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JP3775447B2 - ビニルエステル樹脂組成物及びこれを用いたコンクリートライニング材 - Google Patents

ビニルエステル樹脂組成物及びこれを用いたコンクリートライニング材 Download PDF

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JP3775447B2
JP3775447B2 JP24526896A JP24526896A JP3775447B2 JP 3775447 B2 JP3775447 B2 JP 3775447B2 JP 24526896 A JP24526896 A JP 24526896A JP 24526896 A JP24526896 A JP 24526896A JP 3775447 B2 JP3775447 B2 JP 3775447B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟性、乾燥性および硬化性に優れ、しかも耐水性、耐食性も合わせもつことから、コンクリート等の基材保護および補修用ライニング材として好適なビニルエステル樹脂組成物及びこれを用いたコンクリートライニング材に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸、特に、アクリル酸あるいはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシアクリレート(ビニルエステル)及びこれと共重合可能な単量体を含有するビニルエステル組成物は、繊維強化プラスチック、接着剤等として使用されてきた。しかしながら、従来のビニルエステル組成物を、下塗剤、上塗剤、含浸剤、注型材料、ポリマーコンクリート用結合材あるいは被覆材として使用する際には色々な問題が生じていた。
【0003】
例えば、従来のビニルエステル組成物における共重合可能な単量体としては、一般にスチレンが用いられているが、ビニルエステルとスチレンの混合物を、有機過酸化物を用いて常温で硬化させる場合、空気中の酸素により、表面の硬化が阻害され、いつまでもベタツキが残る欠点があった。
【0004】
この欠点を解消するため、ビニルエステル組成物にパラフィンワックス等のワックスを添加し、表面にワックスの膜を作り、酸素を遮断する方法があるが、ビニルエステル組成物を重ね塗りしたとき表面にワックスの膜があるため剥離しやすいという問題がある。
下塗剤として用いられないことや、外気温、風等により、ワックスの浮きムラが生じ、上塗剤、含浸剤、注型剤、被覆材あるいは結合材として用いた場合、表面にベタツキと乾燥のムラが生じる。更に、この混合物を硬化させた場合、十分に可とう性を示すことが無いので、少しのひずみで、膜にクラックを生じるなどの欠点があった。
【0005】
この乾燥性を改良する試みが、特開平2−135208号公報に示されている。これによればエチレン性不飽和単量体成分としてジシクロペンタジエンのメタクリル酸又はアクリル酸誘導体を用い、さらに、ビニルエステルの合成時に二塩基酸をの導入することにより高靭性化と乾燥性を高めているが、ジシクロペンタジエンのメタクリル酸又はアクリル酸誘導体の分子量が比較的大きいため、ビニルエステル樹脂組成物中の単量体に含まれる不飽和基量が少なくなり、硬化性が低下するという欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、柔軟性、伸び、硬度及び耐食性、硬化性、乾燥性に優れたビニルエステル樹脂組成物を提供するものである。
本発明はまた、上記のビニルエステル樹脂組成物を用いたコンクリートライニング材を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)水酸基価が35〜400のポリアルキレングリコール、(B)分子中に不飽和結合を含む脂環式構造を有する不飽和二塩基酸又はこれらの酸無水物を5〜100重量%含む不飽和二塩基酸或いは飽和二塩基酸、(C)エポキシ樹脂及び(D)不飽和一塩基酸を反応させて得られる不飽和エステルであって、(C)成分のエポキシ基1当量に対して、(A)成分のモル数をaと(B)成分のモル数をbとしたときに、(A)成分と(B)成分をa/bで1/1.8〜1/2.5になるように配合して120〜200℃で反応させて末端カルボン酸半エステル化物(X)を製造し、次いで(C)成分を数2が
【数2】
Figure 0003775447
になるように配合して90〜130℃で付加反応させ、次いで、(D)成分のカルボキシル基が0.2〜0.8当量になるように配合して90〜130℃で付加反応させて得られる不飽和エステル(I)10〜80重量%並びにエチレン性不飽和単量体(II)90〜20重量%を含有してなるビニルエステル樹脂組成物に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の不飽和エステル(I)について説明する。
