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JP3775570B2 - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents

内燃機関の空燃比制御装置 Download PDF

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  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排ガス浄化用の触媒の上流側と下流側にそれぞれ空燃比センサ(リニアA/Fセンサ)又は酸素センサを設置して内燃機関の空燃比をフィードバック制御する内燃機関の空燃比制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
今日の自動車は、排気管に三元触媒を設置して排ガスを浄化するようにしているが、触媒の排ガス浄化率を高めるためには、排ガスの空燃比を触媒の浄化ウインド内(理論空燃比付近)に制御する必要がある。そこで、触媒の上流側と下流側にそれぞれ排ガスセンサ(空燃比センサ又は酸素センサ)を設置し、上流側排ガスセンサで検出される排ガスの空燃比が上流側目標空燃比となるように燃料噴射量をフィードバック制御すると共に、下流側排ガスセンサで検出される排ガスの空燃比が下流側目標空燃比となるように上流側目標空燃比を補正するサブフィードバック制御を実施するようにしたものがある。
【0003】
このようなメイン/サブフィードバックシステムでは、特許第2518247号公報に示すように、下流側排ガスセンサの検出空燃比と下流側目標空燃比との偏差が大きくなるほど、空燃比フィードバック制御定数(例えばスキップ量)の更新量を大きくすることが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、触媒の動特性は、触媒の劣化度合、触媒内のリーン/リッチ成分吸着状態、エンジン運転状態によって変化するが、上記従来のメイン/サブフィードバックシステムでは、触媒の動特性の変化に対するサブフィードバック制御の応答性が十分とは言えない。このため、触媒の動特性の変化に対してサブフィードバック制御の応答遅れが発生して触媒下流側の空燃比(下流側排ガスセンサの出力)が不安定となり、ハンチングが発生する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明者らは、この欠点を解消するために、特願2000−404671号の明細書に記載されているように、下流側排ガスセンサの過去の検出空燃比と最終的な下流側目標空燃比とに基づいてサブフィードバック制御の中間目標値を設定し、下流側排ガスセンサの検出空燃比と前記中間目標値との偏差に基づいて上流側目標空燃比を補正するサブフィードバック制御を行うシステムを実用化に向けて開発中である。
【0006】
このシステムを実用化にするに当たって、次のような新たな技術的課題が判明している。一般に、下流側排ガスセンサは、図4に示すように排ガスの空燃比がリッチかリーンかで出力特性が反転する酸素センサ(O2 センサ)が用いられている。この酸素センサの出力特性はZ特性と称され、空燃比が理論空燃比(空気過剰率λ=1)付近の領域、つまり酸素センサの出力電圧が0.3〜0.7Vの領域では、空燃比の変化が小さくても、酸素センサの出力電圧が急激に変化し、反対に、出力電圧が0.7V以上のリッチ域や、0.3V以下のリーン域では、空燃比の変化に対する酸素センサの出力電圧の変化が小さくなる特性がある。
【0007】
このようなZ特性の酸素センサの出力電圧をそのまま用いて中間目標値(中間目標電圧)を設定して、サブフィードバック制御を行うと、0.7V以上のリッチ域や、0.3V以下のリーン域では、空燃比の変化に対する酸素センサの出力電圧の変化が小さいため、実際の空燃比の変化量に対して、中間目標値(中間目標電圧)の更新量が小さくなり、空燃比の変化に対してサブフィードバック制御の応答が遅くなってしまい、その応答遅れによって、0.7V以上のリッチ域では、HC、COの排出量が増加し、0.3V以下のリーン域では、NOxの排出量が増加する欠点がある。
【0008】
また、理論空燃比付近(0.3〜0.7V)の領域では、空燃比の変化に対する酸素センサの出力電圧の変化が急峻であるため、空燃比の変化に対して中間目標値(中間目標電圧)の更新量が大きくなりすぎて、ハンチングが発生しやすくなり、サブフィードバック制御の安定性が低下する欠点がある。
