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JP3788236B2 - ロータ構造体及びこれを備える調湿装置 - Google Patents

ロータ構造体及びこれを備える調湿装置 Download PDF

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JP3788236B2 JP2000388712A JP2000388712A JP3788236B2 JP 3788236 B2 JP3788236 B2 JP 3788236B2 JP 2000388712 A JP2000388712 A JP 2000388712A JP 2000388712 A JP2000388712 A JP 2000388712A JP 3788236 B2 JP3788236 B2 JP 3788236B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸着剤を有して調湿等に利用されるロータ構造体、及びこのロータ構造体を備える調湿装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ハニカム状に形成された基材の表面に吸着剤が設けられるロータ構造体が知られており、空気の湿度を調節する調湿装置等に利用されている。例えば、特開平8−128681号公報には、上記ロータ構造体を利用した調湿装置を空調機に適用し、空調機に加湿機能を付加したものが開示されている。
【0003】
上記調湿装置において、円板状のロータ構造体は、吸湿部と再生部の両方に跨って配置されている。ロータ構造体は、吸着部と再生部の両方に跨って配置されている。このロータ構造体は、その一部が再生部で室内空気と接触し、残りの部分が吸着部で室外空気と接触する。また、回転ロータは、モータ等によって回転駆動されている。
【0004】
吸着部では、室外空気中の水分がロータ構造体の吸着剤に吸着される。水分を吸着したロータ構造体の一部分は、ロータ構造体の回転に伴って再生部へ移動する。再生部には、ヒータ等によって加熱された室内空気が送り込まれる。再生部では、供給された高温の室内空気によってロータ構造体の吸着剤が加熱され、その吸着剤から水分が脱着する。吸着剤から脱着した水分が室内空気に付与され、室内空気が加湿される。そして、再生部で加湿された室内空気を再び室内へ戻し、室内の加湿を行うようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のロータ構造体を調湿装置に適用する場合には、次のような問題があった。この問題点について説明する。上記調湿装置では、ロータ構造体の一部分だけが再生部において加熱される。ところが、再生部においてロータ構造体に付与された熱は、熱伝導によって加熱されていないロータ構造体の部分にまで伝わる。つまり、再生部で付与された熱は、その一部が熱伝導によってロータ構造体の周方向へ逃げてしまう。このため、熱伝導による熱ロスの分だけ余計に再生部でロータ構造体に熱を付与する必要が生じ、吸着剤の再生に要するエネルギが増大するという問題を招いていた。
【0006】
更に、ロータ構造体の基材をアルミニウム等の熱伝導率の高い材料で製作する場合には、熱伝導によって逃げる熱量が過大となる。このため、再生部において吸着剤を充分に温度上昇させることができず、空気の加湿量を十分に確保できないという問題もあった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロータ構造体の一部分だけを加熱する際の熱伝導による熱ロスを低減し、併せて熱伝導による熱ロスを低減しうるロータ構造体を用いた調湿装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明が講じた第1の解決手段は、円板状に形成されて厚さ方向に空気が貫流可能な基材(51)と、該基材(51)の表面に設けられる吸着剤とを備える一方、上記基材(51)には、該基材(51)をスリット状に切り込んで形成される複数の間隙部(54)が放射状に設けられ、上記間隙部( 54 )は、基材( 51 )の一方の端面にのみ開口して該基材( 51 )の他方の端面側が非切断部( 55 )となるように形成され、上記基材( 51 )は、間隙部( 54 )の開口する端面が吸着剤を再生するための空気流の上流側に向いているものである。
