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JP3639099B2 - 紙葉処理装置 - Google Patents

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JP3639099B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙幣等の紙葉を搬送しつつ鑑別し、その鑑別結果に応じて紙葉の搬送経路を変更する紙葉処理装置に関し、特には入金、出金等の取引を実行する自動取引装置(AutomaticTeller Machine:以下ATMと称す)に組み込まれ、紙幣を処理する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ATM内に組み込まれる紙葉処理装置として、ATMの利用者によってATMに投入された複数種類の紙幣を鑑別し仕分けて収納し、ATMから利用者への支払いを行う際には、仕分けられて収納された紙幣を用いて支払いを行ういわゆるBRU(BillRecycle Unit)が従来より知られている。
【0003】
図11は、従来のBRUを示す断面図である。
このBRUが組み込まれているATMなるものには、このBRUの他に更に、硬貨を取り扱う硬貨取扱装置や、ATMの利用者がATMを操作するためのタッチキーボードや、キャッシュカードを読み取る読取装置や通帳を読み取る読取装置等が組み込まれている。このATMの利用者は図の右側に位置し紙幣の投入等を行う。以下では図の右側を「前面側」と称し、図の左側を「背面側」と称する場合がある。
【0004】
このBRU900には、千円券用スタッカ901と、万円券用スタッカ902と、5千円券ボックス903と、取出収納機構904が備えられており、2つのスタッカ901,902および5千円券ボックス903には紙幣が金種毎に仕分けされて収納される。5千円券ボックス903にはバッファとして一時的に5千円券が収納される。また、スタッカ901,902内には、取出収納機構904によって紙幣が収納され、あるいはスタッカ901,902から、その取出収納機構904によって紙幣が取り出される。千円券用スタッカ901および万円券用スタッカ902に収納された千円券および万円券は、ATMから利用者への支払いに利用され、5千円券ボックス903に収納された5千円券は、支払いに利用されずに回収される。
【0005】
また、このBRU900の背面側の上方にはリジェクトボックス905が備えられており、形状異常券が収納される。また、リジェクトボックス905内には5千円券室9051が設けられており、5千円券が、バッファである5千円券ボックス903を経由して5千円券室9051に収納される。
また、このBRU900の前面側の上方には、上方と下方との2つの位置に移動自在な投入ボックス906と、投入ボックス906から紙幣を取り出す取出機構9061が備えられており、投入ボックス906が上方に位置している際には、利用者によってATMの外部から投入ボックス906内部に紙幣が投入され、あるいは、利用者によって外部へ紙幣が取り出される。
【0006】
また投入ボックス906が下方に位置している際には、ATMから利用者に渡される紙幣が投入ボックス906内に収納され、あるいは取出機構9061によって投入ボックス906から紙幣がBRU900内へ取り込まれる。
なお、投入ボックス906は仕切板9062によって内部が2つの空間に仕切られており、2つの空間のうちの一方の空間には、利用者によって投入された紙幣が収納され、他方の空間には、投入ボックス906からBRU900内に一旦取り込まれた紙幣のうちの形状異常券等が収納される。
【0007】
また、このBRU900の背面側には、着脱自在で、内部に紙幣室9071とリジェクト室9072が設けられたカセット907が2つ備えられている。このカセット907の下部には、カセット907から紙幣を取り出す取出機構908が備えられており、カセット907の上部にはカセット907に紙幣を収納する収納機構909が備えられている。ATMの管理者によってATMから紙幣が回収されるという状況が生じるが、その際には、カセット907の紙幣室9071に、2つのスタッカ901,902内に収納されている紙幣が移されて収納される。また、ATMの管理者によってATMに紙幣を補充する必要が生じるがその際には、カセット907の紙幣室9071に収納されている紙幣が2つのスタッカ901,902へ移されて収納される。カセット907からスタッカ901,902へ紙幣が移される間に発見された形状異常券等はリジェクト室9072に収納される。なお、2つのカセット907のうちの、右側のカセットは予備のカセットであり、この予備のカセットは、紙幣が回収される際に、2つのスタッカ901,902内に収納されている紙幣の量が、左側のカセットに収納できる量を越えた場合に用いられる。
【0008】
また、このBRU900の中央からやや上方寄りには、鑑別ユニット910が備えられており、鑑別ユニット910によって紙幣がセンスされ、そのセンスの結果に基づいて、金種の判別や真券偽造券の判定等を含む鑑別が行われる。
また、このBRU900には、搬送ローラ911と、DCモータ912と、搬送ベルト913が備えられている。搬送ベルト913は、搬送ローラ911によって支えられDCモータ912によって駆動されることによって、紙幣をBRU900内の各部分から他の各部分へ搬送し、また、鑑別ユニット910内を通過させる。紙幣の搬送経路の詳細については後述する。
【0009】
また、搬送ベルト913は、紙幣が搬送方向に対して多少傾いていても搬送することができる。これに対応し、鑑別ユニット910は、多少傾いた状態で搬送される紙幣であっても鑑別することができるように構成されている。
また、このBRU900には、搬送経路の分岐点毎にゲート914が設けられており、ゲート914によって搬送経路が変更される。図11には、分岐点毎に設けられているゲート914のうちの一部分のゲートだけが図示されており、他のゲートは図示が省略されている。
【0010】
また、このBRU900の下方には、総合制御部915が備えられており、総合制御部915によってBRU900の各部の制御が行われる。また、総合制御部915によって、鑑別ユニット910による鑑別結果が読み出され、その鑑別結果に応じて、以下説明するように、ゲート914が駆動されることにより搬送経路が変更される。
