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JP3780239B2 - 画像表示装置とその製造方法 - Google Patents

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JP3780239B2 JP2002252247A JP2002252247A JP3780239B2 JP 3780239 B2 JP3780239 B2 JP 3780239B2 JP 2002252247 A JP2002252247 A JP 2002252247A JP 2002252247 A JP2002252247 A JP 2002252247A JP 3780239 B2 JP3780239 B2 JP 3780239B2
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  • Manufacture Of Electron Tubes, Discharge Lamp Vessels, Lead-In Wires, And The Like (AREA)
  • Vessels, Lead-In Wires, Accessory Apparatuses For Cathode-Ray Tubes (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子放出素子が配置された電子源基板を用いた画像表示装置に関し、特にその真空封着部における構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子としては熱電子源と冷陰極電子源の2種類が知られている。冷陰極電子源には電界放出型素子(FE型素子)、金属/絶縁層/金属型素子(MIM素子)、表面伝導型電子放出素子等がある。
【0003】
以下に、表面伝導型電子放出素子の概略を簡単に説明する。
【0004】
上記の表面伝導型電子放出素子は、図17に模式的に示すように、基板1上に対向する一対の素子電極2,3と、該素子電極に接続されその一部に電子放出部5を有する導電性膜4とを有してなる。
【0005】
上述の表面伝導型電子放出素子は、構造が単純で製造も容易であることから、大面積にわたって多数の素子を配列形成できる利点がある。そこで、その特徴を生かせるような様々な応用が研究されている。例えば、多数の表面伝導型電子放出素子をマトリクス状等に配線接続した電子源基板、かかる電子源基板を用いた表示装置等の平面型画像形成装置が挙げられる。
【0006】
これらの電子放出素子を多数配置した電子源基板を用いて構成した表示パネルの模式図を図18に示す。図18は、表示パネル(外囲器90)周辺部の概略断面構造を示している。
【0007】
図18において、21は電子放出素子(不図示)が多数配置された電子源基板を指し、リアプレートとも呼ぶ。82はガラス基板の内面に蛍光膜とメタルバック等が形成されたフェースプレートである。86は支持枠である。
【0008】
外囲器90は、リアプレート21、支持枠86及びフェースプレート82を接着し、封着することによって構成されている。以下、外囲器90の封着手順を簡単に説明する。
【0009】
先ず、リアプレート21と支持枠86はフリットガラス202によって予め接合させておく。
【0010】
次に、パネル接合材料としてIn膜203を半田付けにて、支持枠86とフェースプレート82に設ける。この時、支持枠86とフェースプレート82へのIn膜203の接合強度を高めるために、下地層として銀ペースト膜204を設けることが望ましい。
【0011】
その後、真空チャンバー中で、In融点以上の温度でIn膜203を介して支持枠86とフェースプレート82を接合することで、封着して、外囲器90を構成する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の画像形成装置の封着方法では、以下の様な問題点があった。
【0013】
接合材料として、融点が156℃と比較的低く、かつ軟化点=融点での放出ガスが少ない材料としてInを用いているが、In膜203と支持枠86やフェースプレート82、或は、下地層としての銀ペースト膜204に超音波半田付けを行う際に、In膜203に表面酸化膜が形成される問題である。
【0014】
即ち、酸化膜は、融点が800℃以上と高温であるため、封着の際に純Inが融けている時にも、酸化膜として残存する。この酸化膜が薄い場合は、破れたり、純Inと化学反応することで、酸化膜の形状が失われ問題とはならない。しかし、酸化膜が厚いと、凹凸のある表面形状がそのまま残り、真空リークの原因となりやすい。
【0015】
Inは、大気雰囲気で容易に酸化するだけでなく、融点以上で急速に内部に酸素が拡散し厚い酸化膜を形成する。よって、従来の封着方法では、超音波半田付けの際に形成される酸化膜が厚い箇所で、真空リークが生じやすいという、問題があった。
【0016】
これらの問題は、接合材料としてIn以外の金属、或は、合金材料を用いる場合も同じように大きな問題となりうる。
【0017】
本発明の目的は、真空リークの少ない信頼性の高い、そして表示品位の良い画像表示装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の構成は、以下のとおりである。
【0019】
第一の本発明は、第一の基板と、前記第一の基板と間隔を置いて対向配置された第二の基板とを有する外囲器と、前記外囲器内に配置された画像表示手段とを備える画像表示装置であって、前記第一の基板または前記第二の基板の周辺部において、前記第一の基板と前記第二の基板とが、その内部に高融点材料からなる部材を有する低融点金属の接合部材により封着されており、前記高融点材料からなる部材は、酸化しにくい金属を母材表面にコーティングしたものであることを特徴とする画像表示装置である。第二の本発明は、第一の基板と、前記第一の基板と間隔を置いて対向配置された第二の基板とを有する外囲器と、前記外囲器内に配置された画像表示手段とを備える画像表示装置であって、前記第一の基板または前記第二の基板の周辺部において、前記第一の基板と前記第二の基板とが、その内部に高融点材料からなる部材を有する低融点金属の接合部材により封着されており、前記高融点材料からなる部材は、水素を吸蔵させた金属であることを特徴とする画像表示装置である。
【0020】
