JP3780381B2 - 高強度コイルばねおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オートマティック車の自動変速機のクラッチトーションのダンパースプリングやエンジンの弁ばねに使用する高強度コイルばねに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、弁ばねの材料として規格化されているのは、JISG3561のSWO−V、SWOCV−VおよびSWOSC−Vの3種類である。なかでもシリコンクロム鋼オイルテンパー線であるSWOSC−Vは、耐疲労強度および耐へたり性に優れているため広範囲に使用されている。しかし、自動車エンジン用のバルブスプリングや自動変速機用のダンパースプリング(以降、ばねと称す)等に用いられるコイルばねでは、高速回転化やコンパクト化のニーズが高いために、つねに高強度化、高耐疲労性、または軽量化などが求められている。これらの要求に応えるべく、材料組成や熱処理方法などの改良について多くの研究がなされている。
【0003】
例えば、特開平11−246943号公報では、重量%でC:0.5〜0.8%、Si:1.2〜2.5%、Mn:0.4〜0.8%、Cr:0.7〜1.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、不可避的不純物であるAl含有量が0.005%以下、同Ti含有量が0.005%以下であって、最大非金属介在物が15μmである鋼に、焼入れ加熱温度を950℃以上1100℃以下として焼入れ・焼戻しを施したオイルテンパー線を素材として使用し、コイリング後、窒化処理を施したことを特徴とする高強度弁ばねについて開示している。ここでは、Siの添加量を通常よりも高くすることにより、焼戻し温度を上げることを可能にし、さらにこの焼戻し温度の上昇に伴って窒化処理温度をも上げることで、ばねの表面硬さを硬くして疲労強度および耐へたり性の向上を図ったものである。
【0004】
しかし、この窒化処理温度を上昇可能とする方法では、Si添加量が高いこと、および処理温度が高いことから、従来の方法に比べて表面近傍に窒化物や炭窒化物を主体としたいわゆる白層が発生しやすくなる。この白層は非常に硬くて脆いという性質があるため、特に自動変速機のクラッチトーション用のダンパースプリングなどの大きな衝撃力を受けるような場合には、スプリングの耐衝撃性の低下に繋がるこという大きな難点が考えられる。さらに、高温での窒化処理はコストアップ要因ともなり、昨今のコスト削減要請には応えられない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、安価で耐衝撃性の高い高強度コイルばねとその製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明になる高強度コイルばねは、重量比で、C:0.6〜0.7%、Si:1.8〜2.2%、Mn:0.7〜0.9%、Cr:0.5〜0.8%、V:0.05〜0.15%、を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、不可避的不純物のうち、P:0.05%以下、S:0.025%以下、Cu:0.2%以下であって、最大非金属介在物が15μmである鋼のオイルテンパー線を素材として使用し、コイリング、マイクロショット、耐衝撃性の高いばねを得るために400〜440℃での窒化処理、直径が0.4〜1.0mmで硬さがHv500〜800である第1ショットによる第1ショットピーニング、該第1ショットよりも硬度の高い第2ショットによる第2ショットピーニングを施すことにより、表層部(表面から0.02mm付近の)硬さがHv600〜800でることを特徴とするものである。
【0007】
ここで、オイルテンパー線は、引張強さが1960MPa以上、絞りが38%以上であることが望ましい。
【0008】
上記の条件の組合わせで製造することにより、耐衝撃性の高い高強度コイルばねを得ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
(ばね素材)
