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JP3767437B2 - 積層型コモンモードチョークコイル - Google Patents

積層型コモンモードチョークコイル Download PDF

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JP3767437B2
JP3767437B2 JP2001269447A JP2001269447A JP3767437B2 JP 3767437 B2 JP3767437 B2 JP 3767437B2 JP 2001269447 A JP2001269447 A JP 2001269447A JP 2001269447 A JP2001269447 A JP 2001269447A JP 3767437 B2 JP3767437 B2 JP 3767437B2
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Murata Manufacturing Co Ltd
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  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Power Engineering (AREA)
  • Microelectronics & Electronic Packaging (AREA)
  • Coils Or Transformers For Communication (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型コモンモードチョークコイル、例えば、音声信号用コモンモードチョークコイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、同一の位相を有するノイズの通過を阻止するコモンモードチョークコイルとして、例えば図8に示すように、それぞれのコイル部の径が略等しくかつそれぞれのコイル部の軸が略同一線上に配置されている複数のコイルを内蔵した積層型コモンモードチョークコイル60が知られている。この積層型コモンモードチョークコイル60は、コイル導体62〜69をそれぞれ表面に設けた絶縁性シート61等で構成されている。
【0003】
コイル導体62〜65は、絶縁性シート61にそれぞれ設けたビアホール75a〜75cを介して電気的に直列に接続され、絶縁性シート61の積み重ね方向に対して平行な軸を有する螺旋状コイルLaとされる。コイル導体66〜69は、絶縁性シート61にそれぞれ設けたビアホール75d〜75fを介して電気的に直列に接続され、絶縁性シート61の積み重ね方向に対して平行な軸を有する螺旋状コイルLbとされる。
【0004】
コイル導体62の引出し部62aは、シート61の奥側の辺の左側に露出してコイルLaの入力側引出し部とされる。コイル導体65の引出し部65aは、シート61の手前側の辺の左側に露出してコイルLaの出力側引出し部とされる。さらに、コイル導体62のコイル部62b、コイル導体63,64およびコイル導体65のコイル部65bは、螺旋状に1.75ターン周回して全体でコイルLaのコイル部70とされる。
【0005】
一方、コイル導体69の引出し部69aは、シート61の奥側の辺の右側に露出してコイルLbの入力側引出し部とされる。コイル導体66の引出し部66aは、シート61の手前側の辺の右側に露出してコイルLbの出力側引出し部とされる。さらに、コイル導体66のコイル部66b、コイル導体67,68およびコイル導体69のコイル部69bは、螺旋状に2.25ターン周回して全体でコイルLbのコイル部71とされる。
【0006】
各シート61は積み重ねられた後、一体的に焼成され、図9に示すような積層体80とされる。積層体80の奥側および手前側の側面には、それぞれコイルLa,Lbの入力電極81a,82a並びに出力電極81b,82bが設けられている。
【0007】
