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JP3627527B2 - 筒形防振マウント - Google Patents

筒形防振マウント Download PDF

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JP3627527B2
JP3627527B2 JP24319298A JP24319298A JP3627527B2 JP 3627527 B2 JP3627527 B2 JP 3627527B2 JP 24319298 A JP24319298 A JP 24319298A JP 24319298 A JP24319298 A JP 24319298A JP 3627527 B2 JP3627527 B2 JP 3627527B2
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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、自動車用のキャブマウントやサブフレームマウント,ボデーマウント,メンバマウント等に採用され得る筒形防振マウントに係り、特に軸方向一方向に初期荷重が及ぼされた状態で装着される筒形防振マウントに関するものである。
【0002】
【背景技術】
振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体の一種として、従来から、特開平9−42342号公報等に記載されているように、互いに径方向に離間配置された軸金具と外筒金具を、それら両金具間に介装された厚肉円筒形状の筒状ゴム弾性体で連結せしめた構造を有し、軸金具と外筒金具を防振連結される各一方の部材に取り付けることによって装着されると共に、かかる装着状態下、被支持体重量等の初期荷重が、軸金具を外筒金具に対して軸方向一方の側に相対変位せしめる方向に及ぼされる筒形防振マウントが、知られている。
【0003】
このような筒形防振マウントにおいては、初期荷重が入力された上に防振すべき振動が入力されるが、軸方向の荷重−撓み特性が非線形的であるために、初期荷重の入力に伴う静ばね定数の上昇に伴って、防振すべき振動に対する動ばね定数が大幅に高くなる傾向があり、優れた防振性能を得ることが難しいという問題があった。特に、自動車用のキャブマウントやサブフレームマウント等においては、乗車人数や載荷量によって初期荷重が広い範囲で変化し、それに伴って防振マウントの動ばね定数が変化するために、乗車人数や載荷量が多い場合には、防振性能が悪化してしまうという問題があったのである。
【0004】
また、かくの如き軸方向の初期荷重が入力される筒形防振マウントにおいては、筒状ゴム弾性体に生ぜしめられる引張変形量が、初期荷重による軸部材の移動方向前方側端部で大きくなり易いために、かかる軸方向端面に亀裂が発生し易い傾向がある。そこで、従来では、前記公報にも記載されているように、筒状ゴム弾性体に対して、かかる軸方向端面に開口して周方向に連続して延びる凹溝状のすぐり部を設け、軸方向端面の表面積を増大させることにより、発生応力の軽減が図られている。また、かかるすぐり部が設けられた筒状ゴム弾性体の軸方向端部においては、周長が短い内周部分のゴムボリュームを確保して、筒状ゴム弾性体における発生応力の均一化を図るために、一般に、すぐり部の底面における内周側隅部の曲率半径を外周側隅部の曲率半径よりも大きく設定したり、該すぐり部における軸方向の最深部を筒状ゴム弾性体の径方向の肉厚中心よりも外周側に位置せしめること等により、筒状ゴム弾性体の内周部分を外周部分よりも軸方向外方に突出させた形状とされている。
【0005】
ところが、このように筒状ゴム弾性体の内周部分を外周部分よりも軸方向外方に突出させるようなすぐり部を形成することによって、筒状ゴム弾性体における発生応力の軽減と均一化を図った場合でも、軸方向に入力される初期荷重と大きな振動荷重が繰り返し及ぼされることによって、筒状ゴム弾性体における軸方向端面からの亀裂の発生は避け難く、亀裂の発生によって、マウントの動ばね特性が大幅に変化してしまうために、十分な耐久性を確保することが、未だ難しいという問題があったのである。
