JP3755133B2 - 液圧テンショナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チェーンやベルトに適正な緊張力を作用させるための液圧テンショナに関し、詳細には、液圧低下時などにおいてプランジャの縮退を防止するためのラチェット機構を備えたものに関する。
【0002】
【従来の技術およびその課題】
液圧テンショナは、一般に、ハウジングと、ハウジングに形成された穴にスライド自在に挿入され、スプリングによって突出方向に付勢された中空のプランジャと、ハウジングの穴およびプランジャにより限定された流体チャンバとから主として構成されている。テンショナの運転中には、チェーンまたはベルトからプランジャ先端に作用する押付力は、スプリングによる弾性力およびチャンバ内の液圧による抗力と釣り合っている。
【0003】
ところで、自動車用のタイミングシステムに適用される液圧テンショナにおいては、エンジンの始動時などのように、チャンバ内に十分な液圧が作用していない状況下では、チェーンからプランジャ先端に押付力が作用したとき、プランジャがハウジング内に容易に押し込まれてプランジャが縮退し、その結果、ノイズや振動が発生したり、チェーンが歯飛びを起こしたりすることがある。
【0004】
そこで、このようなプランジャの縮退を防止するために、例えば、特開2000−136859号公報や特開2001−304360号公報などに示すような、ラチェット機構を備えた種々の液圧テンショナが提案されている。
【0005】
特開2000−136859号公報に示すものは、ハウジングに形成された縦方向の孔に移動可能に支持されたラックと、ハウジングに形成された横方向のキャビティにスライド自在に収容され、ラックと係合するラチェットと、キャビティ内に収容され、ラックと係合する方向にラチェットを付勢するスプリングとから構成されている。
【0006】
しかしながら、この場合には、プランジャとは別個にラックが設けられており、部品点数が多い。また、芯間距離が比較的長いチェーンの場合、ラチェット機構のバックラッシュをある程度大きくしたいとする要請があるが、上記公報のものでは、ラチェット機構のバックラッシュを、ラックとラチェットとの間のバックラッシュ以上にはできないという欠点がある。
【0007】
特開2001−304360号公報に示すものは、ピストン外周に形成されたラック溝と、ハウジング内においてピストンの軸線と交差する方向に延びる横穴にその内壁面と所定の遊びを介してスライド自在に収容された、ラック溝と係合する爪部材と、横穴内に収容され、ラック溝と係合する方向に爪部材を付勢するスプリングとから構成されている。
【0008】
この場合には、爪部材と横穴の内壁面との間に所定の遊びが設けられることにより、ラチェット機構のバックラッシュを、溝と爪部材との間のバックラッシュ以上にすることは一応可能ではある。しかしながら、この場合には、遊びを大きくしすぎると、爪部材が横穴内部でチャタリングを起こすおそれがあるため、遊びの量をあまり大きくすることはできず、ラチェット機構のバックラッシュを十分大きなものにすることは困難である。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点を解消すべくなされたもので、その目的は、部品点数を削減でき、十分なバックラッシュを確保できるとともに、プランジャの縮退を確実に防止できるラチェット機構付き液圧テンショナを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る液圧テンショナは、一端に開口する穴が形成されたハウジングと、ハウジングの穴にスライド自在に挿入され、穴との間で流体チャンバを形成する内部空間を有するとともに、ラック歯が外周の少なくとも一部に形成された中空のプランジャと、プランジャを突出方向に付勢する第1の付勢部材と、プランジャの突出方向の移動を許容しかつプランジャの後退時にくさび効果を発揮してプランジャの縮退を防止するローラと、ローラがラック歯と係合する方向にローラを付勢する第2の付勢部材とを備えている。ローラは、プランジャの軸方向と交差する傾斜面に沿って移動自在に設けられるとともに、プランジャのラック歯と係合し得るように設けられている。