本発明における(A)成分のポリアルキレングリコールは、アルキレングリコールの縮重合物又はアルキレンオキサイドの付加重合物であり、ビスフェノールを共重合したものであってよい。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノールへのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。ビスフェノールへのアルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイド成分はビスフェノールの2個の水酸基にそれぞれ3個以上結合していることが好ましい。
(A)成分のポリアルキレングリコールは、柔軟性および硬化性の点から水酸基価が35〜400のものが好ましく、50〜300までの範囲のものが特に好ましい。また、これらのポリアルキレングリコールの種類については、所望の耐食性、耐水性と経済性の点から適宜選択され、一種で又は二種以上併用して用いられる。
【0011】
本発明における(B)のうち、不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メタコン酸、塩素化マレイン酸等のα,β−不飽和二塩基酸及びこれらの酸無水物、テトラブロムフタル酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ハイミック酸等の分子中に不飽和基を含む脂環式構造を有する不飽和二塩基酸及びこれらの酸無水物等がある。本発明における(B)のうち、飽和二塩基酸としては、、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、モノ−、ジ−又はトリ−クロルフタル酸、ヘット酸、アジピン酸、トリメリット酸、こはく酸等及びこれらの酸無水物が挙げられる。(B)成分としては、好ましくは酸無水物が使用される。
【0012】
乾燥性を向上させるためには、(B)成分のうち5〜100重量%は分子中に不飽和基を含む脂環式構造を有する不飽和二塩基酸又はこれらの酸無水物であることが好ましく、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸または無水ハイミック酸を使用することが最も好ましい。α,β−不飽和二塩基酸及びこれらの酸無水物は、多く使用すると膜が脆くなるため(B)成分中0〜10重量%の範囲で使用されることが好ましい。(B)成分は、その他適宜、飽和二塩基酸を使用して全体を100重量%とされる。
【0013】
本発明における(C)エポキシ樹脂としては1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば、特に制限はなく、例えば化1〔一般式(1)〕
【化1】
Figure 0003775447
〔式中、xは0〜15の範囲の整数である〕
で表されるものが用いられる。
市販されているものとしては、シェル化学社製エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、旭化成工業製AER−664H、AER−331、AER−337、ダウケミカル社製D.E.R.330、D.E.R.660、D.E.R.664などがある。
【0014】
また、上記エポキシ樹脂の水素原子の一部をハロゲン(例えば臭素)で置換したタイプも使用できる。この種の市販品の例としては、東都化成(株)エポトートYDB−400、YDB−340、住友化学製スミエポキシESB−340、ESB−400、ESB−500、RSB−700、ダウケミカル社製DER−542、DER−511、DER−580、油化シェル社製1045、1050、1046、DX−248などがある。
【0015】
また、化2〔一般式(2)〕
【化2】
Figure 0003775447
〔式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、xは0〜15の範囲の整数である〕
で示されるものを用いることもできる。
市販されているものとしては、ダウケミカル社製D.E.N.431、D.E.N.438、シェル化学社製エピコート152、エピコート154、チバ社製EPN1138などがある。
【0016】
また、ユニオンカーバイド社製ERL4211、チバガイギー社製CY208、CY221、CY350、XB2615、CY192、CY184等も用いられる。
これらのエポキシ樹脂は、単独で又は二種以上併用することができる。
【0017】
本発明における(D)不飽和一塩基酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕−4−デセン−8又は9残基と不飽和二塩基酸残基を構成要素として含む部分エステル化カルボン酸などを用いることができる。
