JP3704710B2 - 種結晶着液温度の設定方法及びシリコン単結晶の製造装置 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法と称することがある)を用いたシリコン単結晶の製造のための方法およびその製造装置に関するものであり、詳しくは、製造装置炉内のルツボに充填された多結晶シリコン原料の溶融終了と、多結晶シリコン原料を融解することにより得られたシリコン融液に種結晶を着液する際の適切なシリコン融液の温度を求め、効率的で無駄の無いシリコン結晶育成工程ができるようにした種結晶着液温度の設定方法及びこの方法の実施のために好適に用いられるシリコン単結晶製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、CZ法による単結晶の育成方法と装置について簡単に説明する。一般的なCZ法に用いられている単結晶の育成装置は、製造装置のチャンバー(炉)内にシリコン融液を収容するためのルツボが備えられており、このルツボは高純度のシリコン融液を収容するために原料融液と接する内側が石英製で、内側の石英でできたルツボを保護するためにその外側に黒鉛製のルツボを配置した二重の構造となっている。
【0003】
原料を収容するルツボの周囲には、ルツボ内に充填された多結晶シリコン原料の融解と、原料融解後のシリコン融液を所定温度に保持するための黒鉛等でできた加熱ヒータが取り付けられている。そして、この加熱ヒータの外側には黒鉛製の断熱材が置かれ、製造装置炉内の保温と金属でできた製造装置炉壁の保護の役目を果たしている。
【0004】
また、単結晶育成時に結晶形状や品質を所望のものとするために、単結晶育成時はルツボと種結晶を互いに反対方向に回転させながら諸条件を調整し結晶成長を行っている。この為、製造装置炉内のルツボを支えているルツボ軸の下端にはルツボ回転動機構が取り付けられ、他方、製造装置上方には種結晶を回転しながら上方に引上げることができるよう、種結晶が接続された引上げワイヤーを回転し巻き取るためのワイヤー回転巻取り機構が装備されている。
【0005】
このCZ法による単結晶製造装置を用いてシリコン単結晶を製造するには、まず単結晶製造装置炉内にあるルツボに多結晶シリコン原料を入れ、これをルツボ周囲に配置された加熱ヒータにより1400℃以上の高温に加熱して溶解しシリコン融液とする。その後、多結晶シリコン原料が完全に溶けたのを確認した後に、原料融液を満たしたルツボの位置や炉内に流れる不活性ガス量等の操業条件を単結晶育成条件に合わせ、同時に溶融を終了したシリコン融液の温度を単結晶の育成に適した温度まで下げ炉内環境の調整を図る。
【0006】
そして、単結晶を育成するのに適した温度に融液温度が安定したら静かに種結晶をシリコン融液表面に着液させて、その後ワイヤー回転機構により引上げワイヤーを回転させながら徐々に巻取り、種結晶の下方に単結晶棒を育成していくものである。
【0007】
このようなシリコン単結晶棒の育成において、種結晶を融液に浸漬した以降の工程は、製造装置の制御機構や炉内の結晶育成状況を把握するための各種検出装置の機能が充実したことにより、所定の単結晶棒を育成した後に融液から単結晶を切り離すまでは、殆ど作業者が介在することなく自動で結晶育成が進められるようになっており省力化が図られている。
【0008】
しかし、これら以外の、例えば多結晶シリコン原料の溶融工程等においては、ルツボ内で溶融される原料の状態により溶融条件を複雑に制御する必要があることから、作業者の判断に委ねられ製造工程が進められる場合が多い。
【0009】
そのため、種結晶を原料融液に着液させた以降は自動で工程が進められるのに対し、それ以外の工程、特に多結晶シリコンの溶融工程では作業者が製造装置の傍について監視と装置の調整を行いながら工程を進める必要があることから、単結晶製造作業の自動化と工程の効率化を進める上で問題視されている。
【0010】
製造装置炉内のルツボに充填された多結晶シリコン原料の溶融にあたっては、加熱ヒータにより原料を過熱して高温に保持し溶解するが、ルツボ内で原料が完全に溶融されたことを装置を用いて判断することが難しく、通常は作業者の経験に基づいて判断される場合が多い。また作業者は溶融が終了したことを完全なものとするために、溶融が終了したと判断された後もヒータによる加熱を所定時間継続し、融液内部に原料の溶け残りが無いように生産性を犠牲にして原料の溶融作業を行っている場合が多いのが現状である。
【0011】
単結晶の成長工程に移る前に多結晶シリコン原料を完全に溶融する必要があるのは、単結晶棒の育成中に原料が融液表面に浮遊して単結晶の育成を疎外したり、融液内に溶け残りが存在するためシリコン融液の温度が安定せず、結晶成長が順調に行われないことによる。
【0012】
これらの理由により、多結晶シリコン原料の溶融を完全にするために、作業者は融液表面の原料が全て溶解しシリコン融液に浮かぶ多結晶シリコンが無くなった後でも、融液内に原料があった場合には単結晶育成時に上記のような問題が生じるため、溶融時間を長く取り融液をある程度長時間高温加熱することで原料溶融工程での溶け残りを排除している。
【0013】
しかし、多結晶シリコン原料の溶融が完全に終了しているかどうかの判断は、多結晶シリコン原料の形状やルツボへの原料充填量、あるいはルツボの大きさ等に大きく左右されるものであり、熟練した作業者でも難しい作業である。
【0014】
また、昨今では長尺大直径のシリコン単結晶棒を製造するために直径が50cmを超える大型のルツボも使用されており、これに充填される多結晶シリコンも100kg以上となることから、益々原料溶融終了のタイミングを把握することが難しくなる一方で、溶融工程を終了するまでの時間が長くなっている。
【0015】
更に、多結晶原料の溶融に時間がかかると言うことは、単に単結晶の製造時間を長くし生産性を低下させるだけではなく、1400℃を超える高温下に石英製のルツボが長時間さらされることにもなり、ルツボの耐久性を弱め融液と接する石英ルツボの内表面を粗し単結晶の育成途中でスリップ転位を発生させたり、あるいはルツボの劣化が早まることで長時間の操業が困難になる等、品質や結晶の歩留りにおいても問題を生じさせる原因ともなる。
【0016】
その為、むやみに原料溶融時間を長くするのは好ましいものではなく、多結晶シリコン原料の溶融終了を適切に見極めることは、その後の工程にも影響をおよぼす要因ともなり作業者への負担も大きい。
【0017】
また、多結晶シリコン原料を融解しシリコン融液とした後に、融液温度を降温して種結晶をシリコン融液の表面に着液できるように融液温度を所望の値に安定させることも大きく作業者の経験に頼っている。
【0018】
