JP3771314B2 - SiO2系セラミックス被覆フィルムの製造方法 - Google Patents
SiO2系セラミックス被覆フィルムの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス被覆フィルムの製造方法に関する。より詳細には、長尺のプラスチックフィルムの表面にポリシラザンの塗膜を形成した後、これをセラミック化することによるSiO2 系セラミックス被覆フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
実質的にSiO2 膜から成るセラミックスをプラスチックフィルム表面に被覆する方法が開発されている。例えば、本出願人による特願平5−318188号明細書に、特定のポリシラザンを含むコーティング組成物を塗布し、熱処理した後、水蒸気雰囲気にさらす工程及び/又は酸触媒若しくは塩基触媒含有水溶液に浸漬する工程を施すことにより、150℃以下という低温でプラスチックフィルムにSiO2 系セラミックスを被覆する方法が開示されている。また、同じく本出願人による特願平6−236881号明細書に、基板上にポリシラザンの膜を形成した後、珪酸エステル水溶液を接触させることにより、常温でもSiO2 系セラミックスを被覆できる方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法によると、実質的にSiO2 膜から成るセラミックスを耐熱温度の低いプラスチックフィルムに被覆することができるが、ポリシラザンを十分にセラミック化するためには、塗布後の後処理、すなわち加熱処理後に水蒸気雰囲気にさらす工程及び/又は酸触媒若しくは塩基触媒含有水溶液に浸漬する工程、或いは加熱処理後に珪酸エステル水溶液を接触させる工程(以降、本明細書ではこれらをセラミック化工程と総称する)が必要である。
こうしたSiO2 系セラミックスを被覆したプラスチックフィルムを工業生産するためには、基材フィルムを長尺化し、上記各工程、すなわち、ポリシラザンの塗布工程、塗膜乾燥工程、セラミック化工程、等を連続して行うことが望まれる。
【0004】
しかしながら、セラミック化処理の条件によっては(例えば、他の工程と比べて処理時間が非常に長い場合、等)、被覆フィルムの全製造工程を連続法で行うことが困難な場合がある。そのような場合には、長尺フィルムを一旦巻き取り、バッチ式でセラミック化処理を施すことが望ましい。
本発明の目的は、ポリシラザン塗膜を表面に有する長尺フィルムのセラミック化工程をバッチ処理することを可能にする方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
これらの及びその他の目的は、
(1)長尺プラスチックフィルムの少なくとも片面にポリシラザンの塗膜を形成した後、該塗膜を有するフィルムをセパレータシートと共に巻き取り、この巻取体にセラミック化処理を施すことを特徴とするSiO2 系セラミックス被覆フィルムの製造方法
によって達成される。
【0006】
本発明の好ましい実施態様を以下に列挙する。
(2)前記セパレータシートが、長手方向において2列以上の凸部を少なくとも片面に有するスペーサーフィルムである、(1)項記載の製造方法。
(3)前記セパレータシートが、長手方向においてフィルムの少なくとも片側にエンボス加工を施したスペーサーフィルムである、(1)項記載の製造方法。
(4)前記スペーサーフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート又はポリエーテルスルホンでできている(2)項又は(3)項記載の製造方法。
【0007】
(5)前記セパレータシートが少なくとも1層の多孔質のシートである、(1)項記載の製造方法。
(6)前記多孔質シートがガラスクロスである、(5)項記載の製造方法。
(7)前記多孔質シートが不織布である、(5)項記載の製造方法。
(8)前記多孔質シートが紙である、(5)項記載の製造方法。
(9)前記多孔質シートが繊維織物である、(5)項記載の製造方法。
(10)前記多孔質シートが水分を含む、(5)項〜(9)項のいずれか一項に記載の製造方法。
【0008】
(11)前記セパレータシートがテープ状フィルムであって、これを塗布フィルムの少なくとも両端に各1本巻き込むことを特徴とする、(1)項記載の製造方法。
(12)前記テープ状フィルムの少なくとも片側がマット加工又はエンボス加工フィルムである、(11)項記載の製造方法。
(13)前記テープ状フィルムが発泡フィルムである、(11)項記載の製造方法。
(14)前記テープ状フィルムの少なくとも片側がアルミニウムを張り合わせた又はアルミニウムを蒸着させたフィルムである、(11)項記載の製造方法。
(15)前記ポリシラザンが下記一般式(I):
【0009】
【化1】
【0010】
(上式中、R1 、R2 及びR3 は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を表わす。ただし、R1 、R2 及びR3 の少なくとも1つは水素原子である)で表わされる単位からなる主骨格を有する数平均分子量が100〜5万のポリシラザンである、(1)項〜(14)項のいずれか一項に記載の製造方法。
【0011】
本明細書でいう「セパレータシート」とは、長尺フィルムと一緒に巻き取ることにより、長尺フィルム同士が接触しないようにするためのシート状物又はテープ状物であって、後のセラミック化工程において塗膜のセラミック化を妨げたり、ポリシラザン塗膜やフィルム基材に悪影響を及ぼしたりすることのないものをさす。