【0018】
上記の部分エステル化カルボン酸の例としては、8又は9−ヒドロキシトリシクロデセン−4−〔5.2.1.02,6〕を1.00〜1.20モルに対して無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和二塩基酸1モルを不活性ガス気流下で70〜150℃で加熱して得られる不飽和二塩基酸モノエステルがある。また、トリシクロデカジエン−4,8−〔5.2.1.02,6〕にマレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和二塩基酸を硫酸、ルイス酸などの触媒の存在下で付加して得られる不飽和二塩基酸モノエステルを用いることもできる。
これらの化合物の構造式は、下記化3〔一般式(3)〕で表される。
【化3】
Figure 0003775447
(ただし、式中R4は、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和二塩基酸から2個のカルボキシル基を除いた残基である)
【0019】
本発明における不飽和エステル(I)を構成する(A)〜(D)成分の配合量は、前記したとおりであるが、さらに詳しくは次の通りである。
(C)成分のエポキシ基1当量に対して、(A)成分のモル数をaと(B)成分のモル数をbとしたときに前記数2の条件を満足することが好ましく、数3
【数3】
Figure 0003775447
の条件を満足することがさらに好ましい。また、(C)成分のエポキシ基1当量に対して、(D)成分のカルボキシル基が0.2〜0.8当量になるように配合することが好ましく、さらに、0.3〜0.6当量になるように配合することが好ましい。さらに、(A)成分と(B)成分はa/bで1/1.8〜1/2.5になるように配合することが好ましく、さらに、1/2〜1/2.3になるように配合することが好ましい。(A)成分が少なすぎると柔軟性に乏しくなる傾向があり、逆に多すぎると樹脂骨格中の不飽和基量が少なくなるため、十分な強度、硬化性が得られなくなる傾向がある。また、(B)成分が少なすぎると、(C)成分との反応物が少くなってしまい未反応成分として残存するため柔軟性、硬度に乏しくなる傾向がある。
【0020】
(C)成分のエポキシ基と(A)成分の水酸基の総量αとし、(B)成分と (D)成分のカルボキシル基の総量をβとしたとき、α/βが当量比で1.1/1〜1/1.1になるように配合することが好ましく、さらに、1.05/1〜1/1になるように配合することが特に好ましい。この値が大きすぎたり小さすぎるとビニルエステル樹脂組成物の硬化物の物性が一般に低下しやすくなる。
【0021】
不飽和エステル(I)の合成は、上記(A)、(B)、(C)及び(D)の各成分を60〜200℃の温度でエステル化反応させることにより行うことができる。このエステル化反応に際しては、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、ピリジニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、トリエチルアミン、ジメチルアニリンなどの第3級アミン、塩化第二鉄、水酸化リチウム、塩化第二スズなどのエポキシ樹脂の開環付加反応を触媒するエステル化触媒を用いて反応時間を短縮することもできる。
不飽和エステル(I)の合成の終点は、(B)および(D)成分のカルボキシル基に対応する固形分酸価を測定することにより調べることができる。この酸価は、好ましくは50以下、より好ましくは15以下とされる。また(B)成分において酸無水物を用いた場合、赤外分光分析で、酸無水物の特異吸収である波数1760cm-1および1820cm-1付近のピークが消失しているのが好ましい。
【0022】
さらに、柔軟性、乾燥性、硬化性、機械的特性に優れたものとするため、不飽和エステル(I)の製造は以下のとおりとするのが好ましい。すなわち、まず (A)成分と(B)成分を配合して反応させて末端カルボン酸半エステル化物 (X)を製造し、次いで(C)成分を配合して付加反応させ、次いで、(D)成分を配合して付加反応させる。この場合、(A)成分と(B)成分の反応は、120〜200℃の範囲で行うことが好ましく、特に130〜180℃の範囲で行うことが好ましい。(C)成分が存在する反応は、前記したエステル化触媒の存在下に行うことが好ましく、反応温度は90〜130℃、特に100〜120℃とすることが好ましい。エステル化触媒はエポキシ樹脂に対して0.1〜0.5重量%使用することが好ましい。
【0023】
エチレン性不飽和単量体(II)としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、t−ブチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、アクリロニトリル、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多価アルコールのアクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の多価アルコールのメタクリル酸エステル等がある。
