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JP3781512B2 - 積層体 - Google Patents

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JP3781512B2
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英史 大西
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)を用いた積層体に関し、更に詳しくは耐汚染性(汚染除去性)、耐薬品性等に優れた積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、塩化ビニル樹脂のシートやフィルムは、建築内装用の壁紙や家具等の仕上げ用の化粧シート、農業用資材、自動車の内装用資材、日用雑貨(ビニルマット、傘等)などに利用されており、更にはデスクマット、ファイル表紙、手帳表紙等の事務用品や文房具などにも多用されている。
しかしながら、かかる塩化ビニル樹脂中には多量の可塑剤が含有されており、塩化ビニル樹脂中の可塑剤の悪影響を防ぐために塩化ビニル樹脂層にEVOHを積層した壁紙(実公平2−47015号公報)や可塑剤を25〜55重量%含有するポリ塩化ビニル系フィルムに2〜50μm厚みのEVOHを積層した積層体(特開昭60−224542号公報)が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のいずれの積層体(壁紙)も短期間の可塑剤抑制効果は認められるものの、高湿度下で、かつ30〜40℃程度の温度で長期間放置された場合には、かかる抑制効果も低下することが推察され、新なる改善が望まれるところである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者はかかる問題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、エチレン含有量20〜60モル%,ケン化度90モル%以上のEVOH(A)層とカルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)及びSP値(Smallの式より算出)が8.5〜11の熱可塑性樹脂(B2)からなる樹脂組成物(B)層を積層し、樹脂組成物(B)層の外側に熱可塑性樹脂(C)を積層してなり、かかる熱可塑性樹脂(C)が塩化ビニル樹脂である積層体が上記の課題を解決することができ、更には該樹脂組成物(B)層がカルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)中にSP値(Smallの式より算出)が8.5〜11の熱可塑性樹脂(B2)が分散しているとき、本発明の作用効果を顕著に得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のEVOH(A)は、エチレン含量20〜60モル%(更には25〜50モル%)で、酢酸ビニル成分のケン化度が90モル%以上(更には95モル%以上)のものが用いられ、エチレン含量が20モル%未満では、高湿度下における可塑剤抑制効果が不十分となり、逆に60モル%を越えると、EVOHのバリヤー性が低下して本発明の目的を達成することはできず、また、ケン化度が90モル%未満でも高湿度下における可塑剤抑制効果が不十分となって本発明の目的を達成することはできない。
【0006】
また、該EVOHは更に少量のプロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、不飽和カルボン酸又はその塩・部分アルキルエステル・完全アルキルエステル・ニトリル・アミド・無水物、不飽和スルホン酸又はその塩等のコモノマーを含んでいても差支えない。
また、EVOH(A)のメルトインデックス(MI)は、0.5〜50g/10分(210℃、2160g荷重)が好ましく、更には1〜35g/10分(同上)が好ましい。かかるMIが0.5g/10分(同上)未満では溶液或いは押出コーティングする際の加工性が不良となり、逆に50g/10分(同上)を越えると汚染除去性が不十分となって好ましくない。
【0007】
上記のEVOH(A)層と積層される樹脂組成物(B)層は、カルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)とSP値(Smallの式より算出)が8.5〜11の熱可塑性樹脂(B2)からなるもので、かかるカルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)としては、酢酸ビニル含有量が、1〜40重量%が好ましく、更には2〜35重量%が好ましく、かかる含有量が1重量%未満では接着性が不足し、逆に40重量%を越えると積層体の外観が不良となって好ましくなく、更にカルボキシル基の含有量としては、0.5〜20モル%が好ましく、更には1〜10モル%が好ましく、かかる含有量が0.5モル%未満では接着性が不足し、逆に20モル%を越えると積層体の外観が不良となって好ましくない。
