JP3740951B2 - 挟み込み判定装置および開閉装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、開口部を開閉部が閉止する際の物体の挟み込みの有無を判定する挟み込み判定装置および開閉装置に関するものであり、その中でも特に自動車のスライドドア等の電動扉、パワーウィンドウ、電動サンルーフ等の電動窓の安全装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の挟み込み判定装置および開閉装置は、例えば特開平10−264652号公報や特開平11−222036号公報に開示されているものがある。これは自動車のボディ開口部とスライドドアとの間の挟み込みを検出するために感圧手段をスライドドアの閉方向の鉛直端部に配設したもので、感圧手段として複数の長尺状の電極を対向させて配設した感圧スイッチを使用していた。そして、ボディ開口部とスライドドアとの間に物体が挟み込まれると、物体の接触による押圧により感圧スイッチの電極同士が接触して感圧スイッチがオンすることにより挟み込みを検出していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の挟み込み判定装置および開閉装置では、以下のような課題を有していた。
【0004】
特開平10−264652号公報や特開平11−222036号公報には、自動車のスライドドアの挟み込み判定装置や開閉装置が示されているが、基本的には図13から図16に示したような構成である。いずれも車体とスライドドアの鉛直端部の断面を示している。図13はスライドドアを開いた状態であり、閉じる際には矢印53のような経路で動くものである。図14はスライドドアを閉じた状態であり、シール部11により車体2とスライドドア1を密着させている。感圧スイッチ54は、物体の挟み込みを検出するためにスライドドア1に固定されているが、スライドドア1を閉じた状態で車体2に接触して誤検知してしまわないように距離を空けている。感圧スイッチ54は、空隙55の両側に一対の電極56、57を有し、たとえば図15のように外部領域の物体10が挟み込まれると、物体10の接触による押圧で一対の電極56、57が接触導通し確実に挟み込みを検知できる。同様に外部領域から内部領域にまたがるような物体についても挟み込みを検知できると考えられる。
【0005】
ところが従来例において、図16のように内部領域の物体10が挟み込まれた場合は、スライドドア1とシール部11との間で挟まれてしまい、物体10は感圧スイッチ54には接触せず、挟み込み判定できないことが考えられる。たとえば座席に座っていた子供の手指や足などの弱く小さな物体が挟み込まれた場合、かなりの衝撃を与えることになる。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、外部領域の物体だけでなく内部領域の物体の挟み込みをも確実に判定して物体への衝撃を小さくできる挟み込み判定装置および開閉装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の挟み込み判定装置および開閉装置は、開口部を有する車体と、前記開口部の内外方向へ所定の厚みを有し、前記開口部を開閉するスライドドアと、前記スライドドアの閉止により区切られる内部領域および外部領域と、前記スライドドアの前記内部領域側と前記外部領域側にそれぞれ配置され、前記内部領域の物体が前記開口部と前記開閉部との間で挟み込まれる場合と、前記外部領域の物体が前記開口部と前記スライドドアとの間で挟み込まれる場合の、いずれの場合にも出力を発生する感知手段と、前記感知手段の出力に基づいて挟み込みの有無を判定する判定手段とを備えたものである。
【0008】