シリコン融液に種結晶を着液させて種結晶の下方に単結晶を育成するには、多結晶シリコン原料の溶融が終了したら原料融液の温度を降下し、シリコン融液の温度を単結晶育成に適した温度に安定させる必要がある。しかし、このシリコン単結晶を育成するのに適した温度に融液を安定させることは非常に難しい作業であり、これまで色々と機械により湯面温度を検出して所望の温度となるように制御する方法が検討されてきたが、光学式温度計等を用いても製造装置炉内の温度を高精度に誤差無く検出することは、ルツボに収容されている融液量や製造装置炉内のホットゾーン等による影響を受け易いので非常に難しく、多くの場合、種結晶をシリコン融液に着液させる際の融液表面温度を見極めることも作業者の判断に任せた作業である。
【0019】
CZ法を用いたシリコン単結晶の製造においては、種結晶を融液に着液させた際の融液温度が、適切に単結晶を育成する条件と合致していないと、種結晶の下方に単結晶棒を育成することができなくなる。
【0020】
例えば、種結晶を融液に着液させる際の融液温度が所望の温度より低い場合には、種結晶を融液に着液させたと同時に種結晶周囲の融液表面に固化が生じ、この状態で無理に単結晶を育成しても正常に種絞りを行うことができず、安定して単結晶を育成することができなくなってしまう。一方、融液の温度が所望の値よりも高い場合には、種結晶を融液に着液させても種結晶の先端が溶けてしまい、種結晶をシリコン融液に着液させることができなくなり、融液温度を下げない限りは単結晶を育成することが不可能になると言う問題が生ずる。
【0021】
従って、種結晶を融液に着液させた際に温度が適切な値となっていない場合は、再度加熱ヒータの発熱量を調整して融液温度を所望の値に安定する作業を行うことになる。しかし、この作業はルツボ内の大量のシリコン融液の温度を変え融液温度が安定するまで待つ必要があり、製造時間に大きなロスが生じるばかりかルツボにも負担をかけることになり、単結晶育成の途中でスリップ転位がもたらされる等次工程にも影響を与えるので、可能であれば一回で融液の温度を単結晶製造に適した条件に合わせるのが好適である。
【0022】
しかし、作業者の経験に頼った作業ではバラツキが大きく、融液温度を適温とする作業は時間のかかる作業となっている。特に、昨今では長尺大直径結晶生産のためルツボも大型化し収容するシリコン融液の量も多量となる傾向にあり、益々融液温度を適切に調整することは難しくなる一方であり、自動化が望まれている作業の一つともなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、これらの問題を解決するために成されたものであり、CZ法を用いたシリコン単結晶の製造において、ルツボに収容された多結晶シリコン原料を加熱ヒータにより加熱溶融する際に、溶解したシリコン原料の融液面温度を測定することによって多結晶シリコン原料が完全に溶けたことを検出するとともに、溶融が終了した後にシリコン融液温度を降温して単結晶を育成するのに適した融液温度を効率よく求め、工程ロスを少なくし作業の省力化と負担軽減を図ることができるようにした種結晶着液温度の設定方法及びシリコン単結晶製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法の第1の態様は、単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造における多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法であって、前記ルツボ内に収容した多結晶シリコン原料が融解する際のシリコン融液面温度を光学的手段により測定し、測定したシリコン融液面温度の変動幅が所定値以下の値となった時点を多結晶シリコン原料の溶融が終了した第1の溶融終了点とし、この第1の溶融終了点によって多結晶シリコン原料の溶融終了を検出することを特徴とする。
【0025】
このような検出方法を用いて、ルツボ内に収容された多結晶シリコン原料の溶融終了を検出するようにすれば、確実にルツボ内の多結晶シリコン原料が溶融したことを知ることができる。このような多結晶シリコン原料の溶融終了を検出する方法を用いることによって、人手により製造装置炉内を観察して原料の溶融終了を確認した時と比べ、溶融をより確実なものとするためにルツボを長時間無駄に加熱したり、頻繁に作業者が炉内を覗くことも必要がなくなり、作業の効率化と生産性向上を図ることが可能となる。また、装置によって多結晶シリコン原料の溶融終了を知ることができるので、作業者の経験の有無に拘らず安定した溶融終了の判断が可能であるため工程が安定するのに加え、作業者の習熟期間の短縮にもつながる。
【0026】
多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法の第2の態様は、単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造における多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法であって、前記ルツボ内に収容した多結晶シリコン原料が融解する際のシリコン融液面温度を光学的手段により測定し、測定したシリコン融液面温度の変動幅が所定値以下となったら、更に5分以上の所定時間融液温度の測定を継続し、この間、融液面温度の変動幅が所定値以下であったら前記所定時間が経過した時点を多結晶シリコン原料の溶融が終了した第2の溶融終了点とし、この第2の溶融終了点によって多結晶シリコン原料の溶融終了を検出することを特徴とする。
【0027】
湯面温度の測定値から温度の変動幅を検出して、その値が事前に定めておいた値よりも小さくなった場合であっても、測定値の誤差を考慮すればその後継続して融液面温度データを観察し、事前に定められた値以下に所定時間安定して変動幅が推移したときに多結晶原料の溶融終了とすれば、検出をより確実なものとすることが可能となり誤検知を防止できる。
【0028】
なお、融液温度の変動幅が事前に定められた値以下になった後に、融液面温度を継続して観察する時間が短すぎる場合は、原料溶融終了の誤検出の確率が高くなるので、5分以上計測を続けて判定するのが好ましい。一方、あまり長時間計測するのも工程を長引かせるので好ましいものではなく、長くても30分以内にとどめるべきであり、最適値は10分前後とすべきである。
【0029】
また、融液温度の変動幅が事前に定められた値以下になった後に、融液面温度を継続して観察している時間内に変動幅が事前に定められた値以上になった場合には、その時点から測定をやり直すか、所定時間あるいは所定条件を満たすまで溶融状態を維持した後に融液の溶融終了を検出するような方法を取っても良い。
【0030】
