JP3700910B2 - 半導体歪センサ及びその製造方法ならびに走査プローブ顕微鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体歪センサおよびその製造方法ならびに走査プローブ顕微鏡に係り、特に、半導体基板で構成したプローブの梁部に金属を接触させてショットキーバリアを形成し、プローブの撓み量を、ショットキーバリアの特性変化として検出できるようにした半導体歪センサおよびその製造方法ならびに走査プローブ顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の走査型プローブ顕微鏡(SPM)では、探針がプローブの自由端に取り付けられ、試料表面の凹凸に応じて探針が上下動する際に生ずるプローブの撓み量は、光学インターフェロメトリや光学偏光技術によって検出されていた。しかしながら、これらの光学的な検出方法では構成が複雑化して調整も難しいという問題があった。一方、近年になって撓み量や加速度を検出するセンサとして、小型、軽量であり、撓み量を電気信号として直接出力し得る特徴を持った半導体歪センサが広く用いられるようになり、これがSPMのプローブにも採用されるようになってきた。
【0003】
このようなプローブ型半導体歪センサは、例えば図20に示されているように、半導体基板の一部2を「コの字」形に選択蝕刻して形成された自由端1aを有する片持ばりアーム部(梁部)1と、片持ばりアーム部1の固定端近傍(根元)に形成されたゲージ部3とにより構成され、ゲージ部3は、自由端1aの撓み量に応じて当該部分に生じる応力歪を検出し、これを電気信号に変換して出力する。
【0004】
従来の半導体歪センサでは、例えば特開平5−196458号公報に記載されているように、ゲージ部3がピエゾ抵抗体で構成されていた。ピエゾ抵抗体は応力が加わると電気抵抗が変化することから、撓み量の検出は、ピエゾ抵抗体の抵抗変化をホイートストンブリッジ等の抵抗ブリッジ回路で測定することによって行われていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、プローブの撓み量をピエゾ抵抗体に加わる応力歪として検出しようとすると、ピエゾ抵抗体では歪量に対する抵抗変化率、換言すれば電圧あるいは電流変化率が小さく、かつ測定感度が低いので、その検出のためには複雑な抵抗ブリッジ回路が必要になるのみならず、抵抗ブリッジを構成する各抵抗体の調整を極めて正確に行わなければならないという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、プローブの撓み量を優れた応答速度で、かつ大きな信号変化として出力する半導体歪センサおよびその製造方法、ならびに当該半導体歪センサをプローブとして採用した走査プローブ顕微鏡を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決するために、本発明では、以下のような手段を講じた点に特徴がある。
(1)本発明の半導体歪センサは、片持ち梁式に支持された半導体プローブと、半導体プローブの少なくとも梁部表面にショットキー接合された第1の金属電極と、前記半導体プローブの表面に形成された高濃度コンタクト領域と、高濃度コンタクト領域に接続された第2の金属電極とによって構成される。
【0008】
(2)本発明の半導体歪センサの製造方法は、半導体基板を蝕刻して半導体プローブを形成する工程と、前記半導体プローブの表面に高濃度コンタクト領域を選択的に形成する工程と、前記半導体プローブの梁部表面に第1の金属電極を選択的にショットキー接合させる工程と、前記高濃度コンタクト領域に第2の金属電極を接触させる工程とから成る。
【0009】
(3)本発明の半導体歪センサは、少なくともショットキー接合に定常的に応力歪が生じるように、前記半導体プローブの少なくとも一方の主表面に薄膜を更に設けた。
(4)本発明の走査プローブ顕微鏡は、梁部表面にショットキー接合領域が形成された半導体歪センサを走査プローブとして用いた。
【0010】
上記した構成(1) によれば、プローブの自由端が撓むとショットキー接合に応力歪が発生し、当該ショットキー接合の電気的特性(ダイオード特性)が大きく変化するので、これを適宜の検出回路で検出すれば自由端の撓み量を測定できる。
上記した構成(2) によれば、梁部にショットキー接合が形成された片持ばり式の半導体歪センサを簡単に製造することができる。
【0011】
上記した構成(3) によれば、ショットキー接合には、自由端の変位とは無関係に定常的に応力歪が発生しており、プローブの自由端が撓むとショットキー接合に更に大きな応力歪が発生するので、当該ショットキー接合の電気的特性(ダイオード特性)を大きく変化させることができる。さらに撓みの方向を探針と反対方向にすれば、試料面と探針の方向が90度に近くなるので、高精度な測定ができる。
