JP3777699B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機、特に低速段側の変速段への変速規制が可能なように構成された自動変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車に搭載される自動変速機は、トルクコンバータと変速歯車機構とを組み合わせ、この変速歯車機構の動力伝達経路をクラッチやブレーキ等の複数の摩擦要素の選択的作動により切り換えて、所定の変速段に自動的に変速するように構成したものであるが、この種の自動変速機には、例えば特公平4−52381号公報に開示されているように、自動車の発進時や加速時等に駆動輪が過大な駆動トルクによりスリップして加速性が低下するのを防止するために所謂トラクション制御を行なうようにしたものがある。
【0003】
このトラクション制御は、過大な駆動トルクに起因して駆動輪に過剰スリップ状態が発生したときに、例えばエンジン出力を低下させることにより、該駆動輪の回転速度に基づいて算出したスリップ量を所定の目標値に収束させるもので、このとき、エンジン出力を低下させる方法として、一般に、点火時期の遅角(リタード)や燃料噴射制限(燃料カット)が行なわれる。その場合に、例えば駆動輪のスリップ量に基づいて制御レベルが算出されると共に、予め制御レベルをパラメータとして設定されたエンジン出力低減用のテーブルに従って、点火時期がリタードされ、また所要数の気筒に対する燃料噴射が停止されることになる。
【0004】
一方、この種の自動車は、車速センサやスロットルセンサが備えられ、予め車速とスロットル開度(エンジン負荷)とをパラメータとして設定された変速段決定用のマップ(変速特性)に上記センサで検出される実測値を当てはめることにより、現在の運転状態に適した目標変速段が割り出され、そしてその割り出された目標変速段が達成されるように自動変速機の油圧制御回路に変速信号が出力されて、変速歯車機構の動力伝達経路が該目標変速段用に切り換えられるようになっている。
【0005】
そのとき、上記変速特性は、通常、発進時等の低車速領域においては、大きなエンジンの出力トルクが得られる1速が選択されるように設定されており、したがって、通常は、自動車の発進時には、1速で発進することになるが、例えば雪道等の路面摩擦係数の低い道路で発進する場合は、スリップを抑制するためにエンジンの出力トルクのより小さな2速で発進する方が好ましいことがあり、そのような2速発進を可能にするものとして、特開昭62−106162号公報には、例えば通常の1速から4速までの自動変速が行なわれるDレンジの他に、変速特性がほぼ全領域に渡って2速とされた2速固定モードが達成される2レンジを備えた自動変速機が開示されている。これによれば、自動車の発進時に2レンジを選択して2速固定モードとしておけば、車速が0又は低い領域でも目標変速段として2速が割り出されて2速発進が可能となり、スリップを抑制できて発進が円滑化されることになる。
【0006】
しかしながら、このような2速固定モードないし2レンジを備えた自動変速機において、前述のトラクション制御が行なわれた場合には、次のような不具合が発生する。すなわち、2速発進時であっても駆動輪がスリップするとトラクション制御が行なわれてエンジン出力が低減されることになるが、2速の変速段では1速のときに比べてギア比が小さいからエンジン回転数が低く、このような状態で点火時期のリタードや燃料カットが行なわれると、エンジンの運転状態が不安定となって、ついにはエンジンが停止してしまう場合が生じる。また、エンジン停止を回避するために、エンジン回転数ないしエンジン出力を一定値以下に低下させないようにすると、トラクション制御の効果が充分に得られず、結局、駆動輪のスリップ量をそれほど低減させることができなくなり、トラクション制御自体の性能が低下してしまう。
【0007】
また、一般に、2速時は1速時に比べてトルクコンバータの滑り量が大きいため、エンジントルクに対する車輪の慣性モーメントが大きくなって、制御量の変動に対して車輪に伝わる駆動力の応答遅れが大きくなる。その結果、初期スリップを抑えたのちのトルク回復の反応が遅く、失速又はエンジン停止の懸念が大きくなると共に、制御のハンチングが起きやすくなるのである。
【0008】
このような問題は、2速固定モードが達成される2レンジを備えた自動変速機に限らず、例えば、1速から4速までの間で変速が可能なDレンジでオン操作されることにより変速段を3速に固定したり、1速から3速までの間で変速が可能なSレンジでオン操作されることにより変速段を2速に固定したりするホールドスイッチや、上記Dレンジでオン操作されることにより1速を禁止して達成可能な変速段を2速から4速までに制限するスノースイッチ等が備えられた自動変速機においても同様に発生し得る問題である。つまり、Dレンジ又はSレンジでホールドスイッチをオン操作して発進すると、通常の1速発進ではなくそれより高速段の3速発進又は2速発進が可能となり、またDレンジでスノースイッチをオン操作して発進すると、やはり1速発進ではなく2速発進が可能となるからである。
【0009】
これに対し、上記のような低速段側の変速段への変速を規制する2レンジ、あるいはホールドスイッチやスノースイッチ等(低速段規制手段)を備えた自動変速機であっても、トラクション制御が行なわれない場合には、上記のような不具合が発生しない。したがって、トラクション制御を実行するトラクション制御システム(TCS)が搭載される自動車においては、上記不具合を回避するために、ホールドスイッチ等がオン操作されても高速段での発進を規制して低速段での発進を許容し、一方、TCSが搭載されない自動車においては、上記不具合が発生しないのであるから、ホールドスイッチ等がオン操作されたときにはその操作通りに高速段での発進を許容して低速段での発進を規制するようにそれぞれ異なる変速制御とすることが考えられる。