【0011】
図12はゲート914による搬送経路の変更方法を示す模式図である。
この図には、搬送経路の分岐点の一例が示されている。搬送経路9130に沿って図の左側から搬送されてきた紙幣は、搬送ローラ911に沿って図の下側に向かう搬送経路9131で搬送されるか、あるいは、図の右側に向かって直進する搬送経路9132で搬送される。
【0012】
ゲート914は、くさび形の形状をしており、図の右側に向かう搬送経路9132と、図の下側に向かう搬送経路9131との間に、分岐点の方に先端を向けて配置されている。また、このゲート914は、ゲートマグネット9141により、回動軸9142を中心に回動され、このゲートマグネット9141は、図11に示す総合制御部915によって制御される。
【0013】
ゲート914が、図に実線で示されるように、くさび形の先端が上側を向くように制御されると、図の左側から搬送されてきた紙幣はゲート914に沿って下側へと搬送される。また、図に点線で示されるように、くさび形の先端が下側を向くようにゲート914が制御されると、図の左側から搬送されてきた紙幣はゲート914に沿って右側へと搬送される。
【0014】
図11に戻って説明する。
BRU900には以下説明する4つの動作モード(入金モード、出金モード、補充モード、回収モード)が存在し、総合制御部915が外部から動作モードの指定を受け、その指定に応じて各部分を制御する。
入金モードは、ATMの利用者によってATMに紙幣が投入されるモードであり、この入金モードでは、ATMの使用者によって投入ボックス906に投入された紙幣が内部に取り込まれ鑑別され仕分けされて、2つのスタッカ901,902と5千円券ボックス903に金種毎に収納される。
【0015】
出金モードは、ATMから利用者へ紙幣の支払いが行われるモードであり、この出金モードでは、ATMの利用者に支払われるべき紙幣がスタッカ901,902から取り出され鑑別され投入ボックス906に収納される。
また、補充モードは、ATMの管理者によってATMに紙幣が補充されるモードであり、この補充モードでは、カセット907に収納されている紙幣がそのカセット907から取り出され鑑別されスタッカ901,902に収納される。
【0016】
さらに、回収モードは、ATMの管理者によってATMから紙幣が回収されるモードであり、この回収モードでは、2つのスタッカ901,902に収納されている紙幣がそれらのスタッカ901,902から取り出され鑑別されカセット907に収納される。
図13〜図15には図11に示すBRU900と同一のBRUが示されている。図11に示す矢印は入金モードにおける紙幣の搬送経路を示しており、同様に、図13に示す矢印は出金モードにおける紙幣の搬送経路を示し、図14に示す矢印は補充モードにおける紙幣の搬送経路を示し、図15に示す矢印は回収モードにおける紙幣の搬送経路を示している。
【0017】
以下、先ず、図11を参照しながら入金モードにおけるBRU900の動作を説明する。
まず、投入ボックス906が上方に位置し、ATMの利用者により投入ボックス906内に紙幣が投入され、その後投入ボックス906は下方の位置に移動する。このとき投入ボックス906内に投入された紙幣は、投入ボックス906の仕切板9062の下側に入っている。この紙幣が1枚ずつ取出機構9061によって取り出され搬送ベルト913によって図の左側へ搬送されて鑑別ユニット910内を通過する。鑑別ユニット910では、紙幣の搬送中に紙幣の鑑別が行われる。鑑別ユニット910を出た紙幣は上方に搬送されて搬送経路の分岐点P1に到達する。鑑別ユニット910による鑑別結果が、千円券の真券であるか万円券の真券であるという結果であると、その分岐点P1に配置されたゲートによって、分岐点P1から下方に向かう搬送経路が選択され、5千円券の真券であるか、形状異常券等であるという結果であると、そのゲートによって、分岐点P1から上方に向かう搬送経路が選択される。
【0018】
分岐点P1から下方に紙幣が搬送されたときは、その紙幣はその後矢印F1に沿って図の右側に搬送されて分岐点P2に到達する。鑑別ユニット910による鑑別結果が、千円券であるという鑑別結果であると、その分岐点P2に配置されたゲートによって、千円券用のスタッカ901に向かう搬送経路が選択され、紙幣は取出収納機構904によって千円券用のスタッカ901に収納される。また、鑑別ユニット910による鑑別結果が、万円券であるという鑑別結果であると、その分岐点P2のゲートによって、その分岐点P2から図の右側に向かう搬送経路が選択され、紙幣は取出収納機構904によって万円券用のスタッカ902に収納される。また、分岐点P1から上方に紙幣が搬送されたときは、その紙幣は、その後、矢印F2に沿って図の右側に搬送され、分岐点P3に到達する。鑑別ユニット910による鑑別結果が、5千円券であるという鑑別結果であると、その分岐点P3に配置されたゲートによって、5千円券ボックス903に向かう搬送経路が選択され、紙幣は5千円券ボックス903に収納される。また、鑑別ユニット910による鑑別結果が、形状異常券等であるという結果であると、その分岐点P3のゲートによって、その分岐点P3から図の右側に向かう搬送経路が選択され、形状異常券等は投入ボックス906の仕切板9062の上側に収納される。その後、投入ボックス906が上方の位置に移動し、投入ボックス906内に収納された形状異常券等は、ATMの利用者に返却される。また、5千円券ボックス903に収納された5千円券は、図示を省略した機構によってリジェクトボックス905内の5千円券室9051に移される。
【0019】
次に、図13を参照しながら出金モードにおけるBRU900の動作を説明する。