【0008】
また、かかるカルボキシル基の導入にあたっては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、或いはこれらの無水物等の不飽和カルボン酸含有単量体をEVAあるいはエチレン及び酢酸ビニルと共重合させればよい。
また、SP値(Smallの式より算出)が8.5〜11の熱可塑性樹脂(B2)は、かかるSP値が8.5未満では、可塑剤抑制効果が不十分となり、逆に11を越えると、高湿度下での可塑剤抑制効果が不十分となって本発明の目的を達成することはできず、更にはSmall数(G)が250以上の置換基を1分子中に30重量%以上含有することが好ましく、Small数(G)が250以上の置換基を1分子中に30重量%以上含有しないときも可塑剤抑制効果が不十分となって好ましくない。
【0009】
ここで、Small数(G)が250以上の置換基とは、具体的にカルボニル基(G=275)、カルボキシル基(G=390)、フェニル基(G=735)、(o,m,p−)フェニレン基(G=658)、ナフチル基(G=1146)、ニトロ基(G=440)、シアノ基(G=410)等が挙げられ、中でもカルボニル基(G=275)、カルボキシル基(G=390)、フェニル基(G=735)、(o,m,p−)フェニレン基(G=658)が好適に採用することができ、かかる熱可塑性樹脂(B2)としては、具体的にはポリスチレン(SP値=9.1)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量35〜70重量%)(SP値=8.5〜9.0)、NBR(ニトリルゴム)(SP値=9.3)、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体)(SP値=8.6)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)(SP値=9.0)、非晶ポリエステル(SP値=10.5〜11.0)等が挙げられ、好適にはポリスチレン(SP値=9.1)やエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量35〜70重量%)(SP値=8.5〜9.0)およびこれらの誘導体が用いられる。
【0010】
かかるカルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)と熱可塑性樹脂(B2)の配合重量比(B1)/(B2)は、95/5〜50/50が好ましく、更には90/10〜70/30が好ましく、かかる配合重量比が95/5を越えると可塑剤抑制効果が不十分となり、逆に50/50未満では接着性が不十分となって好ましくない。
【0011】
カルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)と熱可塑性樹脂(B2)の混合配合に当たっては、特に限定されないが、(B1)中に(B2)が分散されるように混合配合することにより、本発明の作用効果を顕著に発揮することができ、具体的には、溶融状態の(B1)に溶融状態の(B2)を溶融混合すればよく、(B1)を溶融状態にするにあたっては、特に限定されないが、単軸押出機、2軸押出機などの多軸押出機等により、その融点より20〜80℃高い温度で溶融すればよく、また(B2)を溶融するにあたっても、(B1)と同様に単軸押出機、2軸押出機などの多軸押出機等により、その融点より20〜80℃高い温度で溶融すればよい。
【0012】
かかる溶融状態の(B1)と(B2)を混合するには、▲1▼(B2)の押出機から(B1)の押出機にメルトサイドフィードしながら溶融混合する方法、▲2▼(B1)の押出機に(B2)を計量しながらソリッドサイドフィードし、溶融混合する方法、▲3▼(B1)の押出機から(B2)の押出機にメルトサイドフィードしながら溶融混合する方法、▲4▼(B2)の押出機に(B1)を計量しながらソリッドサイドフィードして溶融混合する方法等が挙げられ、特に限定はされないが、(B1)中への(B2)の相溶性の点で▲1▼が好適に実施される。
かかる方法により、(B1)中に(B2)が、相溶するか、島状、粒子状、ロッド状等の形状で分散していればよい。
【0013】
上記のEVOH(A)層と樹脂組成物(B)層を積層するに当たっては、予めフィルム状或いはシート状に成形された樹脂組成物(B)層にEVOH(A)を積層すればよく、かかる積層方法としては、▲1▼溶液コーティング、▲2▼溶融押出コーティング、▲3▼フィルムラミネート(ドライラミネート)、▲4▼共押出法等の積層方法が挙げられる。
