JP3779625B2 - 発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通電によって層状に形成した有機化合物が発光する、有機薄膜を利用した発光素子であって、表示素子、フラットパネルディスプレイ、バックライト、照明、インテリア、標識、看板、電子写真機、光信号発生器などの分野に利用可能な発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の有機薄膜を利用した発光素子の構成は、陰極である金属電極と陽極である透光性の透明電極との間に、互いに積層された有機蛍光体薄膜(発光層)及び正孔輸送層が配された2層構造(シングルへテロ構造)のもの及び、金属電極と透明電極との間に互いに積層された電子輸送層、発光層及び正孔輸送層が配された3槽構造(ダブルへテロ構造)のものが知られている。ここで、正孔輸送層は、陽極から正孔を注入させやすくする機能と電子をブロックする機能とを有し、電子輸送層は、陰極から電子を注入させやすくする機能を有している。
これら有機薄膜を利用した発光素子において、透明電極の外側にはガラス、プラスチック及び適宜の材料を用いた基板が配されている。金属電極から注入された電子と透明電極から注入された正孔が両極に挟まれた有機薄膜内で再結合するすることにより、励起子が生じ、この励起子が放射失活する過程で光を放ち、この光が透明電極及び硝子基板を介して外部に放出される。この素子は、薄型、低駆動電圧下での高輝度発光、発光させる材料を選ぶことによる多色発光が特徴である。
【0003】
イーストマンコダック社の研究グループが提示した「C.W.Tang andS.A.VanSlike:Appl.Phys.Lett.51,913(1987)」によれば、有機積層薄膜発光素子の代表的な構成は、ITOガラス基板上に正孔輸送性のジアミン化合物、発光層兼電子輸送層であるトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体、そして陰極としてMg:Agを順次設けたものである。
【0004】
現在、低分子化合物を蒸着した緑色発光材料が最も完成度が高く、輝度、耐久性共に充分なレベルとなっているが、赤色発光材料と青色発光材料、特に赤色発光材料において耐久性に優れ十分な輝度と色純度特性を示すものがないことが課題となっている。
【0005】
赤色発光材料としては、ビス(ジイソプロピルフェニル)ペリレンなどのペリレン系、ポルフィリン系、ユーロピウム錯体(Chem.Lett.,1267(1991)、ジュロリジン置換スチリル化合物(特開2001−43974)などが挙げられる。
【0006】
また、ドーピングという方法、つまりホスト材料の中に微量の赤色蛍光化合物をドーパントとして含有させて、発光色(発光の波長)を所望の色に変化させる方法もある。ホスト材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体を始めとするキノリノール誘導体の金属錯体、ビス(10−ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体、ジアリールブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ペリノン誘導体などがあげられる。その中にドーパントとして4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、金属フタロシアニン(MgPc、AlPcClなど)化合物、スクアリリウム化合物、ビオラントロン化合物、ナイルレッド、5−シアノピロメテンーBF4錯体(特開平11−176572)等赤色蛍光化合物をドーピングすることによって赤色発光させている。
【0007】
しかし、従来技術に用いられるこれら発光材料(ホスト材料、ドーパント材料)には、発光効率が低く高い輝度が得られないものや、ドーピングしても色純度が悪くオレンジがかった発光しか得られないものや、耐久性が低く素子寿命の短いものが多く、色純度と輝度が両立したものが少ないことが大きな問題であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題を解決し、発光効率が高い赤色発光素子のための発光材料(ホスト材料)及び高輝度かつ高色純度の発光素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、特定の化合物を赤色発光素子として用いることにより前記課題が解決されることを見出し本発明を完成させたものである。即ち本発明は、
1)陽極と陰極の電極間に、1層または複数層の有機薄膜が形成された、電気エネルギーにより発光する素子であって、前記有機薄膜に下記一般式(A)に示す化合物を含有することを特徴とする発光素子、
【0010】
【化2】
【0011】
(ここで、R1、R4及びR5は、同一であっても異なっていても良く、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルキルオキシ基、又は置換もしくは未置換のアリールオキシ基を表し、R2及びR3は、同一であっても異なっていても良く、置換もしくは未置換のアルキル基又は置換もしくは未置換のアリール基を表し、R6,R7,R9,R10は、それぞれ独立にハロゲン原子、水素原子、置換もしくは未置換のアルキルオキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、ニトロ基又はシアノ基を表し、R8は、置換もしくは未置換のアルキル基又は置換もしくは未置換のアリール基を表し、R1,R2,R3,R4については、それぞれの置換基は隣接する基どうしが互いに連結して環を形成しても良い。)
(2)前記一般式(A)において、R6,R10が同一であっても異なっていても良い水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキルオキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基又はシアノ基である(1)記載の発光素子、
(3)前記一般式(A)において、R8の置換もしくは未置換のアリール基がC6〜C16アリール基であり、置換もしくは未置換のアルキル基がC3〜C12アルキル基である(1)または(2)記載の発光素子、
(4)前記一般式(A)において、R2、R3の置換もしくは未置換のアルキル基がC2〜C12アルキル基であり、置換もしくは未置換のアリール基がC6〜C16アリール基である(1)ないし(3)記載の発光素子、