総合制御部915によって取出収納機構904が制御されることにより、所定金種および所定枚数の紙幣が2つのスタッカ901,902から1枚ずつ取り出され、搬送ベルト913により合流点P4を経由して図の右側に搬送される。その後、紙幣は上方に搬送され図の左側に搬送されて鑑別ユニット910を通過し鑑別される。鑑別ユニット910を出た紙幣は上方に搬送されて搬送経路の分岐点P5に到達する。鑑別ユニット910による鑑別結果が、形状異常券等であるという結果であれば、その分岐点P5に配置されたゲートによって、リジェクトボックス905へ向かう搬送経路が選択され、形状異常券等はリジェクトボックス905内に収納される。また、正常な紙幣であるという鑑別結果であると、その分岐点P5のゲートによって、その分岐点P5から上方に向かう搬送経路が選択され、紙幣は上方に搬送され矢印F3に沿って図の右側に搬送されて投入ボックス906内に収納される。その後、投入ボックス906は上方の位置に移動し、投入ボックス906内に収納された紙幣が利用者に支払われる。
【0020】
次に、図14を参照しながら補充モードにおけるBRU900の動作を説明する。
ここでは、予備のカセットが使用されない場合の動作について説明する。ただし、予備のカセットが使用される場合の動作は、以下説明する動作と同様の動作である。
【0021】
カセット907に収納されている紙幣は、取出機構908によって1枚ずつ取り出され、搬送ベルト913により矢印F4に沿って図の右側に搬送され矢印F5に沿って上方に搬送され図の左方に搬送されて鑑別ユニット910を通過し鑑定される。鑑別ユニット910を出た紙幣は一旦上方へ搬送されてから下方へ搬送されて搬送経路の分岐点P6に到達する。鑑別ユニット910による鑑別結果が、形状異常券等であるという結果であれば、その分岐点P6に配置されたゲートによって、カセット907に向かう搬送経路が選択され、形状異常券等はカセット907内のリジェクト室9072に収納される。また、正常な紙幣であるという結果であると、その分岐点P6のゲートによって、その分岐点P6から図の下方へ向かう搬送経路が選択される。その後紙幣は入金モード同様に金種毎にスタッカ901,902に収納される。
【0022】
次に、図15を参照しながら回収モードにおけるBRU900の動作を説明する。
補充モードの説明同様、予備のカセットが使用されない場合の動作について説明する。
2つのスタッカ901,902に収納されている紙幣が、取出収納機構904によって1枚ずつ取り出され、搬送ベルト913によって、合流点P7を経由して図の右側に搬送され上方に搬送され図の左側に搬送されて鑑別ユニット910を通過し鑑別される。鑑別ユニット910を出た紙幣は上方へ搬送されて搬送経路の分岐点P8に到達する。鑑別ユニット910による鑑別結果が、形状異常券等であるという結果であれば、その分岐点P8に配置されたゲートによって、リジェクトボックス905に向かう搬送経路が選択され、形状異常券等はリジェクトボックス905内に収納される。また、正常な紙幣であるという結果であると、その分岐点P8のゲートによって、その分岐点P8から下方に向かう搬送経路が選択され、紙幣は収納機構909によってカセット907内に収納される。
【0023】
以上説明した4つの動作モードにおける紙幣の搬送速度はいずれも同じ搬送速度である。また、鑑別ユニット910による紙幣の鑑別にはある程度の時間が必要であり、鑑別ユニット910において紙幣がセンスされてから、紙幣が搬送経路の分岐点に到達するまでの時間が利用されて紙幣の鑑別が行われ、紙幣が分岐点に到達したときは、その鑑別結果に応じてその紙幣の搬送経路が切り換えられる。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
補充モードおよび回収モードでは、1回に1000枚以上という多量の紙幣が処理される。このため、紙幣の搬送速度を高速化し、BRUの処理速度を上げることが望まれている。
しかし、搬送速度を上げると、紙幣が鑑別ユニットを出てから搬送路の分岐点に到達するまでの時間が減少し、そのために鑑別のための時間が不足して紙幣が分岐点に達する前に鑑別を終えることができなくなるおそれがある。
また一般に、鑑別ユニットによる紙幣のセンスは、鑑別ユニットを通過する紙 幣の通過速度に依存しており、紙幣の搬送速度が上がって紙幣の通過速度が上がるとセンスの結果が変化する。このため、センスの結果に基づく鑑別において、正確な鑑別が行われないおそれがある。
【0025】
このような問題は、ATMに限られた問題ではなく、紙葉を搬送しつつ鑑別し、その鑑別結果に応じて搬送経路を変更する紙葉処理装置について一般的に生じる問題である。
本発明は、上記事情に鑑み、紙葉の適切な鑑別が保障されるとともに搬送速度を上げることができる紙葉処理装置を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の紙葉処理装置は、
搬送中の紙葉をセンスしセンスの結果に基づいて所定の鑑別処理を実行することにより紙葉を鑑別する鑑別部と、
複数の動作モードを有し、紙葉を、動作モードに因らず鑑別部を通過する搬送経路であるとともに動作モードに応じた搬送経路に沿って搬送し、鑑別部における鑑別結果に応じて鑑別部通過後の搬送経路を変更する紙葉搬送手段とを備え、
紙葉搬送手段が、紙葉を、動作モードに応じた、少なくとも2種類の搬送速度で搬送するものであって、
鑑別部が、紙葉の搬送速度に応じて紙葉の鑑別処理を異ならせたものであることを特徴とする。
【0027】
複数の動作モードを有する紙葉処理装置においては、紙葉の鑑別は動作モードによらず必要であったとしても、必要とされる紙葉の鑑別内容等は動作モード毎に異なっていることが多い。
本発明は、この点に着目したものである。すなわち、本発明の紙葉処理装置では、動作モードに応じて、その動作モードで必要な鑑別時間が保障されるように搬送速度が設定され、その搬送速度に応じた鑑別処理が実行される。これによって、全動作モードにおいて紙葉の適切な鑑別が保障されるとともに、あるモードにおいては搬送速度を上げることができ、装置全体としての稼働効率が向上する。
【0028】
本発明の紙葉処理装置に用いられる上記鑑別部は、紙葉の搬送速度が相対的に高速である場合に、紙葉の鑑別処理の一部を省くものであることが望ましい。
一般に、紙葉の鑑別処理では、鑑別能力を高めるために2重3重の鑑別処理が行われているが、紙葉を高速な搬送速度で搬送することが望まれる動作モードにおいては、鑑別能力については重視する必要がない場合が多い。
【0029】
このため、紙葉の搬送速度が高速である場合に、2重3重の鑑別処理の一部を省くことによって鑑別時間が短縮され、その短縮された鑑別時間の分だけ紙葉の搬送速度を上げることができる。
