JP3757328B2 - 頭部保護エアバッグ装置のエアバッグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車に搭載される頭部保護エアバッグ装置のエアバッグに関し、詳しくは、車内側の開口の上縁側周縁に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、開口とリヤピラー部の車内側とを覆うように、展開膨張するエアバッグに関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、この種の頭部保護エアバッグ装置では、特開2000−6749号公報等に記載されているように、エアバッグが、フロントピラー部からセンターピラー部を経てリヤピラー部まで延びるように、車内側の開口における上縁側の周縁に、折り畳まれて収納されていた。
【0003】
そして、展開膨張時に開口とともにリヤピラー部の車内側を覆えるようにエアバッグを構成する場合には、膨張用ガスを流入させて膨張を完了させた際、極力、リヤピラー部の車内側を広く覆えるように、膨張用ガスを流入させた膨張部が、後方へ延びた状態で、展開膨張を完了させることが望ましい。
【0004】
しかし、この種のエアバッグでは、展開膨張完了時に前後方向に作用する張力を生じさせて、車内側や車外側への揺動を防止できるように、膨張部の車内側壁部と車外側壁部とを結合して上下方向に延びる複数の結合部を、膨張部の領域内に、前後方向に並設させる必要があった。
【0005】
しかしながら、リヤピラー部の車内側を覆うための膨張部にも、複数の上記結合部を並設させた場合には、展開膨張完了時の膨張部には、前後方向の張力が生ずるものの、膨張部が前後方向に収縮し、膨張完了時の膨張部の後端側を前方側に移動させてしまう結果を招くこととなり、リヤピラー部の車内側を広く覆う点に、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、膨張完了時、前後方向に作用する張力を確保しつつ、リヤピラー部の車内側を広く覆うことができる頭部保護エアバッグ装置のエアバッグを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るエアバッグは、車内側の開口の上縁側周縁に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、前記開口とリヤピラー部の車内側とを覆うように、展開膨張し、
前記リヤピラー部の車内側を覆う膨張部の領域内に、車内側壁部と車外側壁部とを結合して上下方向に延びる複数の結合部が、下端を前記膨張部の周縁の非膨張部位から上方へ離し、上下方向に重なることなく前後方向に並設されて、配設されている頭部保護エアバッグ装置のエアバッグであって、
最前列の前記結合部を除いた少なくとも一つの前記結合部が、下端を、前記最前列の結合部の下端より、上方に位置させるとともに、前記膨張部の下縁側の周縁における前記非膨張部位からの上下方向の離隔距離を、前記最前列の結合部の下端側より、大きくして、配設され、
下端を前記最前列の結合部の下端より上方に位置させた前記結合部における下方に、前記最前列の結合部から、下端を上方に位置させた前記結合部の後方における結合部、若しくは、前記膨張部周縁の前記非膨張部位までに、前記最前列の結合部の下端と前記膨張部の下縁側の周縁における非膨張部位との間に形成される膨張部分より内径寸法を大きくして、前後方向に延びる形状の膨張部分が形成されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
そして、エアバッグ製造時における製品形状となる製品形状部と製品形状部の周縁の裁断代とを含めたエアバッグ素材から、製品形状部を裁断して切り取る裁断の基準点は、前記膨張部の後縁付近に設定して、エアバッグを製造することが望ましく、さらに、前記基準点は、前記膨張部の後縁を形成する非膨張部位の後端に、設定することが望ましい。
【0009】
【発明の効果】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置のエアバッグでは、膨張部に膨張用ガスが流入されれば、開口の上縁側周縁から下方に展開膨張して、車内側の開口とリヤピラー部の車内側とを覆うこととなる。
【0010】