多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法の第3の態様は、単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造における多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法であって、前記ルツボ内に収容した多結晶シリコン原料が融解する際のシリコン融液面温度を光学的手段により測定し、測定したシリコン融液面温度の変動幅が所定値以下となったら、更に5分以上融液温度の測定を継続し、この間、多結晶シリコンを融解してできたシリコン融液の測定温度が所定温度以上に達した時点を多結晶シリコン原料の溶融が終了した第3の溶融終了点とし、この第3の溶融終了点によって多結晶シリコン原料の溶融終了を検出することを特徴とする。
【0031】
多結晶シリコン原料の溶融中は、融液は常にヒータにより加熱されており少しずつ融液温度は上昇を続けている。特に多結晶原料の溶融が終了すると確実に融液温度は上昇していくため必要以上に温度が上がるとルツボ壁の劣化が促進されるので好ましいものではない。従って、多結晶シリコン原料の溶融終了を判断する一つのパラメータとして、シリコン融液温度の変動幅が所定値以下になった後にシリコン融液面温度を継続して観察する場合に、多結晶シリコンを融解してできたシリコン融液の測定温度が所定温度(融液加熱温度の上限値)以上に達した時に多結晶シリコン原料の溶融の終了とする条件を加味すれば、必要以上にルツボが加熱されることを抑制できる上、溶融終了を検出する信頼性をより高いものとすることができる。
【0032】
多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法の第4の態様は、単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造における多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法であって、前記ルツボに収容されたシリコン融液の液面を撮像する撮像装置を設け、該撮像装置により撮影されたシリコン融液面の画像信号を二値化処理し、この二値化処理された信号により多結晶シリコン原料がシリコン融液面上に浮遊していないことを検出した時点を多結晶シリコン原料の溶融が終了した第4の溶融終了点とし、この第4の溶融終了点によって多結晶シリコン原料の溶融終了を検出することを特徴とする。多結晶シリコン原料が完全に溶けたことを検出するには、テレビカメラ等の撮像装置を用いてシリコン融液の液面を撮像し、その撮像信号を二値化処理することによっても検出することもできる。
【0033】
多結晶シリコン原料の表面は金属特有の光沢を持っており、ヒータ等からの輻射熱を反射した場合にはシリコン融液とは異なる照度を示す。この特性を生かし、ルツボ内のシリコン融液の表面を撮像装置で捉え、例えば、画像信号に所定強度(しきい値)以上の信号であれば「1(明部)」、それより低い値の信号であれば「0(暗部)」を出力するような二値化処理を行い、撮像した画面内に「1」となる照度を示す部分が無くなれば原料融液が完全に溶けたものと判断することが可能である。多結晶シリコン原料は、シリコン融液より比重が軽いため完全に融液となるまでは表面に浮遊している。画面から、しきい値以上の高照度の信号が消たことを検出することができれば、概ね原料の溶融が終わったことを知ることができる。
【0034】
さらに、前記した第1〜第3の溶融終了点のいずれか一つの溶融終了点と第4の溶融終了点の双方を検出し、時間的に遅く検出された方の溶融終了点によって多結晶シリコン原料の溶融終了を検出することもできる。
【0035】
すなわち、シリコン融液の温度変動が所定値以下になったこと、あるいは温度変動が所定値以下であることが所定時間継続したこと、もしくは温度変動が所定値以下になった後にシリコン融液の温度が所定温度以上に達したことと、シリコン融液面の撮像画面を二値化処理することにより多結晶シリコン塊が融液面から消えたこととの両方を検出し、いずれか時間的に遅く検出された方の溶融終了点によって多結晶シリコン原料の溶融終了を検出するようにすれば、より高い精度で溶融が終了したことを自動で検出することが可能となるものである。また、このような方法により原料の溶融終了を検出するようにすれば、誤報、誤動作が防止され信頼性、安全性の高い検出方法になる。
【0036】
次に、本発明の種結晶着液温度の設定方法の第1の態様は、単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造における種結晶着液温度の設定方法であって、前記ルツボ内に収容した多結晶シリコン原料が融解する際の融液面温度を光学的手段により測定し、測定した融液面温度の変動幅が所定値以下となったら、その時の融液面温度測定値の最小値を第1の最小融液面温度とし、この第1の最小融液面温度を種結晶を融液に着液させる際の種結晶着液温度とすることを特徴とする。
【0037】
このような方法により種結晶を融液に着液させる際の種結晶着液温度を設定するようにすれば、種結晶を融液に着液した際に融液の温度が低すぎてシリコン融液表面に固化をもたらしたり、あるいは融液温度が高すぎて種結晶を融解してしまい種結晶を融液に着液できない等の問題を少なくでき、種結晶を融液に着液するためのシリコン融液温度を合わせるのに必要とする時間が短縮できる。
【0038】
特に、種結晶を融液に着液する際のシリコン融液の温度を適切な温度に調整することは熟練した作業者でも難しく、時間を要する作業となっている。また、融液温度を所望の値となるように調整している間は頻繁に炉内を観察する必要があり、工数と作業負担のかかる工程となっているが、本発明の方法を用いることにより溶融終了時に種結晶着液温度を的確に知ることができるので、降温操作の自動化と温度調整に無駄な時間を必要とせず、作業者の負担軽減と工程時間の短縮を図ることが可能となる。
【0039】
そして、本発明の種結晶着液温度の設定方法の第2の態様は、単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造における種結晶着液温度の設定方法であって、前記ルツボ内に収容した多結晶シリコン原料が融解する際の融液面温度を光学的手段により測定し、測定したシリコン融液面温度の変動幅が所定値以下となった時に、更に5分以上融液温度の測定を継続し、この間のシリコン融液面温度の最小値を第2の最小融液面温度とし、この第2の最小融液面温度を種結晶を融液に着液させる際の種結晶着液温度とすることを特徴とする。このような構成とすれば、前記した方法よりも一層確実に種結晶の着液温度を求めることができる。
【0040】
種結晶着液温度の設定をこのような方法により行えば、より誤差が少なく確実な着液温度を知ることができる。
【0041】
なお、測定したシリコン融液面温度の変動幅が所定値以下の値となった時以降、継続してシリコン融液温度を測定する時間は、必要以上に短いと誤差を誘導する原因ともなるので短くとも5分以上とするのが良く、一方、長すぎても無駄な時間を費やすことになりルツボ壁の劣化を招く等の支障を来すので、シリコン融液温度の測定を継続する時間は30分以内とすべきである。好ましくは、10分程度とするのが効率的で工程時間のロスも少なくてすむ。
【0042】
