JP3773345B2 - 墓石の字彫方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は墓石の表面に文字や絵柄などの模様を蝕刻する墓石の字彫方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石材、ガラス、金属等の表面に文字、図柄等の模様を形成する方法として、サンドブラストを用いた蝕刻方法が多用されている。
この方法は、接着面を有するゴムシートやプラスチックシートなどのマスクシートを石材などの表面に貼り付け、目的とする模様をカッターナイフ等でシートから切り抜いた後、あるいは、模様が切り抜かれたマスクシートを貼り付けた後、サンドブラスト処理を行なう方法である。
【0003】
墓石の表面に文字や家紋等を蝕刻する具体例について説明する。まず、マスクシートに必要な文字や家紋等をプロッタなどで切り抜き、このシートを墓石の表面に貼り付ける。その後、必要な文字や家紋等の部分に強烈なサンドブラストを吹き付け、墓石の表面に必要な文字や家紋等を蝕刻した後、シートを墓石から剥離する。しかし、サンドブラスト時にマスクシートが破損したり、あるいはシートがずれたりする場合があり、これを防止するために、 2枚のゴムシートの間に布シートを挟着させたシートが開示されている(登録実用新案公報第3001828号)。
【0004】
また、サンドブラスト時の破損やシートずれの他に、模様のカッティング性に優れたゴムシートとして、所定のゴム組成およびゴム硬度を有する表面層、下層、粘着層および離型紙を備えたゴムシートが開示されている(特開平6−126892号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、どのようなゴムシートであっても、マスクシートとしてゴムシートのみを用いる場合は、文字や家紋等の大きさや形状によってゴムシートが石材表面からサンドブラスト時に剥がれ易いという問題がある。例えば、細かい島状の模様などの場合、特に剥がれ易くなる。
剥離した場合、その都度サンドブラストの装置を停止して瞬間接着剤などで補修しているが、剥離状態の観察および補修のため、サンドブラスト工程が一時停止することにより作業工数がかかり、生産性が劣るという問題がある。
【0006】
また、サンドブラストの風圧により、ゴムシートと石材表面との間に空気が入り込み、ゴムシートが風船状に膨れ上がるという問題がある。
ゴムシートが風船状に膨れ上がることにより、文字の角などがきれいに蝕刻することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、ゴムシートなどのマスクシートが、サンドブラスト時に剥がれることがなく、サンドブラスト工程を一時停止することなく、細かい模様でもきれいに蝕刻することができる墓石の字彫方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、墓石表面に字または図柄を彫る墓石の字彫方法であって、前記墓石表面にゴムシートを貼り付けて字または図柄部分を切り抜くか、または字または図柄部分を切り抜いたゴムシートを貼り付けるかする工程と、前記切り抜かれた字または図柄部分の少なくともエッジ面に溶液型のクリアラッカーを塗布する工程と、サンドブラストにて前記字または図柄部分を蝕刻する工程とを含むことを特徴とする。
また、前記クリアラッカーを塗布する工程がスプレー塗布によりなされる工程であることを特徴とする。
また、前記クリアラッカーがアクリル系樹脂ラッカーであることを特徴とする。
【0010】
本発明は、アクリル系樹脂塗料を字彫用接着強化剤として用いることにより、石材などの被蝕刻材とゴムシートなどのマスクシートとの接着面間に浸透して接着力を高めることができる。その結果、サンドブラスト時におけるゴムシートの剥離や膨れ上がりを防ぐことができる。
また、特にゴムシート断面を硬化させるのでサンドブラストによる模様の角部のびびりが少なくなり、角部をきれいに蝕刻することができる。
さらに、アクリル系樹脂塗料は、サンドブラストによりあるいはゴムシート剥離時に共に剥離されてしまい蝕刻後にシミや汚れが残らない。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係るアクリル系樹脂塗料は、アクリル酸およびメタクリル酸またはその誘導体、スチレンなどからなる熱可塑性アクリル樹脂を塗膜の主成分とする塗料であり、溶液型のクリアラッカーである。アクリル系樹脂塗料は、後述するサンドブラストにおいて、石材とゴムシートとの接着力を高めることができる。