この時、リヤピラー部を覆う膨張部では、複数の結合部の内、最前列の結合部を除いた少なくとも一つの結合部が、下端を、最前列の結合部の下端より、上方に位置させて、配設されていることから、その下端を上方に位置させた結合部の下方には、その結合部の前方の結合部から後方における結合部若しくは膨張部周縁の非膨張部位までの広い膨張部分が形成されることとなる。この膨張部分は、リヤピラー部を覆う膨張部の下端で長く前後方向に延びる形状であって、リヤピラー部を覆う膨張部の下縁側における前後方向の長さ寸法の収縮を抑えて、膨張する。そのため、リヤピラー部を覆う膨張部は、後端側を極力前方へ移動させずに、膨張を完了させることができ、その結果、リヤピラー部を広く覆えることとなる。
【0011】
勿論、リヤピラー部を覆う膨張部には、車内側壁部と車外側壁部とを結合して上下方向に延びる複数の結合部が、下端を上方に位置させた結合部を含めて、前後方向に並設されて、配設されていることから、前後方向の張力を確保することができる。
【0012】
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置のエアバッグでは、膨張完了時、前後方向に作用する張力を確保しつつ、リヤピラー部の車内側を広く覆うことができる。
【0013】
そして、エアバッグ製造時における裁断の基準点を、膨張部の後縁付近に設定しておけば、リヤピラー部を覆う膨張部の後縁付近の寸法形状を、裁断時に正確に確保でき、リヤピラー部を覆う膨張部の膨張完了時の形状誤差を抑えることができる。
【0014】
さらに、その基準点を、膨張部の後縁を形成する非膨張部位の後端に、設定すれば、一層、リヤピラー部を覆う膨張部の後縁付近の寸法形状を、裁断時に正確に確保できることとなって、リヤピラー部を覆う膨張部の膨張完了時の形状誤差を極力無くすことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
実施形態のエアバッグ11は、図1に示す頭部保護エアバッグ装置Mに使用されるものであり、車内側のドアや窓部の開口Wの上縁側周縁におけるフロントピラー部FPの下縁側、ルーフサイドレール部RRの下縁側、及び、リヤピラー部RPの上方側にわたって、折り畳まれて収納されている。
【0017】
頭部保護エアバッグ装置Mは、エアバッグ11、インフレーター43、取付ブラケット38・39・40・44、及び、エアバッグカバー9、を備えて構成されている。
【0018】
インフレーター43は、図1・7に示すように、折り畳まれたエアバッグ11に膨張用ガスを供給するシリンダタイプとしており、エアバッグ11の後述するガス流入部13が外装されることとなる。
【0019】
取付ブラケット44は、板金製として、エアバッグ11の後述するガス流入部13を外装させたインフレーター43を、ガス流入部13ごと外周側から挟持し、2本の取付ボルト45を利用して、リヤピラー部RPの車内側におけるボディ1側の板金製のインナパネル2に取り付けることとなる。
【0020】
取付ブラケット38は、図1・2に示すように、板金製として、エアバッグ11における後述する前部側の2つの取付部12を挟持するもので、それぞれ、車内側Iの内プレート38aと車外側Oの外プレート38bとを備えて構成され、それらの内・外プレート38a・38bには、各取付部12の取付孔12aに対応する取付孔38cが貫通されている。そして、取付ボルト41を、取付孔12a・38cに挿通させて、インナパネル2の取付孔2a周縁に固着されたナット2bに螺合させることにより、各取付部12がインナパネル2に取り付けられることとなる。
【0021】
取付ブラケット40は、図1に示すように、板金製として、エアバッグ11の後部側の二つの取付部12を挟持するものであり、取付ブラケット38の内プレート38aと同様な車内側に配置される二つの内プレート40aと、二つの内プレート40aの車外側に配置される一つの外プレート40bと、を備えて構成されている。この外プレート40bは、図3に示すように、折り畳まれたエアバッグ11の車外側と下面側とを支持して、エアバッグ11の展開膨張時にリヤピラー部RPの車内側を覆うガーニッシュ6の車外側に侵入しないように、断面を略L字状としている。また、内・外プレート40a・40bには、取付部12の取付孔12aに対応する位置に、取付ボルト41を挿通させる取付孔(図符号省略)が貫通されている。
【0022】
取付ブラケット39は、図1に示すように、板金製として、エアバッグ11の前後方向の中間部位の取付部12を挟持するもので、取付ブラケット38の内プレート38aと同様な車内側に配置される一つの内プレート39aを備えるとともに、車外側に配置される一つの外プレート39bを備えて構成されている。この外プレート39bも、外プレート40bと同様に、折り畳まれたエアバッグ11の車外側と下面側とを支持して、エアバッグ11の展開膨張時にセンターピラー部CPの車内側を覆うガーニッシュ7の車外側に侵入しないように、断面を略L字状としている。また、内・外プレート39a・39bには、取付部12の取付孔12aに対応する位置に、取付ボルト41を挿通させる取付孔(図符号省略)が貫通されている。