【0024】
前記不飽和エステル(I)10〜80重量%に対して上記エチレン性不飽和単量体(II)90〜20重量%配合されることが好ましく、前記不飽和エステル (I)30〜70重量%に対して上記エチレン性不飽和単量体(II)70〜30重量%の範囲で配合することがさらに好ましい。不飽和エステル(I)の含有量が少なすぎと、柔軟性、乾燥性等の特性が低下する傾向があり、不飽和エステル(I)の含有量が多すぎるとビニルエステル樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて作業性に乏しくなる傾向がある。
【0025】
本発明の樹脂組成物をコンクリートライニング材として用いる場合、繊維補強材、骨材、充填材、顔料、染料などが添加される。繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、アミド、アラミド、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、炭素、アルミなどの金属、セラミックなどの無機繊維などがある。これらの繊維はマット状、朱子織り、不織布状などいずれの形態をとっていても良い。また、ガラス長繊維であるロービングを5〜100mmにカットしたチョップドストランドを補強材として用いることができる。これら繊維補強材は不飽和エステル(I)とエチレン性不飽和単量体(II)の総量に対して0〜80重量%の範囲で用いられる。80重量%を超えるとライニング材として要求される耐食性、強度が発現しにくくなる。
【0026】
また、骨材、充てん材としては、硅砂、川砂、寒水石、ガラスおよびこれらの微粉末、さらに炭酸カルシウム粉、クレー、アルミナ粉、タルク、シリカ粉末、硫酸バリウム、焼石膏、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、雲母などが挙げられる。これら骨材、充てん材は、不飽和エステル(I)とエチレン性不飽和単量体(II)の総量100重量部に対して0〜1000重量部用いることができる。1000重量部を超えると、樹脂組成物のバインダー (粘着剤)としての作用が低くなってしまう。
【0027】
本発明の樹脂組成物は硬化剤を含有しても良く、また、コンクリートライニング材として用いるには、不飽和エステル(I)とエチレン性不飽和単量体(II)の総量に対して0.01〜10重量%含有することが好ましい。
硬化剤とは光増感剤、有機過酸化物が挙げられるが、例えば、パーオキシエステル類、ハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類など公知のものが挙げられる。
また、該有機過酸化物を分解し、活性ラジカルの発生を促すため、促進剤が添加できる。例えば、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、バナジウム塩などの金属石けん類、ジメチルアニリン、ジメチルパラトルイジンなどの3級アミン類やメルカプタン類などがある。これらは硬化時間、温度により添加量は増減するが、不飽和エステル(I)とエチレン性不飽和単量体(II)の総量に対して0.01〜5重量%の範囲で添加される。
これら硬化剤と促進剤は過酸化ベンゾイル/3級アミン、メチルエチルケトンパーオキサイド及び/又はアセチルアセトンパーオキサイド/金属石けんの組み合わせのものが一般的に用いられる。
【0028】
本発明の樹脂組成物の製造および貯蔵時の重合抑制のため、公知の重合禁止剤を添加できる。例えば、ハイドロキノン、パラベンゾキノン、モノターシャリブチルハイドロキノン、1,4−ハイドロキノン、1,4−ナフトキノン、フェノチアジンなどが挙げられる。
また本発明の樹脂組成物は、乾燥性に優れるが、より高い乾燥性を得るため、ワックス類を添加できる。例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロスタイリンワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸が挙げられる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。以下に使用される部および%とは、断わりのない限り、それぞれ重量部および重量%である。
(合成例1)不飽和エステル(A)の作製