【0010】
また、近年では、以上のような自動変速が達成されるオートモードの他に、例えばシフトレバーを所定レンジ内で車両前後方向に揺動操作する等、運転者の所定の手動操作によって変速段を一段づつ切り換えることのできるマニュアルモードが備えられた自動変速機が提案されているが、このマニュアルモード付きの自動変速機においても、例えば、該マニュアルモードにおけるシフトレバー操作で変速段を2速としたままで停車し、次にこの状態で発進した場合には1速発進ではなく2速発進となって、このときTCSが搭載されているとやはり上記と同様の不具合が発生するので、TCSが搭載されているかどうかによって異なる変速制御とすることが考えられる。
【0011】
なお、以上は発進時の場合を主として例に説述したが、この問題は、発進時のみならず、発進直後や停止直前、あるいは低車速での定常走行中等、通常であれば変速段が低速段に切り換えられるところを、低速段規制手段により、又はマニュアルモードにおけるシフトレバー操作により、変速段が高速段のまま固定、維持されているような場合に一般に発生し得る問題である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、周知のように、自動車に搭載される各種各様の制御システムには、それぞれ前述の車速センサやスロットルセンサ、あるいは車輪速センサや水温センサ、エアフローセンサ、O2センサ等からの信号を入力して予め設定されたプログラムに基づいて処理し、その結果を油圧制御回路上に配置されたオンオフソレノイドバルブやデューティソレノイドバルブ、あるいはエンジンの点火プラグや燃料噴射弁のソレノイド等に出力する各制御システム用のコントロールユニット(ECU)が備えられる。
【0013】
したがって、これらの各ECUには、その制御の種類や内容に応じてそれぞれ異なる制御プログラムやテーブル、あるいはマップ等がそのROM等のメモリに書き込まれることになる。すると、上記のようにTCS搭載車と非搭載車とで相互に異なる変速制御を行なうようにするためには、それぞれのECUに独自の制御プログラムを格納しなければならないことになり、結果的に、TCS搭載車用のECUと、TCS非搭載車用のECUとの二種類が必要となって、生産コストの増大を招くことになる。
【0014】
そこで、本発明は、TCSが搭載される自動車と搭載されない自動車との両方に共通使用でき、もって生産コストの低減が図れ、且つTCS搭載車においては、高速段発進時等であってもトラクション制御の性能を損なわず、且つエンスト等の不具合を回避することのできる自動変速機の制御装置の提供を課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では次のような手段を用いる。
【0016】
まず、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明(以下「第1発明」という。)は、車速に関する値を検出する車速検出手段と、スロットル開度に関する値を検出するスロットル開度検出手段と、予め車速に関する値とスロットル開度に関する値とに応じて設定された変速特性と上記両検出手段の検出結果とに基づいて変速段を決定して該変速段に変速する変速制御手段とを有する自動変速機の制御装置であって、運転者の所定の操作を受けて低速段側の所定の変速段への変速を規制する低速段規制手段と、当該車両の駆動輪にスリップが検出されたときに該スリップ量を所定の目標値に近づけるようにエンジン出力を低下させるトラクション制御装置が当該車両に備えられているか否かを判定する判定手段と、該判定手段でトラクション制御装置が備えられていると判定されたときには上記規制手段による所定変速段への変速の規制を解除する変速規制解除手段とが備えられていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に記載した発明(以下「第2発明」という。)は、上記第1発明において、変速規制解除手段は、車速が所定値以下であるときにのみ、低速段規制手段による変速規制を解除することを特徴とする。
【0018】
さらに、請求項3に記載した発明(以下「第3発明」という。)は、上記第1発明において、低速段規制手段及び変速規制解除手段は、それぞれ上記変速特性を変更することにより、所定変速段への変速を規制し、該変速規制を解除するものであることを特徴とする。
【0019】
そして、請求項4に記載した発明(以下「第4発明」という。)は、上記第3発明において、低速段規制手段は、車速とスロットル開度とが所定範囲にあるときは1速が選択されるように設定された第1の変速特性を、車速とスロットル開度とがいかなる範囲にあっても1速が選択されないように設定された第2の変速特性に変更することにより、1速への変速を規制し、変速規制解除手段は、上記第2の変速特性を第1の変速特性に変更することにより、1速への変速規制を解除するものであることを特徴とする。
【0020】
一方、請求項5に記載した発明(以下「第5発明」という。)は、上記第1発明において、判定手段は、上記トラクション制御装置が生成する所定の信号を検出することにより、該制御装置が備えられていると判定することを特徴とする。
【0021】
また、請求項6に記載した発明(以下「第6発明」という。)は、上記第1発明において、上記トラクション制御装置が正常に作動しない状態にあるか否かを判定する作動状態判定手段が備えられ、変速規制解除手段は、この作動状態判定手段でトラクション制御装置が正常に作動しない状態にあると判定されたときには、判定手段でトラクション制御装置が当該車両に備えられていると判定されたときであっても、低速段規制手段による変速規制を解除しないことを特徴とする。