【0012】
上記した構成(4)によれば、プローブの歪み量をショットキー接合の電気的特性の変化としてとらえることができるので、試料の表面形状を高感度で観察できるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の主要部分の半導体プローブの概略構造を示す斜視図である。プローブ10は、自由端であるアーム部10aと、アーム部先端にある探針10cと、アーム部を保持、固定する支持部10bと、センサ部9と、少なくともセンサ部9を含む領域に設けた薄膜8(絶縁膜40)とからなっている。センサ部9はアーム部10aの撓みがつけ根の部分に集中するので、少なくともアーム部10aと支持部10bの境界を含む領域に設置することが好ましい。本発明ではセンサ部としてショットキー接合を用いる。
【0014】
信号検出のための電極は、配線33によりセンサ部と接続される。配線材料は、主にAl,W,Ti,Ta,Cr等の抵抗率の低い金属材料が使用可能である。この中でAlが最も一般的な材料である。
薄膜8はセンサ部9に歪み(ストレス)を予め与える機能をする。センサ部9に応力をかける必要のない場合には、薄膜8はなくてもよい。ストレスが圧縮応力の場合には、アーム10aが図1の下側に撓むため、試料観察時に探針10cの向きが試料に対して垂直に近くなり、高精度な観察ができるので好ましい。また層間絶縁膜30にストレスを持たせて絶縁膜40の代わりにすることも可能である。この場合にも、薄膜8をなくすこともできる。また配線33にストレスのあるものを使うことでもセンサ部に応力を与えることができ、薄膜8の代用が可能である。つまり薄膜8はセンサ部9に応力を与え、センサ部9の電気特性にショート等の悪影響を及ぼさなければ、絶縁膜以外にもどのような材質でも可能である。
【0015】
試料観察には、探針10cを設けずにアーム部10aの先端部分でも形状観察は可能であるが、分解能は探針10cの先端径によるところが大きいため、高分解能を得るには、探針10cを設けたほうがよい。高精度、高分解能を得るためには、探針10cを観察試料の凹凸よりも高く、先端径を小さくすることが好ましい。アーム部10aの形状は、図1の矩形に近いものや、U字型等いろいろな形状があり、用途や特性に応じて設計可能である。
【0016】
図2は、本発明の第1実施例であり、図1のアーム部10bとセンサ部9を詳細に説明するための図である。図2(a)は平面図である。図2(b) は、図2(a) のA−A’線に沿った断面図であり、図2(c) は、図2(a) のB−B’線に沿った断面図である。なお、図2(a) では、探針10cと後述する絶縁膜40(薄膜8)の図示を省略している。
【0017】
本発明のプローブ10は、U字状の片持ばりアーム部10aおよび支持部10bによって構成され、片持ばりアーム部10aの先端には、SPM用の探針10c(図示せず)が設けられている。本実施例では、プローブ10はN型基板31によって構成され、その表面には、アーム部10aの内側端部に沿って電極32がU字状の帯状にショットキー接合され、それ以外の部分には層間絶縁膜30が形成されている。一方、支持部10bでは、N型基板31の表面にN+コンタクト領域21が形成され、その表面には、電極22がオーミック接触されている。電極22は図1の配線33と接続されており、バイアス電圧(電流)の供給と、信号の検出を行う。電極22の材料は配線33と同材料で製作可能であり、同時に形成することもできる。
【0018】
また、N型基板31の表面には、ショットキー接合50に対して定常的に応力を加えるための薄膜8として、例えばSiO2膜あるいはSi3N4膜等の絶縁膜40が積層されている。絶縁膜40は、定常的に生じる応力歪が1×109Pa程度となるように形成することが望ましい。ただしこの値は、接合部の構造や製作条件等によって変わるので一義的に決まるものではない。
【0019】
なお、絶縁膜40はN型基板31の全表面に形成する必要はなく、基板31と電極32とのショットキー接合50に応力歪を生じさせることができるのであれば、例えば片持ばりアーム部10aの表面のみ、あるいはアーム部10aと支持部10bの境界部分のみに形成しても良い。
このような構成において、探針10cが紙面に対して垂直方向に変位すると、プローブ10の片持ばりアーム部10aは支持部10bを支点として撓むため、アーム部10aの特に梁部表面に形成されたショットキー接合50には応力歪が生じる。
【0020】