▲1▼溶液コーティングにおいては、予め成形された樹脂組成物(B)層の表面にEVOH(A)をコーティングするのである。かかるコーティングには、EVOH(A)の溶液或いは分散液が用いられ、その際の溶媒としては水とアルコールの混合溶媒が使用され、水の量は30〜70重量%(アルコールの量は70〜30重量%)、好ましくは40〜60重量%(アルコールの量は60〜40重量%)であり、30重量%未満又は70重量%を越えると均一な溶液が得難く塗膜が不透明となるという問題点が生じる。またアルコールとしては メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等が挙げられ、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールが好適に使用される。
かかるEVOH(A)溶液或いは分散液中のEVOH(A)濃度は特に制限はなく任意の範囲で塗工可能で通常は0.5〜25重量%程度が好ましいが、本発明の効果を効率よく発揮するためには10〜20重量%が最も好ましい。
【0014】
コーティングに当たっては公知の方法を採用することができ、例えばグラビアコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーター、ロータースクリーンコーター、フラットスクリーンコーター、スプレー、ハケ塗り、バーコーター等が挙げられ、好適にはグラビアコーターやリバースロールコーターが使用される。その後加熱乾燥されてEVOH(A)の塗膜層が形成される訳であるが、かかるEVOH(A)溶液或いは分散液を塗布・乾燥する際の理想的なEVOH(A)溶液或いは分散液塗布時の溶液粘度とその後の乾燥温度は、EVOH(A)溶液塗布時の溶液粘度が50〜1000cps、その後の乾燥温度が70〜100℃程度の範囲よりそれぞれ任意に選択すればよい。また、乾燥時の時間は特に限定されないが、通常は10秒〜10分(更には30秒〜5分)の範囲より適宜選択される。
また、EVOH(A)塗膜層の(乾燥後の)厚みは特に限定されないが、1〜50μmが好ましく、特に2〜10μmとすることが好ましく、EVOH(A)の着量(乾燥後の付着量)は、1〜50g/m2が好ましく、更には2〜10g/m2が好ましい。(EVOH(A)の着量は、下記の▲2▼、▲3▼、▲4▼についても同様である。)かかるEVOH(A)溶液或いは分散液の塗布に当たって、通常は樹脂組成物(B)層の表面には接着剤(アンカーコート)層が設けられる。かかる接着剤としては、有機チタン系接着剤、2液反応型ポリウレタン系接着剤、ポリエステル/イソシアネート系接着剤等が挙げられ、好適には2液反応型ポリウレタン系接着剤が使用される。
【0015】
▲2▼溶融押出コーティングにおいては、樹脂組成物(B)層の表面に必要に応じてプライマー処理を施しておくことが好ましく、該プライマー処理剤としては上記の▲1▼に記載の有機チタン系接着剤、2液反応型ポリウレタン系接着剤、ポリエステル/イソシアネート系接着剤等が挙げられ、好適には2液反応型ポリウレタン系接着剤が使用され、かかるプライマー処理剤の使用量は0.1〜10g/m2、好ましくは0.3〜5g/m2である。その表面にEVOH(A)を公知の溶融押出機を用いて溶融押出コーティングするのである。また、溶融押出コーティングの際には、EVOH(A)の安定したコーティングを行うために必要に応じてポリオレフィン系樹脂等のサポート層を入れて、2種2層以上の溶融押出コーティングを行ってもよい。
【0016】
▲3▼フィルムラミネート(ドライラミネート)においては、予め成形した樹脂組成物(B)層の表面に必要に応じて上記の如きプライマー処理を行った後、EVOH(A)層(フィルム又はシート)をラミネートするのであるが、この場合のEVOH(A)層は延伸、無延伸どちらでもよく、延伸の場合は短時間の熱処理と配向の効果で後述する融解熱を上げることができるが、後でエンボス処理等が施されるのであれば、収縮する可能性もあり、この場合には無延伸フィルムが好ましい。また、このときのEVOH(A)フィルムの厚みは5〜50μmが好ましく、更には10〜20μmが好ましい。
【0017】
(4)共押出においては、2種2層のダイを通して共押出をする。
本発明においては、かかるEVOH(A)層/樹脂組成物(B)層なる積層体の該(B)層の外側に更に熱可塑性樹脂(C)層を設け、かかる熱可塑性樹脂(C)としては、具体的には、塩化ビニル樹脂が使用される。
【0019】
かかる(A)層/(B)層/(C)層の層構成を有する積層体を作製するに当たっては、(A)層/(B)層からなる積層体に(C)層をラミネートする方法、(B)層/(C)層からなる積層体に(A)を上記の如くフィルムラミネート、溶液コーティング、溶液押出コーティングする方法、(C)層に(B)及び(A)を上記の如くフィルムラミネート、溶液コーティング、溶液押出コーティングする方法、(A)〜(C)層各層を共押出する方法等によって行うことができる。
【0020】