本発明の製造方法によると、ポリシラザン塗膜を有する長尺フィルムを巻き取った際に、ポリシラザン塗膜を有するフィルム間が直接接触することがなく、後のセラミック化処理のための流体をポリシラザン塗膜面に到達させる間隙が形成されるか、或いはセラミック化に寄与できる成分(例えば、水)を供給できる場合には間隙がなくてもセパレータシートが直接にポリシラザン塗膜のセラミック化に寄与することができる。
【0012】
本発明のSiO2 系セラミックス被覆フィルムの製造方法に用いるポリシラザンは、低温でセラミック化するポリシラザンであることが好ましい。このような低温セラミック化ポリシラザンの例として、本出願人による特願平4−39595号明細書に記載されているケイ素アルコキシド付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、上記一般式(I)で表されるポリシラザンと、下記一般式(II):
Si(OR4 )4 (II)
(式中、R4 は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1〜20個を有するアルキル基またはアリール基を表し、少なくとも1個のR4 は上記アルキル基またはアリール基である)で表されるケイ素アルコキシドを加熱反応させて得られる、アルコキシド由来ケイ素/ポリシラザン由来ケイ素原子比が0.001〜3の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万のケイ素アルコキシド付加ポリシラザンである。
【0013】
低温セラミックス化ポリシラザンの別の例として、本出願人による特開平6−122852号公報に記載されているグリシドール付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、上記一般式(I)で表されるポリシラザンとグリシドールを反応させて得られる、グリシドール/ポリシラザン重量比が0.001〜2の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万のグリシドール付加ポリシラザンである。
【0014】
低温セラミックス化ポリシラザンのさらに別の例として、本出願人による特願平5−35604号明細書に記載されているアセチルアセトナト錯体付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、上記一般式(I)で表されるポリシラザンと、金属としてニッケル、白金、パラジウム又はアルミニウムを含むアセチルアセトナト錯体を反応させて得られる、アセチルアセトナト錯体/ポリシラザン重量比が0.000001〜2の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万のアセチルアセトナト錯体付加ポリシラザンである。上記の金属を含むアセチルアセトナト錯体は、アセチルアセトン(2,4−ペンタジオン)から酸解離により生じた陰イオンacac- が金属原子に配位した錯体であり、一般に式(CH3 COCHCOCH3 )n M〔式中、Mはn価の金属を表す〕で表される。
【0015】
本発明により用いるポリシラザンは、分子量が低すぎると、焼成時の収率が低くなり、実用的でない。一方分子量が高すぎると溶液の安定性が低く、健全な膜が得られない。これらの理由から、用いるポリシラザンの分子量は数平均分子量で下限は100、好ましくは500である。また、上限は5万、好ましくは10000である。
上記のような低温セラミック化ポリシラザンを塗布するため、これを溶剤に溶解してコーティング組成物を調製する。溶剤としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素の炭化水素溶媒、ハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン、ハロゲン化ベンゼン等のハロゲン化炭化水素、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類、直鎖系炭化水素類、アルコキシシラン類を使用することができる。これらの溶剤を使用する場合、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度を調節するために、2種類以上の溶剤を混合することもできる。
【0016】
溶剤の使用量(割合)は採用するコーティング方法により作業性がよくなるように選択され、また用いるポリシラザンの平均分子量、分子量分布、その構造によって異なるので、適宜、自由に混合することができる。好ましくは固形分濃度で1〜50重量%の範囲で混合することができる。
また、コーティング用組成物には、必要に応じて適当な充填剤及び/又は増量剤を加えることができる。充填剤の例としてはシリカ、アルミナ、ジルコニア、マイカを始めとする酸化物系無機物あるいは炭化珪素、窒化珪素等の非酸化物系無機物の微粉等が挙げられる。また用途によってはアルミニウム、亜鉛、銅等の金属粉末の添加も可能である。
【0017】
これら充填剤は、針状(ウィスカーを含む)、粒状、鱗片状等種々の形状のものを単独又は2種以上混合して用いることができる。これら充填剤の粒子の大きさは1回に適用可能な膜厚よりも小さいことが望ましい。また充填剤の添加量はポリシラザン1重量部に対し、0.05〜10重量部の範囲であり、特に好ましい添加量は0.2〜3重量部の範囲である。