【0009】
本発明が講じた第2の解決手段は、上記第1の解決手段において、外周側のリム部( 41 )と、中央側のハブ部( 42 )と、ハブ部( 42 )からリム部( 41 )へ放射状に延びるスポーク部( 43 )とで構成されて上記リム部( 41 )の内側に基材( 51 )がはめ込まれるロータケーシング( 40 )を備え、上記ロータケーシング( 40 )は、スポーク部( 43 )の背面側に基材( 51 )の間隙部( 54 )が隠れるように配置されるものである。
【0010】
本発明が講じた第3の解決手段は、第1又は第2の解決手段において、基材(51)の材質がアルミニウム又はアルミニウム合金とされるものである。
【0011】
本発明が講じた第4の解決手段は、第1又は第2の解決手段において、間隙部(54)には断熱材が挿入されるものである。
【0012】
本発明が講じた第5の解決手段は、調湿装置を対象とするものである。そして、第1又は第2の解決手段に係るロータ構造体(22)と、上記ロータ構造体(22)の吸着剤が第1の空気から水分を吸着する吸着部(33)と、第2の空気を加熱するための加熱手段(26)と、上記加熱手段(26)により加熱された第2の空気によってロータ構造体(22)の吸着剤から水分を脱着させる再生部(35)とを備え、上記ロータ構造体(22)を回転させて上記再生部(35)から出た第2の空気を利用する加湿動作を少なくとも行うものである。
【0013】
−作用−
上記第1の解決手段では、基材(51)が円板状に形成される。この基材(51)は、例えばハニカム状に形成されて、その厚み方向に空気が通過できるように構成されている。基材(51)の表面には、バインダ等によって吸着剤が付着されている。また、基材(51)には、スリット状の間隙部(54)が複数形成されている。この間隙部(54)は、基材(51)の半径方向に直線的な切り込みを入れることで形成されている。そして、基材(51)には、複数の間隙部(54)が放射状に設けられている。
【0014】
本解決手段に係るロータ構造体(22)の一部分だけを加熱する場合、隣接する間隙部(54)に挟まれた部分の中では、熱伝導によって加えられた熱が拡散する。ところが、間隙部(54)では基材(51)の一部が切り欠かれているため、熱伝導により間隙部(54)の外側へ逃げる熱量は減少する。
【0015】
また、上記第1の解決手段では、間隙部(54)が基材(51)の一方の端面にだけ開口し、他方の端面には開口していない。つまり、間隙部(54)は、基材(51)を貫通しないように形成され、基材( 51 )の他方の端面側が非切断部( 55 )となる。このロータ構造体( 22 )において、吸着剤を再生するための空気は、間隙部( 54 )が開口する端面側から間隙部( 54 )が開口しない端面側へ向かって貫流する。
【0016】
上記第2の解決手段では、ロータ構造体( 22 )にロータケーシング( 40 )が設けられる。このロータ構造体( 22 )において、基材( 51 )の間隙部( 54 )は、ロータケーシング( 40 )のスポーク部( 43 )の背面側に隠れている。
【0017】
上記第3の解決手段では、アルミニウム又はアルミニウム合金によって基材(51)が構成される。ここで、アルミニウムやアルミニウム合金は、比較的熱伝導率の大きな材料である。これに対し、本解決手段に係るロータ構造体(22)では、間隙部(54)を設けて熱伝導による熱の拡散を抑制している。従って、基材(51)の材質をアルミニウムやアルミニウム合金としても、ロータ構造体(22)の加熱に要する熱量が過大となったり、吸着剤の温度を充分に高められなくなるという問題は生じない。
【0018】
上記第4の解決手段では、ロータ構造体(22)の間隙部(54)に断熱材が挿入される。この間隙部(54)に挿入された断熱材によっても、ロータ構造体(22)の周方向への熱の拡散が低減される。
【0019】
上記第5の解決手段では、本発明に係るロータ構造体(22)を用いて調湿装置が構成される。調湿装置において、ロータ構造体(22)は、その一部分が再生部(35)で第2の空気と接触し、残りの部分が吸着部(33)で第1の空気と接触する。また、ロータ構造体(22)は、モータ等によって駆動されて回転し、再生部(35)と吸着部(33)の間を移動する。
【0020】
吸着部(33)では、第1の空気がロータ構造体(22)の基材(51)を貫通して流れ、基材(51)の表面に付着する吸着剤が第1の空気と接触する。第1の空気に含まれる水分は、この吸着剤に吸着される。つまり、吸着部(33)では、第1の空気が減湿される。