また、上記鑑別部は、紙葉の搬送速度に応じて、紙葉の鑑別基準を異ならせるものであることが望ましい。
このような鑑別部を備えた紙葉処理装置によれば、搬送速度に応じた鑑別基準 によって紙葉の鑑別が行われるので、紙葉の搬送速度が上がるのに伴って、鑑別部による紙葉のセンスの結果が変化した場合であっても、変化したセンス結果に合った鑑別基準で紙葉の鑑別が行われ、紙葉の適切な鑑別が行われる。
【0030】
また、上記鑑別部は、鑑別部を通過中の紙葉を所定のサンプリング時間間隔でセンスするものであって、紙葉の、搬送速度に応じて伸縮した画像の縦横比を、実際の紙葉の縦横比と同一の縦横比となるようにデータを補正し、その補正後に紙葉の鑑別処理を実行するものであってもよい。
このようなデータ補正を施すことにより、鑑別アルゴリズムの一部を省くこととは別に、実行するアルゴリズムに関しては、搬送速度によらず同一のアルゴリズムを採用した鑑別処理を行なうことができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の紙葉処理装置の一実施形態であるBRUを示す図である。
このBRU10は、ATM内に組み込まれ、ある利用者により投入された紙幣を別の利用者への支払いに利用するBRUであり、このBRU10の構成部分のうち、図11に示すBRU900の構成部分と同一の構成部分については同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0032】
前述した図11に示すBRU900における紙幣の搬送速度は、4つの動作モードに共通の搬送速度であるのに対して、この図1に示すBRU10では、入金モードおよび出金モードにおける紙幣の搬送速度よりも、補充モードおよび回収モードにおける紙幣の搬送速度の方が高速の搬送速度となっている。但し、図11に示したBRU900における、図11〜図15を用いて説明した動作については、この図1に示すBRU10においても全く同様の動作が行われるので重複説明は省略する。
【0033】
このBRU10には、本発明にいう鑑別部の一例である鑑別ユニット100が備えられており、鑑別ユニット100によって紙幣がセンスされて画像データが得られ、この画像データに基づいて紙幣の鑑別が行われる。ここで、図11に示したBRU900の鑑別ユニット910では、各動作モードに共通の鑑別処理が行なわれるのに対して、この鑑別ユニット100では、紙幣の搬送速度に応じた鑑別処理が行なわれる。鑑別ユニット100の詳細については後述する。
【0034】
また、このBRU10には、総合制御部200が備えられており、図11に示したBRU900の総合制御部915と同様に、この図1に示す総合制御部200によって、鑑別ユニット100による鑑別結果が鑑別ユニット100から読み出されて、その鑑別結果に応じてゲート914が駆動されて搬送経路が変更される。ただし、図11に示したBRU900の総合制御部915では、各動作モードに共通の制御が行われるのに対して、この総合制御部200は、動作モードに応じた制御を行ない、以下で説明するように、図1には図示を省略した制御系を介してDCモータが動作モードに応じて制御され、その結果動作モードに応じて搬送速度が制御される。また、総合制御部200から鑑別ユニット100に、動作モードを示す信号が送られる。
【0035】
図2は、総合制御部の指令に基づいてDCモータを制御する制御系を表すブロック図である。
この制御系には、低速用固定基準電圧発生回路210と、高速用固定基準電圧発生回路220と、スイッチ230が備えられており、低速用固定基準電圧発生回路210および高速用固定基準電圧発生回路220それぞれによって、電圧値が互いに異なる2つの定電圧が発生される。また、総合制御部200によってスイッチ230が制御され、スイッチ230によって、低速用固定基準電圧発生回路210および高速用固定基準電圧発生回路220それぞれによって発生された2つの定電圧のうちの一方の定電圧が選択される。
【0036】
また、この制御系には、コントローラ240と、ドライバ250が備えられており、ドライバ250は、コントローラ240からの信号に応じた電圧をDCモータ912に印加する定電圧電源である。コントローラ240には、DCモータ912の回転若しくは停止を指示する制御信号が総合制御部200から入力され、また、スイッチ230によって選択された定電圧が基準電圧として入力される。制御信号がDCモータ912の回転を指示している場合には、コントローラ240は、基準電圧に応じた電圧を指示する信号をドライバ250に送り、制御信号がDCモータ912の停止を指示している場合には、0ボルトを指示する信号をドライバ250に送る。また、DCモータ912ら、DCモータ912の回転速度に比例する電圧が出力されコントローラ240にフィードバックされており、コントローラ240は、このフィードバックされた電圧と基準電圧との差に応じて、ドライバ250への信号を調整する。
【0037】
図3は、図1に示す鑑別ユニットを表すブロック図である。
この鑑別ユニット100には、センサ部101と、増幅部102と、A/D変換部103と、さらに画像処理部104が備えられており、センサ部101によって紙幣が走査されて得られた画像データが増幅部102で増幅されA/D変換部103でA/D変換されて画像処理部104に入力される。
【0038】
図4は、図3に示すセンサ部の詳細を示す図である。
このセンサ部101には、突入センサ1011と、光ラインセンサ1012と、磁気ラインセンサ1013と、厚みセンサ1014と、通過センサ1015とが備えられている。紙幣2000は、図の左側から搬送されてきてセンサ部101を通過し図の右側へと搬送されていく。
【0039】
突入センサ1011は、光センサの一種であり2つ設けられている。この突入センサ1011により、搬送されてきた紙幣2000が感知されて感知情報が得られ、その感知情報が、後述するように、図3に示す鑑別ユニット100の所定動作の開始の合図となる。また、2つの突入センサ1011それぞれによって紙幣2000が感知され、それらの感知時刻の差に基づいて、搬送方向に対する紙幣2000の傾きを求めることができる。
【0040】
図5は、図4に示す光ラインセンサの詳細を示す図である。