(5)前記一般式(A)において、R1とR2、R3とR4の両方もしくは片方が連結して置換もしくは未置換の5〜7員環を形成した(1)ないし(4)記載の発光素子、
(6)前記有機薄膜が少なくとも正孔輸送層と発光層との積層構造を有することを特徴とする(1)ないし(5)記載の発光素子、
(7)陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極を順次積層することを特徴とする(6)記載の発光素子、
(8)前記一般式(A)の化合物を発光層として用いることを特徴とする(1)ないし(7)記載の発光素子、
(9)マトリクスおよび/またはセグメント方式によって表示するディスプレイであることを特徴とする(1)ないし(8)記載の発光素子、
に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明において使用されうる陽極としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)などの導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなど特に限定されるものでないが、ITOガラスやネサガラスを用いることが特に望ましい。透明電極の抵抗は素子の発光に十分な電流が供給できるものであれば限定されないが、素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば300Ω/cm2以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、10Ω/cm2程度の基板の供給も可能になっていることから、低抵抗品を使用することが望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常100〜300nmの間で用いられる。また、ガラス基板はソーダライムガラス、無アルカリガラスなどが用いられ、機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよく、0.5mm以上の厚みがあれば十分である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよく、無アルカリガラスの方が好ましい。SiO2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用できる。ITO膜形成方法は、電子線ビーム法、スパッタリング法、化学反応法など特に制限を受けるものではない。
【0014】
陰極材料としては、電子を本有機物層に効率良く注入できる物質であれば特に限定されないが、一般に白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあげられ、電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためにリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含むアルミニウムもしくは銀等の安定な金属との合金、或いはこれらを積層した構造を使用できる。積層構造の電極にはフッ化リチウムのような無機塩の使用も可能である。また、基板側でなく基板上方へ発光を取り出すため、低温で製膜可能な透明電極を使用しても良い。更に封止、保護のために白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、インジウムなどの金属、またはこれらの金属を含む合金、そしてシリカ、チタニア、窒化ケイ素、酸化珪素、窒化酸化ケイ素、酸化ゲルマニウムなどの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子、フッ素系高分子などで保護し、酸化バリウム、五酸化リン、酸化カルシウム等の脱水剤と共に封止することが好ましい。
【0015】
本発明における有機薄膜は、陽極と陰極の電極間に、1層または複数層形成される。その有機薄膜に式(A)に示す化合物を含有することにより、電気エネルギーにより発光する素子が得られる。
【0016】
本発明における有機薄層構成は、1)、正孔輸送層/電子輸送性発光層、2)、正孔輸送層/発光層/電子輸送層、3)、成功輸送性発光層/電子輸送層、4)、正孔輸送層/発光層/正孔阻止層、5)、正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層、6)、正孔輸送性発光層/正孔阻止層/電子輸送層、そして7)、1)ないし6)の組み合わせのそれぞれにおいて、正孔輸送層もしくは正孔輸送性発光層の前に正孔注入層を更にもう一層付与した形態、更に8)、1)ないし7)の組合わせにおいて使用する物質をそれぞれ混合して一層に混合した形態のいずれであってもよい。即ち、素子構成としては、上記1)〜7)の多層積層構造の他に8)のようにバイポーラー性の発光材料単独または発光材料と正孔輸送材料や電子輸送材料を含む層を一層設けるだけでもよい。
【0017】
正孔輸送層は正孔輸送性物質単独または二種類以上の物質を積層、混合することにより形成され、正孔輸送性物質としてはN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどのトリフェニルアミン類、ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)類、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、オキサジアゾール誘導体やポルフィリン誘導体に代表される複素環化合物、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどが好ましく使用できる。素子作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されるものではない。陽極正孔注入性を向上するため正孔輸送剤と陽極の間に設ける正孔注入層としては、フタロシアニン誘導体、m−MTDATA等のスターバーストアミン類、高分子系ではPEDOT等のポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
【0018】