【0009】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、中間目標値を用いてメイン/サブフィードバック制御を行うシステムにおいて、下流側排ガスセンサの出力特性の影響を補償して、応答性と安定性とを両立させたサブフィードバック制御を行うことができ、下流側排ガスセンサの出力特性に左右されない安定した排ガス浄化性能を確保することができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の内燃機関の空燃比制御装置は、下流側排ガスセンサの過去の検出空燃比と現在制御されるべき最終的な下流側目標空燃比とに基づいて当該過去の検出空燃比と最終的な下流側目標空燃比との間に位置する中間目標値を設定し、下流側排ガスセンサの検出空燃比と前記中間目標値との偏差に基づいて上流側目標空燃比を補正するサブフィードバック制御を行うものにおいて、下流側排ガスセンサの出力に応じて、前記中間目標値の更新量、更新速度、前記サブフィードバック制御の制御ゲイン、制御周期、制御範囲のうちの少なくとも1つを制御補正手段によって変更するようにしたものである。このようにすれば、下流側排ガスセンサの出力特性がリニアな特性でなくても、その出力特性の影響を補償する適正な制御条件に変更することで、応答性と安定性とを両立させたサブフィードバック制御を行うことができ、下流側排ガスセンサの出力特性に左右されない安定した排ガス浄化性能を確保することができる。
【0011】
この場合、請求項2のように、下流側排ガスセンサの過去の検出空燃比と最終的な下流側目標空燃比との偏差に減衰率を乗算した値と、最終的な下流側目標空燃比とを加算して中間目標値を求め、下流側排ガスセンサの出力に応じて減衰率を変更するようにしても良い。このようにすれば、中間目標値を簡単な演算処理で設定できると共に、下流側排ガスセンサの出力特性の影響を補償するための制御条件の変更を、簡単な演算処理で行うことができる。
【0012】
また、請求項3のように、下流側排ガスセンサの検出空燃比と中間目標値との偏差に対する比例積分動作で演算した値を所定の制御範囲内に制限することで、上流側目標空燃比の補正量を求め、下流側排ガスセンサの出力に応じて比例積分動作のゲイン(制御ゲイン)及び/又は制御範囲を変更するようにしても良い。このようにすれば、触媒の動特性の変化を上流側目標空燃比の補正量に応答良く反映させることができると共に、下流側排ガスセンサの出力特性の影響を補償するための制御条件の変更を、簡単な演算処理で行うことができる。
【0013】
また、請求項4のように、リニアライズ手段によって下流側排ガスセンサの出力を該下流側排ガスセンサの出力特性に応じてリニアライズ化した空燃比検出値を用いて、中間目標値を算出するようにしても良い。このようにすれば、下流側排ガスセンサの出力特性(空燃比の検出特性)がZ特性であっても、その出力特性をリニアな特性に変換した空燃比検出値を用いて中間目標値を算出することができるので、下流側排ガスセンサの出力特性の影響を補償して、応答性と安定性とを両立させたサブフィードバック制御を行うことができ、下流側排ガスセンサの出力特性に左右されない安定した排ガス浄化性能を確保することができる。
【0014】
また、請求項5のように、下流側排ガスセンサの過去の検出空燃比と最終的な下流側目標空燃比とに基づいて設定した中間目標値を、下流側排ガスセンサの出力特性に応じて補正するようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
[実施形態(1)]
以下、本発明の実施形態(1)を図1乃至図7に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側には、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、スロットルバルブ15が設けられている。
【0016】
更に、スロットルバルブ15の下流側にはサージタンク17が設けられ、このサージタンク17に、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド19が設けられている。各気筒の吸気マニホールド19の吸気ポート近傍には、それぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁20が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、気筒毎に点火プラグ21が取り付けられている。
【0017】
