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JP3746607B2 - シリコン系薄膜光電変換装置の製造方法 - Google Patents

シリコン系薄膜光電変換装置の製造方法 Download PDF

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    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy

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  • Photovoltaic Devices (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は薄膜光電変換装置の製造方法に関し、特に、シリコン系薄膜光電変換装置の性能を低下させずにむしろ向上させつつその生産性を改善し得る製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、たとえば多結晶シリコンや微結晶シリコンのような結晶質シリコンを含む薄膜を利用した光電変換装置の開発が精力的に行なわれている。これらの開発は、安価な基板上に低温プロセスで良質の結晶質シリコン薄膜を形成することによって光電変換装置の低コスト化と高性能化を両立させようという試みであり、太陽電池だけでなくて光センサ等の様々な光電変換装置への応用が期待されている。
【0003】
従来から、太陽電池の生産装置としては、複数の膜堆積室(チャンバとも呼ばれる)を直線状に連結したインライン方式、または中央に中間室を設けてその周りに複数のチャンバを配置するマルチチャンバ方式が採用されている。これは、従来の製造方法では太陽電池の性能低下を防止するために1導電型層、光電変換層および逆導電型層を一度も大気に晒すことなく真空プロセス中で連続的に形成するためである。
【0004】
たとえば、基板側からn層、i層およびp層が順次積層されるnip型太陽電池の場合、インライン方式ではn層を形成するためのn層堆積室、光電変換層を形成するためのi層堆積室、およびp層を形成するためのp層堆積室が連続して連結された構造が用いられる。この場合に、n層とp層はi層に比べて薄くて成膜時間が格段に短いので、生産効率を上げるために通常は複数のi層堆積室が連結されるのが一般的であり、n層およびp層の成膜時間が律速状態になるまではi層堆積室の数が増えるほど生産性が向上する。しかし、このインライン方式では最もメンテナンスが必要とされるi層堆積室を複数含んでいるので、1つのi層堆積室でもそのメンテナンスが必要となった場合にその生産ライン全体が停止させられるという難点がある。
【0005】
他方、マルチチャンバ方式は、膜が堆積されるべき基板が中間室を経由して各膜堆積チャンバに移動させられる方式である。そして、それぞれのチャンバと中間室との間には気密を維持し得る可動仕切りが設けられているので、ある1つのチャンバに不都合が生じた場合でも他のチャンバは使用可能であり、生産が全体的に停止させられるということはない。しかし、このマルチチャンバ方式の生産装置は、中間室と各チャンバとの間の気密性を維持しつつ基板を移動させる機構が複雑であって高価であり、また、中間室の周りに配置されるチャンバの数が空間的に制限されるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来のシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法においては、光電変換装置の特性を低下させることなく低コストでかつ効率よく生産することができない。これは、光電変換ユニットに含まれる光電変換層とp型層との界面を大気に晒せばその光電変換装置の性能が著しく低下するという問題があるために、その光電変換ユニットに含まれるすべての半導体層を一度も大気に晒すことなく真空プロセス中で連続的に形成しようとするからである。
【0007】
このような従来技術の課題に鑑み、本発明は、光電変換層とp型層との界面を大気に晒しても光電変換装置の性能を低下させずにむしろ向上させつつ、低コストでかつ優れた生産性を発揮し得るシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明において、基板上に形成される少なくとも1つの光電変換ユニットを含み、そのユニットはプラズマCVD法によって順次積層されるn型シリコン系半導体層と、結晶質を含むシリコン系薄膜光電変換層と、p型シリコン系半導体層とを含むシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法は、n型半導体層の表面を酸化することによって表面酸化薄膜を形成した後にそれを覆うように引続いて光電変換層を形成し、その光電変換層の表面が一旦大気に露呈された後にその表面を気相エッチングし、その気相エッチングされた表面が大気に露呈されることなく引続いてp型半導体層が形成されることを特徴としている。