かくしてEVOH(A)層/樹脂組成物(B)層またはEVOH(A)層/樹脂組成物(B)層/熱可塑性樹脂(C)層の層構成を有する積層体が得られるわけであるが、本発明においてはこれ以外にも、EVOH(A)層をa、樹脂組成物(B)層をb、熱可塑性樹脂(C)層をcとすると、c(塩化ビニル樹脂)/b/a、a/b/c(ポリオレフィン系樹脂)/c(塩化ビニル樹脂)、a/b/c(ポリエステル系樹脂)/c(塩化ビニル樹脂)、c(アクリル系樹脂)/a/b/c(塩化ビニル樹脂)等の積層構造を挙げることができ、特に(表側)a/b/c(塩化ビニル樹脂)(裏側)、(表側)a/b/c(ポリオレフィン系樹脂)/c(塩化ビニル樹脂)(裏側)の積層構造を有するものは、壁紙や化粧用シート等の内装材用途に有用で、これらの積層体の熱可塑性樹脂(C)層の裏面には洋紙、和紙、不織布、アスベスト、紙、ガラス、繊維、布等の壁紙用の基材を粘(接)着剤を塗布し、カレンダー法、ラミネート法等の方法で張り合わせることも可能で、また紙にナイフコーターやロールコーター、フラットスクリーンコーターで塩化ビニル樹脂(C)を塗布し、その後EVOH(A)及び樹脂組成物(B)からなる積層体を積層させることもできる。
【0021】
かかる壁紙を壁に貼着する場合には、一般に用いられる水系澱粉糊等の公知の接着剤を基材に塗布し、壁面に圧着させればよく、また、意匠性等の付加価値を高めるためにこれらの積層体の少なくとも一方の表面にエンボス加工を施して凹凸模様を形成することも有用であり、凹凸模様としては木目導管模様、塗装板の表面を模したもの、抽象模様、石目模様、布目模様、万線模様、木肌模様及びそれらを組み合わせたもの等を用いることができ、かかるエンボス加工により形成される凹凸模様の深さは模様により異なるが、壁紙用途の場合、通常1〜200μm程度に形成するのが、良好な立体感を付与することとなり好ましい。
また、壁紙等の意匠性を付与するために塩化ビニル樹脂(C)等の層を発泡させることも有用で、この場合のEVOH(A)及び樹脂組成物(B)からなる積層体の積層工程は発泡処理の前後どちらでもよいが、実質的には溶液コーティングの時はEVOH(A)及び樹脂組成物(B)からなる積層体の積層後に発泡処理を行うことが好ましく、溶融コーティング或いはフィルムラミネート法の時は発泡処理後にEVOH(A)及び樹脂組成物(B)を順次溶融コーティングしたり、EVOH(A)及び樹脂組成物(B)をラミネートして積層することが好ましい。
【0022】
エンボス加工により凹凸模様を形成する方法としては、所望の凹凸模様を形成した通常の熱エンボス機を用いてエンボス加工を施す方法やエクストルージョンコート装置の冷却ロール等に所望の凹凸模様を付与したエンボスロールを用い、EVOH(A)及び樹脂組成物(B)からなる積層体を形成するのと同時にエンボス加工を行う所謂ダブリングエンボス法等いわゆるメカニカルエンボス法あるいは発泡抑制剤や発泡促進剤を含むインクを印刷し、発泡工程で凹凸模様をつけるケミカルエンボス法等が用いられる。
また、a/b/c(塩化ビニル樹脂)、a/b/c(塩化ビニル樹脂)/a、等の積層構造を有するものは、農業用フィルム(シート)として有用である。
【0023】
本発明では積層体の各層に可塑剤(軟質塩化ビニル樹脂層には当然のことながら含有されている)、安定剤、界面活性剤、架橋性物質(エポキシ化合物、多価金属、無機又は有機の多塩基酸又はその塩等)、充填剤、着色剤、補強材としての繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)、艶消剤(タルク、シリカ系粉末、ポリエチレン、ポリウレタン等の樹脂微粒子粉末)、発泡剤等を本発明の効果を阻害しない範囲において配合することもできる。
尚、上記の如きa/b、a/b/c、・・・・・等の積層体におけるa、bおよびcの厚みはその用途等により一概に規定できないが、通常はaが1〜50μm、bが0.1〜10μm、cが50〜10000μm程度の範囲から任意に選択される。
【0024】
かくして得られた本発明の積層体は、建築内装用の壁紙や家具等の仕上げ用の化粧シートなどをはじめデスクマット等の事務用品、塩ビレザーの表紙を用いた手帳やファイル等の文房具、自動車用の内装用資材、農業用フィルム等の農業用資材、日用雑貨(ビニルマット、傘等)などに利用することができ、中でも上記で詳述したように壁紙や化粧シート等の内装材や農業用フィルム(シート)に大変有用であり、殊に耐汚染性(汚染除去性)に優れた壁紙に有用である。
【0025】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明の方法を具体的に説明する。
なお、「%」、「部」とあるのは特にことわりのない限り、いずれも重量基準を意味する。
実施例1
酢酸ビニル含有量15%,カルボキシル基含有量1.5モル%の無水マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)90部及びSP値9.1,MI1g/10分(200℃、5kg荷重)のポリスチレン(B2)10部を(B1)の2軸押出機に(B2)の単軸押出機からメルトサイドフィード法により溶融混合して樹脂組成物(B)(ペレット)を得た。((B1)及び(B2)の配合割合は吐出量により調整)
尚、樹脂組成物(B)のペレットの断面を走査型電子顕微鏡でで観察したところ、約3μm程度の(B2)粒子が(B1)中に分散していた。
