JP3763144B2 - Coated cutting tool - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの基材上に複数層の被覆膜を具える被覆切削工具に関するものである。特に、耐摩耗性に優れた被膜膜を具える被覆切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、切削工具や耐摩耗性工具などの耐摩耗性及び表面保護機能を改善するために、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼などからなる基材の表面に、Ti、Hf、Zr、TiAlの炭化物、窒化物、炭窒化物からなる硬質の膜を単層又は複数層形成することがよく知られている。
【0003】
しかし、以下に示す最近の動向から、切削の際、工具の刃先温度はますます高温になる傾向にあり、工具材料に要求される特性は厳しくなる一方である。
▲1▼地球環境保全の観点から切削油剤(潤滑油剤)を用いないドライ(乾式)加工が求められている、
▲2▼被削材が多様化している、
▲3▼加工能率を一層向上させるために切削速度が高速になってきているなど。
【0004】
特に、工具材料の要求特性として、高温での膜の安定性(耐酸化特性や基材に対する密着性)はもちろんのこと、工具寿命に関係する耐摩耗性、即ち、高温における膜の硬度の向上が一段と重要となっている。
【0005】
そこで、特許第2793773号公報には、(AlXTi1-x-ySiy)(NzC1-z)、ただし、0.05≦x≦0.75、0.01≦y≦0.1、0.6≦z≦1といったTiAlSi系の膜を形成することが提案されている(従来技術1)。この技術は、膜にSiを微量に含有させることにより、高硬度で良好な耐酸化性を具えて、耐摩耗性の向上を図るものである。
【0006】
また、特開平8-118106号公報には、(Ti1-xSix)(C1-yNy)z、ただし、0.01≦x≦0.45、0.01≦y≦0.1、0.5≦z≦1.34といったTiSi系の膜を形成することが提案されている(従来技術2)。この技術は、高硬度な(Ti1-xSix)(C1-yNy)zを被覆することで高速連続切削においても耐摩耗性に優れ、工具の使用寿命の延長を図るものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の技術では、以下の問題があった。
従来技術1では、膜中にアルミニウムが含有されている。この場合、900℃を超える高温下では、膜表面において優先的にアルミニウムが酸素と結びつきAl2O3が形成される。すると、残ったチタンが膜内部に拡散して、非常にポーラスな(多孔質な)チタン酸化物が形成されて耐摩耗性が低下するという問題がある。
【0008】
従来技術2では、(Ti1-xSix)(C1-yNy)zが高硬度である反面、非常に脆い性質があるため、切削工具などに用いた場合、特に、断続切削に用いた場合、刃先が欠け易いという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の主目的は、高硬度で、断続切削においても優れた耐摩耗性を有する被覆切削工具を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、組織が異なる高硬度で耐摩耗性に優れる膜を基材上に交互に積層することで、上記目的を達成する。
【0011】
即ち、本発明は、基材上に複数層の被覆膜を具える被覆切削工具である。被覆膜は、TiSiの窒化物、炭化物、炭窒化物、酸窒化物及び炭酸窒化物から選択された1種の化合物(TiSi系化合物)からなる第一の膜と、Zr、Hf及びZrHfから選択された1種の金属Mの窒化物、炭化物、炭窒化物、酸窒化物及び炭酸窒化物から選択された1種の化合物(金属Mの化合物)からなる第二の膜とをそれぞれ1層以上具える。そして、第一の膜と第二の膜とを交互に積層させている。
【0012】
本発明者らは、種々の被覆膜を用いて各種切削試験を行い、工具の損傷を詳細に調査したところ、寿命と判断された被覆膜は、連続的にいわゆる正常摩耗しているのではなく、膜の一部分が脱落しながら損傷が進行していることを突き止めた。即ち、従来の膜では、摩耗が原子単位で徐々に進行するのではなく、膜中に存在する単一のいわゆる縦長の柱状組織ごとに脱落しながら損傷が進行していた。そこで、本発明者らは、単一の縦長の柱状組織ごとに脱落して損傷することを抑制し正常摩耗とするには、組織が異なる膜を積層させて、膜組織を微細化することが必要であるとの知見を得えて、本発明を規定するものである。
【0013】
本発明は、非常に高硬度で耐摩耗性に優れるTiSi系化合物の膜(第一の膜)と金属Mの化合物の膜(第二の膜)とをそれぞれ1層以上具えて、交互に積層させることで、被覆膜全体として、高硬度で優れた耐摩耗性を有することができる。ここで、第一の膜と第二の膜とは、その組成から組織が異なる。このように組織が異なる膜を積層することで、被覆膜全体がいわゆる縦長の柱状組織とならず、組織を微細化することができるため、組織ごとの脱落を繰り返す大規模な摩耗による損傷(異常摩耗)を抑制することが可能である。
【0014】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明工具において、TiSi系化合物からなる第一の膜及び金属Mの化合物からなる第二の膜の構成は、図1に示す複数の構成が考えられる。図1(A)は、第一の膜1及び第二の膜2の2層構造、(B)は、第一の膜1及び第二の膜2の複数層積層構造3である。また、図1(C)に示すよう一部が第一の膜1又は第二の膜2の構成成分からなる単一層4、他部が第一の膜1及び第二の膜2からなる複数層積層構造3の構成、(D)に示すように一部が後述する中間層や公知の膜からなる単一層4'、他部が第一の膜1及び第二の膜2からなる複数層積層構造3の構成、(E)に示すように第一の膜1及び第二の膜2からなる複数層積層構造3が単一層4に挟まれた構成などが挙げられる。図1(C)では、単一層4として第二の膜2の構成成分からなる膜、(D)では、単一層4'として例えば、TiAlN膜などの公知の膜、(E)では、上方の単一層4として第二の膜2の構成成分からなる膜、下方の単一層4として第一の膜1の構成成分からなる膜を示している。なお、積層する順序は、第一の膜、第二の膜のいずれが基材側でもよい。
【0015】
TiSi系化合物からなる第一の膜の厚み、及び金属Mの化合物からなる第二の膜の厚みは、それぞれ0.5nm以上50nm以下が好ましい。このような薄膜を積層させた構造では、転移やクラックを抑制する効果を有する。膜の厚みが0.5nm未満の場合、被覆膜の硬度の向上が得られにくい。また、0.5nm未満であると、被覆膜を構成する各元素が拡散して、各膜の構造が非常に不安定になり、薄膜の積層構造が消失したり、隣接する膜と結合したりして膜の境界が判別しにくくなる恐れがある。一方、膜の厚みが50nmを超える場合、薄膜の積層構造による転位やクラックの抑制効果が低下し易くなる。より好ましくは、厚みをそれぞれ0.5nm以上10nm以下とすることである。
【0016】
TiSi系化合物からなる第一の膜においてSiは、原子量%で1%超30%以下であることが好ましい。被覆膜中にSiが存在すると、被覆膜の硬度が向上するため好ましいが、原子量%で30%以上のSiを含有すると、被覆膜が脆くなって、逆に摩耗性が促進される恐れがある。また、第一の膜を物理蒸着法にて形成するにあたりTiSi合金のターゲット(蒸発原料)を熱間静水圧加圧処理で作製する場合、Siを30%超含有させると、ターゲットが割れてコーティングに使用可能な材料強度が得られにくい。より好ましくは、第一の膜にSiが原子量%で15%超25%以下含有されることである。
【0017】
第一の膜において、Ti系化合物(Tiの窒化物、炭化物、炭窒化物、酸窒化物及び炭酸窒化物から選択された1種の化合物)は立方晶構造、Si系化合物(Siの窒化物、炭化物、炭窒化物、酸窒化物、炭酸窒化物から選択された1種の化合物)は非晶質構造であり、第二の膜において、金属Mの化合物は立方晶構造であることが好ましい。このとき、被覆膜全体の結晶性は、X線回折測定にて評価可能であるが、Si系化合物は、非晶質構造であるためX線回折で同定することはできない。従って、被覆膜全体のX線回折測定では、TiSi系化合物からなる第一の膜中で立方晶構造をもつTi系化合物、及び第二の膜中で立方晶構造をもつ金属Mの化合物しか同定できないので、結果として、被覆膜全体の構造は、立方晶構造となる。なお、本発明において、第一の膜及び第二の膜からなる被覆膜に加えて、後述する中間層などを具える場合は、これら中間層なども具えた膜全体の構造が立法晶構造となる。また、Si系化合物の結晶性の評価は、例えば、透過電子回折法(Transmission Election Diffraction)にて行うことができる。
【0018】
第一の膜においてTi系化合物は、平均粒径が0.1nm以上10nm以下の結晶質であり、かつSi系化合物の非晶質構造内に分散していることが好ましい。図2は、被覆膜の組織構造を示す模式図であり、(A)は本発明工具、(B)は従来の工具を示す。本発明工具では、図2(A)に示すように、第一の膜1において微細なTi系化合物の結晶粒5が非晶質構造のSi系化合物6内に分散した状態である。Ti系化合物の結晶粒がこのようにナノメートルサイズであることで、いわゆるナノサイズ効果により、被覆膜の硬度の上昇、転位やクラック抑制効果が得られて損傷しにくい。また、本発明において第一の膜は、結晶質のTi系化合物と非晶質のSi系化合物との混合相であることからエネルギーを分散させて被覆膜中に進展するクラックの伝播を抑制することができ、更なる耐摩耗性の向上が図れる。一方、第二の膜は、図2(A)に示すように柱状組織7を有するものが好ましい。
【0019】