【0021】
再生部(35)へは、加熱手段(26)によって加熱されて高温(例えば150℃程度)となった第2の空気が供給される。再生部(35)では、第2の空気がロータ構造体(22)の基材(51)を貫通して流れ、基材(51)の表面に付着する吸着剤が第2の空気と接触する。そして、高温の空気と接触することで吸着剤が加熱され、吸着剤から水分が脱着する。吸着剤から脱着した水分は、第2の空気に付与される。つまり、再生部(35)では、ロータ構造体(22)の吸着剤が再生されると同時に、第2の空気が加湿される。
【0022】
上述のように、上記調湿装置において、ロータ構造体(22)は、その一部分が第2の空気と接触して残りの部分が第1の空気と接触する状態で回転している。このため、調湿装置では、吸着部(33)における第1の空気の減湿と、再生部(35)における第2の空気の加湿とが、同時に並行して連続的に行われる。そして、調湿装置は、再生部(35)で加湿された第2の空気を利用して室内等の加湿を行う加湿動作を少なくとも行う。
【0023】
【発明の効果】
本発明では、ロータ構造体(22)にスリット状の間隙部(54)を放射状に設けている。このため、ロータ構造体(22)で熱伝導により熱が移動する際には、スリット状の間隙部(54)が大きな熱抵抗となって熱移動が抑制される。従って、本発明によれば、吸着剤の再生等のためにロータ構造体(22)の一部分だけを加熱する場合であっても、間隙部(54)が大きな熱抵抗となることで、熱伝導による熱ロスを低減することができる。
【0024】
また、本発明では、円板状の基材(51)において、該基材(51)を貫通しないように間隙部(54)が形成される。つまり、間隙部(54)が開口していない端面側では、間隙部(54)によって基材(51)は分断されない。従って、本発明によれば、間隙部(54)を設けることで熱伝導による熱ロスを低減しつつ、基材(51)を完全には分断しないことで基材(51)の機械的な強度を確保できる。
【0025】
また、本発明のロータ構造体( 22 )において、吸着剤を再生するための空気は、間隙部( 54 )が開口する端面側から間隙部( 54 )が開口しない端面側へ向かって貫流する。このため、吸着剤を再生するための空気により加熱されるロータ構造体(22)の部分の温度を均一化でき、吸着剤の再生を確実に行うことができる。
【0026】
この効果について説明する。吸着剤を再生するための空気は、基材( 51 )を通過する間に該基材(51)に熱を奪われて次第にその温度が低下してゆく。それ故、吸着剤を再生するための空気が通過するロータ構造体(22)の部分では、空気流の風下側の温度が風上側の温度よりも低くなるおそれがある。ところが、本発明のロータ構造体(22)では、基材(51)のうち再生部(35)での風下側の端面近傍は、間隙部(54)によって分断されない非切断部( 55 )となっている。このため、基材(51)のうち吸着剤を再生するための空気流の風下側の部分には、間隙部(54)によって妨げられることなく熱伝導によって熱が伝わってくる。
【0027】
従って、基材(51)を通過する空気の温度が変化するにも拘わらず、基材(51)の厚み方向における温度分布を解消できる。そして、ロータ構造体(22)の温度を平均的に上昇させることで、吸着剤の再生を確実に行うことが可能となる。
【0028】
上記第3の解決手段では、基材(51)の材質がアルミニウム又はアルミニウム合金とされる。ここで、従来は、基材(51)の材質としてセラミック紙を用いることが多かった。このセラミック紙に比べ、アルミニウムやアルミニウム合金は、加工が容易で安価である。それ故、アルミニウムやアルミニウム合金で基材(51)を製造できれば、ロータ構造体(22)の加工費や材料費を大幅に低減できる。しかしながら、アルミニウムやアルミニウム合金の熱伝導率は、セラミック紙の熱伝導率の約1700倍である。このため、単に基材(51)の材質をアルミニウムやアルミニウム合金に変更しただけでは、熱伝導による熱ロスが過大となってしまう。
【0029】
