JP3765339B2 - ケーブル式ステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハンドルとギヤボックスとをボーデンケーブル等の撓み易いケーブルで接続したケーブル式ステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の車両用ステアリング装置は、上端にハンドルを有するステアリングシャフトの下端をギヤボックスに接続し、ハンドルに入力される操舵トルクをステアリングシャフトを介してギヤボックス内に設けたラックアンドピニオン機構に伝達するようになっていた。
しかしながら、ステアリングシャフトを用いてハンドルとギヤボックスとを接続すると、ギヤボックスの位置に対するハンドルの相対位置を自由に選択することが難しいため、設計自由度が大幅に制限されるばかりか、右ハンドル車と左ハンドル車とでギヤボックスを共用することができないという問題がある。しかも、路面からタイヤに入力される振動やエンジンの振動がステアリングシャフトを介してハンドルに入力されるため、その振動によって室内の静粛性や乗り心地が阻害されるという問題がある。
【0003】
そこで、従来のステアリングシャフトに代えて、ボーデンケーブル等のフレキシブルな伝達手段を採用したケーブル式ステアリング装置が提案されている(特開平8−2431号公報参照)。
【0004】
このようにすれば、ギヤボックスの位置に対するハンドルの相対位置を自由に選択することが可能になり、しかもギヤボックスの振動がハンドルに伝達され難くなるため、上述した各問題を解消することができる。
【0005】
また従来周知の電動パワーステアリング装置は、ギヤボックスの外部にパワーステアリング用モータよりなるアクチュエータを設け、このアクチュエータでギヤボックスの内部に収納したステアリングロッドを駆動して車輪を操舵するようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ケーブル式ステアリング装置と電動パワーステアリング装置とを組み合わせた場合、アクチュエータをギヤボックスに設けると電動パワーステアリング装置の寸法や形状の設計自由度が低下してしまい、その電動パワーステアリング装置を狭いエンジンルームに収納するのが難しくなる問題がある。
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、電動パワーステアリング装置を有するケーブル式ステアリング装置の寸法や形状の設計自由度を高め、狭いエンジンルームへの収納を容易化することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された発明では、ドライバーによるハンドルの操作は駆動プーリ、ケーブル、従動プーリ及びギヤボックスを介して車輪に伝達される一方、操舵トルク検出手段で検出したハンドルの操舵トルクに基づいてパワーアシスト手段が作動し、ドライバーによるハンドル操作がアシストされる。このとき従動プーリを収納する従動プーリハウジングにパワーアシスト手段が設けられているので、ギヤボックスを小型化及び簡素化してエンジンルームへの収納を容易にすることができ、しかも既存のマニュアルステアリング装置のギヤボックスをそのまま使用することができる。パワーアシスト手段を構成するパワーステアリング用モータが回転すると、その出力軸に設けたベベルギヤから従動プーリ又は該従動プーリの回転軸に設けたベベルギヤに駆動力が伝達されてドライバーによる操舵がアシストされる。パワーステアリング用モータの出力軸が従動プーリから延びる一対のケーブルと平行に配置され、且つパワーステアリング用モータは両ケーブルの間に挟まれるように配置される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の参考例及び実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図3は本発明の第1参考例を示すもので、図1は車両用ステアリング装置の全体斜視図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図1の3−3線拡大断面図である。
【0011】
図1に示すように、自動車のハンドル1の前方に設けた駆動プーリハウジング2と、ギヤボックス3の上方に設けた従動プーリハウジング4とが、2本のボーデンケーブル5,6によって接続される。ギヤボックス3の両端部から車体左右方向に延びるタイロッド7L ,7R が、左右の車輪WL ,WR を支持するナックル(図示せず)に接続される。
【0012】
図2に示すように、駆動プーリハウジング2に回転自在に支持されてハンドル1と共に回転する回転軸10drに駆動プーリ11drが固定される。2本のボーデンケーブル5,6はアウターチューブ5o,6oと、その内部にスライド自在に収納されるインナーケーブル5i,6iとから構成されており、両インナーケーブル5i,6iの一端は駆動プーリ11drの外周に形成した螺旋状のプーリ溝に複数回巻き付けられて固定されるとともに、アウターチューブ5o,6oの一端は駆動プーリハウジング2にスライド自在に支持される。
【0013】