【0023】
エアバッグカバー9は、図1〜3に示すように、フロントピラー部FPに配置されるピラーガーニッシュ4とルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5とのそれぞれの下縁側から構成されている。なお、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とは、合成樹脂製として、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRの車内側におけるボディ1のインナパネル2に取付固定されている。
【0024】
エアバッグ11は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって製造され、図1・4に示すように、インフレーター43からの膨張用ガスを流入させて、折り畳み状態から展開して、開口Wを覆う本体部14と、インフレーター43からの膨張用ガスを本体部14に導くガス流入部13と、本体部14の上縁11a側に設けられる取付部12と、を備えて構成されている。
【0025】
ガス流入部13は、本体部14から後方へ突出するとともに、本体部14の後述する後席用膨張部16の流入口17付近まで延びて、後述する連通膨張部22の後端と連通するように配設されている。そして、ガス流入部13のエアバッグ本体部14から突出する部位は、インフレーター43に外装されることとなる。
【0026】
取付部12は、本体部14の上縁11a側における後述する周縁部25や板状部34から上方へ突出するように、複数配置されて、インナパネル2に取り付けるための取付ブラケット38・39・40が固着されることとなる。各取付部12には、取付ボルト41を挿通させる取付孔12aが開口されている。
【0027】
本体部14は、ガス流入部13に連通して、膨張用ガスを流入させて車内側壁部15a(図7・8参照)と車外側壁部15bとを離すように膨張する膨張部15と、膨張用ガスを流入させない非膨張部24と、を備えて構成されている。
【0028】
膨張部15は、車両の後席側の位置に配置可能な後席用膨張部16と、前席側の位置に配置可能な前席用膨張部20と、ガス流入部13に連通するとともに、前・後席用膨張部20・16の上部相互を連通する連通膨張部22と、から構成されている。展開膨張完了時の後席用膨張部16は、開口Wを覆うとともに、リヤピラー部RPのリヤピラーガーニッシュ6の車内側も覆うように、構成されている。
【0029】
非膨張部24は、車内側壁部15aと車外側壁部15bとを結合させたように構成されており、実施形態の場合、周縁部25、結合部27・28・29・31・32、及び、板状部34、から構成されている。周縁部25は、膨張部15の周縁を囲むように配設されており、ガス流入部13と後席用膨張部16とを区画するように、後縁側から前方に延びる区画部25aも備えている。
【0030】
板状部34は、本体部14の前部側の三角板状部34aと、前・後席用膨張部20・16との間における連通膨張部22の下方の長方形板状部34bと、を備えて構成されている。板状部34は、ガス流入部13から本体部14の前部にかけての本体部14の全体形状を確保するとともに、膨張部15の容積を小さくして、膨張完了までの時間を短くするために設定されている。
【0031】
なお、周縁部25・結合部27・28・29・31・32は、取付部12とともに、板状部34に比べて、密に織成され、板状部34は、膨張部15との境界部位でなく、膨張用ガスの漏れ対策を考慮しなくとも良いことから、粗く二枚状に織成されて、相互に部分的に点付けされている。なお、この板状部34a・34bのような構成部位は、実施形態の場合、エアバッグ上縁11a側の取付部12やガス流入部13の近傍の部位34cや、エアバッグ下縁11bの膨張部16・20直下における周縁部25の下方部位34dにも、配設されている。
【0032】
結合部27・28・29は、前席用膨張部20の領域内で、上下方向に延びるような略T字形状若しくは略逆J字形状に形成されて、周縁部25から離れて車両の前後方向に並設されている。
【0033】
結合部31・32は、後席用膨張部16の領域内に延びるような略I字形状として、周縁部25の区画部25aから下方へ延びて、上下方向に重なることなく、車両の前後方向に並設されている。
【0034】