これに対し、本解決手段では、ロータ構造体(22)にスリット状の間隙部(54)を設けた上で、アルミニウムやアルミニウム合金で基材(51)を作っている。このため、アルミニウムやアルミニウム合金という熱伝導率の高い材料で基材(51)を製造する場合であっても、間隙部(54)が大きな熱抵抗となることから、熱伝導による熱ロスが過大となることはない。従って、本解決手段によれば、熱伝導による熱ロスに起因する問題を回避しつつ、加工が容易で安価なアルミニウムやアルミニウム合金で基材(51)を製造でき、ロータ構造体(22)の加工費や材料費を大幅に削減できる。
【0030】
更に、アルミニウムやアルミニウム合金は、セラミック紙に比べて材料としての機械的強度が大きく、薄肉化しても充分な強度が得られる。例えば、基材(51)を構成する場合、セラミック紙では0.15〜0.2mm程度の厚みが必要であるのに対し、アルミニウムやアルミニウム合金では25〜50μm程度の厚みで足りる。このため、基材(51)の開口率を一定とした場合には、その材質をセラミック紙からアルミニウムやアルミニウム合金に変更することで、基材(51)の表面積を増大させることができる。従って、本解決手段によれば、吸着剤が付着する基材(51)表面の面積を拡大でき、ロータ構造体(22)の吸着能力を向上させることができる。
【0031】
上記第4の解決手段によれば、間隙部(54)に断熱材を挿入することで更に大きな熱抵抗が得られ、熱伝導による熱ロスを一層低減することが可能となる。
【0032】
上記第5の解決手段では、本発明に係るロータ構造体(22)を用いて調湿装置を構成している。このため、熱伝導による熱ロスの小さなロータ構造体(22)を用いることで、再生部(35)でロータ構造体(22)に付与すべき熱量、即ち加熱手段(26)で第2の空気に付与すべき熱量を削減でき、調湿装置の運転に要するエネルギを削減できる。また、再生部(35)でロータ構造体(22)を充分に加熱して吸着剤の温度を確実に上げられることから、吸着剤から水分を確実に脱着させることができ、再生部(35)における空気の加湿量を十分に確保できる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
図1に示すように、実施形態に係る調湿装置は、空調機と一体に構成されて加湿動作を行うように構成されている。
【0035】
上記空調機は、室内機(10)と室外機(15)とによって構成されている。室内機(10)は、室内熱交換器(11)と室内ファン(12)を備え、室内の壁面に取り付けられている。室外機(15)は、室外に設置されている。この室外機(15)には、図示しないが、圧縮機、膨張機構、室外熱交換器、室外ファン等の構成機器が収納されている。室内機(10)と室外機(15)とは、一対の連絡配管(16)によって接続されている。
【0036】
室内熱交換器(11)と共に圧縮機、膨張機構及び室外熱交換器が連絡配管(16)等によって接続されて、冷媒回路が構成されている。この冷媒回路は、図外の四路切換弁を備え、冷媒の循環方向を反転可能に構成されている。そして、冷媒回路では、冷媒が循環して冷凍サイクルが行われると共に、冷媒の循環方向を切り換えることで冷却動作とヒートポンプ動作とが切り換わる。
【0037】
加湿ユニット(20)は、調湿装置を構成するものであって、室外機(15)と一体に形成されている。この加湿ユニット(20)には、空気ダクト(21)の一端が接続されている。また、空気ダクト(21)の他端は、室内機(10)に接続されている。尚、空気ダクト(21)の他端は、室内機(10)の内部における室内熱交換器(11)の上流に開口している。
【0038】
図2に示すように、加湿ユニット(20)には、吸着側通路(23)と再生側通路(25)とが区画形成されている。また、加湿ユニット(20)には、吸着側通路(23)と再生側通路(25)の両方を横断する姿勢でハニカムロータ(22)が設置されている。吸着側通路(23)のうちハニカムロータ(22)が横断している部分は、吸着部である吸着ゾーン(33)を構成している。再生側通路(25)のうちハニカムロータ(22)が横断している部分は、再生部である再生ゾーン(35)を構成している。
【0039】
上記ハニカムロータ(22)は、ロータ構造体を構成するものであって、円板状に形成されて厚さ方向に空気が貫流可能となっている。このハニカムロータ(22)は、図外のモータにより駆動され、その中心軸周りに回転する。尚、ハニカムロータ(22)の詳細については、後述する。
【0040】
吸着側通路(23)におけるハニカムロータ(22)の下流には、吸着側ファン(24)が設けられている。この吸着側ファン(24)を運転すると、吸着側通路(23)に室外空気が取り込まれる。この室外空気は、被減湿空気として吸着側通路(23)を流れ、ハニカムロータ(22)を通過した後に室外へ排出される。