光ラインセンサ1012は、紙幣2000の搬送方向(図5の紙面に垂直な方向)に対して垂直な方向(図5の左右方向)に配列された128個の光センサ素子10121により構成されており、通過中の紙幣2000を挟むように2つ設けられている。突入センサ1011によって紙幣2000が感知された後、各光センサ素子10121により、その紙幣2000について一定周期で35回のセンスが行われる。これにより、光ラインセンサ1012を構成する各光センサ素子10121によって紙幣2000が搬送方向に走査され、35行×128列のモザイクを表す画像データが得られる。画像データのより詳しい説明は後述する。
【0041】
各光ラインセンサ1012には、紙幣2000に光を照射するための発光素子10122が備えられている。これらの発光素子10122は、上述した35回のセンスの1回毎に発光して紙幣2000を照射する。また、図5の上側に示されている発光素子10122と下側に示されている発光素子10122とでは、発光のタイミングがずれている。図5の上側に示されている発光素子10122が発光している間に、図5の上側に示されている各光センサ素子10121により紙幣2000がセンスされて、反射光による、紙幣2000の、図5の上側の面の画像データが得られる。また、それと同時に、すなわち図5の上側に示されている発光素子10122が発光している間に、図5の下側に示されている各光センサ素子10121でも紙幣2000がセンスされて、透過光による画像データが得られる。同様に、図5の下側に示されている発光素子10122が発光している間に、各光センサ素子10121により紙幣2000がセンスされて、反射光による、紙幣2000の、図5の下側の面の画像データと、透過光による画像データが得られる。上記の4つの画像データのうちの、透過光による2つの画像データは足し合わされて1つの画像データとして用いられる。
【0042】
図6は、入金モードおよび出金モードにおいて得られる画像データ(a)、および補充モードおよび回収モードにおいて得られる画像データ(b)を示す概念図である。
図6(a)には、入金モードおよび出金モードにおいて、斜めに傾いた状態で図の上方へと向かって搬送された紙幣が光ラインセンサによってセンスされて得られた画像データd100が示されている。また、一番外側の長方形が、光ラインセンサによって走査される範囲2100を示しており、光ラインセンサによって走査される範囲2100の内側に、斜めに配置されている長方形が、斜めに搬送された紙幣の外形2200を示している。このように、光ラインセンサによって走査される走査範囲2100は、紙幣の外形2200によって囲われた範囲よりもやや広い範囲に広がっており、従って、紙幣がやや斜めに搬送された場合であってもその紙幣は走査範囲2100内に納まる。
【0043】
図6(b)に実線の長方形で示されている範囲2300内の画像は、補充モードおよび回収モードによって得られる画像データd200を示しており、範囲2300内の画像は、範囲2100内の画像を紙幣の搬送方向(図6の上下方向)に縮めた画像になっている。また、一部が点線で示されている一番外側の長方形が、図6(a)に示されている走査範囲2100を示している。
【0044】
補充モードおよび回収モードにおける紙幣の搬送速度は、入金モードおよび出金モードにおける搬送速度よりも高速であり、光ラインセンサのサンプリング時間間隔は、入金モードおよび出金モードにおけるサンプリング時間間隔と同じサンプリング時間間隔である。このため、補充モードおよび回収モードにおいて得られる画像データd200が表す画像は、入金モードおよび出金モードにおいて得られる画像データd100が表す画像と比較すると、図6の上下方向に縮んだ画像となり、画像データd200が表すモザイク画像の行数は35行よりも少なくなる。このため、画像データd200には補正が施され、画像データd100同様の、35行×128列のモザイクを表す画像データが生成される。
【0045】
図4に戻って説明を続ける。
次に、磁気ラインセンサ1013について説明する。光ラインセンサ1012は光センサ素子が配列されたものであるが、磁気ラインセンサ1013は磁気センサ素子が配列されたものであること、および光ラインセンサ1012には発光素子が備えられているが磁気ラインセンサ1013には発光素子に対応する構成が不要であることを除き、磁気ラインセンサ1013は光ラインセンサ1012とほぼ同様である。また、磁気ラインセンサ1013は光ラインセンサ1012とは異なり1つだけ設けられており、磁気ラインセンサ1013によって、1つの磁気画像を示す画像データが得られる。
【0046】
厚みセンサ1014は、紙幣2000の厚さを機械的に計測するセンサであり、厚みセンサ1014によって、紙幣2000の厚さの搬送方向分布が得られる。
通過センサ1015は、突入センサ1011同様に紙幣2000を感知する光センサであり、突入センサ1011と同様に2つ設けられている。突入センサ1011により紙幣2000が感知された時刻と、通過センサ1015により紙幣2000が感知された時刻との差に基づいて、紙幣2000がセンサ部101を通過するときの通過速度が求められ、その通過速度が、以下で述べるように総合判定に用いられる。
【0047】
図3に戻って説明を続ける。
鑑別ユニット100には、クロック部105と、鑑別ユニット制御部106が備えられており、クロック部105によっていわゆるクロック信号が発生される。鑑別ユニット制御部106には、図1に示すBRU10の総合制御部200から動作モードを示す信号が入力され、その信号が示す動作モードの搬送速度に応じて鑑別ユニット100の各部分の制御が行われる。また、鑑別ユニット制御部106には、センサ部101に設けられている突入センサおよび通過センサそれぞれによる紙幣の感知情報が送られてきており、鑑別ユニット制御部106によって、クロック部105で発生されたクロック信号が用いられて、2つの突入センサおよび2つの通過センサそれぞれによる紙幣の感知時刻が計られ、搬送方向に対する紙幣の傾きや、紙幣がセンサ部101を通過した速度の計算が行われる。
【0048】
また、この鑑別ユニット100には、画像処理部104が備えられており、この画像処理部104には、センサ部101に備えられた光ラインセンサによって得られた画像データが、増幅部102およびA/D変換部103を経由して入力され、それら入力された画像データに対し、後述する画像処理が施される。