【0009】
すなわち、本発明者たちは、上述の従来技術における課題を解決すべく検討を重ねた結果、すべての半導体層が低温においてプラズマCVD法で形成されるシリコン系薄膜光電変換装置の場合に、光電変換層を形成した後にその表面が大気に晒された場合でも、その表面を適当な水素プラズマや不活性ガスのプラズマなどを利用して気相エッチング処理した後にp型層を積層することによって光電変換装置の性能低下が防止され、逆に適切なエッチング条件のもとでは光電変換装置の性能を向上させ得ることをも見いだしたのである。
【0010】
これによって、光電変換層を形成した後にp型層を積層するときに基板を膜堆積チャンバ間で真空雰囲気のもとで移送する必要がなくなり、低コストでかつ効率のよい光電変換装置の製造が可能となる。すなわち、n型層と長い堆積時間を必要とする光電変換層までが積層された複数の基板を大気中で移送および待機させることができ、それらの複数の基板を次に短い時間で形成し得るp型層のための膜堆積チャンバで迅速に処理することができるようになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施の形態として製造されるシリコン系薄膜光電変換装置を模式的な斜視図で図解している。この装置の基板101としては、ステンレス等の金属、ポリイミド等の低膨張率を有する有機フィルム、または低融点の安価なガラス等が用いられ得る。
【0012】
基板101上の電極110は、下記の薄膜(A)と(B)のうちの1以上を含み、たとえば真空蒸着法やスパッタ法によって裏面電極堆積チャンバ内で形成される。なお、図1において光109は上方から入射されるように描かれているが、これは下方から入射されるようにされてもよく、その場合には、電極110は金属薄膜を含まない。
(A) Ti、Cr、Al、Ag、Au、CuおよびPtから選択された少なくとも1以上の金属またはこれらの合金からなる金属薄膜。
(B) ITO、SnO2 およびZnOから選択された少なくとも1以上の酸化物からなる透明導電性薄膜。
【0013】
裏面電極110が形成された基板101は裏面電極堆積チャンバから取出されてn型半導体層形成用の膜堆積チャンバ内に移され、光電変換ユニット111に含まれるn型半導体層104がプラズマCVD法により堆積される。このときのチャンバ間における基板の移送は、大気中で行なわれても何ら問題は生じない。n型半導体層104としては、たとえば導電型決定不純物原子であるリンが0.01原子%以上ドープされたn型微結晶シリコン系薄膜などが用いられ得る。しかし、n型層104に関するこれらの条件は限定的なものではなく、微結晶シリコンカーバイドや微結晶シリコンゲルマニウム等の合金材料の層を用いてもよい。n型微結晶シリコン系薄膜104の厚さは3〜100nmの範囲内に設定され、より好ましくは5〜50nmの範囲内に設定される。
【0014】
n型層104が形成された後に、基板101は好ましくは大気中を経由して光電変換層堆積チャンバ内へ移される。このとき、n型微結晶層104の表面には、シリコン系酸化薄膜116が形成される。このシリコン系酸化薄膜116の厚さは、経験上から、0.5〜50nmの範囲内にあることが好ましく、0.1〜5nmの範囲内にあることがさらに好ましい。このようなシリコン系酸化薄膜116の形成方法としては、いくつかの他の方法も可能である。たとえば、n型微結晶層104の表面を他の酸素含有気体に曝露させて酸化する方法や、プラズマCVD法を用いて酸化させる方法も可能である。
【0015】
シリコン系酸化薄膜116上には、光電変換層105として、結晶質を含むシリコン系薄膜がプラズマCVD法によって400℃以下の下地温度のもとで形成される。この光電変換層105としては、ノンドープのi型多結晶シリコン薄膜や体積結晶化分率80%以上のi型微結晶シリコン薄膜、あるいは微量の不純物を含む弱p型または弱n型で光電変換機能を十分に備えている結晶質シリコン系薄膜が使用され得る。また、光電変換層105はこれらに限定されず、合金材料であるシリコンカーバイドやシリコンゲルマニウム等の膜を用いてもよい。
【0016】
光電変換層105の膜厚は0.5〜20μmの範囲内で、より好ましくは1〜10μmの範囲内に設定され、結晶質を含むシリコン系薄膜光電変換層として必要かつ十分な厚さにされる。光電変換層105は400℃以下という低温で形成されるので、結晶粒界や粒内における欠陥を終端または不活性化させる水素原子を多く含み、その好ましい水素含有量は0.5〜30原子%の範囲内であり、より好ましくは1〜20原子%の範囲内にある。