上記発明によれば、内部領域の物体の挟み込みでも外部領域の物体の挟み込みでも感知手段が出力を発生するので、あらゆる挟み込みにおいて確実に挟み込みを判定できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1にかかる挟み込み判定装置は、開口部を有する車体と、前記開口部の内外方向へ所定の厚みを有し、前記開口部を開閉するスライドドアと、前記スライドドアの閉止により区切られる内部領域および外部領域と、前記スライドドアの前記内部領域側と前記外部領域側にそれぞれ配置され、前記内部領域の物体が前記開口部と前記スライドドアとの間で挟み込まれる場合と、前記外部領域の物体が前記開口部と前記スライドドアとの間で挟み込まれる場合の、いずれの場合にも出力を発生する感知手段と、前記感知手段の出力に基づいて挟み込みの有無を判定する判定手段とを備えたものである。
【0010】
そして内部領域の物体の挟み込みでも外部領域の物体の挟み込みでも感知手段が出力を発生するので、あらゆる挟み込みにおいて確実に挟み込みを判定できる。
【0011】
本発明の請求項2にかかる挟み込み判定装置は、長尺な形状の感知手段を折り返して内部領域側と外部領域側に配置することで、いずれの場合にも出力を発生する構成としている。
【0012】
そして、内部領域側と外部領域側の感知手段によりあらゆる挟み込みにおいて確実に挟み込みを判定できるとともに、感知手段の個数を増やさなくて済む。
【0013】
本発明の請求項3にかかる挟み込み判定装置は、感知手段をケーブル状の圧電センサとしている。
【0014】
そして、ケーブル状の圧電センサは感圧スイッチよりも径を細くすることが可能であるとともに、折り返すことによる誤動作(感圧スイッチならば誤接触する)のおそれが無いので、狭いスペースでも小さな曲率半径で折り返して配置することができる。
【0015】
本発明の請求項4にかかる挟み込み判定装置は、内部領域用の第1の感知手段と、外部領域用の第2の感知手段を有することで、いずれの場合にも出力を発生する構成としている。
【0016】
そして、領域に対応したそれぞれの感知手段を有するので、あらゆる挟み込みにおいて確実に挟み込みを判定できる。
【0017】
本発明の請求項5にかかる挟み込み判定装置は、判定手段は、第1の感知手段と第2の感知手段とが同時に出力を発生した場合は、挟み込みではなくて完全に閉止されたと判定する構成としている。
【0018】
そして、一つの感知手段だけでは難しい閉止判定の機能を有することができる。
【0019】
本発明の請求項6にかかる挟み込み判定装置は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の挟み込み判定装置と、スライドドアを駆動する駆動手段と、前記挟み込み判定装置の判定により前記駆動手段を制御する制御手段を備え、前記スライドドアが閉方向に移動している時に前記挟み込み判定装置が挟み込み有りと判定したら、前記制御手段は前記スライドドアの移動を停止するかまたは移動方向を反転させて開方向に移動するよう前記駆動手段を制御する構成としている。
【0020】
そして、挟み込みの判定によって、挟み込みを停止したり解除できるので、挟み込まれた物体への衝撃を小さくできて安全な開閉装置にすることができる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図を参照して説明する。
【0022】
(実施例1)
実施例1の発明を図1から図7を参照して説明する。
【0023】
図1、図2は実施例1の挟み込み判定装置および開閉装置の構成図で、開閉部として自動車のスライドドア1に適用した場合を示している。図1は車内側からスライドドア1を見たもので、図2はスライドドア1が実装された自動車の外観構成を示す。開閉部としてのスライドドア1は、開口部を形成する車体2に対して開閉自在に構成され、スライドドア1により内部領域の車内3と外部領域の車外4は区切られている。スライドドア1の鉛直端部には感知手段としてケーブル状の圧電センサ5を上部で折り返して配置させている。6は圧電センサ5をスライドドア1に固定するための弾性体、7は圧電センサ5の出力信号に基づきスライドドア1と車体2の間への物体の挟み込みの有無を判定する判定手段である。またスライドドア1を開閉させるための駆動手段8は、制御手段9からの信号により、スライドドア1を開方向に駆動したり閉方向に駆動したり停止させたりできるものである。