【0022】
さらに、請求項7に記載した発明(以下「第7発明」という。)は、上記第6発明において、上記作動状態判定手段は、エンジンが始動前であるとき、エンジン水温が所定値以下であるとき、エンジン回転数が所定値以上であるとき、エンジン補機が異常であるとき、トラクション制御が継続して所定時間以上行なわれたとき、運転者がトラクション制御を希望しない場合に作動するスイッチが作動中であるときの少なくともいずれかのときに、トラクション制御装置が正常に作動しない状態にあると判定することを特徴とする。
【0023】
そして、請求項8に記載した発明(以下「第8発明」という。)は、車速に関する値を検出する車速検出手段と、スロットル開度に関する値を検出するスロットル開度検出手段と、予め車速に関する値とスロットル開度に関する値とに応じて設定された変速特性と上記両検出手段の検出結果とに基づいて変速段を決定して該変速段に変速する自動変速制御手段と、運転者の所定の操作に応じて変速段を決定して該変速段に変速する手動変速制御手段とを有する自動変速機の制御装置であって、当該車両の駆動輪にスリップが検出されたときに該スリップ量を所定の目標値に近づけるようにエンジン出力を低下させるトラクション制御装置が当該車両に備えられているか否かを判定する判定手段と、該判定手段でトラクション制御装置が備えられていると判定され、且つ車速が所定値以下であるときには、上記手動変速制御手段により変速段が1速とされていなくても、変速段を1速に切り換える低速段強制手段とが備えられていることを特徴とする。
【0024】
上記の手段を用いることにより、本願各発明はそれぞれ次のように作用する。
【0025】
まず、第1発明によれば、駆動輪のスリップ時にエンジン出力を低下させるトラクション制御装置が当該車両に備えられているか否かを判定する判定手段が備えられ、この判定手段によって上記制御装置が当該車両に備えられていると判定されたときには、低速段規制手段によって低速段側の所定変速段への変速規制が行なわれても、変速規制解除手段によってその変速規制が解除されるので、結局、低速段への変速が許容されることになり、高速段での発進時や低車速走行中等にトラクション制御が行なわれることによるエンジン停止あるいは該制御性能低下等の不具合が回避されることになる。
【0026】
また、上記判定手段によってトラクション制御装置が当該車両に備えられていると判定されないときには、低速段規制手段による変速規制が解除されないことになるので、この場合は、結局、低速段への変速が規制されて、規制手段による規制通りの高速段での発進や走行となり、且つ、トラクション制御装置が当該車両に備えられておらず、したがってトラクション制御が行なわれないのであるから、規制手段による規制通りの高速段での発進や走行が行なわれても、エンジン停止あるいは該制御性能低下等の不具合が発生しないことになる。
【0027】
そして、このような判定手段と変速規制解除手段とを備えることによって、トラクション制御装置が当該車両に備えられている場合と備えられていない場合とで相互に異なる変速制御のそれぞれに対応することが可能となるので、ECUの共通化が図れて生産コストを低減することができる。
【0028】
その場合に、第2発明によれば、変速規制解除手段は、車速が所定値以下であるときにのみ上記の変速規制の解除を行なうので、特に、車速が低く、したがってエンジン回転数の小さい発進時等においてのみ、トラクション制御が行なわれることによるエンジン停止あるいは該制御性能低下等の不具合が効果的に回避されると共に、それ以外の通常走行時等においては、変速規制が維持されて、規制手段による規制通りの走行が実現することになる。
【0029】
また、第3発明によれば、低速段規制手段及び変速規制解除手段は、それぞれ上記変速特性を変更することによって、上記の変速規制又はその解除を行なうので、車速やスロットル開度等に基づいて規制動作や解除動作が誤りなく実行されることになる。
【0030】
特に、第4発明によれば、低速段規制手段が、1速が選択可能な第1の変速特性を1速がカットされた第2の変速特性に変更することにより1速への変速を規制するものであり、変速規制解除手段が、上記の1速がカットされた第2の変速特性を1速が選択可能な第1の変速特性に変更することにより1速への変速規制を解除するものであるから、通常発進時等に用いられる1速の変速段が車速やスロットル開度等に基づいて誤りなく目標変速段として決定されて、この1速への変速が許容されることになる。
【0031】
一方、第5発明によれば、判定手段は、トラクション制御装置が生成する所定の信号を検出することにより該制御装置が当該車両に備えられていると判定するので、トラクション制御装置の存在が誤りなく合理的に判定されることになる。なお、このときの上記信号とは、例えば、エンジントルクの目標値を指令する制御パルス信号等、トラクション制御装置が存在していれば必然的に生成されるはずの信号が選ばれる。
【0032】
次に、第6発明によれば、トラクション制御装置が正常に作動しない状態にあるか否かを判定する作動状態判定手段が備えられ、この作動状態判定手段でトラクション制御装置が正常に作動しない状態にあると判定されたときには、変速規制解除手段は、判定手段でトラクション制御装置が当該車両に備えられていると判定されたときであっても、低速段規制手段による変速規制を解除しないから、エンジン停止等の不具合の発生原因であるトラクション制御が正常に作動する状態にないのにも拘らず、単にトラクション制御装置が備えられているというだけで低速段規制手段による変速規制が解除されるというような不合理な事態が回避でき、信頼性の高い制御が実現されることになる。