さらに、コーティング用組成物には、必要に応じて各種顔料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、表面改質剤、可塑剤、乾燥促進剤、流れ止め剤、等を加えてもよい。
【0018】
本発明のSiO2 系セラミックス被覆フィルムの製造方法に用いる長尺プラスチックフィルム基材としては、種々のプラスチック材料が包含され、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、セルロース系アセテート(TAC)、等が挙げられる。
長尺プラスチックフィルム材料の長さ、幅、厚さに特に制限はなく、用途に応じた任意の寸法のプラスチックを使用することができるが、一般に長尺フィルムといった場合、その長さは数百メートルに至る場合がある。
【0019】
本発明によると、上記のようなコーティング用組成物を上記のような長尺プラスチックフィルムの少なくとも片面に適用することによってポリシラザンの膜を形成する。適用法は、長尺フィルムへ塗布するために通常実施されている塗布法、すなわちロール塗布、浸漬塗布、スプレー塗り、ウェブ塗布(グラビア、ダイ、キス、フレキソ、キスメイカーバー)、等の方法が用いられる。最適な方法はグラビア塗布、特にリバースグラビア塗布である。
塗布工程に続いて、フィルムの耐熱温度に応じた乾燥温度ゾーンを通過させることにより、ポリシラザン塗膜の溶媒の除去を行う。この溶媒除去工程は、ポリシラザン塗膜を有するフィルムが60℃〜350℃、好ましくは70℃〜250℃の温度ゾーンに0.01〜20分間、好ましくは0.05〜10分間存在するように搬送しながら行うことが好ましい。また、乾燥雰囲気は酸素中又は空気中のいずれであってもよい。上記の温度範囲での乾燥処理によってSi−O、Si−N、Si−H、N−H結合が存在するポリシラザン塗膜が形成される。
【0020】
ポリシラザン塗膜を有するフィルムを、図1に例示したように、直径約7.6〜12.7cmの心材16に巻き取る。この際、ポリシラザン塗膜12を有する長尺フィルム基材14の表裏が直接接触しないようにセパレータシート10を挟み込み、後のセラミック化工程において該塗膜12がセラミック化処理のための流体にさらされるように巻き取る。セパレータシート10は、ポリシラザン塗膜12側から巻き取ることも、また長尺フィルム基材14側から巻き取ることもできる。
【0021】
本発明の一態様によると、セパレータシート10として、図2に例示したような長手方向と横断方向においてそれぞれ適当な間隔で並べられた凸部22を少なくとも片面に有するスペーサーフィルム20を用いることができる。
凸部22の形成方法としては、凸部を有するローラー状金型を用いてフィルムを局所的に変形させてもよいし、フィルム上に局所的に不均一な塗膜を形成し、凸部を形成させてもよい。
図2は、凸部22を両面に有するスペーサーフィルム20を示しているが、ポリシラザンをプラスチックフィルムの片面にしか塗布しない場合には、片面にのみ凸部を設けたスペーサーフィルムを用いても、その凸部をポリシラザン塗膜側に向けて巻き取ることにより所望の作用を得ることができる。
【0022】
凸部22の形状に特に制限はなく、所望のポリシラザン塗膜面に流体が容易に到達することができれば、最終製品のセラミックス被覆フィルムの大きさ、形状に合わせて任意の凸部形状をとることができる。例えば、凸部断面が半円形、長方形若しくは台形であるスペーサーフィルムを使用してもよいし、また凸部が横断方向で連続しているスペーサーフィルムを使用してもよい。
図3は、図2のスペーサーフィルムの凸部22を含む横断方向における断面図を示すものである。図3は、凸部が横断方向において上面と下面とで整合していないスペーサーフィルムを示しているが、このズレは横断方向ではなく長手方向におけるものであってもよい。また、凸部が上面と下面とで整合しているスペーサーフィルムであってもよい。
【0023】
上記のいずれのスペーサーフィルムを使用する場合でも、凸部22の高さは、ポリシラザン塗膜面とスペーサーフィルムとの間をセラミック化処理のための流体が容易に通過できる間隙24を維持するのに十分な高さとすべきである。この凸部22の高さは、一般に0.03〜10mm、好ましくは0.05〜1mm、より好ましくは0.08〜0.5mmであるが、限定はされない。この高さが高すぎると、巻取体が嵩張り、バッチ処理効率も低下する。
凸部の長手方向の列は、スペーサーフィルムの横断方向の少なくとも両端部付近に位置することが好ましい。その場合、図4に示したように、横断方向における凸部間距離がポリシラザン塗膜幅よりも広いスペーサーフィルムを使用し、巻取り時に凸部が塗膜に触れないようにすることが好ましい。また、上記間隙24を維持するため、必要に応じてスペーサーフィルムの横断方向の中間部に一つ以上の凸部列を設けてもよい。このように中間部に凸部列を設けた場合には、これらの凸部がプラスチックフィルムと接触する部分にはポリシラザンを塗布しないことが好ましい場合もある。
【0024】
凸部列が横断方向において不連続であるスペーサーフィルムの場合、凸部列の横断方向の間隔26は、上記間隙24が維持できる限り、最終製品のセラミックス被覆フィルムの所望の大きさに応じて、長尺フィルムの幅未満の間隔で任意に設定することができる。これらの隣り合う凸部列の間隔26は、一般に70mm〜600mm、好ましくは100mm〜400mmとする。