【0024】
本実施例においては、スライドドア1、開口部を形成する車体2、圧電センサ5、判定手段7までを、物体が挟み込まれた時に判定出力を発生するということで挟み込み判定装置と定義し、これに駆動手段8と制御手段9を加えたものを、判定出力に基づいてスライドドア1の移動方向を変更したり停止させるということで開閉装置と定義する。
【0025】
図3、図4は、図2のA−A’線における断面を示す構成図であり、従来例の図13〜図16に対応付けている。図3は車内3の物体10が挟み込まれた場合であり、図4はスライドドア1が正常に閉じられた場合の図である。11はスライドドア1を閉じた時に車体とスライドドアを密着させるためのシール部である。
【0026】
図3において物体10がスライドドア1と車体2の間に挟まれようとするが、一本の圧電センサを上部で折り返すことで、車内3側の圧電センサ5a、車外4側の圧電センサ5bとして配置したので、物体10は弾性体6を介して圧電センサ5aに接触し、押圧力や変位を与えることになる。一般的に圧電センサは与えられた押圧力や変位に応じた出力を発生するため、図3では圧電センサ5aが出力を発生して挟み込みが起こったことを判定することができる。図示はしないが、車外4側の物体が挟まれる場合は圧電センサ5bによって同様に挟み込みを判定できるし、車内から車外にまたがるような物体については圧電センサ5a、5bのいずれかによって挟み込みを判定できるものである。
【0027】
また本実施例において、図4のようにスライドドア1が正常に閉じられた場合は、圧電センサ5a、5bは何にも接触しないので出力発生することはなく、挟み込みの誤判定は起こらない。
【0028】
図5は圧電センサ5の構成図である。圧電センサ5は圧電材としての複合圧電体層12と、複合圧電体層12を挟む電極としての中心電極13及び外側電極14とを同心円状に積層して成形した同軸ケーブル状の構成を備えており、最外層に保護用の被覆層15を備え、全体として極めて可撓性に優れた構成を有している。圧電センサ5は以下の工程により製造される。最初に、塩素化ポリエチレンシートと(40〜70)vol%の圧電セラミック(ここでは、チタン酸ジルコン酸鉛)粉末がロール法によりシート状に均一に混合される。このシートを細かくペレット状に切断した後、これらのペレットは中心電極13と共に連続的に押し出されて複合圧電体層12を形成する。それから、外側電極14が複合圧電体層12の周囲に巻きつけられる。外側電極14を取り巻いて被覆層15も連続的に押し出される。最後に、複合圧電体層12を分極するために、中心電極13と外側電極14の間に(5〜10)kV/mmの直流高電圧が印加される。
【0029】
上記塩素化ポリエチレンシートには、非晶質塩素化ポリエチレンと結晶性塩素化ポリエチレンの混合物を用いる。この場合、押し出しの加工性、可撓性、圧電特性等を考慮して、分子量6万〜15万の非晶質塩素化ポリエチレンを75wt%、結晶化度(15〜25)%で分子量20万〜40万の結晶性塩素化ポリエチレンを25wt%混合した塩素化ポリエチレンが好ましいことが実験的に見出された。この混合塩素化ポリエチレンは圧電セラミック粉末を約70vol%まで含むこ
とができる。
【0030】
この混合塩素化ポリエチレンに圧電セラミック粉体を添加するとき、前もって圧電セラミック粉体をチタン・カップリング剤の溶液に浸漬・乾燥することが好ましい。この処理により、圧電セラミック粉体表面が、チタン・カップリング剤に含まれる親水基と疎水基で覆われる。親水基は圧電セラミック粉体同志の凝集を防止し、また、疎水基は混合塩素化ポリエチレンと圧電セラミック粉体との濡れ性を増加する。この結果、圧電セラミック粉体は混合塩素化ポリエチレン中に均一に、最大70vol%まで多量に添加することができる。上記チタン・カップリング剤溶液中の浸漬に代えて、混合塩素化ポリエチレンと圧電セラミック粉体のロール時にチタン・カップリング剤を添加することにより、上記と同じ効果の得られることが見出された。この処理は、特別にチタン・カップリング剤溶液中の浸漬処理を必要としない点で優れている。