一方、エンジン11の排気管22の途中には、排ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する三元触媒等の触媒23が設置されている。この触媒23の上流側と下流側には、それぞれ排ガス空燃比又はリッチ/リーンを検出する排ガスセンサ24,25が設置されている。本実施形態では、上流側排ガスセンサ24は、排ガス空燃比に応じたリニアな空燃比信号を出力する空燃比センサ(リニアA/Fセンサ)が用いられ、下流側排ガスセンサ25は、図4に示すように、排ガスの空燃比が理論空燃比(空気過剰率λ=1)に対してリッチかリーンかによって出力特性が反転する酸素センサ(O2 センサ)が用いられている。従って、下流側排ガスセンサ25は、空燃比がリーンの領域では、0.1〜0.3V程度の出力電圧を発生し、空燃比がリッチの領域では、0.7〜0.9V程度の出力電圧を発生する。尚、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する水温センサ26や、エンジン回転速度を検出する回転速度センサ27が取り付けられている。
【0018】
エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)28は、ROM29、RAM30、CPU31、バッテリ32でバックアップされたバックアップRAM33、入力ポート34、出力ポート35等からなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。入力ポート34には、回転速度センサ27の出力信号が入力されると共に、エアフローメータ14、上流側及び下流側排ガスセンサ24,25、水温センサ26の出力信号が、それぞれA/D変換器36を介して入力される。また、出力ポート35には、駆動回路39を介して燃料噴射弁20、点火プラグ21等が接続されている。
【0019】
ECU28は、ROM29に記憶された燃料噴射制御プログラムや点火制御プログラムをCPU31で実行することで、燃料噴射弁20や点火プラグ21の動作を制御すると共に、空燃比制御プログラムを実行することで、排ガスの空燃比が目標空燃比となるように空燃比(燃料噴射量)をフィードバック制御する。
【0020】
以下、本実施形態(1)の空燃比フィードバック制御システムについて図2及び図3に基づいて説明する。ここで、図2はCPU31の演算処理機能で実現する空燃比制御手段40の機能を示すブロック図、図3は空燃比フィードバック制御システム全体の機能を示すブロック図である。
【0021】
空燃比制御手段40は、燃料噴射量フィードバック制御部41と目標空燃比計算部42とから構成され、目標空燃比計算部42は、負荷目標空燃比計算部43と目標空燃比補正部44とから構成されている。
【0022】
燃料噴射量フィードバック制御部41は、上流側排ガスセンサ24の検出空燃比AFが上流側目標空燃比AFref に収束するように、燃料噴射弁20の燃料噴射時間Tinj を算出する。この燃料噴射時間Tinj の算出は、制御対象のモデルの線形方程式に対して構築された最適レギュレータにより行われる。この燃料噴射量フィードバック制御部41が、特許請求の範囲でいう空燃比フィードバック制御手段に相当する役割を果たす。
【0023】
一方、負荷目標空燃比計算部43は、ROM29に記憶された関数式又はマップにより吸入空気量(又は吸気管圧力)とエンジン回転速度に応じた負荷目標空燃比AFbaseを算出する。この負荷目標空燃比AFbaseを算出するための関数式又はマップは、下流側排ガスセンサ25の出力O2out(検出空燃比)が定常的にほぼ最終目標値O2targ (最終的な下流側目標空燃比)と等しいときに、上流側目標空燃比AFref を負荷目標空燃比AFbaseに維持すれば、下流側排ガスセンサ25の出力O2outが最終目標値O2targ 付近に維持されるように予め試験等によって設定されている。
【0024】
また、目標空燃比補正部44は、下流側排ガスセンサ25の出力O2outに基づいて、後述する中間目標値O2midtargを用いて上流側目標空燃比AFref の補正量AFcompを算出する。そして、この補正量AFcompを負荷目標空燃比AFbaseに加算することにより、上流側目標空燃比AFref を求め、この上流側目標空燃比AFref を燃料噴射量フィードバック制御部41に入力する。
AFref =AFbase+AFcomp
尚、上式に代えて、次式により上流側目標空燃比AFref を算出しても良い。
AFref =(1+AFcomp)×AFbase
【0025】
この場合、目標空燃比計算部42(負荷目標空燃比計算部43と目標空燃比補正部44)が、特許請求の範囲でいうサブフィードバック制御手段に相当する役割を果たす。
【0026】
次に、目標空燃比補正部44で中間目標値O2midtargを設定して上流側目標空燃比AFref の補正量AFcompを算出する方法を図3に基づいて説明する。
