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JP3765687B2 - 車両走行安全装置 - Google Patents

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JP3765687B2
JP3765687B2 JP15490199A JP15490199A JP3765687B2 JP 3765687 B2 JP3765687 B2 JP 3765687B2 JP 15490199 A JP15490199 A JP 15490199A JP 15490199 A JP15490199 A JP 15490199A JP 3765687 B2 JP3765687 B2 JP 3765687B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は車両走行安全装置に関し、より詳しくは、車両進行方向に存在する物体(障害物)を検知し、接触の可能性を判断して自動ブレーキを作動させている間に検知していた物体を見失った場合に対処するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、先行車などの障害物(物体)との接触回避技術が種々提案され、例えば特開平6−298022号公報において、レーザレーダなどの検知手段を用いて先行車などの障害物との車間距離(相対距離)を検知して警報を発する、あるいは自動ブレーキ装置(制動装置)を作動させる技術が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、レーザレーダで先行車などの障害物を検知して自動ブレーキ装置を作動させているとき、大きなピッチ角が発生して障害物がレーザレーダの検知範囲から外れたり、レーザレーダに故障が生じるなどして、検知していた障害物を見失うことがある。
【0004】
そのような場合、自動ブレーキ動作を急に解除すると、乗員に違和感を与えると共に、障害物が現実に近接しているときは接触の可能性が生じることから、状況に応じて制御するのが望ましい。
【0005】
他方、見失うまで検知していた障害物の情報自体が、例えば、検知時間が短くて精度が低いなどの理由で不確かなことも考えられる。さらには、他車が前方を素早く横断して遠ざかった場合など、障害物が真に不在となったため見失うことも予想される。そのような際にも自動ブレーキ動作を継続するのは不要であって、継続すると運転フィーリングを低下させる。
【0006】
従って、この発明の目的は、上記した不都合を解消することにあり、障害物などの物体の検知状況に応じて障害物となる度合いを判定することで、上記したような場合にも対処できるようにした車両走行安全装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1項にあっては、車両の進行方向に存在する物体を検知し、前記車両の装置を作動させて接触回避に必要な動作を行う車両走行安全装置において、前記物体が前記車両に対して障害物であることの確からしさの度合いを意味する障害となる度合いを判定する障害度判定手段、および検知していた物体を見失ったとき(前記物体が検知できなくなったとき)、判定された障害となる度合いに応じて前記装置の作動を制御する制御手段を備え、前記障害度判定手段は、最初に検知した前記車両に対する前記物体の前後方向相対位置および前記物体の車両前方中心からの横方向位置が共に小さいとき、前記障害となる度合いの初期値を小さく判定する如く構成した。
【0008】
このように、検知していた物体(障害物)を見失ったときも、見失う以前の検知情報に基づいて判定された障害となる度合いに応じて前記装置の作動を制御することで、接触回避効果を得ながら違和感のない運転フィーリングを実現することができる。また、最初に検知した車両に対する物体の前後方向相対位置および物体の車両前方中心からの横方向位置が共に小さいとき、障害となる度合いの初期値を小さく判定することで、障害となる度合いを適正に決定することができる。
【0009】
ここで、「前記車両の装置を作動させて接触回避に必要な動作を行う」とは具体的には、警報装置を作動させて運転者に報知する、自動制動手段(自動ブレーキ機構)を作動させて車両を制動させる、操舵装置を作動させて操舵で回避させる、変速機あるいは内燃機関を介してシフトダウンあるいは機関出力低減(フュエルカットなど)させて減速させる、を含む意味で使用する。