【0041】
再生側通路(25)には、ヒータ(26)と再生側ファン(27)とが設けられている。また、再生側通路(25)の終端には、上記空気ダクト(21)の一端が接続されている。ヒータ(26)は、加熱手段を構成するものであり、ハニカムロータ(22)の上流に配置される。このヒータ(26)は、ハニカムロータ(22)へ送られる空気を加熱する。一方、再生側ファン(27)は、ハニカムロータ(22)の下流に配置されている。この再生側ファン(27)を運転すると、再生側通路(25)に室外空気が取り込まれる。この室外空気は、被加湿空気として再生側通路(25)を流れ、ヒータ(26)とハニカムロータ(22)とを順に通過し、その後に空気ダクト(21)へ導入される。
【0042】
図3に示すように、ハニカムロータ(22)は、ロータケーシング(40)とロータ本体(50)とを備えている。ロータケーシング(40)は、ホイール(車輪)のような形状とされている。具体的に、ロータケーシング(40)は、その外周部に設けられるリム状のリム部(41)、その中央部に設けられるハブ状のハブ部(42)、及びリム部(41)とハブ部(42)とを連結するスポーク状のスポーク部(43)とを備えている。そして、ロータケーシング(40)におけるリム部(41)の内側に、ロータ本体(50)がはめ込まれている。このロータ本体(50)は、基材であるハニカム基材(51)の表面に吸着剤を付着させたものである。
【0043】
図4に示すように、ハニカム基材(51)は、円板状に形成されている。具体的に、ハニカム基材(51)は、直径が250〜300mm程度で厚さが20〜30mm程度の円板状に形成されている。このハニカム基材(51)は、その厚さ方向に空気が貫流可能となっている。
【0044】
ハニカム基材(51)は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製のアルミテープ(52,53)を巻回することによって成形されている。つまり、平板状のアルミテープ(52)とコルゲート加工された波形状のアルミテープ(53)を積層し、これを渦巻き状に巻回して段ボール状に成形することでハニカム基材(51)が形成される。また、ハニカム基材(51)を形成するアルミテープ(52,53)の厚さは、25〜50μm程度とするのが望ましい。
【0045】
ハニカム基材(51)には、スリット部(54)が等角度間隔で放射状に形成されている。本実施形態に係るハニカム基材(51)では、8本のスリット部(54)が形成されている。ただし、スリット部(54)の本数は例示であり、必要に応じて適宜スリット部(54)の数を設定すればよい。また、ハニカム基材(51)からなるロータ本体(50)をロータケーシング(40)に取り付けた状態(図3参照)において、ハニカム基材(51)のスリット部(54)は、ロータケーシング(40)のスポーク部(43)の背面側に隠れている。
【0046】
8本のスリット部(54)は、それぞれが間隙部を構成している。各スリット部(54)は、所定の長さ、幅及び深さに亘って、ハニカム基材(51)の半径方向へ真っ直ぐ切り込みを入れることで形成されている。更に、各スリット部(54)は、ハニカム基材(51)の特定の端面側から切り込みを入れることで、ハニカム基材(51)をその厚さ方向に貫通しないように形成されている。つまり、図5に示すように、8本のスリット部(54)は、その全てがハニカム基材(51)の一方の端面にだけ開口している。
【0047】
図5における各スリット部(54)の2つの短辺と1つの長辺に沿って、ハニカム基材(51)が切断されずに残された非切断部(55)が形成される。この非切断部(55)の幅は、断熱効果とハニカム基材(51)の強度を比較考量し、5〜10mm程度とするのが望ましい。また、スリット部(54)の幅は、断熱効果を考慮して0.5〜2mm程度とするのが望ましい。
【0048】
上記吸着剤としては、親水性ゼオライトが用いられている。この親水性ゼオライトとしては、SiO2(シリカ)のモル分率が Al2O3(アルミナ)のモル分率よりも大きい組成のゼオライトを採用している。親水性ゼオライトの組成としては、モル分率でシリカ/アルミナの割合が10%/90%から30%/70%までの範囲が望ましい。更に望ましくは、シリカ/アルミナの割合が20%/80%程度であるのがよい。この吸着剤は、有機バインダ又は無機バインダによってハニカム基材(51)の表面に固定されている。
