPを加算したものが、所定値を上回るか否かを判断する。ここで所定値は、コモンレール30の耐圧の上限値からマージン量αを減算したものとして設定されている。ちなみに、ステップS6〜S12が予測手段に対応しており、特にステップS12の処理は、燃圧予測手段に対応している。
そしてステップS12において、燃圧センサ38による燃圧の検出値にオーバーシュート量ΔPを加算したものが所定値を上回ると判断されると、ステップS14〜S16において、コモンレール30から流出される燃料量の強制的な増加にかかる処理を行なう(補正手段に対応)。ちなみに、燃圧センサ38による燃圧の検出値にオーバーシュート量ΔPを加算したものが所定値を上回るとの条件が、上述した「燃料噴射弁40による燃料の噴射に際してコモンレール30から流出する燃料量よりもコモンレール30に供給される燃料量が所定以上多くなるとき」となっている。
ステップS14では、強制的な逃し量Cを、上記差「A−B」として設定する。続くステップS16では、逃し量Cの燃料を逃すべく先の図1に示した減圧弁36を操作する。この減圧弁36の開弁タイミングや開弁期間は、逃し量C及びコモンレール30内の燃圧の検出値に基づき設定することが望ましい。また、この減圧弁36の開弁タイミングは、燃料ポンプ10からコモンレール30への燃料の供給に同期して行なわれることが望ましい。
なお、上記ステップS12において所定値を上回らないと判断されるときや、ステップS16の処理が完了するときには、この一連の処理を一旦終了する。
ここで、図6に示した処理の作用について、図7を用いて説明する。
図7(a)に、アクセル操作量の推移を示し、図7(b)に、指令噴射量の推移を示す。また、図7(c)及び図7(d)に、第1プランジャ16、第2プランジャ17による燃料の吸入、供給態様の推移をそれぞれ示す。更に、図7(e)に、燃料ポンプ10の燃料の供給量の推移を示し、図7(f)に、コモンレール30内の燃圧の推移を示す。
図示されるように、アクセルペダル62が定常的に最大に踏み込まれている時刻t1以前においては、指令噴射量も定常的に大きな値となっている。このとき、第1プランジャ16及び第2プランジャ17も定常的な燃料の吸入及び供給を行なっている。ここで、本実施形態では、コモンレール30内の燃圧のフィードバック制御に際し、特に積分制御を取り入れている。このため、毎回の燃料噴射に際してコモンレール30から流出する燃料量は、積分制御により補償されることとなる。
一方、アクセルペダル62が急に放されることでアクセル操作量がゼロとなる時刻t1以降、指令噴射量もゼロとなる。そしてこの際、コモンレール30内の目標燃圧も低下する。ただし、時刻t1以降の1回目と2回目の燃料ポンプ10による燃料の供給量は、時刻t1より前に算出されたものとなる。このため、減圧弁36を用いた燃料の強制的な流出処理を行なわないと、図7(f)に破線で示すように、コモンレール30内の燃圧が、先の図6のステップS12における所定値βに対応する一点鎖線で示す燃圧を超えてオーバーシュートするおそれがある。これに対し、本実施形態では、減圧弁36による強制的な流出処理を行なうことで、図7(f)に実線で示すようにコモンレール30の燃圧がオーバーシュートすることを回避することができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)燃料噴射弁40による燃料の噴射に際してコモンレール30から流出する出燃料量とコモンレール30に供給される入り燃料量とに基づき予測されるコモンレール30内の燃圧が、所定値以上となると判断されるときに、コモンレール30内の燃料を強制的に流出させる処理をした。このため、コモンレール30内の燃圧が所定値βを上回ることを好適に抑制することができる。
(2)差「A−B」に基づき、換言すれば、コモンレール30から流出する燃料量とコモンレール30に供給される燃料量との差分に基づき、オーバーシュート量を算出した。このため、燃料ポンプ10による燃料の吸入後にコモンレール30から流出する燃料量が急減した場合であっても、これによるコモンレール30内の燃圧の上昇を的確に予測することができ、ひいては、燃圧が所定値を上回ることを好適に抑制することができる。
(3)コモンレール30から強制的に流出させる燃料量を、指令噴射量とリーク量との減少分とした。これにより、コモンレール30内の燃圧の上昇をいっそう好適に抑制することができる。
(4)オーバーシュート量ΔPにより燃圧が所定値を上回ると判断されるとき、減圧弁36を強制的に開弁させることで、流出する燃料量を強制的に増大させた。これにより、コモンレール30内の燃圧の上昇を好適に抑制することができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、上記逃し量Cの燃料を、エンジンのトルクに寄与しないタイミングで燃料噴射弁40を介して噴射するようにする。この噴射時期は、膨張行程後半から排気行程の間の期間とする。
