JP3746592B2 - 絶縁用クラフト紙およびこれを用いたプラスチックラミネート紙ならびに油浸電力ケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、油浸電力ケーブル(OFケーブル)の油浸絶縁体を構成する絶縁用クラフト紙、このクラフト紙とプラスチックフィルムとを貼り合わせたプラスチックラミネート紙およびこのプラスチックラミネート紙を用いた油浸電力ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
油浸電力ケーブルの油浸絶縁体を構成する絶縁紙として、誘電特性、耐電圧特性に優れたプラスチックラミネート紙が近時広く用いられている。
このプラスチックラミネート紙は、押出機から溶融押し出されたポリプロピレンなどからなる半溶融状のプラスチックフィルムの両面にクラフト紙を添わせ、ロールで圧着して貼り合わせたものである。
【0003】
このようなプラスチックラミネート紙に使用されるクラフト紙としては、誘電特性の優れたものが要求され、80〜100℃の高温域での誘電正接を低下させるために脱イオン水抄紙され、常温域での誘電正接を低下させるためにクラフト紙となるパルプ中のペントザン、リグニンの量をできるだけ少なくすることが行われている。
【0004】
このため、油浸電力ケーブルのためのプラスチックラミネート紙用のクラフト紙あるいは絶縁紙用のクラフト紙としては、パルプ製造時の前加水分解や蒸解条件を調節して、ペントザン量3〜5.5%、カッパ価8〜25のパルプを用いて脱イオン水抄紙されたクラフト紙が用いられている。
ここで、カッパ価とは、パルプ中のペントザン、リグニンの含有量を反映する指標(パラメータ)である。
しかしながら、このペントザン量3〜5.5%、カッパ価8〜25のパルプは、超高圧用油浸電力ケーブルに用いられるクラフト紙あるいはプラスチックラミネート紙に限定使用されるだけのものであり、汎用性がなく、生産コストが高くなり、またパルプ製造時には、原木樹種、原木生育条件によって前加水分解、蒸解の条件を調整する必要があり、パルプのペントザン量、カッパ価、ヘミセルロース含有率を規定範囲内にコントロールする事が難しく、納期が長くなったりして簡単に入手することができない欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明における課題は、油浸電力ケーブル用として好適な電気的特性、機械的特性を有する絶縁用クラフト紙を安価にかつ容易に入手できるようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題は、油浸電力ケーブルの油浸絶縁体を構成するクラフト紙として、ペントザン量3%以下でカッパ価10以下の低ペントザンパルプと、ペントザン量4〜9%でカッパ価15〜40の中ペントザンパルプとを混合したペントザン量3〜5.5%でカッパ価8〜25の混合パルプを使用し、脱イオン水抄紙したクラフト紙を用いることによって解決される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の請求項1記載の絶縁用クラフト紙は、油浸電力ケーブルの油浸絶縁体を構成するものであって、ペントザン量3%(重量比、以下同じ)以下でかつカッパ価10以下の低ペントザンパルプと、ペントザン量4〜9%でかつカッパ価15〜40の中ペントザンパルプとを混合して得られるペントザン量3〜5.5%でかつカッパ価8〜25の混合パルプを使用し、脱イオン水を用いて抄紙して得られたものである。
この低ペントザンパルプおよび中ペントザンパルプはともにコンデンサ、変圧器、電池などに用いられる絶縁紙の原料となる汎用のパルプであり、かつ比較的短期で容易に入手できるものである。
【0008】
混合パルプのペントザン量が3%未満でかつカッパ価が8未満であると得られるクラフト紙の機械的特性が低下し、ペントザン量が5.5%を越えかつカッパ価が25を越えると双極子要因に基づく常温域での誘電特性が低下する。
混合パルプのペントザン量およびカッパ価の値は、低ペントザンパルプと中ペントザンパルプとの混合重量比によって定まるので、両者の混合比を適宜選択することによって、望みのペントザン量およびカッパ価を有する混合パルプを得ることができる。
【0009】
脱イオン水抄紙は、抄紙時に使用する水として、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、炭酸イオン、硫酸イオン、塩素イオンなどのイオンが含まれていない脱イオン水を用いて行うもので、得られるクラフト紙にこれらのイオンが残留することがなく、イオン伝導に基づく高温域での誘電特性が良好なクラフト紙が得られる。
また、このクラフト紙の厚みは、25〜150μm程度とされ、その密度は0.6〜1.0g/cm3程度とされ、その気密度は10ガーレ秒〜10000ガーレ秒とされるが、この範囲外とされることもあり、使用される用途等により適宜決められる。