【0006】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、解決すべき第一の課題とするところは、初期荷重が異なる場合でも動ばね定数の大幅な上昇が防止されて、目的とする防振性能が有効に且つ安定して発揮される、改良された構造の筒形防振マウントを提供することにある。
【0007】
また、本発明が解決すべき第二の課題とするところは、筒状ゴム弾性体における軸方向端面からの亀裂の発生に起因する動ばね特性の大幅な変化が防止されて、所期の防振性能が有利に維持され得る、改良された構造の筒形防振マウントを提供することにある。
【0008】
【解決手段】
そして、前記第一の課題を解決するために、本発明の特徴とするところは、軸部材と、該軸部材の外周側に離間配置された外筒部材が、それらの軸直角方向対向面間に介装された筒状ゴム弾性体で連結されてなり、装着状態下で、それら軸部材と外筒部材に対して、軸部材を外筒部材に対して軸方向一方の側に相対変位せしめる初期荷重が及ぼされる筒形防振マウントにおいて、外筒部材の軸方向中間部分に内径寸法変化部を設けて、外筒部材における初期荷重による軸部材の移動方向先端側の内径寸法を大きくすることにより、外筒部材の軸方向一端側に、軸部材との径方向対向面間距離が大きな大径部を形成したことにある。
【0009】
このような本発明に従う構造とされた筒形防振マウントにおいては、軸部材と外筒部材の径方向対向面間に介装されてそれら両部材を連結する筒状ゴム弾性体の径方向の厚さ寸法が、外筒部材に設けられた大径部によって、軸方向一方の端部側で大きくされている。そして、初期荷重によって軸部材が外筒部材に対して軸方向一方の側に相対変位すると、筒状ゴム弾性体も、軸部材の変位に伴って、外筒部材に対して全体的に軸方向に変位せしめられるが、軸部材と外筒部材の径方向対向面間距離が、かかる軸方向変位側において大きく設定されていることから、筒状ゴム弾性体に対して拘束的に及ぼされる径方向力が軽減されて筒状ゴム弾性体に対して内部応力の緩和的作用が発揮されること等によって、軸部材の外筒部材に対する軸方向変位に起因する筒状ゴム弾性体の高ばね化が軽減乃至は回避され得ることとなる。
【0010】
それ故、かかる筒形防振マウントにおいては、軸方向の入力荷重による静ばね定数および動ばね定数の増大が軽減乃至は防止されることとなり、初期荷重や軸方向入力荷重の大きさの変化に起因する動ばね定数の大幅な上昇が回避されて、目的とする防振性能が安定して発揮されるのである。
【0011】
なお、本発明において、外筒部材の内径寸法変化部は、段差形状等であっても良いが、大径部側に向かって次第に拡径するテーパ形状が望ましい。また、外筒部材において、内径寸法変化部を挟んで大径部と反対側に位置する部分は、例えば、大径部よりも内径寸法が小さくされて、軸部材との径方向対向面間距離が小さな小径部とされる。更にまた、大径部および小径部は、軸方向に略一定の内径寸法をもって延びる筒形状の他、内径寸法が軸方向に変化したテーパ形状等としても良い。更に、軸部材の形状は、特に限定されるものでなく、一般には外径寸法が一定の中実乃至は中空の円形ロッド形状のもの等が好適に採用されるが、その他、外筒部材の大径部側において該外筒部材との径方向対向面間距離が大きくされ得る限り、軸方向の一部または全部の外周面にテーパを付しても良い。また、装着状態下に軸部材と外筒部材の間に及ぼされる初期荷重としては、被支持体の重量等の静的荷重や常時入力される伝達力等の他、入力される振動荷重に含まれる略一定のバイアス荷重等も該当する。更にまた、筒状ゴム弾性体の内外周面に対する軸部材や外筒部材の固着構造は、特に限定されるものでなく、例えば、加硫接着や後接着等による接着構造の他、直接的乃至は間接的な圧入固着構造等も採用可能である。また、筒状ゴム弾性体を、軸部材と外筒部材を含んで一体加硫成形する場合等においては、筒状ゴム弾性体の耐久性の向上等の目的で、加硫成形後に外筒部材を縮径すること等によって、筒状ゴム弾性体に予圧縮を加えることも可能であるが、そのような予圧縮は、本発明において必ずしも必要でない。