また、ローラを収容するローラ収容部が形成された支持ブロックがハウジングに設けられるとともに、ローラ収容部には、ローラが移動自在に当接する傾斜面が形成されており、第2の付勢部材は、ローラが傾斜面に沿いつつ移動するようにローラを付勢している。さらに、プランジャの縮退時にローラに当接してローラの移動を阻止し得るストッパ面が、ローラ収容部の後端側に形成されている。ローラ収容部の前端側には、ローラと対向する壁面が形成されており、第2の付勢部材の一端は壁面に係止され、他端はローラに係止されている。ローラとプランジャのラック歯との係合ロック状態を解除するために、ローラとローラ収容部のストッパ面との間にロック解除ピンを挿入するための第1の貫通孔がハウジングに形成されるとともに、プランジャを縮退状態で保持するために、プランジャのラック歯に係合し得るリテーニングピンを挿入するための第2の貫通孔がハウジングに形成されている。
【0011】
請求項1の発明によれば、ラック歯がプランジャの外周に形成されており、プランジャと別個にラック部材を設ける必要がないので、部品点数を削減できる。
【0012】
また、この場合、テンショナの運転中において、プランジャが突出方向に移動する際には、プランジャのラック歯とローラとの係合状態を介して、ローラが傾斜面に沿う方向に移動するので、この移動量に対応して、全体のバックラッシュ量を増大させることができる。これにより、十分なバックラッシュを確保することが可能になる。
【0013】
従来のテンショナにおいて、たとえば特開2000−136859号公報に示すものでは、プランジャの突出時には、ラチェットはラックの移動方向と直交する方向に移動するため、ラチェットの移動量はバックラッシュの増加に寄与しない。また、特開2001−304360号公報に示すものでは、ピストンの突出時には、爪部材はラック溝の移動方向と斜めに交差する方向に移動するが、この場合、爪部材の移動量はバックラッシュの増加にあまり寄与しない。また、このとき、爪部材と横穴の内壁面との遊び分がバックラッシュの増加に寄与するが、上述のように、この遊びはあまり大きくすることができないため、全体のバックラッシュ量を十分に大きくすることは困難である。
【0014】
これに対して、請求項1の発明では、ローラが、プランジャの軸線と交差する傾斜面に沿って移動するようになっており、これにより、全体のバックラッシュ量を十分大きくすることが可能である。
【0015】
しかも、この場合、プランジャの縮退時には、プランジャのラック歯および傾斜面の間でローラがくさび効果を発揮するようになっており、これにより、プランジャの縮退を確実に防止できる。
【0016】
また、この場合、ローラの移動時には、第2の付勢部材の付勢力の作用下で、支持ブロックのローラ収容部に形成された傾斜面によりローラがガイドされることになるので、ローラの移動をスムーズに行えるようになる。
【0017】
さらに、プランジャの縮退時にローラに当接してローラの移動を阻止し得るストッパ面 が、ローラ収容部の後端側に形成されているので、プランジャの縮退時にローラの移動ひいてはプランジャの移動を確実に阻止することができるようになる。
【0018】
また、ローラと対向する壁面がローラ収容部の前端側に形成されており、第2の付勢部材の一端が壁面に係止され、他端がローラに係止されているので、ローラおよび第2の付勢部材が支持ブロックの内部に一体化されて収容されることになり、これにより、テンショナの組立てが容易になる。
【0019】
さらに、この場合には、ロック解除ピンを第1の貫通孔に挿入することにより、ローラとプランジャのラック歯との係合状態を容易に解除することができる。この係合状態の解除により、たとえば、テンショナの出荷時などにおいて、作業者がプランジャをハウジング内部に容易に押し込むことができるようになる。次に、この状態から、リテーニングピンを第2の貫通孔に挿入することにより、プランジャの縮退状態を容易に維持することができる。これにより、テンショナのチェーンへの組付けを容易に行えるようになる。なお、チェーンへの組付け後は、このリテーニングピンを抜くことによって、テンショナが作動可能状態におかれる。
【0020】