本発明になる高強度コイルばねは、重量比で、C:0.6〜0.7%、Si:1.8〜2.2%、Mn:0.7〜0.9%、Cr:0.5〜0.8%、V:0.05〜0.15%、を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、不可避的不純物のうち、P:0.05%以下、S:0.025%以下、Cu:0.2%以下であって、最大非金属介在物が15μmである鋼のオイルテンパー線を素材とすることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、オイルテンパー線の組成の限定理由は以下の通りである。
【0011】
C:0.6〜0.7%
Cは鋼線の強度を高めるために必須の元素であるが、0.6%未満では充分な強度が得られず、0.7%を越えると靱性が低下し、さらに鋼線のキズ感受性が増大して信頼性が低下する。
【0012】
Si:1.8〜2.2%
Siはフェライトの強度を向上させ、耐へたり性を向上させるのに有効な元素である。1.8%未満ではその十分な効果がなく、2.2%を越えると冷間加工性を低下させるとともに熱間加工性や熱処理による脱炭を助長する。すなわち、コイルばねの成形性を低下させることになる。
【0013】
Mn:0.7〜0.9%
Mnは鋼の焼入れ性を向上させ、鋼中のSを固定してその害を阻止するが、0.7%未満ではその効果がなく、0.9%を越えると靱性が低下する。
【0014】
Cr:0.5〜0.8%
CrはMnと同様に、鋼の焼入れ性を向上させ、かつ熱間圧延後のパテンティング処理により靱性を付与し、焼き入れした後、焼戻し時の軟化抵抗性を高め、高強度化するのに有効な元素である。0.5%未満ではその効果が少なく、0.8%を越えると炭化物の固溶を抑制し、強度の低下を招くとともに、焼入れ性の過度の増大となって靱性の低下をもたらす。
【0015】
V:0.05〜0.15%
Vは焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させる元素であるが、0.05%未満では炭化物の形成が極めて少ないためにその効果は小さい。また、0.15%を越えると焼入れ加熱時に炭化物が粗大化して靱性の低下を招く結果となる。
【0016】
次に、鋼線の最大非鉄金属介在物は15μmであることが望ましい。この非金属介在物はAl2O3やTiOからなることが多いが、これらの介在物は硬質であるため、鋼線の表面付近に存在した場合には疲労強度を著しく低下させる。最大非鉄金属介在物は15μmより小さければあまり問題とはならない。
【0017】
本発明に用いるオイルテンパー線は、引張強さが1960MPa以上、絞りが38%以上であることが望ましい。引張強さが1960MPa未満では、ばねの疲労強度が低下して望ましくない。好ましくは1960〜2300MPaである。また、絞りが38%未満では、ばねの成形が問題となるので、38〜55%が適当である。
(コイルばねの製造方法)
本発明の高強度コイルばねは、前記の機械的性質を有するオイルテンパー線を用いて、コイリング成形後、窒化処理の前に均一な窒化層を得るためにディスケーリング処理としてマイクロショットを行い、次に、第1ショットピーニングと第2ショットピーニングとを実施して得られる。
【0018】
本発明のコイルばねに使用される線材は、窒化処理により表面部が窒化されて表面部の硬度が高くなる鋼材である。特に、高強度ばね用として従来より使用されているMo、Vを含む合金鋼オイルテンパー線とか、合金鋼硬引線が適している。かかる線材は、酸化皮膜をもつものが好ましい。酸化皮膜は、その後の工程のコイリング成形を容易にする作用を有する。
【0019】
まず初めに、ばね用低合金鋼オイルテンパー線を冷間コイリングしてばね状に成形する。その後、低温熱処理を施してコイル成形時に生じた残留応力や残留歪みを除去することが好ましい。また、合金鋼硬引線に対しては、焼入れ焼戻し処理を施してその硬度を高くするのが好ましい。
【0020】
次に、窒化に先立ってディスケール処理を行う。ディスケール処理は、コイル成形されたばね素材の表面の酸化皮膜を除去する工程で、酸化皮膜を取除くことにより均一な窒化を可能とするものである。
【0021】
なお、ディスケール処理では、ばね素材の表面粗さで、表面粗さの最大高さ粗さRmaxを5μm以下にするのが好ましい(JIS B 0601「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語、定義及び表面性状パラメータ」が2001年1月に改正され、最大高さ粗さの表記はRZと改訂されたが、従前の十点平均粗さRZとの誤解を避けるために本明細書では、最大高さ粗さをRmaxと表記する)。Rmaxが5μmを越えると、窒化の均一性が不十分となり、また、得られたコイルばねの表面研磨が必要となる。