かかる第一の本発明は、接合部材がその内部に、接合部材よりも高融点の材料からなる保持部材を有しているので、封着に際して、接合部材の表面酸化膜を高融点の材料からなる保持部材によって破ることができ、接合面から酸化膜を排除することができるので、基板の接合面と接合部材との密着性(接合性)が良好であり、外囲器のシール性能に優れる。更には、高融点材料からなる保持部材による両基板間隔の保持性能にも優れる。
【0021】
また、第一及び第二の本発明は、「前記高融点材料からなる部材は、金属であること」、「前記高融点材料からなる部材が、前記間隔方向において、前記接合部材の厚みと同じ厚みを有すること」、「前記高融点材料からなる部材は、水素を吸蔵させた金属であること」、「前記画像表示手段は、電子放出素子と蛍光体とを有すること」、のそれぞれをより好ましい形態として含むものである。
【0029】
また、第三の本発明は、第一の基板と、前記第一の基板と間隔を置いて対向配置された第二の基板とを有する外囲器と、前記外囲器内に配置された画像表示手段とを備える画像表示装置の製造方法であって、第一の基板または第二の基板の周辺部において、前記第一の基板と前記第二の基板とを、その内部に高融点材料からなる部材を有する低融点金属の溶融接合により封着する工程を有することを特徴とする画像表示装置の製造方法である。
【0030】
かかる第の本発明は、接合部材がその内部に、接合部材よりも高融点の材料からなる部材を有しているので、封着に際して、接合部材の表面酸化膜を高融点の材料からなる部材によって破ることができ、接合面から酸化膜を排除することができるので、基板の接合面と接合部材との良好な密着性(接合性)を得ることができる。
【0031】
また、第の本発明は、「前記高融点材料からなる部材は、金属であること」、「前記画像表示手段は、電子放出素子と蛍光体とを有すること」、のそれぞれをより好ましい形態として含むものである。
【0035】
尚、以上で述べた金属は、合金をも含むものである。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0037】
本実施の形態の電子源基板に配置される電子放出素子としては、図17に例示した構成が挙げられる。
【0038】
基板1はガラス等からなり、その大きさおよびその厚みは、その上に設置される電子放出素子の個数、および個々の素子の設計形状、および電子源の使用時に容器の一部を構成する場合には、その容器を真空に保持するための耐大気圧構造等の力学的条件等に依存して適宜設定される。
【0039】
ガラスの材質としては、廉価な青板ガラスを使うことが一般的であるが、この上にナトリウムブロック層として、例えば厚さ0.5μm程度のシリコン酸化膜をスパッタ法で形成した基板等を用いる必要がある。この他にナトリウムが少ないガラスや、石英基板でも作成可能である。
【0040】
また素子電極2、3の材料としては、一般的な導体材料が用いられ、例えばNi、Cr、Au、Mo、Pt、Ti等の金属やPd−Ag等の金属が好適であり、あるいは金属酸化物とガラス等から構成される印刷導体や、ITO等の透明導電体等から適宜選択され、その膜厚は、好ましくは数百Åから数μmの範囲が適当である。
【0041】
さらにこの素子電極には、市販の白金Pt等の金属粒子を含有したペーストを、オフセット印刷等の印刷法によって塗布形成する事も可能である。
【0042】
またより精密なパターンを得る目的で、白金Pt等を含有する感光性ペーストを、スクリーン印刷等の印刷法で塗布し、フォトマスクを用いて露光、現像するという工程でも形成可能である。
【0043】
素子電極間隔L、素子電極長さW、素子電極2、3の形状等は、実素子が応用される形態等に応じて適宜設計されるが、間隔Lは好ましくは数千Åから1mmであり、より好ましくは素子電極間に印加する電圧等を考慮して1μmから100μmの範囲である。また、素子電極長さWは、好ましくは電極の抵抗値、電子放出特性を考慮して、数μmから数百μmの範囲である。
【0044】
電子源となる導電性膜(素子膜)4は、素子電極2、3を跨ぐ形で形成される。
【0045】
導電性膜4としては、良好な電子放出特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜が特に好ましい。またその膜厚は、素子電極2、3へのステップカバレージ、素子電極間の抵抗値、および後述するフォーミング処理条件等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは数Åから数千Åであり、特に好ましくは10Åから500Åの範囲とするのが良い。そのシート抵抗値は、好ましくは103〜107Ω/□である。
【0046】
なお、ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子が集合した膜であり、その微細構造として、微粒子が個々に分散配置した状態のみならず、微粒子が互いに隣接あるいは重なり合った状態(島状も含む)の膜を指しており、微粒子の粒径は、数Å〜数千Å、好ましくは10Å〜200Åである。
【0047】
導電性膜材料には、一般にはパラジウムPdが適しているが、これに限ったものではない。また成膜方法も、スパッタ法、溶液塗布後に焼成する方法などが適宜用いられる。
【0048】
電子放出部5は、例えば以下に説明するような通電処理によって形成することができる。尚、図示の便宜から、電子放出部5は導電性膜4の中央に矩形の形状で示したが、これは模式的なものであり、実際の電子放出部の位置や形状を忠実に表現しているわけではない。
【0049】
所定の真空度のもとで素子電極2、3間に不図示の電源より通電すると、導電性膜4の部位に、構造の変化した間隙(亀裂)が形成される。この間隙領域が電子放出部5を構成する。尚、このフォーミングにより形成した間隙付近からも、所定の電圧下では電子放出が起こるが、この状態ではまだ電子放出効率が非常に低いものである。
【0050】
通電フォーミングの電圧波形の例を図8に示す。電圧波形は、特にパルス波形が好ましい。これにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加する図8(a)に示した手法と、パルス波高値を増加させながらパルスを印加する図8(b)に示した手法がある。
【0051】