凸部列の長手方向における間隔28は1〜20mm、好ましくは2〜15mmとする。この間隔は一定であることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。この間隔が20mmよりも広くなると、ポリシラザン塗膜とスペーサーフィルムとが巻取り時に接触する恐れがある。反対に、1mmよりも狭いと、凸部が巻取りを妨害する場合がでてくる。
【0025】
スペーサーフィルム自体の厚さは、特に限定はされないが、実用的範囲として30μm〜600μm、好ましくは40μm〜300μm、より好ましくは50μm〜150μmとする。
スペーサーフィルムの材質は、巻取り/巻出しの際に不都合のない柔軟性を示し且つポリシラザン塗膜のセラミック化条件下で不活性(耐薬品性、耐熱性)であり且つ寸法安定性に優れているものであれば何でもよい。特に好適なスペーサーフィルムの素材としてポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、等の耐熱樹脂が挙げられる。
【0026】
このような凸部を有するスペーサーフィルムの好適な具体例として、上記のような材料のフィルムの横断方向の両端部にエンボス加工を施したものが挙げられる。特に本発明では、大日化成工業製から商品番号706410 H 12又は706420 H 12で市販されているエンボス加工されたポリイミドフィルムの幅を広げたものを使用することが便利である。
【0027】
本発明の別の態様によると、セパレータシートとして少なくとも1層の多孔質シートを使用することもできる。この多孔質シートは、セラミック化処理のための流体をポリシラザン塗膜面に到達させる孔を有し、セラミック化工程においてポリシラザン塗膜及び/又は長尺フィルムに悪影響を及ぼすことのないものであれば何でもよい。多孔質シートとして、ガラスクロス、例えば、テフロン(商標)を被覆したガラスクロス(以降、テフロン被覆ガラスクロス)、不織布、例えば、ポリプロピレンやナイロン(商標)でできた不織布、紙、繊維織物、等が挙げられる。
これらの多孔質シートの厚さは、一般に30μm〜1mm、好ましくは50μm〜1mmであるが、限定されるものではない。この厚さが30μmよりも薄いと、セラミック化のための流体透過性が不十分となる。反対に1mmよりも厚いと、巻取体が嵩張り、実用的でなくなる。
【0028】
これら多孔質シートの多孔性については、シート材質によって数値が異なるが、例えば、ポリプロピレン不織布では目付が30〜250gのものを使用することが好ましい。また、テフロン被覆ガラスクロスは、テフロン(商標)がポリシラザンを撥し、しかもクロスが通気性を有するので、本質的にいずれのものでも使用可能である。
本発明の別の態様によると、セパレータシートの流体透過性が不十分又は全くない場合でも、セパレータシート自体が、ポリシラザン塗膜のセラミック化に寄与できる成分をセラミック化処理の際に供給できるものであれば、これを使用することができる。ポリシラザン塗膜のセラミック化に寄与できる成分とは、水、酸素、等をさす。
【0029】
このようなセパレータシートとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリイミド、等のベースフィルムの少なくとも片面にポリビニルアルコール樹脂、ゼラチン、等を3〜20μm程度の厚さで塗布したフィルムを、水蒸気や水溶液で処理して該塗布層を含水させたものが挙げられる。また、別法として、上記の多孔質シートに水分を含ませたもの、なども使用できる。このようなセパレータシートの材質は、先にスペーサーフィルムについて記載したような柔軟性、寸法安定性、耐薬品性、等を満たす限り、特に限定されるものではない。
【0030】
本発明のさらに別の態様によると、図5に示したように、セパレータシートとしてテープ状フィルムを使用することもできる。このテープ状フィルムは、ポリシラザン塗膜よりも厚い厚さ、一般に12〜300μm、好ましくは30〜100μm、幅10〜30mm、好ましくは13〜20mmの寸法を有する。このようなテープ状フィルムの具体例として、片面又は両面にマット加工が施されたマット加工フィルム(例、東レ製ルミナーX−42〜45やパナック製ルミマットとして市販されているPETフィルム)、多孔質フィルムである発泡フィルム(例、東洋紡績製クリスパーとして市販されているPETフィルム)、及びアルミニウムを張り合わせた又はアルミニウムを蒸着させたフィルム(Al/PETフィルム)(例、パナック製アルペットフィルムとして市販されているPETフィルム)が挙げられる。マット加工フィルムは、エンボス加工に比べ凹凸が小さいため巻きずれが生じにくい。また凹凸が形成されているため、ガスや水蒸気が透過しやすい。Al/PETフィルムは、Al層が形成されていることによってフィルムとの滑りが向上し、巻き取りやすい。
【0031】
このようなテープ状フィルムを使用する場合には、ポリシラザン塗膜を有する長尺フィルム基材の横断方向の両側にその長手方向に沿ってテープ状フィルムを配置することにより、これらを巻き取った際に長尺フィルムの表裏が接触しないようにすることができる。長尺フィルムの表裏間隔を維持するため、必要に応じて、長尺フィルムの横断方向の中間部に1本以上のテープ状フィルムを配置してもよい。テープ状フィルムと長尺フィルム基材との接触部分には、ポリシラザン塗膜が存在してもしなくてもよい。また、片面にのみポリシラザン塗膜を有する長尺フィルム基材を巻き取る際には、該基材のポリシラザン塗膜側からでもその反対側からでもテープ状フィルムを適用することができる。