【0033】
その場合に、第7発明によれば、作動状態判定手段がトラクション制御装置が正常に作動しない状態にあると判定する条件が具体化され、エンジンが始動前であるときのようにトラクション制御をそもそも行なうことができないような場合や、エンジン水温が所定値以下であるときのようにエンジンの状態からトラクション制御を行なわない方がよいような場合や、エンジン回転数が所定値以上であるときのようにトラクション制御を行なうと排ガス温度が上がって排ガス浄化用触媒等に悪影響を及ぼすような場合や、エアフローセンサやO2センサ等の基本的なエンジン管理に欠かせないエンジン補機が異常であるときのようにエンジン側の信頼性が低くトラクション制御を行なってもその制御の効果が充分には得られないような場合や、トラクション制御が継続して所定時間以上行なわれたときや運転者がトラクション制御を希望しない場合に作動するスイッチが作動中であるときのようにトラクション制御自体が中止させられたような場合に、トラクション制御が正常に作動しない状態にあると判定されることになる。
【0034】
そして、第8発明によれば、マニュアルモード付きの自動変速機において、該マニュアルモードの1速以外での発進時や低速走行時等にトラクション制御が行なわれることによるエンジン停止あるいは該制御性能低下等の不具合が回避されることになる。
【0035】
すなわち、上記第1発明ないし第8発明と同様、駆動輪のスリップ時にエンジン出力を低下させるトラクション制御装置が当該車両に備えられているか否かを判定する判定手段が備えられ、この判定手段によって上記制御装置が当該車両に備えられていると判定され、且つ車速が所定値以下であるときには、マニュアルモードで変速段が通常発進時等に用いられる1速ではなく2速や3速等の高速段とされていても、低速段強制手段によってその高速段側の変速段が1速に切り換えられるので、結局、変速段は通常発進時等に用いられる1速となり、2速や3速等の高速段での発進時や低速走行中等にトラクション制御が行なわれることによるエンジン停止あるいは該制御性能低下等の不具合が回避されることになる。
【0036】
また、上記判定手段によってトラクション制御装置が当該車両に備えられていると判定されないときには、高速段側変速段から1速への変速段の切換えが行なわれないことになるので、この場合は、結局、高速段側変速段が維持されることになると共に、トラクション制御が行なわれないのであるからエンジン停止あるいは該制御性能低下等の不具合が発生しないことになる。
【0037】
そして、このような判定手段と低速段強制手段とを備えることによって、トラクション制御装置が備えられている場合と備えられていない場合とで相互に異なる変速制御のそれぞれに対応することが可能となるので、ECUの共通化が図れて生産コストを低減することができる。
【0038】
また、低速段強制手段は、車速が所定値以下であるときに、上記の1速への変速段の切換えを行なうので、特に、車速が低く、したがってエンジン回転数の小さい発進時等において、トラクション制御が行なわれることによるエンジン停止あるいは該制御性能低下等の不具合が効果的に回避されると共に、それ以外の通常走行時等においては、高速段側変速段が維持されて、運転者のシフトレバー操作通りの走行が実現することになる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0040】
図1に示すように、この実施の形態における自動車のエンジン10の吸気通路には運転者のアクセルペダルの踏込操作によって開閉制御されるスロットルバルブ11が、また各気筒には燃料噴射弁12…12及び点火プラグ13…13が配設されている。一方、このエンジン10と共にパワーユニットを構成する自動変速機20は、エンジン10の出力軸14に連結されたトルクコンバータ21と、該トルクコンバータ21の出力トルクが入力される変速機構22と、複数の摩擦要素に選択的に作動油圧を供給することにより上記変速機構22のギア比(変速段)を切り換える油圧制御回路23とで構成されている。
【0041】
また、この自動車には、A/Dコンバータやディジタル入力バッファ等からなる入力インターフェース、CPUやROM、RAM及び入出力ポート等からなるコンピュータ部、並びに出力信号増幅回路等からなる出力インターフェースで構成された上記エンジン10及び自動変速機20に対する各種制御のための統合コントロールユニット(以下、「ECU」という)30が備えられ、このECU30に、エンジン10側からは、吸入空気量を検出するエアフローセンサ31、スロットル開度を検出するスロットルセンサ32、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ33、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ34及び排気ガス中の酸素濃度を検出するO2センサ35等からの信号が、また自動変速機20側からは、タービン回転数を検出するタービン回転数センサ36及び変速機構22の出力回転数を検出する出力回転数センサ37等からの信号が、さらに、シフトレバーのレンジ選択位置を検出するインヒビタスイッチ38、並びに、Dレンジが選択された状態でオン操作されることにより達成可能な変速段を1速〜4速から2速〜4速に制限するスノースイッチ39等からの信号が入力されて、ECU30はこれらの各種信号に基づいてエンジン10に対しては燃料噴射制御や点火時期制御(エンジン制御)を、自動変速機20に対しては油圧制御回路23に配置された各種のソレノイドバルブ24…24の制御(変速制御)を行う。
【0042】