【0017】
シリコン系薄膜光電変換層105に含まれる結晶粒の多くは下地層から上方に柱状に延びて成長している。これらの多くの結晶粒は膜面に平行に(110)の優先結晶配向面を有し、X線回折における(220)回折ピークに対する(111)回折ピークの強度比が1/5以下であり、1/10以下であることがより好ましい。
【0018】
光電変換層105を形成する前に前述のシリコン系酸化薄膜116を形成した場合、その酸化薄膜116を形成しない場合に比べて、光電変換層105中における(110)面配向が顕著になり、結晶粒度も大きくなる。すなわち、光電変換層105からのX線回折において、(220)面反射ピークが高くかつその半値幅が狭くなる。したがって、シリコン系酸化薄膜116を形成することにより、光電変換層105の結晶構造をより好ましいものにすることができる。光電変換層105が形成された後は、基板101は大気中に取出されてもよく、光電変換層105の表面が大気に晒されてもよい。そして、基板101はp型層堆積チャンバ内に移される。
【0019】
なお、上述のように1導電型層104の表面にシリコン系酸化薄膜116を形成したその上に光電変換層105を堆積させた場合にその光電変換層105の結晶構造が著しく改善されるが、現時点においてその理由は必ずしも明らかではない。また、シリコン系酸化膜は典型的な絶縁膜として知られているが、本発明者たちはこの酸化膜が本発明による光電変換装置内の電流を阻害しないことをも経験的に見出した。これは、酸化膜が極めて薄いために光電変換層105を堆積した後には酸化薄膜116が編み目状の構造になっているために電流が流れ得ると考えるか、またはその酸化膜が極めて薄いことによるトンネル効果によって電流が流れ得ると考えることもできるが、現時点においてはその理由も必ずしも明らかではない。
【0020】
p型層堆積チャンバ内において、p型層106が堆積される前に、光電変換層105の表面が気相エッチングされる。これは、光電変換層105の表面が大気に晒されたことによってその表面に形成されるシリコン系酸化膜に起因する光電変換装置の性能低下を防止する意図のもとに行なわれる。光電変換層105の表面に形成された酸化膜は、たとえば水素プラズマに晒されることによって還元またはエッチングされ、光電変換層105のフレッシュな表面が復元される。また、適当な条件でこの気相エッチングを行なえば、光電変換層105の表面における結晶粒界がエッチングされて微細な表面凹凸を生じ、その表面凹凸によって光電変換層内に光が閉じ込められる効果によって、光電変換層内で光吸収が増大することによる光電変換効率の向上が期待され得る。気相エッチングの条件としては、たとえば水素プラズマを用いる場合には、0.1〜10Torrの範囲内の圧力と、1〜30mW/cm2 の範囲内のRFパワーが用いられる。また、エッチングにおけるプラズマ照射時間は1〜20minの範囲内であり、好ましくは3〜10minの範囲内にある。なお、気相エッチングとしては、スパッタエッチングのような他のエッチング方法を用いてもよい。
【0021】
このような気相エッチングの後に、p型層106が形成される。このp型層106としては、たとえば導電型決定不純物原子であるボロンが0.01原子%以上ドープされたp型非晶質シリコン薄膜などが用いられ得る。しかし、p型層106についてのこれらの条件は限定的なものではなく、不純物原子としてはたとえばアルミニウム等でもよく、また非晶質シリコンカーバイドや非晶質シリコンゲルマニウム等の合金材料の層を用いてもよい。p型層106として非晶質シリコン系薄膜が用いられる場合には、その厚さは1〜50nmの範囲内にあり、2〜30nmの範囲内にあることがより好ましい。なお、p型層106は非晶質薄膜に限られず、微結晶シリコン系薄膜であってもよく、また微結晶薄膜と非晶質薄膜の積層であってもよい。
【0022】
光電変換ユニット111上には、ITO、SnO2 、ZnO等から選択された少なくとも1以上の層からなる透明導電性酸化膜107と、さらにこの上にグリッド電極としてAl、Ag、Au、Cu、Pt等から選択された少なくとも1以上の金属またはこれらの合金の層を含む櫛型状の金属電極108とがスパッタ法または真空蒸着法によって形成され、これによって図1に示されたような光電変換装置が完成する。なお、図1において光109は上方から入射されるように描かれているが、これは下方から入射されるようにされてもよく、その場合には金属電極108は櫛型状である必要はなく、また、透明導電膜107を省略してp型層106を覆うように形成されてもよい。
【0023】