制御対象を燃料噴射量フィードバック制御部41、燃料噴射弁20、エンジン11、触媒23、下流側排ガスセンサ25等からなる系とする。目標空燃比補正部44は、時間遅れ要素(1/z)45、中間目標値計算部46、減衰率設定部47及び補正量計算部48から構成され、時間遅れ要素45は、前回演算時の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i-1) を中間目標値計算部46に入力する。
【0027】
一方、中間目標値計算部46は、特許請求の範囲でいう中間目標値設定手段に相当する役割を果たし、前回演算時の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i-1) と最終目標値O2targ(i)(最終的な下流側目標空燃比)とに基づいて中間目標値O2midtarg(i) を下記の(1)式を用いて計算する。これにより、前回演算時の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i-1) と最終目標値O2targ(i)との間に中間目標値O2midtarg(i) が設定される。
Figure 0003775570
【0028】
上式において、O2targ(i)は今回の最終目標値、O2out(i-1) は前回演算時の下流側排ガスセンサ25の出力である。また、Kdec は減衰率であり、減衰率設定部47で、図5の減衰率設定マップを用いて、下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i) に応じて0<Kdec <1の範囲内で設定される。
【0029】
図5の減衰率設定マップの特性は、図4に示す下流側排ガスセンサ25(酸素センサ)のZ型の出力特性の影響を補償するために、理論空燃比付近(0.3〜0.7V)の領域では、空燃比の変化に対する下流側排ガスセンサ25の出力電圧の変化が急峻であることを考慮して、減衰率Kdec が最大値(例えば0.98)に設定され、0.7V以上のリッチ域や、0.3V以下のリーン域では、空燃比の変化に対する下流側排ガスセンサ25の出力電圧の変化が小さいことを考慮して、リッチ、リーンの度合が強くなるほど、減衰率Kdec が小さくなるように設定されている。尚、減衰率設定部47は、特許請求の範囲でいう制御補正手段に相当する役割を果たす。
【0030】
以上のようにして、減衰率設定部47において、下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i) に応じて設定した減衰率Kdec を用いて中間目標値計算部46で中間目標値O2midtarg(i) を計算した後、この中間目標値O2midtarg(i) を用いて次式により上流側目標空燃比AFref の補正量AFcomp(i) を算出する。
【0031】
Figure 0003775570
【0032】
上式において、Fsat は図6に示すような特性の飽和関数であり、補正量AFcomp(i) は、K1 ×ΔO2(i)+K2 ×Σ(ΔO2(i))の演算値を上限ガード値と下限ガード値でガード処理して求められる。上式において、K1 は比例ゲイン、K2 は積分ゲインである。K1 ×ΔO2(i)は比例項であり、中間目標値O2midtarg(i) と下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i) との偏差ΔO2(i)が大きくなるほど、大きくなる。また、K2 ×ΣΔO2(i)は積分項であり、中間目標値O2midtarg(i) と下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i) との偏差ΔO2(i)の積算値が大きくなるほど、大きくなる。補正量AFcomp(i) は、比例項と積分項を加算して求めた値を上限ガード値と下限ガード値でガード処理して求められる。
【0033】
以上説明した目標空燃比補正部44による補正量AFcomp(i) の算出は、図7の補正量算出プログラムに従って行われる。本プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ101で、現在の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i) を読み込み、次のステップ102で、図5の減衰率設定マップ(又は数式)を用いて、現在の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i) に応じて減衰率Kdec を設定する。
【0034】