さらに、この自動車には上記ECU30と相互に信号A,Bを授受し合うトラクション制御用のコントロールユニット(以下「TRCU」という)40が備えられ、このTRCU40に左右の駆動輪1,2及び従動輪3,4の車輪速を検出する車輪速センサ41〜44等からの信号が入力されて、TRCU40はこれらの信号に基づいて算出した駆動輪1,2のスリップ量が所定の目標値に収束するようにエンジン10の出力を低下させる周知のトラクション制御を上記ECU30を介して行う。
【0043】
すなわち、図2に示すように、TRCU40は制御量決定部40aで駆動輪1,2のスリップ量が所定の目標値となるエンジントルクを求め、これを制御要求トルク出力部40bから信号AとしてECU30に出力すると共に、ECU30はこの信号Aを後述するトラクション制御装置(TCS)搭載判定部30aを介して入力し、制御要求トルク算出部30bでエンジントルクの目標値を算出したのち、エンジントルク制御実行部30cで上記目標トルクと現在の実トルクとを比較する等して燃料噴射の制限量や点火時期のリタード量を決定し、燃料噴射弁12…12及び点火プラグ13…13にその制御信号を出力する。また、ECU30はその制御後の実トルクを算出部30dで求め、これを信号BとしてTRCU40に出力すると共に、TRCU40はこの信号Bを実トルク入力部40cを介して入力して、その値を参考に次の制御量を決定部40aで決定する。なお、このようなエンジン10のトルク制御と共に駆動輪1,2のブレーキ制御を併用してもよい。
【0044】
その場合に、TRCU40からECU30に出力される上記信号Aは、例えば10m秒周期で最大12V最低0Vのパルスが出力されるパルス信号であって、トルクダウン量が0%のときにパルスデューティが3%、トルクダウン量が100%のときにパルスデューティが95%等とされる。またTRCU40はエンジン10が始動されたのちは常時トラクション制御を行い、したがってエンジン10が運転中は自動車が停車中でトルクダウン量が0%であっても数ボルトのパルス信号が一定周期でECU30に出力される。ただし、この自動車にはTCSオフスイッチ45が設けられており、該スイッチ45がオン操作されたときにはオフランプ46が点灯してトラクション制御が中止される。なお、ECU30からTRCU40に出力される信号Bも同様のパルス信号とされている。
【0045】
ここでECU30が行う変速制御を説明すると、ECU30は出力回転数センサ37からの信号に基づいて車速を算出し、この車速とスロットル開度とを予めこれらの値をパラメータとして設定された変速マップに当てはめることにより目標変速段を決定して、該目標変速段が達成されるように変速実行部30gから油圧制御回路23の油路を切り換えるソレノイドバルブ24…24に対して制御信号を出力する。その場合に、上記変速マップとしては、Dレンジにおいては図3に概念的に示すように達成可能な変速段として1速〜4速が設定された変速マップが用いられ、またスノースイッチ39がオン操作されたときには図4に概念的に示すように上記Dレンジ用変速マップから1速が禁止され、達成可能な変速段が2速〜4速に制限された変速マップが用いられる。さらに、この自動車には走行レンジとして上記Dレンジの他に2レンジが備えられており、この2レンジにおいては図5に概念的に示すように全領域が2速に固定された変速マップが用いられる。したがって、この自動車においては、上記2レンジを選択することにより又はDレンジを選択してスノースイッチ39をオンすることによりいずれの場合においても2速発進や2速低速走行等が可能となる。このような変速マップの変更は、インヒビタスイッチ38やスノースイッチ39等からの信号を受けてECU30の変速マップ変更部30fにて行われる。なお、図3、図4では便宜上ヒステリシスを省略してある。
【0046】
次に、TRCU40側から出力されるパルス信号Aを入力するECU30のTCS搭載判定部30aについて説明すると、この判定部30aは、図6にその制御プログラムの内容を示すように、エンジン10の始動後であって、TRCU40側から受け取った上記パルス信号Aが、所定時間以上、周期異常であるか、パルスデューティ異常であるか、又はパルスの割り込みが無いローレベル一定の状態であるかのいずれか一に該当するときは、当該自動車がTCS非搭載車又はTCS通信異常であると判定する一方、いずれにも該当しないときには、当該自動車がTCS搭載車であると判定する。
【0047】
またECU30にはこの判定部30aの他にトラクション制御の禁止条件を判定する判定部30eが設けられ、この判定部30eは、図7にその制御プログラムの内容を示すように、エンジン10が始動前でトラクション制御自体がそもそも実行不可能であるか、エンジン水温がトラクション制御の許可温度以下であるか、エンジン回転数がトラクション制御の許可回転数以上であるか、エアフローセンサ31やO2センサ35等のような基本的なエンジン10の制御に欠かせないエンジン補機が異常であるか、トラクション制御がすでに所定時間以上連続作動しているかのいずれか一に該当するとき、換言すればTCSが正常に作動しない状態にあるときは、トラクション制御が禁止状態であると判定する一方、いずれにも該当しないときには、トラクション制御が許可状態であると判定する。
【0048】
そして前述のエンジントルク制御実行部30cは、TCS搭載判定部30aで当該自動車がTCS搭載車であると判定され、且つトラクション制御禁止条件判定部30eでトラクション制御が許可状態であると判定されたときに、前述の燃料噴射制御や点火時期制御を行うが、いずれかの判定部30a,30eでそうではないと判定されたときには、上記の燃料噴射制御や点火時期制御を行わないようになっている。
【0049】