【0031】
中心電極13は通常の金属単線導線を用いてもよいが、ここでは絶縁性高分子繊維16の周囲に金属コイル17を巻いた電極を用いている。絶縁性高分子繊維16と金属コイル17としては、電気毛布において商業的に用いられているポリエステル繊維と銀を5wt%含む銅合金がそれぞれ好ましい。
【0032】
外側電極14は高分子層の上に金属膜の接着された帯状電極を用い、これを複合圧電体層12の周囲に巻きつけた構成としている。そして、高分子層としてはポリエチレン・テレフタレート(PET)を用い、この上にアルミニウム膜を接着した電極は、120℃で高い熱的安定性を有するとともに商業的にも量産されているので、外側電極14として好ましい。この電極を判定手段7に接続する際にはアルミニウム膜を半田付けすることが困難なため、例えばカシメやハトメにより接続する。また、外側電極14のアルミニウム膜の回りに金属単線コイルや金属編線を巻き付けてアルミニウム膜と導通をとり、金属単線コイルや金属編線を挟み込み判定手段7に半田付けする構成としてもよく、半田付けが可能となるので作業の効率化が図れる。尚、外部環境の電気的雑音からシールドするために、外側電極14は部分的に重なるようにして複合圧電体層12の周囲に巻きつけることが好ましい。
【0033】
被覆層15としては、物体の挟み込みによる押圧時に圧電センサ5が変形しやすいよう複合圧電層12よりも柔軟性及び可撓性の良いゴム等の弾性材料が用いられ、車搭部品として耐熱性、耐寒性を考慮して選定し、具体的には−30℃〜85℃で可撓性の低下が少ないものを選定することが好ましい。このようなゴムとして、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、シリコンゴム(Si)、熱可塑性エラストマー等を用いればよい。
【0034】
以上のような構成により、圧電センサ5の最小曲率は半径5mmまで可能となった。本実施例ではスライドドア1の上部で一本の圧電センサ5を折り返す構成としているが、スライドドア1の厚みは数cmもあり、圧電センサ5を折り返すスペースとしては充分である。
【0035】
なお、本実施例では、被覆層15と弾性体6を別部品で構成したが、これに限定される
わけではなく、一つの部品で構成しても良い。この場合は部品削減の効果がある。
【0036】
図6は判定手段7のブロック図である。圧電センサ5の出力は、入力抵抗やFETなどから成るインピーダンス変換部18、ノイズを除去して信号のみを取出せるようカットオフ周波数を設定したフィルタ19、信号を扱いやすいレベルにまで増幅するアンプ20、基準となる信号と比較することで挟み込みを判定する比較部21などを有し、挟み込みがあったかどうかの判定出力を制御手段9に伝えている。一般に圧電センサは出力インピーダンスが高く、接続のばらつきが大きければ以降の信号処理回路における信号レベルのばらつきも大きくなる。またノイズに弱いということが考えられる。よってまず第一に、インピーダンス変換部18に接続して低インピーダンスに変換している。
【0037】
本実施例の場合は圧電センサ5を折り返しており、両方の端部を判定手段7にまで持ってくることが可能である。よって図6とは異なり、インピーダンス変換部18に圧電センサ5の第1の端部を接続し、フィルタ19に圧電センサ5の第2の端部を接続することも可能である。つまり図6のインピーダンス変換部18とフィルタ19の間に圧電センサ5を入れることができる。この場合は圧電センサ5のフリーとなる端部が存在しないので、フリーとなる端部での電極のショートや他の部品との接触などの対策をしなくて良いという効果がある。
【0038】
なお、判定手段7の入出力部に貫通コンデンサやEMIフィルタ等を付加して強電界対策を行ってもよい。
【0039】