そして、次のステップ103で、この減衰率Kdec を用いて前回演算時の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i-1) と最終目標値O2targ(i)(最終的な下流側目標空燃比)とに基づいて中間目標値O2midtarg(i) を前記(1)式を用いて算出する。これにより、前回演算時の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i-1) と最終目標値O2targ(i)との間に中間目標値O2midtarg(i) が設定される。
【0035】
この後、ステップ104に進み、中間目標値O2midtarg(i) と下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i) との偏差ΔO2(i)を算出する。
ΔO2(i)=O2midtarg(i) −O2out(i)
そして、次のステップ105で、前回までの偏差ΔO2 の積算値ΣΔO2(i-1)に今回の偏差ΔO2(i)を積算して、今回までの偏差ΔO2 の積算値ΣΔO2(i)を求める。
ΣΔO2(i)=ΣΔO2(i-1)+ΔO2(i)
【0036】
この後、ステップ106に進み、上流側目標空燃比AFref の補正量AFcomp(i) を次式により算出する。
AFcomp(i) =Fsat (K1 ×ΔO2(i)+K2 ×ΣΔO2(i))
これにより、上流側目標空燃比AFref の補正量AFcomp(i) は比例項(K1 ×ΔO2(i))と積分項(K2 ×ΣΔO2(i))を加算して求めた値を上限ガード値と下限ガード値でガード処理して求められる。
そして、次のステップ107で、今回のΔO2(i)とΣΔO2(i)をそれぞれ前回のΔO2(i-1)とΣΔO2(i-1)として記憶して本プログラムを終了する。
【0037】
エンジン運転中は、吸入空気量(又は吸気管圧力)とエンジン回転速度に応じた負荷目標空燃比AFbaseを算出し、上記図6の補正量算出プログラムで算出した補正量AFcompを負荷目標空燃比AFbaseに加算することで、上流側目標空燃比AFref を求め、上流側排ガスセンサ24の検出空燃比AFが上流側目標空燃比AFref に収束するように燃料噴射時間Tinj (燃料噴射量)を算出する。
【0038】
以上説明した本実施形態(1)によれば、排ガスの空燃比が理論空燃比付近の領域では、空燃比の変化に対する下流側排ガスセンサ25の出力電圧の変化が急峻であることを考慮して、減衰率Kdec を最大値に設定したので、空燃比の変化に対して中間目標値O2midtarg(i) の更新量が大きくなりすぎることを回避することができて、ハンチングを防止でき、理論空燃比付近のサブフィードバック制御の安定性を向上できる。しかも、リッチ域やリーン域では、空燃比の変化に対する下流側排ガスセンサ25の出力電圧の変化が小さいことを考慮して、リッチ、リーンの度合が強くなるほど、減衰率Kdec を小さくするように設定したので、中間目標値O2midtarg(i) の更新量を実際の空燃比の変化量に対応するように大きくすることができ、空燃比の変化に対してサブフィードバック制御を応答良く追従させることができ、リッチ域やリーン域での排気エミッションを低減することができる。
【0039】
従って、本実施形態(1)によれば、下流側排ガスセンサ25の出力特性がリニアな特性でなくても、その出力特性の影響を補償する適正な減衰率Kdec に変更することで、応答性と安定性とを両立させたサブフィードバック制御を行うことができ、下流側排ガスセンサ25の出力特性に左右されない安定した排ガス浄化性能を確保することができる。
【0040】
尚、本実施形態(1)では、減衰率Kdec を変更することで、中間目標値O2midtarg(i) の更新量を変更するようにしたが、これ以外の方法で中間目標値O2midtarg(i) の更新量を変更するようにしても良い。
或は、下流側排ガスセンサ25の出力に応じて中間目標値O2midtarg(i) の更新周期(更新速度)を変更するようにしても良い。
【0041】
[実施形態(2)]
上記実施形態(1)では、下流側排ガスセンサ25の出力電圧に応じて減衰率Kdec を変更することで、下流側排ガスセンサ25の出力特性を補償するようにしたが、図8及び図9に示す本発明の実施形態(2)では、下流側排ガスセンサ25の出力に応じて比例・積分ゲインK1 ,K2 を変更することで、下流側排ガスセンサ25の出力特性を補償するようにしている。
【0042】
図8の比例ゲインK1 (積分ゲインK2 )を変更するマップの特性は、理論空燃比付近(0.3〜0.7V)の領域では、空燃比の変化に対する下流側排ガスセンサ25の出力電圧の変化が急峻であることを考慮して、比例ゲインK1 (積分ゲインK2 )が最小値に設定され、0.7V以上のリッチ域や、0.3V以下のリーン域では、空燃比の変化に対する下流側排ガスセンサ25の出力電圧の変化が小さいことを考慮して、リッチ、リーンの度合が強くなるほど、比例ゲインK1 (積分ゲインK2 )が大きくなるように設定されている。