図8に、本実施形態にかかるコモンレール30内の燃料の強制的な流出にかかる処理を例示する。図8(a)は、アクセル操作量の推移を示し、図8(b)は、燃料噴射弁40の操作態様の推移を示している。
図示されるように、アクセル操作量の急減する時刻t11以降、燃料噴射を、ディーゼルエンジンのトルクに寄与しないタイミングで行なう。これに対し、時刻t11において、噴射される燃料がディーゼルエンジンの燃焼室で燃焼に供され、トルクに変換されるタイミングを、破線で示す。
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記(1)〜(4)の効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、上記逃し量Cを、アクセル操作量に基づき算出される上記指令噴射量に加算した量を最終的な指令噴射量として、これに基づき燃料噴射弁40を操作することで最終的な指令噴射量の燃料を噴射する。
図9に、本実施形態にかかるコモンレール30内の燃料の強制的な流出にかかる処理を例示する。図9(a)は、アクセル操作量の推移を示し、図9(b)は、燃料噴射弁40の操作態様の推移を示している。
図示されるように、アクセル操作量の急減する時刻t21以降、アクセル操作量に基づき算出される指令噴射量がゼロとなったとしても、逃し量Cの燃料を燃料噴射弁40を介して噴射する。これにより、時刻t21以降であっても、2回燃料噴射が行なわれることとなる。
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記(1)〜(4)の効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
上記第1の実施形態では、コモンレール30から流出する出燃料量と、コモンレール30に供給される入り燃料量との差を、コモンレール30に今回供給される燃料についての燃料ポンプ10による吸入量の算出時における指令噴射量及びリーク量と今回の指令噴射量及びリーク量との差として算出した。これにより、急減速時の直前においてコモンレール30内の実際の燃圧が目標燃圧と略等しいなら、コモンレール30内の燃圧の増加を正確に予測することができる。ただし、急減速時の直前においてコモンレール30内の実際の燃圧が目標燃圧よりも低い時には、先の図6のステップS12において算出される燃圧(「燃圧の検出値+ΔP」)は、コモンレール30内に余剰な燃料が供給されることで実現される燃圧の真の値よりも低くなる。また、急減速時には目標燃圧も減少するために、指令噴射量及びリーク量の減少分を逃し量Cとしたのでは、実際の燃圧を目標燃圧に追従させる上では十分とは言えない。
そこで本実施形態では、コモンレール30に今回供給される燃料についての燃料ポンプ10による吸入量の算出時の推定吸入量と今回の推定吸入量との差に基づき、逃し量Cを設定する。以下、これについて図10に基づき詳述する。
図10は、本実施形態にかかるコモンレール30から流出する燃料量の強制的な増大にかかる処理の手順を示す。この処理は、電子制御装置60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS22〜S26において、先の図6のステップS2〜S6と同様の処理を行なう。そして、ステップS28においては、ステップS26において算出される燃料ポンプ10による吸入量の推定値についての前前回の吸入時の値Aと今回の吸入時の値Bとを取得する。そして、ステップS30においては、先の図6のステップS10と同様、値Aと値Bとを用いてオーバーシュート量を算出する。続くステップS32においては、上記オーバーシュート量ΔPが所定値γより大きいか否かを判断する。この所定値γは、コモンレール30の燃圧が上記所定値βを上回らない値としてもよいが、これに加えて、実際の燃圧が目標燃圧を上回る許容上限値としてもよい。更に、ステップS34〜S36においては、先の図6のステップS14〜S16と同様の処理を行なう。
上記ステップS8において算出される差「A−B」の符号を反転した値は、実際の燃圧を目標燃圧とするための燃料量であるため、この差から算出されるオーバーシュート量ΔPは、目標燃圧に対するオーバーシュート量を表現した値となっている。このため、ステップS36において逃し量Cの燃料を逃すことで、急減速時であれ実際の燃圧を目標燃圧に迅速に追従させることができる。