まず、パルス波高値を定電圧とした場合について図8(a)で説明する。図8(a)におけるT1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔である。通常、T1は1μ秒〜10m秒、T2は10μ秒〜100m秒の範囲で設定される。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、電子放出素子の形態に応じて適宜選択される。このような条件のもと、例えば、数秒から数十分間電圧を印加する。パルス波形は、三角波に限定されるものではなく、矩形波等の所望の波形を採用することができる。
【0052】
次に、パルス波高値を増加させながら電圧パルスを印加する場合について図8(b)で説明する。図8(b)におけるT1及びT2は、図8(a)に示したのと同様とすることができる。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例えば0.1Vステップ程度づつ、増加させることができる。
【0053】
通電フォーミング処理の終了は、パルス電圧印加中の素子に流れる電流を測定して抵抗値を求めて、例えば1MΩ以上の抵抗を示した時に通電フォーミングを終了させることができる。
【0054】
このフォーミング処理後の状態では電子発生効率は非常に低いものである。よって電子放出効率を上げるために、上記素子に活性化と呼ばれる処理を行うことが望ましい。
【0055】
この活性化処理は、有機化合物が存在する適当な真空度のもとで、パルス電圧を素子電極2、3間に繰り返し印加することによって行うことができる。そして炭素原子を含むガスを導入し、それに由来する炭素あるいは炭素化合物を、前記間隙(亀裂)近傍にカーボン膜として堆積させる。
【0056】
本工程の一例を説明すると、例えばカーボン源としてトルニトリルを用い、スローリークバルブを通して真空空間内に導入し、1.3×10-4Pa程度を維持する。導入するトルニトリルの圧力は、真空装置の形状や真空装置に使用している部材等によって若干影響されるが、1×10-5Pa〜1×10-2Pa程度が好適である。
【0057】
図11に、活性化工程で用いられる電圧印加の好ましい一例を示した。印加する最大電圧値は、10V〜20Vの範囲で適宜選択される。
【0058】
図11(a)に於いて、T1は電圧波形の正と負のパルス幅、T2はパルス間隔であり、電圧値は正負の絶対値が等しく設定されている。また、図11(b)に於いて、T1およびT1’はそれぞれ電圧波形の正と負のパルス幅、T2はパルス間隔であり、T1>T1’、電圧値は正負の絶対値が等しく設定されている。
【0059】
このとき、約60分後に放出電流Ieがほぼ飽和に達した時点で通電を停止し、スローリークバルブを閉め、活性化処理を終了する。
【0060】
以上の工程により図17に示したような電子放出素子を作製することができる。
【0061】
上述のような素子構成と製造方法によって作製された電子放出素子の基本特性について図9、図10を用いて説明する。
【0062】
図9は、前述した構成を有する電子放出素子の電子放出特性を測定するための測定評価装置の概略図である。図9において、51は素子に素子電圧Vfを印加するための電源、50は素子の電極部を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、54は素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極、53はアノード電極54に電圧を印加するための高圧電源、52は素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを測定するための電流計である。
【0063】
電子放出素子の素子電極2、3間を流れる素子電流If、及びアノードへの放出電流Ieの測定にあたっては、素子電極2,3に電源51と電流計50とを接続し、該電子放出素子の上方に電源53と電流計52とを接続したアノード電極54を配置している。
【0064】
また、本電子放出素子およびアノード電極54は真空装置55内に設置され、その真空装置には排気ポンプ56および真空計等の真空装置に必要な機器が具備されており、所望の真空下で本素子の測定評価を行えるようになっている。なお、アノード電極54の電圧は1kV〜10kV、アノード電極と電子放出素子との距離Hは2mm〜8mmの範囲で測定した。
【0065】
図9に示した測定評価装置により測定された放出電流Ieおよび素子電流Ifと素子電圧Vfの関係の典型的な例を図10に示す。なお、放出電流Ieと素子電流Ifは大きさが著しく異なるが、図10ではIf、Ieの変化の定性的な比較検討のために、リニアスケールで縦軸を任意単位で表記した。
【0066】
本電子放出素子は放出電流Ieに対する三つの特徴を有する。
【0067】
まず第一に、図10からも明らかなように、本素子はある電圧(しきい値電圧と呼ぶ、図10中のVth)以上の素子電圧を印加すると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧Vth以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。すなわち、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vthを持った非線形素子としての特性を示しているのが判る。
【0068】
第二に、放出電流Ieが素子電圧Vfに依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制御できる。
【0069】
第三に、アノード電極54に捕捉される放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。すなわち、アノード電極54に捕捉される電荷量は、素子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0070】
本実施の形態に係る電子源基板の基本構成としては、例えば図2に示すような構成が挙げられる。この電子源基板は、基板21上に、複数のY方向配線(下配線)24と、このY方向配線24の上に絶縁層25を介して複数のX方向配線(上配線)26が形成され、該両方向配線の交差部近傍にそれぞれ、電極対(素子電極2、3)を含む電子放出素子が配設されているものである。
【0071】
本実施の形態の画像表示装置は、図2に例示したような電子源基板を用いて構成されるものであり、その基本構成について、図12を用いて説明する。
【0072】