図10に示すように、コイルLaの入力側引出し部62aは入力電極81aに電気的に接続され、出力側引出し部65aは出力電極81bに電気的に接続されている。コイルLbの入力側引出し部69aは入力電極82aに電気的に接続され、出力側引出し部66aは出力電極82bに電気的に接続されている。各引出し部62a,65a,66a,69aは、それぞれ入出力電極81a〜82bとコイル部70,71との間を最短距離で直線的に繋いでいる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のコモンモードチョークコイル60の構造では、二つの螺旋状コイルLaとLbのターン数に必ず0.5ターンの差が生じる。従って、コイルLaの線路長とコイルLbの線路長とが異なり、コイルLaとLbの間に伝送遅延差が生じる。このため、同相信号の抑圧特性(同相抑圧特性)が悪いという問題があった。そこで、従来のコモンモードチョークコイル60は、コイルLa,Lbの伝送遅延の差が無視できる程度の低い周波数帯の信号を取り扱う信号伝送線路や電源ラインに限定して使用されてきた。
【0009】
しかしながら、近年の伝送信号の高周波化や差動信号伝送方式の採用などにより、コイル間のターン数の差が無視できなくなってきている。例えば、差動信号伝送方式では、コイルのターン数の差分(コイルの伝送線路長差分)の伝送遅延が発生し、差動信号伝送のバランスが損なわれるという問題が生じている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、高周波帯域における伝送遅延の発生が少なく、差動信号伝送における伝送信号のバランスが損なわれることのない積層型コモンモードチョークコイルを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段及び作用】
前記目的を達成するため、第1の発明に係る積層型コモンモードチョークコイルは、
(a)複数の絶縁層と複数のコイル導体を積み重ねて構成した積層体と、
(b)前記コイル導体を電気的に接続して構成した、引出し部とコイル部を有する少なくとも二つ以上の螺旋状コイルとを備え、
(c)前記二つ以上の螺旋状コイルは、それぞれのコイル部の径が略等しく、それぞれのコイル部の軸が略同一線上に配置されるとともに、前記積層体の積み重ね方向に並置され、
(d)記螺旋状コイルの引出し部前記絶縁層上に延設され、該引出し部とコイル部の接続部分が前記絶縁層の所定の方向の中央より少しずれて位置するとともに、前記積層体を平面透視したときに前記接続部分が相互に重なり合っていないこと
を特徴とする。
【0012】
また、第2の発明に係る積層型コモンモードチョークコイルは、
(e)複数の絶縁層と複数のコイル導体を積み重ねて構成した積層体と、
(f)前記コイル導体を電気的に接続して構成した、引出し部とコイル部を有する三つの螺旋状コイルとを備え、
(g)前記三つの螺旋状コイルは、それぞれのコイル部の径が略等しく、それぞれのコイル部の軸が略同一線上に配置されるとともに、前記積層体の積み重ね方向に並置され、
(h)前記三つの螺旋状コイルがトリファイラ構造を構成し、
(i)前記積層体の積み重ね方向において、中央部に位置する前記螺旋状コイルがグランド電極に接続され、
(j)前記積層体の積み重ね方向において、上部および下部に位置する二つの前記螺旋状コイルの引出し部前記絶縁層上に延設され、該引出し部とコイル部の接続部分が前記絶縁層の所定の方向の中央より少しずれて位置するとともに、前記積層体を平面透視したときに前記接続部分が相互に重なり合っていないこと
を特徴とする。
【0013】
以上の構成により、第1および第2の発明に係る積層型コモンモードチョークコイルにおいては、螺旋状コイルの引出し部とコイル部の接続部分が、例えば折り返し構造を有するようになる。そして、螺旋状コイルの各々はそのターン数および線路長が互いに等しくなって、コイル間における信号伝送の遅延差が少なくなる。また、引出し部とコイル部の接続部分が絶縁層の所定の方向の中央より少しずれて位置するとともに、積層体を平面透視したときに接続部分が相互に重なり合っていないため、絶縁層とコイル導体を積み重ねた積層体を焼成する際、引出し部とコイル部との接続部分に発生する局所的な内部応力が分散される。
【0015】
また、第1および第2の発明に係る積層型コモンモードチョークコイルにおいては、複数の螺旋状コイルはそれぞれ、複数のコイル導体を絶縁層に設けたビアホールを介して電気的に接続して構成され、積層体を平面透視したとき、複数の螺旋状コイルのそれぞれの入力側引出し部を有するコイル導体に接続されたビアホール同士が同一位置に配設され、かつ、それぞれの出力側引出し部を有するコイル導体に接続されたビアホール同士が同一位置に配設されていることが好ましい。以上の構成により、引出し部を有するコイル導体を残して、前記螺旋状コイルのそれぞれのコイル部を構成するコイル導体のパターン形状や積み重ね順を同じにすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る積層型コモンモードチョークコイルの実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