【0022】
ディスケール処理としては、ばね素材の表面粗さを増大させないように、比較的弱くブラストされるような条件、すなわち、マイクロショットを使用してショットピーニングして行う。マイクロショットとしては、比較的軟らかいガラスビーズや砥粒を使用するとか、直径0.3mm以下の細かいカットワイヤを使用する、あるいは直径0.3mm以下のスティールショットを使用するという方法などを例示することができる。これらの方法により、ばね素材の表面粗さの最大高さ粗さRmaxを5μm以下にすることができる。
【0023】
ディスケールをマイクロショットで実施することで、酸化皮膜が除去できるとともに、次の工程の窒化を容易にすることができる。
【0024】
窒化処理は、窒素ガスまたはアンモニアガス等の雰囲気中で行うことができるが、窒化処理条件は、400〜475℃で2〜4時間が望ましい。窒化処理温度が400℃未満では、硬化不足となり、また、475℃を越えると内部硬さが低下して、衝撃性の高い高強度コイルばねを得ることが出来ない。
【0025】
さらに、窒化処理時間が2時間未満では、窒化処理に伴う硬化層の形成が不均一となり、また、4時間を超えても、長時間処理に見合うより有効な窒化層を得ることは出来ないので、製造コストを押上げるという不都合を生じる。
【0026】
以上の窒化処理で得られたコイルばねの表面硬さは、表面から0.02mm入った位置での硬さが、Hv600〜800である。この硬さが、Hv600未満では次工程の二段ショットピーニングで十分な圧縮残留応力を形成することができないために、コイルばねの疲労強度が低下する。一方、Hv800を越えると耐衝撃性が低下してしまい、本発明の課題である耐衝撃性の高い高強度コイルばねを得ることが出来ない。
【0027】
ショットピーニング工程は、表面部が窒化処理されて硬化したコイルばねの表面から内部深く、かつ表面での残留応力を大きく付与して、コイルばねの疲労強度を高めることを目的に実施するものである。そのため、第1ショットピーニング工程では、まず粒径の大きいショットを、例えば高速でコイルばねに投射して表面より内部の深い位置まで残留応力を付与させる。
【0028】
第2ショットピーニング工程では、第1ショットピーニング工程で使用したショットより粒径が小さいショットを使用して再度投射を行う。この工程によって表面部にさらに大きな残留応力を付与する。第1ショットピーニング工程で使用したショットより硬度の高いものを使用したり、あるいはショットを高速で投射することでその効果をより高めることができる。
【0029】
以上の工程によって、表面の残留応力が高く、かつ内部の深い位置にまで残留応力が付与できるので、コイルばねの疲れ強さを大幅に向上させることができる。 さらに、最終の低温焼きなましを施すことが好ましい。
【0030】
第1ショットピーニング工程で使用されるショットとしては、内部の深い位置まで残留応力を付与するために、0.4〜1.0mmの径で、硬さがHv500〜800の範囲のものが好ましい。
【0031】
第2ショットピーニング工程では、ショットの径が第1ショットピーニング工程で使用したものよりも小さいものを使用することが望ましい。表面部の残留応力を高めるためには、ショット径は0.05〜0.3mm程度で、その硬さがHv700〜900のものを使用することが好ましい。この場合には高圧エアーによるのショットの投射が望ましく、この高圧での投射で表面付近に著しく高い残留応力を形成することができるのである。
【0032】
その後、低温焼きなましを施すことが望ましい。
【0033】
以上のようにして、従来よりも安価で高い耐衝撃性を有する高強度コイルばねを得ることが出来る。この高強度コイルばねは、オートマティック車の自動変速機のクラッチトーション用ダンパースプリングやエンジンの弁ばねに好適に使用することができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により具体的に説明する。
[試料の調製]
(実施例1)
コイルばねの線材として、C:0.64重量%(以下、特に明記しない限り重量%とする)、Si:2.06%、Mn:0.78%、Cr:0.70%、V:0.07%で、不可避的不純物としては、P:0.008%、S:0.014%、Cu:0.04%を含み、残部がFeとからなる合金鋼をオイルテンパーして、引張り強さが2103MPa、絞りが50.7%の合金鋼オイルテンパー線を用いた。このオイルテンパー線の最大非金属介在物は 13μmであった。