図3は、本発明の第2の実施の形態により製造されるタンデム型シリコン系薄膜光電変換装置を模式的な斜視図で図解している。図3のタンデム型光電変換装置の製造においては、図1の場合と同様に、基板301上の複数の層302〜306が図1の基板101上の複数の層102〜106にそれぞれ対応して形成される。
【0024】
しかし、図3のタンデム型光電変換装置においては、第1の光電変換ユニット311上に重ねて第2の光電変換ユニット312がさらに形成される。第2の光電変換ユニット312は、第1の光電変換ユニット311上にプラズマCVD法で順次積層されたn型の微結晶または非晶質のシリコン系薄膜313、実質的にi型の非晶質シリコン系薄膜光電変換層314、およびp型の微結晶または非晶質のシリコン系薄膜315を含んでいる。この場合、n型のシリコン系薄膜313とi型非晶質シリコン系光電変換層314は真空雰囲気中で連続して形成され、非晶質シリコン系光電変換層314が形成された後に基板301が大気中に取出されてp型シリコン系薄膜315を堆積するための膜堆積チャンバ内に移される。そして、そのp型層堆積チャンバ内で非晶質シリコン系光電変換層314の表面が水素プラズマ等によって気相エッチングされた後に、p型の非晶質シリコン系薄膜315が形成される。
【0025】
第2の光電変換ユニット312上には、透明電極307および櫛型状金属電極308が図1中の対応する要素107および108と同様に形成され、これによって図3のタンデム型光電変換装置が完成する。
【0026】
また、本発明のさらに他の実施の形態による製造方法によって、結晶質光電変換層を含む光電変換ユニットと非晶質光電変換層を含む光電変換ユニットとの少なくとも一方のユニットを複数含む多段のタンデム型光電変換装置を製造することも可能であることはいうまでもない。
【0027】
【実施例】
以下において、本発明のいくつかの実施例によるシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法が、比較例としての光電変換装置の製造方法とともに説明される。
【0028】
(比較例1)
図2に示されているような多結晶シリコン薄膜太陽電池が、比較例1としての製造方法により作成された。まず、ガラス基板201上に、裏面電極210として、厚さ300nmのAg膜202とその上の厚さ100nmのZnO膜203のそれぞれがスパッタ法にて形成された。裏面電極210上には、厚さ10nmでリンドープされたn型微結晶シリコン層204、厚さ3μmでノンドープの多結晶シリコン光電変換層205、および厚さ10nmでボロンドープされたp型微結晶シリコン層206がそれぞれプラズマCVD法により成膜され、nip型光電変換ユニット211が形成された。ただし、これらの半導体層204,205,206は、いずれもが大気に晒されることなく基板201を膜堆積チャンバ間で移動させることによって形成された。そして、光電変換ユニット211上には、前面電極207として、厚さ80nmの透明導電性ITO膜がスパッタ法にて堆積され、その上に電流取出しのための櫛型Ag電極208が真空蒸着法によって形成された。
【0029】
n型微結晶シリコン層204は、RFプラズマCVD法により、以下に示す条件にて堆積された。すなわち、反応ガスの流量としてはシランが5sccm、水素が200sccm、そしてホスフィンが0.05sccmであり、反応室内圧力は1Torrに設定された。また、RFパワー密度は30mW/cm2 であり、成膜温度は200℃であった。これと同一の成膜条件でガラス基板上に直接堆積した厚さ300nmのn型微結晶シリコン膜の暗導電率は、10S/cmであった。さらに、このn型微結晶シリコン層204上に形成される多結晶シリコン光電変換層205は、成膜温度200℃のもとでRFプラズマCVD法により堆積された。多結晶シリコン光電変換層205において、2次イオン質量分析法から求めた水素含有量は5原子%であり、X線回折における(220)回折ピークに対する(111)回折ピークの強度比は1/4であった。
【0030】
この比較例1において製造された太陽電池の入射光209としてAM1.5の光を100mW/cm2 の光量で照射したときの出力特性においては、開放端電圧が0.472V、短絡電流密度が26.8mA/cm2 、曲線因子が74.5%、そして変換効率が9.4%であった。
【0031】
(比較例2)
比較例2の製造方法による太陽電池として、比較例1の場合に類似して図2に示されているような太陽電池が作成された。すなわち、比較例2の太陽電池の製造方法においては、n型微結晶シリコン層204、ノンドープの多結晶シリコン光電変換層205、およびp型微結晶シリコン層206の各半導体層を形成する際に、基板201が膜堆積チャンバ間で大気中を通して移動させられたことだけが比較例1の製造方法と異なっている。
【0032】