本発明のシリコン単結晶の製造装置の第1の態様は、単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造装置であって、前記ルツボに収容されたシリコン融液の液面温度を光学的に測定する融液面温度測定手段と、この融液面温度測定手段に接続され得られた温度データから融液面温度の最大値と最小値を求め、この最大値と最小値の差を融液面温度の変動幅として予め入力されているデータと比較し、変動幅が予め入力されていたデータの値より小さくなった時に、多結晶シリコン原料の溶融終了と判断してヒータ電力制御信号を送る操業条件制御装置と、この操業条件制御装置からのヒータ電力制御信号を基にヒータ 電力を種結晶着液温度まで降下させるためのヒータ電力制御装置を備え、前記ルツボに収容されたシリコン融液の液面温度を光学的に測定する融液面温度測定手段からのデータを基に融液面の温度変動幅を求め、この温度変動幅が制御装置内に入力されている値よりも小さくなった時の融液面温度測定値の最小値を種結晶着液温度としてヒータ電力制御信号を送るようにしたことを特徴とする。
【0043】
このような装置とすることによって、ルツボ内の原料溶融が終了したのを自動的に検出し、作業者を介する必要なくシリコン融液の降温操作に移行することが可能となる。これによって溶融工程での無駄な融液加熱を抑えられるとともに、溶融終了を見極めるための作業者の負担が軽減し、工程時間の安定につながる。
【0044】
また、前記融液面温度測定手段からのデータを基に融液面の温度変動幅を求め、この温度変動幅が制御装置内に入力されている値よりも小さくなった時の融液面温度測定値の最小値を種結晶温度としてヒータ電力制御信号を送るような構成としてあり、原料融液の溶融終了を検出したと同時に、融液降温操作後の種結晶着液温度も知ることができるので、融液面温度測定値の最小値を種結晶着液温度として、この温度となるように融液の降温操作を行えば自動的に所望の種結晶着液温度となる。これによって、シリコン融液の降温操作後に融液温度を種結晶着液温度に合わせ込む作業操作の負担を少なくすることが可能となる。
【0045】
本発明のシリコン単結晶の製造装置の第2の態様は、単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造装置であって、前記ルツボに収容されたシリコン融液の液面温度を光学的に測定する融液面温度測定手段と、この融液面温度測定手段に接続され得られた温度データから融液面温度の最大値と最小値を求め、この最大値と最小値の差を融液面温度の変動幅として予め入力されているデータと比較し、変動幅が予め入力されていたデータの値より小さくなった時に、多結晶シリコン原料の溶融終了と判断してヒータ電力制御信号を送る操業条件制御装置と、この操業条件制御装置からのヒータ電力制御信号を基にヒータ電力を種結晶着液温度まで降下させるためのヒータ電力制御装置と、前記ルツボに収容されたシリコン融液の液面を撮像する撮像装置と、該撮像装置により撮影された画像を二値化処理する画像処理装置とを備え、該画像処理装置により二値化処理を施した画像信号がしきい値以下となった時に多結晶シリコン原料の溶融終了と判断することができるようにするとともに前記ルツボに収容されたシリコン融液の液面温度を光学的に測定する融液面温度測定手段からのデータを基に融液面の温度変動幅を求め、この温度変動幅が制御装置内に入力されている値よりも小さくなった時の融液面温度測定値の最小値を種結晶着液温度としてヒータ電力制御信号を送るようにしたことを特徴とする。
【0046】
この装置によれば、多結晶シリコン原料の溶融終了を検出するにあたり、前記シリコン単結晶の製造装置の第 1 の態様による原料溶融終了の自動検出機能に加えて、ルツボに収容されたシリコン融液の液面をテレビカメラあるいはCCDカメラ等の撮像装置により画像として取り込み、融液表面に浮遊する原料塊の照度と、シリコン融液面の照度を二値化処理により区分し、取り込んだ画像から多結晶シリコン塊の照度信号が消えたことも溶融終了を検出する機能によっても高い精度に溶融終了を検出できる。
【0047】
この装置によれば、前記した第1〜第4の溶融終了点のいずれをも検出することができ、極めて信頼性、安全性の高い検出を行うことが可能となる。
【0048】
なお、種結晶着液温度の検出値は、製造装置炉内の構造やルツボに収容されたシリコン融液の量等の影響を受け真値から多少ずれる場合がある。このような時は、検出値に適宜補正を加えて精度を向上させるようにすればより確かな装置を構成することが可能である。
【0049】
本発明の技術思想について更に詳しく説明する。多結晶シリコン原料を溶融するにあたっては製造装置炉内を高温に過熱する必要があり、シリコン融液の温度を直接測定することは非常に難しく、一般的には放射温度計や二色温度計等の光学的な温度計測手段を用いて製造装置炉外から測定を行っている。しかし、多結晶原料の溶融時には、ヒータからの発熱光の反射等による多結晶シリコン表面から光の反射があり、光学的手段によってルツボ内の原料温度を測定しようとするとこれらの影響を受け測定値のバラツキが非常に大きくなってしまい、多結晶シリコン原料の融解が終了するまでは真の温度を測定することは難しい。そこで、通常は融液温度の測定は多結晶原料の溶融終了後から行っている。
【0050】
一方、多結晶シリコン原料が完全に融解すると、光学式の計測系の測定を乱すような多結晶原料からの反射等が無くなるため、シリコン融液の温度測定値も安定し正常な測定を行うことができるようになり、その後、更にヒータ電力を変えずに溶融を継続すると、所定の温度変動を保ちながらしだいに融液温度は上昇する。
【0051】
前記多結晶シリコン原料の溶融終了を検知するための方法の眼目は、多結晶原料が融液中にある場合の測定温度のバラツキと、原料が完全に溶け終わりシリコン融液の温度がある程度安定した時の検出温度のバラツキの違いを検出することにより、多結晶シリコン原料が溶け終わったことを検出する点にある。多結晶原料が融液内にある時の融液温度の検出値はバラツキが大きく、溶融終了後の温度変動と明確に区別できることから、これを利用して原料の溶融の有無を検出できるようにすれば、作業者の目視に頼ることなく装置により確実に溶融終了を検出できるものである。
【0052】
また、多結晶シリコン原料の溶融終了間際の融液温度は、ルツボ内には未溶融のシリコン多結晶と溶融液が混在している状態にあり、この時の溶融液の温度は略シリコンの融点(1420℃)近くにあるものと考えられる。そして、降温工程終了後、種結晶を融液に着液させる際の融液温度はこのシリコンの融点付近であることが望ましく、溶融終了直後の融液温度と種結晶を融液に着液するのに適した融液温度との関係を繰り返し測定調査した結果、溶融終了後の融液温度測定値において、その最小値が略種結晶着液温度に近い値を示すことがわかった。
【0053】