また、この鑑別ユニット100には、辞書データ記憶部107と、辞書比較部108が備えられており、辞書データ記憶部107には、紙幣を鑑別するための基準である、反射光、透過光および磁気それぞれによる紙幣全体の各画像データに対応する辞書データ、および厚みの分布に対応する辞書データが記憶されている。また、辞書比較部108によって画像データおよび厚みの分布と辞書データが比較され、これによって、紙幣の形状のチェックや、金種の判定や、紙幣の真偽判定が行われる。辞書比較部108の動作の詳細については後述する。
【0049】
更に、この鑑別ユニット100には、総合判定部109および判定結果記憶部110が備えられており、総合判定部109によって、辞書比較部108における各種の判定結果と、鑑別ユニット制御部106によって計算された傾きおよび通過速度とに基づいて、正常な紙幣として取り扱うべき紙幣であるか否かの判定が行われ、その判定結果が判定結果記憶部110に記憶される。また、判定結果記憶部110には、金種の判別結果等も記憶される。判定結果記憶部110に記憶された判定結果等は、図1に示すBRU10の総合制御部200によって読み出されて利用される。
【0050】
以上説明した鑑別ユニット100による紙葉の鑑別処理について、以下フローチャートを参照しながら説明する。
図7は、紙葉の鑑別処理を示すフローチャートである。
図4に示す突入センサによって紙幣が感知されると、図3に示す鑑別ユニット100の鑑別ユニット制御部106によって、紙幣のセンスの開始が指示され、まずステップS101において、反射光、透過光および磁気それぞれによる紙幣全体の各画像データおよび厚みの分布が収集される。
【0051】
次に、ステップS102に進み、ステップS101で収集された各画像データに対し、図3に示す画像処理部104で、以下に述べる画像処理が施されることにより画像データの正規化が行われる。
まず、紙幣の搬送速度が高速である場合には、図6(b)に示す画像データd200が表す画像の縦横比が、実際の紙幣の縦横比と同一の縦横比になるように補正が施され、図6(a)に示す画像データd100の形式と同一の形式である、35行×128列のモザイクを表す画像データが生成される。
【0052】
次に、このように生成された画像データ若しくは図6(a)に示す画像データに対して、図3に示す鑑別ユニット制御部106から受け取った、搬送方向に対する紙幣の傾きの計算値を用いて、紙幣が正しい向きとなるように回転移動させる傾き補正が施される。図8の上側の図に示されているもっとも外側の長方形によって囲まれた範囲2400内の画像は、この傾き補正の結果得られた、紙幣の向きが正しい向きとなった画像データd300を示しており、範囲2400内の長方形は、正しい向きに補正された紙幣の外形2500を示している。
【0053】
次に、紙幣毎のインク濃度のばらつきに起因する誤差の補正が施される。
更に、図8の上側に示す、35行×128列のモザイクを表す画像データd300から、紙幣の外形2500に囲まれた範囲に対応する画像データを切り出し、紙幣全域が10行×22列に区切られた各画素毎に、その画素に含まれる複数のモザイクそれぞれに対応する画像データが平均される。図8の下側の図は、この平均化の結果形成された、紙幣全域を10行×22列の画素で表す画像データd400を示している。
【0054】
このような各補正が施されることによって、画像データの正規化が行われる。以上説明した画像データの正規化が行われた後、ステップS103に進み、透過光による紙幣全体の画像データに基づく紙幣の外形チェックが行われる。この外形チェックでは紙幣の欠損部分の数や大きさがチェックされて欠損部分の総面積が求められる。その後、ステップS104に進み、欠損部分の総面積が、正常な紙幣の形状とみなせる数値範囲内であるか否かが判定される。ステップS104において、正常な形状とみなせる数値範囲外であると判定されるとステップS105に進み、形状異常券であると鑑別されてステップS113に進み、後述する他の判定結果等も考慮されて総合判定が行われて紙幣の鑑別処理が終了する。ステップS104において、正常な形状とみなせる数値範囲内であると判定された場合にはステップS106に進む。
【0055】
ステップS106では、ステップS102で正規化された、透過光による紙幣全体の画像データと、図3に示す辞書データ記憶部107に記憶されている、透過光による、各金種それぞれの紙幣全体の画像データに対応する各辞書データとの間の大雑把なパターンマッチングが行われ、紙幣の金種の特定と紙幣の方向の特定が行われる。その後ステップS107に進み、センス部でセンスされた紙幣がステップS106において1金種の1方向に特定されたか否かが判定され、特定されなかったと判定されるとステップS108に進み、不明券であると鑑別されてステップS113に進み、上述してように総合判定が行われて紙幣の鑑別処理が終了する。ステップS107において、紙幣が1金種の1方向に特定されたと判定された場合は、ステップS109に進む。
【0056】
ステップS109では、ステップS106で特定された金種の、反射光による画像データ、透過光による画像データ、磁気による画像データおよび厚み分布それぞれに対応する辞書データが、辞書データ記憶部107から読み込まれ、ステップS110に進み、後述する、各画像データおよび厚み分布と辞書データとの比較を行う比較ルーチンが実行され、比較結果を表す数値が得られる。比較ルーチンが終了するとステップS111に進む。
ステップS111では、比較ルーチンでの比較結果を表す数値が、真券を表す数値範囲の範囲内であるか否かが判定され、範囲外であると判定されるとステップS112に進み、偽造券であると鑑別されてステップS113に進む。ステップS111で、真券を表す数値範囲の範囲内であると判定された場合には、真券であると鑑別されてステップS113に進む。
【0057】
ステップS113では、図3に示す総合判定部109によって鑑別ユニット制御部106から傾きおよび通過速度の計算値が読み込まれ、この計算値と、上記の各種の判定結果とに基づいて、正常な紙幣として取り扱うべきであるか否かの判定が行われ、その結果および金種の判別結果等が判定結果記憶部110に記憶されて、紙幣の鑑別処理が終了する。