【0012】
また、本発明に係る筒形防振マウントにおいては、外筒部材の内径寸法変化部を、外筒部材の周方向で部分的に位置するように、該外筒部材の周上の一箇所または複数箇所に設けた構成も、好適に採用され得る。このような構成を採用すれば、外筒部材を防振連結すべき部材に取り付けるための取付部の構造等による形状や寸法的な制約や、或いは各軸直角方向での互いに異なるばね特性の要求等に対して、容易に対処することが可能となる。そこにおいて、内径寸法変化部による上述の如き内部応力の緩和的作用は、かかる内径寸法変化部が外筒部材の周上で部分的に形成される場合であっても、有効に発揮され得るのであり、軸部材の外筒部材に対する軸方向変位に起因する筒状ゴム弾性体の高ばね化が効果的に軽減乃至は回避され得る。なお、外筒部材において、内径寸法変化部が形成されていない部分では、例えば、外筒部材の内径寸法が、軸方向の全長に亘って略一定のストレートな内周面形状とされる。また、内径寸法変化部を、外筒部材の周方向で部分的に形成するに際しては、例えば、外筒部材の軸方向一方の端部側部分を、周方向で部分的に小径化する構成の他、外筒部材の軸方向他方の端部側部分を、周方向で部分的に大径化する構成等が、好適に採用される。
【0013】
更にまた、本発明に係る筒形防振マウントにおいては、外筒部材を軸方向中間部分でテーパ状に傾斜せしめて、該テーパ状部分の内周面により、内径寸法変化部を構成する一方、かかる外筒部材を、大径部と反対の軸方向端部で軸方向内方に折り返して外周面に密着して重ね合わせることにより、該大径部と反対の軸方向端部側を内周筒壁と外周筒壁からなる二重筒構造とすると共に、該外周筒壁を、外筒部材におけるテーパ状部分の外周面上で軸直角方向外方に屈曲せしめることにより、該外筒部材の外周面上に広がる取付板部を形成した構成が、好適に採用され得る。このような構成を採用すれば、内径寸法変化部と、外筒部材を防振連結すべき部材に取り付けるための取付板部を、何れも、金属板のプレス加工等によって、外筒部材に対して容易に形成することが出来るのであり、しかも、取付板部の外筒部材からの突出部分に対して、外筒部材のテーパ状部分による補強効果が発揮され得ることから、該取付板部の強度も有利に確保することが出来る。
【0014】
また、本発明に係る筒形防振マウントにおいては、例えば、初期荷重の入力方向において軸部材と外筒部材の相対変位量を制限するストッパ機構が、好適に採用される。かかるストッパ機構を採用することにより、ストッパ機構が作用するまでの軸部材と外筒部材の相対変位の範囲である軸方向の有効ストローク長の全体に亘って、軸方向荷重に対する高ばね化の軽減効果を有効に発揮させることが可能となる。また、過大な振動荷重の入力等による筒状ゴム弾性体の過大な変形が防止されることから、広い軸方向入力荷重範囲に亘って高ばね化を抑えつつ、筒状ゴム弾性体の耐久性も有利に確保可能となる。なお、かかるストッパ機構は、例えば、軸部材の初期荷重による変位方向先端側に対して、径方向外方に広がって外筒部材の軸方向端面に対して軸方向で離間して対向位置するフランジ状部を固設し、それらフランジ状部と外筒部材の軸方向端面との、緩衝ゴムを介しての当接にて、軸部材と外筒部材の相対変位量を制限せしめること等によって、有利に構成される。また、初期荷重の入力方向とは反対方向において軸部材と外筒部材の相対変位量を制限するストッパ機構も、勿論、採用可能である。
【0015】