上記のように結晶質のTi系化合物と非晶質のSi系化合物との混合相である第一の膜1と、金属Mの化合物からなる第二の膜2とは、図2(A)に示すように組織が異なり、それぞれの膜1及び2を交互に積層しても、図2(B)に示す従来の工具の被覆膜のように膜全体がいわゆる縦長の柱状組織7にならず、微粒組織が維持される。そのため、本発明工具の被覆膜は、組織ごとに脱落して損傷することを抑制することができ、耐摩耗性に優れる。これに対し、従来の工具では、図2(B)に示すように被覆膜全体の組織構造がいわゆる縦長の柱状組織7となるため、クラックが生じると縦長の組織7毎に脱落して損傷し易い、即ち、摩耗し易い。
【0020】
このような第一の膜及び第二の膜から構成される被覆膜の総厚みは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。総厚みが0.5μm未満では、耐摩耗性の向上が得られにくく、総厚みが10μmを超えると、被覆膜中の残留応力などの影響により、基材との密着強度が低下する恐れがあるからである。
【0021】
本発明工具において、基材表面と上記被覆膜との間には、中間層を具えてもよい。中間層は、Ti(チタン)、Tiの窒化物(チタンナイトライド)、Zr(ジルコニウム)及びZrの窒化物(ジルコニウムナイトライド)から選択された1種からなるものが好ましい。特に、チタンとチタンナイトライドとは、基材表面及び被覆膜の両方に対して密着性がよく、基材と被覆膜との密着性を一層向上させることができる。そのため、上記中間層を具えると、被覆膜が基材から剥離することを抑制して、工具寿命をより向上させることができる。このような中間層は、厚みが0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましい。厚みが0.05μm未満では、密着強度の向上が得られにくく、厚みが1μmを超えても密着強度の更なる向上が見られにくいからである。
【0022】
上記被覆膜や中間層を形成する基材は、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素(cBN)焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化ケイ素焼結体及び酸化アルミニウムと炭化チタンとを含む焼結体から選択された1種であることが好ましい。
【0023】
WC基超硬合金は、炭化タングステン(WC)を主成分とする硬質相と、コバルト(Co)などの鉄族金属を主成分とする結合相とからなるもので、通常よく用いられているものを用いるとよい。更に、周期律表4a、5a、6a族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素から選ばれる少なくとも1種とからなる固溶体が含まれているものでもよい。固溶体としては、例えば、(Ta,Nb)C、VC、Cr2C2、NbCなどが挙げられる。
【0024】
サーメットとしては、例えば、周期律表4a、5a、6a族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種と炭素、窒素、酸素及び硼素から選ばれる少なくとも1種とからなる固溶体相と、1種以上の鉄系金属からなる結合相と、不可避的不純物とからなるもので、通常よく用いられるものを用いるとよい。
【0025】
高速度鋼としては、例えば、JIS記号SKH2、SKH5、SKH10などのW系高速度鋼、SKH9、SKH52、SKH56などのMo系高速度鋼などが挙げられる。
【0026】
セラミックスは、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0027】
cBN焼結体としては、cBNを30体積%以上含むものが挙げられる。より具体的には、以下の焼結体が挙げられる。
(1)cBNを30体積%以上80体積%以下含み、残部が結合材と鉄族金属と不可避的不純物とからなる焼結体。結合材は、周期律表4a、5a、6a族元素の窒化物、硼化物、炭化物並びにこれらの固溶体からなる群から選択される少なくとも1種と、アルミニウム化合物とを含むものである。
【0028】
上記cBN焼結体においてcBN粒子は、被削材としてよく用いられる鉄との親和性が低い上記結合材を介して主に結合され、この結合が強固であることから、基材の耐摩耗性と強度とを向上させる。
【0029】
cBN含有量を30体積%以上とするのは、30体積%未満となると、cBN焼結体の硬度が低下し易くなり、例えば、焼入鋼のような高い硬度の被削材を切削するには、硬度が不足するからである。cBN含有量を80体積%以下とするのは、80体積%を超える場合、結合材を介してcBN粒子同士の結合が困難になり、cBN焼結体の強度が低下する恐れがあるからである。
【0030】
(2)cBNを80体積%以上90体積%以下含み、cBN粒子同士が結合しており、残部が結合材と不可避的不純物とからなる焼結体。結合材は、Al化合物又はCo化合物を主成分とするものである。
【0031】
このcBN焼結体は、触媒作用を有するAl又はCoを含有する金属、或いは金属間化合物を出発原料として液相焼結を行うことで、cBN粒子同士を結合させ、かつcBN粒子の含有率を高めることができる。cBN粒子の含有率が高いことから、耐摩耗性が低下し易いものの、cBN粒子同士が強固な骨格構造を形成しているため、耐欠損性に優れ、過酷な条件での切削が可能となる。
【0032】
cBN含有量を80体積%以上とするのは、80体積%未満となると、cBN粒子同士の結合による骨格構造を形成することが難しくなるからである。cBN含有量を90体積%以下とするのは、90体積%を超えると、触媒作用を有する上記結合材が不足して、未焼結部分を生ずるため、cBN焼結体の強度が低下するからである。
【0033】
ダイヤモンド焼結体としては、ダイヤモンドを40体積%以上含むものが挙げられる。より具体的には、以下の焼結体が挙げられる。
(1)ダイヤモンドを50〜98体積%含み、残部が鉄族金属、WC及び不可避的不純物からなる焼結体。鉄族金属は、特に、Coが好ましい。
(2)ダイヤモンドを85〜99体積%含み、残部が空孔、WC及び不可避的不純物からなる焼結体。
(3)ダイヤモンドを60〜95体積%含み、残部が結合材及び不可避的不純物からなる焼結体。結合材は、鉄族金属と、周期律表4a、5a、6a族元素の炭化物及び炭窒化物からなる群から選択される1種以上と、WCとを含むものである。より好ましい結合材は、CoとTiCとWCとを含むものである。
(4)ダイヤモンドを60〜98体積%含み、残部がケイ素及び炭化ケイ素の少なくとも1種、WC及び不可避的不純物からなる焼結体。
【0034】
窒化ケイ素焼結体としては、窒化ケイ素を90体積%以上含むものが挙げられる。特に、HIP法(熱間静水圧焼結法)を用いて結合した窒化ケイ素を90体積%以上含む焼結体が好ましい。この焼結体において残部は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、希土類、TiN及びTiCから選ばれる少なくとも1種からなる結合材と不可避的不純物とからなることが好ましい。
【0035】
酸化アルミニウムと炭化チタンとを含む焼結体としては、体積%で酸化アルミニウムを20%以上80%以下、炭化チタンを15%以上75%以下含み、残部がMg、Y、Ca、Zr、Ni、Ti、TiNの酸化物から選ばれる少なくとも1種の結合材と不可避的不純物とからなる焼結体が挙げられる。特に、酸化アルミニウムは、65体積%以上70体積%以下、炭化チタンは、25体積%以上30体積%以下で、結合材は、Mg、Y、Caの酸化物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
本発明被膜切削工具は、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ及びタップから選択された1種を含む用途に使用されるとよい。
【0037】
本発明において、被覆膜を基材上に被覆するには、結晶性が高い化合物を形成できる成膜プロセスにて作製されることが適する。そこで、上記第一の膜及び第二の膜からなる被覆膜は、TiSi合金及び金属Mをそれぞれ蒸発原料として、窒素、炭素、酸素のうち一種以上を含むガス中で物理的蒸着法により形成されたものが好ましい。また、本発明者らが種々の成膜方法を検討した結果、物理的蒸着法の中でも、原料元素のイオン率が高いアーク式イオンプレーティング法(カソードアークイオンプレーティング)が最も適していることがわかった。カソードアークイオンプレーティングを用いた場合、被覆膜を形成する前に基材表面に対して金属のイオンボンバードメント処理が可能であるため、被覆膜の密着性を格段に向上させることができ、密着性の観点からも好ましいプロセスである。
【0038】
上記物理的蒸着法に用いられるTiSi合金の蒸発原料は、熱間静水圧加圧処理により製造され、相対密度が99〜100%であり、原料表面から対向する面に及んで連続する欠陥、例えば、ポア(穴)やクラック(切割)などがないものが好ましい。このとき、成膜中にターゲット(蒸発材料)が割れるなどのトラブルを防ぐことが可能である。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
以下に示す被覆切削工具を作製し、耐摩耗性を調べてみた。
【0040】
(実施例1)
(1)試料の作製
(i)本発明品(試料No.1-1〜1-8)
まず、本試験で用いた成膜装置について説明する。図3(A)は、本試験で用いた成膜装置の模式図、(B)は、(A)のB-B断面図である。成膜装置11は、基材19が搭載されると共に支持棒14にて回転自在に装着された主テーブル13と、基材19を囲むようにチャンバー12の側壁に配置されたアーク式蒸発源15a、15b、15cと、各蒸発源15a、15b、15cに接続される可変電源としての直流電源16a、16b(図示せず)、16cと、主テーブル13に接続される直流電源17と、ガスを供給するガス導入口18と、ガスを排気するガス排気口18'とをチャンバー12内に具える。