ルツボ内のシリコン融液は、ヒータからの加熱により常に熱対流を生じている。この対流の影響でシリコン融液はある幅を持って温度変動を繰り返しているが、原料溶融終了直後の融液温度変動において、その時測定した融液温度の最小値がシリコンの融点、即ち種結晶を融液に着液される際の融液温度に最も近い値を示すものである。
【0054】
特に、製造装置炉外から光学式の測定装置を用いて融液の温度を測定する方法では、融液を測定装置の間にあるガラス等の遮蔽物やヒータの加熱状態、あるいは溶融する原料の量等による影響を受けやすく、融液面の絶対的な温度を測定して液温を種結晶着液温度に合わせることは非常に難しいとされている。そこで、本発明のような方法により種結晶着液温度を求めれば、相対的に種結晶着液温度を検出することになるので温度計測時にもたらされる測定誤差を小さく押さえることが可能となり、融液温度を目的とした種結晶着液温度に的確に合わせることができる。
【0055】
なお、多結晶シリコン原料塊の溶融終了を更に確実に検出するには、CCD素子や光電管等の撮像素子を用いたテレビカメラによりルツボ内のシリコン融液面を撮影し、その撮影信号に電気的な処理を施し、融液面に浮かぶ原料塊が画面から消えたことも検出した上で、多結晶シリコン原料の溶融終了と判断すれば、信頼性の高い検出方法並びに装置とすることができる。
【0056】
多結晶シリコン原料の溶融時には、原料の比重が融液よりも軽いことから、多くの原料塊は常に融液表面に浮遊しながら溶融が進む。従って、シリコン融液面を観察していれば、多結晶シリコンが溶け終えたか、未溶融の状態であるかは判断することができる。
【0057】
特に、多結晶シリコン原料は金属光沢を有しており、シリコン融液の表面に浮遊している多結晶シリコン原料は、ヒータ等からもたらされる輻射熱を高照度で反射するため融液部分と浮遊物部分の明暗を判別し易く、撮像装置により取り込んだ画像を暗部と明部に分ける二値化処理を施すことによって、多結晶シリコン原料が融液上に浮遊しているか、否かを判定することができる。
【0058】
この二値化処理による融液上の浮遊物の有無と、融液表面の温度測定からもたらされる温度変動の測定値の双方の結果を用いて、多結晶シリコン原料の溶融終了を検出するようにすれば、検出精度並びにさらなる信頼性の向上につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら、CZ法によるシリコン単結晶の育成を例にあげて説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。例えば、本発明方法および装置は、原料融液に磁場を印加しながら単結晶を育成するMCZ法を用いた場合でも当然利用できるものである。
【0060】
図1は、本発明の単結晶製造装置の一つの実施の形態を示す断面概略図である。図1の単結晶製造装置12は、原料融液を収容し単結晶の育成が行なわれる製造装置炉本体14と、育成された単結晶を収容する上部チャンバー21を有している。炉本体14の内部中央には支持軸15を介して内側を石英で、外側が黒鉛のルツボCが回転可能にかつ上下動可能に設けられている。そして、このルツボCには多結晶シリコン原料が充填され、ルツボCの周囲に配置された加熱ヒータ18を加熱することによって融解されシリコン融液Mとなる。また、加熱ヒータ18の外周には製造装置の炉本体14を保護し炉内の保温効果を高めるための断熱材20が配置されている。
【0061】
一方、上記製造装置12の上部チャンバー21の上方には炉内に垂下されたワイヤー23を巻き取り巻き出しするためのワイヤー巻取り装置25が設けられ、ワイヤー23下端の種ホルダー26に取り付けられた種結晶28を、必要に応じて上下動及び回転動させることが可能とされている。なお、図示例ではワイヤー式のCZ法単結晶製造装置を例としているが、これはワイヤー23に替わりシャフト(金属製の棒等)で単結晶を引上げるシャフト式単結晶製造装置でも同様である。
【0062】
上記炉本体14の覗き窓30の外側には、シリコン融液面温度を測定する光学的手段である光学式の温度測定器22が取り付けられている。この温度測定器22によって炉内のルツボCに収容された多結晶シリコン原料や原料融液Mの表面温度を測定できる。この温度測定器22は単結晶育成時に炉内の育成環境を適切に制御するための操業条件制御用コンピュータ等の操業条件制御装置38に接続されており、温度測定器22によって計測されたシリコン融液の温度は随時この操業条件制御装置38に取り込まれ処理されるものである。このシリコン融液面温度を測定する光学的手段としては、上記した光学式の温度測定器22の他に、従来公知のものを用いることができる。
【0063】
そして、この操業条件制御装置38により処理された結果に基づいて加熱ヒータ18の電力をヒータ電力制御装置40によって所望の値に制御し、ルツボC内の融液温度を工程に応じた温度に調節する。
【0064】
図2は、上記操業条件制御装置38を用いた本発明に係る多結晶シリコン原料の溶融終了を検出するための処理フローの一例を示したものである。以下に図2によって本発明方法における処理手順を詳細に説明する。
【0065】
この操業条件制御装置38には、予め単結晶を育成するための操業条件データとともに、キーボード等の入力装置を通して多結晶シリコン原料の溶融終了を検出するために用いられる温度変動幅の設定値T1と、この設定値T1以下になった時に融液面温度を継続して測定する時間、即ち判定までの温度変動観察時間t2と、原料溶融終了後ヒータ加熱により融液温度が上昇し過ぎないように設定される融液加熱温度の上限値T2と、加熱ヒータ18に電力の供給が開始されてから原料がある程度融解するのを待つ時間、即ち判定開始までの待ち時間t1が入力されている(ステップ100)。
【0066】
上記温度変動幅の設定値T1としては、30℃〜100℃、好ましくは40℃〜60℃が用いられる。この変動幅が100℃を超えていると溶融の終了を完全には検出できず、30℃に満たないと実際には溶融が終了しているにもかかわらず溶融の終了が検出できない時間が長くなりすぎる。
【0067】
上記判定までの温度変動観察時間t2としては、必要以上に短いと誤差を誘導する原因ともなるので短くとも5分以上とするのが良く、一方、長すぎても無駄な時間を費やすことになりルツボ壁の劣化を招く等の支障を来すので、シリコン融液温度の測定を継続する時間は30分以内とすべきであり、好ましくは10分程度とするのが効率的で工程時間のロスも少なくてすむ。
【0068】
また、上記融液加熱温度の上限値T2としては、シリコンの融点(1420℃)を超える温度を設定すればよいが、例えば1480℃〜1600℃程度で具体的には1500℃程度が適当である。
【0069】
