JP3768378B2 - 植物活力剤 - Google Patents
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Description
【発明に属する技術分野】
本発明は、植物活力剤、植物活力剤組成物、又はそれらを植物の根・茎・葉面若しくは果実に溶液状態若しくは固体状態で葉面散布、土壌灌注等の方法で、施肥して用いる植物活力向上方法に関する。以下、「植物」は、植物の語自体から認識され得るもの、野菜、果実、果樹、穀物、種子、球根、草花、香草(ハーブ)、分類学上の植物等を表す。
【0002】
【従来の技術】
植物が成長するには種々の栄養要素が必要であるが、そのいくつかの要素が不足すると植物の生育に支障を来すことが知られている。例えば、肥料三大要素として窒素は蛋白質の成分元素であり、リンは核酸やリン脂質の構成元素だけでなくエネルギー代謝や物質の合成・分解反応にも重要な役割を果たしており、また、カリウムは物質代謝や物質移動の生理作用がある。これら主要成分の不足により全般的に植物の生育は貧弱になる。また、カルシウムは、植物体及び細胞を構成する重要な成分であり、また代謝系のバランスを維持する為にも重要な働きをしており、カルシウムの欠乏症状を呈し生理障害をおこす。その他にもマグネシウム、鉄、イオウ、ホウ素、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、塩素、ケイ素、ナトリウム等、植物には種々の栄養素が必要である。
【0003】
これら窒素、リン、カリウム等の栄養成分は元肥や追肥の形で施肥されたり、液体肥料を希釈して土壌灌注したり葉面散布で与えられたりしている。これらの肥料は、植物の生長に必要な不可欠のものであるが、ある程度の濃度以上に与えても、植物の生長性及び収量の向上にはそれ以上貢献できない。
【0004】
しかし、農作物の生長を促進し、単位面積当たりの収穫量を増やして増収をはかることは農業生産上重要な課題であり、そのために必要な種々の植物生長調節剤が開発利用されている。ジベレリンやオーキシン等に代表される植物生長調節剤は、発芽、発根、伸長、花成り、着果等生育、形態形成反応の調節のために用いられているが、これらの使用において、施用時期、施用濃度及び処理方法が複雑であり、用途が限定されている。
【0005】
このような問題を解決するために、米国特許明細書5482529号に植物栄養素・水・親油性有機物および炭素数1〜10の脂肪酸などからなるリン酸吸収を改善する目的の肥料用製剤が開示されている。また、特開平4-31382号公報は、プロピオン酸や多価カルボン酸がリン酸吸収効果を高めることを開示している。しかしながら、これらの技術は、実用的には植物の成長促進効果の点で十分ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする分野】
本発明の目的は、植物体に薬害が無く、葉の緑色度、葉面積および発根力を促進させ、肥料吸収効率を高めることにより植物体を活性化し、収量・品質を向上させることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式(1)で表される化合物〔以下化合物(1)ともいう〕
RCOO(AO)nX (1)
(式中、Rは炭素数11〜29のアルキル基またはアルケニル基を示し、Xは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基もしくはアシル基、炭素数2〜30のアルケニル基または対イオンを示す。また、AOはオキシエチレン基、オキシプロプレン基及びオキシブチレン基から選ばれる1つ以上の基であり、ランダム、ブロックいずれでも良く、nは平均付加モル数であり0〜30を示す。)
からなる植物活力剤に関するものである。
【0008】
また、前記式(1)で表される化合物と、肥料成分、界面活性剤およびキレート剤から選ばれる1種以上とを含有する植物活力剤組成物に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では、薬害が無く効率的に植物体に活力を付与できることから、式(1)のRは、炭素数11〜29、好ましくは炭素数13〜21、更に好ましくは炭素数15〜19である。また、飽和、不飽和何れでも良く、好ましくは飽和であり、直鎖、分岐鎖、環状の何れでも良く、好ましくは直鎖、分岐鎖、さらに好ましくは直鎖である。Rの具体例は、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基、ヘンイコシル基などのアルキル基;ペンタデセニル基、ヘプタデセニル基、ノナデセニル基などのアルケニル基である。好ましくは、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基などのアルキル基;ペンタデセニル基、ヘプタデセニル基、ノナデセニル基などのアルケニル基である。特に好ましくは、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基などのアルキル基である。