【0011】
請求項項にあっては、前記障害度判定手段は、前記物体を検知していた時間および前記物体を検知していたときの受信強度の少なくともいずれかに基づいて前記障害となる度合いを判定する如く構成した。これによって、同様に障害となる度合いを適正に決定することができる。
【0012】
請求項項にあっては、前記障害度判定手段は、前記物体を検知していた時間が長いほど前記障害となる度合いを大きく判定する如く構成した。これによって、同様に障害となる度合いを適正に決定することができる。
【0013】
請求項項にあっては、前記障害度判定手段は、前記物体を見失ったときの前記車両に対する前記物体の相対位置に基づいて前記障害となる度合いを減少させる如く構成した。これによって、同様に障害となる度合いを適正に決定することができる。
【0014】
請求項項にあっては、前記障害度判定手段は、前記物体を見失ったときの前記車両に対する前記物体の相対速度に基づいて前記障害となる度合いを減少させる如く構成した。これによって、一層違和感のない運転フィーリングを実現することができる。
【0015】
請求項項にあっては、前記制御手段が、前記障害度判定手段の判定結果に基づいて前記車両の制動手段を自動的に作動させる自動制動手段、および前記自動制動手段によって前記制動手段が作動させられている間に、前記物体を見失ったとき、見失った時点以前での検知結果に基づいて前記物体の位置および速度の少なくともいずれかの情報を推定する物体情報推定手段を備え、前記自動制動手段は、作動中に前記物体を見失ったとき、前記障害となる度合いが大きいときは前記物体情報推定手段の推定結果に基づいて前記制動手段を作動させると共に、前記障害となる度合いが小さいときは前記障害となる度合いに基づいて前記制動手段を作動させる如く構成した。
【0016】
これによって、障害物を見失ったときも、接触回避効果を得ながら、一層違和感のない運転フィーリングを実現することができる。
【0017】
請求項項にあっては、前記自動制動手段は、前記障害となる度合いが小さいほど前記制動手段を作動させたときの減速度の保持時間を短くする如く構成した。これによって一層違和感のない運転フィーリングを実現することができる。
【0018】
請求項項にあっては、前記自動制動手段は、前記障害となる度合いに基づいて前記制動手段を作動させたときの減速度の減少速度を変更する如く構成した。これによって、一層違和感のない運転フィーリングを実現することができる。また、請求項9項にあっては、車両の進行方向に存在する物体を検知し、前記車両の装置を作動させて接触回避に必要な動作を行う車両走行安全装置において、前記物体が前記車両に対して障害物であることの確からしさの度合いを意味する障害となる度合いを判定する障害度判定手段、および検知していた物体を見失ったとき、判定された障害となる度合いに応じて前記装置の作動を制御する制御手段、を備え、前記障害度判定手段は、最初に検知した前記車両に対する前記物体の前後方向相対位置が検知可能最大距離に近いとき、または最初に検知した前記物体の車両前方中心からの横方向位置が検知範囲の両端にあるとき、前記障害となる度合いの初期値を大きく判定する如く構成した。これによって、通常、障害物が検知され始めるのは検知範囲の端であり、検知範囲の端において障害物であるか可能性が高いとみなすので、障害となる度合いを適性に決定することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1はこの発明に係る車両走行安全装置を全体的に示す概略図である。
【0021】
以下説明すると、車両10(車輪Wなどの構成部品で断片的に示す)の前方のヘッドライト(図示せず)付近に、レーザレーダ12(物体検知装置)が1基、設けられる。レーザレーダ12は、車両10の進行方向に向けて路面と水平にレーザ光(電磁波)を発射し、進行方向に存在する物体(先行車などの障害物)からの反射波(エコー)を受信する。
【0022】
ここで、反射波はレーザ光の吸収度に応じて相違し、先行車のテールランプ内のリフレクタなどに反射するとき、最も強度が大きい。
【0023】
レーザレーダ12の出力は、マイクロコンピュータからなるレーダ出力処理部14(物体検知装置)に入力される。レーダ出力処理部14は、レーザ光を発射してから反射波(エコー)を受信するまでの時間を測定して物体までの相対距離(離間距離)を測定し、さらに相対距離を微分することで物体の相対速度を測定する。