【0032】
このようにセパレータシートを介在させてポリシラザン塗膜を有するプラスチックフィルムを巻き取った後、この巻取体を、例えば炉に入れることにより、バッチ式で塗膜に熱処理を施す。この熱処理条件は、以下の後処理によっても異なるが、一般に70〜350℃、好ましくは80〜300℃、より好ましくは100〜250℃の温度で、0.2〜200時間、好ましくは0.5〜100時間行われる。
【0033】
熱処理を施したポリシラザン塗膜は、以下の3種類のバッチ処理の一つ又は任意の組合せにより、実質的にSiO2 からなるセラミックスに転化させることが可能である。
▲1▼加湿処理。
熱処理後の巻取体を加湿室に配置することにより加湿処理を行う。加湿室内の圧力は特に限定されるものではないが、1〜5気圧が現実的に適当である。相対湿度は特に限定されるものではないが、10〜100%RHが好ましい。温度は室温以上で効果的であるが室温〜180℃が好ましい。100℃以上で加湿処理を行う場合には、上記の熱処理を省略することができる。加湿処理時間は特に限定されるものではないが3分〜30日が現実的に適当である。
水蒸気雰囲気中での熱処理により、低温セラミックス化ポリシラザンの酸化または水蒸気との加水分解が進行するので、上記のような低い加熱温度で、実質的にSiO2 からなる緻密な膜の形成が可能となる。但し、このSiO2 膜はポリシラザンに由来するため窒素を原子百分率で0.005〜5%、好ましくは0.1〜3%含有する。
【0034】
▲2▼触媒を含有した蒸留水への浸漬。
熱処理後の巻取体を、触媒含有蒸留水を含む容器に浸漬する。触媒としては、酸、塩基が好ましく、その種類については特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n−エキシルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、グアニジン、ピグアニン、イミダゾール、1,8−ジアザビシクロ−〔5,4,0〕−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ−〔2,2,2〕−オクタン等のアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ピリジン、アンモニア水等のアルカリ類;リン酸等の無機酸類;氷酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、無水プロピオン酸のような低級モノカルボン酸、又はその無水物、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸のような低級ジカルボン酸又はその無水物、トリクロロ酢酸等の有機酸類;過塩素酸、塩酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素及びその電気供与体との錯体、等;SnCl4 、ZnCl2 、FeCl3 、AlCl3 、SbCl3 、TiCl4 などのルイス酸及びその錯体等を使用することができる。好ましい酸触媒は塩酸、塩基触媒は水酸化ナトリウムである。触媒の含有割合としては0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜10重量%である。保持温度としては室温から沸点までの温度にわたって有効である。保持時間としては特に限定されるものではないが10分〜30日が現実的に適当である。
触媒を含有した蒸留水中に浸すことにより、低温セラミックス化ポリシラザンの酸化あるいは水との加水分解が、触媒の存在により更に加速され、上記のような低い加熱温度で、実質的にSiO2 からなる緻密な膜の形成が可能となる。但し、先に記載したように、このSiO2 膜はポリシラザンに由来するため窒素を同様に原子百分率で0.005〜5%含有する。
【0035】
▲3▼酸/珪酸エステル混合水溶液への浸漬。
熱処理後の巻取体を、酸/珪酸エステル混合水溶液を含む容器に浸漬する。好適な珪酸エステルは、式Si(OR)4 〔式中、Rは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアミノ基又はアルキルシリル基を表す〕で示されるアルコキシシランである。好ましいRは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びイソプロペニル基である。中でも特に好ましいアルコキシシランは、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランである。これらのアルコキシシランは、水に対して体積比率で0.01〜100、好ましくは0.1〜10の範囲で存在させる。
【0036】
好適な酸は、塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸及びこれらの塩類である。これらの酸は、アルコキシシラン1モル当たり0.0001〜10モル%、好ましくは0.001〜1.0モル%の量で混合する。