まず、加熱ヒータ18に電力を供給し多結晶シリコン原料の溶融を開始する(ステップ101)。ルツボC内の原料がある程度融解するまでの時間t1が経過した後(ステップ102)、温度測定器22によりルツボC内の原料融液Mの温度Tの計測を開始する(ステップ103)。測定データから、融液温度Tのバラツキの最大値Tmaxと最小値Tminを求め、最大値Tmaxと最小値Tminの差を融液温度Tの実変動幅△Tとして(ステップ104)、予め入力されていた変動幅の設定値T1とを比較し(ステップ105)、実変動幅△Tが変動幅の設定値T1よりも大きい場合(ステップ105のNO)は、ステップ103に戻り融液温度Tの測定を継続する。
【0070】
その後、溶融が進み融液温度の実変動幅△Tが予め入力されていた変動幅の設定値T1よりも小さな値となったら(ステップ105のYES)〔この時点を第1の溶融終了点と判断し、多結晶原料の溶融終了(ステップ108)に移行することもできる。〕、次のステップに移行し、事前に設定された5分以上の所定時間t2の間、融液温度Tの温度測定を継続し、その間の実温度変動幅△Tと予め設定されていた設定温度変動幅T1とを比較し(ステップ106)、△T<T1であれば(ステップ106のYES)、上記所定時間t2が経過した時点を第2の溶融終了点と判断し、多結晶原料の溶融終了(ステップ108)としてヒータ電力の電力量を低下させ原料融液を降温させる(ステップ109)。
【0071】
なお、実温度変動幅△Tが設定温度変動幅T1以下となっている間に測定した融液温度Tの最小温度Tminを、種結晶着液温度STとして操業条件制御装置38に記憶しておき(ステップ107)、溶融終了後の融液Mの降温作業はこの時の種結晶着液温度STに短時間で安定するように制御すれば、効率的に降温作業を進めることができる。
【0072】
即ち、融液温度Tを上記測定した融液温度最小値Tminと比較し(ステップ110)、T≦Tminの場合(ステップ110のYES)には、原料融液の降温工程を終了し(ステップ111)、種結晶を原料融液に着液する(ステップ112)。ステップ110においてT≦Tminでない場合(ステップ110のNO)には、ステップ109に戻って原料融液を降温させる。
【0073】
また、融液Mの実温度変動幅△Tが設定温度変動幅T1以下になった後に設定時間t2が経過するまでの間に実温度変動幅△T(測定温度最大値Tmax−最小値Tmin)が設定温度変動幅T1を超えた場合(ステップ106のNO)には、ステップ103に戻りその時点から更に融液温度Tを計測しながら設定した所定時間t2が経過するのを待つ(後述するステップ106aを省略した場合)。
【0074】
一方、溶融終了を検出するまでの間、融液Mは加熱ヒータ18によって加熱し続けられているため不用意に測定が継続され続けられてしまうという問題がある。これを防止するために、融液Mの実温度変動幅△Tが設定温度変動幅T1以下となった以降は、ステップ106で△T<T1でない場合、即ち、融液Mの実温度変動幅△Tが設定温度変動幅T1を超えた場合(ステップ106のNO)には、融液温度Tの設定された上限値T2と融液温度Tとの比較を行い(ステップ106a)、温度測定器22による測定温度が所定温度(上限値T2)を超えた場合(ステップ106aのYES)には、この時点を第3の溶融終了点と判断し、設定した所定時間t2の経過を待たずに原料の溶融終了(ステップ108)及び融液Mの降温工程(ステップ109)に移行するように設定すれば、溶融工程の終了検出がより確実なものとなる。また、ステップ106aにおいて、融液温度Tが上限値T2に達しない場合(ステップ106aのNO)には、上記の場合と同様にステップ103に戻り、融液温度Tを測定しながら設定した所定時間t2が経過するのを待つ。
【0075】
なお、図2のフローチャートには、ステップ106において△T<T1でない場合(ステップ106のNO)のみ、融液温度Tと上限値T2を比較する工程(ステップ106a)が実行されるフローが示されているが、この融液温度Tと上限値T2の比較工程は、図2の処理フローに限定されるものではない。即ち、ステップ105において△T<T1となった後(ステップ105のYES)、設定した所定時間t2の間に融液温度の計測を継続している間、融液温度の変動幅が所定値以下であろうがなかろうが、融液温度が上昇する場合が考えられるため、融液温度Tの上限値T2を設けその温度に到達した時点を第3の溶融終了点と判断する必要がある。したがって、所定時間t2の間に融液温度の変動幅が所定値以下の場合においても、上記した融液温度Tと上限値T2の比較工程は、実行されるものであり、温度測定器22による融液の測定温度が所定温度(上限値T2)を超えた場合には、この時点を第3の溶融終了点と判断し、所定時間t2の経過を待たずに原料の溶融終了(ステップ108)及び融液Mの降温工程(ステップ109)に移行するように設定される。
【0076】
本発明方法においては、実温度変動幅△Tが△T<T1となった以降の融液温度測定値の平均値が1500℃を超えた場合は、強制的に降温工程に移行する制御プログラムとするのが好適である。
【0077】
本発明のシリコン単結晶の製造装置は、図1に示した構成の他に図4に示す構成を採用することもできる。図4の製造装置12aと図1の製造装置12の基本的構成は同じであるので、相違点について以下に説明し、その他の構成についての再度の説明は省略する。図4において、図1の記載と同一部材は同一符号で示してある。図4の製造装置12aでは、図1の製造装置12の構成に加え、炉本体14の外側に撮像用覗き窓30aを開穿し、この撮像用覗き窓30aの外側には、ルツボCに収容されたシリコン融液面を撮像するための撮像装置42であるテレビカメラが取り付けられている。このテレビカメラ42により取り込まれたシリコン融液Mの画像(信号)は、テレビカメラ42の後段に接続されている画像処置装置44へ送られ、シリコン融液面と融液面に浮遊する多結晶シリコン原料塊を「0値」あるいは「1値」となる電気信号に変換する二値化処理が施される。
【0078】
通常は、入力信号の強度が所定の照度以上である場合が「1値」、それ以下である場合が「0値」となるように画像処理装置44にしきい値が設定されており、このしきい値との比較で、金属光沢を持ち高照度である原料塊が「1値」、原料塊よりも低照度のシリコン融液が「0値」として信号の変換が行われる。図5に、多結晶シリコン原料塊を「1値」、シリコン融液を「0値」とした場合の、二値化処理後のシリコン融液面の撮影画面イメージを示す。図5(a)は、シリコン融液に原料塊が浮遊している状態を示す。図5(a)において、多結晶シリコン原料が溶け残っている場合は、融液上に浮遊しており、撮像画面を二値化処理すると金属光沢をもつ原料塊は、白く捉えることができる。図5(b)はシリコン融液面に浮遊する原料塊が全て溶け、シリコン融液面のみが撮影されている状態を示す。図5(b)において、多結晶シリコン原料が完全に溶け終わると、二値化処理された画面は、黒一色の画像として写る。
【0079】
画像処理装置44から出た信号は、次に操業条件制御装置である操業条件制御用コンピュータ38に入り、温度測定器22で計測されたシリコン融液Mの温度と併せ演算処理が行われ、この結果に基づいて、以降の製造装置12aの制御が行われるようにする装置構成とするのも望ましい。