本発明における電子輸送性材料としては、電界を与えられた電極間において負極からの電子を効率良く輸送することが必要で、電子注入効率が高く、注入された電子を効率良く輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが要求される。このような条件を満たす物質として、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体に代表されるキノリノール誘導体金属錯体、トロポロン金属錯体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、キノキサリン誘導体などが挙げられるが特に限定されるものではない。これらの電子輸送材料は単独でも用いられるが、異なる電子輸送材料と積層または混合して使用しても構わない。
【0019】
正孔阻止層は正孔阻止性物質単独または二種類以上の物質を積層、混合することにより形成され、正孔阻止性物質としてはバソフェナントロリン、バソキュプロイン等のフェナントロリン誘導体、シロール誘導体、キノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体などが好ましいが、正孔が陰極側から素子外部に流れ出てしまい発光効率が低下するのを阻止することができる化合物であれば特に限定されるものではない。
【0020】
発光層は強い発光性を有する正孔輸送層、強い発光性を有する電子輸送層とも言い換えられるが、発光材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成され、これはホスト材料とドーパント材料との混合物であっても、ホスト材料単独であっても、いずれでもよい。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーパント材料は積層されていても、分散されていても、いずれであってもよい。
【0021】
本発明における有機薄膜のうち、発光層、正孔輸送性層、電子輸送層の1層または複数層に式(A)に示す化合物を含有させることにより、電気エネルギーにより発光する素子が得られる。
本発明における式(A)で表される化合物について詳細に説明する。置換もしくは未置換のアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜12であり例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メトキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピルオキシプロピル基、イソブチルオキシプロピル基、エトキシプロピル基、イソプロピルオキシフェニルエチル基、ナフトメチル基等が挙げられる。置換もしくは未置換のアリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16であり例えばフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ビフェニル基、ピレニル基、エチルカルバゾイル基、アントラニル基、トルイル基、ジイソプロピルフェニル基等が挙げられる。置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜14であり、例えばフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、2,4−ジーt−ブチルフェノキシ基、4−ヘキシルフェノキシ基、4−オクチルフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。置換もしくは未置換のアルキルオキシ基としては、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
また、上記一般式(A)に示した化合物の好適な例として、特に限定されるものではないが、具体的には下記のような構造が挙げられる。
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
【化12】
【0033】
【化13】
【0034】
綺麗な赤色表示を行わせるためには、発光スペクトルのピーク波長が580nm以上690nm以下、より好ましくは600nm以上670nm以下の範囲内であり、半値幅が100nm以下であることが重要である。発光スペクトルは、できるだけ単一ピークであることが好ましいが、場合によっては他のピークとの重なりによって複数の極大点を有したり、ピークの裾に肩が現れることもある。本発明において、ピーク波長とは発光中心波長に値する主ピークの波長であると定義している。
【0035】
本発明の一般式(A)の化合物は赤〜橙色発光材料として好適に用いることができるが、更に色純度の向上した赤色発光を得る為にドーパントとして好ましくは蛍光ピーク波長が580nm以上690nm以下、より好ましくは600nm以上670nm以下の有機蛍光物質を含有させる事が出来る。具体的には従来から知られている、ビス(ジイソプロピルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸イミドなどのペリレン誘導体、ペリノン誘導体、アセチルアセトンやベンゾイルアセトンとフェナントロリンなどを配位子とするEu錯体などの希土類錯体、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)やその類縁体、マグネシウムフタロシアニン、アルミニウムクロロフタロシアニンなどの金属フタロシアニン誘導体、ローダミン化合物、デアザフラビン誘導体、クマリン誘導体、オキサジン化合物、スクアリリウム化合物、ビオラントロン化合物、ナイルレッド、5−シアノピロメテンーBF4錯体等のピロメテン誘導体などを用いることが出来るが特にこれらに限定されるものではない。
【0036】
高輝度特性を得るためには、蛍光量子収率が高いものをドーピングすることがより好ましい。
【0037】
必要に応じ、用いるドーパントの量は、通常多すぎると濃度消光現象が起きるため、通常ホスト材料に対して10重量%以下で用いることが好ましく、更に好ましくは3%以下である。ドーピング方法は後述するが、ホスト材料にサンドイッチ状に挟んで使用することも可能である。この場合、一層でも二層以上ホスト材料と積層しても良い。
【0038】
また、ホスト材料に必要に応じ添加するドーパント材料は、本発明の化合物を複数混合して用いたり、既知のドーパント材料の一種類以上を本発明の化合物と混合して用いてもよい。
【0039】
上記一般式(A)の化合物は、橙色〜赤色発光材料であるが、ホスト材料としてもドーパント材料としても使用することができる。
【0040】
正孔輸送性発光層は発光性を有する正孔輸送層、電子輸送性発光層は発光性を有する電子輸送層とも言い換えられ、正孔輸送層、発光層、電子輸送層に使用しうる物質から適宜選択し使用できる。
【0041】