【0043】
本実施形態(2)で用いる図9の補正量算出プログラムは、前記実施形態(1)で説明した図6の補正量算出プログラムのステップ102の処理をステップ102aの処理に変更したものであり、それ以外の各ステップの処理は同じである。図9の補正量算出プログラムでは、ステップ101で、現在の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i) を読み込んだ後、ステップ102aに進み、現在の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i) に応じて、図8のマップにより比例・積分ゲインK1 ,K2 を変更する。そして、前回演算時の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i-1) と最終目標値O2targ(i)とに基づいて中間目標値O2midtarg(i) を算出した後、上記ステップ102aで設定した比例・積分ゲインK1 ,K2 を用いて、上流側目標空燃比AFref の補正量AFcomp(i) を算出する(ステップ103〜106)。
【0044】
尚、本実施形態(2)では、減衰率Kdec は、演算処理の簡略化のために、固定値としても良い。また、中間目標値O2midtarg(i) を、前回演算時の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i-1) と最終目標値O2targ(i)とをパラメータとする二次元マップにより算出するようにしても良い。
【0045】
以上説明した本実施形態(2)では、下流側排ガスセンサ25の出力に応じて比例・積分ゲインK1 ,K2 を変更することで、下流側排ガスセンサ25の出力特性の影響を補償する適正な比例・積分ゲインK1 ,K2 に変更することができ、それによって、応答性と安定性とを両立させたサブフィードバック制御を行うことができ、下流側排ガスセンサ25の出力特性に左右されない安定した排ガス浄化性能を確保することができる。
【0046】
[実施形態(3)]
図10及び図11に示す本発明の実施形態(3)では、下流側排ガスセンサ25の出力に応じて制御範囲(上限ガード値と下限ガード値)を変更することで、下流側排ガスセンサ25の出力特性を補償するようにしている。
【0047】
図10の制御範囲を変更するマップの特性は、理論空燃比付近(0.3〜0.7V)の領域では、空燃比の変化に対する下流側排ガスセンサ25の出力電圧の変化が急峻であることを考慮して、制御範囲(上限ガード値と下限ガード値)の幅が最も狭くなるように設定され、0.7V以上のリッチ域や、0.3V以下のリーン域では、空燃比の変化に対する下流側排ガスセンサ25の出力電圧の変化が小さいことを考慮して、リッチ、リーンの度合が強くなるほど、制御範囲(上限ガード値と下限ガード値)の幅が広くなるように設定されている。
【0048】
本実施形態(3)で用いる図11の補正量算出プログラムは、前記実施形態(1)で説明した図6の補正量算出プログラムのステップ102の処理をステップ102bの処理に変更したものであり、それ以外の各ステップの処理は同じである。図11の補正量算出プログラムでは、ステップ101で、現在の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i) を読み込んだ後、ステップ102bに進み、現在の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i) に応じて、図10のマップにより制御範囲(上限ガード値と下限ガード値)を変更する。そして、前回演算時の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i-1) と最終目標値O2targ(i)とに基づいて中間目標値O2midtarg(i) を算出した後、上記ステップ102bで設定した制御範囲(上限ガード値と下限ガード値)を用いて、上流側目標空燃比AFref の補正量AFcomp(i) をガード処理する(ステップ103〜106)。
【0049】
尚、本実施形態(3)では、前記実施形態(2)と同じく、減衰率Kdec は、演算処理の簡略化のために、固定値としても良い。また、中間目標値O2midtarg(i) を、前回演算時の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i-1) と最終目標値O2targ(i)とをパラメータとする二次元マップにより算出しても良い。
【0050】