【0010】
式(1)でXは、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基もしくはアシル基(好ましくは1〜22のアルキル基もしくはアシル基)、炭素数2〜30のアルケニル基(好ましくは2〜22のアルケニル基)、または対イオンである。Xの具体例は、ラウリル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アラキニル基、ベヘニル基などのアルキル基;ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、アラキドイル基、ベヘノイル基などのアシル基;テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オレイル基、コドイル基、ドコセニル基などのアルケニル基である。好ましくは、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アラキニル基などのアルキル基;パルミトイル基、ステアロイル基、アラキドイル基などのアシル基;ヘキサデセニル基、オレイル基、コドイル基などのアルケニル基である。特に好ましくは、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アラキニル基などのアルキル基である。対イオンとしての具体例は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン塩、エタノールアミンなどのアルカノールアミン塩の何れでも良く、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属である。
【0011】
さらに、AOはオキシエチレン基、オキシプロプレン基及びオキシブチレン基から選ばれる1つ以上の基であり、n個のAOは同一でも異なっていても良い。また、ランダム、ブロックいずれでも良く、nは平均付加モル数であり0〜30で、好ましくは0〜20、特に好ましくは0〜10である。また、化合物(1)が親水基と疎水基を持つ場合、グリフィンのHLBが10以下のものが好ましく、さらに8以下が好ましく、特に5以下が好ましい。
【0012】
また、植物の生長促進の観点から、式(1)のnが0〜20で、Rは炭素数13〜21のアルキル基またはアルケニル基であり、Xは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基もしくはアシル基、炭素数2〜22のアルケニル基または対イオンである(但し、nが0でない場合は対イオンを除く)ものが好ましい。
【0013】
本発明の植物活力剤の形態は、液体、フロワブル、水和剤、粒剤、粉剤、錠剤等いずれでもよく、水溶液、水性分散液として用いる場合、化合物(1)の濃度が0.01〜5000ppm、好ましくは0.1〜1000ppmさらに好ましくは0.5〜500ppmになるように希釈して植物の葉面や根へ供給される。
【0014】
本発明の植物活力剤の植物への供給方法としては色々な手段を使うことができる。例えば、粉剤や粒剤を直接肥料のように施肥したり、希釈された水溶液を葉面、茎、果実等直接植物に散布したり、土壌中に注入する方法や水耕栽培やロックウールのように根に接触している水耕液や供給水に希釈混合して供給する方法が挙げられる。
【0015】
本発明の植物活力剤により効力が発現される植物としては、果菜類では、キュウリ、カボチャ、スイカ、メロン、トマト、ナス、ピーマン、イチゴ、オクラ、サヤインゲン、ソラマメ、エンドウ、エダマメ、トウモロコシ等が挙げられる。葉菜類では、ハクサイ、ツケナ類、チンゲンサイ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、メキャベツ、タマネギ、ネギ、ニンニク、ラッキョウ、ニラ、アスパラガス、レタス、サラダナ、セルリー、ホウレンソウ、シュンギク、パセリ、ミツバ、セリ、ウド、ミョウガ、フキ、シソ等が挙げられる。根菜類としては、ダイコン、カブ、ゴボウ、ニンジン、ジャガイモ、サトイモ、サツマイモ、ヤマイモ、ショウガ、レンコン等が挙げられる。その他に、稲、麦類、花卉類等にも使用が可能である。
【0016】
本発明では、化合物(1)と共に、界面活性剤を乳化、分散、可溶化又は浸透促進の目的で用いるのが好ましい。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられ、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び両性界面活性剤が好ましい。
【0017】