図3は、ショットキー接合のダイオード特性が応力歪によって変化する一例を示した図であり、図3(a)は順バイアス時、図3(b) は逆バイアス時の特性を示している。順バイアス時には、ショットキー接合50に応力歪が生じると、順バイアスに対する順方向電流が変化することが判る。また、逆バイアス時にも、応力歪が生じるとブレーク電圧が変化し、リーク電流も変化することが判る。
【0021】
また、図4から図6は、それぞれショットキー接合の電流-電圧(I-V)特性、電流I−歪量特性、および電圧V−歪量特性を、ピエゾ抵抗体と比較して示した図である。図4は電流−電圧特性を示す。ショットキー接合はピエゾ抵抗に比べ、非線型な特性を示す。歪量に対する電流I,電圧Vの変化率は、それぞれ図5、図6に示したように、ショットキー接合の方がピエゾ素子よりもある値を超えると大きくなる。従って、本実施例のようにプローブ10の梁部にショットキー接合50を形成し、変化率の大きい領域でダイオード特性の変化を検出するようにすれば、歪量の検出感度が向上し、ホイートストンブリッジ等の精密なブリッジ回路を用いる事なく、プローブ10の撓み量を正確に測定できるようになる。
【0022】
また、プローブの撓み量に対するダイオード特性の変化率は、撓み量が大きい領域ほど大きく、撓み量が小さいと十分な検出感度が得られない.さらに、図5に示したように、応力歪が小さい領域では、応力歪に対して電流Iが2次関数的に変化するため、信号処理が複雑になる。
これに対し、本発明は絶縁膜40(薄膜8)を付加することにより、ショットキー接合50に定常的な応力歪が与えられる。従ってショットキー接合50には、観察時の変位に応じて過渡的に生じる歪と、絶縁膜40によって定常的に生じる応力歪とが重畳されることになる。そのため、絶縁膜40が形成されていない場合に比べ、大きな歪が生じる。さらに、応力歪が大きい領域では、応力歪に対して電流Iがほぼ直線的に変化するので、実際の観察時の信号処理が容易になる。上記の変化はショットキー接合の構造、製作条件により変わる。従って特性の変化量は一通りではなく、条件によっては、ピエゾ抵抗に近い特性を示すこともある。
【0023】
図7は、前記図2に関して説明した構造のプローブ型半導体歪センサの製造方法を示した図であり、特に図2のB−B’線に沿った断面構造を示している。
はじめに、N型半導体基板31を図2のプローブ形状に蝕刻し、その一方の全表面にレジスト81を塗布する。次いで、公知のフォトレジスト技術を利用して、前記図1のN+コンタクト領域21に相当する部分のレジストのみを選択的に除去する[図7(a) ]。次いで、N型不純物(例えば、リン)をイオン打ち込みし、基板31の表面にN+コンタクト領域21を形成する[図7(b) ]。
【0024】
次いで、基板表面に絶縁膜30としてのSiO2膜を形成し、前記N+コンタクト領域21に相当する部分および図2のショットキー接合50に相当する部分を開口してN+コンタクト領域21およびショットキー接合領域を露出させる[図7(c)]。
次いで、N+コンタクト領域21に対しては、電極22をオーミック接触させ、ショットキー接合領域に対しては、電極32をN型半導体基板31の端部に沿って帯状にショットキー接合させてショットキー接合50を形成する[図7(d)]。
【0025】
次いで、ショットキー接合50に定常的に応力歪を生じさせるための絶縁膜40aを表面に形成する[図7(e) ]。なお、本実施例では基板表面に絶縁膜40(40a)を形成しているが、絶縁膜40(40b)は基板裏面に形成しても良いし[図7(f) ]、基板両面に形成しても良い。
図8(a) は、本発明の第2実施例である半導体プローブの平面図、図8(b) は、図8(a) のC−C’線に沿った断面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。本実施例は、ショットキー接合50を実質的にアーム部10aの表面全体に形成するようにした点に特徴がある。
【0026】
すなわち、上記した第1実施例では、ショットキー接合50をアーム部10aの表面の一部分のみに形成したため、ショットキー接合の面積が比較的小さい。このため、リーク電流は少なくできる反面、高い感度は得にくい。第2実施例では、ショットキー接合50がアーム部10aの全面に形成されているため、リーク電流は前記第1実施例に比べて若干多くなるが高い感度が得られるという利点がある。
【0027】