以上の正孔輸送層、発光層、電子輸送層、正孔輸送性発光層、電子輸送性発光層、正孔阻止層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(メチル)(メタ)アクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリサルフォン、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに溶解もしくは分散させて用いることも可能である。
【0042】
有機薄膜の形成方法は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティング法など特に限定されるものではないが、通常は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着が特性面で好ましい。層の厚みは、発光物質の抵抗値にもよるので限定することはできないが、0.5〜1000nmの間から選ばれる。
【0043】
発光層におけるドーパント材料をホスト材料にドーピングする方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着しても良い。また、ホスト材料にサンドイッチ状に挟んで使用することも可能である。この場合、一層でも二層以上ホスト材料と積層しても良い。
【0044】
電気エネルギーとは主に直流電流を指すが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値および電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力、寿命を考慮するとできるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるようにすることが好ましい。
【0045】
本発明におけるマトリクスとは、表示のための画素が格子状に配置されたものをいい、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状、サイズは用途によって決まる。例えばパソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形もしくは円形の画素が用いられるし、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる必要がある。このカラー表示は、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法(パッシブタイプ)やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0046】
本発明におけるセグメント方式とは、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示、自動車のパネル表示などがあげられる。そして、前記マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0047】
本発明の発光素子はバックライトとしても好適に用いることができる。バックライトとは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ機器、自動車パネル、表示板、標識などに使用される。特に液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトは、従来方式のものが蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であるが本発明の発光素子を用いたバックライトは、薄型、軽量が特徴になる。
【0048】
本発明による発光素子は、色純度の高い橙色または赤色の発光が得られ、低エネルギーでも十分な輝度を有する。
【0049】
【実施例】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0050】
実施例1
ITO透明導電膜を150nm堆積させたガラス基板(東京山容真空(株)製、14Ω/cm2以下)を25×25mmに切断、エッチングを行った。得られた基板を中性洗剤で10分間超音波洗浄、イオン交換水で5分×2回超音波洗浄、アセトンで5分×2回超音波洗浄、続いてイソプロピルアルコールで5分間×2回超音波洗浄し、この基板を素子を作製する直前に10分間UV−オゾン洗浄し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が1×10-4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱蒸着法によって、まず正孔輸送材料としてN,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)を45nmの厚さに蒸着し、正孔輸送層を形成した。次に発光材料として化合物例2の化合物(DMF中の蛍光ピーク波長は、609nm)を35nmの厚さに蒸着し、電子輸送性発光層を形成した。次にアルミニウムを200nm蒸着して陰極を形成し、6×6mm角の発光素子を作製した。
【0051】
この発光素子は、XYZ表色系色度座標において(x=0.58、y=0.40)(以下同様)の橙色発光を示し、15Vで26cd/m2の発光が得られた。
【0052】
実施例2
実施例1と同様にして処理した基板に、抵抗加熱蒸着法によって、まず正孔注入材料として銅フタロシアニンを10nmの厚さに蒸着し、正孔注入層を形成し、次に正孔輸送材料としてN,N’−ジフェニル−N,N’−α―ナフチル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(α―NPD)を45nmの厚さに蒸着し正孔輸送層を形成した。次に発光材料として化合物例2の化合物を40nmの厚さに蒸着し発光層を形成した。次にフッ化リチウム層を0.5nm形成し、次にアルミニウムを200nm蒸着して陰極を形成し、6×6mm角の発光素子を作製した。
【0053】
この発光素子は、(0.58、0.41)の橙色発光を示し、7Vで107cd/m2の発光が得られた。
【0054】
実施例3
発光材料として化合物例2の代わりに前記化合物例5(DMF中の蛍光ピーク波長は609nm)を用い、15nm蒸着して形成した以外は、実施例1と同様にして発光素子を作成した。
【0055】
この発光素子は、(0.56、0.43)の橙色発光を示し、10Vで12cd/m2の発光が得られた。
【0056】
実施例4