また前述の変速マップ変更部30fにおいても上記判定部30a,30eの判定結果に応じて変速マップの変更が行われる。すなわち、まず、この変速マップ変更部30fは、図8にその制御プログラムの内容を示すように、シフトレバーで2レンジが選択されているか又はDレンジでスノースイッチ39がオンされており、且つ車速が所定車速以下であるか否かを判定し、そうである場合は当該自動車が特定状態モードにあると判定する一方、そうでない場合には特定状態モードにないと判定する。つまり通常のDレンジが選択されているだけの場合であれば図3に示すDレンジ用の変速マップから変速段が1速とされるような状態において、図4又は図5に示すスノーモード用又は2レンジ用の変速マップが用いられる結果、変速段が2速のままとされているようなときには特定状態モードと、それ以外のときには非特定状態モードと判定するのである。
【0050】
そして変速マップ変更部30fは、エンジン10が始動されてから所定時間が経過しており、且つ、上記TCS搭載判定部30aで当該自動車がTCS搭載車であると判定され、トラクション制御禁止条件判定部30eでトラクション制御が許可状態であると判定され、さらに当該自動車が特定状態モードにあると判定したときには、図4又は図5に示すスノーモード用又は2レンジ用の変速マップを1速付きの変速マップに変更する一方、いずれかの条件が満たされていないときには、そのような変速マップの変更は行わない。その場合、図4に示すスノーモード用の変速マップは例えば図3に示すDレンジ用の変速マップに、また図5に示す2レンジ用の変速マップは例えば図9に示すような低車速領域が1速に設定された変速マップに変更される。なお、上記において、変速マップ変更部30fがエンジン10の始動後所定時間が経過していることを条件とするのは、TCS搭載判定部30aでの判定、及びトラクション制御禁止条件判定部30eでの判定が、エンジン10の始動直後の不安定な検出結果に基づくものではないことを確認するためである。
【0051】
このような制御により、変速マップが変更されたときには変速段が1速に切り換えられ、またトラクション制御も実行される。この場合、トラクション制御が実行されても変速段は1速であるので、2速のままでの発進時や低速走行時にトラクション制御が実行されるときに懸念されるエンストやトラクション制御の性能低下等の不具合は起こらない。一方、当該自動車がそもそもTCSを搭載していないか、あるいは搭載していても該TCSが正常に作動しない状態にあるときには、変速段は2速のまま維持されるが、この場合はトラクション制御が行われないのであるから上記不具合はもともと発生しない。そして、このECU30は上記のような判定部30a,30eを有し、その判定結果に応じたエンジン10に対するトルク制御及び自動変速機20に対する変速制御を行うので、このECU30をTCS搭載車と非搭載車とのいずれにも共通使用することができて、自動車の生産コストの低減を図ることが可能になる。
【0052】
なお、この実施の形態においては、図2に示したように、TRCU40側にもトラクション制御の禁止条件を判定する判定部40dが設けられ、この判定部40dは、図10にその制御プログラムの内容を示すように、エンジン10が始動後であり、ECU30からのパルス信号Bが周期、デューティ、割り込みの点で正常であり、エンジン10側がトラクション制御許可状態であり、且つTCSオフスイッチ45が作動していないときには、トラクション制御が許可状態であると判定する一方、いずれかがそうでないときには、トラクション制御が禁止状態であると判定する。そして、その結果、トラクション制御が許可状態であると判定されたときには、制御要求トルク出力部40bに対してECU30へのパルス信号Aの出力を許可する一方、トラクション制御が禁止状態であると判定されたときには、該パルス信号Aの出力を禁止する。このとき、ECU30からのパルス信号Bには、実トルクに関する情報だけでなく、エンジン10側のトラクション制御の許可あるいは禁止に関する情報も含まれており、TRCU40の判定部40dは制御量決定部40aに入ったこのパルス信号Bを監視しているのである。
【0053】
次に本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同じ構成要素もしくは相当する構成要素には同じ符号を用い、また重複する部分の説明は省略する。
【0054】
図11に示すように、この第2の実施の形態におけるECU30には第1の実施の形態の構成に加えて、さらにMレンジスイッチ51からの信号と、シフトアップスイッチ52及びシフトダウンスイッチ53からの信号とが入力される。インヒビタスイッチ38は、シフトレバーがPレンジ、Rレンジ、Nレンジ、及びDレンジの各レンジ選択位置に切り換えられたことを検出するのに対し、Mレンジスイッチ51はシフトレバーが手動変速操作が行われるMレンジに切り換えられたことを検出する。そしてシフトレバーがこのMレンジに切り換えられ、該Mレンジ選択位置内で車両前後方向に揺動操作されることによって、上記シフトアップスイッチ52又はシフトダウンスイッチ53がオン操作されて変速段が一段シフトアップ又はシフトダウンされるようになっている。
【0055】
そしてそれに対応してこのECU30には、自動変速時に用いる変速マップの変更を行う前述のマップ変更部30fに加えて、手動変速時の上記シフトレバーのMレンジ内での車両前後方向の揺動操作に応じて変速段を決定する変速段決定部30hが備えられており、この変速段決定部30hは、図12にその制御プログラムの内容を示すように、手動変速操作により現変速段が2速以上で、且つ車速が所定車速以下であるか否かを判定し、そうである場合は当該自動車が特定状態モードにあると判定する一方、そうでない場合には特定状態モードにないと判定する。つまりDレンジが選択されて通常の自動変速の場合であれば図3に示すDレンジ用の変速マップから変速段が1速とされるような状態において、運転者による手動変速操作の結果、変速段が2速以上の高速段のままとされているようなときには特定状態モードと、それ以外のときには非特定状態モードと判定するのである。