ロック解除ピンおよびリテーニングピンは、請求項2の発明のように、先端がテーパ状に形成された共通のピンから構成されているのが好ましい。この場合には、ピン先端がテーパ状に形成されていることにより、ローラとローラ収容部のストッパ面との間の隙間へのピンの挿入および第2の貫通孔からプランジャのラック歯へのピンの挿入を容易に行えるようになる。また、各ピンを一種類のピンで共用することにより、部品点数をさらに削減できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施態様を添付図面に基づいて説明する。
図1および図2は本発明の一実施態様による液圧テンショナの縦断面図であって、図1はプランジャ最大縮退時の状態を示す図、図2はプランジャ最大伸長時の状態を示す図、図3は、図1においてラチェット機構のローラとの係合部分におけるプランジャの横断面図、図4はラチェット機構とロック解除ピンとの位置関係を説明するための図、図5はラチェット機構とリテーニングピンとの位置関係を説明するための図、図6ないし図10はプランジャ伸長時のラチェット機構の作動を説明するための図、図11はプランジャ縮退時のラチェット機構の作動を説明するための図である。
【0022】
図1および図2に示すように、液圧テンショナ1は、ハウジング2と、ハウジング2に形成された穴2a内にスライド自在に挿入された中空のプランジャ3と、プランジャ3を穴2aから突出する方向に付勢するスプリング(第1の付勢部材)4とから主として構成されている。
【0023】
ハウジング2内において、プランジャ3に形成された内部空間3aおよび穴2aの内壁面から流体チャンバ20が形成されている。また、ハウジング2内において穴2aの底部には、チェックバルブ5が設けられている。このチェックバルブ5は、チャンバ20内への流体の流れを許容する一方、これとは逆方向への流体の流れを阻止するためのものであって、ボール50と、ボール50が当接するボールシート51と、ボール50をボールシート51の側に付勢するスプリング52とから構成されている。なお、チェックバルブ5としては、その他の構成のものを採用するようにしてもよい。またハウジング2には、チャンバ20を外部の加圧流体源(図示せず)に接続するための流路6が設けられている。
【0024】
プランジャ3の内部空間3a内には、円板状のベントディスク32が設けられている。ベンドディスク32は、流体チャンバ20内に混入したエアをテンショナ外部に排出するとともに、流体チャンバ20からの流体の漏出量を制御するための部材であって、その第1の主面32aには、中心から外周側に向かって螺旋状に延びる螺旋溝(図示せず)が形成されている。一方、ベントディスク32の第1の主面32aが当接するプランジャ3の内部には、内部空間3a内に開口しかつ第1の主面32aの螺旋溝と連通し得る軸方向の貫通孔30が形成されている。
【0025】
流体チャンバ20内のエアは、これを含む流体とともに、ベントディスク32の外周面と内部空間3aの内周面との間の隙間を通って、ベントディスク32の第1の主面32aの外周側の螺旋溝に入り、螺旋溝を通って第1の主面32aの中心側に移動するとともに、プランジャ3の貫通孔30を通って、テンショナ外部に排出されるようになっている。
【0026】
ベントディスク32の第1の主面32aと逆側に配置された第2の主面32bには、その中心から軸線方向に延びる棒状の軸部33が設けられている。この軸部33は、流体チャンバ20の容積を減少させるためのものであって、流体チャンバ20内に延びている。ベントディスク32の第2の主面32bには、スプリング4の先端が圧接している。これにより、ベントディスク32は、スプリング4の先端と内部空間3aの底面とにより挟持されている。
【0027】
プランジャ3の外周面の一部には、ラック歯3bが形成されている。また、ハウジング2の穴開口部には、プランジャ3の縮退を防止するためのラチェット機構7が設けられている。
【0028】
ラチェット機構7は、ハウジング2の穴開口部に形成された切欠き2b内に設けられた支持ブロック70と、支持ブロック70に形成された凹状のローラ収容部71内に収容され、プランジャ外周のラック歯3bと係合し得るローラ72と、ローラ72がラック歯3bと係合する方向にローラ72を付勢するスプリング(第2の付勢部材)73とから構成されている。
【0029】
支持ブロック70には、ねじ孔(図示せず)が形成されており、支持ブロック70は、ねじ孔に螺合する取付ボルト(図示せず)を介してハウジング2の切欠き2b内に固定されている。