【0041】
チャンバー12は、真空ポンプ(図示せず)と連結されており、チャンバー12内の圧力を変化可能である。支持棒14の内側には回転軸(図示せず)が設けられており、この回転軸にて主テーブル13を回転させる。主テーブル13上には、基材19を保持する治具20が設けられている。主テーブル13、支持棒14及び治具20は、直流電源17の負極と電気的に接続され、直流電源17の正極は、アースされている。アーク式蒸発源15a、15b、15cは、直流電源16a、16b、16cの負極と電気的に接続され、直流電源16a、16b、16cの正極はアースされると共にチャンバー12と電気的に接続される。
【0042】
そして、アーク式蒸発源15a、15b、15cとチャンバー12との間のアーク放電によって、蒸発源15a、15b、15cを部分的に容解させてカソード物質を図3(B)に示す矢印21a、21b、21cの示す方向に蒸発させることで、基材19表面に被覆膜を形成する。このとき、チャンバー12には、ガスを供給するガス導入口18からマスフローコントローラー(図示せず)を介して様々なガスが導入される。このガスは、例えば、アルゴンや窒素ガスなどの不活性ガス、メタン、アセチレン、ベンゼンなどの炭化水素ガスなどが挙げられる。なお、放電の際には、アーク式蒸発源15a、15b、15cとチャンバー12との間には、数十から数百V程度の電圧が印加される。
【0043】
以下、試料No.1-1〜1-8の成膜方法を説明する。基材には、グレードがJISP30の超硬合金、チップ形状がJIS規格のSPGN120308のものを用意した。そして、図3で示す成膜装置11を用いて、主テーブル13を回転させながらヒーター(図示せず)にてチップ形状の基材19を温度500℃に加熱すると共に、真空ポンプにて真空引きを行ってチャンバー12内の圧力が1.3×10-3Paとなるまで減圧する。次に、ガス導入口18からアルゴンガスを導入してチャンバー12内の圧力を3.0Paに保持し、直流電源17の電圧を徐々に上げていって-1000Vとし、基材19表面のクリーニングを15分間行った。その後、ガス排気口18'からアルゴンガスを排気した。
【0044】
直流電源17の電圧を-1000Vに維持したまま、チャンバー12内にガス導入口18から100SCCMのアルゴンと窒素との混合ガスを導入する。そして、直流電源16aから150Aのアーク電流を供給し、アーク式蒸発源15aから金属イオンを発生させる。この工程により、アーク式蒸発源15aからの金属イオンが基材19表面をスパッタクリーニングし、基材19表面に存在する強固な汚れや酸化膜などを除去する。なお、本例において、アーク式蒸発源15a、15b、15cの蒸発原料は、それぞれ後述する表1に示す中間層、第一の膜、第二の膜を形成するのに適した金属、化合物を用いた。また、第一の膜の形成に対しては、熱間静水圧加圧処理により製造され、相対密度が99.8%であり、原料表面から対向する面に及んで連続する欠陥がないTiSi合金を蒸発材料として用いた。
【0045】
その後、チャンバー12内の圧力が2.7Paになるようにガス導入口18から窒素ガスを導入し、直流電源17の電圧を-80Vとした。すると、基材19表面において金属窒化膜、又は金属膜の形成が始まる。金属窒化膜(例えばTiNなど)又は金属膜(例えばTiなど)が所定の厚みに(0.3μm)に達するまで上記の状態を維持した。この工程により、中間層として、金属窒化膜(例えば、TiN膜など)又は金属膜(例えば、Ti膜など)を形成した。
【0046】
上記中間層の形成が終了した後、チャンバー内の圧力:2.7Pa、窒素ガス導入、直流電源17の電圧:-80Vの状態のまま、直流電源16b、16cからアーク式蒸発源15b、15cに、それぞれ-40V、95Aの電流を供給する。すると、アーク式蒸発源15bから金属イオンが矢印21bに示す方向に蒸発し、蒸発源15cから化合物イオンが矢印21cに示す方向に蒸発して、基材19表面に所定の厚みの被覆膜を形成して、試料No.1-1〜1-8を得た。なお、試料No.1-1〜1-8において、第一の膜及び第二の膜からなる被覆膜の構成は、図1に示す構成などが考えられる。
【0047】
(ii)従来品(試料No.1-9)
試料No.1-9は、以下のように作製した。まず、基材は、上記試料No.1-1〜1-8と同じ基材を準備した。この基材を図3に示す成膜装置11の治具20にセットし、ガス導入口18をチャンバー12の上部に配置する。アーク式蒸発源15aの蒸発原料をチタン、蒸発源15aに対向する壁面に配置するアーク式蒸発源15cの蒸発原料をチタンアルミニウムの化合物(Ti0.5、Al0.5)とした。(Ti0.5、Al0.5)とはTiとAlとの原子数比が0.5:0.5の化合物をいう。成膜装置11のその他の構成は、上記試料No.1-1〜1-8の作製の際と同様にした。
【0048】
成膜装置11を用いて、上記試料No.1-1〜1-8と同様の手法で、基材19表面にアルゴンでスパッタクリーニングした後、チタンイオンでスパッタクリーニングした。そして、上記試料No.1-1〜1-8と同様に基材19表面に中間層として、厚さ0.3μmのTiN膜を形成した。
【0049】
TiN膜の形成が終了した後、直流電源16cからアーク式蒸発源15cに-40V、95Aの電流を供給して、蒸発源15cからチタンイオン、アルミニウムイオンを発生させると共に、ガス導入口18から窒素ガスを導入する。チタンイオン、アルミニウムイオン、窒素ガスが基材19上で反応して、基材19表面の中間層(TiN膜)上に膜厚3μmの(Ti0.5、Al0.5)N膜を形成して、試料No.1-9を得た。(Ti0.5、Al0.5)Nとは、TiとAlとNの原子数比が0.5:0.5:1の化合物をいう。
【0050】
(iii)従来品(試料No.1-10)
試料No.1-10は、上記試料No.1-9と同様にして作製した。具体的には、上記試料No.1-1〜1-8と同じ基材を準備し、この基材を図3に示す成膜装置11の治具20にセットし、ガス導入口18をチャンバー12の上部に配置する。アーク式蒸発源15aの蒸発原料をチタン、蒸発源15aに対向する壁面に配置するアーク式蒸発源15cの蒸発原料をチタンシリコンの化合物(Ti0.8、Si0.2)とした。(Ti0.8、Si0.2)とは、TiとSiの原子数比が0.8:0.2の化合物をいう。そして、上記試料No.1-1〜1-8の作製の際と同様の構成の成膜装置11を用いて、試料No.1-9と同様に基材19表面に、アルゴンでスパッタクリーニングした後、チタンイオンでスパッタクリーニングし、更に中間層として、厚さ0.3μmのTiN膜を形成した。
【0051】
TiN膜の形成が終了した後、直流電源16cからアーク式蒸発源15cに-40V、95Aの電流を供給して、蒸発源15cからチタンイオン、シリコンイオンを発生させると共に、ガス導入口18から窒素ガスを導入する。チタンイオン、シリコンイオン、窒素ガスが基材19上で反応して、基材19表面の中間層(TiN膜)上に膜厚3μmの(Ti0.8、Si0.2)N膜を形成して、試料No.1-10を得た。(Ti0.8、Si0.2)Nとは、TiとSiとNの原子数比が0.8:0.2:1の化合物をいう。
【0052】
(iv)従来品(試料No.1-11)
試料No.1-11は、上記試料No.1-9と同様にして作製した。具体的には、上記試料No.1-1〜1-8と同じ基材を準備し、この基材を図3に示す成膜装置11の治具20にセットし、ガス導入口18をチャンバー12の上部に配置する。アーク式蒸発源15aの蒸発材料をチタンとして、上記試料No.1-1〜1-8の作製の際と同様の構成の成膜装置11を用いて、試料No.1-9と同様に基材19表面に、アルゴンでスパッタクリーニングした後、チタンイオンでスパッタクリーニングし、更に中間層として、厚さ0.3μmのTiN膜を形成した。
【0053】
TiN膜の形成が終了した後、直流電源16aからアーク式蒸発源5aに-40V、95Aの電流を供給して、蒸発源15aからチタンイオンを発生させると共に、ガス導入口18からメタンガス(CH4)と窒素ガスとを導入する。チタンイオン、メタンガス、窒素ガスが基材19上で反応して、基材19表面の中間層(TiN膜)上に膜厚3μmのTi(C0.5、N0.5)膜を形成して、試料No.1-11を得る。Ti(C0.5、N0.5)とは、TiとCとNの原子数比が1:0.5:0.5の化合物をいう。
【0054】
(2)工具寿命の評価
上記により得られた試料No.1-1〜1-11のそれぞれについて、表2に示す条件で乾式の連続切削試験及び断続切削試験を行い、刃先の逃げ面摩耗幅を測定した。その結果を表1に示す。なお、表1において、試料No.1-1〜1-8に示す化合物の粒子の粒径は、透過電子顕微鏡で観察し、平均粒径を求めた。また、試料No.1-1〜1-11の組成は、透過電子顕微鏡に併設の微小領域EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)分析にて行った。組成の確認は、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)や、SIMS(secondary ion mass spectrometry)によってもできる。第二の膜、及び第一の膜、第二の膜、中間層からなる膜全体の組織(結晶性)は、X線回折測定にて行った。第一の膜の組織(結晶性)は、透過電子回折測定にて行った。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1に示すように、試料No.1-1〜1-8は、試料No.1-9〜1-11と比較して、逃げ面摩耗量が少なく、工具寿命を大きく向上したことが確認された。特に、乾式切削であっても逃げ面摩耗量が少なく、試料No.1-1〜1-8は、優れた耐摩耗性を有するものであることが分かる。また、試料No.1-1〜1-8は、断続切削においても、優れた耐摩耗性を有するものであることが分かる。更に、試料No.1-1〜1-8の組成を調べると、第一の膜において、Ti系化合物の粒子がSi系化合物の非晶質構造内に分散していた。