【0010】
このようなクラフト紙にあっては、汎用品のパルプを原料としているので、比較的で入手が容易となり、しかもペントザン量およびカッパ価が適切であるため、油浸電力ケーブルの絶縁紙に好適な優れた電気的特性と機械的特性を併せ持つものとなり、このまま油浸電力ケーブルの油浸絶縁体を構成するクラフト紙として用いられる他、以下に説明するプラスチックラミネート紙に用いられるクラフト紙としても好ましいものとなる。
【0011】
請求項2記載のクラフト紙は、請求項1記載のクラフト紙であって、かつ密度0.5〜0.7g/cm3、気密度100ガーレ秒以下の低密度でかつ低気密度の第1の層と、密度0.7〜0.9g/cm3、気密度5000ガーレ秒以上の高密度でかつ高気密度の第2の層とが、それぞれクラフト紙の一方の表面および他方の表面をなすようにしたものである。
この第1の層と第2の層との間に、任意の密度と気密度の第3の層さらには第4の層などが存在していてもよい。
【0012】
この多層構造のクラフト紙は、後述のプラスチックフィルムと貼り合わせてプラスチックラミネート紙とすることを前提としているものである。
第1の層の密度が0.7g/cm3を越え、かつ気密度が100ガーレ秒を越えると、プラスチックフィルムとクラフト紙との接着強度が低下し、第2の層の密度が0.7g/cm3未満でかつ気密度が5000ガーレ秒未満となると耐絶縁破壊特性が低下する。
このような多層構造のクラフト紙は、円網抄紙機で低密度で低気密度の第1の層を抄紙し、長網抄紙機で高密度で高気密度の第2の層を抄紙し、これらを湿式貼り合わせによって製造することができ、これによれば各層間の接着も良好となる。
【0013】
請求項3記載のプラスチックラミネート紙は、プラスチックフィルムの両面に上述の多層構造のクラフト紙を、その低密度で低気密度の第1の層がプラスチックフィルムに接するように貼り合わせたものである。
押出機から押出された直後の半溶融状のプラスチックフィルムの両面に2枚の上記クラフト紙をその第1の層がプラスチックフィルムに接するように添わせ、圧着ロール等で押圧してラミネートし、半溶融状のプラスチックフィルムの表層部分がクラフト紙の第1の層に喰い込み、接着されたものである。
【0014】
クラフト紙の低密度でかつ低気密度の第1の層は、紙繊維間の空隙が大きく、ここにプラスチックが喰い込み、両者がアンカー効果により強固に機械的に結合し、クラフト紙とプラスチックフィルムとは高い接着強度で接着される。
また、クラフト紙の高密度でかつ高気密度の第2の層は、高い絶縁破壊強度を示し、プラスチックフィルムとあいまってプラスチックラミネート紙全体としても、良好な絶縁破壊強度を示す。
【0015】
このプラスチックラミネート紙を構成するプラスチックフィルムとしては、ポリプロピレンホモポリマーからなるフィルムが耐電圧性等の点から最も好ましいが、これ以外に高密度ポリエチレン、ポリ(4−メチル−ペンテン−1)、ポリブテン−1、フッ素樹脂などの無極性ポリマーからなるフィルムも用いられる。このプラスチックフィルムの厚みは、通常30〜150μm程度とされる。
【0016】
このようなプラスチックラミネート紙では、絶縁破壊強度、特にインパルス絶縁破壊強度が高くなり、かつクラフト紙とプラスチックフィルムとの剥離強度(接着強度)も高くなる。さらに、クラフト紙が安価に入手できるので、このプラスチックラミネート紙も安価となる。
【0017】
請求項4記載の油浸電力ケーブルは、上述のプラスチックラミネート紙を主絶縁層とするもので、導体上に直接又はカーボン紙等を介して巻回し、これに絶縁油を含浸してなる油浸絶縁体を有するものである。絶縁油としては低粘度のものおよび高粘度のものが使用され、低粘度絶縁油を含浸したものでは、常時絶縁油を加圧する通常の油浸電力ケーブルとなり、高粘度絶縁油を含浸したものでは、加圧を必要としないMINDケーブル(マスインプレグネイテッドノンドレイニングケーブル)となる。
【0018】
このような油浸電力ケーブルでは、絶縁破壊強度、特にインパルス絶縁破壊強度が良好で、かつ誘電特性にも優れ、しかもクラフト紙とプラスチックフィルムとの接着性が良いので、熱伸縮等による応力が作用しても、油浸絶縁体を構成しているプラスチックラミネート紙が剥離することがない。
【0019】
以下、具体例を示す。
下記に示す低ペントザンパルプ1種と中ペントザンパルプ2種を用意し、これらのパルプを単独または混合して、脱イオン水を用い、長網抄紙機および丸網抄紙機を使って、2層構造の厚さ40μmのクラフト紙を9種抄紙した。
パルプ番号 ペントザン量(%) カッパ価
▲1▼ 0.9 3
▲2▼ 6.5 25
▲3▼ 8.5 35
得られたクラフト紙の諸元を表1に示す。なお、これらのクラフト紙は、低密度で低気密度の第1の層の厚みを20μmとし、高密度で高気密度の第2の層の厚みを20μmとした。
【0020】
【表1】