アウターチューブ5o,6oの一端部を大径に形成したスプリングシート12,13は、駆動プーリハウジング2に形成した端壁21 と中間壁22 との間に位置しており、駆動プーリハウジング2の中間壁22 とスプリングシート12,13との間に、両アウターチューブ5o,6oを駆動プーリハウジング2から押し出す方向にバイアスするスプリング14,15が圧縮状態で装着される。従って、両アウターチューブ5o,6oのスプリングシート12,13は、スプリング14,15の伸縮に伴って縦方向(ボーデンケーブル5,6の長手方向)に移動自在である。駆動プーリハウジング2の中間壁22 に操舵トルク検出手段としての一対の差動トランス16,17が設けられており、それら差動トランス16,17の検出子161 ,171 がそれぞれスプリングシート12,13に接続される。
【0014】
而して、ハンドル1を操作して回転軸10drを矢印A方向に回転させると、インナーケーブル5iの張力が増加することによりアウターチューブ5oがスプリング14に抗して矢印B方向に引かれ、そのアウターチューブ5oのスプリングシート12が差動トランス16の検出子161 を矢印B方向に移動させる。一方、インナーケーブル6iの張力が減少することによりアウターチューブ6oがスプリング15の弾発力で矢印C方向に押され、そのアウターチューブ6oのスプリングシート13が差動トランス17の検出子171 を矢印C方向に移動させる。
【0015】
ハンドル1に入力される操舵トルクは一対のインナーケーブル5i,6iの張力差に比例し、且つ一対のアウターチューブ5o,6oの相対移動量は前記張力差に比例するため、差動トランス16,17により両アウターチューブ5o,6oの相対移動量を検出することにより前記操舵トルクを知ることができる。このようにして検出された操舵トルクは電子制御ユニットUにおいて他の制御信号と共に演算処理され、その結果に基づいて、インナーケーブル5i,6iの張力差が略一定になるように、つまりアウターチューブ5o,6oの相対移動量が略一定になるように、後述するパワーステアリング用モータ24が発生する操舵アシストトルクがフィードバック制御される。
【0016】
尚、ハンドル1を図2の矢印A′方向に回転させた場合にも、前述の矢印A方向に回転させた場合と同様にしてハンドル1の操舵トルクを検出することができる。
【0017】
図1及び図3に示すように、従動プーリハウジング4に回転自在に支持された回転軸10dnに従動プーリ11dnが固定されており、両インナーケーブル5i,6iの他端が従動プーリ11dnの外周に形成した螺旋状のプーリ溝に複数回巻き付けられて固定され、また両ボーデンケーブル5,6のアウターチューブ5o,6oの他端が従動プーリハウジング3に固定される。従動プーリハウジング4からギヤボックス3の内部に突出する回転軸10dnの先端にピニオン21が設けられており、このピニオン21がギヤボックス3の内部に左右動自在に支持されたステアリングロッド22に形成したラック23に噛み合っている。
【0018】
従動プーリハウジング4にパワーステアリング用モータ24が支持されており、従動プーリハウジング4の内部で出力軸25に設けたウオーム26が回転軸10dnに設けたウオームホイール27に噛み合っている。従って、パワーステアリング用モータ24のトルクはウオーム26及びウオームホイール27を介して回転軸10dnに伝達される。
【0019】
次に、前述の構成を備えた本発明の第1参考例の作用について説明する。
【0020】
車両を旋回させるべくハンドル1を操作すると、図2において回転軸10drが駆動プーリ11drと共に回転する。その結果、ボーデンケーブル5,6の一方のインナーケーブル5i,6iが引かれ、他方のインナーケーブル5i,6iが弛められることにより、駆動プーリ11drの回転が従動プーリ11dnに伝達されて回転軸10dnが回転し、ギヤボックス3内のピニオン21、ラック23及びスアリングロッド23を介して車輪WL ,WR に操舵トルクが伝達される。
【0021】
このとき、差動トランス16,17がハンドル1に加えられた操舵トルクを検出すると、その操舵トルクに応じてパワーステアリング用モータ24がトルクを発生することによりウオーム26及びウオームホイール27を介して回転軸10dnが回転し、ドライバーによるハンドル1の操作がアシストされる。ウオーム26及びウオームホイール27よりなるウオームギヤは減速比を大きく取ることができるため、小出力のパワーステアリング用モータ24で充分なアシスト力を発揮させることができる。
【0022】
而して、パワーステアリング用モータ24を従動プーリハウジング4に設けたので、ギヤボックス3にパワーステアリング用モータを装着する必要なくなる。その結果、ギヤボックス3の寸法を小型化し且つ構造を簡略化してエンジンルーム内でのレイアウトの自由度を高めることができ、しかもマニュアルステアリング装置用のギヤボックスをそのまま流用してコストの削減に寄与することができる。
【0023】
次に、本発明の第2参考例を図4及び図5に基づいて説明する。
【0024】
第2参考例はパワーステアリング用モータ24の出力軸25を従動プーリ11dnの回転軸10dnに直結したものであり、第1参考例のウオーム26及びウオームホイール27を省略して部品点数を削減することができる。
【0025】
次に、本発明の第3参考例を図6及び図7に基づいて説明する。
【0026】