次いで、図9〜図13を参照して本発明の他の実施例について説明する。なお、各図では図示していないが、いずれの実施例でも基板の表面および裏面の少なくとも一方には、ショットキー接合50に定常的に応力歪を生じさせるための前記絶縁膜40(薄膜8)を形成しても良い。図9は、本発明の第3実施例の平面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。本実施例は、ショットキー接合がアーム部10aの端面に露出しないように、電極32すなわちショットキー接合50を、アーム部10aの端部に沿った中央部に帯状に形成するようにした点に特徴がある。一般に、リーク電流はショットキー接合の端面近傍で生じるが、本実施例によれば、ショットキー接合50がプローブ10の端面に露出しないので、製造工程は多少繁雑化するがリーク電流を抑えながら高い感度が得られる。
【0028】
図10は、本発明の第4実施例の平面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。本実施例は、プローブ10に掛かる変位による歪み量は、アーム部10aと支持部10bとの境界部分、すなわちプローブ10の梁部に集中し、それ以外の部分では小さいことに着目してなされたものである。本実施例は、図示したように、電極32(ショットキー接合50)を、前記梁部のみに端部に沿って帯状に形成するようにした点に特徴がある。本実施例によれば、歪量の検出に寄与しない部分にはショットキー接合が形成されないので、リーク電流を抑えながら高い感度が得られるようになる。
【0029】
図11は、本発明の第5実施例の平面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。本実施例は前記第4実施例と同様に、プローブ10の梁部のみに電極32(ショットキー接合50)を形成すると共に、リーク電流を低減するために、電極32(ショットキー接合50)をプローブ10の端部に沿った中央部に帯状に設けた点に特徴がある。
【0030】
図12、図13は、本発明の第6,7実施例の平面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。各実施例は、それぞれ前記第4,5実施例の電極32(ショットキー接合50)を、前記梁部の一方のみに形成するようにした点に特徴がある。これらの実施例によれば、検出感度が若干低下するもののリーク電流を大幅に低減できる。
【0031】
なお、上記した各実施例では、N型基板31に金属電極を接触させてショットキー接合を得るものとして説明したが、これとは逆に、P型基板に金属電極を接触させることでショットキー接合を得るようにしても良い。
ところで、上記した図9、図11、図13に関して説明した各実施例のように、ショットキー接合50をプローブ10の端面に露出しないように形成する構成では、図14に示したように、ショットキー接合50に逆バイアスが印加されて空間電荷層49等が広がりによるリーク電流が増大する。また通常の使用時にも、アーム部10aの端部でのリーク電流が発生する。このため、測定感度が低下してしまうという新たな問題が生じ得る。そこで、次に説明する本発明の各実施例では、このようなリーク電流の増加を抑えている。
【0032】
図15(a)は、本発明の第8実施例の平面図である。、図15(b),(c)は図15(a)のE-E’線に沿った断面図である。特にアーム部10aの変位に応じて撓む梁部近傍を拡大して示している。本実施例では、図15(a) に示すように、電極32をプローブ10の梁部の中央に帯状に設けてショットキー接合50がプローブ10の両端面に露出しないようにすると共に、アーム部10aの端部とショットキー接合50との間で露出したN型基板31の表面に、空間電荷層等の拡大防止を兼ねてN+コンタクト領域21aを設けた点に特徴がある。
【0033】
このような構成によれば、ショットキー接合50の周辺で発生する空間電荷領域49等の横方向への広がりは、N+コンタクト領域21aによって阻止される。したがって、リーク電流が抑えられ、測定感度の低下を防げる。
なお、図15(c) に示したように、P型基板48の主表面にN型半導体領域47を島状に形成し、当該N型半導体領域47に上記した構成を形成すれば、PN接合による分離によってリーク電流をさらに低減することができる。
【0034】
図16(a)は本発明の第9実施例の平面図である。図16(b),(c)は図16(a)のF-F’線に沿った断面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。本実施例では、図16(a) に示したように、電極32をプローブ10の梁部の中央に帯状に設けてショットキー接合50がプローブ10の両端面に露出しないようにすると共に、ショットキー接合50を囲むようにN+コンタクト領域21bを設けた点に特徴がある。
【0035】
本実施例でも、空間電荷層49等の横方向への広がりはN+コンタクト領域21bによって阻止され、アーム部10aの端部にまで到達することがないので、リーク電流の増加が抑えられて測定感度を高く保つことができる。さらに、図16(c) に示したように、本実施例でもN型半導体領域47に上記した構成を形成すれば、PN接合による分離によってリーク電流をさらに低減することが可能になる。