【0035】
前記のオイルテンパー線をコイリングし、線径:2.3mm、コイル中心径:11.7mm、総巻数:11.5巻、有効巻数:9.5巻、自由高さ:58.2mm、ばね定数:17.9N/mm2のコイルばねを成形した。
【0036】
次に、このコイルばねを435℃で10分間熱処理してコイル成形時に生じた残留応力や残留歪みを除去した。その後、直径が0.2mmで、硬度Hv550のスチールボールを使用して20分間のマイクロショットを施して、表面の酸化皮膜を除去した。
【0037】
次に、アンモニアガス雰囲気下で420℃、3時間のガス窒化を行い、コイル表面に窒化層を形成した。
【0038】
第1ショットピーニング工程は、窒化処理後に直径0.6mmでHv600のラウンドカットワイヤを使用して、73m/sの条件で10分間のショットピーニングを行った。
【0039】
第2ショットピーニング工程は、直径0.25mmでHv800のラウンドカットワイヤを、エアーで5分間投射して、ショットピーニングを施した。次いで225℃、10分間の低温焼きなましを実施して、異常に大きな内部歪みを除去し、コイル表面に圧縮残留応力を付与して実施例1の高強度コイルばねを得た。(実施例2)
実施例1と同一組成で、同一の機械的性質を有するオイルテンパー線を用いて、窒化処理条件を440℃、3時間とした以外は、実施例1と全く同様の形状と製造工程および製造条件で、実施例2の高強度コイルばねを得た。
(実施例3)
実施例1と同一組成で、同一の機械的性質を有するオイルテンパー線を用いて、窒化処理条件を実施例2と同様の440℃、3時間とし、第2ショットピーニングを、直径0.6mmでHv800のラウンドカットワイヤを用いて、ショット速度を40m/secとして10分間投射した以外は、実施例1と全く同様の形状と製造工程および製造条件で、実施例3の高強度コイルばねを得た。
(実施例4)
実施例1と同一組成で、同一の機械的性質を有するオイルテンパー線を用いて、窒化処理温度を460℃とした以外は、実施例1と全く同様の形状と製造工程および製造条件で、実施例4の高強度コイルばねを得た。
(実施例5)
実施例1と同一組成で、同一の機械的性質を有するオイルテンパー線を用いて、窒化処理温度を475℃とした以外は、実施例1と全く同様の形状と製造工程および製造条件で、実施例5の高強度コイルばねを得た。
(比較例1)
従来のSWOXX−V鋼材、すなわち、C:0.64%、Si:1.4%、Mn:0.7%、Cr:1.5%、Mo:0.5%、V:0.15%で、不可避的不純物としては、P:0.0015%、S:0.03%、Cu:0.02%のオイルテンパー線を用いて、実施例1と同様の形状のコイルばねを形成して比較例1とした。
【0040】
ここで、オイルテンパー線の引張強さは、2110MPa、絞りは、40%であった。また、窒化処理条件は500℃、4時間とし、第1ショットピーニング工程は、窒化処理後に直径0.8mmでHv700のラウンドカットワイヤを使用して、73m/sの投射速度で60分間のショットピーニングを実施した。
【0041】
第2ショットピーニング工程は、直径0.25mmでHv800のラウンドカットワイヤをエアーで5分間ショットして第2ショットピーニングとした。次いで225℃、10分間の低温焼きなましを施して、実施例1と同様に異常に大きな内部歪みを除去し、コイル表面に圧縮残留応力を付与して比較例1の高強度コイルばねを得た。得られたコイルばねのばね定数は、17.9N/mm2であった。
[評価]
(評価方法)
上記で得られた各試料を硬さ試験及び衝撃試験によって評価した。また、実施例2および実施例5については耐久試験を実施した。
【0042】
硬さ試験は、得られた各試料の断面を研磨して、マイクロビッカース(荷重50g)で、ばねの表面から内部へ0.02mm入った部分を測定した。結果を0.02mmの硬さとして表1に示す。
【0043】
衝撃試験は、図1に示す衝撃試験機で測定した。すなわち、試料ばね1の下部にスペーサ5を配置し、潤滑油6の塗布してある試験台3上に載置する。次に、圧縮プレート2と一体的に接合されているリング状のケース4を試料ばね1の上部からはめ込んで、所定の荷重Wを負荷して試料ばねを圧縮する。この時の荷重Wは375Nである。しかる後に、スペーサ5を水平方向に急激にスライドさせて、試料ばね1の下部から除去する。試料ばね1は、瞬時にスペーサ5の厚さ分だけ下方に伸びて、試験台3の表面に激突することとなる。この激突の衝撃力による試料ばねの折損の有無を調べるものである。なお、スペーサ5を除去した場合の荷重Wは、200Nであった。