第3参考例はパワーステアリング用モータ24の出力軸25を従動プーリ11dnの回転軸10dnと平行に配置し、その出力軸25に設けた小径のスパーギヤ28を従動プーリ11dnの回転軸10dnに設けた大径のスパーギヤ29に噛み合わせたものであり、第1参考例のウオームギヤを用いたものより安価であり、しかも動力伝動効率が優れている。
【0027】
次に、本発明の実施例を図8及び図9に基づいて説明する。
【0028】
本発明の実施例はパワーステアリング用モータ24の出力軸25を従動プーリ11dnの回転軸10dnに対して直角に配置し、その出力軸25に設けた小径のベベルギヤ30を従動プーリ11dnの回転軸10dnに設けた大径のベベルギヤ31に噛み合わせたものであり、従動プーリ11dnの回転軸10dnの軸線方向に見て、パワーステアリング用モータ24は従動プーリ11dnから延びる一対のボーデンケーブル5,6の間に配置される(図9参照)。このようにベベルギヤ30,31を使用することにより、パワーステアリング用モータ24の出力軸25と従動プーリ11dnの回転軸10dnとを任意の角度に交差させてレイアウトの自由度を高めることができ、しかも一対のボーデンケーブル5,6の間のデッドスペースを利用してパワーステアリング用モータ24をコンパクトにレイアウトすることができる。本発明の実施例のその他の構成及び効果は、上述した第1〜第3参考例と同じである。
【0029】
第1〜第3参考例及び実施例で説明したように、パワーステアリング用モータ24を従動プーリハウジング4の任意の位置に任意の姿勢で配置することにより、パワーステアリング装置の設計自由度が高まってエンジンルーム内でのレイアウトが容易化になる。
【0030】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0031】
例えば、実施例において大径のベベルギヤ31を回転軸10dnに設ける代わりに従動プーリ11dnに設けても良い。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載された発明によれば、パワーアシスト手段を、従動プーリを収納する従動プーリハウジングに設けたので、ギヤボックスにパワーアシスト手段を設ける必要がなくなり、該ギヤボックスを小型化及び簡素化してエンジンルームへの収納を容易にすることができる。しかも既存のマニュアルステアリング装置のギヤボックスをそのまま使用することができる。またパワーアシスト手段がパワーステアリング用モータよりなり、このパワーステアリング用モータの出力軸に設けたベベルギヤを従動プーリ又は該従動プーリの回転軸に設けたベベルギヤに噛み合わせたので、従動プーリハウジングにパワーステアリング用モータをコンパクトに一体化しながらパワーステアリング用モータの駆動力をギヤボックスに確実に伝達することができ、しかもパワーステアリング用モータの出力軸と従動プーリの回転軸とを任意の方向に配置してレイアウトの自由度を高めることができる。更に従動プーリの回転軸の軸線方向に見て、パワーステアリング用モータを従動プーリから延びる一対のケーブル間に配置したので、従動プーリハウジング、パワーステアリング用モータ及びケーブルをコンパクトにレイアウトすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1参考例に係る車両用ステアリング装置の全体斜視図
【図2】 図1の2−2線拡大断面図
【図3】 図1の3−3線拡大断面図
【図4】 第2参考例に係る車両用ステアリング装置の全体斜視図
【図5】 図4の5−5線断面図
【図6】 第3参考例に係る車両用ステアリング装置の全体斜視図
【図7】 図6の7−7線断面図
【図8】 本発明の実施例に係る従動プーリハウジングの縦断面図
【図9】 図8の9−9線断面図
【符号の説明】
1 ハンドル
3 ギヤボックス
4 従動プーリハウジング
5 ボーデンケーブル(ケーブル)
6 ボーデンケーブル(ケーブル)
10dn 回転軸
11dr 駆動プーリ
11dn 従動プーリ
24 パワーステアリング用モータ(パワーアシスト手段)
25 出力軸
30 ベベルギヤ
31 ベベルギヤ
WL 車輪
WR 車輪
Claims (1)
- ハンドル(1)に連結されて回転する駆動プーリ(11dr)と車輪(WL ,WR )を操舵するギヤボックス(3)に連結されて回転する従動プーリ(11dn)とをケーブル(5,6)で接続し、ハンドル(1)に入力される操舵トルクをケーブル(5,6)を介してギヤボックス(3)に伝達するとともに、前記操舵トルクを操舵トルク検出手段(16,17)で検出し、検出した操舵トルクに基づいてパワーアシスト手段(24)を作動させるケーブル式ステアリング装置であって、
前記パワーアシスト手段(24)が前記従動プーリ(11dn)を収納する従動プーリハウジング(4)に設けられたパワーステアリング用モータよりなり、このパワーステアリング用モータの出力軸(25)に設けたベベルギヤ(30)を前記従動プーリ(11dn)又は該従動プーリ(11dn)の回転軸(10dn)に設けたベベルギヤ(31)に噛み合わせるとともに、前記従動プーリ(11dn)の回転軸(10dn)の軸線方向に見て、前記パワーステアリング用モータを前記従動プーリ(11dn)から延びる一対のケーブル(5,6)間に配置したことを特徴とするケーブル式ステアリング装置。
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