[第1実施形態、図1〜図3]
図1に示すように、積層型コモンモードチョークコイル1は、コイル導体3〜11をそれぞれ表面に設けた絶縁性シート2等で構成されている。絶縁性シート2は、誘電体セラミック粉末や磁性体セラミック粉末を結合剤などと一緒に混練したものをシート状にしたものである。コイル導体3〜11は、Ag,Pd,Cu,Ni,Au,Ag−Pd等からなり、印刷、スパッタリング、蒸着、フォトリソグラフィ等の方法により形成される。
【0018】
コイル導体3〜5は、絶縁性シート2にそれぞれ設けたビアホール15a,15bを介して電気的に直列に接続され、絶縁性シート2の積み重ね方向に対して平行な軸を有する螺旋状コイルLaとされる。コイル導体9〜11は、絶縁性シート2にそれぞれ設けたビアホール15e,15fを介して電気的に直列に接続され、絶縁性シート2の積み重ね方向に対して平行な軸を有する螺旋状コイルLbとされる。コイル導体6〜8は、絶縁性シート2にそれぞれ設けたビアホール15c,15dを介して電気的に直列に接続され、絶縁性シート2の積み重ね方向に対して平行な軸を有する螺旋状コイルLcとされる。これら螺旋状コイルLa〜Lcはトリファイラ構造となっており、絶縁性シート2の積み重ね方向において、上からLa,Lc,Lbの順で積み重ねられている。
【0019】
コイル導体3は、引出し部3aとコイル部3bを有している。引出し部3aは、シート2の奥側の辺に対して平行に延設され、その一端はシート2の奥側の辺の左側に露出しており、コイルLaの入力側引出し部とされる。引出し部3aの他端は、シート2の奥側の辺の略中央付近でコイル部3bに接続している。また、コイル導体5は、引出し部5aとコイル部5bを有している。引出し部5aは、シート2の手前側の辺に対して平行に延設され、その一端はシート2の手前側の辺の左側に露出しており、コイルLaの出力側引出し部とされる。引出し部5aの他端は、シート2の手前側の辺の略中央付近でコイル部5bに接続している。さらに、コイル導体3のコイル部3b、コイル導体4およびコイル導体5のコイル部5bは、螺旋状に所定のターン数を周回して全体でコイルLaのコイル部12とされる。
【0020】
コイル導体9は、引出し部9aとコイル部9bを有している。引出し部9aは、シート2の手前側の辺に対して平行に延設され、その一端はシート2の手前側の辺の右側に露出しており、コイルLbの出力側引出し部とされる。引出し部9aの他端は、シート2の手前側の辺の略中央付近でコイル部9bに接続している。また、コイル導体11は、引出し部11aとコイル部11bを有している。引出し部11aは、シート2の奥側の辺に対して平行に延設され、その一端はシート2の奥側の辺の右側に露出しており、コイルLbの入力側引出し部とされる。引出し部11aの他端は、シート2の奥側の辺の略中央付近でコイル部11bに接続している。さらに、コイル導体9のコイル部9b、コイル導体10およびコイル導体11のコイル部11bは、螺旋状に所定のターン数を周回して全体でコイルLbのコイル部13とされる。
【0021】
コイル導体6は、引出し部6aとコイル部6bを有している。引出し部6aの一端はシート2の手前側の辺の中央に露出しており、コイルLcの引出し部とされる。また、コイル導体8は、引出し部8aとコイル部8bを有している。引出し部8aの一端はシート2の奥側の辺の中央に露出しており、コイルLcの引出し部とされる。さらに、コイル導体6のコイル部6b、コイル導体7およびコイル導体8のコイル部8bは、螺旋状に所定のターン数を周回して全体でコイルLcのコイル部14とされる。
【0022】
各絶縁性シート2は積み重ねられ、さらに、上下に保護用絶縁性シートが配置された後、一体的に焼成される。これにより、図2に示す積層体20とされる。積層体20の奥側および手前側の側面には、それぞれコイルLa,Lbの入力電極21a,22aおよび出力電極21b,22b、並びに、コイルLcのグランド電極G1,G2が設けられている。
【0023】
図3に示すように、コイルLaの入力側引出し部3aは入力電極21aに電気的に接続され、出力側引出し部5aは出力電極21bに電気的に接続されている。コイルLbの入力側引出し部11aは入力電極22aに電気的に接続され、出力側引出し部9aは出力電極22bに電気的に接続されている。コイルLcの引出し部8a,6aはそれぞれグランド電極G1,G2に電気的に接続されている。
【0024】