【0036】
図17(a)は本発明の第10実施例の平面図である。図17(b),(c)は図17(a)のG-G’線に沿った断面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。本実施例では、電極32をプローブ10の中央部に設けてショットキー接合50がプローブ10の両端面に露出しないようにすると共に、ショットキー接合50を三方から囲むようにN+コンタクト領域21cを設けた点に特徴がある。
【0037】
本実施例でも、N+コンタクト領域21cにより、ショットキー接合50周辺に発生するリーク電流が阻止され、プローブ10の端部にまで達成することがないので、リーク電流の増加が抑えられて測定感度を高く保つことができる。さらに、同図(c) に示したように、本実施例でもN型半導体領域47に上記した構成を形成すれば、PN接合分離によってリーク電流をさらに低減することができる。
【0038】
図18は本発明の第9実施例(図16)のセンサを矩形のアーム部に実際に作成した例である。図18(a)は平面図、図18(b)は図18(a)のH−H’線に沿った断面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。第8-10実施例では、中央部にショットキー接合50を設け、周辺部N+コンタクト領域21を設けるので、センサ部9の幅が広くなる。従って、アーム部10aの幅を小さくしたい場合は、矩形の方がU字型のアームよりも容易に設計できる。
【0039】
なお、上記した各実施例では、応力歪を定常的に生じさせるための薄膜が絶縁膜40であるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、応力歪とは無関係に基板表面に予め絶縁膜を形成し、その表面に形成するのであれば、応力歪を定常的に生じさせるための薄膜は、導電膜や半導体膜であっても良い。
【0040】
図19は、本発明を適用した走査型プローブ顕微鏡の構成を示したブロック図である。3次元試料ステージ55上には試料52が載置され、試料52の上方には、上記した構成のプローブ10の探針31bが対向配置されている。プローブ10に形成されたショットキー接合のダイオード特性は測定部71で測定され、撓み量信号S1として差動アンプ75の非反転入力端子(+)に入力される。
【0041】
差動アンプ75の反転入力端子(−)には、例えば撓み量が0の時に差動増幅器75の出力が0になるように、プローブ10の撓み量に関する基準値が基準値発生部79から入力されている。差動アンプ75から出力される誤差信号S2は制御部76に入力される。制御部76は、誤差信号S2が0に近付くようにアクチュエータ駆動増幅器70を制御する。また、制御部76の出力信号が輝度信号としてCRTへ供給される。走査信号発生部78は、試料52をXY方向へ微動させるための微動信号をアクチュエータ駆動増幅器70へ供給し、CRTへはラスタ走査信号を供給する。
【0042】
【発明の効果】
上記したように、本発明によれば、以下のような効果が達成される。
(1)歪量に応じて電気的特性が敏感に変化するショットキー接合をプローブに設け、プローブの撓み量をショットキー接合の電気的特性の変化として検出できるようにしたので、プローブの撓み量に対する感度が向上するのみならず、後段に接続される検知回路の構成を簡単化できるようになる。
【0043】
(2)ショットキー接合に発生する空間電荷層等がプローブ端部まで達しないように、ショットキー接合とプローブ端部との間に高濃度コンタクト領域を設けたので、リーク電流の増加が抑えられて測定感度を高く保つことができる。
(3)プローブが撓むと応力歪が生じるショットキー接合領域に定常的に応力歪が生じるように、プローブの主表面に薄膜を形成したので、プローブの撓み量に対する感度を向上させることができる。
【0044】
(4)本発明の半導体歪センサを走査型プローブ顕微鏡のプローブとして用いれば、プローブの歪み量として検出される試料の表面形状をショットキー接合の電気的特性の変化としてとらえることができるので、試料の表面形状を高感度で観察できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概略図を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す。(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線に沿った断面図であり、(c)は(a)のB−B’線に沿った断面図である。