【0021】
このようにして得られた9種のクラフト紙の引張強度を測定した。この結果を表2に示す。
ついで、ポリプロピレンホモポリマー(メルトフローレイト13g/10分)を押出機のTダイから280℃で溶融押出し、この半溶融状のポリプロピレンフィルムの両面に上記2層構造のクラフト紙を、その第1の層がフィルムに接するように添えて圧着ロールで貼り合わせ、全厚み170μmのポリプロピレンラミネート紙を製造した。
このポリプロピレンラミネート紙のポリプロピレンフィルムとクラフト紙との剥離強度を測定した。結果を表2に示す。
【0022】
ついで、このポリプロピレンラミネート紙を導体上に巻回し、真空乾燥したのち、絶縁油(JISC2320、2種1号油 アルキルベンゼン系)を含浸し、厚さ約1mmの油浸絶縁体を有するモデルケーブルを作成した。
このモデルケーブルの室温、印加電圧20kV/mmでの誘電正接tanδおよびインパルス絶縁破壊強度を測定した。結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
表2の結果から、本発明の混合パルプから得られたクラフト紙は、引張強度、誘電正接が良好であり、このクラフト紙を低密度で低気密度の第1の層と高密度で高気密度の第2の層とからなる多層構造とし、これの第1の層をプラスチックフィルムに接するように貼り合わせたプラスチックラミネート紙は、クラフト紙とプラスチックフィルムとの剥離強度が高く、しかもインパルス絶縁破壊強度も高く、誘電正接が低いものであることがわかる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載のクラフト紙にあっては、汎用パルプを混合して抄紙したものにもかかわらず、機械的特性、電気的特性に優れ、比較的入手も容易であるなどの効果を有する。
また、請求項2記載のクラフト紙は、低密度で低気密度の第1の層と高密度で高気密度の第2の層を有する多層構造を有しており、このクラフト紙をその第1の層がプラスチックフィルムに接するように貼り合わせた請求項3記載のプラスチックラミネート紙では、クラフト紙とプラスチックフィルムとの接着性に優れ、絶縁破壊特性、誘電特性も良好となる。
さらに、請求項4記載の油浸電力ケーブルは、したがって、絶縁破壊特性、誘電特性の良好なものとなる。
Claims (4)
- 油浸電力ケーブルの油浸絶縁体を構成するクラフト紙であって、
ペントザン量3%以下、カッパ価10以下の低ペントザンパルプと、ペントザン量4〜9%、カッパ価15〜40の中ペントザンパルプとを混合してなるペントザン量3〜5.5%、カッパ価8〜25の混合パルプを脱イオン水抄紙して得られた絶縁用クラフト紙。 - 密度0.5〜0.7g/cm3、気密度100ガーレ秒以下の第1の層を一方の表面に有し、密度0.7〜0.9g/cm3、気密度500ガーレ秒以上の第2の層を他方の表面に有してなる請求項1記載の絶縁用クラフト紙。
- 請求項2記載の絶縁用クラフト紙をプラスチックフィルムの両面に貼り合わせてなるプラスチックラミネート紙であって、
前記第1の層をプラスチックフィルム側に、第2の層を表面側に配置してなるプラスチックラミネート紙。 - 請求項3記載のプラスチックラミネート紙を主絶縁層として用いてなる油浸電力ケーブル。
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JP14055997A JP3746592B2 (ja) | 1997-05-29 | 1997-05-29 | 絶縁用クラフト紙およびこれを用いたプラスチックラミネート紙ならびに油浸電力ケーブル |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH10334742A JPH10334742A (ja) | 1998-12-18 |
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Family Applications (1)
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JP14055997A Expired - Lifetime JP3746592B2 (ja) | 1997-05-29 | 1997-05-29 | 絶縁用クラフト紙およびこれを用いたプラスチックラミネート紙ならびに油浸電力ケーブル |
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JP (1) | JP3746592B2 (ja) |
-
1997
- 1997-05-29 JP JP14055997A patent/JP3746592B2/ja not_active Expired - Lifetime
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