【0024】
また、反射波の入射方向から、物体の方位を検知し、物体の二次元情報を得る。さらに、レーザレーダ12の受信した反射波の受信強度も、レーダ出力処理部14に入力される。レーダ出力処理部14の出力は、同様にマイクロコンピュータからなる処理ECU16に送られる。
【0025】
車両10の中央位置付近にはヨーレートセンサ18が配置され、車体重心を中心とする鉛直(重力)軸回りの自転運動の速さ(回転角速度)に応じた信号を出力する。さらに、車両10のドライブシャフト(図示せず)の付近には車輪速センサ20が設けられ、車両10の走行速度(車速)に応じた信号を出力する。これらセンサ18,20の出力も処理ECU16に送られる。
【0026】
また、車両10のブレーキ機構(制動装置)22において、ブレーキペダル24は負圧ブースタ26を介してマスタシリンダ28に接続される。負圧ブースタ26はダイアフラム(図示せず)で2つの室に仕切られ、機関吸気系から導入される負圧と機関外から導入される大気圧の割合が調節されて運転者の踏み込み力が倍力され、それに応じた油圧(ブレーキオイル圧)がマスタシリンダ28から油路30を介して車輪Wのブレーキ装置(図示せず)に供給され、車両10を制動する。
【0027】
負圧ブースタ26の負圧供給系と大気圧供給系(共に図示せず)には電磁バルブ(空圧電磁バルブ)36が設けられる。電磁バルブ36は駆動回路(図示せず)を介して処理ECU16に接続され、処理ECU16からの指令値(PWMのデューティ比信号)に応じて開閉して大気圧を導入し、大気圧と負圧との割合を調節し、運転者のブレーキ操作とは独立に、ブレーキ機構22を作動させ、車両10を自動的に制動する。
【0028】
また、車両10の運転席(図示せず)の適宜位置にはアラーム、インジケータなどからなる警報装置40が設けられる。警報装置40は処理ECU16に接続され、その指令を受けて警報動作を行う。
【0029】
次いで、この装置の動作、より具体的には前記した処理ECU16の動作を説明する。
【0030】
図2はその動作を示すフロー・チャートであり、図3は同様にその動作を示すブロック図である。
【0031】
図3を先に参照して説明すると、この装置は状態量算出部を備え、状態量算出部は、レーザレーダ12および車輪速センサ20の検出値に基づき、自車(車両10)に対する障害物(先行車などの物体)の相対距離と相対速度、および自車の速度(走行速度)と加速度(走行加速度)を算出する。
【0032】
自動ブレーキ判断部は、状態量算出部の算出値に基づき、後述の如く、障害物との接触の可能性を算出して自動ブレーキ作動の適否を判断する。また、自動ブレーキ判断部は、障害物の確信度を算出する。
【0033】
ここで、「障害物の確信度」とは障害物であることの確からしさの度合いを意味し、前記した障害となる度合いと同義である。確信度は0から1.0までの値に決定(判定)する。このように、この出願に係る装置においては確信度(即ち、障害となる度合い)を算出(判定)し、確信度が大きいほど、障害物であることの確からしさが高いとみなすようにした。
【0034】
減速度指令値算出部は、自動ブレーキの判断部の判断結果に基づいて減速度を算出し、それに基づいて電磁バルブ36の指令値を算出する。
【0035】
上記を前提として図2フロー・チャートを参照してこの発明に係る装置の動作を説明する。尚、図示のプログラムは、例えば100msecごとに実行される。
【0036】
S10において上記した障害物の確信度を計算する。
【0037】
図4はその作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0038】
以下説明すると、S100において障害物を検知しているか否か判断し、肯定されるときはS102に進み、前回(図2フロー・チャートの前回ループ時)は障害物を検知していなかったか否か判断する。
【0039】
S102で肯定されるときは、今回初めて検知されたことになるので、S104に進み、レーザレーダ12の検知範囲での障害物の検知位置(相対位置)に基づいて確信度の初期値を設定する。通常、障害物はレーザレーダ12の検知範囲の端(遠距離側または両端(左右端))から検知され始めるため、初めて検知されたときの位置が検知可能最大距離に近い、比較的遠距離、または両端にあるときは、障害物である可能性が高いとみなし、確信度の初期値を大きく設定する。