【図3】ショットキー接合のダイオード特性を示した図である。(a)は順方向の電流-電圧特性、(b)は逆方向の電流-電圧特性である。
【図4】ショットキー接合とピエゾ抵抗体との電流-電圧(I−V特性)を示す図である。
【図5】ショットキー接合の電流−歪量特性をピエゾ抵抗体と比較した図である。
【図6】ショットキー接合の電圧−歪量特性をピエゾ抵抗体と比較した図である。
【図7】図2のプローブの製造方法を示した断面図である。
【図8】本発明の第2実施例を示す図面である。(a)は平面図で、(b)は(a)のC−C’線に沿った断面図である。
【図9】本発明の第3実施例を示す平面図である。
【図10】本発明の第4実施例の平面図である。
【図11】本発明の第5実施例の平面図である。
【図12】本発明の第6実施例の平面図である。
【図13】本発明の第7実施例の平面図である。
【図14】ショットキー接合分に生じる空間電荷層等の様子を、図9のD−D’線に沿って示した断面図である。
【図15】本発明の第8実施例の図である。(a)は平面図であり、(b)は(a)のE-E’線に沿った断面図である。
【図16】本発明の第9実施例の図である。(a)は平面図であり、(b)は(a)のF−F’線に沿った断面図である。
【図17】本発明の第10実施例の図である。(a)は平面図であり、(b)は(a)のG−G’線に沿った断面図である。
【図18】本発明の第11実施例の図である。(a)は平面図であり、(b)は(a)のH−H’線に沿った断面図である。
【図19】本発明を適用した走査型プローブ顕微鏡の主要部のブロック図である。
【図20】従来のプローブ型半導体歪センサの概略図を示す斜視図である。
【符号の説明】
8 …薄膜
10 …プローブ
10a …アーム部
10b …支持部
22 …電極
30 …層間絶縁膜
31 …N型基板
32 …電極
21 …N+コンタクト領域
40 …絶縁膜
50 …ショットキー接合
Claims (9)
- 片持ち梁式に支持された半導体プローブと、
前記半導体プローブの少なくとも梁部表面にショットキー接合された第1の金属電極と、
前記半導体プローブの表面に形成された高濃度コンタクト領域と、
前記高濃度コンタクト領域に接続された第2の金属電極とを具備し、
前記第1の金属電極は、前記ショットキー接合が前記半導体プローブの端部に沿って帯状に得られるように形成されたことを特徴とする半導体歪センサ。 - 片持ち梁式に支持された半導体プローブと、
前記半導体プローブの少なくとも梁部表面にショットキー接合された第1の金属電極と、
前記半導体プローブの表面に形成された高濃度コンタクト領域と、
前記高濃度コンタクト領域に接続された第2の金属電極とを具備し、
前記第1の金属電極は、前記ショットキー接合が前記半導体プローブの略全面で得られるように形成されたことを特徴とする半導体歪センサ。 - 前記第2の金属電極は、前記高濃度コンタクト領域に対してオーミック接合されることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体歪センサ。
- 前記第1の金属電極は、前記ショットキー接合が前記半導体プローブの端部から離間された領域で得られるように形成されたことを特徴とする請求項1記載の半導体歪センサ。
- 前記高濃度コンタクト領域は、前記ショットキー接合と基板端部との間に形成されたことを特徴とする請求項4記載の半導体歪センサ。
- 前記高濃度コンタクト領域は、前記ショットキー接合を基板表面で囲むように形成されたことを特徴とする請求項4記載の半導体歪センサ。
- 前記半導体プローブは、半導体基板の主表面に前記半導体基板と異なる導電型の半導体領域を島状に形成して構成され、前記第1の金属電極は、前記半導体領域の主表面にショットキー接合されることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の半導体歪センサ。
- 半導体基板をプローブ形状に蝕刻して半導体プローブを形成する工程と、
前記半導体プローブの表面に高濃度コンタクト領域を選択的に形成する工程と、
前記半導体プローブの梁部表面に第1の金属電極を前記半導体プローブの端部に沿って帯状にショットキー接合させる工程と、
前記高濃度コンタクト領域に第2の金属電極を接触させる工程とからなることを特徴とする半導体歪センサの製造方法。 - 少なくとも前記ショットキー接合に定常的に応力歪が生じるように、前記半導体プローブの少なくとも一方の主表面に薄膜を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の半導体歪センサの製造方法。
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