次いでかかる樹脂組成物(B)を単軸押出機にて厚さ20μmのフィルムに成形した。
かかるフィルムの表面にイソシアネート反応型ポリウレタン系接着剤を1.5g/m2塗布・乾燥後、エチレン含有量44モル%,ケン化度99.7モル%,MI12g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH(A)の12%溶液(水/n−プロパノール=40/60(重量比))を調製してコーティング(乾燥厚さ5μm)した。
得られた積層体を用いて以下の評価を行った。
【0026】
(汚染除去性)
積層体のEVOH(A)層表面に約70℃のホットコーヒーを直径2cm程度の大きさに塗布あるいは滴下し、20℃で24時間放置後に水を含ませたさらし木綿で拭き取った後の積層体の表面状態を目視により以下の通り評価した。なお、軟質ポリ塩化ビニル樹脂シート単独層についても同様に行った。
また、別途、得られた積層体を40℃で1日間放置処理して同様の評価を行った。
尚、靴墨(中性洗剤で拭き取った)、和がらし、水性マジック(市販の洗剤(マジックリン)で拭き取った)についても同様に評価した。
○ −−− 完全に拭き取れて汚染の痕跡が認められない。
△ −−− 汚染の痕跡は認められるものの、軟質ポリ塩化ビニル樹脂シート単独層の場合よりも痕跡は少ない。
× −−− 軟質ポリ塩化ビニル樹脂シート単独層の場合と同等の痕跡が認められる。
【0027】
(可塑剤移行性)
積層体(10cm×10cm)をEVOH(A)層が上になるように平坦な400μmの塩化ビニルのシート(可塑剤含有量50%)の上に置き、EVOH(A)層表面と接するように厚さ3mm,直径5cmの可塑剤無添加の塩化ビニル樹脂板を置いた後、均一に50g/cmの荷重をかけて、70℃、90%RHで10日放置後の該塩化ビニル樹脂板の重量変化(可塑剤移行量)(g/m)を測定して、以下の通り評価した。
○ −−− 重量変化が2g/m未満
× −−− 重量変化が2g/m以上
【0028】
(耐薬品性)
エタノールを約1ccを積層体のEVOH(A)層表面に滴下し、常態で1時間放置後の表面状態を目視観察して、以下の通り評価した。
○ −−− 異状無し
× −−− 膨潤が認められる
【0029】
実施例2
実施例1の積層体において、樹脂組成物(B)層の表面に更に、片面にイソシアネート反応型ポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製、AD−335A/cat−10)が1.5g/m2塗工された厚さ400μmの塩化ビニル樹脂(C)のシート(可塑剤含有量50%)をドライラミネートした以外は同様に行って積層体を得て、同様に評価を行った。
【0030】
実施例3
実施例2において、ポリスチレン(B2)に代えて、酢酸ビニル含有量33%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(B2)(SP値=9.0)を用いた以外は同様に行って樹脂組成物(B)を得た後、同様に積層体を得て、同様に評価を行った。
【0031】
実施例4
実施例2において、ポリスチレン(B2)に代えて、無水マレイン酸1.5%変性のエチレン−酢酸ビニル共重合体(B2)(SP値=8.7)を用いた以外は同様に行って樹脂組成物(B)を得た後、同様に積層体を得て、同様に評価を行った。
【0032】
実施例5
実施例2において、(B1)及び(B2)の配合重量比を(B1)/(B2)=80部/20部とした以外は同様に行って積層体を得て、同様に評価を行った。
【0033】
実施例6
実施例3において、EVOH(A)をエチレン含有量32モル%,ケン化度99.8モル%,MI12g/10分(同上)のEVOHとした以外は同様に行って積層体を得て、同様に評価を行った。
【0034】
実施例7
実施例4において、ポリスチレン(B2)に代えて、SBS(B2)(SP値=8.6)を用いた以外は同様に行って積層体を得て、同様に評価を行った。
【0035】
実施例8
実施例1において、(B1)として、酢酸ビニル含有量7%,カルボキシル基含有量3モル%の無水マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)を用いた以外は同様に行って、同様に評価をした。
【0037】
比較例1
実施例1において、樹脂組成物(B)をカルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)単独とした以外は同様に行って積層体を得て、同様に評価を行った。
【0038】
比較例2
実施例1において、カルボキシル基含有(マレイン酸変性)エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)に代えて、エチレン含有量33%の未変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いた以外は同様に行って積層体を得て、同様に評価を行った。