更にまた、本発明に係る筒形防振マウントにおいては、例えば、筒状ゴム弾性体における初期荷重による軸部材の移動方向後方側の端面において、初期荷重が入力されていない状態下で、軸部材に固着された内周側端部を、外筒部材に固着された外周側端部よりも、軸方向外方に突出して位置せしめることが、望ましい。このような構造とされた筒形防振マウントにあっては、その装着状態下において、筒状ゴム弾性体における初期荷重による軸部材の移動方向後方側端部に生ぜしめられる引張応力が、軽減乃至は防止されるのであり、それによって、耐久性の向上が図られる。特に、筒状ゴム弾性体を軸部材と外筒部材の間で加硫成形した場合でも、外筒部材の縮径加工等による筒状ゴム弾性体への予圧縮を施すことなく、筒状ゴム弾性体の耐久性が一層有利に確保され得る利点がある。なお、筒状ゴム弾性体における初期荷重による軸部材の移動方向後方側の端面の具体的形状としては、かかる端面の全体、或いは内周部分や外周部分等の径方向の一部分を、径方向内方に行くに従って軸方向外方に突出するテーパ状面としたもの等が、有利に採用される。
【0016】
また、前記第二の課題を解決するために、本発明に係る筒形防振マウントにおいては、例えば、筒状ゴム弾性体における初期荷重による軸部材の移動方向前方側端部において、軸方向端面に開口して周方向に連続して延びる凹溝状のすぐり部を設け、(a)該すぐり部の底面における内周側隅部の曲率半径を、外周側隅部の曲率半径よりも小さくした構成と、(b)該すぐり部における軸方向の最深部を、すぐり部における径方向(幅方向)の中心よりも内周側に位置せしめた構成との、少なくとも一方の構成が、好適に採用される。これら(a)と(b)の何れか一方の構成又は両方の構成を備えてなる筒形防振マウントにおいては、筒状ゴム弾性体における軸部材の移動方向前方側端面において、初期荷重の入力方向における大荷重入力や繰返し荷重入力に起因する亀裂が、すぐり部の内周側部分において内周側に向かって延びるように発生し易い。それ故、亀裂が発生した場合でも、亀裂の成長が有利に抑えられて、マウントばね特性への悪影響が抑えられるのであり、所期のばね特性が有効に維持されることにより、結果的に耐久性の向上が達成され得るのである。
【0017】
なお、亀裂の成長を一層有利に抑えるためには、最大引張応力の発生部位となり易い、上記(a)における内周側隅部の中点や上記(b)における最深底部を通り、筒状ゴム弾性体の内部に向かって延びる法線が、出来るだけ径方向内側に向かうように、かかる法線の軸方向線に対する傾斜角度を設定することが有効である。
【0018】
また、前記第二の課題を解決するために、本発明に係る筒形防振マウントにおいては、例えば、筒状ゴム弾性体における初期荷重による軸部材の移動方向前方側端部において、軸方向端面に開口して周方向に連続して延びる凹溝状のすぐり部を設けると共に、(c)初期荷重の入力方向への軸部材の外筒部材に対する軸方向の相対変位により、筒状ゴム弾性体におけるすぐり部の底面の内周側隅部に対して、内周側に向かって成長する亀裂が、優先的に生ぜしめられるようにした構成が、好適に採用される。かくの如き構成(c)を採用した筒形防振マウントにあっては、従来、専ら亀裂の発生を完全に防止することを目的として耐久性の向上が図られていたものと全く異なり、亀裂の発生を許容することを前提とし、亀裂の発生位置と方向を規定することによって、マウント耐久性の向上が図られ得る。即ち、かかる筒形防振マウントにおいては、筒状ゴム弾性体における亀裂が、内周側部分において内周側に向かって延びるように発生せしめられることから、亀裂の成長が軸部材によって防止されると共に、この亀裂によって、筒状ゴム弾性体における他の部分への亀裂の発生も防止されることから、亀裂の発生によるばね特性の低下が軽減されて所期の防振特性が優れた耐久性をもって有利に発揮されるのである。
【0019】
さらに、上記(a),(b),(c)の少なくとも何れか一つの構成に対して、前述の如き、軸方向中間部分に位置する内径寸法変化部と軸方向一方端部に位置する大径部を設けてなる外筒部材の構成を組み合わせて採用すれば、筒状ゴム弾性体に対してすぐり部を形成することによるゴムボリュームの減少が、外筒部材の大径部による筒状ゴム弾性体の大径化によって軽減乃至は回避され得る。それによって、外筒部材の大径部による防振性能の安定効果と、すぐり部による耐久性の向上効果とが、相乗的に発揮されるのである。
【0020】