【0044】
試料ばねの個数は、実施例1〜5および比較例1ともに各5個ずつとし、折損しなかった試料ばねの個数をばね未折損数として、窒化処理温度およびばね表面から0.02mm内部の硬さとともに表1に示した。
【0045】
試料ばねの耐久試験は、実施例2および5についてのみ実施した。各実施例で得られた各8個の試料ばねについて、以下の条件で耐久試験を実施した。
【0046】
すなわち、540±520MPaの繰返し応力を、600cpmの速度で各試料ばねに負荷し、繰返し回数が1×107で破損のない場合を合格とした。なお、この耐久試験は室温で実施した。この耐久試験条件は、従来品(比較例1)の合格基準である。
【0047】
【表1】
【0048】
(評価結果)
表1の実施例1、2、4および5から窒化温度の上昇に伴い0.02mm硬さが上昇していることが分る。しかし、その範囲は、本発明の特徴であるHv600〜800の間となっており、比較例1のHv900に比べて低く、靱性の改善されたことを示している。
【0049】
また、衝撃試験によるばね未折損数は、実施例2では、試料ばね5本中5本全部が未折損であったが、比較例1では5本全てが折損してしまい、本発明による衝撃性の改善は顕著であることが分る。
【0050】
実施例3は、第2ショット条件以外は実施例2と同様に実施して得られたものである。すなわち、第2ショット条件を変化させても比較例1の耐衝撃性を上回ることが分った。
【0051】
実施例2および実施例5に対して実施した耐久試験では、いずれの場合も、繰返し回数が1×107回終了後でも8本の試料ばね全部が破損せず合格であった。
【0052】
すなわち、本発明により、従来の比較例1と同程度の耐久性を有し、かつ比較例1よりも耐衝撃性の高い高強度コイルばねを得ることが出来た。
【0053】
【発明の効果】
本発明では、コイルばねの素材であるオイルテンパー線の組成及び機械的性質を限定し、さらに製造方法、特に窒化処理温度を400〜475℃に規定して、表面硬さ(表面から0.02mmの硬さ)をHv600〜800とすることで、従来よりも安価で高い耐衝撃性を有する高強度コイルばねを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料ばねの衝撃試験方法を示す衝撃試験機の縦断面の概略図である。
【符号の説明】
1:試料ばね 2:圧縮プレート 3:試験台 4:ケース 5:スペーサ
6:潤滑油 W:荷重
Claims (3)
- 重量比で、C:0.6〜0.7%、Si:1.8〜2.2%、Mn:0.7〜0.9%、Cr:0.5〜0.8%、V:0.05〜0.15%、を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうち、P:0.05%以下、S:0.025%以下、Cu:0.2%以下、最大非金属介在物が15μmである鋼のオイルテンパー線を素材とし、コイリング、マイクロショット、耐衝撃性の高いばねを得るために400〜440℃での窒化処理、直径が0.4〜1.0mmで硬さがHv500〜800である第1ショットによる第1ショットピーニング、該第1ショットよりも硬度の高い第2ショットによる第2ショットピーニングを施し、表面から0.02mmの硬さがHv600〜800であることを特徴とする高強度コイルばね。
- 前記オイルテンパー線は、引張強さが、1960MPa以上、絞りが38%以上である請求項1記載の高強度コイルばね。
- 重量比で、C:0.6〜0.7%、Si:1.8〜2.2%、Mn:0.7〜0.9%、Cr:0.5〜0.8%、V:0.05〜0.15%、を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうち、P:0.05%以下、S:0.025%以下、Cu:0.2%以下、最大非金属介在物が15μmである鋼のオイルテンパー線を素材として使用し、コイリング、マイクロショット、耐衝撃性の高いばねを得るために400〜440℃での窒化処理、直径が0.4〜1.0mmで硬さがHv500〜800である第1ショットによる第1ショットピーニング、該第1ショットよりも硬度の高い第2ショットによる第2ショットピーニングを施し、表面から0.02mmの硬さがHv600〜800であることを特徴とする高強度コイルばねの製造方法。
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