酸/珪酸エステル混合水溶液中に浸漬することにより、ポリシラザン塗膜と珪酸エステルとの間で反応が起こり、常温でも実質的にSiO2 からなる緻密な膜が形成される。上記の珪酸エステルによるポリシラザンのセラミック化についての詳細は、本出願人による特願平6−236881号明細書を参照されたい。
【0037】
▲2▼又は▲3▼の方法でセラミック化した場合には、巻取体のままバッチ式で、或いは巻き出して搬送しながら、中和処理及び/又は洗浄処理を施すことが望ましい。これらの処理は、処理浴に浸漬する方法、処理液を噴霧する方法、等、所望によりバッチ式でも連続式でも行うことができる。
上記のようにセラミック化した後(又は中和/洗浄処理後)、乾燥ゾーンを搬送することにより巻き出した長尺フィルムを効率よく乾燥することができる。
【0038】
1回の適用で得られるSiO2 膜の厚さは、好ましくは0.001〜5μm、より好ましくは0.005〜2μmの範囲である。膜厚が5μmよりも厚いと熱処理時に割れが入ることが多く、また曇りが生じることによりヘイズ率(透明被覆フィルムとしては3%以下が好ましい)が増加してしまう。反対に、膜厚が1μmよりも薄いと所期の効果、例えば所望の硬度(鉛筆硬度で8H以上が望ましい)が得られない。この膜厚は、コーティング用組成物の濃度を変更することによって制御することができる。すなわち、膜厚を増加するため、コーティング用組成物の固形分濃度を高くする(溶剤濃度を低くする)ことができる。
【0039】
【実施例】
実施例によって本発明をさらに説明する。
実施例1
東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHPS−1;数平均分子量900)の20%キシレン溶液を調製し、これをコーティング組成物として用いた。厚さ100μm、幅30cm、総延長200mのポリエーテルスルホン(PES)フィルム基材を2m/分で搬送しながら、上記コーティング組成物を乾燥塗膜厚が0.6μmになるようにグラビアコート法で片面に塗布した。
塗布後、上記搬送速度で温度150℃、長さ15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、ポリシラザン塗膜を乾燥した。
【0040】
乾燥ゾーンを通過したポリシラザン塗布フィルムに、長手方向に3列の凸部(高さ0.5mm)を両面に等間隔で有するポリイミド製スペーサーフィルム〔幅60cm、厚さ100μm、凸部の間隔(横断方向28cm、長手方向5mm)〕を重ね合わせて、直径7.6cmの心材に一緒に巻き取った。
この巻取体を150℃で1時間熱処理した後、120℃、相対湿度90%で3時間加湿処理することにより、ポリシラザン塗膜をセラミック化させた。
【0041】
加湿処理後、フィルムを巻き出しながらスペーサーフィルムを分離し、20m/分の搬送速度で150℃、15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、セラミック膜を有するフィルムを乾燥した。
こうして得られたセラミック膜は実質的にSiO2 からなり、基材のPESフィルムに対する密着性も良好であった。また、このセラミック膜の鉛筆硬度を測定したところ、4H以上という高い硬度を示した。
【0042】
実施例2
実施例1で用いたものと同じポリシラザンコーティング組成物を調製した。厚さ100μm、幅60cm、総延長200mのポリアリレート(PAr)フィルム基材を10m/分で搬送しながら、上記コーティング組成物を乾燥塗膜厚が0.6μmになるようにグラビアコート法で片面に塗布した。
塗布後、上記搬送速度で温度140℃、長さ15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、ポリシラザン塗膜を乾燥した。
【0043】
乾燥ゾーンを通過したポリシラザン塗布フィルムに、厚さ0.1mm、目付90gのポリプロピレン製不織布を重ね合わせて、直径7.6cmの心材に一緒に巻き取った。
この巻取体を100℃で5時間熱処理した後、90℃、相対湿度90%で5時間加湿処理することにより、ポリシラザン塗膜をセラミック化させた。
【0044】
加湿処理後、フィルムを巻き出しながら不織布を分離し、20m/分の搬送速度で140℃、15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、セラミック膜を有するフィルムを乾燥した。
こうして得られたセラミック膜は実質的にSiO2 からなり、基材のPArフィルムに対する密着性も良好であった。また、このセラミック膜の鉛筆硬度を測定したところ、4H以上という高い硬度を示した。
【0045】
実施例3
実施例1で用いたものと同じポリシラザンコーティング組成物を調製した。厚さ100μm、幅60cm、総延長200mのポリエーテルスルホン(PES)フィルム基材を10m/分で搬送しながら、上記コーティング組成物を乾燥塗膜厚が0.6μmになるようにグラビアコート法で片面に塗布した。
塗布後、上記搬送速度で温度150℃、長さ15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、ポリシラザン塗膜を乾燥した。
【0046】
乾燥ゾーンを通過したポリシラザン塗布フィルムに、フロン工業(株)製のテフロン被覆ガラスクロス(PTFE含浸ガラスファブリック)を重ね合わせて、直径7.6cmの心材に一緒に巻き取った。