非イオン界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、樹脂酸エステル、ポリオキシアルキレン樹脂酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、アルキル(ポリ)グリコシド、ポリオキシアルキレンアルキル(ポリ)グリコシド等が挙げられる。好ましくは、窒素原子を含まないエーテル基含有非イオン界面活性剤及びエステル基含有非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0018】
陰イオン界面活性剤としては、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系及びリン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0019】
カルボン酸系界面活性剤としては、例えば炭素数6〜30の脂肪酸又はその塩、多価カルボン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアミドエーテルカルボン酸塩、ロジン酸塩、ダイマー酸塩、ポリマー酸塩、トール油脂肪酸塩等が挙げられる。
【0020】
スルホン酸系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ジフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸の縮合物塩、ナフタレンスルホン酸の縮合物塩等が挙げられる。
【0021】
硫酸エステル系界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、トリスチレン化フェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェノール硫酸エステル塩、アルキルポリグリコシド硫酸塩等が挙げられる。
【0022】
リン酸エステル系界面活性剤として、例えばアルキルリン酸エステル塩、アルキルフェニルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0023】
塩としては、例えば金属塩(Na、K、Ca、Mg、Zn等)、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、脂肪族アミン塩等が挙げられる。
【0024】
両性界面活性剤としては、アミノ酸系、ベタイン系、イミダゾリン系、アミンオキサイド系が挙げられる。
【0025】
アミノ酸系としては、例えばアシルアミノ酸塩、アシルサルコシン酸塩、アシロイルメチルアミノプロピオン酸塩、アルキルアミノプロピオン酸塩、アシルアミドエチルヒドロキシエチルメチルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0026】
ベタイン系としては、アルキルジメチルベタイン、アルキルヒドロキシエチルベタイン、アシルアミドプロピルヒドロキシプロピルアンモニアスルホベタイン、アシルアミドプロピルヒドロキシプロピルアンモニアスルホベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルジメチルカルボキシメチルアンモニアベタイン等が挙げられる。
【0027】
イミダゾリン系としては、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルエトキシカルボキシメチルイミダゾリウムベタイン等が挙げられる。
【0028】
アミンオキサイド系としては、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルジエタノールアミンオキサイド、アルキルアミドプロピルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0029】
前記界面活性剤は1種でも、2種以上混合して使用しても良い。また、これらの界面活性剤がポリオキシアルキレン基を含む場合は、好ましくはポリオキシエチレン基を有し、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が1〜50であることが挙げられる。また、界面活性剤は、グリフィンのHLBが10以上のものが好ましく、さらに12以上のものが好ましい。
【0030】