図12において、21は上記の電子源基板、82はガラス基板83の内面に蛍光膜84とメタルバック85等が形成されたフェースプレート、86は支持枠である。電子源基板21、支持枠86及びフェースプレート82を前述のようなIn膜などの接合部材及びフリットガラス等によって接着し、400℃〜500℃で、10分以上焼成することで、封着して、外囲器90を構成する。
【0073】
尚、フェースプレート82と電子源基板21との間に、スペーサーと呼ばれる不図示の支持体を設置することにより、大面積パネルの場合にも大気圧に対して十分な強度を持つ外囲器90を構成することもできる。
【0074】
本実施の形態の画像表示装置は、真空封着部における構成に最大の特徴を有するものであり、電子源基板21とフェースプレート82とをIn膜などの接合部材を介して接合し、電子源基板21とフェースプレート82との間に所定の空隙を設けて外囲器90を構成するに際し、上記の接合部材の内部に、この接合部材の軟化温度より高い融点を持ち、かつ、接合部材に対して濡れ性の良い接合部材の保持部材を設けているものである。
【0075】
接合部材の保持部材の材料としては、酸化物を作りにくい固体金属が望ましく、例えば銀、金、白金などの貴金属材料や、銅やクロム、ニッケルなどに金コートを施したものが、まず挙げられる。さらに、前述のようなIn膜などの接合部材の表面酸化膜を還元するものも、望ましい。具体的には、チタン、ニッケル、鉄などの水素吸蔵金属、或は水素吸蔵合金に、予め室温にて水素雰囲気で水素を吸蔵させた材料であれば、封着の際に高温で水素を放出し、酸化膜中の酸素と反応し、酸化膜の還元反応を促進させる。これら、貴金属材料や水素吸蔵金属は、概ね、液体Inと濡れ性が良いことも望ましい特性である。
【0076】
尚、本実施の形態の画像表示装置における真空封着部の具体的な構成例及び作用等については、後述の実施例にて詳しく説明する。
【0077】
図13はフェースプレート82上に設ける蛍光膜84の説明図である。蛍光膜84は、モノクロームの場合は蛍光体のみから成るが、カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプあるいはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色導電体91と蛍光体92とで構成される。ブラックストライプ、ブラックマトリクスが設けられる目的は、カラー表示の場合必要となる三原色蛍光体の、各蛍光体92間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜84における外光反射によるコントラストの低下を抑制することである。
【0078】
また、蛍光膜84の内面側には通常メタルバック85が設けられる。メタルバックの目的は、蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレート82側へ鏡面反射することにより輝度を向上すること、電子ビーム加速電圧を印加するためのアノード電極として作用すること等である。メタルバックは、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通常フィルミングと呼ばれる)を行い、その後Alを真空蒸着等で堆積することで作製できる。
【0079】
前述の封着を行う際、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子とを対応させなくてはいけないため、上下基板の突き当て法などで十分な位置合わせを行う必要がある。
【0080】
封着時の真空度は10-5Pa程度の真空度が要求される他、外囲器90の封止後の真空度を維持するために、ゲッタ処理を行なう場合もある。
【0081】
上述のゲッタには蒸着型と非蒸発型があり、蒸着型ゲッタはBa等を主成分とする合金を、外囲器90内で通電あるいは高周波により加熱し、容器内壁に蒸着膜を形成(ゲッタフラッシュ)し、活性なゲッタ金属面により内部で発生したガスを吸着して高真空を維持するものである。
【0082】
一方、非蒸発型ゲッタは、Ti、Zr、V、Al、Fe等のゲッタ材を配置し、真空中で加熱して、ガス吸着特性を得る「ゲッタ活性化」を行うことにより、放出ガスを吸着することができる。
【0083】
一般に、平面型画像表示装置は、薄いために真空を維持する蒸着型ゲッタの設置領域や瞬時放電のためのフラッシュ領域が十分確保できず、画像表示エリア外の支持枠近傍にそれらを設置している。よって、画像表示の中央部とゲッタ設置領域とのコンダクタンスが小さくなり、電子放出素子や蛍光体の中央部での実効排気速度が小さくなってしまう。
【0084】
電子源と画像表示部材を有する画像表示装置において、好ましくないガスを発生させる部分は、主に電子ビームにより照射される画像表示領域である。そのため、蛍光体及び電子源を高真空で保持したい場合には、放出ガスの発生源である蛍光体や電子源近傍に非蒸発型ゲッタを配置する必要がある。
【0085】
前述した本実施の形態に係る表面伝導型電子放出素子の基本的特性によれば、電子放出部からの放出電子は、しきい値電圧以上では対向する電極間に印加するパルス状電圧の波高値と巾によって制御され、その中間値によっても電流量が制御され、もって中間調表示が可能になる。
【0086】
また多数の電子放出素子を配置した場合においては、各ラインの走査線信号によって選択ラインを決め、各情報信号ラインを通じて個々の素子に上記パルス状電圧を適宜印加すれば、任意の素子に適宜電圧を印加する事が可能となり、各素子をONすることができる。
【0087】
また中間調を有する入力信号に応じて電子放出素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調方式が挙げられる。
【0088】
本実施の形態の画像表示装置では、電子源基板21とフェースプレート82とを接合するIn膜等からなる接合部材の内部に、この接合部材の軟化温度より高い融点を持ち、かつ、接合部材に対して濡れ性の良い接合部材の保持部材を設けたことにより、接合部分における真空リークの発生を極めて効果的に抑えることができ、長期にわたり良質な画像を表示することができるものである。
【0089】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0090】
[実施例1]
本実施例は、図2に示したような多数の表面伝導型電子放出素子をマトリクス配線接続してなる電子源基板を製造し、この電子源基板を用いて図12に示したような画像表示装置を製造した例である。