【0049】
上述のように、ハニカムロータ(22)は、その一部分が再生ゾーン(35)を横断し、残りの部分が吸着ゾーン(33)を横断する姿勢で配置されている。更に、ハニカムロータ(22)は、ハニカム基材(51)の端面のうちスリット部(54)が開口している方の端面を被加湿空気の上流側に向けた姿勢で設置されている。つまり、ハニカムロータ(22)を通過する被加湿空気は、ハニカム基材(51)からなるロータ本体(50)において、スリット部(54)が開口する側の端面から入ってスリット部(54)が開口しない側の端面へ通り抜ける。
【0050】
−運転動作−
先ず、冷房運転時の動作について説明する。冷房運転においては、室内機(10)における室内空気の冷却のみが行われ、加湿ユニット(20)の運転は行われない。
【0051】
空調機の冷媒回路では、冷媒が循環して冷凍サイクル動作が行われる。即ち、圧縮機から吐出されて室外熱交換器で凝縮した冷媒は、膨張機構で減圧された後に、室内熱交換器(11)へ送り込まれる。また、室内ファン(12)を運転すると、室内機(10)の内部に室内空気が取り込まれる。室内機(10)に取り込まれた室内空気は、室内熱交換器(11)を通過する際に冷媒と熱交換を行う。この熱交換によって、室内空気が冷却され、冷媒が蒸発する。
【0052】
次に、暖房運転時の動作について説明する。暖房運転においては、室内機(10)で室内空気を加熱する動作と、加湿ユニット(20)で加湿した被加湿空気を室内へ供給する加湿動作との両方が行われる。尚、以下に示す数値は、全て例示である。
【0053】
空調機の冷媒回路では、冷媒が循環してヒートポンプ動作が行われる。即ち、室内熱交換器(11)には、圧縮機から吐出された高温高圧のガス冷媒が送り込まれる。また、室内ファン(12)を運転すると、室内機(10)の内部に室内空気が取り込まれる。取り込まれた室内空気は、室内熱交換器(11)を通過する際にガス冷媒と熱交換を行う。この熱交換によって、室内空気が加熱され、ガス冷媒が凝縮する。
【0054】
加湿ユニット(20)では、吸着側ファン(24)及び再生側ファン(27)が運転され、ヒータ(26)に通電される。また、ハニカムロータ(22)が、図外のモータで駆動されて、1時間あたり30回転で回転する。
【0055】
吸着側通路(23)には、室外空気が被減湿空気として取り込まれる。室外空気の状態は、温度7℃、相対湿度87%となっている。また、吸着側通路(23)における風量は、3.0 m3/minに設定されている。吸着側通路(23)を流れる被減湿空気は、吸着ゾーン(33)のハニカムロータ(22)に送られて吸着剤と接触する。吸着剤には、被減湿空気に含まれる水分が吸着される。ハニカムロータ(22)を通過して水分を奪われた被減湿空気は、室外へ排出される。
【0056】
上述のように、ハニカムロータ(22)は、所定の回転数で回転している。従って、吸着ゾーン(33)において被減湿空気から水分を吸着した吸着剤は、ハニカムロータ(22)の回転に伴って再生ゾーン(35)へ移動する。
【0057】
再生側通路(25)には、室外空気が被加湿空気として取り込まれる。再生側通路(25)における風量は、0.25 m3/minに設定されている。再生側通路(25)を流れる被加湿空気は、ヒータ(26)によって150℃まで加熱される。
【0058】
加熱された被加湿空気は、ヒータ(26)から再生ゾーン(35)のハニカムロータ(22)に送られてロータ本体(50)の吸着剤と接触する。この加熱された被加湿空気との接触によって吸着剤が加熱され、吸着剤から水分が脱着する。吸着剤から脱着した水分は、ハニカムロータ(22)を通過した被加湿空気と共に空気ダクト(21)へ送られる。即ち、水分を付与された加湿後の被加湿空気が、空気ダクト(21)に導入される。この加湿された被加湿空気は、空気ダクト(21)を通じて室内機(10)に導かれ、室内熱交換器(11)を通過した後に室内に送り出される。
【0059】
一方、再生ゾーン(35)において水分が脱着して再生された吸着剤は、ハニカムロータ(22)の回転に伴って再び吸着ゾーン(33)に移動する。即ち、吸着剤は、ハニカムロータ(22)の回転に伴って移動し、吸着ゾーン(33)における水分の吸着と、再生ゾーン(35)における水分の脱着とを交互に繰り返す。
【0060】