図7はフィルタ19の出力信号V、判定手段7の出力とも言える比較部21の出力J、制御手段9が駆動手段8に駆動信号を与えるための印加電圧Vmを示す特性図である。時刻t1で駆動手段8に+Vdの電圧を印加してスライドドア1を閉方向に移動させる。物体10が車体2とスライドドア1の間で挟み込まれると、圧電センサ5からは圧電効果により圧電センサ5に与えられた変位の時間に対する2次微分値(加速度)に応じた信号(図7の基準電位Voより大きな信号成分)が出力される。この際、単に圧電センサ5を配置した構成であれば、(スライドドア1の硬さにもよるが)挟み込みの際の圧電センサ5の変形はわずかであるが、本実施例の場合は圧電センサ5が弾性体6を介してスライドドア1に配設されている。これにより、挟み込みの際に弾性体6が圧縮されて圧電センサ5の変位が増大する。このように圧電センサ5には大きな変位が得られ、変位の2次微分値である加速度も大きくなり、結果として圧電センサ5の出力信号も大きくなる。これにより、より一層、挟み込み時の信号成分と外来振動や電気的ノイズによる信号成分との判別がつき易くなる。
【0040】
判定手段7はVのVoからの振幅|V−Vo|が所定値Do以上ならば挟み込みが生じたと判定し、時刻t2で判定出力としてLo→Hi→Loのバルス信号を出力する。制御手段9ではこのパルス信号があると駆動手段8への+Vdの電圧印加を停止し、−Vdの電圧を一定時間印加してスライドドア1を一定量開方向に移動させ、挟み込みを解除する。尚、挟み込みを解除する際、圧電センサ5からは変位が復元する加速度に応じた信号(図7の基準電位Voより小さな信号成分)も出力される。
【0041】
挟み込みの際、VがVoより大となるか小となるかは、圧電センサ5の挟み込み時の屈曲方向や、分極方向、電極の割付け(どちらを基準電位とするか)、圧電センサ5の支持方向により変わるが、判定手段7ではVのVoからの振幅に基づき挟み込みを判定しているので、VのVoに対する大小によらず挟み込みを判定することができる。
【0042】
なお、本実施例では出力が所定値を越えた時に挟み込まれたと判定しているが、物体が柔らかいものの場合は出力レベルが低くなり、その代わりに出力変化の時定数が大きくなるような場合も想定できる。よって出力の積分値で判定するとか、変化率によって判定閾値を変えてもよい。この場合は、より判定のもれを防いで判定精度を上げることができる。
【0043】
なお本実施例では、スライドドア1が閉方向に移動している時に挟み込みの信号があるという場合に、駆動手段8によってスライドドア1を逆向きに移動させる構成としたが、挟み込まれている状態ならば、圧電センサ5からはスライドドア1を開方向に移動させる瞬間(即ち挟み込みが解除される瞬間)にも変位が復元する加速度に応じた信号が発生することがわかっているので、これを利用する他の判定方法が考えられる。たとえば、振幅|V−Vo|が所定値Do以上ならば、スライドドア1を極微少量だけ開方向に移動させ、このときに変位が復元する加速度に応じた逆向きの信号が発生すれば本当に挟み込みが有ったと判定し、スライドドア1をさらに開方向に移動させるのである。もしスライドドア1を極微少量だけ開方向に移動させさせたときに変位が復元する加速度に応じた逆向きの信号が発生しなければ、挟み込みは無かったと判定し、再度スライドドア1を閉方向に移動させるのである。この方法では、物体が挟み込まれたのではなく、触れただけとか一瞬にして引き抜かれたという場合には、閉方向への移動を続けさせることができて、誤検知や過剰判定を防ぐ効果がある。
【0044】
なお、スライドドア1の位置を検出する位置センサを用いて、位置が全開に近い場合には挟み込みの判定出力を無視する方法がある。実際に物体が挟み込まれるのはスライドドア1がある程度閉まり出してからのはずなので、たとえば全開から1cm動いただけで挟み込みの信号が出ても危険だとは考えにくい。安全面に最大限配慮しながら、判定すべき位置の範囲を決めても良い。この方法でも誤検知や過剰判定を防ぐ効果がある。
【0045】
(実施例2)
実施例2を、図8〜図10を参照して説明する。
【0046】