【0091】
先ず、本実施例の電子源基板の製造方法を図2乃至図7を参照して説明する。
【0092】
(素子電極の形成)
基板としてプラズマディスプレイ用電気ガラスであるアルカリ成分が少ないPD−200(旭硝子(株)製)の2.8mm厚ガラス上にナトリウムブロック層としてSiO2膜100nmを塗付焼成したものを用いた。
【0093】
このガラス基板上に、スパッタ法によってまず下引き層としてチタニウムTi(厚さ5nm)、その上に白金Pt(厚さ40nm)を成膜した後、ホトレジストを塗布し、露光、現像、エッチングという一連のフォトリソグラフィー法によってパターニングして素子電極2、3を形成した(図3参照)。なお、本実施例では素子電極の間隔L=10μm、対向する長さW=100μmとした。
【0094】
(下配線の形成)
配線材料に関しては、多数の表面伝導型素子にほぼ均等な電圧が供給されるように低抵抗である事が望まれ、材料、膜厚、配線巾等が適宜設定される。
【0095】
共通配線としてのY方向配線(下配線)24は、一方の素子電極3に接して、かつそれらを連結するようにライン状のパターンで形成した。材料にはAgフォトぺーストインキを用い、スクリーン印刷した後、乾燥させてから、所定のパターンに露光し現像した。この後480℃前後の温度で焼成して下配線24を形成した(図4参照)。この下配線24の厚さは約10μm、幅は約50μmである。なお終端部は配線取り出し電極として使うために、線幅をより大きくした。
【0096】
(絶縁層の形成)
上下配線を絶縁するために、絶縁層25を形成する。後述のX方向配線(上配線)下に、先に形成したY方向配線(下配線)24との交差部を覆うように、かつX方向配線(上配線)と素子電極2との電気的接続が可能なように、各素子に対応した接続部にコンタクトホール27を開けて形成した(図5参照)。
【0097】
具体的には、PbOを主成分とする感光性のガラスペーストをスクリーン印刷した後、露光−現像した。これを4回繰り返し、最後に480℃前後の温度で焼成した。この絶縁層25の厚みは、全体で約30μmであり、幅は150μmである。
【0098】
(上配線の形成)
先に形成した絶縁層25の上に、Agぺーストインキをスクリーン印刷した後乾燥させ、この上に再度同様なことを行い2度塗りしてから、480℃前後の温度で焼成してX方向配線(上配線)26を形成した(図6参照)。X方向配線26は、絶縁層25を挟んでY方向配線24と交差しており、絶縁層25に設けたコンタクトホール27部分で素子電極2と接続されている。
【0099】
このX方向配線26は駆動時は走査電極として作用する。尚、X方向配線26の厚さは約15μmである。図示していないが、外部駆動回路との引出し配線もこれと同様の方法で形成した。
【0100】
このようにしてXYマトリクス配線を有する基板が形成された。
【0101】
(導電性膜の形成)
次に、上記基板を十分にクリーニングした後、撥水剤を含む溶液で表面を処理し、表面が疎水性になるようにした。これはこの後塗布する導電性膜形成用の水溶液が、素子電極上に適度な広がりをもって配置されるようにするためである。用いた撥水剤は、DDS(ジメチルジエトキシシラン)溶液をスプレー法にて基板上に散布し、120℃にて温風乾燥した。
【0102】
次に、素子電極2,3間に導電性膜4を形成した。本工程を図7の模式図を用いて説明する。尚、基板21上における個々の素子電極の平面的ばらつきを補償するために、基板上の数箇所に於いてパターンの配置ずれを観測し、観測点間のポイントのずれ量は直線近似して位置補完し、導電性膜形成材料を塗付する事によって、全画素の位置ずれをなくして、対応した位置に的確に塗付するようにした。
【0103】
本実施例では、導電性膜4としてパラジウム膜を得る目的で、先ず水85:イソプロピルアルコール(IPA)15からなる水溶液に、パラジウム−プロリン錯体0.15重量%を溶解し、有機パラジウム含有溶液を得た。この他若干の添加剤を加えた。この溶液の液滴を、液滴付与手段71として、ピエゾ素子を用いたインクジェット噴射装置を用い、ドット径が60μmとなるように調整して素子電極間に付与した(図7(a))。
【0104】
その後、この基板を空気中にて、350℃で10分間の加熱焼成処理をして酸化パラジウム(PdO)からなる導電性膜4’が形成された(図7(b))。
【0105】
(フォーミング工程)
次に、フォーミングと呼ばれる本工程に於いて、上記導電性膜4’を通電処理して内部に亀裂を生じさせ、電子放出部5を形成する(図7(c))。
【0106】
具体的な方法は、上記基板21の周囲の取り出し電極部を残して、基板全体を覆うようにフード状の蓋をかぶせて基板21との間で内部に真空空間を作り、外部電源より電極端子部から両方向配線24、26間に電圧を印加し、素子電極2、3間に通電することによって、導電性膜4’を局所的に破壊、変形もしくは変質させることにより、電気的に高抵抗な状態の電子放出部5を形成する。
【0107】
この時若干の水素ガスを含む真空雰囲気下で通電加熱すると、水素によって還元が促進され酸化パラジウムPdOからなる導電性膜4’がパラジウムPdからなる導電性膜4に変化する。
【0108】
この変化時に膜の還元収縮によって、一部に亀裂(間隙)が生じるが、この亀裂発生位置、及びその形状は元の膜の均一性に大きく影響される。多数の素子の特性ばらつきを抑えるには、上記亀裂は導電性膜4の中央部に起こり、かつなるべく直線状になることがなによりも望ましい。
【0109】
なおこのフォーミングにより形成した亀裂付近からも、所定の電圧下では電子放出が起こるが、現状の条件ではまだ発生効率が非常に低いものである。
【0110】
また得られた導電性膜4の抵抗値Rsは、102から107Ωの値である。
【0111】
フォーミング処理に用いた電圧波形は図8(b)の様な矩形パルス波形を用い、T1を0.1msec、T2を50msecとした。印加した電圧は0.1Vから始めて5秒ごとに0.1Vステップ程度ずつ増加させた。通電フォーミング処理の終了は、パルス電圧印加時に素子に流れる電流を測定して抵抗値を求めて、フォーミング処理前の抵抗に対して1000倍以上の抵抗を示した時点で通電フォーミングを終了した。
【0112】
(活性化工程)
前記のフォーミングと同様にフード状の蓋をかぶせて基板21との間で内部に真空空間を作り、外部から両方向配線24、26を通じてパルス電圧を素子電極2、3間に繰り返し印加することによって行う。そして炭素原子を含むガスを導入し、それに由来する炭素あるいは炭素化合物を、前記亀裂近傍にカーボン膜として堆積させる。