【0040】
他方、初めて障害物が検知されたときの位置が検知可能最大距離に対して比較的近距離で、かつ検知範囲の中心付近にある場合、風で煽られて浮遊する新聞紙、金属片などを検知した可能性が高く、よって確信度の初期値を小さく設定する。
【0041】
例えば、図5において初めて検知された位置が範囲A1であれば確信度初期値を0.4とし、A2であれば0.2、A3であれば0などと設定する。尚、この値はレーザレーダ12の検知性能の低下に応じて適宜変更するのが望ましい。
【0042】
尚、S102で否定されるときはS106に進み、前回も検知されていることから、S106に進んで前回の確信度に一定値を加算する。S104あるいはS106の後はS108に進み、受信強度に基づいて算出した確信度を制限する。
【0043】
より具体的には、レーザレーダ12の受信強度から図6に示す特性を検索して基準となる確信度を求め、算出した確信度を基準となる値と比較し、算出値がそれを超えているときは、算出値を基準となる値に置き換える。尚、前記した如く、確信度は1.0を上限値とする。
【0044】
他方、S100で否定されるときはS110に進み、障害物を前回検知しているか否か判断する。S110で否定されるときは今回も前回も検知していないので、以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときは、今回(図2フロー・チャートの今回ループ時)初めて障害物を見失ったことになるので、S112に進み、見失うまでの検知位置(相対位置)および相対速度に応じて算出した一定値だけ確信度を減算する。
【0045】
即ち、例えば、障害物を見失った位置が検知範囲の端にあれば、障害物が横方向(車幅方向)に移動した、あるいは自車が横方向に移動して回避したと考えられるため、接触の可能性が低いとみなし、確信度を減算する。
【0046】
ただし、障害物を見失った位置が近距離の場合は、検知範囲外になっても、接触の可能性を否定できないので、確信度を低下させないようにする。より具体的には、図7に示す如く、障害物を見失った位置が範囲B1であれば確信度を保持し、B2であれば0.2だけ減算し、B3であれば0.4だけ減算する。
【0047】
また、見失うまでの障害物の横方向相対速度(変位速度)が大きい場合、障害物は自車の前を横切る物体であって接触の可能性が小さい。従って、図8に示す如く、障害物の横方向相対速度の絶対値を求め、検知範囲での障害物の前回までの位置と共に、あるいはそれに代えて、横方向相対速度に応じて確信度を減算しても良い。
【0048】
さらには、検知範囲での障害物の前回までの位置と横方向相対速度とから、障害物が自車の方向に進行するか否か判断し、自車の方向に進行しないと判断されるとき、確信度を減算するようにしても良い。
【0049】
図9に確信度の時間的な遷移の一例を示す。例えば、時刻t0で障害物が検知され、確信度の初期値が設定されたとする。障害物が連続的に検知されたとすると、確信度は徐々に増加補正される。
【0050】
時刻t1で障害物を見失ったとすると、そのときの状況に応じて、例えば図示のように、確信度が減算される。尚、図9に示す例では減算時の所定量を大きく設定して確信度を急激に低下させているが、同図に想像線で示す如く、所定量を小さく設定して確信度を徐々に低下させても良い。
【0051】
また、S104で確信度の初期値を障害物の検知位置(相対位置)に基づいて設定したが、図6に示す特性を利用して確信度の初期値を受信強度に比例するように設定しても良い(その際にはS108の処理を省略するか、別の特性を用いる)。
【0052】
図2フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS12に進み、自動ブレーキ中に障害物を見失ったか否か判断し、否定されるときはS14に進んで現在の検知情報に基づいて減速度指令値を計算する。
【0053】
これについて先の図3を再び参照して説明すると、自動ブレーキ判断部は、状態量算出部が算出した自車(車両10)に対する障害物の相対距離と相対速度、および自車の速度(走行速度)と加速度(走行加速度)に基づき、障害物との接触の可能性を算出して自動ブレーキ作動の適否を判断する。
【0054】