【0056】
そして変速段決定部30hは、TCS搭載判定部30aやトラクション制御禁止条件判定部30e等の判定結果と共に、当該自動車が特定状態モードにあるか否かを判定し、全ての条件が満たされているときは、変速段を現在の高速段から1速に切り換える一方、いずれかの条件が満たされていないときには、そのような1速への変速段の切換えは行わない。
【0057】
このような制御により、この第2の実施の形態においては、2速以上の現在の変速段が変速段決定部30hによって1速に切り換えられたときにはトラクション制御も実行され、この場合、トラクション制御が実行されても変速段は1速であるので、2速以上の高速段のままでの発進時や低速走行時にトラクション制御が実行されるときに懸念されるエンストやトラクション制御の性能低下等の不具合は起こらない。一方、当該自動車がそもそもTCSを搭載していないか、あるいは搭載していても該TCSが正常に作動しない状態にあるときには、変速段は2速以上の高速段のまま維持されるが、この場合はトラクション制御が行われないのであるから上記不具合はもともと発生しない。そして、このECU30は上記のような判定部30a,30eを有し、その判定結果に応じたエンジン制御及び手動変速制御を行うので、このECU30をTCS搭載車と非搭載車とのいずれにも共通使用することができて、自動車の生産コストの低減を図ることが可能になる。
【0058】
なお、この第2の実施の形態においては、手動変速モードへの切換えや、該手動変速モードにおける変速操作が、運転者によるシフトレバーの揺動操作によって行なわれるものであったが、これに限らず、運転者によるボタン操作やスイッチ操作等によって行なわれるものであってもよい。また、以上の実施の形態において、ECU30はエンジン10及び自動変速機20を統括制御する統合ユニットとされたが、エンジン10用のECUと、自動変速機20用のECUとに分離独立されたものであってもよい。
【0059】
【発明の効果】
以上のように、本願の第1発明によれば、駆動輪のスリップ時にエンジン出力を低下させるトラクション制御装置が当該車両に備えられているか否かが判定され、備えられているとの判定時には、低速段側の所定変速段への変速規制が行なわれても、その変速規制が解除されるので、結局、低速段への変速が許容されることになり、高速段での発進時や低車速走行中等にトラクション制御が行なわれることによるエンジン停止あるいは該制御性能低下等の不具合が回避される。
【0060】
また、上記トラクション制御装置が当該車両に備えられていないとの判定時には、上記変速規制が解除されないことになるので、この場合は、結局、低速段への変速が規制されて高速段での発進や走行となり、且つ、トラクション制御装置が当該車両に備えられておらず、したがってトラクション制御が行なわれないのであるから、規制通りの高速段での発進や走行が行なわれても、エンジン停止あるいは該制御性能低下等の不具合が発生しないことになる。
【0061】
そして、このようにトラクション搭載車と非搭載車とのそれぞれに対応可能であるから、ECUの共通化が図れて生産コストを低減することができる。
【0062】
また、第2発明によれば、車速が所定値以下であるときにのみ上記の変速規制の解除が行なわれるので、特に、車速が低く、したがってエンジン回転数の小さい発進時等においてのみ、トラクション制御が行なわれることによるエンジン停止あるいは該制御性能低下等の不具合が効果的に回避されると共に、それ以外の通常走行時等においては、変速規制が維持されて、規制手段による規制通りの走行が実現することになる。
【0063】
また、第3発明によれば、上記の変速規制又はその解除が、それぞれ上記変速特性の変更によって行なわれるので、車速やスロットル開度等に基づいて規制動作や解除動作が誤りなく実行されることになる。
【0064】
また、第4発明によれば、通常発進時等に用いられる1速の変速段が車速やスロットル開度等に基づいて誤りなく目標変速段として決定されて、この1速への変速が許容されることになる。
【0065】
また、第5発明によれば、トラクション制御装置が生成する所定の信号の検出により該制御装置が当該車両に備えられていると判定されるので、トラクション制御装置の存在が誤りなく合理的に判定されることになる。
【0066】
また、第6発明によれば、トラクション制御装置が当該車両に備えられていると判定されても、該制御装置が正常に作動しない状態にあると判定されたときには、上記変速規制を解除しないから、エンジン停止等の不具合の発生原因であるトラクション制御が正常に作動する状態にないのにも拘らず、単にトラクション制御装置が備えられているというだけで上記変速規制が解除されるというような不合理な事態が回避でき、信頼性の高い制御が実現されることになる。
【0067】
また、第7発明によれば、その場合のトラクション制御装置が正常に作動しない状態にあると判定する条件が具体化される。
【0068】
そして、第8発明によれば、マニュアルモード付きの自動変速機において、上記第1発明ないし第8発明と同様の効果が上記マニュアルモードで得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態における自動車の制御システム図である。
【図2】 同制御システム中におけるエンジン−自動変速機側コントロールユニット及びトラクション側コントロールユニットの構成図である。
【図3】 Dレンジの変速制御で用いられる変速マップの概念図である。