【0113】
本工程ではカーボン源としてトリニトリルを用い、スローリークバルブを通して真空空間内に導入し、1.3×10-4Paを維持した。
【0114】
図11に、活性化工程で用いられる電圧印加の好ましい一例を示した。印加する最大電圧値は、10〜20Vの範囲で適宜選択される。
【0115】
図11(a)に於いて、T1は電圧波形の正と負のパルス幅、T2はパルス間隔であり、電圧値は正負の絶対値が等しく設定されている。また、図11(b)に於いて、T1およびT1’はそれぞれ電圧波形の正と負のパルス幅、T2はパルス間隔であり、T1>T1’、電圧値は正負の絶対値が等しく設定されている。
【0116】
このとき、素子電極3に与える電圧を正としており、素子電流Ifは、素子電極3から素子電極2へ流れる方向が正である。本実施例では、約60分後に放出電流Ieがほぼ飽和に達した時点で通電を停止し、スローリークバルブを閉め、活性化処理を終了した。
【0117】
以上の工程で、基板上に多数の電子放出素子をマトリクス配線接続してなる電子源基板を作成することができた。
【0118】
(電子源基板の特性評価)
上述のような素子構成と製造方法によって作製された電子源基板の電子放出特性を、図9に示したような装置を用いて測定した。その結果、素子電極間に印加する電圧12Vにおける放出電流Ieを測定したところ平均0.6μA、電子放出効率は平均0.15%を得た。また素子間の均一性もよく、各素子間でのIeのばらつきは5%と良好であった。
【0119】
次に、以上のようにして作製した電子源基板を用いて図12に示したような表示パネル(外囲器90)を製造した。
【0120】
図1は、本実施例に係る表示パネル(外囲器90)の周辺部の概略断面構造を示す図である。
【0121】
図1において、21は電子放出素子が多数配置された上記の電子源基板を指し、リアプレートと呼ぶ。82はガラス基板83の内面に蛍光膜84とメタルバック85が形成されたフェースプレートである(図12参照)。また、86は支持枠、203はIn膜(接合部材)、205はIn膜保持部材(接合部材保持部材)である。
【0122】
フェースプレート82を構成するガラス基板83には、リアプレート21と同じくプラズマディスプレイ用電気ガラスであるアルカリ成分が少ないPD−200(旭硝子(株)社製)の材料を用いている。このガラス材料の場合、ガラスの着色現象は起きないし、板厚を3mm程度にすれば、10kV以上の加速電圧で駆動した場合でも、2次的に発生する軟X線の漏れを抑える遮蔽効果も充分である。
【0123】
フェースプレート82とリアプレート21との間には、スペーサー201と呼ばれる支持体を設置している。これにより、大面積パネルの場合にも大気圧に対して十分な強度を持つ外囲器90を構成することができる。
【0124】
スペーサー201と支持枠86はリアプレート21にフリットガラス202によって接着され、400〜500℃で、10分以上焼成することで固定されている。フリットガラス202によってリアプレート21に接着された支持枠86の高さに比べて、スペーサー201の高さが僅かに高くなるよう、それぞれの高さ形状を設定することで、接合後のIn膜203の厚みが決まるようになっている。よって、スペーサー201は、In膜203の厚み規定部材としても機能している。
【0125】
支持枠86とフェースプレート82はIn膜203で接着される。In膜203は、高温でもガス放出が少なく、低温の融点を持つために金属Inを用いている。金属、或いは合金を接合部材として用いた場合、溶媒やバインダを含んでいないため、融点で溶け出した時の放出ガスは非常に少ないので接合部材として望ましい。
【0126】
In膜203が接着する支持枠86及びフェースプレート82の箇所には、界面での密着性を高めるために下引き層204を設ける。本実施例では、金属Inと濡れ性の良い銀を用いている。銀の下引き層204は、銀ペーストをスクリーン印刷などにより容易にパターニングが可能である。下引き層204としては、他にもITOやPtなど真空蒸着法により簡単に形成できる金属薄膜でも充分である。
【0127】
また、In膜203内部には、In膜保持部材205を設けてある。In膜保持部材205の機能を説明するために、図14、図15を用いて、本実施例による画像表示装置の封着方法を説明する。
【0128】
フェースプレート82とリアプレート21を接合する前、すなわち封着する前に予めIn膜203をパターニング形成する。図14では、フェースプレート82上に形成する方法を説明するが、リアプレート21に接着された支持枠86上にIn膜203を形成する場合も同じである。
【0129】
まず、フェースプレート82は、融けたInの濡れ性を上げるために充分な温度で温められた状態で保持される。100℃以上の温度であれば充分である。下引き層204として用いられた銀ペーストは、ガラス密着性が高いものの内部に気孔を多く含んだポーラスな膜である。よって、融けたInを充分に下引き層204内部に含浸させる必要があるため、融点以上の高い温度で融けたInを超音波半田ゴテ206により下引き層204に半田付けして、In膜203を形成する。200℃以上の温度で融けている液体Inであれば充分である。ここで、Inが下引き層204に充分に含浸しない場合には、真空リークの原因となる。金属Inは、常に半田ゴテ先端に供給されるよう、不図示のIn補給手段によって接合箇所に随時補充されている。
【0130】
また、In膜203の膜厚は、フェースプレート側とリアプレート側(支持枠86上)それぞれに形成したIn膜の膜厚合計が、接合後のIn膜203の厚みと比較して、充分に多くなるよう、超音波半田ゴテ206の移動スピードとInの供給量を調節してある。本実施例では、封着後のIn膜203の厚みが300μm、フェースプレート側とリアプレート側それぞれに同じく300μmの膜厚で形成してある。
【0131】
フェースプレート82とリアプレート81の両基板に、図14で示した形成法によりIn膜203を形成した後、図15で示した封着方法によりパネルを接合させる。
【0132】
先ず、対向させたフェースプレート82とリアプレート21の間に一定の間隔を設けた状態で、両基板を保持し真空加熱する。基板からガスが放出され、その後室温に戻った時にパネル内部が充分な真空度となるよう、300℃以上の高温で基板真空ベークを行う。この時点で、In膜203は融けた状態であり、融けたInが流れ出さないよう両基板とも充分な水準出しを行っている。基板真空ベークの際には、前述の下引き層204へのInの含浸が一層進み、充分なシール性能を備えた接合界面を形成する。