本実施例は挟み込み判定装置を自動車のサンルーフに適用した場合を示している。図8は外観図で、自動車の屋根を上側から見たものである。図9は図8のB−B’線における断面を示す構成図である。サンルーフは、開閉部としての摺動屋根22と開口部を形成する屋根枠23を有している。屋根枠23の水平端部には、弾性体24、シート状の圧電センサ25、剛体26、シール部27が構成されている。圧電センサ25はシート状かつ幅広な形状に構成され、摺動屋根22からみて車内3側と車外4側に亘るように配置している。ここで摺動屋根22が矢印28のように閉方向に移動する場合に、摺動屋根22と屋根枠23の間に物体が挟み込まれることが考えられる。車内3の物体、車外4の物体とも、圧電センサ25の部位25a、25bのいずれかに接触するので、接触した部位は弾性体24とともに変形し、出力を発生することになる。よって確実に挟み込みの判定ができるものである。
【0047】
また部位25cは、剛体からなる屋根枠23と剛体26の間に保持されており、摺動屋根22が正常に閉じられた時にシール部27に接触しても変位を生じないものである。
【0048】
図10は、本実施例のシート状の圧電センサ25の構成図であり、圧電シート29の両面に電極30、31を形成している。高温耐久性を必要としない場合は、圧電シート29としてPVDF(ポリ弗化ビニリデンフィルム)等を用いれば容易に実施できる。図9では、図10の圧電センサ25を湾曲させて接着等により貼りつけているものである。
【0049】
本実施例のようなシート状の圧電センサであれば、幅方向の寸法も長さ方向の寸法にも自由度があるとともに、曲げることも容易であり複雑な形状の部材に取りつけることができる。
【0050】
(実施例3)
実施例3を、図11、図12を参照して説明する。
【0051】
本実施例は挟み込み判定装置を自動車のパワーウィンドウに適用した場合を示している。図11は外観図で、右側のドアを車内側から見たものである。図12は図11のC−C’線における断面を示す構成図である。
【0052】
本実施例の場合は、開閉部としての窓ガラス32と開口部を形成する窓枠33を有している。窓枠33の上側周縁部には感知手段として二本の感圧スイッチ34、35が配置されている。車内用の第1の感知手段である感圧スイッチ34と、車外用の第2の感知手段である感圧スイッチ35である。
【0053】
また36は感圧スイッチ34の導通状態に基づき窓枠33と窓ガラス32の間への(主に車内3の)物体の挟み込みを判定する判定手段であり、37は感圧スイッチ35の導通状態に基づき窓枠33と窓ガラス32の間への(主に車外4の)物体の挟み込みを判定する判定手段である。
【0054】
また窓ガラス32を開閉させるための駆動手段としてのモータ38、モータ38の駆動負荷を検出する負荷検出手段として回転数センサ39を設けている。なお、過負荷判定手段40は、回転数センサ39の検出値と所定値とを比較しており、回転数センサ39の検出値が所定値を下回ったときに、駆動負荷が所定値を越えた、即ち挟み込みがあったものとみなして、過負荷信号を出力するものである。よって、感圧スイッチ34、35、回転数センサ39のいずれかの出力により挟み込みを判定するもので、以上の構成で挟み込み判定装置41を形成している。
【0055】
次に制御手段42について説明する。メイン回路43は、モータ38を制御するためにモータ駆動回路44に信号を与えるが、逆にモータ駆動回路44より窓ガラス32が閉方向に移動(モータ38が正回転)しているかどうかの信号を受ける構成である。メイン回路43は、モータ駆動回路44により窓ガラス32が閉方向に移動(モータ38が正回転)しており、かつ判定手段36、37、過負荷判定手段40のいずれかにより物体の挟み込みがあるという場合に、(例外を除き)モータ38を逆回転させて窓ガラス32の移動方向を反転させて開方向に移動させるもので、以上により速やかに挟み込みを解消できるものである。
【0056】