【0030】
ローラ72は、図3に示すように、プランジャ3の軸線方向と直交する方向に延びる円柱状の部材であって、その円筒面がプランジャ3のラック歯3bと係合し得るようになっている。ローラ収容部71は、図4および図5に示すように、ローラ72が移動自在に当接する傾斜面71aを有している。傾斜面71aは、プランジャ3の軸線Lと交差する方向に延びており、傾斜面71aとプランジャ3の軸線Lとの距離は、プランジャ3の後退方向(つまり図4,図5左方向)に向かうにつれて徐々に小さくなっている。傾斜面71aがプランジャ3の軸線Lとなす角度は、45度またはこれよりも小さい角度が好ましく、本実施態様では、約10度の角度に設定されている。これは、ラチェット機構7において確実な係合ロック状態および十分なバックラッシュの双方を確保するためである。
【0031】
ローラ収容部71の後端側には、ローラ72に対向配置され、プランジャ3の縮退時にローラ72に当接してローラ72の移動を阻止し得るストッパ面71bが形成されている。また、スライダ収容部71の前端側には、ローラ72に対向する壁面71cが形成されている。
【0032】
スプリング73の一端は、ローラ72に係止しており、他端は、壁面71cに形成された係合凹部71dに係止している。
【0033】
スプリング73は、本実施態様ではコイルスプリングが用いられているが、 その軸線mは、ローラ収容部71の傾斜面71aと平行に配設されているのが好ましい。これは、ローラ72と傾斜面71aとの接触状態を維持しつつ、スプリング73のばね力をロスなくローラ72に伝達させるためである。
【0034】
このような構成により、ラチェット機構7は、プランジャ3の突出方向(図1,図2右方向)の移動を許容するとともに、プランジャ3の縮退時には、傾斜面71aとプランジャ3の外周面との間でローラ72がくさび効果を発揮して、プランジャ3の縮退を防止するようになっている。また、ローラ72およびスプリング73が支持ブロック70の内部に一体化されて収容されることにより、テンショナの組立てが容易に行えるようになっている。
【0035】
ハウジング2には、該ハウジング2の外周面をそれぞれ軸方向と直交する方向(図1および図2紙面垂直方向)に貫通する第1および第2の貫通孔25,26が形成されている(図4,図5参照)。第1の貫通孔25は、ローラ収容部71の後端側に配置されており、第2の貫通孔26は、ローラ収容部71の前方に配置されている。
【0036】
第1の貫通孔25は、図4に示すように、ローラ72とプランジャ3のラック歯3bとの係合ロック状態を解除するためのロック解除ピン10が挿入される孔である。また、第2の貫通孔26は、図5に示すように、プランジャ3を縮退状態で保持するためのリテーニングピン11が挿入される孔である。ロック解除ピン10およびリテーニングピン11は、いずれも先端がテーパ状に形成されている。なお、これらのピンは、一本のピンを共用するようにしてもよく、これにより、部品点数を削減できる。
【0037】
次に、テンショナ運転中のラチェット機構7の作動について、図1および図2を参照しつつ図6ないし図11を用いて説明する。
エンジンが始動すると、テンショナ1には、流路6からチェックバルブ5を通ってチャンバ20内にオイルが供給される。チャンバ20内にオイルが充填されると、オイルの液圧により、プランジャ3が突出方向に移動する。
【0038】
図6に示すように、プランジャ3のラック歯3bがローラ72と係合した状態から、プランジャ3が突出方向(図矢印方向)に移動を開始すると、ラック歯3bとローラ72との係合状態を介して、ローラ72が、支持ブロック70の傾斜面71aでガイドされつつ、スプリング73のばね力に抗して矢印方向に移動を開始する。なお、図6および以下の図7ないし図11において、プランジャ3のラック歯3bの一部に記した黒丸は、プランジャ3の移動を視覚的に捉えるために、便宜上付したものである。
【0039】
ローラ72の移動にともなって、図7に示すように、ローラ72は、プランジャ3のラック歯3bの上に徐々に乗り上げる。プランジャ3の移動により、ローラ72がさらに移動を続けると、図8に示すように、ローラ72がプランジャ3のラック歯3bの上に完全に乗り上げた状態になる。このとき、ローラ72と支持ブロック70のストッパ面71bとの間隙Bm が、このラチェット機構7の最大バックラッシュである。テンショナの運転時には、ローラ72は、この最大バックラッシュBm の範囲内で移動する。