具体的には、算出した障害物との相対距離と相対速度、自車の速度(走行速度)、加速度(走行加速度)などから、ステアリング操作で接触を回避できる相対距離とブレーキ操作で接触を回避できる相対距離のしきい値を求めておく。
【0055】
相対速度が比較的低い領域で、ステアリング操作で接触を回避できる相対距離が、ブレーキの作動によって接触を回避できる相対距離よりも大きい場合の制御を例にとると、算出された相対距離がステアリング操作による接触回避可能相対距離(しきい値)以下で、ブレーキによる接触回避可能相対距離(しきい値)以上であるとき、電磁バルブ36を介してブレーキ機構22を自動的に作動させて車両10を制動(必要に応じて警報装置40を通じて運転者に警報)する。
【0056】
この場合、減速度指令値は、まだブレーキにより回避可能と思われるため、比較的小さい値とする。その後、相対距離がブレーキ操作で接触を回避できる相対距離以下となった場合、より大きな減速度指令値でブレーキを作動させる。
【0057】
他方、S12で肯定されるときはS16に進み、障害物を見失う以前の検知情報から障害物情報を推定する。
【0058】
これについて説明すると、先ず、検知されていたときの障害物の速度をV0、加速度をa0、自車から障害物までの相対距離をX0、そのとき(検知されていたとき)から現在までの経過時間をtとすると、障害物の現在の相対距離X1および速度V1は、以下のように推定することができる。
X1=X0+(V0・t+1/2・a0・t2 )−インテグラルVdt
V1=V0+a0・t
ここでVは自車速度であり、自車は等減速運動しているとする。
【0059】
これより、障害物の現在の相対速度ΔV1は、以下のように推定することができる。
ΔV1=V−V1
【0060】
次いでS18に進み、前述した確信度を設定値、例えば0.6と比較して確信度が設定値を超えるか否か判断し、肯定されるときは障害物であることの確からしさが高いと判断してS20に進み、上記の如くして推定した障害物情報に基づいて減速度指令値を計算する。
【0061】
他方、S18で否定されるときは障害物であることの確からしさが必ずしも高くないと判定し、S22に進んで確信度を用いて減速度指令値を計算、具体的には保持または減算する。
【0062】
図10は図2フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートであるが、時刻t0において自動ブレーキ制御が開始した後、時刻t1で障害物を見失ったとすると、確信度が設定値を超えるときは推定した障害物情報に基づいて自動ブレーキ制御を行うと共に、確信度が設定値以下のときは確信度に応じて自動ブレーキ制御を行う。
【0063】
より具体的には、算出した確信度から予め設定されたテーブルを検索し、減速度の保持時間を求めて行う。図11にそのテーブル特性を示す。図示の如く、保持時間Tn(n:1から3)は、確信度が低い(小さい)ほど短い(小さい)ように設定する。
【0064】
従って、算出した確信度から図11に示すテーブルを検索し、減速度の保持時間Tnを求め、図12に示す如く、その保持時間Tnに達したとき、ブレーキ機構22の作動を停止して減速制御を中止する。
【0065】
この実施の形態は上記の如く構成したので、障害物を見失ったときも、それ以前の検知情報に応じて確信度(障害物となる度合い)を判定し、確信度が設定値を超えるときは推定情報に基づいて回避制御を行うと共に、確信度が設定値以下のときは確信度を用いて回避制御を行うようにしたので、障害物との接触を確実に回避することができる。
【0066】
また、障害物の存在自体が不確かな場合でも所定時間保持した後、自動ブレーキ動作を解除するようにしたので、自動ブレーキを急に解除して乗員に違和感を与えることがない一方、自動ブレーキ動作を不要に継続して運転フィーリングを低下させることがない。
【0067】
さらに、確信度が低いほど減速度の保持時間を短くするようにしたので、障害物を見失った後も、接触回避効果を達成しつつ、自動ブレーキの継続時間を適切に決定することができる。
【0068】
図13および図14は、この発明の第2の実施の形態に係る装置の動作を示す、図11および図12と同様な、図2フロー・チャートのS22の処理を示す説明図である。
【0069】
第2の実施の形態においては、確信度に応じて減速度の減少速度を決定するようにした。
【0070】
即ち、算出した確信度から図13にその特性を示すテーブルを検索して減速度の減少速度(係数)kn(n:1〜3)を求める。図示の如く、減少速度(係数)knは、確信度が低い(小さい)ほど大きいように、換言すれば減速度が早く減少するように決定する。