撹拌機、冷却器、温度計、滴下漏斗を備えつけた2リットル4つ口フラスコに、サンニックスPP−1000(三洋化成製、ポリプロピレングリコール、水酸基価111)1000g、無水こはく酸95g、テトラヒドロ無水フタル酸144gを仕込み、150℃で1時間加熱した。そのフラスコ内容物を少量とり赤外分光分析した結果、酸無水物に由来する1760cm-1および1820cm-1付近の吸収ピークは消滅していた。次いでエピ−ビス型エポキシ樹脂R−140(三井石油化学(株)製、エポキシ当量185)720g、メタクリル酸160g、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド2gおよびハイドロキノン0.6gを仕込み、発熱に注意しながら100℃まで昇温し、その温度で16時間加熱した結果、酸価14の不飽和エステル(A)を得た。
【0030】
(合成例2)不飽和エステル(B)の作製
合成例1と同じ仕様の2リットル4つ口フラスコに、サンニックスPP−1000:540g、サンニックスPEG−400(三洋化成(株)製、ポリエチレングリコール、水酸基価278)220g、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸310gを仕込み、合成例1と同様に150℃で1時間加熱した。このフラスコ内容物を赤外分光分析したが、酸無水物の吸収ピークは消滅していた。次いで、合成例1で用いたものと同じエポキシ樹脂R−140:770gとトリメチルベンジルアンモニウムクロライド2gを仕込み100℃で3時間加熱し、酸価10となったことを確認してから、同温度でハイドロキノン0.5gを添加し溶解してから、メタクリル酸170gを30分間かけて滴下し、100℃のままさらに6時間加熱した結果、酸価12の不飽和エステル(B)を得た。
【0031】
(合成例3)不飽和エステル(C)の作製
合成例1と同じ仕様の2リットル4つ口フラスコに、サンニックスPP−2000(三洋化成製、ポリプロピレングリコール)1300g、無水こはく酸37g、テトラヒドロ無水フタル酸94g、無水マレイン酸24gを仕込み、合成例1と同様に150℃で1時間加熱した。フラスコ内容物を赤外分光分析したが、酸無水物の1760cm-1および1820cm-1付近の特異吸収ピークは消滅していた。
次いで、エピ−ビス型エポキシ樹脂YD−128(東都化成(株)製、エポキシ当量186)465gとトリエチルアミン3gを仕込み105℃で4時間加熱し酸価が7となってから、ハイドロキノン0.5gを添加し、溶解してから、メタクリル酸108gを20分間かけて滴下し、105℃のままさらに6時間加熱した。その結果、酸価8の不飽和エステル(C)を得た。
【0032】
(合成例4)不飽和エステル(D)の作製
合成例1と同じ仕様の2リットル4つ口フラスコに、サンニックスPP−1000を540g、サンニックスPEG−400:220g、無水フタル酸305gを仕込み、合成例2と同条件で加熱し、同じく赤外分光分析で酸無水物の特異吸収ピークが消滅しているのを確認してから、エポキシ樹脂R−140を770gとトリメチルベンジルアンモニウムクロライド2gを仕込み、100℃で3.5時間加熱し、酸価9となってから同温度でハイドロキノン0.5gを添加し、溶解させてからメタクリル酸170gを30分間かけて滴下し、100℃のままさらに6時間加熱した結果、酸価11の不飽和エステル(E)を得た。
【0033】
(比較合成例1)不飽和エステル(Y)の作製
合成例1と同じ仕様の2リットル4つ口フラスコに、エチレングリコール(分子量62)100gとテトラヒドロ無水フタル酸470gを仕込み、150℃で1時間加熱して、赤外分光分析で酸無水物の特異吸収ピークが消滅したのを確認後、合成例1で用いたものと同じエポキシ樹脂R−140を1160gとトリメチルベンジルアンモニウムクロライド2gを仕込み、100℃で3時間加熱し、酸価10となったことを確認してから同温度でハイドロキノン0.5gを添加し、同温度でメタクリル酸260gを30分間かけて滴下し、さらに7時間加熱を続けた。その結果、酸価10の不飽和エステル(D)を得た。
【0034】
(比較合成例2)不飽和エステル(Z)の作製
合成例1と同じ仕様の4つ口2リットルフラスコに、エピ−ビス型エポキシ樹脂YD−901(東都化成(株)製、エポキシ当量475)1700g、メタクリル酸307g、ハイドロキノン0.5gとトリエチルアミン1.5gを仕込み、110℃で12時間加熱した。その結果、酸価4の不飽和エステル(F)を得た。
【0035】
実施例1〜5及び比較例1〜3
以上の合成で得られた不飽和エステル(A)〜(D)、(Y)及び(Z)を表1に示すとおりにエチレン性不飽和単量体に溶解し、樹脂組成物(I)〜(VIII)を得た。
これらの樹脂組成物を用いて下記の通り試験した。試験結果を表1に示す。
【0036】
〈試験方法〉
(1)硬化性:下記の硬化系Aの配合により配合してJIS−K−6901に準拠したポットライフを測定した。
(硬化系A)
・樹脂組成物(I)〜(VIII) 100g
・ジメチルアニリン 0.5g
・50%過酸化ベンゾイルペースト 2.0g
(2)表面乾燥性:上記の硬化系Aの配合により配合してJIS−K−5400に準拠して、ガラス板上に厚さ200μmにアプリケーターで塗布し、タックフリーになるまでの時間を測定した。