【0058】
以下では、ステップS110における比較ルーチンについて説明する。
この比較ルーチンでは、上述したように、各画像データおよび厚み分布と辞書データとの比較が行われる。比較に用いられる画像データは、図7のステップS102において正規化された画像データであり、図8の下側に示す、紙幣全域を10行×22列の画素で表す画像データd400である。
【0059】
この画像データに対応する辞書データは、多数の紙幣を走査することによって得られた多数の画像データに基づいて作成されており、反射光による紙幣の各面の画像データ、透過光による画像データ、磁気による画像データおよび厚みの分布それぞれに対応付けられて用意されており、更に、各画像データおよび厚みの分布のうちの2つずつを組み合わせた各組合せに対応する辞書データも用意されている。
【0060】
また、辞書データは、多数の紙幣の画像データが10行×22列の画素毎に平均された各平均値、および画像データの、画素毎の各標準偏差値からなる辞書データと、1枚の紙幣の画像データが10行×22列の画素の行毎に平均されて生成された各行データが、多数の紙幣について行毎に平均された各平均値、および行データの、行毎の各標準偏差値からなる辞書データと、1枚の紙幣の画像データが10行×22列の画素の列毎に平均されて生成された各列データが、多数の紙幣について列毎に平均された各平均値、および列データの、列毎の各標準偏差値からなる辞書データと、1枚の紙幣の画像データが紙幣全域に渡り平均されて生成された全域データが、多数の紙幣について平均された平均値、および全域データの標準偏差値からなる辞書データが用意されている。このような4種類の辞書データが用意されているのは、例えば、全体的に黒っぽい紙幣や、紙幣の一部が帯状に張り替えられたもの等は、画素毎の平均値等からなる辞書データを用いた比較では判別できず、全域データ等の平均値等からなる辞書データを用いた比較で判別できる場合があるように、4種類の辞書データそれぞれに適した判別に利用するためである。辞書データと画像データとの比較にあたっては、必ずしもこれら4種類の辞書データが採用されるわけではなく、これらの辞書データのうちの全種類または一部の種類の辞書データがATMの管理者によって選択されて、画像データとの比較に用いられる。以下では、上記4種類の辞書データのうち(1)の辞書データ、すなわち10行×22列の画素毎に平均された平均値、および画素毎の標準偏差値からなる辞書データが用いられて、画像データと辞書データとの比較が行われるものとして説明する。
【0061】
画像データと辞書データとの比較は、画像データの値が、辞書データを構成する平均値および標準偏差値に基づき後述するようにして定められる基準範囲の範囲内であるか否かが画素毎に判定されることによって行われる。基準範囲の範囲内であると判定されると、その画素は「真」であるとチェックされ、基準範囲の範囲外であると判定されるとその画素は「偽」であるとチェックされる。全画素についてチェックが終了した後、「偽」であるとチェックされた画素の数が比較結果として求められる。
【0062】
図9は、基準範囲を示す図である。
この図に示されている、中央部にピークを持つ曲線は、ある一つの画素について、辞書データを作成するために収集された多数の画像データの分布を示す曲線であり、横軸は画像データの値、縦軸は紙幣の枚数である。また、横軸上に示されている点Mは画像データの平均値を示している。
【0063】
上述したように、このグラフに示されている分布の標準偏差値は辞書データの一部としてその辞書データに含まれており、その標準偏差値に所定の係数を掛けて得られた値を平均値に足すことによって基準範囲の上限値が定まり、また、平均値から引くことによって基準範囲の下限値が定まる。このようにして定められた下限値および上限値の一例が、図9の横軸上の点Aおよび点Bによって示されており、また、下限値および上限値の別の例が点A’および点B’によって示されている。標準偏差値に掛け算される係数の相違により、点A,Bが定められ、あるいは点A’点B’が定められる。グラフの縦軸に平行な複数の点線それぞれによって、様々な係数によって計算された様々な下限値および上限値が示されており、グラフの横軸に平行な複数の矢印それぞれによって、様々な係数に対応する各基準範囲d1 ,d2 ,d3 ,d4 が示されている。
【0064】
紙幣の搬送速度が高速な動作モードである補充モードおよび回収モードにおいて得られる画像データは、図6(b)に示す画像データd200であり、上述したように、この画像データが表すモザイクの行数は35行よりも少ないので、この画像データが有する情報量は、図6(a)に示す紙幣の搬送速度が低速な動作モードである入金モードおよび出金モードにおいて得られる、35行×128列のモザイクを表す画像データd100が有する情報量に比べて少ない。従って、補充モードおよび回収モードにおいて得られる画像データに基づいて、図3に示す画像処理部104によって画像の縦横比が補正されて得られた、35行×128列のモザイクを表す画像データには補正誤差が含まれている。
【0065】
ここで仮に、各動作モードにおける基準範囲が共通であって、図9の上から2番目の矢印で示される基準範囲d2 が採用されることとすると、この基準範囲d2 は、図9に示す曲線で表されている分布のうちの大部分を含んでいるので、入金モードおよび出金モードにおいては、画像データが基準範囲を逸脱する率は低い。これに対して補充モードおよび回収モードにおいては、上述の補正誤差による影響で、画像データが基準範囲を逸脱しやすく、補充モードおよび回収モードにおいては多くの真券が偽造券と鑑別されることになる。
【0066】
そこで、本実施形態では、補充モードおよび回収モードにおける基準範囲を計算するための係数として、入金モードおよび出金モードにおける基準範囲を計算するための係数の値よりも大きな値の係数が定められ、これによって、補充モードおよび回収モードにおいて画像データが基準範囲を逸脱する率が、入金モードおよび出金モードにおいて画像データが基準範囲を逸脱する率と同程度の率に調整されている。
【0067】
図10は、比較ルーチンのフローチャートである。