こうして得られた積層型コモンモードチョークコイル1は、それぞれのコイル部12〜14の径が等しくかつコイル部12〜14の軸が同一線上に配置されている螺旋状コイルLa〜Lcを内蔵している。螺旋状コイルLa〜Lcは積層体20の積み重ね方向に並置されており、しかも、各コイルLa〜Lcの軸を揃えることにより、コイルLa〜Lc相互間の磁気結合度を大きくしている。これら三つのコイルLa〜Lcのうち、コイルLcはコイルLa,Lbを伝播する信号の帰還線路として機能している。
【0025】
コイルLa,Lbの各引出し部3a,5a,9a,11aは二つの屈曲部を有する屈曲形状パターン(クランク状パターン)であり、シート2の長手方向の略中央に位置するコイル部3b,5b,9b,11bとの接続位置から入出力電極21a,21b,22a,22bまでを繋いでいる。そして、引出し部3a,5aとコイル部3b,5bとの接続部分が、折り返し構造を有している。これにより、コイルLa,Lbの各々はそのターン数および線路長が互いに等しくなって、コイルLa,Lb間における信号伝送の遅延差が少なくなる。この結果、高周波帯域における伝送遅延の発生が少なくなり、例えば、音声信号で用いられる差動信号伝送における伝送信号のバランスが大幅に改善される。
【0026】
一方、コイルLcの引出し部6a,8aはそれぞれ、グランド電極G1,G2とコイル部14との間を最短距離で直線的に繋いでいる。コイルLcは、帰還線路として機能するだけなので、コイルLa,Lbと線路長を合わせる必要がない。従って、引出し部6a,8aはコイル部14に直線的に繋がっていてもよい。
【0027】
さらに、本第1実施形態では、積層体20を平面透視したとき、コイルLa〜Lcのそれぞれの入力側引出し部3a,11a,8aを有するコイル導体3,11,8に接続されたビアホール15a,15f,15d同士が同一位置に配設され、かつ、それぞれの出力側引出し部5a,9a,6aを有するコイル導体5,9,6に接続されたビアホール15b,15e,15c同士が同一位置に配設されている。これにより、引出し部を有するコイル導体3,5,6,8,9,11を残して、螺旋状コイルLa〜Lcのそれぞれのコイル部12〜14を構成するコイル導体4,10,7のパターン形状やそれらが形成されている絶縁性シート2の積層の順序も同じにすることができる。従って、積層型コモンモードチョークコイルの製造工数が少なくなり、その製造コストを大幅に削減することができる。
【0028】
なお、螺旋状コイルLcは必ずしも積層方向の中央部に配置されなくてもよく、上部や下部に配置されてもよい。また、螺旋状コイルLa,Lb,Lcのそれぞれのコイル径は同じでなくてもよい。
【0029】
[第2実施形態、図4〜図6]
図4に示すように、積層型コモンモードチョークコイル31は、コイル導体33〜38をそれぞれ表面に設けた絶縁性シート32等で構成されている。コイル導体33〜35は、絶縁性シート32にそれぞれ設けたビアホール45a,45bを介して電気的に直列に接続され、絶縁性シート32の積み重ね方向に対して平行な軸を有する螺旋状コイルLaとされる。コイル導体36〜38は、絶縁性シート32にそれぞれ設けたビアホール45c,45dを介して電気的に直列に接続され、絶縁性シート32の積み重ね方向に対して平行な軸を有する螺旋状コイルLbとされる。
【0030】
コイル導体33は、引出し部33aとコイル部33bを有している。引出し部33aは、シート32の奥側の辺に対して平行に延設され、その一端はシート32の奥側の辺の左側に露出しており、コイルLaの入力側引出し部とされる。引出し部33aの他端は、シート32の奥側の辺の中央左寄り付近でコイル部33bに接続している。また、コイル導体35は、引出し部35aとコイル部35bを有している。引出し部35aは、シート32の手前側の辺に対して平行に延設され、その一端はシート32の手前側の辺の左側に露出しており、コイルLaの出力側引出し部とされる。引出し部35aの他端は、シート32の手前側の辺の中央左寄り付近でコイル部35bに接続している。さらに、コイル導体33のコイル部33b、コイル導体34およびコイル導体35のコイル部35bは、螺旋状に所定のターン数を周回して全体でコイルLaのコイル部42とされる。
【0031】
コイル導体36は、引出し部36aとコイル部36bを有している。引出し部36aは、シート32の手前側の辺に対して平行に延設され、その一端はシート32の手前側の辺の右側に露出しており、コイルLbの出力側引出し部とされる。引出し部36aの他端は、シート32の手前側の辺の中央右寄り付近でコイル部36bに接続している。また、コイル導体38は、引出し部38aとコイル部38bを有している。引出し部38aは、シート32の奥側の辺に対して平行に延設され、その一端はシート32の奥側の辺の右側に露出しており、コイルLbの入力側引出し部とされる。引出し部38aの他端は、シート32の奥側の辺の中央右寄り付近でコイル部38bに接続している。さらに、コイル導体36のコイル部36b、コイル導体37およびコイル導体38のコイル部38bは、螺旋状に所定のターン数を周回して全体でコイルLbのコイル部43とされる。