例外としては感圧スイッチ34、35が同時に導通した場合がある。通常の挟み込みの場合はどちらかが先に導通するのに対して、同時に導通した場合は挟み込みではなくて完全に閉止されたと判定して、窓ガラス32を停止にするにとどめ反転はさせないように制御するものである。このことは図12を用いて説明する。感圧スイッチ34、35はウエザストリップ45内に保持されており、正常に窓ガラス32が閉まる時には、窓ガラス32が薄肉部46を押して大きく変形させることで先端部47、48を強制的に引張り、結果的に感圧スイッチ34、35を同時に導通させる構成となっている。感圧スイッチ34、35は内部の空隙49、50の周囲に4つの電極51、52を有する構成で、4つの電極のうちの任意の2つの電極が接触すれば導通となるものである。
【0057】
よって感圧スイッチ34、35が同時に導通した場合は、正常に閉止されたと判定することができる。
【0058】
図11に戻ると、メイン回路43は、乗員が窓ガラス32の開閉を指示する操作スイッチ53からの操作信号が入力されており、通常は、この操作信号に従ってモータ駆動回路44を作動させる。また54はバッテリーで、メイン回路43、モータ駆動回路44等に(場合によっては判定手段36、37、過負荷判定手段40にも)電力を供給するものである。
【0059】
なお、本実施例では、判定手段36、37、過負荷判定手段40のうちの少なくとも一つが挟み込みを判定したら、窓ガラス2を下降させるものを示したが、用いる感知手段の特性(特に感度)やノイズが大きい場合には、他の方法も考えられる。たとえば感知手段の感度、過負荷判定の感度とも良すぎる場合には、判定手段36、37のどちらか一方と過負荷判定手段とが挟み込みを判定した時に限り、本当に挟み込みがあったと判定してもよい。
【0060】
また、図12ではなく図9のように感知手段を配置して、正常な閉止の時には感知手段が出力を出さないように構成すれば、判定手段36、37は挟み込み判定をしていないのに過負荷判定された場合に限り、挟み込みでは無く窓ガラス2が正常に閉まったと判定してモータ38を停止するということにしてもよい。
【0061】
なお、自動車の窓枠にはサイドバイザーを有するものもある。この場合は、サイドバイザーと窓ガラスの間に物体が挟み込まれることも考えられるので、サイドバイザーにも感知手段を配置するか、窓ガラス側に感知手段を配置すればよい。
【0062】
なお、上記実施例では開閉部に感知手段を配置したものと、開口部側に感知手段を配置したものを示したが、どちらに配置しても良い。適宜選択すべきものである。
【0063】
なお、上記実施例には自動車のスライドドア、サンルーフ、パワーウィンドウに応用した場合について説明したが、たとえばパワーシートに用いてもよいし、自動車に限らずエレベーターや電車や飛行機や建物の自動ドアに適用したり、ガレージや店舗等のシャッターに適用してもよい。開閉部によって領域が区別されるものであれば、本発明を適用できるものである。
【0064】
【発明の効果】
上記実施例から明らかなように、請求項1の発明によれば、内部領域の物体が開口部とスライドドアとの間で挟み込まれる場合と、外部領域の物体が開口部とスライドドアとの間で挟み込まれる場合の、いずれの場合にも感知手段が出力を発生して挟み込みの有無を判定するので、あらゆる挟み込みにおいて抜けの無い確実な挟み込み判定をできる効果がある。
【0065】
また請求項2の発明によれば、請求項1の発明に加え、長尺な形状の感知手段を折り返して内部領域側と外部領域側に配置するので、あらゆる挟み込みにおいて確実に挟み込みを判定できるとともに、感知手段の個数を増やさなくて済む効果がある。よって判定手段も増やさなくてもよいし、制御が複雑になるのを防ぐ効果もある。
【0066】
本発明の請求項3の発明によれば、請求項2の発明に加え、感知手段をケーブル状の圧電センサとしているので、感圧スイッチよりも径を細くすることが可能であるとともに、折り返すことによる誤動作(感圧スイッチならば誤接触する)のおそれが無いので、狭いスペースでも小さな曲率半径で折り返して配置することができる効果がある。具体的には開口部や開閉部の厚みに収まるように曲げることが必要となるが、なんら問題は無い。
【0067】