【0058】
(実施例2)
実施例1と同様の製造方法により、リーマ(JISK10超硬合金)の基材上にそれぞれにコーティングを行い、試料No.2-1〜2-6を得た。試料No.2-1は、上記試料No.1-1と同様の中間層、被覆膜を具える。試料No.2-2は、基材表面にTiSiN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記試料No.1-1と同様の被覆膜を具える。試料No.2-3は、基材表面にTiAlN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記試料No.1-1と同様の被覆膜を具える。試料No.2-4〜2-6は、それぞれ基材上に上記試料No.1-9〜1-11と同様の中間層、被覆膜を具える。
【0059】
これら試料No.2-1〜2-6のそれぞれについて、ねずみ鋳鉄(FC250)の穴開け加工を行い、その寿命評価を行った。切削条件は、リーマ径18mm、切削速度6m/min、送り0.4mm/刃、切り込み0.15mm、ウエット(湿式)条件とした。寿命評価は、被加工材(鋳鉄)に開けた穴の寸法精度が規定の範囲を外れた時点を寿命とし、寿命となるまでの穴の個数を評価した。結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表3に示すように、試料No.2-1〜2-3は、試料No.2-4〜2-6と比較して、寿命を大きく向上していることが確認された。このように寿命を向上することができたのは、耐摩耗性に優れているためであると考えられる。
【0062】
(実施例3)
実施例1と同様の製造方法により、エンドミル(JISK10超硬合金)の基材上にそれぞれにコーティングを行い、試料No.3-1〜3-6を得た。試料No.3-1は、上記試料No.1-1と同様の中間層、被覆膜を具える。試料No.3-2は、基材表面にTiSiN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記試料No.1-1と同様の被覆膜を具える。試料No.3-3は、基材表面にTiAlN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記試料No.1-1と同様の被覆膜を具える。試料No.3-4〜3-6は、それぞれ基材上に上記試料No.1-9〜1-11と同様の中間層、被覆膜を具える。
【0063】
これら試料No.3-1〜3-6のそれぞれについて、球状黒鉛鋳鉄(FCD450)のエンドミル側面削り(切削幅15mm)加工を行い、その寿命評価を行った。切削条件は、切削速度80m/min、送り0.03mm/刃、切り込み2mm、ウエット(湿式)条件とした。寿命評価は、被加工材(鋳鉄)に行った側面削りの寸法精度が規定の範囲を外れた時点を寿命とし、寿命となるまでの切削長さを評価した。その結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
表4に示すように、試料No.3-1〜3-3は、試料No.3-4〜3-6と比較して、寿命を大きく向上していることが確認された。このように寿命を向上することができたのは、耐摩耗性に優れているためであると考えられる。
【0066】
(実施例4)
実施例1と同様の製造方法により、旋削用刃先交換型チップ(JISP10超硬合金、刃先形状はスクイ角8°、逃げ角6°)の基材上にそれぞれにコーティングを行い、試料No.4-1〜4-6を得た。試料No.4-1は、上記試料No.1-1と同様の中間層、被覆膜を具える。試料No.4-2は、基材表面にTiSiN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記試料No.1-1と同様の被覆膜を具える。試料No.4-3は、基材表面にTiAlN膜を1μmコーティングし、この膜の上に上記試料No.1-1と同様の被覆膜を具える。試料No.4-4〜4-6は、それぞれ基材上に上記試料No.1-9〜1-11と同様の中間層、被覆膜を具える。
【0067】
これら試料No.4-1〜4-6のそれぞれについて、クロムモリブデン鋼(SCM435)の中仕上げ旋削加工を行い、その寿命評価を行った。切削条件は、切削速度120m/min、送り0.08mm/刃、ドライ(乾式)条件とした。寿命評価は、被加工材(鋼)の中仕上げの寸法精度が規定の範囲を外れた時点を寿命とし、寿命となるまでの時間を評価とした。その結果を表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
表5に示すように、試料No.4-1〜4-3は、試料No.4-4〜4-6と比較して、寿命を大きく向上していることが確認された。また、試料No.4-1〜4-3は、ドライ条件においても、耐摩耗性に優れることが分かる。
【0070】
(実施例5)
基材にcBN焼結体を用いた切削用チップを作製し、摩耗量を調べてみた。cBN焼結体は、超硬合金製ポット及びボールを用いて、TiN:40重量%、Al:10重量%からなる結合材粉末と平均粒径2.5μmのcBN粉末:50重量%とを混ぜ合わせ、超硬合金製容器に充填し、圧力5GPa、温度1400℃で60分焼結することで得た。このcBN焼結体を加工して、ISO規格SNGA120408の形状の切削用チップを得た。このチップの基材上に、実施例1と同様にして上記試料No.1-1と同様の中間層、被覆膜を形成した(試料No.5-1)。また、比較例として、このチップの基材上に、実施例1と同様にして上記試料No.1-9と同様の中間層、被覆膜を形成した試料No.5-2を用意した。
【0071】
これら試料No.5-1及び5-2のそれぞれについて、焼入鋼の1種であるSUJ2の丸棒(HRC62)の外周切削を行い、逃げ面摩耗量を調べた。切削条件は、切削速度100m/min、切り込み0.2mm、送り0.1mm/rev.、ドライ(乾式)条件とし、30分間の切削を行った。その結果、試料No.5-1の逃げ面摩耗量は、0.085mmであったのに対し、試料No.5-2の逃げ面摩耗量は0.255mmであった。このように試料No.5-1は、ドライ条件においても逃げ面摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることが分かる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように本発明被覆切削工具によれば、高硬度で耐摩耗性に優れるという効果を奏し得る。そのため、本発明工具は、特に、切削油剤を用いないドライ加工であっても、工具寿命を向上することができる。従って、本発明は、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなど工具において耐摩耗性の向上が図れ、工具寿命を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明工具において、被覆膜の構成を示す模式図であって、(A)は、第一の膜及び第二の膜の2層構造、(B)は、第一の膜及び第二の膜の複数層積層構造、(C)は、一部が第一の膜又は第二の膜の構成成分からなる単一層、他部が第一の膜及び第二の膜からなる複数層積層構造の構成、(D)は、一部が中間層などからなる単一層、他部が第一の膜及び第二の膜からなる複数層積層構造の構成、(E)は、第一の膜及び第二の膜からなる複数層積層構造が単一層に挟まれた構成である。
【図2】膜の結晶構造を示す模式図であり、(A)は、本発明工具、(B)は、従来の工具を示す。
【図3】成膜装置の一例を示す図であり、(A)は、成膜装置の模式図、(B)は、(A)のB-B断面図である。
【符号の説明】
1 第一の膜 2 第二の膜 3 複数層積層構造 4、4' 単一層
5 結晶粒 6 Si系化合物 7 柱状組織
11 成膜装置 12 チャンバー 13 主テーブル 14 支持棒
15a、15b、15c アーク式蒸発源 16a、16c、17 直流電源
18 ガス導入口 18' ガス排気口 19 基材 20 治具[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a coated cutting tool comprising a plurality of coating films on a base material such as a drill, end mill, milling blade tip replacement tip, turning tip replacement tip, metal saw, gear cutting tool, reamer, tap, etc. It is about. In particular, the present invention relates to a coated cutting tool including a coating film having excellent wear resistance.
[0002]
[Prior art]
Conventionally, in order to improve the wear resistance and surface protection function of cutting tools and wear-resistant tools, Ti, Hf, Zr, etc. have been applied to the surface of base materials made of WC-based cemented carbide, cermet, high-speed steel, etc. It is well known that a hard film made of TiAl carbide, nitride, carbonitride is formed as a single layer or a plurality of layers.