また、化合物(1)と共に以下のような肥料成分を併用できる。具体的には、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、ホウ素、鉄、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、塩素、ケイ素、ナトリウム等、特に窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムの供給源となる無機物及び有機物が挙げられる。そのような無機物としては、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、尿素、炭酸アンモニウム、リン酸カリウム、過リン酸石灰、熔成リン肥(3MgO・CaO・P2O5・3CaSiO2)、硫酸カリウム、塩カリ、硝酸石灰、消石灰、炭酸石灰、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。また、有機物としては、鶏フン、牛フン、バーク堆肥、アミノ酸、ペプトン、ミエキ、発酵エキス、有機酸(クエン酸、グルコン酸、コハク酸等)のカルシウム塩、脂肪酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸等)のカルシウム塩等が挙げられる。肥料成分は、稲や野菜の露地栽培のように、土壌中に元肥として肥料成分が十分施用されている場合にはあえて配合する必要はない。また、養液土耕や水耕栽培のように元肥の過剰施用を避け肥料成分をかん水と同じに与える栽培形態には肥料成分を配合することが好ましい。
【0031】
本発明の植物活力剤組成物には、キレート剤、具体的には、以下のようなキレート能を有する有機酸又はその塩を混合すると生育及び肥料吸収効率がさらに改善される。具体的にはクエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、ヘプトン酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸等のオキシカルボン酸、多価カルボン酸や、これらのカリウム塩、ナトリウム塩、アルカノールアミン塩、脂肪族アミン塩等が挙げられる。
【0032】
また、有機酸以外のキレート剤の混合でも生育及び肥料吸収効率が改善される。混合するキレート剤としてエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸(CDTA)等のアミノカルボン酸系キレート剤が挙げられる。
【0033】
化合物(1)は界面活性剤、肥料成分及びキレート剤から選ばれる1種以上と併用して用いることができる。特に化合物(1)は界面活性剤及びキレート剤と併用するのが好ましい。施用時期に肥料を必要とする場合は、例えば、化合物(1)、界面活性剤、肥料成分及びキレート剤を併用するのが好ましい。また、施用時期に肥料を必要としない場合は、例えば、化合物(1)、界面活性剤及びキレート剤を併用するのが好ましい。
【0034】
本発明の植物活力剤組成物の形態、散布方法等は前記と同様である。必要に応じて水及び/又は溶剤を含有することができる。
【0035】
本発明の植物活力剤組成物において、各成分の比率は、化合物(1)100重量部に対して、界面活性剤10〜20000重量部、特に100〜2000重量部、肥料成分0〜50000重量部、特に10〜5000重量部、キレート剤0〜10000重量部、特に10〜5000重量部、その他の栄養源(糖類、アミノ酸類、ビタミン類等)0〜50000重量部、特に10〜5000重量部が好ましい。
【0036】
通常、肥料のように粉剤、粒剤のような状態で土壌施用する場合は、水以外の上記成分が同様の比率で含まれる粉剤又は粒剤を使用することが好ましい。この粉剤又は粒剤にケーキングを防止するための賦形剤を含んでいてもかまわない。
【0037】
【実施例】
実施例1<クロレラ細胞を用いた増殖能試験>
高等植物緑色細胞であるクロレラ細胞を無機塩培地の下、振とう培養を行い、表1に示す植物活力剤又は植物活力剤組成物を表1に示す有効成分濃度で添加した処理区と、無処理区(無機塩培地栄養分のみ)と比較したクロレラ細胞増殖能の評価を行った。試験開始時の細胞濃度は1.00×105(個/ml)とした。細胞増殖能は各植物活力剤又は植物活力剤組成物を添加して培養14日後のクロレラ細胞数において無処理区を100とした時に対する各相対値を示す。但し、無機塩培地はLinsmaier-Skoog(LS)培地を使用した。なお、処理区、無処理区とも3つの培地を用いて行い、その平均値を無処理区と比較した。
【0038】
【表1】
【0039】
(注)括弧内記載は花王(株)商品名を示す(以下同様)。
【0040】
実施例2<トマト苗への水耕栽培試験>
トマト種子“桃太郎”を箱播きし、本葉3枚展開時期の苗を、「OKF2」(大塚化学(株))を肥料として希釈〔538倍希釈(有効肥料成分として855ppm)〕した培養液により水耕栽培した。その際、表2に示す成分を表2に示す有効成分濃度で含有する植物活力剤組成物を添加して試験を行った(処理区)。各植物活力剤組成物は、ホームミキサーにて強制乳化したものを用いた。試験開始6日後に培養液を採取し、RQフレックス(メルク製)で硝酸イオン濃度を測定し、硝酸態窒素肥料吸収効率を算出した。また、そのときの葉の緑色度を示す葉緑素計値(以下、SPAD値と略す)をミノルタ社製SPAD502で測定した。各測定値は、無処理区を100としたときの相対値で表した。結果を表2に示す。尚、「OKF2」(大塚化学(株))の肥料組成は、窒素:リン:カリウム:カルシウム:マグネシウム=14:8:16:6:2である。また、処理区、無処理区とも3個体を選定し、各個体について肥料吸収効率の算出とSPAD値の測定を行い、その平均値を無処理区(培養液単独)と比較した。なお、SPAD値は本葉第3葉を用いて、3個体につき、それぞれ10回測定(データ数30)した。