【0071】
求めた減少速度knに応じ、図14に示す如く、ブレーキ機構22の作動を解除する。同図に示す如く、第2の実施の形態においては、障害物を見失ったときは、減速度の減少を直ちに開始するようにした。尚、残余の構成は第1の実施の形態と異ならない。
【0072】
第2の実施の形態は上記の如く構成したので、第1の実施の形態で述べたと同様に接触回避効果を得ながら、違和感なく減速を終了することができる。また、確信度が低いほど減速速度を大きくする、即ち、障害物であることの確からしさが低い(小さい)ほど、換言すれば、減速の必要性が低いほど自動ブレーキの継続を短くするので、障害物を見失った後の自動ブレーキの継続時間を一層適切に決定することができる。
【0073】
図15は、この発明の第3の実施の形態に係る装置の動作を示す、図14と同様な、図2フロー・チャートのS22の処理を示すタイム・チャートである。
【0074】
第3の実施の形態においては、同図に示す如く、確信度に応じて保持時間と減少速度とを決定するようにした。即ち、確信度が高いときは保持時間を長く(大きく)すると共に、減少速度を小さくし、確信度が低いときは保持時間を短く(小さく)すると共に、減少速度を大きくするようにした。尚、残余の構成は第1の実施の形態と異ならない。
【0075】
第3の実施の形態は上記の如く構成したので、障害物を見失った後の自動ブレーキの継続時間をさらに一層適切に決定することができる。
【0076】
第1ないし第3の実施の形態は上記の如く、車両10の進行方向に存在する物体を検知し、前記車両の装置(ブレーキ機構22)を作動させて接触回避に必要な動作を行う車両走行安全装置において、前記物体が前記車両に対して障害となる度合い(確信度)を判定する障害度判定手段(処理ECU16、自動ブレーキ判断部、S10,S100からS112)、および検知していた物体を見失ったとき、前記判定された障害となる度合いに応じて前記装置(ブレーキ機構22)の作動を制御する制御手段(処理ECU16、減速度指令値算出部、S12からS22)を備える如く構成した。
【0077】
尚、「前記車両の装置を作動させて接触回避に必要な動作を行う」は、実施の形態においては上記の如く、ブレーキ機構22を作動させて車両10を制動させることを意味するが、それ以外にも警報装置40を作動させて運転者に報知する、操舵装置(図示せず)を作動させて操舵で回避させる、変速機あるいは内燃機関(共に図示せず)を介してシフトダウンあるいは機関出力低減(フュエルカットなど)させて減速させる、などであっても良い。
【0078】
また、前記障害度判定手段は、前記障害となる度合いの初期値を最初に検知した前記車両に対する前記物体の相対位置(即ち、確信度初期値An)に基づいて決定すると共に、最初に検知した前記前後方向相対位置および前記物体の車両前方中心からの横方向位置(即ち、確信度初期値Anあるいは確信度減算値Bn)が共に小さいとき、前記障害となる度合いの初期値を小さく判定する(処理ECU16、自動ブレーキ判断部、S104)如く構成した。
【0079】
また、前記障害度判定手段は、前記物体を検知していた時間および前記物体を検知していたときの受信強度の少なくともいずれかに基づいて前記障害となる度合いを判定する(処理ECU16、自動ブレーキ判断部、S104、図6)如く構成した。
【0080】
また、前記障害度判定手段は、前記物体を検知していた時間が長いほど前記障害となる度合いを大きく判定する(処理ECU16、自動ブレーキ判断部、S104)如く構成した。
【0081】
また、前記障害度判定手段は、前記物体を見失ったときの前記車両に対する前記物体の相対位置に基づいて前記障害となる度合いを減少させる(処理ECU16、自動ブレーキ判断部、S112)如く構成した。
【0082】
また、前記障害度判定手段は、前記物体を見失ったときの前記車両に対する前記物体の相対速度に基づいて前記障害となる度合いを減少させる(処理ECU16、自動ブレーキ判断部、S112)如く構成した。
【0083】