本発明の請求項4の発明によれば、内部領域用の第1の感知手段と、外部領用の第2の感知手段を有することで、いずれの場合にも出力を発生する構成としているので、請求項1の発明を容易に実現できる効果がある。
【0068】
本発明の請求項5の発明によれば、請求項4の発明に加え、判定手段は、第1の感知手段と第2の感知手段とが同時に出力を発生した場合は、挟み込みではなくて完全に閉止されたと判定する構成としているので、一つの感知手段だけでは難しい閉止判定の機能を有することができる効果がある。具体的には開閉部の位置を検出する別の手段を持たなくてもよいという効果がある。
【0069】
本発明の請求項6の発明によれば、請求項1乃至5のいずれか1項の発明に加え、スライドドアが閉方向に移動している時に挟み込み判定装置が挟み込み有りと判定したら、スライドドアの移動を停止するかまたは移動方向を反転させて開方向に移動するよう制御するので、挟み込まれた物体への衝撃を小さくできて安全な開閉装置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1の挟み込み判定装置と開閉装置を用いたスライドドアの構成図
【図2】 同スライドドアを搭載した自動車の外観図
【図3】 図2のA−A’線における断面を示す構成図
【図4】 同図2のA−A’線における断面を示す構成図
【図5】 ケーブル状の圧電センサの構成図
【図6】 同装置の判定手段のブロック図
【図7】 同装置の特性図
【図8】 本発明の実施例2の挟み込み判定装置と開閉装置を用いたサンルーフの構成図
【図9】 図8のB−B’線における断面を示す構成図
【図10】 シート状の圧電センサの構成図
【図11】 本発明の実施例3の挟み込み判定装置と開閉装置を用いたパワーウィンドウの構成図
【図12】 図11のC−C’線における断面を示す構成図
【図13】 従来のスライドドアの構成図
【図14】 同スライドドアの構成図
【図15】 同スライドドアの構成図
【図16】 同スライドドアの構成図
【符号の説明】
1 スライドドア(開閉部)
2 車体(開口部)
3 車内(内部領域)
4 車外(外部領域)
5、25 圧電センサ(感知手段)
7、36、37 判定手段
8 駆動手段
9、42 制御手段
Claims (6)
- 開口部を有する車体と、前記開口部の内外方向へ所定の厚みを有し、前記開口部を開閉するスライドドアと、前記スライドドアの閉止により区切られる内部領域および外部領域と、前記スライドドアの前記内部領域側と前記外部領域側にそれぞれ配置され、前記内部領域の物体が前記スライドドアと前記開閉部との間で挟み込まれる場合と、前記外部領域の物体が前記開口部と前記スライドドアとの間で挟み込まれる場合の、いずれの場合にも出力を発生する感知手段と、前記感知手段の出力に基づいて挟み込みの有無を判定する判定手段とを備えた挟み込み判定装置。
- 長尺な形状の感知手段を折り返して内部領域側と外部領域側に配置することで、いずれの場合にも出力を発生する構成とした請求項1記載の挟み込み判定装置。
- 感知手段をケーブル状の圧電センサとした請求項2記載の挟み込み判定装置。
- 内部領域用の第1の感知手段と、外部領域用の第2の感知手段を有することで、いずれの場合にも出力を発生する構成とした請求項1記載の挟み込み判定装置。
- 判定手段は、第1の感知手段と第2の感知手段とが同時に出力を発生した場合は、挟み込みではなくて完全に閉止されたと判定する構成とした請求項4記載の挟み込み判定装置。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の挟み込み判定装置と、スライドドアを駆動する駆動手段と、前記挟み込み判定装置の判定により前記駆動手段を制御する制御手段を備え、前記スライドドアが閉方向に移動している時に前記挟み込み判定装置が挟み込み有りと判定したら、前記制御手段は前記スライドドアの移動を停止するかまたは移動方向を反転させて開方向に移動するよう前記駆動手段を制御する構成とした開閉装置。
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