【0040】
図8に示す状態から、プランジャ3がさらに突出方向に移動すると、図9に示すように、プランジャ3のラック歯3bの一山分がローラ72を乗り越える。すると、ローラ72は、スプリング73の弾性反発力により、支持ブロック70の傾斜面71aに沿って前記移動方向とは逆方向に移動を開始する。そして、図10に示すように、ローラ72がプランジャ3のラック歯3bと係合した時点で、ローラ72の逆方向への移動が停止する。
【0041】
なお、プランジャ3が突出方向にさらに移動する場合には、以下、図7〜図10に示す動作が繰り返して行われる。
【0042】
次に、チェーンの緊張力が増加して、チェーンからプランジャ先端部3cに押付力が作用した場合には、ボールチェックバルブ6が閉じることにより、チャンバ20内の液圧が抗力としてプランジャ3に作用するので、プランジャ3の後退が防止される。
【0043】
また、プランジャ3の後退時には、図11に示すように、プランジャ3のラック歯3bとローラ72との係合状態を介して、ローラ72が、支持ブロック70の傾斜面71aに沿いつつ、プランジャ3とともにプランジャ後退方向に移動する。これにより、ローラ72が支持ブロック70のローラ収容部71の傾斜面71aとプランジャ3との間でくさび効果を発揮することになるので、プランジャ3の後退が確実に防止される。
【0044】
このようにテンショナの運転時には、プランジャ3の移動にともなって、ローラ72が支持ブロック70の傾斜面71aに沿ってスライド移動することになるので、ローラ72とラック歯3bとのバックラッシュよりも大きな最大バックラッシュBm の範囲内でローラ72が移動することになる。これにより、ラチェット機構全体のバックラッシュ量を増大させることができ、十分なバックラッシュを確保することが可能である。
【0045】
次に、エンジンの始動時などのように、チャンバ20内に十分な液圧が作用していない状況下において、チェーンからプランジャ先端部3cに押付力が作用した場合には、同様に、ローラ72が支持ブロック70のローラ収容部71のスライド面71aとプランジャ3との間でくさび効果を発揮するとともに、ローラ72が支持ブロック70のストッパ面71bに当接することにより(図11参照)、ローラ72の移動が阻止されるので、プランジャ3の縮退を確実に防止できる。
【0046】
次に、テンショナの出荷時やテンショナの据付時などのように、プランジャ3とローラ72との係合ロック状態を解除してプランジャ3を縮退状態にする場合には、図4に示すように、ハウジング2に形成された第1の貫通孔25内にロック解除ピン10を挿入する。これにより、ローラ72とローラ収容部71のストッパ面71bとの間が離間されるとともに、ローラ72とプランジャ3のラック歯3bとの係合状態が解除される。この状態から、作業者がプランジャ3をハウジング内部に押し込むことにより、プランジャ3を容易に縮退状態にすることができる。
【0047】
テンショナの出荷時には、さらに、プランジャ3が突出しないようにプランジャ3の先端部3cを抑えた状態で、図5に示すように、ロック解除ピン10を第1の貫通孔25から抜くとともに、ハウジングに形成された第2の貫通孔26内にリテーニングピン11を挿入する。これにより、ローラ72とプランジャ3のラック歯3bとが再び係合するとともに、プランジャ3の縮退状態が維持される。
【0048】
テンショナをチェーンに組み付けた後は、このリテーニングピン11を第2の貫通孔26から抜くことにより、テンショナが作動可能状態におかれる。
【0049】
このように本実施態様によれば、プランジャ3の外周にラック歯3bが形成されているので、プランジャ3と別個にラック部材を設ける必要がなくなり、部品点数を削減できる。また、ローラ72がローラ収容部71の傾斜面71aに沿って移動するので、ラチェット機構全体として十分なバックラッシュを確保できる。さらに、プランジャ3の縮退時には、ローラ72が傾斜面71aおよびプランジャ3の間でくさび効果を発揮するので、プランジャ3の縮退を確実に防止できる。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係る液圧テンショナによれば、部品点数を削減でき、十分なバックラッシュを確保できるとともに、プランジャの縮退を確実に防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様による液圧テンショナの縦断面図であって、プランジャ最大縮退時の状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施態様による液圧テンショナの縦断面図であって、プランジャ最大伸長時の状態を示す図である。