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(4)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
(5)燃料ポンプ10の吸入量について、コモンレール30に今回供給される燃料についての燃料ポンプ10による吸入量の算出時と今回の吸入時の値との差に基づき、逃し量Cを設定した。これにより、目標燃圧に対する追従性を高めることができる。
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図11に、本実施形態にかかるコモンレール30から流出する燃料量の強制的な増大にかかる処理の手順を示す。この処理は、電子制御装置60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理においてもまずステップS42,44で先の図10のステップS22,24と同様の処理を行なう。そして、ステップS46では、検出される実際の燃圧と目標燃圧との差圧ΔPCに起因して燃料ポンプ10からコモンレール30に供給される燃料量を算出する。ここでは、上記差圧ΔPCに相当する燃料量「ΔPC×V/E」が、コモンレール30に供給される燃料量として算出される。更にステップS48では、ステップS46で算出される燃料量についての前前回の吸入時の値と前前回の指令噴射量との和を値Aとし、ステップS46で算出される燃料量の今回の吸入時における値と今回の指令噴射量との差を値Bとする。
続くステップS50〜S56では、先の図10のステップS30〜S36に示した処理と同様の処理を行なう。
このように本実施形態では、燃料ポンプ10によって吸入される燃料量を、検出される実際の燃圧と目標燃圧との差圧ΔPCに起因して燃料ポンプ10からコモンレール30に供給される燃料量と指令噴射量との和として算出した。これは、先の図10に示したものと比較してリーク量だけ少ない算出結果を出力することを意味する。しかし、急減速時においては、リーク量は他の要因と比較して無視し得るために、本実施形態によれば図10と同様の制御を簡易に行うことができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・強制的な流出量は、上記逃し量Cに限らない。例えば上記第1〜第3の実施形態において、「{(燃圧の検出値)+ΔP−(所定値β)}×V/E」であってもよい。
・コモンレール30内の燃圧を目標値に制御する手法としては、上記PID制御に限らない。ここで、古典制御によるフィードバック制御を行う場合には、積分制御を行うことで、燃料噴射弁40を介した燃料噴射に際してのコモンレール30からの燃料の流出量が補償されるようになる。そしてこの積分制御では、今回の制御に際してコモンレール30の燃圧の検出値と目標値との差が検出されるか否かにかかわらず、それ以前の検出値と目標値との定常的なずれ量を補償する制御がなされる。このため、定常的な運転がなされている間は、コモンレール30内の燃圧の低下を見越してこれを補償するというメリットがある反面、急減速時等には、燃圧のオーバーシュートの原因となり易い。このため、古典制御においては積分制御を行うときに、本発明の適用が特に有効である。
また、フィードバック制御に限らず、例えば指令噴射量に基づき、コモンレール30から流出する燃料量を算出し、この流出量を補償するようにコモンレール30内の燃圧をフィードフォワード制御してもよい。この場合であっても、急減速時等には、急減速直前の指令噴射量を参照したフィードフォワード制御により燃料ポンプ10に吸入される燃料量は、急減速後に余剰燃料としてコモンレール30に供給されることとなる。したがって、この場合にも、燃圧のオーバーシュートが生じやすいため、本発明の適用が有効である。
要は、以前の燃料の流出態様に基づきコモンレール30内の燃圧の低下を見越してこれを補償するような制御がなされる場合には、本発明の適用が特に有効である。もっとも、例えばコモンレール30内の燃圧を比例制御のみで制御する場合にも、燃料の吸入後に噴射量が急減することで、燃圧のオーバーシュートは生じ得る。
・先の図10や図11に示した処理おいて、ステップS48において値Aを今回の指令噴射量としてもよい。これによっても、現在の実際の燃圧から所定値γ以上は上昇しない制御を行うことはできる。また、この際には、ステップS32やステップS52において、「燃圧の検出値+ΔP」を燃圧の予測値としてこれと先の図6に示した所定値βとを比較する処理としてもよい。
・図10のステップS36や図1のステップS56において、先の第2、第3の実施形態で例示した処理を行なってもよい。