これらの結合部27・28・29・31・32は、膨張部15が膨張用ガスを流入させて膨張した際、前・後席用膨張部20・16の肉厚を略均等にするために、配設されるとともに、ガス流入部13付近から本体部14の前部にかけての前後方向に張力T(図1の二点鎖線参照)を発揮させて、本体部14が、車内側や車外側への押圧力を受けても、揺動しないように、配設されている。
【0035】
そして、図4・5に示すように、後席用膨張部16の領域内に配置される結合部31・32では、最前列の結合部31を除いた最後列側の結合部32が、下端32aを、最前列の結合部31の下端31aより、上方に位置させるととも、膨張部16の下縁側の周縁における非膨張部24(周縁部25)からの上下方向の離隔距離を、最前列の結合部31の下端31a側より、大きくして、配設されている。実施形態の場合、下端31aより上方に位置する下端32aの上げ寸法Hは、50mmとしている。
【0036】
なお、ガス流入部13に流入される膨張用ガスGは、主流GMが、連通膨張部22内を前方に流れ、さらに、前席用膨張部20の上部を前方側に流れることとなり、そして、主流GMから分岐する分岐流G1・G2・G3・G4が、周縁部25と結合部27との間の開口20a、結合部27・28間の開口20b、結合部28・29間の開口20c、結合部29と周縁部25との間の開口20dから、それぞれ、下方に流れて、前席用膨張部20を膨張させ、分岐流G5が、周縁部25と区画部25aとの間の流入口17から下方に流れて、後席用膨張部16を膨張させることとなる。
【0037】
このエアバッグ11の製造方法を説明すると、図6のAに示すように、まず、エアバッグ11の製品形状となる製品形状部10aと製品形状部10aの周縁の裁断代10bとを含めた形状のエアバッグ用素材10を、袋織りにより製造する。実施形態の場合には、エアバッグ用素材10は、幅方向に二つの製品形状部10aを並べ、かつ、長手方向で製品形状部10aの前後を逆転させつつ並べるように配設させて、帯状に織成している。また、袋織り時には、既述したように、周縁部25・結合部27〜29・31・32・取付部12を密に織成し、結合部27〜29・31・32を除いた膨張部15とガス流入部13とを車内側壁部15aと車外側壁部15bとに分離させるように、袋状に織成し、かつ、周縁部24の周囲や取付部12間等の部位34a・34b・34c・34dを、粗く2枚状に織成しつつ相互に点付けするように、行っている。
【0038】
その後、図6のB2示すように、レーザ加工(レーザカット)により、エアバッグ用素材10から各製品形状部10aを裁断して切り取るとともに、各製品形状の取付部12に取付孔12aを設ける。
【0039】
この各製品形状部10aを裁断する際、実施形態では、後端側の取付部12Bにおける取付孔12abの中心を、裁断時の基準点Xとしている。この基準点Xからエアバッグ素材10の幅方向に延びる基準線LXは、後席用膨張部16の後端側に位置した非膨張部24の周縁部25における後縁部25bの後縁25cと、一致している。
【0040】
そして、各製品形状部10aを裁断した後には、適宜、耐熱性を高めるとともに膨張用ガスの漏れを防止するように、シリコン等を塗布したコーティング層を設けて、エアバッグ11を製造する。ちなみに、コーティング層は、織成後には、内周面側にコーティング剤を塗布できないことから、外周面側に形成する。
【0041】
そして、適宜、コーティング層を設けた後、所定の折り機で折り畳む。この折り畳み状態は、実施形態の場合、図4の二点鎖線に示すように、順次、山折りと谷折りとの折目Cを入れて、エアバッグ下縁11b側をエアバッグ上縁11aに接近させるような蛇腹折りとしている。
【0042】
折り畳んだ後には、折り崩れ防止用の破断可能なテープ36(図1〜3参照)で、エアバッグ11をくるむとともに、インフレーター43・取付ブラケット38・39・40・44を取り付けて、エアバッグ組立体を形成する。なお、取付ブラケット39・40の部位には、エアバッグ11と各取付ブラケット39・40とが分離しないように、破断可能なテープ36をさらに巻いておく。
【0043】
そして、各取付ブラケット38・39・40・44をインナパネル2の所定位置に配置させ、各取付孔12a等を挿通させてボルト41・45止めし、各取付ブラケット38・39・40・44をインナパネル2に固定して、エアバッグ組立体をボディ1に取り付ける。ついで、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1に取り付け、さらに、リヤピラーガーニッシュ6・センターピラーガーニッシュ7をボディ1に取り付ければ、エアバッグ11が頭部保護エアバッグ装置Mとともに車両に搭載されることとなる。
【0044】