【0133】
真空ベークの後、Inの融点近傍まで温度を下げた上で、位置決め装置200により、フェースプレート82とリアプレート21との間隔を徐々に縮めていき、両基板の接合、すなわち封着を行う。融点近傍まで温度を下げるのは、融けた状態の液体Inの流動性を抑えて、接合時に不要な流れやはみ出しを防止するためである。
【0134】
ここで、問題なのは、フェースプレート側とリアプレート側それぞれに形成されたIn膜203の接合界面の状態である。図14で説明したIn膜203の形成法では、表面酸化膜が形成されてしまい、酸化膜の融点は高温(800℃以上)で、かつ結晶性の固体に留まるために封着時にそれぞれの表面形状を保持する恐れがある。すなわち、酸化膜界面としてIn膜中に残るために、真空リークの原因となるリークパスとなる恐れが存在する。実際には、酸化膜の厚みが薄いために接合時に容易に酸化膜が応力により破れて、内部から液体Inが染み出し対流するために、残った酸化物が問題になることは少ない。しかし、In膜形成時に、局所的に厚い酸化膜ができたり、充分なIn膜の厚みがない箇所ではリークパスになる恐れがある。
【0135】
本発明では、この真空リークの原因となりうる酸化膜の問題を解決するために、In膜保持部材205を封着時に接合面に挿入する。In膜保持部材205は、基板真空ベーク時に融けた液体Inがはじいて流れ出すことがないようInと濡れ性の良い材料から成る。濡れ性が良いと液体InがIn膜保持部材205に保持され、基板の水平度が充分でなくてもInの流れ出しを防ぐ効果も持つ。
【0136】
本実施例でのIn膜保持部材205は、球形形状でリアプレート側(支持枠86上)のIn膜に埋め込むことで初期位置が保たれた状態で封着装置に投入されている。
【0137】
さらに、In膜保持部材205の機能のもう一つは、Inが融けた状態で接合される際に対向するフェースプレート82上のIn膜203の酸化膜を破る効果である。前述したように酸化膜は、結晶性の固体であるもののバルクに比して充分すぎるほど薄いものである。よって、接合時にIn膜保持部材205から加わる応力は、酸化膜を破るに充分な圧力となる。接合面全面で表面酸化膜が破れずとも、局所的に酸化膜が失われれば、そこを起点として液体Inが対流し酸化膜を接合面から余分な量の液体Inと一緒に周辺部に流し出し、接合面から酸化膜を排除する効果がある。
【0138】
In膜保持部材205の材料としては、酸化物を作りにくい固体金属が望ましい。In膜保持部材205表面に酸素が吸着されている場合、In膜203と新たに反応しIn酸化膜を形成する恐れがあるためである。銀、金、白金などの貴金属材料や、銅やクロム、ニッケルなどに金コートを施したものが、まず挙げられる。さらに、積極的にIn表面酸化膜を還元するものも、望ましい。チタン、ニッケル、鉄などの水素吸蔵金属、或は水素吸蔵合金に、予め室温にて水素雰囲気で水素を吸蔵させた材料であれば、封着の際に高温で水素を放出し、酸化膜中の酸素と反応し、酸化膜の還元反応を促進させる。これら、貴金属材料や水素吸蔵金属は、概ね、液体Inと濡れ性が良いことも望ましい特性である。
【0139】
本実施例では、球形形状のIn膜保持部材205を用いているが、機能面から考えて異なる形状が望ましい場合もある。例えば、液体Inとの濡れ性が充分で比較的表面積が大きくても充分にInが濡れてハジキを起こさない材料を用いた場合、比較的鋭利な断面形状を備え、鋭利な端面にて積極的に応力集中により酸化膜を破る方が、道理にかなっている。円錐や四角錐形状であれば、その先端部で酸化膜を破ることになる。
【0140】
また、比較的小型の表示パネルにおいて、スペーサー201を設けなくとも耐大気圧が保たれる場合には、In膜保持部材205の厚みを封着後のIn膜203の厚みと同じくすることにより、このIn膜保持部材205をIn膜203の厚み規定部材としても機能させることができる。
【0141】
ただし、注意すべきは、In膜保持部材205が図15の封着時の圧力を全て受けるために、前述の鋭利な断面形状を有するIn膜保持部材205では、応力集中により支持枠86やフェースプレート82が割れる恐れが生ずる。この場合、In膜保持部材205の個数を増やすなどして、力を分散させることが必要になるのは、言うまでもない。
【0142】
尚、この一連の工程を全て真空チャンバー中で行うことで、同時に外囲器90内部を最初から真空にすることが可能となり、かつ工程もシンプルにすることができた。
【0143】
このようにして図12に示されるような表示パネルを製造し、走査回路・制御回路・変調回路・直流電圧源などからなる駆動回路を接続し、平面状の画像表示装置を製造した。
【0144】
以上のようにして製造した本実施例の画像表示装置において、X方向端子とY方向端子を通じて、各電子放出素子に時分割で所定電圧を印加し、高電圧端子Hvを通じてメタルバック85に高電圧を印加することによって、任意のマトリクス画像パターンを画素欠陥の無い良好な画像品質で表示することができた。
【0145】
[実施例2]
本実施例も図2に示したような多数の表面伝導型電子放出素子をマトリクス配線接続してなる電子源基板を製造し、この電子源基板を用いて図12に示したような画像表示装置を製造した例である。尚、電子源基板21及びフェースプレート82の構成は実施例1と同様である。
【0146】
図16は、本実施例に係る表示パネル(外囲器90)の周辺部の概略断面構造を示す図である。
【0147】
本実施例では、In膜保持部材205が、プレス加工にて三次元形状を有している。支持枠86をリアプレート(電子源基板)21にフリットガラス202を用いて接着する前に、支持枠86にIn膜保持部材205自身のバネ圧により固定しておく。支持枠86端面に飛び出たIn膜保持部材205の部分は、フリットガラス202の接着厚みを規定する機能を持っている。さらに、封着時には、反対側の端面がIn膜203を保持し、かつ、表面酸化膜を接合面から排除し、また、In膜203の厚みを規定する機能を併せ持つ。
【0148】
さらに、In膜保持部材205がバネ圧で支持枠86に固定したことで、In膜保持部材205が自らの位置決めを行う機能を備えている。これにより、封着時に余分な液体Inが流れ出す際に、In膜保持部材94が同時に動いてしまい機能が発揮しなくなる恐れがなくなる。