・上記第1〜第3実施形態では、燃圧が所定値を上回ると予測されるときに、コモンレール30からの強制的な燃料の流出処理を行なったが、これに限らない。例えばコモンレール30から流出する燃料量よりも、コモンレール30に供給される燃料量が多くなるときであって、且つ燃圧の検出値が目標値を下回っていないときに行なうようにしてもよい。
・燃料噴射制御態様は、先の図5に示したものに限らない。例えば燃料ポンプ10がプランジャを一つのみ備えるようにし、ディーゼルエンジンの出力軸が1回転する間に先の図1に示した回転体20が2回転するようにしてもよい。
また、プランジャ数を任意の複数Nとしてもよい。この際、互いに異なるタイミングで上死点から下死点へ向けて変位するN個のプランジャを備え、これら任意のプランジャが上死点から下死点へ向けて変位するときに燃料を吸入する燃料ポンプを用いる場合、燃料ポンプによるN回前の燃料の吸入量が、今回の供給量となることを考慮して、先の図6、図10、図11に示した処理を適宜変更することが望ましい。
更に、コモンレール30への燃料の供給と燃料噴射弁40からの燃料の噴射とが一対一に対応していない非同期システムであってもよい。この場合であっても、出燃料量と入り燃料量との差を、燃料ポンプ10による燃料の吸入時直前までの指令噴射量に対する該吸入時以降の指令噴射量の変動分に基づき算出する収支算出手段を備えることは有効である。こうした非同期システムでは、燃料ポンプ10による一回の燃料の吐出量によって、複数回の燃料噴射による燃料量が補償されることがある。この場合、燃料ポンプ10により燃料が吸入された後に指令噴射量が急減する(ゼロとなる)と、その急減したタイミングによって、余剰燃料量は、これら複数回の指令噴射の全部又は一部についての指令噴射量及び燃料噴射に伴うリーク量となる。このため、急減タイミングに応じて上記変動分を算出することが望ましい。なお、上記各実施形態では、説明の便宜上、メイン噴射のみを特に扱ったが、パイロット噴射やプレ噴射、アフタ噴射等の微小噴射についても、その噴射量はメイン噴射量がゼロとなったときにはゼロとなり得る。このため、これら微小噴射についても、急減速時等には余剰燃料となり得る。このため、上記収支算出手段は、吸入時直前までの指令噴射量や吸入時以降の指令噴射量に、これら微小噴射のための指令噴射量をも含めることが望ましい。
・コモンレール30内の燃料を強制的に流出させる手法としては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えば、燃料噴射弁40の空打ち駆動を行なうことで、コモンレール30内の燃圧を制御してもよい。ここで、空打ち駆動は、電磁ソレノイド58への通電を行なうことで、背圧室50と低圧燃料通路34とを連通させ、且つノズルニードル44がニードルシート部46から離座する(燃料噴射弁40が開弁する)前に電磁ソレノイド58への通電制御を止めることで行なうものである。これにより、コモンレール30から供給される燃料を噴射することなく燃料タンク2に戻すことができる。
・燃料ポンプ10としては、吸入する燃料量の調整により蓄圧室に供給する燃料量を決定する吸入調量式のポンプに限らない。これ以外のものであっても、急減速時に、燃料ポンプ10の出口からコモンレール30の入り口間をつなぐ燃料通路内の高圧燃料の慣性高圧波によってコモンレール30側へ余剰な燃料が供給され、コモンレール30内の燃圧が過度に上昇するおそれがあるため、本発明の適用は有効である。
・その他、コモンレール式のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置にも限らず、要は、燃料を高圧状態で蓄える蓄圧室と、該蓄圧室に燃料を加圧供給する燃料ポンプと、前記蓄圧室に蓄えられた燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える燃料噴射装置であればよい。また、この際、内燃機関の気筒数も任意でよい。
燃料噴射制御装置の第1の実施形態の構成を示す図。 燃料ポンプの動作を説明する断面図。 燃料噴射弁の断面構成を示す断面図。 燃料噴射制御の機能ブロック図。 燃料噴射制御態様を示すタイムチャート。 コモンレール内の燃料の強制的な流出処理の手順を示すフローチャート。 燃料の強制的な流出処理態様を示すタイムチャート。 第2の実施形態にかかる燃料の強制的な流出処理態様を示すタイムチャート。 第3の実施形態にかかる燃料の強制的な流出処理態様を示すタイムチャート。 第4の実施形態にかかるコモンレール内の燃料の強制的な流出処理の手順を示すフローチャート。 第5の実施形態にかかるコモンレール内の燃料の強制的な流出処理の手順を示すフローチャート。
符号の説明
2…燃料タンク、10…燃料ポンプ、11…低圧ポンプ、12…調量制御弁、15…高圧ポンプ、30…コモンレール、40…燃料噴射弁、60…電子制御装置(予測手段、補正手段の一実施形態)。