【0041】
【表2】
【0042】
(注)表中、POEはポリオキシエチレンの略であり、( )内の数字はエチレンオキサイドの平均付加モル数である(以下同様)。
【0043】
実施例3<トマトへの土壌処理試験>
トマト種子“桃太郎”を、培養土として「クレハ園芸培土」〔呉羽化学(株)、肥料成分;窒素:リン:カリウム=0.4:1.9:0.6(g/kg)〕を用いたセルトレイに播種した。子葉展開後、直径15cmのポットに定植し、7日間隔、100ml/個体の処理量にて、表3の成分と「OKF2」〔大塚化学(株)〕460ppm(1000倍希釈液)とを含有する植物活力剤組成物(残部は水)を投与した(処理区)。その際、各植物活力剤組成物は、ホームミキサーにて強制乳化したものを用いた。この処理を計5回行った。5回処理後、6日後に植物体の生重量を測定し、また実施例2と同様にSPAD値を測定した。測定値は何れも無処理区(液肥処理単独)を100としたときの相対値で比較した。なお、本例では、処理区、無処理区とも10個体を用いてその平均生重量とSPAD値の測定を行った。SPAD値については、本葉第3葉を用いて、10個体につき、それぞれ3回測定(データ数30)した。
【0044】
【表3】
【0045】
実施例4<ホウレンソウへの土壌処理試験>
ホウレンソウ種子“エスパー”を、培養土として「タキイ種まき培土」〔タキイ種苗(株);肥料成分;窒素:リン:カリウム=480:760:345(mg/l), pH6.4, EC:0.96〕を用いた50穴セルトレイに播種した。1試験区あたりセルトレイ10穴分 (n=10)とし、子葉展開後から処理を開始し、7日間隔、100ml/10個体の処理量にて、表4に示す成分を表4に示す有効分濃度で含有する植物活力剤組成物(残部は水)を投与した(処理区)。その際、各植物活力剤組成物はホームミキサーにて強制乳化したものを用いた。この処理を計4回行った。4回処理後、6日後に植物体の生重量およびSPAD値を実施例2と同様に測定した。測定値は何れも無処理区(水処理単独)を100としたときの相対値で比較した。尚、試験期間中、肥料成分の追肥は行わなかった。従って、植物体は培土含有栄養分のみを吸収し利用する。また、本例では、処理区、無処理区とも10個体を用いてその平均生重量とSPAD値の測定を行った。SPAD値については、本葉第2葉を用いて、10個体につき、それぞれ3回測定(データ数30)した。
【0046】
【表4】
【0047】
【発明の効果】
本発明の植物活力剤及び植物活力剤組成物は、適切な濃度で処理すれば植物に対し薬害がなく、効率的に植物体の活力を向上させる為、各種農作物に使用することが可能である。また、本発明により植物の根の活着促進、SPAD値の増大、肥料吸収効率の増大等の植物成長に対する改善がみられる。
Claims (4)
- 式(1)で表される化合物
RCOO(AO)nX (1)
(式中、Rは炭素数11〜21のアルキル基またはアルケニル基を示し、Xは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基もしくはアシル基、炭素数2〜30のアルケニル基または対イオンを示す。また、AOはオキシエチレン基、オキシプロプレン基及びオキシブチレン基から選ばれる1つ以上の基であり、ランダム、ブロックいずれでも良く、nは平均付加モル数であり0〜30を示す。)
と、界面活性剤とを含有し、該化合物(1)の濃度が 0.5 〜 5000ppm の水溶液又は水性分散液として用いられるための、植物活力剤組成物。 - 式(1)のnが0〜20で、Rは炭素数13〜21のアルキル基またはアルケニル基であり、Xは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基もしくはアシル基、炭素数2〜22のアルケニル基または対イオンである(但し、nが0でない場合は対イオンを除く)請求項1記載の植物活力剤組成物。
- 肥料成分およびキレート剤から選ばれる1種以上を含有する請求項1又は2記載の植物活力剤組成物。
- 前記界面活性剤が非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる請求項1〜3の何れか1項記載の植物活力剤組成物。
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