アクリル系樹脂塗料は熱可塑性アクリル樹脂単体からなる塗膜であっても使用することができるが、他の成分を配合したアクリル系樹脂塗料が好ましい。塗膜を構成する好ましい他の成分としては、ニトロセルローズ、アセチルブチルセルローズなどの特殊セルローズを挙げることができる。
また、ヒドロキシル基などを含む官能性単量体を共重合させた熱可塑性アクリル樹脂を用いることにより、ウレタン化可能なアクリル系樹脂塗料とすることができ、好ましいアクリル系樹脂塗料の一例である。
【0012】
アクリル系樹脂塗料は、上記塗膜を構成する成分を有機溶剤に溶解させて得られる。好適な有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、シクロヘキサノンなどのケトン類などを挙げることができる。
また、塗料特性として、比重( 20 ℃): 0.93 ±0.03、乾燥時間( 20 ℃):指触乾燥で 5分、テーピング可能で 2時間、硬度:鉛筆硬度で HB 以上、密着性:ごばんめテストで 90/100 以上を有するクリアラッカーが好ましい。
【0013】
好適なアクリル系樹脂塗料としては、例えば、商品名ニッペアクリルオートクリヤースーパー(日本ペイント社製)、字彫用接着強化剤としてタフ理化学工業所より発売されている商品名ゴムエースを挙げることができる。
【0014】
本発明に係るマスクシートは、サンドブラスト時に剥離することなく模様を蝕刻できるシートであれば使用することができる。具体的にはゴムシート、プラスチックシート、布シート、紙シート、またはこれらの複合材などを挙げることができる。これらの中でも、特にゴムシートがサンドブラストの風圧に耐えることができるので好ましい。
ゴムシートのゴム成分としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等を挙げることができる。
これらのゴム成分に各種の充填剤、軟化剤、架橋剤、樹脂、架橋促進剤、加工助剤、補強剤等を添加して加硫することにより、ゴムシート本体が得られる。ゴムシート本体の厚さは 0.5〜2mm 程度が好ましい。
ゴムシート本体に天然ゴム系、スチレン−ブタジエン系、アクリロニトリル系、クロロプレン系、アクリル系、シリコーン系の各種粘着剤を単独もしくは2種以上ブレンドした粘着層と、ポリエチレン、シリコーン樹脂等の離型紙とを積層してゴムシートが得られる。
具体的なゴムシートの例としては、商品名サンドスター(讃岐ゴム株式会社製)、商品名シルバーシート(寺岡製作所社製)を挙げることができる。
【0015】
本発明の蝕刻方法について図1を参照して説明する。図1は被蝕刻材の表面に模様を形成する工程断面図である。
被蝕刻材1の表面にマスクシート2を貼り付ける(図1(a))。
被蝕刻材1は、石材、ガラス、陶材、セメント二次加工品、金属等を挙げることができる。本発明に好適な被蝕刻材1は石材であり、石材としては、御影石、安山岩、大理石、蛇紋岩、テラゾーを挙げることができる。対象製品としては、上記石材により製作される製品を挙げることができる。例えば、墓石、記念碑、表札、銘板、建築石材等である。文字や家紋等の大きさや形状によってマスクシート2が石材表面からサンドブラスト時に剥がれ易いためである。また、マスクシート2は、石材表面に密着するゴムシートが好ましい。
なお、マスクシート2を貼り付ける前に充分に乾燥させる。御影石など天然石材の表面は吸湿、吸水性があり、その表面に水分を保持しているためである。
【0016】
マスクシート2は、文字や家紋等の模様部分3を切り抜いた後貼り付けても、あるいは貼り付けた後、カッターナイフなどで家紋等の模様部分3を描き、その部分を切り抜き除去してもよい。
【0017】
つぎに、マスクシート2が貼り付けられた被蝕刻材1上に樹脂塗料4を塗布する(図1(b))。樹脂塗料4としては、クリアラッカーを使用することができ、特に上述のアクリル系樹脂クリアラッカー塗料が好ましい。アクリル系樹脂クリアラッカー塗料は、石材とゴムシートとの間に浸透して相互の接着力を高め、また、ゴムシートのエッジ面を硬化補強させる効果がある。
【0018】
クリアラッカーの塗布方法としては、スプレー塗布、浸漬塗布、はけ塗り、印刷法等を用いることができる。これらの中でも、墓石などの蝕刻にあたっては、作業工程が簡単なスプレー塗布が好ましい。また、クリアラッカーの塗布は、被蝕刻材1の全面であってもよいが、好ましくは、ゴムシートのエッジ面に塗布する。サンドブラストによるゴムシートの剥がれや風船状の膨れは、エッジ面より始まるためである。なお、サンドブラストにより細かい島状のゴム片が飛ぶ場合には、ゴムシート全面にクリアラッカーを塗布することが好ましい。
塗布厚さは、サンドブラスト条件によってエッジ面の剥がれが生じない厚さであればよい。一回のスプレー塗布によってゴムシートの剥がれを抑える効果がでる場合もある。