【0037】
(3)機械的特性:下記の硬化系Bの配合により配合して下記の<硬化物の作製>の条件で硬化物を作製し、JIS−K−6301に準拠して引張り伸びを測定した。引張り試験条件は下記のとおりである。
(硬化系B)
・樹脂組成物(I)〜(VIII) 100g
・ジメチルアニリン 0.1g
・6%オクテン酸コバルト 0.5g
・メチルエチルケトンパーオキサイド 1.0g
〈硬化物の作製〉
25℃でゲル化後、50℃で3時間アフターキュアーし、厚さ1mmの注型板を作製した。
〈引張り試験条件〉
・試験片の形状:1号ダンベル
・試験速度:10mm/分
【0038】
(4)耐食性(耐水性及び耐アルカリ性):機械的特性の項で示した硬化物を用い、1号ダンベルを水道水および飽和水酸化カルシウム溶液に40℃で10日間浸漬した。その試験片を上記と同じ条件で引張り伸び試験を行い、浸漬前後の引張り伸びの保持率をもって耐水性、耐アルカル性とした。
【0039】
【表1】
Figure 0003775447
【0040】
実施例6〜9及び比較例4〜6
表2に示したペースト配合により配合してコンクリートライニング材を作製した。
得られたコンクリートライニング材をコンクリート歩道板の上に厚さ3mmとなるように、25℃の環境試験室内で塗布した。
塗布後、前記(2)項に示した同じ方法で表面乾燥性を測定した。
さらに、上記の塗布後、48時間放置してトップコート用樹脂組成物を厚さ300μmに、ローラーで塗布した。なお、トップコート用樹脂組成物の配合は次のとおりとした。
〈トップコート用樹脂組成物の配合〉
・樹脂組成物(I) 100部
・125°Fパラフィンワックス 0.2部
・ジメチルアニリン 0.1部
・6%オクテン酸コバルト 0.5部
・メチルエチルケトンパーオキサイド 1.0部
【0041】
以上のように作製したコンクリートライニング試験体を25℃で168時間養生した後で、接着性とヒートサイクル性を試験した。試験結果を表2に示す。
(5)接着性:建研式引張り試験を行い、n=5としてその接着強さを測定し、その平均値を示した。また、破壊または破断形態を目視により観察した。
(6)ヒートサイクル性:恒温機で−30℃で60分間及び90℃で60分間を1サイクルとしたヒートサイクル試験を行い、ライニング層がコンクリート歩道板からはく離するまでのサイクル数を測定した。
【0042】
【表2】
Figure 0003775447
【0043】
表1から示されるとおり、本発明のビニルエステル樹脂組成物は、伸び、耐食性、表面乾燥に優れていることが分かる。
また、表2のとおり該樹脂組成に骨材を配合し塗布したコンクリートライニング特性でも、柔軟性があるためヒートサイクル性に優れ、しかも表面乾燥性に優れていた。しかも、ペースト配合にワックスを配合しなくても表面乾燥性に優れるため、トップコートとの接着性にも優れていた。
【0044】
【発明の効果】
本発明のビニルエステル樹脂組成物は、柔軟性、硬化性、耐食性が優れるため各種の用途に利用できる。例えば、金属、コンクリート、プラスチック等を基材としたコーティング・ライニング材、レジンコート用などの土木・建築材料、また、浄化槽、パネル、波板、化粧版などFRP成形、注型用材料、積層板、接着剤、塗料用ビヒクルなどに使用できる。さらに乾燥性及び硬化物の機械的特性が優れる。本発明のコンクリートライニング材は、耐食性、柔軟性が優れるため建築物屋上やプールの防水ライニング、工場、倉庫等の床や排水溝、上下水道ヒューム管、地下共同溝などの防食ライニング、コンクリート橋脚の亀裂防止ライニング材などとしても好適である。

Claims (2)

  1. (A)水酸基価が35〜400のポリアルキレングリコール、(B)分子中に不飽和結合を含む脂環式構造を有する不飽和二塩基酸又はこれらの酸無水物を5〜100重量%含む不飽和二塩基酸或いは飽和二塩基酸、(C)エポキシ樹脂及び(D)不飽和一塩基酸を反応させて得られる不飽和エステルであって、(C)成分のエポキシ基1当量に対して、(A)成分のモル数をaと(B)成分のモル数をbとしたときに、(A)成分と(B)成分をa/bで1/1.8〜1/2.5になるように配合して120〜200℃で反応させて末端カルボン酸半エステル化物(X)を製造し、次いで(C)成分を数1が
    Figure 0003775447
    になるように配合して90〜130℃で付加反応させ、次いで、(D)成分のカルボキシル基が0.2〜0.8当量になるように配合して90〜130℃で付加反応させて得られる不飽和エステル(I)10〜80重量%並びにエチレン性不飽和単量体(II)90〜20重量%を含有してなるビニルエステル樹脂組成物。
  2. 請求項1記載のビニルエステル樹脂組成物を用いたコンクリートライニング材。
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