発光材料として化合物例2の代わりに、発光材料のうちホスト材料として前記化合物例2を、発光材料のうちドーパント材料として下記に示す化合物a(クロロホルム溶液中の蛍光ピーク波長は610nm)を、ホスト材料に対しての濃度が3wt%になるように用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
【0057】
【化14】
【0058】
この発光素子は、(0.62、0.37)の赤色発光を示し、20Vで10cd/m2の発光が得られた。
【0059】
実施例5
ドーパント材料として化合物aの代わりに、下記に示す化合物bを用い、ホスト材料に対しての濃度が0.6%wtとなるようにした以外は実施例4と同様にして発光素子を作製した。
【0060】
この発光素子は、(0.63、0.37)の赤色発光を示し、10Vで12cd/m2の発光が得られた。
【0061】
【化15】
【0062】
実施例6
発光材料として化合物例2の代わりに前記化合物例4(DMF中の蛍光ピーク波長は610nm)を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
【0063】
この発光素子は、(0.63、0.35)の赤色発光を示し、10Vで100cd/m2の発光が得られた。
【0064】
実施例7
正孔輸送材料としてTPDの代わりにα―NPDを、発光材料として化合物例2のかわりに前記化合物例16を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
【0065】
この発光素子は、(0.63、0.33)の赤色発光を示し、8Vで120cd/m2の発光が得られた。
【0066】
実施例8
発光材料として化合物例2の代わりに前記化合物例16を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
【0067】
この発光素子は、(0.63、0.35)の赤色発光を示し、8Vで130cd/m2の発光が得られた。
【0068】
実施例9
発光材料として化合物例2の代わりに前記化合物例30を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
【0069】
この発光素子は、(0.62、0.34)の赤橙色発光を示し、7Vで160cd/m2の発光が得られた。
【0070】
実施例10
発光材料として化合物例2の代わりに前記化合物例40を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
【0071】
この発光素子は、(0.63、0.35)の赤色発光を示し、10Vで160cd/m2の発光が得られた。
【0072】
実施例11
発光材料として化合物例2の代わりに前記化合物45を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
【0073】
この発光素子は、(0.63、0.37)の赤色発光を示し、9Vで100cd/m2の発光が得られた。
【0074】
実施例12
発光層材料として化合物例2の代わりに前記化合物例47を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
【0075】
この発光素子は、(0.64、0.36)の赤色発光を示し、11Vで105cd/m2の発光が得られた。
【0076】
実施例13
ホスト材料として化合物例2の代わりに前記化合物例47を、ドーパント材料として化合物aの代わりに、下記に示す化合物c(DMF中の蛍光ピーク波長は599nm)を用いて、ホスト材料に対しての濃度を3wt%とするかわりに0.3wt%になるように、35nmの厚さとするかわりに45nmの厚さに共蒸着した以外は実施例4と同様にして発光素子を作製した。
【0077】
【化16】
【0078】
この発光素子は、(0.64、0.35)の赤色発光を示し、7Vで120cd/m2の発光が得られた。
【0079】
比較例1
発光材料として下記に示す、化合物d(特開平6−228548に記載)を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
【0080】
【化17】
【0081】
この発光素子は、(0.04、0.42)を示し、8Vで45cd/m2の緑色発光しか得られなかった。
【0082】
比較例2
発光材料として下記に示す化合物e(特開平6−228548の化合物aに記載)を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。
【0083】
【化18】
【0084】
この発光素子は、通電しても発光が得られなかった。
【0085】
【発明の効果】
本発明は、色純度が高く高輝度の、橙色または赤色発光素子を提供できるものである。
Claims (9)
- 陽極と陰極の電極間に、1層または複数層の有機薄膜が形成された、電気エネルギーにより発光する素子であって、前記有機薄膜に下記一般式(A)に示す化合物を含有することを特徴とする発光素子。
- 前記一般式(A)において、R6,R10が同一であっても異なっていても良い水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキルオキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基又はシアノ基である請求項1記載の発光素子。
- 前記一般式(A)において、R8の置換もしくは未置換のアリール基がC6〜C16アリール基であり、置換もしくは未置換のアルキル基がC3〜C12アルキル基である請求項1または2記載の発光素子。
- 前記一般式(A)において、R2、R3の置換もしくは未置換のアルキル基がC2〜C12アルキル基であり、置換もしくは未置換のアリール基がC6〜C16アリール基である請求項1ないし3記載の発光素子。
- 前記一般式(A)において、R1とR2、R3とR4の両方もしくは片方が連結して置換もしくは未置換の5〜7員環を形成した請求項1ないし4記載の発光素子。
- 前記有機薄膜が少なくとも正孔輸送層と発光層との積層構造を有することを特徴とする請求項1ないし5記載の発光素子。
- 陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極を順次積層することを特徴とする請求項6記載の発光素子。
- 前記一般式(A)の化合物を発光層として用いることを特徴とする請求項1ないし7記載の発光素子。
- マトリクスおよび/またはセグメント方式によって表示するディスプレイであることを特徴とする請求項1ないし8記載の発光素子。
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