また、前記制御手段が、前記障害度判定手段の判定結果に基づいて前記車両の制動手段(ブレーキ機構22)を自動的に作動させる自動制動手段(処理ECU16、自動ブレーキ判断部、S10からS22)、および前記自動制動手段によって前記制動手段が作動させられている間に、前記物体を見失ったとき、見失った時点以前での検知結果に基づいて前記物体の位置および速度の少なくともいずれかの情報を推定する物体情報推定手段(処理ECU16、状態量算出部、S16)を備え、前記自動制動手段は、作動中に前記物体を見失ったとき、前記障害となる度合いが大きいときは、より具体的には前記障害となる度合い(確信度)が設定値より大きいときは、前記物体情報推定手段の推定結果に基づいて前記制動手段を作動させると共に、前記障害となる度合いが小さいときは前記障害となる度合いに基づいて前記制動手段を作動させる(処理ECU16、自動ブレーキ判断部、S18からS22)如く構成した。
【0084】
また、前記自動制動手段は、前記障害となる度合いが小さいほど前記制動手段を作動させたときの減速度の保持時間を短くする(処理ECU16、自動ブレーキ判断部、S22、図11から図12)如く構成した。
【0085】
また、前記自動制動手段は、前記障害となる度合いに基づいて前記制動手段を作動させたときの減速度の減少速度を変更する(処理ECU16、自動ブレーキ判断部、S22、図13から図15)如く構成した。
【0086】
尚、上記において、物体をレーザレーダ12から検知したが、ミリ波レーダを用いても良く、あるいはCCDカメラなどの視覚センサなどを用いても良い。
【0087】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、検知していた物体(障害物)見失ったときも、見失う以前の検知情報に基づいて障害となる度合いを判定し、判定された障害となる度合いに応じて前記装置の作動を制御することで、物体(障害物)を見失ったときも、接触回避効果を得ながら違和感のない運転フィーリングを実現することができる。また、最初に検知した車両に対する物体の前後方向相対位置および物体の車両前方中心からの横方向位置が共に小さいとき、障害となる度合いの初期値を小さく判定することで、障害となる度合いを適正に決定することができる。
【0088】
請求項2項にあっては、障害となる度合いを適正に決定することができる。
【0089】
請求項3項にあっては、同様に障害となる度合いを適正に決定することができる。
【0090】
請求項4項にあっては、同様に障害となる度合いを適正に決定することができる。
【0092】
請求項項にあっては、一層違和感のない運転フィーリングを実現することができる。
【0093】
請求項項にあっては、障害物を見失ったときも、接触回避効果を得ながら、一層違和感のない運転フィーリングを実現することができる。
【0094】
請求項項にあっては、同様に一層違和感のない運転フィーリングを実現することができる。
【0095】
請求項項にあっては、同様に一層違和感のない運転フィーリングを実現することができる。また、請求項項にあっては、通常、障害物が検知され始めるのは検知範囲の端であり、検知範囲の端において障害物であるか可能性が高いとみなすので、障害となる度合いを適性に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る車両走行安全装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図3】図2フロー・チャートの動作を説明するブロック図である。
【図4】図2フロー・チャートの障害物の確信度計算作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図5】図4フロー・チャートでの確信度の初期値の設定特性を示す説明グラフである。
【図6】図4フロー・チャートでの確信度の制限特性を示す説明グラフである。
【図7】図4フロー・チャートでの確信度の減算例を示す説明グラフである。
【図8】図4フロー・チャートでの確信度減算の別の例を示す説明グラフである。
【図9】図4フロー・チャートで決定される確信度の時間的な遷移例を示すタイム・チャートである。
【図10】図2フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
【図11】図2フロー・チャートで使用される、確信度に応じて検索される減速度の保持時間Tのテーブル特性を示す説明グラフである。
【図12】図11のテーブル特性から検索された保持時間を用いて行われる、図2フロー・チャートの処理をより具体的に説明するタイム・チャートである。