【0032】
各絶縁性シート32は積み重ねられ、さらに、上下に保護用絶縁性シートが配置された後、一体的に焼成される。これにより、図5に示す積層体50とされる。積層体50の奥側および手前側の側面には、それぞれコイルLa,Lbの入力電極51a,52aおよび出力電極51b,52bが設けられている。
【0033】
図6に示すように、コイルLaの入力側引出し部33aは入力電極51aに電気的に接続され、出力側引出し部35aは出力電極51bに電気的に接続されている。コイルLbの入力側引出し部38aは入力電極52aに電気的に接続され、出力側引出し部36aは出力電極52bに電気的に接続されている。
【0034】
こうして得られた積層型コモンモードチョークコイル31は、それぞれのコイル部42,43の径が等しくかつコイル部42,43の軸が同一線上に配置されている螺旋状コイルLa,Lbを内蔵している。螺旋状コイルLa,Lbは積層体50の積み重ね方向に並置されており、しかも、各コイルLa、Lbの軸を揃えることにより、コイルLa,Lb相互間の磁気結合度を大きくしている。
【0035】
コイルLa,Lbの各引出し部33a,35a,36a,38aは二つの屈曲部を有する屈曲形状パターン(クランク状パターン)であり、シート32の長手方向の中央よりも少しずれて位置するコイル部33b,35b,36b,38bとの接続位置から入出力電極51a,51b,52a,52bまでを繋いでいる。そして、引出し部33a,35aとコイル部33b,35bとの接続部分が、折り返し構造を有している。これにより、コイルLa,Lbの各々はそのターン数および線路長が互いに等しくなって、コイルLa,Lb間における信号伝送の遅延差が少なくなる。この結果、高周波帯域における伝送遅延の発生が少なくなり、差動信号伝送における伝送信号のバランスが大幅に改善される。
【0036】
さらに、積層体50を平面透視したとき、螺旋状コイルLa,Lbのそれぞれの引出し部33a,35a,36a,38aとコイル部33b,35b,36b,38bとの接続部分が、相互にずれており、重なり合っていない。これにより、引出し部33a,35a,36a,38aが重ならず、積層体50を焼成する際、引出し部33a,35a,36a,38aとコイル部33b,35b,36b,38bとの接続部分に発生する局所的な内部応力が分散される。従って、焼成時に積層体50の割れやクラックの発生を防止することができる。
【0037】
[他の実施形態]
なお、本発明は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、コイル導体の引出し部は屈曲形状パターンにする必要はなく、図7に示すように、シート2の長手方向の略中央に位置するコイル導体9のコイル部9bとの接続位置から入出力電極までを直線的に接続するものであってもよい。このように、外部電極までの距離を最短にすると、引出し部に発生するノーマルモード成分のインピーダンスを小さくすることができる。
【0038】
さらに、前記実施形態は、それぞれ導体パターンやビアホールが形成された絶縁性シートを積み重ねた後、一体的に焼成するものであるが、必ずしもこれに限定されない。絶縁性シートは予め焼成されたものを用いてもよい。また、以下に説明する製法によって積層型コモンモードチョークコイルを製造してもよい。印刷等の方法によりペースト状の絶縁材料にて絶縁体層を形成した後、その絶縁体層の表面にペースト状の導電性材料を塗布して導体パターンやビアホールを形成する。次にペースト状の絶縁材料を上から塗布して絶縁層とする。同様にして、順に重ね塗りすることにより積層構造を有するコモンモードチョークコイルが得られる。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、螺旋状コイルの引出し部とコイル部の接続位置を絶縁層の所定の方向の略中央に設けることにより、螺旋状コイルの引出し部とコイル部の接続部分が、例えば折り返し構造を有するようになる。そして、螺旋状コイルの各々のターン数および線路長を互いに等しくでき、コイル間における信号伝送の遅延差を少なくすることができる。しかも、積層体を平面透視したとき、螺旋状コイルのそれぞれの引出し部とコイル部との接続部分を、相互に重なり合わないように配置したため、積層体を焼成する際、引出し部とコイル部との接続部分に発生する局所的な内部応力を分散させることができる。従って、焼成時に積層体の割れやクラックの発生を防止することができる。