【0019】
文字や家紋等となる箇所にサンドブラストを行ない蝕刻する(図1(c))。
サンドブラスト処理条件は、石材の種類等によっても異なるが、ゴムシートとクリアラッカー塗布とを併用することにより、深彫りや微細な加工が可能となる種々の条件を採用することができる。
サンドブラストノズル5から吹出される研磨材6としては、種々の材料を用いることができる。例えば、金剛砂、コランダム、カーボランダム、珪砂、スピネル、アルミナ質、炭化珪素、合成ダイヤモンド、窒化ホウ素、エメリーガーネット等を被蝕刻材1の種類に応じて用いることができる。石材においては 30 番メッシュ程度の粗さの金剛砂、カーボランダムが好ましい。
また、サンドブラストの空気圧としては、 2〜 12 気圧、好ましくは 4〜8 気圧が好ましい。サンドブラストの時間は、彫りの深さに応じて調節することができる。
【0020】
サンドブラストによる蝕刻により、石材表面に文字や家紋等の蝕刻模様7が形成される(図1(d))。本発明はサンドブラスト時におけるゴムシートのびびりがないため、文字や家紋等の模様の角部をきれいに彫ることができる。
最後に、ゴムシートを剥がすことにより蝕刻模様7が形成された石材が完成する(図1(e))。
【0021】
【実施例】
実施例1
御影石の表面に墓碑銘をサンドブラストによる蝕刻法により形成した。御影石表面に墓碑銘模様を切り抜いたゴムシート(商品名:サンドスター、讃岐ゴム株式会社製)を貼り付けた。その後、切り抜いたエッジ部を中心として商品名ゴムエースをスプレー法により 1回吹き付けて塗膜を形成した。塗膜が乾燥後、金剛砂を研磨材とするサンドブラスト法により 5気圧の圧力で 3時間サンドブラストにより蝕刻した。サンドブラスト時にゴムシートの剥がれはみられなかった。また、ゴムシートが風船状に膨れ上がることがなかった。
サンドブラスト終了後、ゴムシートを剥離することにより、模様角部がきれいに蝕刻された墓碑銘を有する墓石が得られた。
【0022】
比較例1
商品名ゴムエースによる塗膜を形成しない以外は実施例1と同一の条件方法で墓石の墓碑銘を彫った。
サンドブラスト時にゴムシートの一部が剥がれ瞬間接着剤で数回補修をした。また、ゴムシートの一部に風船状の膨れがみられた。墓石の墓碑銘を彫る平均作業時間は、補修時間を含めて実施例1の 2倍の時間を要した。
得られた墓碑銘は、模様角部の一部に崩れがみられ、きれいに蝕刻されなかった。
【0024】
本発明の墓石の字彫方法は、墓石の表面にゴムシートを貼り付ける工程と、上記ゴムシートが貼り付けられた上記墓石上に樹脂塗料を塗布する工程と、サンドブラストにて蝕刻する工程とを含むので、ゴムシートと墓石表面との接着を強化でき、マスクシートが剥がれたり、膨れたりすることがなく、サンドブラスト時に補修を必要としないで、模様角部がきれいに蝕刻できる。このため、製作時間を大幅に短縮することができる。また、クリアラッカーをアクリル系樹脂ラッカーとすることにより、仕上がり面の精度に優れた墓石が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】被蝕刻材の表面に模様を形成する工程断面図である。
【符号の説明】
1 被蝕刻材
2 マスクシート
3 模様部分
4 樹脂塗料
5 サンドブラストノズル
6 研磨材
7 蝕刻模様
Claims (3)
- 墓石表面に字または図柄を彫る墓石の字彫方法であって、前記墓石表面にゴムシートを貼り付けて字または図柄部分を切り抜くか、または字または図柄部分を切り抜いたゴムシートを貼り付けるかする工程と、前記切り抜かれた字または図柄部分の少なくともエッジ面に溶液型のクリアラッカーを塗布する工程と、サンドブラストにて前記字または図柄部分を蝕刻する工程とを含むことを特徴とする墓石の字彫方法。
- 前記クリアラッカーを塗布する工程がスプレー塗布によりなされる工程であることを特徴とする請求項1記載の墓石の字彫方法。
- 前記クリアラッカーがアクリル系樹脂ラッカーであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の墓石の字彫方法。
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JP00385198A JP3773345B2 (ja) | 1998-01-12 | 1998-01-12 | 墓石の字彫方法 |
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JPH11198040A JPH11198040A (ja) | 1999-07-27 |
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