Claims (9)

  1. 燃料を高圧状態で蓄える蓄圧室と、該蓄圧室に燃料を加圧供給する燃料ポンプと、前記蓄圧室に蓄えられた燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える燃料噴射装置を用いて燃料噴射制御を行なう燃料噴射制御装置において、
    前記燃料ポンプは、吸入する燃料量の調整により前記蓄圧室に供給する燃料量を決定する吸入調量式のポンプであり、
    前記燃料ポンプは、前記蓄圧室からの以前の燃料の流出態様に基づき前記蓄圧室内の燃圧の低下を見越してこれを補償する制御によって操作されるものであり、
    前記燃料噴射弁による燃料の噴射に際して前記蓄圧室から流出する出燃料量と前記蓄圧室に供給される入り燃料量との差を、前記燃料ポンプによる燃料の吸入時直前までの指令噴射量に対する該吸入時以降の指令噴射量の変動分に基づき算出する収支算出手段を備えて且つ、前記出燃料量よりも前記入り燃料量が所定以上多くなるか否かを予測する予測手段と、
    該予測手段により前記所定以上多くなると予測されるとき、前記蓄圧室からの前記出燃料量を強制的に増大させる補正手段とを備えることを特徴とする燃料噴射制御装置。
  2. 前記収支算出手段は、前記出燃料量と前記入り燃料量との差を、前記蓄圧室に今回供給される燃料についての前記燃料ポンプによる吸入量の算出時における指令噴射量に対する今回の指令噴射量の変動分に基づき算出することを特徴とする請求項1記載の燃料噴射制御装置。
  3. 前記収支算出手段は、前記出燃料量と前記入り燃料量との差を、前記算出時における指令噴射量及び該算出時における前記燃料噴射弁からのリーク量と今回の指令噴射量及び該今回の前記リーク量との差として算出することを特徴とする請求項2記載の燃料噴射制御装置。
  4. 前記蓄圧室内の燃圧を検出する検出手段の検出結果を取り込む手段と、
    前記蓄圧室内の目標燃圧を算出する目標燃圧算出手段と、
    前記検出される燃圧を目標燃圧に制御すべく前記燃料ポンプを操作する操作手段とを更に備え、
    前記入り燃料量は、前記検出される燃圧と前記目標燃圧との差分と、前記指令噴射量とに基づき算出されるものであって、
    前記収支算出手段は、前記出燃料量と前記入り燃料量との差を、前記算出時における前記入り燃料量から少なくとも今回の指令噴射量を減算することで算出することを特徴とする請求項2記載の燃料噴射制御装置。
  5. 前記蓄圧室内の燃圧を検出する検出手段の検出結果を取り込む手段と、
    前記蓄圧室内の目標燃圧を算出する目標燃圧算出手段と、
    前記検出される燃圧を目標燃圧に制御すべく前記燃料ポンプを操作する操作手段とを更に備え、
    前記入り燃料量は、前記検出される燃圧と前記目標燃圧との差分と、前記指令噴射量とに基づき算出されるものであって、
    前記収支算出手段は、前記出燃料量と前記入り燃料量との差を、前記入り燃料量についての前記算出時における値と今回の値との差として算出することを特徴とする請求項2又は4記載の燃料噴射制御装置。
  6. 前記出燃料量と前記入り燃料量との差に基づき、前記蓄圧室内の燃圧を算出する燃圧予測手段を更に備え、
    前記予測手段は、前記所定以上多くなるか否かの予測を、前記燃圧予測手段により算出される前記蓄圧室内の燃圧が所定の上限値近傍まで上昇するか否かの予測として行なうことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料噴射制御装置。
  7. 前記蓄圧室には、燃料を貯蔵する燃料タンクに前記蓄圧室内の燃料を戻す減圧弁が備えられており、
    前記補正手段は、前記減圧弁を強制的に開弁させることで、前記出燃料量を強制的に増大させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の燃料噴射制御装置。
  8. 前記補正手段は、前記エンジンの出力に寄与しないタイミングで前記燃料噴射弁を介して燃料を噴射することで、前記出燃料量を強制的に増大させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の燃料噴射制御装置。
  9. 前記補正手段は、アクセル操作量に基づき算出される前記指令噴射量に、前記流出させる燃料量を加算したものを最終的な指令噴射量とすることで、前記出燃料量を強制的に増大させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の燃料噴射制御装置。
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