エアバッグ装置Mの車両への搭載後、インフレーター43が作動されれば、インフレーター43からの膨張用ガスGが、ガス流入部13から膨張部15の連通膨張部22側に流れ、さらに、膨張用ガスGの主流GMが、分岐流G1・G2・G3・G4・G5に分岐され、各分岐流G1・G2・G3・G4・G5が前席用膨張部20と後席用膨張部16とに流れて、エアバッグ11の膨張部15が、折りを解消させつつ、膨張し始める。そして、エアバッグ11は、くるんでおいたテープ36を破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ6やルーフヘッドライニング7の下縁側のエアバッグカバー9を押し開いて、図1〜3の二点鎖線で示すように、下方へ突出しつつ、開口W・Wとリヤピラー部RPの車内側とを覆うように、大きく展開膨張することとなる。
【0045】
そして、実施形態のエアバッグ11では、リヤピラー部RPを覆う後席用膨張部16では、結合部31・32の内、最前列の結合部31を除いた最後列側の結合部32が、下端32aを、最前列の結合部31の下端31aより、上げ寸法H分、上方に位置させるととも、膨張部16の下縁側の周縁における非膨張部24(周縁部25)からの上下方向の離隔距離を、最前列の結合部31の下端31a側より、大きくして、配設されている。そのため、その下端32aを上方に位置させた結合部32の下方には、図7に示すように、最前列の結合部31の下端31aと膨張部16の下縁側の周縁における非膨張部24(周縁部25)との間に形成される膨張部分より内径寸法を大きくして、結合部32の前方の結合部31から後方の膨張部16周縁における非膨張部24の周縁部後縁部25bまでの広い膨張部分18が形成されることとなる。
【0046】
この膨張部分18は、リヤピラー部RPを覆う後席用膨張部16の下端で長く前後方向に延びる形状であって、リヤピラー部RPを覆う膨張部16の下縁側における前後方向の長さ寸法L0の収縮を抑えて、膨張する。そのため、リヤピラー部RPを覆う後席用膨張部16は、後端側の後縁部25bを極力前方へ移動させずに、膨張を完了させることができ、その結果、リヤピラー部RPを広く覆えることとなる。
【0047】
そして、リヤピラー部RPを覆う後席用膨張部16には、車内側壁部15aと車外側壁部15bとを結合して上下方向に延びる結合部31・32が、前後方向に並設されて、配設されていることから、前後方向の張力Tを確保することもできる。
【0048】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mのエアバッグ11では、膨張完了時、前後方向に作用する張力Tを確保しつつ、リヤピラー部RPの車内側を広く覆うことができる。
【0049】
ちなみに、結合部32の下端32aを結合部31の下端31aの位置まで延ばしたエアバッグを、展開膨張させた際には、図7の二点鎖線に示すように、後縁部25bの上下方向の中間部位が、距離L1(約10〜15mm)分、前方に移動して、リヤピラーガーニッシュ6を覆う面積を狭めてしまった。
【0050】
そして、実施形態のエアバッグ11では、製造時における裁断の基準点Xを最後端の取付孔12abの中心に設定して、その基準点Xからエアバッグ素材10の幅方向に延びる基準線LXを、後席用膨張部16の後端側における周縁部25の後縁部25bの後縁25cに一致するように、設定している。そのため、リヤピラー部RPを覆う後席用膨張部16の後縁25cの寸法形状を、裁断時に正確に確保でき、後席用膨張部16の膨張完了時の形状誤差を抑えることができる。
【0051】
なお、実施形態の場合には、裁断の基準点Xを、後席用膨張部16の後端側における周縁部25の後縁部25bの後縁25cに一致する位置(取付孔12abの中心)に設定したが、後席用膨張部16の後縁25c付近に基準点Xを設ければ、ある程度、後席用膨張部16の膨張完了時の形状誤差を抑えることができることから、例えば、ガス流入部13の突出端や最後端の取付部12Bの前縁や後縁等に、裁断時の基準点X1・X2・X3(図6参照)を設定しても良い。
【0052】
ちなみに、実施形態のエアバッグ用素材10に関して、幅方向で並んだ二つずつの製品形状部10aが、前後方向を一致させて、並設されており、幅方向に並んだ二つの基準点Xを基準に、二つの製品形状部10aを裁断できることから、幅方向に並んだ二つの製品形状部10a・10aを、レーザ加工等で、同時に裁断するように構成すれば、二つの製品形状部10a・10aにおける後席用膨張部16の膨張完了時の形状誤差を一層無くして、効率よく裁断してエアバッグ11を製造することができる。
【0053】