この比較ルーチンのステップS201〜ステップS205では、透過光による画像データ、反射光による紙幣の各面の画像データ、磁気による画像データおよび厚み分布それぞれと、対応する辞書データとの比較が行われる。ステップS201〜ステップS205における比較が終わった後ステップS206に進む。
【0068】
ステップS206では、紙幣の搬送速度が高速であるか否かが判定され、高速であると判定された場合には、このまま、すなわち、ステッピングS205まで比較を終えた段階で、図7に示す、紙幣の鑑別処理に戻る。ステップS206において、紙幣の搬送速度が高速でないと判定された場合には、ステップS207に進み、さらに比較が続けられる。
【0069】
ステップS207〜ステップS216(ステップS210〜ステップS214は図示を省略)では、透過光による画像データ、反射光による紙幣の各面の画像データ、磁気による画像データおよび厚み分布のうちの2つずつを、例えば、画素毎に足し合わせたり画素毎に差し引いたりするといった所定の組み合わせ方で組み合わせることによって得られたデータと、各組合せに対応する辞書データとの比較が行われる。画像データ等を2つずつ組み合わせることによって、ステップS201〜ステップS205で行われた各比較では判別されない偽造券でも、真券との相違が累積して判別される場合がある。
【0070】
ステップS207〜ステップS216における比較が終わった後、図7に示す紙幣の鑑別処理に戻る。
入金モードおよび出金モードでは、ATMの利用者とATMとの間で紙幣の受け渡しが行われる。このため、偽造券の鑑別能力をできるだけ高くすることが望ましく、上述した、ステップS207〜ステップS216における比較が行われる。また、紙幣の搬送速度は、紙幣が鑑別ユニットを出てから搬送経路の最初の分岐点に到達するまでの到達時間が、紙幣の鑑別に要する時間を上回る程度に低速な搬送速度となっている。
【0071】
これに対して、補充モードおよび回収モードは、ATMの管理者による、ATMの保守・管理のための動作モードであるため、偽造券の鑑別能力は低くてもよい。また、補充モードおよび回収モードでは1000枚以上の大量の紙幣が取り扱われるのが通常であり、このため、可能な限り搬送速度を高速化して保守・管理のための作業時間の低減を図ることが望ましい。
【0072】
そこで本実施形態では、補充モードおよび回収モードにおいて、ステップS207〜ステップS216における比較は行われず、紙幣の鑑別に要する時間が短く、この結果、補充モードおよび回収モードにおける紙幣の搬送速度が高速化される。
なお、本実施形態の紙葉処理装置は、2種類の搬送速度を有するが、本発明の紙葉処理装置は、3種類以上の搬送速度を有するものであってもよい。
【0073】
また、本実施形態の紙葉処理装置では、補充モードおよび回収モードにおいて、図10に示すステップS207〜ステップS216における比較が省略されているが、本発明の紙葉処理装置は、ステップS207〜ステップS216における比較の一部だけを省略するものであってもよく、あるいは、図10に示す比較ルーチン全体を省略するものであってもよい。
【0074】
さらに、本実施形態の紙葉処理装置では、比較の結果に基づいて紙幣の鑑別を行うための、真券とみなせる数値範囲は搬送速度に関わらず一定の数値範囲であるが、本発明の紙葉処理装置は、真券とみなせる数値範囲が搬送速度に応じて定められるものであってもよい。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の紙葉処理装置によれば、紙葉の適切な鑑別が保障されるとともに、紙葉の搬送速度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紙葉処理装置の一実施形態を示す図である。
【図2】総合制御部によってDCモータが制御される制御系を表すブロック図である。
【図3】鑑別ユニットを表すブロック図である。
【図4】センサ部の詳細を示す図である。
【図5】光ラインセンサの詳細を示す図である。
【図6】入金モードおよび出金モードにおいて得られる画像データ(a)、および補充モードおよび回収モードにおいて得られる画像データ(b)を示す概念図である。
【図7】紙葉の鑑別処理を示すフローチャートである。
【図8】補正された画像データを示す概念図である。
【図9】基準範囲を示す図である。
【図10】比較ルーチンのフローチャートである。
【図11】従来のBRUを示す断面図である。
【図12】ゲートによる搬送経路の変更方法を示す模式図である。
【図13】出金モードにおける紙幣の搬送経路を示す図である。
【図14】補充モードにおける紙幣の搬送経路を示す図である。
【図15】回収モードにおける紙幣の搬送経路を示す図である。
【符号の説明】
10 紙葉処理装置
100 鑑別ユニット
200 総合制御部
911 搬送ローラ
912 DCモータ
913 搬送ベルト
914 ゲート

Claims (3)

  1. 搬送中の紙葉をセンスし該センスの結果に基づいて所定の鑑別処理を実行することにより該紙葉を鑑別する鑑別部と、
    複数の動作モードを有し、紙葉を、動作モードに関わらず常に前記鑑別部を通過する搬送経路動作モードに応じた搬送経路に沿って搬送し、前記鑑別部における鑑別結果に応じて該鑑別部通過後の搬送経路を決定する紙葉搬送手段とを備え、
    前記紙葉搬送手段が、紙葉を、動作モードに応じた、少なくとも2種類の搬送速度で搬送するものであって、
    前記鑑別部が、所定の辞書データを記憶する辞書データ記憶部と、紙葉の画像を該辞書データと比較する比較部とを有し、該鑑別部を通過中の紙葉の全域を所定のサンプリング時間間隔でセンス、該紙葉の前記搬送速度に応じて伸縮した画像の縦横比を実際の紙葉の縦横比と同一の縦横比にする補正、および該画像を辞書データに合わせる補正を行った後に、補正した該紙葉の画像と該辞書データとを比較することにより鑑別処理を実行するものであることを特徴とする紙葉処理装置。
  2. 前記鑑別部が、紙葉の搬送速度が高速である場合に、紙葉の鑑別処理の一部を省くものであることを特徴とする請求項1記載の紙葉処理装置。
  3. 前記鑑別部が、紙葉の搬送速度に応じて、紙葉の鑑別基準を異ならせるものであることを特徴とする請求項1記載の紙葉処理装置。
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