[0003]
However, due to the recent trend shown below, the cutting edge temperature of a tool tends to become higher at the time of cutting, and the characteristics required for the tool material are becoming stricter.
(1) From the viewpoint of global environmental conservation, dry (dry) processing without using a cutting fluid (lubricant) is required.
(2) Work materials are diversifying,
(3) The cutting speed has been increased in order to further improve the machining efficiency.
[0004]
In particular, the required properties of the tool material are not only the stability of the film at high temperatures (oxidation resistance and adhesion to the substrate), but also the wear resistance related to the tool life, that is, the improvement of the film hardness at high temperatures. Is becoming more important.
[0005]
Therefore, Japanese Patent No. 2793773 discloses (Al X Ti 1-xy Si y ) (N z C 1-z However, it has been proposed to form a TiAlSi-based film such as 0.05 ≦ x ≦ 0.75, 0.01 ≦ y ≦ 0.1, and 0.6 ≦ z ≦ 1 (prior art 1). This technique is intended to improve wear resistance by providing a film with a small amount of Si so as to have high hardness and good oxidation resistance.
[0006]
JP-A-8-118106 discloses (Ti 1-x Si x ) (C 1-y N y ) z However, it has been proposed to form a TiSi film such as 0.01 ≦ x ≦ 0.45, 0.01 ≦ y ≦ 0.1, and 0.5 ≦ z ≦ 1.34 (prior art 2). This technology uses high hardness (Ti 1-x Si x ) (C 1-y N y ) z By covering the surface, the wear resistance is excellent even in high-speed continuous cutting, and the service life of the tool is extended.
[0007]
[Problems to be solved by the invention]
However, the conventional technique has the following problems.
In
[0008]
In
[0009]
Therefore, a main object of the present invention is to provide a coated cutting tool having high hardness and excellent wear resistance even in intermittent cutting.
[0010]
[Means for Solving the Problems]
The present invention achieves the above object by alternately laminating films having high hardness and different abrasion resistance on the substrate having different structures.
[0011]
That is, the present invention is a coated cutting tool comprising a plurality of coating films on a substrate. The coating film is composed of a first film made of one compound selected from TiSi nitride, carbide, carbonitride, oxynitride and carbonitride (TiSi compound), and Zr, Hf and ZrHf. One layer each of a second film made of one compound (metal M compound) selected from one selected metal M nitride, carbide, carbonitride, oxynitride and carbonitride Have more. Then, the first film and the second film are alternately stacked.
[0012]
The present inventors conducted various cutting tests using various coating films and investigated the damage of the tool in detail, and the coating film determined to have a lifetime is continuously so-called normal wear. Rather, it was determined that damage was progressing while a portion of the membrane was falling off. That is, in the conventional film, wear does not progress gradually in atomic units, but damage progresses while falling out for each single so-called vertically long columnar structure existing in the film. Therefore, in order to suppress the drop and damage for each single vertically long columnar structure and to achieve normal wear, the present inventors can layer films having different structures to refine the film structure. The present invention is defined by obtaining knowledge that it is necessary.
[0013]
The present invention comprises one or more TiSi-based compound films (first films) and metal M compound films (second films), which have extremely high hardness and excellent wear resistance, and are alternately laminated. By doing so, the entire coating film can have high hardness and excellent wear resistance. Here, the structures of the first film and the second film are different from each other in composition. By laminating films with different structures in this way, the entire coating film does not become a so-called vertically long columnar structure, and the structure can be refined, so damage due to large-scale wear that repeatedly falls off for each structure ( (Abnormal wear) can be suppressed.