なお、実施形態のエアバッグ11では、リヤピラー部RPの車内側を覆う膨張部の結合部31・32の数を二つとした場合を示したが、図9に示すように、三つ以上の結合部31・32・33を膨張部16に設けても良く、その場合には、最前列の結合部31を除いた結合部32・結合部33の内の選択した一つの下端32a、若しくは、適宜、複数を選択した場合の結合部32・33の下端32a・33aを、最前列の結合部31の下端31aより、上方に位置させれば良い。
【0054】
また、結合部31・32・33として、図例では、直線状に上下方向に延びる形状を例示したが、これらの結合部31・32・33は、曲線状に上下方向に延びるように構成しても良い。勿論、前席用膨張部20内の結合部27・28・29も、同様に、上下方向に延びる曲線状に形成しても良い。
【0055】
さらに、実施形態では、リヤピラー部RPを覆う膨張部16に、前部側に流入口17を設けた場合を示したが、図10に示す膨張部16のように、後部側に、流入口17を配設させても良い。
【0056】
さらに、実施形態のエアバッグ11では、袋織りによって製造したものを示したが、縫製、接着剤を使用する接着、高周波ウェルダ等を使用する溶着等を利用して、エアバッグを製造しても良く、その場合に設ける結合部に本発明を応用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態のエアバッグが使用される頭部保護エアバッグ装置の使用態様を示す車内側から見た概略正面図である。
【図2】図1のII−II部位の概略拡大縦断面図である。
【図3】図1のIII−III部位の概略拡大縦断面図である。
【図4】同実施形態のエアバッグを平らに展開した状態を示す正面図である。
【図5】同実施形態のエアバッグを平らに展開した状態の後部側を示す拡大正面図である。
【図6】同実施形態のエアバッグの製造工程を説明する図である。
【図7】展開膨張完了時の実施形態のエアバッグの後部側を、車内側から見た拡大正面図である。
【図8】図7のVIII−VIII部位におけるエアバッグの横断面図である。
【図9】他の実施形態のエアバッグにおける図5に相当する部分正面図である。
【図10】さらに他の実施形態のエアバッグにおける図5に相当する部分正面図である。
【符号の説明】
11…エアバッグ、
15a…車内側壁部、
15b…車外側壁部、
16…後席用膨張部、
24…非膨張部、
25b…後縁部、
25c…後縁、
31・32・33…結合部、
31a・32a・33a…下端、
X…基準点、
RP…リヤピラー部、
W…開口、
M…頭部保護エアバッグ装置。
Claims (3)
- 車内側の開口の上縁側周縁に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、前記開口とリヤピラー部の車内側とを覆うように、展開膨張し、
前記リヤピラー部の車内側を覆う膨張部の領域内に、車内側壁部と車外側壁部とを結合して上下方向に延びる複数の結合部が、下端を前記膨張部の周縁の非膨張部位から上方へ離し、上下方向に重なることなく前後方向に並設されて、配設されている頭部保護エアバッグ装置のエアバッグであって、
最前列の前記結合部を除いた少なくとも一つの前記結合部が、下端を、前記最前列の結合部の下端より、上方に位置させるとともに、前記膨張部の下縁側の周縁における前記非膨張部位からの上下方向の離隔距離を、前記最前列の結合部の下端側より、大きくして、配設され、
下端を前記最前列の結合部の下端より上方に位置させた前記結合部における下方に、前記最前列の結合部から、下端を上方に位置させた前記結合部の後方における結合部、若しくは、前記膨張部周縁の前記非膨張部位までに、前記最前列の結合部の下端と前記膨張部の下縁側の周縁における非膨張部位との間に形成される膨張部分より内径寸法を大きくして、前後方向に延びる形状の膨張部分が形成されるように構成されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置のエアバッグ。 - 製造時における製品形状となる製品形状部と該製品形状部の周縁の裁断代とを含めたエアバッグ素材から、前記製品形状部を裁断して切り取る裁断の基準点が、前記膨張部の後縁付近に設定されて、製造されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置のエアバッグ。
- 前記基準点が、前記膨張部の後縁を形成する非膨張部位の後端に、設定されていることを特徴とする請求項2に記載の頭部保護エアバッグ装置のエアバッグ。
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