以上説明した本実施形態(3)では、下流側排ガスセンサ25の出力に応じて制御範囲(上限ガード値と下限ガード値)を変更することで、下流側排ガスセンサ25の出力特性の影響を補償する適正な制御範囲に変更することができ、それによって、応答性と安定性とを両立させたサブフィードバック制御を行うことができ、下流側排ガスセンサ25の出力特性に左右されない安定した排ガス浄化性能を確保することができる。
尚、下流側排ガスセンサ25の出力に応じてサブフィードバック制御の制御周期(補正量AFcomp(i) の演算周期)を変更するようにしても良い。
【0051】
[実施形態(4)]
本発明の実施形態(4)では、図12に示すマップを用いて、下流側排ガスセンサ25の出力を該下流側排ガスセンサ25の出力特性に応じてリニアライズ化して空燃比検出値を求め、この空燃比検出値を用いて、中間目標値を算出するようにしている。このようにすれば、下流側排ガスセンサ25の出力特性(空燃比の検出特性)がZ特性であっても、その出力特性をリニアな特性に変換した空燃比検出値を用いて中間目標値を算出することができるので、下流側排ガスセンサ25の出力特性の影響を補償して、応答性と安定性とを両立させたサブフィードバック制御を行うことができ、下流側排ガスセンサ25の出力特性に左右されない安定した排ガス浄化性能を確保することができる。
【0052】
[実施形態(5)]
本発明の実施形態(5)では、下流側排ガスセンサ25の過去の出力と最終目標値とに基づいて設定した中間目標値を、下流側排ガスセンサ25の出力特性に応じて補正し、補正後の中間目標値を用いてサブフィードバック制御を実行するようにしている。このようにしても、下流側排ガスセンサ25の出力特性の影響を補償して、応答性と安定性とを両立させたサブフィードバック制御を行うことができ、下流側排ガスセンサ25の出力特性に左右されない安定した排ガス浄化性能を確保することができる。
【0053】
以上説明した各実施形態(1)〜(5)は、適宜組み合わせて実施するようにしても良い。
尚、下流側排ガスセンサ25は、酸素センサに代えて、空燃比センサ(リニアA/Fセンサ)を用いても良く、また、上流側排ガスセンサ24は、空燃比センサ(リニアA/Fセンサ)に代えて、酸素センサを用いても良い。
【0054】
また、前記各実施形態では、中間目標値O2midtarg(i) を算出する際に前回演算時の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i-1) を用いたが、所定演算回数前の下流側排ガスセンサ25の出力O2out(i-n) を用いても良い。
【0055】
その他、本発明は、中間目標値O2midtarg(i) の算出式や補正量AFcomp(i) の算出式を適宜変更しても良い等、種々変更して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態(1)を示すエンジン制御システム全体の概略構成図
【図2】ECUのCPUの演算処理機能で実現する空燃比制御手段の機能を示すブロック図
【図3】空燃比フィードバック制御システム全体の機能を示す機能ブロック図
【図4】下流側排ガスセンサ(酸素センサ)の出力特性を示す図
【図5】下流側排ガスセンサの出力に応じて減衰率Kdec を設定するマップを概念的に示す図
【図6】補正量AFcomp(i) を算出する飽和関数を説明する図
【図7】実施形態(1)の補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図8】下流側排ガスセンサの出力に応じて比例ゲインK1 (積分ゲインK2 )を設定するマップを概念的に示す図
【図9】実施形態(2)の補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図10】下流側排ガスセンサの出力に応じて制御範囲を設定するマップを概念的に示す図
【図11】実施形態(3)の補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図12】下流側排ガスセンサの出力を該下流側排ガスセンサの出力特性に応じてリニアライズ化するためのマップを概念的に示す図
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、20…燃料噴射弁、22…排気管、23…触媒、24…上流側排ガスセンサ、25…下流側排ガスセンサ、28…ECU(空燃比フィードバック制御手段,サブフィードバック制御手段,中間目標値設定手段)、31…CPU、40…空燃比制御手段、41…燃料噴射量フィードバック制御部(空燃比フィードバック制御手段)、42…目標空燃比計算部(サブフィードバック制御手段)、43…負荷目標空燃比計算部、44…目標空燃比補正部、45…時間遅れ要素(1/z)、46…中間目標値計算部(中間目標値設定手段)、47…減衰率設定部(制御補正手段)、47…補正量計算部。