この巻取体を160℃で1時間熱処理した後、120℃、相対湿度90%で3時間加湿処理することにより、ポリシラザン塗膜をセラミック化させた。
【0047】
加湿処理後、フィルムを巻き出しながら不織布を分離し、20m/分の搬送速度で150℃、15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、セラミック膜を有するフィルムを乾燥した。
こうして得られたセラミック膜は実質的にSiO2 からなり、基材のPESフィルムに対する密着性も良好であった。また、このセラミック膜の鉛筆硬度を測定したところ、4H以上という高い硬度を示した。
【0048】
実施例4
実施例1で用いたものと同じポリシラザンコーティング組成物を調製した。厚さ100μm、幅60cm、総延長200mのポリアリレート(PAr)フィルム基材を10m/分で搬送しながら、上記コーティング組成物を乾燥塗膜厚が0.6μmになるようにグラビアコート法で片面に塗布した。
塗布後、上記搬送速度で温度150℃、長さ15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、ポリシラザン塗膜を乾燥した。
【0049】
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にポリビニルアルコール樹脂を厚さ6μmになるように塗布し、これを水溶液に浸漬することにより含水フィルムを製作した。上記乾燥ゾーンを通過したポリシラザン塗布フィルムにこの含水フィルムを重ね合わせて、直径7.6cmの心材に一緒に巻き取った。
この巻取体を120℃で2時間熱処理した後、180℃、相対湿度90%で3時間加湿処理することにより、ポリシラザン塗膜をセラミック化させた。
【0050】
加湿処理後、フィルムを巻き出しながら含水シートを分離し、20m/分の搬送速度で150℃、15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、セラミック膜を有するフィルムを乾燥した。
こうして得られたセラミック膜は実質的にSiO2 からなり、基材のPArフィルムに対する密着性も良好であった。また、このセラミック膜の鉛筆硬度を測定したところ、4H以上という高い硬度を示した。
【0051】
実施例5
東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHPS−1;数平均分子量900)の12重量%m−キシレン溶液を調製し、これをコーティング組成物として用いた。厚さ100μm、幅500mm、総延長200mのポリエーテルスルホン(PES)フィルム基材を5m/分で搬送しながら、上記コーティング組成物を乾燥塗膜厚が0.6μmになるようにグラビア(リバース)コート法(ロール#95)で片面に塗布した。
塗布後、上記搬送速度で温度150℃、長さ15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、ポリシラザン塗膜を乾燥した。
【0052】
乾燥ゾーンを通過したポリシラザン塗布フィルムに、長手方向に2列の凸部(高さ0.5mm、幅方向間隔490mm、長手方向間隔5mm)を両面に有するポリイミド製エンボスフィルム〔幅500cm、厚さ100μm、大日化成工業製706410H12の幅を広げたもの〕を重ね合わせて、直径7.6cmの心材に一緒に巻き取った。
この巻取体を150℃で1時間熱処理した後、95℃、相対湿度80%で3時間加湿処理することにより、ポリシラザン塗膜をセラミック化させた。
【0053】
加湿処理後、フィルムを巻き出しながらエンボスフィルムを分離し、20m/分の搬送速度で150℃、15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、セラミック膜を有するフィルムを乾燥した。
こうして得られたセラミック膜は実質的にSiO2 からなり、基材のPESフィルムに対する密着性も良好であった。また、このセラミック膜の鉛筆硬度を測定したところ、4H以上という高い硬度を示した。
【0054】
実施例6
東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHPS−1;数平均分子量900)の12重量%m−キシレン溶液を調製し、これをコーティング組成物として用いた。厚さ100μm、幅500mm、総延長200mのポリエーテルスルホン(PES)フィルム基材を5m/分で搬送しながら、上記コーティング組成物を乾燥塗膜厚が0.6μmになるようにグラビア(リバース)コート法(ロール#95)で片面に塗布した。
塗布後、上記搬送速度で温度150℃、長さ15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、ポリシラザン塗膜を乾燥した。
【0055】
乾燥ゾーンを通過したポリシラザン塗布フィルムの横断方向両端部に、PET製マット加工テープ状フィルム〔幅20mm、厚さ75μm、200#マット加工、東レ(株)製ルミラーX−42又はパナック(株)製ルミマット〕を各1枚重ね合わせて、直径7.6cmの心材に一緒に巻き取った。
この巻取体を150℃で1時間熱処理した後、95℃、相対湿度80%で3時間加湿処理することにより、ポリシラザン塗膜をセラミック化させた。
【0056】
加湿処理後、フィルムを巻き出しながらマット加工フィルムを分離し、20m/分の搬送速度で150℃、15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、セラミック膜を有するフィルムを乾燥した。