上述のように、再生ゾーン(35)に位置するロータ本体(50)の一部分が高温の被加湿空気と接触し、その際には吸着剤だけでなくハニカム基材(51)も加熱される。ここで、ハニカム基材(51)は熱伝導率の高いアルミニウムやアルミニウム合金でできている。このため、再生ゾーン(35)で加熱されたハニカム基材(51)の一部分からは、熱伝導によって熱が逃げようとする。ところが、ハニカム基材(51)にはスリット部(54)が形成されており、このスリット部(54)が熱抵抗となって熱の移動を妨げる。従って、スリット部(54)を越えて拡散する熱量は、極めて小さくなる。
【0061】
−実施形態の効果−
本実施形態では、ハニカムロータ(22)のハニカム基材(51)に8本のスリット部(54)を放射状に設けている。このスリット部(54)は、ハニカム基材(51)を切り欠いて形成されるものである。このため、再生ゾーン(35)に位置するハニカム基材(51)の一部分を加熱した場合であっても、ハニカム基材(51)での熱伝導による熱移動は、スリット部(54)によって妨げられる。
【0062】
従って、本実施形態によれば、吸着剤を再生するためにハニカムロータ(22)の一部分だけを加熱する場合であっても、スリット部(54)が大きな熱抵抗となることで熱伝導による熱ロスを低減できる。この結果、再生ゾーン(35)でハニカムロータ(22)に付与すべき熱量、即ちヒータ(26)で被加湿空気に付与すべき熱量を削減でき、加湿ユニット(20)の消費電力を削減できる。また、再生ゾーン(35)でハニカムロータ(22)を充分に加熱して吸着剤の温度を確実に上げられることから、吸着剤から水分を確実に脱着させることができ、再生ゾーン(35)での被加湿空気に対する加湿量を確保できる。
【0063】
本実施形態では、ハニカム基材(51)を貫通しないようにスリット部(54)を形成している。従って、本実施形態によれば、ハニカム基材(51)にスリット部(54)を設けることでロータ本体(50)での熱伝導による熱ロスを低減しつつ、ハニカム基材(51)を完全に分断しないことでハニカム基材(51)の機械的な強度を確保できる。
【0064】
本実施形態では、ハニカム基材(51)の材質をアルミニウムやアルミニウム合金としている。ここで、ハニカム基材(51)の材質としてはセラミック紙が一般的であるが、このセラミック紙に比べると、アルミニウムやアルミニウム合金は、加工が容易で安価である。それ故、アルミニウムやアルミニウム合金でハニカム基材(51)を製造できれば、ハニカムロータ(22)の加工費や材料費を大幅に低減できる。しかしながら、アルミニウムやアルミニウム合金の熱伝導率は、セラミック紙の熱伝導率の約1700倍である。このため、単にハニカム基材(51)の材質をアルミニウムやアルミニウム合金に変更しただけでは、熱伝導による熱ロスが過大となってしまう。
【0065】
これに対し、本実施形態では、ハニカム基材(51)をアルミニウムやアルミニウム合金で形成するだけでなく、ハニカム基材(51)に切り込みを入れることでスリット部(54)を形成している。このため、アルミニウムやアルミニウム合金という熱伝導率の高い材料でハニカム基材(51)を構成しても、スリット部(54)が大きな熱抵抗となることから、熱伝導による熱ロスが過大となることはない。従って、本実施形態によれば、熱伝導による熱ロスに起因する問題を回避しつつ、加工が容易で安価なアルミニウムやアルミニウム合金でハニカム基材(51)を製造でき、ハニカムロータ(22)の加工費や材料費を大幅に削減できる。
【0066】
更に、アルミニウムやアルミニウム合金は、セラミック紙に比べて材料としての機械的強度が大きく、薄肉化しても充分な強度が得られる。例えば、ハニカム基材(51)を構成する場合、セラミック紙では0.15〜0.2mm程度の厚みが必要であるのに対し、アルミニウムやアルミニウム合金では25〜50μm程度の厚みで足りる。このため、ハニカム基材(51)の開口率を一定とした場合には、その材質をセラミック紙からアルミニウムやアルミニウム合金に変更することで、ハニカム基材(51)の表面積を増大させることができる。従って、本実施形態によれば、ハニカム基材(51)表面の面積を拡大することで、より多量の吸着剤をロータ本体(50)に付着させることができ、ハニカムロータ(22)の吸着能力を向上させることができる。
【0067】
本実施形態では、ハニカム基材(51)の一方の端面にだけスリット部(54)が開口するハニカムロータ(22)を、スリット部(54)が開口している方の端面を再生ゾーン(35)における風上側に向けた姿勢で設置している。このため、再生ゾーン(35)で加熱されるハニカムロータ(22)の部分の温度を均一化でき、吸着剤の再生を確実に行うことができる。