【0039】
比較例3
実施例1において、ポリスチレン(B2)に代えて、ポリイソプレン(SP値=8.0)を用いた以外は同様に行って積層体を得て、同様に評価を行った。
【0040】
比較例4
実施例1において、ポリスチレン(B2)に代えて、ポリアクリロニトリル(SP値=12)を用いた以外は同様に行って積層体を得て、同様に評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
──────────────────────────────────────
汚染除去性 可塑剤移行性 耐薬品性
──────────────────────────────────────
無処理 放置処理後
──────────────────────────────────────
実施例1 ○ ○ ○ ○
〃 2 ○ ○ ○ ○
〃 3 ○ ○ ○ ○
〃 4 ○ ○ ○ ○
〃 5 ○ ○ ○ ○
〃 6 ○ ○ ○ ○
〃 7 ○ ○ ○ ○
〃 8 ○ ○ ○ ○
──────────────────────────────────────
比較例1 ○ × × ×
〃 2 ○ × × ×
──────────────────────────────────────
【0042】
【発明の効果】
本発明の積層体は、カルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体に特定の熱可塑性樹脂を配合した樹脂組成物の層とEVOH層を積層しているため、耐防汚性(汚染除去性)、耐薬品性等に優れ、建築内装用の壁紙や家具等の仕上げ用の化粧シートなどをはじめデスクマット等の事務用品、塩ビレザーの表紙を用いた手帳やファイル等の文房具、自動車用の内装用資材、農業用フィルム等の農業用資材、日用雑貨(ビニルマット、傘等)などの積層体にも大変有用である。

Claims (10)

  1. エチレン含有量20〜60モル%,ケン化度90モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)層とカルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)及びSP値(Smallの式より算出)が8.5〜11の熱可塑性樹脂(B2)からなる樹脂組成物(B)層を積層し、樹脂組成物(B)層の外側に熱可塑性樹脂(C)を積層してなり、かかる熱可塑性樹脂(C)が塩化ビニル樹脂であることを特徴とする積層体。
  2. SP値(Smallの式より算出)が8.5〜11の熱可塑性樹脂(B2)が、Small数(G)250以上の置換基を1分子中に30重量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の積層体。
  3. Small数(G)が250以上の置換基が、カルボニル基、カルボキシル基、フェニル基、フェニレン基のいずれかであることを特徴とする請求項2記載の積層体。
  4. SP値(Smallの式より算出)が8.5〜11の熱可塑性樹脂(B2)が、ポリスチレン系化合物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびこれらの誘導体のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の積層体。
  5. 樹脂組成物(B)層がカルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)中にSP値(Smallの式より算出)が8.5〜11の熱可塑性樹脂(B2)が分散してなることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の積層体。
  6. カルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)とSP値(Smallの式より算出)が8.5〜11の熱可塑性樹脂(B2)の配合重量比(B1)/(B2)が95/5〜50/50であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の積層体。
  7. カルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体(B1)のカルボキシル基含有量が0.5〜20モル%であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の積層体。
  8. 溶液コーティング法、溶融押出コーティング法、ドライラミネート法、共押出法のいずれかの方法で積層されたことを特徴とする請求項1〜いずれか記載の積層体。
  9. 内装材用途または農業用フィルムに用いることを特徴とする請求項1〜いずれか記載の積層体。
  10. 内装材用途が壁紙用途であることを特徴とする請求項記載の積層体。
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