【図3】図1の液圧テンショナにおいて、ラチェット機構のローラとの係合部分におけるプランジャの横断面図である。
【図4】ラチェット機構とロック解除ピンとの位置関係を説明するための図である。
【図5】ラチェット機構とリテーニングピンとの位置関係を説明するための図である。
【図6】プランジャ伸長時のラチェット機構の作動を説明するための図である。
【図7】プランジャ伸長時のラチェット機構の作動を説明するための図である。
【図8】プランジャ伸長時のラチェット機構の作動を説明するための図である。
【図9】プランジャ伸長時のラチェット機構の作動を説明するための図である。
【図10】プランジャ縮退時のラチェット機構の作動を説明するための図である。
【図11】プランジャ縮退時のラチェット機構の作動を説明するための図である。
【符号の説明】
1: 液圧テンショナ
2: ハウジング
2a: 穴
20: 流体チャンバ
3: プランジャ
3a: 内部空間
3b: ラック歯
4: スプリング(第1の付勢部材)
5: チェックバルブ
7: ラチェット機構
70: 支持ブロック
71: ローラ収容部
72: ローラ
73: スプリング(第2の付勢部材)
10: ロック解除ピン
11: リテーニングピン
25: 第1の貫通孔
26: 第2の貫通孔
Claims (2)
- チェーンに緊張力を作用させるための液圧テンショナであって、
一端に開口する穴が形成されたハウジングと、
前記穴にスライド自在に挿入され、前記穴との間で流体チャンバを形成する内部空間を有するとともに、ラック歯が外周の少なくとも一部に形成された中空のプランジャと、
前記プランジャを突出方向に付勢する第1の付勢部材と、
前記プランジャの軸線と交差する方向に延びる傾斜面に沿って移動自在に設けられるとともに、前記プランジャの前記ラック歯と係合し得るように設けられ、前記プランジャの突出方向の移動を許容するとともに、前記プランジャの縮退時に前記傾斜面と前記ラック歯との間でくさび効果を発揮して前記プランジャの縮退を防止するローラと、
前記ローラが前記ラック歯と係合する方向に前記ローラを付勢する第2の付勢部材とを備え、
前記ハウジングには、前記ローラを収容するローラ収容部が形成された支持ブロックが設けられており、前記ローラ収容部には前記傾斜面が形成されるとともに、前記第2の付勢部材は、前記ローラが前記傾斜面に沿いつつ移動するように前記ローラを付勢しており、
前記ローラ収容部の後端側には、前記プランジャの縮退時に前記ローラに当接して前記ローラの移動を阻止し得るストッパ面が形成されるとともに、前記ローラ収容部の前端側には、前記ローラと対向する壁面が形成されており、前記第2の付勢部材の一端は前記壁面に係止され、他端は前記ローラに係止されており、
前記ローラと前記プランジャの前記ラック歯との係合ロック状態を解除するために、前記ローラと前記ローラ収容部の前記ストッパ面との間にロック解除ピンを挿入するための第1の貫通孔が前記ハウジングに形成されるとともに、前記プランジャを縮退状態で保持するために、前記プランジャの前記ラック歯に係合し得るリテーニングピンを挿入するための第2の貫通孔が前記ハウジングに形成されている、
ことを特徴とする液圧テンショナ。 - 請求項1において、
前記ロック解除ピンおよび前記リテーニングピンは、先端がテーパ状に形成された共通のピンである、
ことを特徴とする液圧テンショナ。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2001395977A JP3755133B2 (ja) | 2001-12-27 | 2001-12-27 | 液圧テンショナ |
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