なお、上記(a),(b),(c)の各構成は、何れも、外筒部材に内径寸法変化部と大径部を設けた構成から切り離して、筒形防振マウントにおいて単独でも認識され、採用され得る。そして、前述の如き筒形防振マウントにおいて、外筒部材に大径部等を設けることなく、筒状ゴム弾性体の軸方向端面にすぐり部を形成すると共に、かかる(a),(b),(c)の少なくとも一つの構成を採用した場合でも、筒状ゴム弾性体に発生する亀裂の成長の抑制による防振性能の安定化や耐久性の向上等といった効果は、有効に発揮され得る。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0022】
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての自動車用のキャブマウント10が示されている。このキャブマウント10は、互いに径方向に離間配置された軸部材としての内筒金具12と外筒部材としての外筒金具14が、それらの間に介装された略厚肉円筒形状を有する筒状ゴム弾性体としての本体ゴム弾性体15によって弾性的に連結されてなる構造を有している。そして、かかるキャブマウント10は、図2に示されているように、外筒金具14がフレーム16に対して、固定ボルト18にて固定される一方、内筒金具12がボデー20に対して、挿通ボルト22にて固定されることにより、フルフレーム形自動車のフレーム16とボデー20の間に介装されて、ボデー20をフレーム16に対して防振支持せしめるようになっている。また、そのような装着状態下、初期荷重としてのボデー20の重量:Pが、内外筒金具12,14間の軸方向に入力されて、内筒金具12が外筒金具14に対して軸方向一方の側(図中、下方)に所定量だけ初期変位せしめられるようになっていると共に、防振すべき主たる振動が、内外筒金具12,14間の略軸方向に入力されるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向を言う。
【0023】
より詳細には、内筒金具12は、軸方向全長に亘って内外径が略一定とされた直管状の小径円筒形状を有しており、軸方向上端部には、外周面上に突出するフランジ状の鍔部24が一体形成されている。更に、鍔部24の軸方向外面には、円環板形状のストッパプレート26が重ね合わされて、鍔部24に対して溶着されることにより、内筒金具12の軸方向上端面において、径方向外方に広がる状態で同軸的に固着されている。
【0024】
そして、かかる内筒金具12は、図2に示されているように、ストッパプレート26側の軸方向上端面が自動車のボデー20の下面に対して密接して重ね合わされ、軸方向に挿通されたロッド状の挿通ボルト22により、該ボデー20に固定されることによって取り付けられるようになっている。また、内筒金具12のボデー20への取付けに際しては、内筒金具12の軸方向下端面に、ストッパプレート26と略同形状のリバウンドストッパプレート27が重ね合わされ、挿通ボルト22によって、軸直角方向に広がる状態で固着されるようになっている。
【0025】
また一方、外筒金具14は、内筒金具12よりも軸方向長さが小さい大径の略円筒形状を有している。外筒金具14の軸方向中間部分には、軸方向下方に行くに従って次第に拡開する中間テーパ筒部28が形成されており、この中間テーパ筒部28を挟んで位置する軸方向上側部分と下側部分が、小径筒部30と大径筒部32とされている。即ち、本実施形態では、外筒金具14の肉厚が、全体に亘って略一定とされており、中間テーパ筒部28によって内径寸法変化部が構成されていると共に、小径筒部30よりも大径筒部32の方が内径寸法が大きくされており、それら小径筒部30および大径筒部32によって、小径部および大径部が構成されている。また、本実施形態では、小径筒部30と大径筒部32の何れも、それぞれ、内径寸法が軸方向全長に亘って略一定とされた直管形状とされている。
【0026】
特に、本実施形態の外筒金具14は、小径筒部30側の端部で折り返されて外周面に密着して重ね合わされることにより、小径筒部30が二重筒構造とされている。また、折り返し側の端部は、中間テーパ筒部28の外周上で径方向外方に広げられており、それによって、複数のボルト挿通孔36を有する平板形状の取付板部34が外筒金具14に一体形成されている。