このような比較例2の製造方法により得られた太陽電池に入射光209としてAM1.5の光を100mW/cm2 の光量で照射したときの出力特性においては、開放端電圧が0.484V、短絡電流密度が26.0mA/cm2 、曲線因子が65.0%、そして変換効率が8.2%であった。
【0033】
(実施例1)
図1の第1の実施の形態に対応する製造方法によって、実施例1としての多結晶シリコン薄膜太陽電池が作成された。この実施例1においても、比較例1の場合と同様に、ガラス基板101上にAg膜102とZnO膜103を含む裏面電極110およびn型微結晶シリコン層104が形成された後に、その基板101は大気中を経由してi層堆積チャンバ内に移された。このとき、n型層104の表面が約1分間大気に露呈され、その表面にシリコン系酸化薄膜116が形成された。
【0034】
このシリコン系酸化薄膜の下地層116上に比較例1と同様のCVD条件のもとに堆積された多結晶シリコン光電変換層105において、2次イオン質量分析法から求められた水素含有量は比較例1の場合とほぼ同様の5原子%であったが、X線回折における(220)回折ピークに対する(111)回折ピークの強度比は1/10に減少した。
【0035】
光電変換層105が形成された後に基板101は大気中を通してp層堆積チャンバ内に移された。そのp層堆積チャンバ内においては、まず光電変換層105の表面が水素プラズマを用いて気相エッチングされた。この水素プラズマによる気相エッチングにおいて、水素流量は500sccm、RFパワーは30mW/cm2 、そしてプラズマ照射時間は10分であった。その後、比較例1の場合と同様の条件のもとで、p型微結晶シリコン層106、透明電極107および櫛型金属電極108が形成された。
【0036】
このような実施例1の製造方法による太陽電池に入射光109としてAM1.5の光を100mW/cm2 の光量で照射したときの出力特性においては、開放端電圧が0.531V、短絡電流密度が27.4mA/cm2 、曲線因子が72.3%、そして変換効率が10.5%であった。
【0037】
(比較例3)
比較例3としての製造方法によって、図4に示されているようなタンデム型太陽電池が作成された。この比較例3の製造方法による太陽電池においては、要素401〜406が比較例2の対応する要素201〜206と同様に形成された。すなわち、半導体層堆積チャンバ間において、基板401は大気中で移送された。しかし、この比較例3においては、第1の光電変換ユニット411上に、さらに非晶質シリコン光電変換ユニット412が積層された。この第2の光電変換ユニット412は、それぞれが非晶質であるn層413、i層414、およびp層415を含んでいる。これらの非晶質半導体層の形成の際における膜堆積チャンバ間の基板401の移動も大気中で行なわれた。なお、非晶質光電変換層414の厚さは、0.4μmに設定された。
【0038】
その後、このような第2の光電変換ユニット412上に透明電極407および櫛型金属電極408を比較例1の対応する要素207および208と同様に形成することによって、図4に示されているような比較例3によるタンデム型太陽電池が作成された。
【0039】
このような比較例3の製造方法による非晶質/多結晶型のタンデム型太陽電池に対して入射光409としてAM1.5の光を100mW/cm2 の光量で照射したときの出力特性においては、開放端電圧が1.33V、短絡電流密度が13.0mA/cm2 、曲線因子が64.7%、そして変換効率が11.1%であった。
【0040】
(実施例2)
図3の第2の実施の形態に対応して、実施例2の製造方法によるタンデム型太陽電池が作成された。この実施例2においては、要素301〜306が実施例1の対応する要素101〜106と同様に形成された。しかし、この実施例2においては、第1の光電変換ユニット311上に、さらに非晶質シリコン光電変換ユニット312が積層された。この第2の光電変換ユニット312は、それぞれが非晶質であるn層313、i層314、およびp層315を含んでいる。
【0041】
これらの非晶質半導体層のうち、n層313はその下地となるp型微結晶シリコン層306が大気に晒されることなくその上に形成され、i層314もn層313が大気に晒されることなくその上に形成された。しかし、i層314が形成された後に、基板301はp層堆積チャンバ内へ大気中を通して移された。そして、i層314の表面が実施例1における水素プラズマによる気相エッチングされた後にp層315が形成された。
【0042】
その後、比較例3の場合と同様に、透明電極307と櫛型金属電極308が形成された。
【0043】