【0080】
なお、温度測定器22で計測されたシリコン融液の温度情報を用いることなく、画像処理装置44から出た信号のみを操業条件制御用コンピュータ38に入れて演算し、その結果に基づいて製造装置12aの制御を行うこともできる。この場合の多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法の処理フローの一例を図6に示す。図6において、まず、しきい値の設定を行う(ステップ200)。次に、上記テレビカメラ42によってシリコン融液面の撮像を行う(ステップ201)。撮像データを画像処理装置44へ送って二値化処理(未溶融物あり→1値、未溶融物なし→0値)を行う(ステップ202)。この二値化処理信号は操業条件制御用コンピュータ38に送られ、二値化画面の解析が行われ、さらに二値化画面の全てが「0値」か否か判断される(ステップ203)。二値化画面の全てが「0値」でない場合、即ち「1値」が存在している場合には、シリコン融液面の撮像を再度行う(ステップ201)。二値化画面の全てが「0値」の場合には、この時点を多結晶シリコン原料の溶融が終了した第4の溶融終了点とし、この第4の溶融終了点によって多結晶シリコン原料の溶融終了を検出し、溶融終了工程(ステップ204)に移行する。
【0081】
更に、この時の検出結果をより確かなものとするためには、図4に示される構成とし、図7に示す処理フローとすることもできる。
【0082】
図7に示す溶融終了を判断するための処理フローは、図2の処理フローのステップ105とステップ106の間に融液面の撮像データの二値化処理解析工程(ステップ300)を追加したものである。この二値化処理解析工程においては、ルツボ内に収容された多結晶シリコン原料が完全に溶け終えたことをより確実に検出するために、テレビカメラ42等からのシリコン融液面の画像信号を画像処理装置44により二値化処理し、この二値化処理された信号を基に、多結晶シリコン原料の表面に未溶融物が存在するか否かを判定した上で、その後の処理フローを進めるようにしている。
【0083】
まず、図7の処理フローでは、実温度変動幅△Tが温度変動幅の設定条件T1に対し△T<T1となる条件を満たした(ステップ105のYES)後に、原料融液面上の浮遊物有無を判定する。二値化処理解析工程(ステップ300)において、画像処理後の二値化信号を「原料融液=0」「多結晶シリコン原料=1」に設定した場合、取り込んだシリコン融液面の画像信号が全て「0」を満たした時に、全ての原料が溶け終えたと判断し(ステップ300のYES)、その後の処理フローへと移行する。
【0084】
この時、テレビカメラの視野が狭く、一度にルツボ内の融液面全景を撮影できない場合は、ルツボ回転を利用してルツボが1回転以上する時間の間、未溶融物の判定をつづけて融液全面にわたって、判定処理を行う事が必要である。融液全面を撮影した二値化画面で全ての値が「0値」であれば、原料融液面に原料融液塊は無いものと判断する。
【0085】
以上の条件を満たすことができず、画像信号の一部にでも原料塊の存在を示す「1値」の信号が入力された場合(ステップ300のNO)には、原料融液温度測定(ステップ103)まで戻り温度の安定を待つ。
【0086】
また、図7の処理フローでは、シリコン融液Mに浮遊する原料塊の判定を、ステップ105の後に設けたが、ステップ105の前段やステップ106、106aの後段に位置させてもよい。
【0087】
以下、本発明方法の実施例と比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0088】
(実施例1)
図1と同様の製造装置を用いて、本発明の方法を実施した。まず、当該製造装置に口径が60cmの石英製ルツボをセットした上で、ルツボ内に120kgの多結晶シリコン原料を充填し、当該製造装置の加熱ヒータに150kwの電力を通電して多結晶シリコン原料の溶融を行った。なお、この時操業条件装置には多結晶原料の終了を検出するための判定条件として、次の条件を入力し原料融液の溶融終了を検出した。
1)入電開始から溶融終了判定開始までの待ち時間(t1): 3時間
2)溶融終了を判定する為の温度変動幅の設定値(T1): 50℃
3)溶融終了を判定する為に実温度変動幅が設定値t1以下の値を維持する時間(t2): 10分
4)実温度変動幅が溶融終了条件の設定値T1以下となった以降、強制的に溶融終了と判断される融液温度の上限値(T2): 1500℃
【0089】
この結果、溶融開始から230分後に実温度変動幅がT1以下となり、その後、10分間実温度変動幅はT1以下が維持されたため、溶融開始から4時間後に溶融終了と判定されて降温工程に移行した。なお、この判定の間の融液温度の測定温度最小値(Tmin)は1425℃であり、この温度を種結晶着液温度として降温操作を行い、融液温度がTminの値で安定したところで種結晶を融液に着液させた。
【0090】
種結晶は問題なく融液に着液し、再度、融液温度を調整する必要もなく次工程に移行することができた。この時、溶融終了の判定から種結晶を融液に着液されるまでの時間は50分であった。図3には、融液温度測定開始から種結晶を融液に着液させるまでの融液温度の測定値を示す。
【0091】
(比較例1)
実施例1と同じ装置を用い、同じ大きさのルツボに同量の多結晶シリコンを充填し、作業者により手動操作にて溶融を行ったところ溶融終了の判定までに4時間30分を要し、更に融液温度を降温し種結晶着液温度まで安定させるのに65分の時間がかかった。
【0092】
この結果によれば、本発明方法を用いることによってこれまで作業者がおこなってきた溶融から降温までの工程を自動化できることが確認できたとともに、溶融工程及び降温工程においても装置によって適切は判定が行われた為、工程時間の短縮にもつながったものと考えられる。
【0093】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。上記の実施の形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様の効果を奏するものはいかなるものであっても、本発明の技術的範囲に包含されることは勿論である。
【0094】
例えば、本発明の装置では、多結晶シリコン原料の溶融終了検出後、自動で融液温度の降温操作に移るとしたが、単に溶融終了を検出したらブザーやランプを点燈させて作業者に知らせるような簡易的な装置であっても良い。原料の溶融終了を検出するのみの装置であっても、人為的な要因を排除できるので十分にその効果を得ることができる。
【0095】