【0027】
そして、図2に示されているように、取付板部34が自動車のフレーム16に重ね合わされ、ボルト挿通孔36に挿通される固定ボルト18によって、取付板部34がフレーム16に固定されるようになっている。なお、上述の内筒金具12や外筒金具14,ストッパプレート26等は、荷重入力時に実質的に変形しない剛性部材であり、例えば鋼材等によって形成される。
【0028】
そして、外筒金具14は、内筒金具12の軸方向下方に偏倚した軸方向中間部分において、径方向外方に離間して内筒金具12と同軸的に配されており、外筒金具14は、その中間テーパ筒部28と小径筒部30および大径筒部32の何れもが、内筒金具12に対して径方向で対向位置せしめられている。また、かかる配置状態下、内筒金具12と外筒金具14の径方向対向面間に本体ゴム弾性体15が介装されており、本体ゴム弾性体15によって内外筒金具12,14が弾性的に連結されている。かかる本体ゴム弾性体15は、全体として厚肉の略円筒形状を有しており、本実施形態では、内外周面が内外筒金具12,14に対して加硫接着された一体加硫成形品として形成されている。
【0029】
さらに、内筒金具12に固着されたストッパプレート26の下面には、略全面に亘って厚肉の緩衝ゴム37が形成されている。この緩衝ゴム37は、内周部分で本体ゴム弾性体15に連結されて、本体ゴム弾性15と一体形成されており、内筒金具12とストッパプレート26に対して加硫接着されている。そして、外筒金具14の小径筒部30側の開口端部の外径寸法が、ストッパプレート26の外径寸法よりも小径とされており、該外筒金具14の開口端部が、ストッパプレート26上の緩衝ゴム37に対して、軸方向に離間して対向位置せしめられている。そして、この外筒金具14の軸方向上側の開口端部や本体ゴム弾性体15の軸方向上端面が、ストッパプレート26上の緩衝ゴム37に当接することにより、内筒金具12の外筒金具14に対する初期荷重:Pの入力方向(バウンド方向)への相対変位量が制限されるようになっている。
【0030】
なお、外筒金具14の軸方向下端面には、軸方向外方に向かって突出する緩衝ゴム層39が、周方向に連続して設けられている。この緩衝ゴム層39は、本体ゴム弾性体15と一体形成されており、外筒金具14に対して加硫接着されている。そして、かくの如く外筒金具14の下端面に突設された緩衝ゴム層39が、マウントの装着状態下、内筒金具12の軸方向下端部に固着されるリバウンドストッパプレート27に対して、軸方向に離間して対向位置せしめられるようになっている。これにより、内外筒金具12,14間に過大な軸方向の反動荷重(リバウンド荷重)が入力された際、リバウンドストッパプレート27が、外筒金具14の下端面上の緩衝ゴム層39に当接することにより、内筒金具12の外筒金具14に対するリバウンド方向への相対的変位量が制限されるようになっている。
【0031】
ここにおいて、本実施形態では、本体ゴム弾性体15が、内筒金具12と外筒金具14の径方向対向面間の略全体に亘って、即ち実質的に軸方向全長に亘って介在せしめられている。また、本体ゴム弾性体15の軸方向上端面38は、外周縁部よりも内周縁部の方が軸方向外方に突出して位置せしめられており、外筒金具14側から内筒金具12側に向かって、軸方向上方に次第に突出した略テーパ形状乃至は山形状とされている。一方、本体ゴム弾性体15の軸方向下端面には、軸方向下方に開口し、略一定の断面形状をもって周方向に連続して延びる凹溝状のすぐり部としてのすぐり溝40が設けられている。
【0032】
かかるすぐり溝40は、図3に拡大断面図が示されているように、全体として略U字形断面を有しており、その内周側隅部42および外周側隅部44が、何れも略円弧断面形状とされている。しかも、内周側隅部42の曲率半径:R1は、外周側隅部44の曲率半径:R2よりも小さく設定されている。また、すぐり溝40の断面において、外周壁面46は、実質的に全体が、曲率半径:R2の外周側隅部44によって形成されている一方、すぐり溝40の内周壁面48は、曲率半径:R1の内周側隅部42から接線方向に延び出した直線状面によって形成されている。なお、かかる内周壁面48は、マウント中心軸50に対して僅かに傾斜しており、それによって、すぐり溝40が、軸方向下方の開口部に向かって僅かに拡開せしめられている。