【0149】
本実施例では、支持枠86とリアプレート21の接合をフリットガラス202により行っているが、この接合もInで行えば、低温での接合プロセスが実現できる。一方、両面In接合では、同時、或は、順次接合を行った場合でも、支持枠86の接合位置ズレ起こりやすくなる。したがって、両面In接合する場合には、In膜保持部材94の形状を、支持枠86とリアプレート81、或は、フェースプレート82との相対位置決めを行うことができる形状とするのが好ましく、これにより、新たに位置決め治具を用いなくとも良い。
【0150】
以上説明した実施例1及び実施例2では、封着プロセスを真空環境下で行っているが、封着を大気雰囲気環境下で行い、後に別途設けた排気用基板穴からパネル内部を排気することで、真空間隙を有する外囲器90を形成する場合でも、本発明は有効である。すなわち、大気雰囲気環境下の方が、In膜203の表面酸化膜はより厚くなるために、酸化膜を破るためのIn膜保持部材205の効果がより顕著になることは明らかである。
【0151】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の画像表示装置によれば、真空リークの発生を抑制し、電子放出素子の性能を高く維持することができ、長期にわたり良質な画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係る表示パネル(外囲器)周辺部の概略断面構造を示す図である。
【図2】本発明の画像表示装置の構成部材である電子源基板の基本的構成を示す平面図である。
【図3】図2の電子源基板の製造工程を説明するための図である。
【図4】図2の電子源基板の製造工程を説明するための図である。
【図5】図2の電子源基板の製造工程を説明するための図である。
【図6】図2の電子源基板の製造工程を説明するための図である。
【図7】図2の電子源基板の製造工程を説明するための図である。
【図8】フォーミング電圧の例を示す図である。
【図9】本発明に係る電子放出素子の特性を測定するための装置を模式的に示す図である。
【図10】本発明に係る表面伝導型電子放出素子の素子電流及び放出電流と素子電圧との関係を示す図である。
【図11】活性化電圧の例を示す図である。
【図12】本発明に係る画像表示装置の一構成例を模式的に示す斜視図である。
【図13】本発明に係る画像表示装置における蛍光膜の例を模式的に示す図である。
【図14】本発明の実施例1に係る表示パネル(外囲器)の封着方法を説明するための図である。
【図15】本発明の実施例1に係る表示パネル(外囲器)の封着方法を説明するための図である。
【図16】本発明の実施例2に係る表示パネル(外囲器)周辺部の概略断面構造を示す図である。
【図17】表面伝導型電子放出素子の一構成例を示す模式図である。
【図18】従来の表示パネル(外囲器)周辺部の概略断面構造を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 素子電極
3 素子電極
4 導電性膜(素子膜)
5 電子放出部
21 電子源基板(リアプレート)
24 Y方向配線
25 絶縁層
26 X方向配線
27 コンタクトホール
50 素子電流Ifを測定するための電流計
51 素子に素子電圧Vfを印加するための電源
52 放出電流Ieを測定するための電流計
53 アノード電極に電圧を印加するための高圧電源
54 放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極
55 真空装置
56 排気ポンプ
71 液滴付与手段
82 フェースプレート
83 ガラス基板
84 蛍光膜
85 メタルバック
86 支持枠
90 外囲器(表示パネル)
91 黒色導電体
92 蛍光体
200 位置決め装置
201 スペーサー
202 フリットガラス
203 In膜(接合部材)
204 下引き層
205 In膜保持部材(保持部材)
206 超音波半田ゴテ

Claims (8)

  1. 第一の基板と、前記第一の基板と間隔を置いて対向配置された第二の基板とを有する外囲器と、前記外囲器内に配置された画像表示手段とを備える画像表示装置であって、前記第一の基板または前記第二の基板の周辺部において、前記第一の基板と前記第二の基板とが、その内部に高融点材料からなる部材を有する低融点金属の接合部材により封着されており、前記高融点材料からなる部材は、酸化しにくい金属を母材表面にコーティングしたものであることを特徴とする画像表示装置。
  2. 第一の基板と、前記第一の基板と間隔を置いて対向配置された第二の基板とを有する外囲器と、前記外囲器内に配置された画像表示手段とを備える画像表示装置であって、前記第一の基板または前記第二の基板の周辺部において、前記第一の基板と前記第二の基板とが、その内部に高融点材料からなる部材を有する低融点金属の接合部材により封着されており、前記高融点材料からなる部材は、水素を吸蔵させた金属であることを特徴とする画像表示装置。
  3. 前記高融点材料からなる部材は、金属であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
  4. 前記高融点材料からなる部材が、前記間隔方向において、前記接合部材の厚みと同じ厚みを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
  5. 前記画像表示手段は、電子放出素子と蛍光体とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
  6. 第一の基板と、前記第一の基板と間隔を置いて対向配置された第二の基板とを有する外囲器と、前記外囲器内に配置された画像表示手段とを備える画像表示装置の製造方法であって、第一の基板または第二の基板の周辺部において、前記第一の基板と前記第二の基板とを、その内部に高融点材料からなる部材を有する低融点金属の溶融接合により封着する工程を有することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
  7. 前記高融点材料からなる部材は、金属であることを特徴とする請求項に記載の画像表示装置の製造方法。
  8. 前記画像表示手段は、電子放出素子と蛍光体とを有することを特徴とする請求項6又は7に記載の画像表示装置の製造方法。
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