また、本発明では、単結晶を育成するのにあたりルツボに原料を仕込み溶融する単結晶育成工程での初期溶融をその一例として説明したが、単結晶を育成した後に再度ルツボに原料を充填して一つのルツボから複数本の単結晶を育成するマルチプリング法においての単結晶製造の再充填原料溶融にも、本発明を適用することも当然可能である。そして、本発明の方法及び装置は、原料融液に磁場を印加しないで単結晶を育成するCZ法を例に挙げて説明したが、原料融液に磁場を印加しながら単結晶棒を成長させるMCZ法を用いた単結晶製造においても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上に述べたごとく、CZ法を用いたシリコン単結晶の製造において、多結晶シリコン原料の溶融終了を検出する方法を用いれば、作業者の経験如何に関わらず装置により多結晶原料の溶融終了点を判断することができるようになる。これによりCZ法を用いた単結晶製造の溶融工程での作業が安定すると同時に、作業の省力化にもつながり作業者の負担も軽減される。また、的確に多結晶原料の溶融終了と種結晶をシリコン融液に着液させる際の融液温度を検出できるようになるので、溶融から種結晶を融液に浸漬するまでの時間が短縮され単結晶の生産性向上にもつながる。
【0097】
また、同時に多結晶シリコン原料の溶融から種結晶を融液に浸漬するまでの時間が短縮されることで、必要以上にルツボを加熱することが軽減されるためルツボ内壁の劣化を抑制することができ、長時間の操業にも対応することが可能となる。特に、長尺大直径単結晶を育成するために必要とされる長時間の操業においてその効果を十分発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明のシリコン単結晶の製造装置の一つの実施の形態を示す断面概略図である。
【図2】多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】実施例1における融液温度測定開始から種結晶を融液に着液させるまでの融液温度の測定値を示すグラフである。
【図4】本発明のシリコン単結晶の製造装置の他の実施の形態を示す断面概略図である。
【図5】多結晶シリコン原料塊を「1値」、シリコン融液を「0値」とした場合の、二値化処理後のシリコン融液面の撮影画面イメージを示す図面で、(a)はシリコン融液の原料塊が浮遊している状態、(b)はシリコン融液面に浮遊する原料塊が全て溶け、シリコン融液面のみが撮影されている状態を示す。
【図6】多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法の処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図7】多結晶シリコン原料の溶融終了の検出方法の処理手順の別の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
12:単結晶製造装置、14:炉本体、15:支持軸、18:加熱ヒータ、20:断熱材、21:上部チャンバー、22:温度測定器、23:ワイヤー、25 :ワイヤー巻取り装置、26:種ホルダー、28:種結晶、30:覗き窓、38:操業条件制御装置、40:ヒータ電力制御装置。
Claims (4)
- 単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造における種結晶着液温度の設定方法であって、前記ルツボ内に収容した多結晶シリコン原料が融解する際の融液面温度を光学的手段により測定し、測定した融液面温度の変動幅が所定値以下となったら、その時の融液面温度測定値の最小値を第1の最小融液面温度とし、この第1の最小融液面温度を種結晶を融液に着液させる際の種結晶着液温度とすることを特徴とする種結晶着液温度の設定方法。
- 単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶の製造における種結晶着液温度の設定方法であって、前記ルツボ内に収容した多結晶シリコン原料が融解する際の融液面温度を光学的手段により測定し、測定したシリコン融液面温度の変動幅が所定値以下となった時に、更に5分以上融液温度の測定を継続し、この間のシリコン融液面温度の最小値を第2の最小融液面温度とし、この第2の最小融液面温度を種結晶を融液に着液させる際の種結晶着液温度とすることを特徴とする種結晶着液温度の設定方法。
- 単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造装置であって、前記ルツボに収容されたシリコン融液の液面温度を光学的に測定する融液面温度測定手段と、この融液面温度測定手段に接続され得られた温度データから融液面温度の最大値と最小値を求め、この最大値と最小値の差を融液面温度の変動幅として予め入力されているデータと比較し、変動幅が予め入力されていたデータの値より小さくなった時に、多結晶シリコン原料の溶融終了と判断してヒータ電力制御信号を送る操業条件制御装置と、この操業条件制御装置からのヒータ電力制御信号を基にヒータ電力を種結晶着液温度まで降下させるためのヒータ電力制御装置を備え、前記ルツボに収容されたシリコン融液の液面温度を光学的に測定する融液面温度測定手段からのデータを基に融液面の温度変動幅を求め、この温度変動幅が制御装置内に入力されている値よりも小さくなった時の融液面温度測定値の最小値を種結晶着液温度としてヒータ電力制御信号を送るようにしたことを特徴とするシリコン単結晶の製造装置。
- 単結晶製造装置内のルツボに多結晶シリコン原料を充填し、ヒータを加熱して多結晶シリコン原料を融解した後にシリコン融液に種結晶を着液して種結晶の下方に単結晶を育成するチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造装置であって、前記ルツボに収容されたシリコン融液の液面温度を光学的に測定する融液面温度測定手段と、この融液面温度測定手段に接続され得られた温度データから融液面温度の最大値と最小値を求め、この最大値と最小値の差を融液面温度の変動幅として予め入力されているデータと比較し、変動幅が予め入力されていたデータの値より小さくなった時に、多結晶シリコン原料の溶融終了と判断してヒータ電力制御信号を送る操業条件制御装置と、この操業条件制御装置からのヒータ電力制御信号を基にヒータ電力を種結晶着液温度まで降下させるためのヒータ電力制御装置と、前記ルツボに収容されたシリコン融液の液面を撮像する撮像装置と、該撮像装置により撮影された画像を二値化処理する画像処理装置とを備え、該画像処理装置により二値化処理を施した画像信号がしきい値以下となった時に多結晶シリコン原料の溶融終了と判断することができるようにするとともに前記ルツボに収容されたシリコン融液の液面温度を光学的に測定する融液面温度測定手段からのデータを基に融液面の温度変動幅を求め、この温度変動幅が制御装置内に入力されている値よりも小さくなった時の融液面温度測定値の最小値を種結晶着液温度としてヒータ電力制御信号を送るようにしたことを特徴とするシリコン単結晶の製造装置。
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