【0068】
この効果について説明する。再生ゾーン(35)においてハニカム基材(51)を通過する被加湿空気は、ハニカム基材(51)に熱を奪われて次第にその温度が低下してゆく。それ故、再生ゾーン(35)に位置するロータ本体(50)の部分では、空気流の風下側の温度が風上側の温度よりも低くなるおそれがある。ところが、本実施形態に係るハニカム基材(51)では、再生ゾーン(35)での風下側の端面近傍は、スリット部(54)によって分断されていない。このため、ハニカム基材(51)のうち再生ゾーン(35)での風下側の部分には、スリット部(54)によって妨げられることなく熱伝導によって熱が伝わってくる。
【0069】
従って、ロータ本体(50)を通過する空気の温度は変化するにも拘わらず、ロータ本体(50)の厚み方向における温度分布をほぼ均一化することができる。そして、ロータ本体(50)の温度を平均的に上昇させることで再生される吸着剤の温度を確実に上昇させることができ、吸着剤を確実に再生することが可能となる。
【0070】
【発明のその他の実施の形態】
上記各実施形態では、ハニカム基材(51)を切り欠いてスリット部(54)を構成しているだけであるが、このスリット部(54)にセラミック紙等を断熱材として挿入してもよい。スリット部(54)に断熱材を挿入することで更に大きな熱抵抗が得られ、熱伝導による熱ロスが一層低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態に係る空調機及び加湿ユニットの全体構成図である。
【図2】 実施形態に係る加湿ユニットの概略構成図である。
【図3】 実施形態に係るハニカムロータの概略斜視図である。
【図4】 実施形態に係るハニカム基材の概略斜視図である。
【図5】 実施形態に係るハニカム基材のスリット部を含む断面における概略断面図である。
【符号の説明】
(22) ハニカムロータ(ロータ構造体)
(26) ヒータ(加熱手段)
(33) 吸着ゾーン(吸着部)
(35) 再生ゾーン(再生部)
(40) ロータケーシング(保持部材)
(51) ハニカム基材(基材)
(54) スリット部(間隙部)

Claims (5)

  1. 円板状に形成されて厚さ方向に空気が貫流可能な基材(51)と、
    該基材(51)の表面に設けられる吸着剤とを備える一方、
    上記基材(51)には、該基材(51)をスリット状に切り込んで形成される複数の間隙部(54)が放射状に設けられ
    上記間隙部( 54 )は、基材( 51 )の一方の端面にのみ開口して該基材( 51 )の他方の端面側が非切断部( 55 )となるように形成され、
    上記基材( 51 )は、間隙部( 54 )の開口する端面が吸着剤を再生するための空気流の上流側に向いているロータ構造体。
  2. 請求項1記載のロータ構造体において、
    外周側のリム部( 41 )と、中央側のハブ部( 42 )と、ハブ部( 42 )からリム部( 41 )へ放射状に延びるスポーク部( 43 )とで構成されて上記リム部( 41 )の内側に基材( 51 )がはめ込まれるロータケーシング( 40 )を備え、
    上記ロータケーシング( 40 )は、スポーク部( 43 )の背面側に基材( 51 )の間隙部( 54 )が隠れるように配置されているロータ構造体。
  3. 請求項1又は2記載のロータ構造体において、
    基材(51)の材質がアルミニウム又はアルミニウム合金であるロータ構造体。
  4. 請求項1又は2記載のロータ構造体において、
    間隙部(54)には、断熱材が挿入されているロータ構造体。
  5. 請求項1又は2記載のロータ構造体(22)と、
    上記ロータ構造体(22)の吸着剤が第1の空気から水分を吸着する吸着部(33)と、
    第2の空気を加熱するための加熱手段(26)と、
    上記加熱手段(26)により加熱された第2の空気によってロータ構造体(22)の吸着剤から水分を脱着させる再生部(35)とを備え、
    上記ロータ構造体(22)を回転させて上記再生部(35)から出た第2の空気を利用する加湿動作を少なくとも行う調湿装置。
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