【図13】この発明の第2の実施の形態に係る装置の動作を示す、図2フロー・チャートで使用される、確信度に応じて検索される減速度の減少速度kのテーブル特性を示す説明グラフである。
【図14】図13のテーブル特性から検索された減少速度を用いて行われる、図2フロー・チャートの処理をより具体的に説明するタイム・チャートである。
【図15】この発明の第3の実施の形態に係る装置の動作を示す、図14と同様な、図2フロー・チャートの処理をより具体的に説明するタイム・チャートである。
【符号の説明】
10 車両
12 レーザレーダ
14 レーダ出力処理部
16 処理ECU
20 車輪速センサ
22 ブレーキ機構(制動装置)
36 電磁バルブ
40 警報装置

Claims (9)

  1. 車両の進行方向に存在する物体を検知し、前記車両の装置を作動させて接触回避に必要な動作を行う車両走行安全装置において、
    a.前記物体が前記車両に対して障害物であることの確からしさの度合いを意味する障害となる度合いを判定する障害度判定手段、
    および
    b.検知していた物体を見失ったとき、判定された障害となる度合いに応じて前記装置の作動を制御する制御手段、
    を備え、前記障害度判定手段は、最初に検知した前記車両に対する前記物体の前後方向相対位置および前記物体の車両前方中心からの横方向位置が共に小さいとき、前記障害となる度合いの初期値を小さく判定することを特徴とする車両走行安全装置。
  2. 前記障害度判定手段は、前記物体を検知していた時間および前記物体を検知していたときの受信強度の少なくともいずれかに基づいて前記障害となる度合いを判定することを特徴とする請求項1項記載の車両走行安全装置。
  3. 前記障害度判定手段は、前記物体を検知していた時間が長いほど前記障害となる度合いを大きく判定することを特徴とする請求項1項または2項記載の車両走行安全装置。
  4. 前記障害度判定手段は、前記物体を見失ったときの前記車両に対する前記物体の相対位置に基づいて前記障害となる度合いを減少させることを特徴とする請求項1項ないし項のいずれかに記載の車両走行安全装置。
  5. 前記障害度判定手段は、前記物体を見失ったときの前記車両に対する前記物体の相対速度に基づいて前記障害となる度合いを減少させることを特徴とする請求項1項ないし項のいずれかに記載の車両走行安全装置。
  6. 前記制御手段が、
    c.前記障害度判定手段の判定結果に基づいて前記車両の制動手段を自動的に作動させる自動制動手段、
    および
    d.前記自動制動手段によって前記制動手段が作動させられている間に、前記物体を見失ったとき、見失った時点以前での検知結果に基づいて前記物体の位置および速度の少なくともいずれかの情報を推定する物体情報推定手段、
    を備え、前記自動制動手段は、作動中に前記物体を見失ったとき、前記障害となる度合いが大きいときは前記物体情報推定手段の推定結果に基づいて前記制動手段を作動させると共に、前記障害となる度合いが小さいときは前記障害となる度合いに基づいて前記制動手段を作動させることを特徴とする請求項1項ないし項のいずれかに記載の車両走行安全装置。
  7. 前記自動制動手段は、前記障害となる度合いが小さいほど前記制動手段を作動させたときの減速度の保持時間を短くすることを特徴とする請求項項記載の車両走行安全装置。
  8. 前記自動制動手段は、前記障害となる度合いに基づいて前記制動手段を作動させたときの減速度の減少速度を変更することを特徴とする請求項項または項記載の車両走行安全装置。
  9. 車両の進行方向に存在する物体を検知し、前記車両の装置を作動させて接触回避に必要な動作を行う車両走行安全装置において、
    a.前記物体が前記車両に対して障害物であることの確からしさの度合いを意味する障害となる度合いを判定する障害度判定手段、
    および
    b.検知していた物体を見失ったとき、判定された障害となる度合いに応じて前記装置の作動を制御する制御手段、
    を備え、前記障害度判定手段は、最初に検知した前記車両に対する前記物体の前後方向相対位置が検知可能最大距離に近いとき、または最初に検知した前記物体の車両前方中心からの横方向位置が検知範囲の両端にあるとき、前記障害となる度合いの初期値を大きく判定することを特徴とする車両走行安全装置。
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