【0040】
さらに、積層体を平面透視したとき、複数の螺旋状コイルのそれぞれの入力側引出し部を有するコイル導体に接続されたビアホール同士を同一位置に配設し、かつ、それぞれの出力側引出し部を有するコイル導体に接続されたビアホール同士を同一位置に配設することにより、引出し部を有するコイル導体を残して、螺旋状コイルのそれぞれのコイル部を構成するコイル導体のパターン形状や積み重ね順を同じにすることができる。従って、コイル導体のパターン形状の種類が少なくなり、積層型コモンモードチョークコイルの製造効率が高くなってその製造コストを大幅に引き下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る積層型コモンモードチョークコイルの第1実施形態の構成を示す分解斜視図。
【図2】図1に示した積層型コモンモードチョークコイルの外観斜視図。
【図3】図2に示した積層型コモンモードチョークコイルの平面透視図。
【図4】本発明に係る積層型コモンモードチョークコイルの第2実施形態の構成を示す分解斜視図。
【図5】図4に示した積層型コモンモードチョークコイルの外観斜視図。
【図6】図5に示した積層型コモンモードチョークコイルの平面透視図。
【図7】他の実施形態を示すコイル導体の平面図。
【図8】従来の積層型コモンモードチョークコイルの構成を示す分解斜視図。
【図9】図8に示した積層型コモンモードチョークコイルの外観斜視図。
【図10】図9に示した積層型コモンモードチョークコイルの平面透視図。
【符号の説明】
1,31…積層型コモンモードチョークコイル
2,32…絶縁性シート
3〜11,33〜38…コイル導体
3a,5a,9a,11a,33a,35a,36a,38a…引出し部
15a〜15f,45a〜45d…ビアホール
La,Lb,Lc…螺旋状コイル

Claims (4)

  1. 複数の絶縁層と複数のコイル導体を積み重ねて構成した積層体と、
    前記コイル導体を電気的に接続して構成した、引出し部とコイル部を有する少なくとも二つ以上の螺旋状コイルとを備え、
    前記二つ以上の螺旋状コイルは、それぞれのコイル部の径が略等しく、それぞれのコイル部の軸が略同一線上に配置されるとともに、前記積層体の積み重ね方向に並置され、
    記螺旋状コイルの引出し部前記絶縁層上に延設され、該引出し部とコイル部の接続部分が前記絶縁層の所定の方向の中央より少しずれて位置するとともに、前記積層体を平面透視したときに前記接続部分が相互に重なり合っていないこと
    を特徴とする積層型コモンモードチョークコイル。
  2. 複数の絶縁層と複数のコイル導体を積み重ねて構成した積層体と、
    前記コイル導体を電気的に接続して構成した、引出し部とコイル部を有する三つの螺旋状コイルとを備え、
    前記三つの螺旋状コイルは、それぞれのコイル部の径が略等しく、それぞれのコイル部の軸が略同一線上に配置されるとともに、前記積層体の積み重ね方向に並置され、
    前記三つの螺旋状コイルがトリファイラ構造を構成し、
    前記積層体の積み重ね方向において、中央部に位置する前記螺旋状コイルがグランド電極に接続され、
    前記積層体の積み重ね方向において、上部および下部に位置する二つの前記螺旋状コイルの引出し部前記絶縁層上に延設され、該引出し部とコイル部の接続部分が前記絶縁層の所定の方向の中央より少しずれて位置するとともに、前記積層体を平面透視したときに前記接続部分が相互に重なり合っていないこと
    を特徴とする積層型コモンモードチョークコイル。
  3. 前記螺旋状コイルの引出し部とコイル部の接続部分の少なくとも一つが、折り返し構造を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層型コモンモードチョークコイル。
  4. 前記複数の螺旋状コイルはそれぞれ、前記複数のコイル導体を前記絶縁層に設けたビアホールを介して電気的に接続して構成され、
    前記積層体を平面透視したとき、前記複数の螺旋状コイルのそれぞれの入力側引出し部を有するコイル導体に接続されたビアホール同士が同一位置に配設され、かつ、それぞれの出力側引出し部を有するコイル導体に接続されたビアホール同士が同一位置に配設されていること、
    を特徴とする請求項1〜請求項のいずれかに記載の積層型コモンモードチョークコイル。
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