Claims (5)

  1. 排ガス浄化用の触媒の上流側と下流側でそれぞれ排ガスの空燃比又はリッチ/リーンを検出する上流側排ガスセンサ及び下流側排ガスセンサと、
    前記上流側排ガスセンサの検出空燃比が上流側目標空燃比となるように燃料噴射量をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御手段と、
    前記下流側排ガスセンサの過去の検出空燃比と現在制御されるべき最終的な下流側目標空燃比とに基づいて当該過去の検出空燃比と最終的な下流側目標空燃比との間に位置する中間目標値を設定する中間目標値設定手段と、
    前記下流側排ガスセンサの検出空燃比と前記中間目標値とに基づいて前記上流側目標空燃比を補正するサブフィードバック制御を行うサブフィードバック制御手段と
    を備えた内燃機関の空燃比制御装置において、
    前記下流側排ガスセンサの出力に応じて、前記中間目標値の更新量、更新速度、前記サブフィードバック制御の制御ゲイン、制御周期、制御範囲のうちの少なくとも1つを変更する制御補正手段を備えていることを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
  2. 前記中間目標値設定手段は、前記下流側排ガスセンサの過去の検出空燃比と最終的な下流側目標空燃比との偏差に減衰率を乗算した値と、最終的な下流側目標空燃比とを加算して前記中間目標値を求め、
    前記制御補正手段は、前記下流側排ガスセンサの出力に応じて前記減衰率を変更することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  3. 前記サブフィードバック制御手段は、前記下流側排ガスセンサの検出空燃比と前記中間目標値との偏差に対する比例積分動作で演算した値を所定の制御範囲内に制限することで前記上流側目標空燃比の補正量を求め、
    前記制御補正手段は、前記下流側排ガスセンサの出力に応じて前記比例積分動作のゲイン及び/又は前記制御範囲を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  4. 排ガス浄化用の触媒の上流側と下流側でそれぞれ排ガスの空燃比又はリッチ/リーンを検出する上流側排ガスセンサ及び下流側排ガスセンサと、
    前記上流側排ガスセンサの検出空燃比が上流側目標空燃比となるように燃料噴射量をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御手段と、
    前記下流側排ガスセンサの過去の検出空燃比と現在制御されるべき最終的な下流側目標空燃比とに基づいて当該過去の検出空燃比と最終的な下流側目標空燃比との間に位置する中間目標値を設定する中間目標値設定手段と、
    前記下流側排ガスセンサの検出空燃比と前記中間目標値とに基づいて前記上流側目標空燃比を補正するサブフィードバック制御を行うサブフィードバック制御手段と
    を備えた内燃機関の空燃比制御装置において、
    前記下流側排ガスセンサの出力を該下流側排ガスセンサの出力特性に応じてリニアライズ化して空燃比検出値を求めるリニアライズ手段を備え、
    前記中間目標値設定手段は、前記リニアライズ手段でリニアライズ化した空燃比検出値を用いて前記中間目標値を算出することを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
  5. 排ガス浄化用の触媒の上流側と下流側でそれぞれ排ガスの空燃比又はリッチ/リーンを検出する上流側排ガスセンサ及び下流側排ガスセンサと、
    前記上流側排ガスセンサの検出空燃比が上流側目標空燃比となるように燃料噴射量をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御手段と、
    前記下流側排ガスセンサの過去の検出空燃比と現在制御されるべき最終的な下流側目標空燃比とに基づいて当該過去の検出空燃比と最終的な下流側目標空燃比との間に位置する中間目標値を設定する中間目標値設定手段と、
    前記下流側排ガスセンサの検出空燃比と前記中間目標値とに基づいて前記上流側目標空燃比を補正するサブフィードバック制御を行うサブフィードバック制御手段と
    を備えた内燃機関の空燃比制御装置において、
    前記下流側排ガスセンサの出力特性に応じて前記中間目標値を補正する制御補正手段を備えていることを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
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