こうして得られたセラミック膜は実質的にSiO2 からなり、基材のPESフィルムに対する密着性も良好であった。また、このセラミック膜の鉛筆硬度を測定したところ、4H以上という高い硬度を示した。
【0057】
実施例7
東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHPS−1;数平均分子量900)の12重量%m−キシレン溶液を調製し、これをコーティング組成物として用いた。厚さ75μm、幅1000mm、総延長200mのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材を5m/分で搬送しながら、上記コーティング組成物を乾燥塗膜厚が0.6μmになるようにグラビア(リバース)コート法(ロール#95)で片面に塗布した。
塗布後、上記搬送速度で温度120℃、長さ15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、ポリシラザン塗膜を乾燥した。
【0058】
乾燥ゾーンを通過したポリシラザン塗布フィルムの横断方向両端部に、PET製テープ状発泡フィルム〔幅20mm、厚さ75μm、東洋紡績(株)製クリスパー〕を各1枚重ね合わせて、直径7.6cmの心材に一緒に巻き取った。
この巻取体を120℃で1時間熱処理した後、95℃、相対湿度80%で3時間加湿処理することにより、ポリシラザン塗膜をセラミック化させた。
【0059】
加湿処理後、フィルムを巻き出しながら発泡フィルムを分離し、20m/分の搬送速度で120℃、15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、セラミック膜を有するフィルムを乾燥した。
こうして得られたセラミック膜は実質的にSiO2 からなり、基材のPETフィルムに対する密着性も良好であった。また、このセラミック膜の鉛筆硬度を測定したところ、4H以上という高い硬度を示した。
【0060】
実施例8
東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHPS−1;数平均分子量900)の12重量%m−キシレン溶液を調製し、これをコーティング組成物として用いた。厚さ80μm、幅1000mm、総延長200mのセルロース系アセテート(TAC)フィルム基材を3m/分で搬送しながら、上記コーティング組成物を乾燥塗膜厚が0.6μmになるようにグラビア(リバース)コート法(ロール#95)で片面に塗布した。
塗布後、上記搬送速度で温度100℃、長さ15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、ポリシラザン塗膜を乾燥した。
【0061】
乾燥ゾーンを通過したポリシラザン塗布フィルムの横断方向両端部に、PET製テープ状Al張り合わせフィルム〔幅20mm、厚さ75μm、パナック(株)製アルペットフィルム〕を各1枚重ね合わせて、直径7.6cmの心材に一緒に巻き取った。
この巻取体を100℃で3時間熱処理した後、95℃、相対湿度80%で5時間加湿処理することにより、ポリシラザン塗膜をセラミック化させた。
【0062】
加湿処理後、フィルムを巻き出しながらAl張り合わせフィルムを分離し、20m/分の搬送速度で100℃、15mの乾燥ゾーンを通過させることにより、セラミック膜を有するフィルムを乾燥した。
こうして得られたセラミック膜は実質的にSiO2 からなり、基材のTACフィルムに対する密着性も良好であった。また、このセラミック膜の鉛筆硬度を測定したところ、4H以上という高い硬度を示した。
【0063】
【発明の効果】
本発明の製造方法によると、ポリシラザン塗膜を有する長尺フィルムを巻き取った際に、ポリシラザン塗膜を有するフィルム間が直接接触することがなく、後のセラミック化処理のための流体をポリシラザン塗膜面に到達させる間隙が形成されるか、或いは水分を含む場合にはセパレータシートが直接にポリシラザン塗膜のセラミック化に寄与することができるので、長尺フィルムでのポリシラザンによる緻密なSiO2 膜の形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法による巻取り工程を示す横断面図である。
【図2】本発明の方法で用いられるセパレータシートの一態様であるスペーサーフィルムの上面図である。
【図3】図2の線1−1に沿って切り取った横断面図である。
【図4】本発明の方法によりセパレータシートを共巻きした際の断面図である。
【図5】本発明の方法で用いられるセパレータシートの一態様であるテープ状フィルムの共巻きを示す斜視図である。
【符号の説明】
10、30…セパレータシート
12、32…ポリシラザン塗膜
14、34、44…長尺フィルム基材
16…心材
20…スペーサーフィルム
22…凸部
24…間隙
26…横断方向の凸部列間隔
28…長手方向の凸部列間隔
40…テープ状フィルム
Claims (1)
- 長尺プラスチックフィルムの少なくとも片面にポリシラザンの塗膜を形成した後、該塗膜を有するフィルムをセパレータシートと共に巻き取り、この巻取体にセラミック化処理を施すことを特徴とするSiO2 系セラミックス被覆フィルムの製造方法。
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