[0014]
Hereinafter, the present invention will be described in more detail.
In the tool of the present invention, the configuration of the first film made of the TiSi-based compound and the second film made of the metal M compound may be a plurality of configurations shown in FIG. 1A shows a two-layer structure of a
[0015]
The thickness of the first film made of the TiSi-based compound and the thickness of the second film made of the metal M compound are each preferably 0.5 nm or more and 50 nm or less. The structure in which such thin films are laminated has an effect of suppressing transition and cracks. When the thickness of the film is less than 0.5 nm, it is difficult to improve the hardness of the coating film. Also, if it is less than 0.5 nm, each element constituting the coating film diffuses, the structure of each film becomes very unstable, the laminated structure of the thin film disappears, or it is combined with the adjacent film As a result, it may be difficult to distinguish the boundary of the film. On the other hand, when the thickness of the film exceeds 50 nm, the effect of suppressing dislocations and cracks due to the laminated structure of the thin film tends to decrease. More preferably, the thickness is 0.5 nm or more and 10 nm or less, respectively.
[0016]
In the first film made of a TiSi-based compound, Si is preferably more than 1% and 30% or less in atomic weight%. The presence of Si in the coating film is preferable because the hardness of the coating film is improved. However, when Si of 30% or more in atomic weight% is contained, the coating film becomes brittle and conversely promotes wear. There is a fear. In addition, when forming a TiSi alloy target (evaporation raw material) by hot isostatic pressing to form the first film by physical vapor deposition, if the Si content exceeds 30%, the target breaks and is coated. It is difficult to obtain material strength that can be used for More preferably, the first film contains Si in an atomic weight percentage of more than 15% and 25% or less.
[0017]
In the first film, the Ti-based compound (one compound selected from Ti nitride, carbide, carbonitride, oxynitride and carbonitride) has a cubic structure, Si-based compound (Si nitride) , One compound selected from carbide, carbonitride, oxynitride, and carbonitride) has an amorphous structure, and in the second film, the metal M compound preferably has a cubic structure. . At this time, the crystallinity of the entire coating film can be evaluated by X-ray diffraction measurement, but the Si-based compound cannot be identified by X-ray diffraction because it has an amorphous structure. Therefore, in the X-ray diffraction measurement of the entire coating film, only a Ti compound having a cubic structure in the first film made of TiSi compound and a compound of metal M having a cubic structure in the second film can be obtained. Since it cannot be identified, as a result, the structure of the entire coating film becomes a cubic structure. In the present invention, in addition to the coating film composed of the first film and the second film, in the case where an intermediate layer described later is provided, the structure of the entire film including the intermediate layer is a cubic crystal structure. It becomes. The crystallinity of the Si compound can be evaluated by, for example, transmission electron diffraction (Transmission Election Diffraction).
[0018]
In the first film, the Ti compound is preferably crystalline with an average particle diameter of 0.1 nm to 10 nm and dispersed in the amorphous structure of the Si compound. FIG. 2 is a schematic diagram showing the structure of the coating film, where (A) shows the tool of the present invention and (B) shows a conventional tool. In the tool of the present invention, as shown in FIG. 2 (A), fine Ti-based
[0019]
As described above, the
[0020]
The total thickness of the coating film composed of the first film and the second film is preferably 0.5 μm or more and 10 μm or less. If the total thickness is less than 0.5 μm, it is difficult to improve the wear resistance. If the total thickness exceeds 10 μm, the adhesion strength with the substrate may be reduced due to the residual stress in the coating film. Because.
[0021]
In the tool of the present invention, an intermediate layer may be provided between the substrate surface and the coating film. The intermediate layer is preferably made of one selected from Ti (titanium), Ti nitride (titanium nitride), Zr (zirconium), and Zr nitride (zirconium nitride). In particular, titanium and titanium nitride have good adhesion to both the substrate surface and the coating film, and can further improve the adhesion between the substrate and the coating film. Therefore, when the intermediate layer is provided, the coating film can be prevented from peeling from the base material, and the tool life can be further improved. Such an intermediate layer preferably has a thickness of 0.05 μm or more and 1.0 μm or less. This is because if the thickness is less than 0.05 μm, it is difficult to improve the adhesion strength, and even if the thickness exceeds 1 μm, it is difficult to further improve the adhesion strength.
[0022]
Base materials for forming the coating film and intermediate layer are WC-based cemented carbide, cermet, high speed steel, ceramics, cubic boron nitride (cBN) sintered body, diamond sintered body, silicon nitride sintered body And one selected from sintered bodies containing aluminum oxide and titanium carbide.
[0023]
WC-based cemented carbide is composed of a hard phase mainly composed of tungsten carbide (WC) and a binder phase mainly composed of an iron group metal such as cobalt (Co). Should be used. Further, it may contain a solid solution composed of at least one selected from transition metal elements of groups 4a, 5a, and 6a of the periodic table and at least one selected from carbon, nitrogen, oxygen, and boron. Examples of solid solutions include (Ta, Nb) C, VC, Cr 2 C 2 , NbC and the like.
[0024]
As the cermet, for example, a solid solution phase composed of at least one selected from transition metal elements of groups 4a, 5a and 6a of the periodic table and at least one selected from carbon, nitrogen, oxygen and boron, and one or more types It is good to use what is usually used by what consists of a binder phase which consists of an iron-type metal, and an unavoidable impurity.
[0025]
Examples of the high speed steel include W series high speed steels such as JIS symbols SKH2, SKH5, and SKH10, and Mo series high speed steels such as SKH9, SKH52, and SKH56.
[0026]
Examples of the ceramic include silicon carbide, silicon nitride, aluminum nitride, and aluminum oxide.
[0027]
Examples of the cBN sintered body include those containing 30% by volume or more of cBN. More specifically, the following sintered bodies are mentioned.
(1) A sintered body containing 30% by volume or more and 80% by volume or less of cBN, with the balance being a binder, an iron group metal, and inevitable impurities. The binder includes at least one selected from the group consisting of nitrides, borides, carbides, and solid solutions of the periodic table 4a, 5a, and 6a group elements, and an aluminum compound.
[0028]
In the cBN sintered body, the cBN particles are mainly bonded through the bonding material having a low affinity with iron, which is often used as a work material, and since this bond is strong, the wear resistance of the substrate And improve strength.
[0029]
The cBN content is set to 30% by volume or more. If the cBN content is less than 30% by volume, the hardness of the cBN sintered body is likely to decrease. For example, when cutting a hard material such as hardened steel. This is because the hardness is insufficient. The reason why the cBN content is 80% by volume or less is that when it exceeds 80% by volume, it becomes difficult to bond the cBN particles through the binder, and the strength of the cBN sintered body may be reduced. .
[0030]
(2) A sintered body containing cBN in an amount of 80% by volume or more and 90% by volume or less, in which cBN particles are bonded to each other, and the balance is composed of a binder and inevitable impurities. The binder is mainly composed of an Al compound or a Co compound.
[0031]
This cBN sintered body is a liquid phase sintering process using a metal containing Al or Co having a catalytic action or an intermetallic compound as a starting material, thereby binding the cBN particles and increasing the content of the cBN particles. Can be increased. Although the wear resistance tends to decrease due to the high content of cBN particles, the cBN particles form a strong skeletal structure, so they have excellent fracture resistance and can be cut under harsh conditions. .
[0032]
The reason why the cBN content is 80% by volume or more is that when the content is less than 80% by volume, it becomes difficult to form a skeleton structure by bonding of cBN particles. The reason why the cBN content is 90% by volume or less is that when the content exceeds 90% by volume, the above-mentioned binder having a catalytic action is insufficient and an unsintered portion is formed, and the strength of the cBN sintered body is reduced. It is.