このような実施例2による非晶質/多結晶型のタンデム型太陽電池に対して入射光309としてAM1.5の光を100mW/cm2 の光量で照射したときの出力特性としては、開放端電圧が1.41V、短絡電流密度が13.5mA/cm2 、曲線因子が73.9%、そして変換効率が14.1%であった。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、導電型層に比べて長い堆積時間を要する実質的にi型の光電変換層を形成した後に基板を次の膜堆積チャンバへ移動させるときに大気中で輸送または待機させることができるので、シリコン系薄膜光電変換装置をその性能を低下させることなく低コストで効率よく製造することができる。本発明によればまた、気相エッチングによって光電変換層の表面に微細な凹凸が形成され得るので、光電変換層内への光閉じ込め効果の改善によって、その光電変換装置の性能改善にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による結晶質シリコン系薄膜光電変換装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である。
【図2】先行技術による比較例1および2としての結晶質シリコン系薄膜光電変換装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態による非晶質/結晶質型のタンデム型シリコン系薄膜光電変換装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である。
【図4】先行技術による比較例3としての非晶質/結晶質型のタンデム型シリコン系薄膜光電変換装置の製造方法を説明するための模式的な斜視図である。
【符号の説明】
101、201、301、401:ガラス等の基板
102、202、302、402:Ag等の膜
103、203、303、403:ZnO、ITO等の膜
104、204、304、404:たとえばn型の微結晶シリコン層
105、205、305、405:結晶質シリコン光電変換層
106、206、306、406:たとえばp型の微結晶シリコン層
107、207、307、407:ITO等の透明導電膜
108、208、308、408:Ag等の櫛型電極
109、209、309、409:照射光
110、210、310、410:電極
111、211、311、411:結晶質シリコン光電変換ユニット
312、412:非晶質シリコン光電変換ユニット
313、413:n型シリコン系層
314、414:i型の非晶質シリコン光電変換層
315、415:p型シリコン系層
116、316:シリコン系酸化薄膜

Claims (6)

  1. 基板上に形成される少なくとも1つの光電変換ユニットを含み、前記光電変換ユニットはプラズマCVD法によって順次積層されるn型シリコン系半導体層と、結晶質を含むシリコン系薄膜光電変換層と、p型シリコン系半導体層とを含む光電変換装置の製造方法であって、
    前記n型半導体層の表面を酸化することによって表面酸化薄膜を形成した後にそれを覆うように前記光電変換層を形成し、
    前記光電変換層の表面が一旦大気に露呈された後にその表面を気相エッチングし、
    前記気相エッチングされた表面が大気に露呈されることなく引続いて前記p型半導体層が形成されることを特徴とするシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法。
  2. 前記光電変換層はその膜面に平行に(110)の優先結晶配向面を有し、そのX線回折における(220)回折ピークに対する(111)回折ピークの強度比が1/5以下であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置の製造方法。
  3. 前記光電変換層は400℃下の下地温度のもとで形成され、80%以上の体積結晶化分率と、0.1〜30原子%の範囲内の水素含有量と、0.5〜10μmの範囲内の厚さとを有していることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換装置の製造方法。
  4. 前記気相エッチングに用いられるガスが水素または不活性ガスを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載の光電変換装置の製造方法。
  5. 前記気相エッチングのエッチングガスの活性化に用いられる電力は1〜30mW/cm2 の範囲内にあることを特徴とする請求項1から4のいずれかの項に記載の光電変換装置の製造方法。
  6. 前記少なくとも1つの光電変換ユニットに加えて、順次積層されるn型シリコン系半導体層と非晶質シリコン系薄膜光電変換層とp型シリコン系半導体層とを含む少なくともさらにもう1つの光電変換ユニットを積層することを特徴とする請求項1から5のいずれかの項に記載の光電変換装置の製造方法。
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