【図4】 スノーモードの変速制御で用いられる変速マップの概念図である。
【図5】 2レンジの変速制御で用いられる変速マップの概念図である。
【図6】 エンジン−自動変速機側コントロールユニットにおけるTCS搭載判定部の制御動作の内容を示す説明図である。
【図7】 同じくトラクション制御禁止条件判定部の制御動作の内容を示す説明図である。
【図8】 同じく変速マップ変更部の制御動作の内容を示す説明図である。
【図9】 上記変速マップ変更部で変更された後の2レンジ用変速マップの概念図である。
【図10】 トラクション側コントロールユニットにおけるトラクション制御禁止条件判定部の制御動作の内容を示す説明図である。
【図11】 手動変速制御装置付き自動車の制御システム中におけるエンジン−自動変速機側コントロールユニットの構成図である。
【図12】 上記エンジン−自動変速機側コントロールユニットにおける変速段決定部の制御動作の内容を示す説明図である。
【符号の説明】
10 エンジン
20 自動変速機
30 エンジン−自動変速機制御用統合コントロールユニット
30a トラクション制御装置搭載判定部
30e,40d トラクション制御禁止条件判定部
30f 変速マップ変更部
30h 変速段決定部
38 インヒビタスイッチ
39 スノースイッチ
40 トラクション制御用コントロールユニット
40a 制御要求トルク出力部
51 Mレンジスイッチ
52 シフトアップスイッチ
53 シフトダウンスイッチ
Claims (8)
- 車速に関する値を検出する車速検出手段と、スロットル開度に関する値を検出するスロットル開度検出手段と、予め車速に関する値とスロットル開度に関する値とに応じて設定された変速特性と上記両検出手段の検出結果とに基づいて変速段を決定して該変速段に変速する変速制御手段とを有する自動変速機の制御装置であって、運転者の所定の操作を受けて低速段側の所定の変速段への変速を規制する低速段規制手段と、当該車両の駆動輪にスリップが検出されたときに該スリップ量を所定の目標値に近づけるようにエンジン出力を低下させるトラクション制御装置が当該車両に備えられているか否かを判定する判定手段と、該判定手段でトラクション制御装置が備えられていると判定されたときには上記規制手段による所定変速段への変速の規制を解除する変速規制解除手段とが備えられていることを特徴とする自動変速機の制御装置。
- 変速規制解除手段は、車速が所定値以下であるときにのみ、低速段規制手段による変速規制を解除することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
- 低速段規制手段及び変速規制解除手段は、それぞれ上記変速特性を変更することにより、所定変速段への変速を規制し、該変速規制を解除するものであることを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
- 低速段規制手段は、車速とスロットル開度とが所定範囲にあるときは1速が選択されるように設定された第1の変速特性を、車速とスロットル開度とがいかなる範囲にあっても1速が選択されないように設定された第2の変速特性に変更することにより、1速への変速を規制し、変速規制解除手段は、上記第2の変速特性を第1の変速特性に変更することにより、1速への変速規制を解除するものであることを特徴とする請求項3に記載の自動変速機の制御装置。
- 判定手段は、上記トラクション制御装置が生成する所定の信号を検出することにより、該制御装置が備えられていると判定することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
- 上記トラクション制御装置が正常に作動しない状態にあるか否かを判定する作動状態判定手段が備えられ、変速規制解除手段は、この作動状態判定手段でトラクション制御装置が正常に作動しない状態にあると判定されたときには、判定手段でトラクション制御装置が当該車両に備えられていると判定されたときであっても、低速段規制手段による変速規制を解除しないことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
- 上記作動状態判定手段は、エンジンが始動前であるとき、エンジン水温が所定値以下であるとき、エンジン回転数が所定値以上であるとき、エンジン補機が異常であるとき、トラクション制御が継続して所定時間以上行なわれたとき、運転者がトラクション制御を希望しない場合に作動するスイッチが作動中であるときの少なくともいずれかのときに、トラクション制御装置が正常に作動しない状態にあると判定することを特徴とする請求項6に記載の自動変速機の制御装置。
- 車速に関する値を検出する車速検出手段と、スロットル開度に関する値を検出するスロットル開度検出手段と、予め車速に関する値とスロットル開度に関する値とに応じて設定された変速特性と上記両検出手段の検出結果とに基づいて変速段を決定して該変速段に変速する自動変速制御手段と、運転者の所定の操作に応じて変速段を決定して該変速段に変速する手動変速制御手段とを有する自動変速機の制御装置であって、当該車両の駆動輪にスリップが検出されたときに該スリップ量を所定の目標値に近づけるようにエンジン出力を低下させるトラクション制御装置が当該車両に備えられているか否かを判定する判定手段と、該判定手段でトラクション制御装置が備えられていると判定され、且つ車速が所定値以下であるときには、上記手動変速制御手段により変速段が1速とされていなくても、変速段を1速に切り換える低速段強制手段とが備えられていることを特徴とする自動変速機の制御装置。
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