[0033]
Examples of the diamond sintered body include those containing 40% by volume or more of diamond. More specifically, the following sintered bodies are mentioned.
(1) A sintered body containing 50 to 98% by volume of diamond, with the balance being iron group metal, WC and inevitable impurities. The iron group metal is particularly preferably Co.
(2) A sintered body containing 85 to 99% by volume of diamond, and the balance consisting of vacancies, WC and inevitable impurities.
(3) A sintered body containing 60 to 95% by volume of diamond, the balance being a binder and inevitable impurities. The binder includes an iron group metal, one or more selected from the group consisting of carbides and carbonitrides of the periodic table 4a, 5a, and 6a elements, and WC. More preferable binders include Co, TiC, and WC.
(4) A sintered body containing 60 to 98% by volume of diamond, the balance being at least one of silicon and silicon carbide, WC and inevitable impurities.
[0034]
Examples of the silicon nitride sintered body include those containing 90% by volume or more of silicon nitride. In particular, a sintered body containing 90% by volume or more of silicon nitride bonded using the HIP method (hot isostatic pressing) is preferable. The balance of the sintered body may consist of at least one binder selected from aluminum oxide, aluminum nitride, yttrium oxide, magnesium oxide, zirconium oxide, hafnium oxide, rare earth, TiN, and TiC, and unavoidable impurities. preferable.
[0035]
The sintered body containing aluminum oxide and titanium carbide contains 20% to 80% aluminum oxide by volume and 15% to 75% titanium carbide with the balance being Mg, Y, Ca, Zr, Ni, Examples thereof include a sintered body made of at least one binder selected from oxides of Ti and TiN and unavoidable impurities. In particular, aluminum oxide is 65 volume% or more and 70 volume% or less, titanium carbide is 25 volume% or more and 30 volume% or less, and the binder is at least one selected from oxides of Mg, Y, and Ca. Is preferred.
[0036]
The coated cutting tool of the present invention may be used for an application including one selected from a drill, an end mill, a milling cutting edge replaceable chip, a turning cutting edge replaceable chip, a metal saw, a gear cutting tool, a reamer, and a tap. .
[0037]
In the present invention, in order to coat the coating film on the base material, it is suitable to be produced by a film forming process capable of forming a compound having high crystallinity. Therefore, the coating film composed of the first film and the second film is formed by physical vapor deposition in a gas containing at least one of nitrogen, carbon, and oxygen using TiSi alloy and metal M as evaporation raw materials, respectively. The ones made are preferred. In addition, as a result of studying various film forming methods by the present inventors, among physical vapor deposition methods, arc type ion plating method (cathode arc ion plating) having a high ion ratio of raw material elements is most suitable. I understood. When cathodic arc ion plating is used, metal ion bombardment treatment can be performed on the substrate surface before forming the coating film, so the adhesion of the coating film can be significantly improved. This is also a preferable process from the viewpoint of adhesion.
[0038]
The evaporation raw material of the TiSi alloy used in the physical vapor deposition method is manufactured by hot isostatic pressing, the relative density is 99 to 100%, and continuous defects from the raw material surface to the facing surface, for example, Those having no pores (holes) or cracks (cuts) are preferred. At this time, it is possible to prevent troubles such as cracking of the target (evaporation material) during film formation.
[0039]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Embodiments of the present invention will be described below.
The following coated cutting tools were produced and examined for wear resistance.
[0040]
(Example 1)
(1) Sample preparation
(i) Invention product (Sample Nos. 1-1 to 1-8)
First, the film forming apparatus used in this test will be described. FIG. 3 (A) is a schematic diagram of a film forming apparatus used in this test, and FIG. 3 (B) is a BB cross-sectional view of (A). The
[0041]
The
[0042]
Then, by arc discharge between the
[0043]
Hereinafter, a film forming method for Sample Nos. 1-1 to 1-8 will be described. As the base material, a cemented carbide alloy with a grade of JISP30 and a chip shape with SPGN120308 with a JIS standard were prepared. Then, using the
[0044]
While maintaining the voltage of the
[0045]
Thereafter, nitrogen gas was introduced from the
[0046]
After the formation of the intermediate layer, the pressure in the chamber: 2.7 Pa, introduction of nitrogen gas, the voltage of the DC power supply 17: -80 V, the
[0047]
(ii) Conventional product (Sample No. 1-9)
Sample No. 1-9 was prepared as follows. First, the same base material as the above sample Nos. 1-1 to 1-8 was prepared. This base material is set on the
[0048]
Using the
[0049]
After the formation of the TiN film is completed, a current of -40 V and 95 A is supplied from the
[0050]
(iii) Conventional product (Sample No. 1-10)
Sample No. 1-10 was produced in the same manner as Sample No. 1-9. Specifically, the same substrate as the above sample Nos. 1-1 to 1-8 was prepared, this substrate was set in the
[0051]
After the formation of the TiN film is completed, a current of -40 V and 95 A is supplied from the
[0052]
(iv) Conventional product (Sample No. 1-11)
Sample No. 1-11 was produced in the same manner as Sample No. 1-9. Specifically, the same substrate as the above sample Nos. 1-1 to 1-8 was prepared, this substrate was set in the
[0053]
After the formation of the TiN film is completed, a current of -40 V and 95 A is supplied from the
[0054]
(2) Tool life evaluation
Each of the sample Nos. 1-1 to 1-11 obtained as described above was subjected to a dry continuous cutting test and an intermittent cutting test under the conditions shown in Table 2, and the flank wear width of the cutting edge was measured. The results are shown in Table 1. In Table 1, the particle diameters of the compounds shown in Sample Nos. 1-1 to 1-8 were observed with a transmission electron microscope to obtain an average particle diameter. The compositions of Sample Nos. 1-1 to 1-11 were performed by micro area EDX (Energy Dispersive X-ray Spectroscopy) analysis attached to the transmission electron microscope. The composition can also be confirmed by XPS (X-ray Photoelectron Spectroscopy) or SIMS (secondary ion mass spectrometry). The structure (crystallinity) of the entire film composed of the second film, the first film, the second film, and the intermediate layer was measured by X-ray diffraction measurement. The structure (crystallinity) of the first film was measured by transmission electron diffraction measurement.
[0055]
[Table 1]
[0056]
[Table 2]
[0057]
As shown in Table 1, it was confirmed that Sample Nos. 1-1 to 1-8 had less flank wear and greatly improved tool life compared to Samples No. 1-9 to 1-11 It was done. In particular, even with dry cutting, the amount of flank wear is small, and it can be seen that Samples Nos. 1-1 to 1-8 have excellent wear resistance. It can also be seen that Sample Nos. 1-1 to 1-8 have excellent wear resistance even in intermittent cutting. Further, when the compositions of Sample Nos. 1-1 to 1-8 were examined, Ti compound particles were dispersed in the amorphous structure of the Si compound in the first film.
[0058]
(Example 2)
By the same manufacturing method as in Example 1, coating was performed on a reamer (JISK10 cemented carbide) base material to obtain sample Nos. 2-1 to 2-6. Sample No. 2-1 includes the same intermediate layer and coating film as Sample No. 1-1. In Sample No. 2-2, a TiSiN film is coated on the surface of the substrate by 1 μm, and a coating film similar to Sample No. 1-1 is provided on this film. In sample No. 2-3, a TiAlN film is coated on the surface of the substrate by 1 μm, and a coating film similar to sample No. 1-1 is provided on this film. Samples Nos. 2-4 to 2-6 are each provided with the same intermediate layer and coating film as the sample Nos. 1-9 to 1-11 on the substrate.
[0059]
For each of these sample Nos. 2-1 to 2-6, drilling of gray cast iron (FC250) was performed, and the life evaluation was performed. Cutting conditions were a reamer diameter of 18 mm, a cutting speed of 6 m / min, a feed of 0.4 mm / blade, a cutting depth of 0.15 mm, and wet (wet) conditions. In the life evaluation, the time when the dimensional accuracy of the hole drilled in the workpiece (cast iron) was out of the specified range was defined as the life, and the number of holes until the end of the life was evaluated. The results are shown in Table 3.
[0060]
[Table 3]
[0061]
As shown in Table 3, it was confirmed that Sample Nos. 2-1 to 2-3 significantly improved the life compared to Samples No. 2-4 to 2-6. The reason why the life could be improved in this way is considered to be because of excellent wear resistance.
[0062]
(Example 3)
By the same production method as in Example 1, coating was performed on the end mill (JISK10 cemented carbide) base material to obtain sample Nos. 3-1 to 3-6. Sample No. 3-1 includes the same intermediate layer and coating film as Sample No. 1-1. In sample No. 3-2, a TiSiN film is coated on the surface of the substrate by 1 μm, and a coating film similar to sample No. 1-1 is provided on this film. In Sample No. 3-3, a TiAlN film is coated on the surface of the substrate by 1 μm, and a coating film similar to Sample No. 1-1 is provided on this film. Samples Nos. 3-4 to 3-6 are each provided with the same intermediate layer and coating film as the sample Nos. 1-9 to 1-11 on the base material.
[0063]
For each of these samples No. 3-1 to 3-6, end mill side milling (cutting width: 15 mm) of spheroidal graphite cast iron (FCD450) was performed, and the life evaluation was performed. Cutting conditions were a cutting speed of 80 m / min, a feed of 0.03 mm / tooth, a cutting depth of 2 mm, and wet (wet) conditions. In the life evaluation, the time when the dimensional accuracy of the side milling performed on the workpiece (cast iron) deviated from the specified range was defined as the life, and the cutting length until reaching the life was evaluated. The results are shown in Table 4.
[0064]
[Table 4]
[0065]
As shown in Table 4, it was confirmed that Sample Nos. 3-1 to 3-3 significantly improved the life compared to Samples No. 3-4 to 3-6. The reason why the life could be improved in this way is considered to be because of excellent wear resistance.
[0066]
(Example 4)
Using the same manufacturing method as in Example 1, coating was performed on each of the base materials of the cutting edge replaceable tip for turning (JISP10 cemented carbide, the cutting edge shape was a squeeze angle of 8 °, a clearance angle of 6 °), and sample No. 4 -1 to 4-6 were obtained. Sample No. 4-1 includes the same intermediate layer and coating film as Sample No. 1-1. In Sample No. 4-2, a TiSiN film is coated on the surface of the substrate by 1 μm, and a coating film similar to Sample No. 1-1 is provided on this film. In Sample No. 4-3, a TiAlN film is coated on the surface of the substrate by 1 μm, and a coating film similar to Sample No. 1-1 is provided on this film. Samples Nos. 4-4 to 4-6 are each provided with the same intermediate layer and coating film as Sample Nos. 1-9 to 1-11 on the substrate.
[0067]
About each of these sample Nos. 4-1 to 4-6, the intermediate finish turning of chromium molybdenum steel (SCM435) was performed, and the life evaluation was performed. Cutting conditions were a cutting speed of 120 m / min, a feed of 0.08 mm / tooth, and a dry (dry) condition. In the life evaluation, the time when the dimensional accuracy of the intermediate finish of the workpiece (steel) was out of the specified range was defined as the life, and the time until the life was reached was evaluated. The results are shown in Table 5.
[0068]
[Table 5]
[0069]
As shown in Table 5, it was confirmed that the sample Nos. 4-1 to 4-3 greatly improved the life compared with the sample Nos. 4-4 to 4-6. Moreover, it turns out that sample No.4-1 to 4-3 is excellent in abrasion resistance also in dry conditions.
[0070]
(Example 5)
A cutting tip using a cBN sintered body as a base material was manufactured and the amount of wear was examined. cBN sintered body is made of cemented carbide pot and ball, and a mixture of TiN: 40% by weight and Al: 10% by weight of binder powder and cBN powder with an average particle size of 2.5μm: 50% by weight. It was obtained by filling a cemented carbide container and sintering at a pressure of 5 GPa and a temperature of 1400 ° C. for 60 minutes. This cBN sintered body was processed to obtain a cutting tip having the shape of ISO standard SNGA120408. On the base material of this chip, the same intermediate layer and coating film as sample No. 1-1 were formed in the same manner as in Example 1 (Sample No. 5-1). As a comparative example, Sample No. 5-2 was prepared in which the same intermediate layer and coating film as Sample No. 1-9 were formed on the substrate of this chip in the same manner as Example 1.
[0071]
For each of these sample Nos. 5-1 and 5-2, peripheral cutting of a SUJ2 round bar (HRC62), which is a kind of hardened steel, was performed to examine the flank wear amount. Cutting conditions were a cutting speed of 100 m / min, a cutting depth of 0.2 mm, a feed of 0.1 mm / rev., And a dry (dry) condition, and cutting was performed for 30 minutes. As a result, the flank wear amount of Sample No. 5-1 was 0.085 mm, whereas the flank wear amount of Sample No. 5-2 was 0.255 mm. Thus, it can be seen that Sample No. 5-1 has a small amount of flank wear even under dry conditions and is excellent in wear resistance.
[0072]
【The invention's effect】
As described above, according to the coated cutting tool of the present invention, the effect of high hardness and excellent wear resistance can be obtained. Therefore, the tool of the present invention can improve the tool life even in dry processing that does not use a cutting fluid. Therefore, the present invention can improve wear resistance and improve tool life in tools such as drills, end mills, milling cutting edge replacement inserts, turning cutting edge replacement inserts, metal saws, gear cutting tools, reamers, and taps. It is possible.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a schematic diagram showing the configuration of a coating film in the tool of the present invention, where (A) is a two-layer structure of a first film and a second film, and (B) is a first film. And (C) is a single layer partly composed of components of the first film or the second film, and the other part composed of the first film and the second film. (D) is a single layer partly composed of an intermediate layer and the like, and (D) is a multi-layer structure composed of a first film and a second film in the other part. This is a structure in which a multilayer structure composed of one film and a second film is sandwiched between single layers.
FIGS. 2A and 2B are schematic views showing a crystal structure of a film, in which FIG. 2A shows a tool of the present invention, and FIG. 2B shows a conventional tool.
FIGS. 3A and 3B are diagrams illustrating an example of a film forming apparatus, where FIG. 3A is a schematic diagram of the film forming apparatus, and FIG. 3B is a cross-sectional view taken along the line BB in FIG.
[Explanation of symbols]
1
5 Grain 6 Si-based
11
15a, 15b, 15c
18 Gas inlet 18 '
Claims (14)
前記被覆膜は、
TiSiの窒化物、炭化物、炭窒化物、酸窒化物及び炭酸窒化物から選択された1種の化合物からなる第一の膜と、
Zr、Hf及びZrHfから選択された1種の金属Mの窒化物、炭化物、炭窒化物、酸窒化物及び炭酸窒化物から選択された1種の化合物からなる第二の膜とをそれぞれ1層以上具え、
前記第一の膜と第二の膜とは、交互に積層されており、
前記第一の膜において、Ti系化合物は立方晶構造、Si系化合物は非晶質構造であり、第二の膜において、金属Mの化合物は立方晶構造であり、被覆膜全体のX線回折測定では、立方晶構造であることを特徴とする被覆切削工具。A coated cutting tool comprising a plurality of coating films on a substrate,
The coating film is
A first film made of one compound selected from TiSi nitride, carbide, carbonitride, oxynitride and carbonitride;
One layer each of a second film made of one compound selected from nitride, carbide, carbonitride, oxynitride and carbonitride of one kind of metal M selected from Zr, Hf and ZrHf More than,
The first film and the second film are alternately stacked ,
In the first film, the Ti-based compound has a cubic structure, and the Si-based compound has an amorphous structure. In the second film, the metal M compound has a cubic structure, and the X-rays of the entire coating film Coated cutting tool characterized by a cubic structure in diffraction measurement .
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