【0033】
さらに、すぐり溝40は、その断面形状において、曲率半径:R1の略円弧形状とされた内周側隅部42の中心角:θ1が、曲率半径:R2の略円弧形状とされた外周側隅部44の中心角:θ2よりも大きく、具体的には、θ1>90度>θ2となるように設定されている。また、内周側隅部42と外周側隅部44を接続する底面中央部52は、外周側から内周側に向かって軸方向内方(上方)に傾斜した傾斜面とされている。それによって、すぐり溝40の最深部54が、内周側隅部42の円弧上に位置せしめられて、該最深部54が、すぐり溝40の径方向中心および本体ゴム弾性体15の肉厚中心の何れよりも内周側に位置せしめられており、図3中において、D2>D1とされている。
【0034】
また、本実施形態においては、すぐり溝40の断面形状において、曲率半径:R1の略円弧形状とされた内周側隅部42における中心角:θ1の二等分線56が、内周側隅部42の円弧中心点から本体ゴム弾性体15の内部に向かって径方向内方に傾斜して延び、マウント中心軸50に対して交角:θ0で交差するようにされている。
【0035】
上述の如き構造とされたキャブマウント10においては、図2に示されている如き自動車への装着状態下、内外筒金具12,14間にボデー自重による初期荷重:Pが軸方向に及ぼされて、内筒金具12が外筒金具14に対して軸方向下方に相対変位せしめられると、それに伴って、本体ゴム弾性体15に対して弾性変形が生ぜしめられる。そこにおいて、本体ゴム弾性体15は、主に剪断変形せしめられるが、その際、外筒金具14に対して内筒金具12が軸方向下方に相対変位せしめられることに伴い、本体ゴム弾性15も、全体としてのボリューム的に、外筒金具14に対して軸方向下方に向かって、即ち外筒金具14の小径筒部30から、内外筒金具12,14の径方向対向面間距離がより大きい中間テーパ筒部28、更に大径筒部32へと、相対変位せしめられることとなる。その結果、本体ゴム弾性体15に対する拘束的な作用力等が軽減されて、軸方向の荷重入力に伴う本体ゴム弾性体15における静ばね定数や動ばね定数の上昇等のばね特性の大幅な変化が効果的に軽減乃至は回避されるのであり、初期荷重:Pの入力状況下や、異なる初期荷重:Pが及ぼされた状況下でも、所期の防振性能が有効に安定して発揮され得るのである。
【0036】
なお、本実施形態では、図1に示されているように、外筒金具14における大径筒部32の軸方向長さ:L2が、本体ゴム弾性体15の外周面に接着された外筒金具14の実質的な軸方向全長:L1の略半分か、それよりやや大きく設定されているが、かかるL2/L1の値は、特に限定されるものでなく、本体ゴム弾性体15において許容される軸方向長さや要求される容積,入力荷重等を考慮して決定されるものである。要するに、外筒金具14の中間テーパ筒部28は、本体ゴム弾性体15の軸方向中間部分に位置せしめられて、該本体ゴム弾性体15の外周面に対して、外筒金具14の中間テーパ筒部28と小径筒部30および大径筒部32の何れもが固着されていれば良い。
【0037】
また、かかるキャブマウント10においては、本体ゴム弾性体15の軸方向上端面38が、内周側に行くに従って軸方向外方に突出したテーパ状面とされていることから、初期荷重:Pが入力された際、本体ゴム弾性体15の軸方向上端部には、該軸方向上端面38の表面積が減少するような弾性変形が生ぜしめられる。これにより、本体ゴム弾性体15に対して圧縮変形が有利に生ぜしめられ、引張変形が軽減乃至は防止されることとなり、加硫成形後の予圧縮等を特に必要とすることなく、耐久性が有利に確保され得る。
【0038】
更にまた、本体ゴム弾性体15の軸方向下端面は、剪断歪みが大きくなる傾向にあるが、すぐり溝40によって表面積が拡大されていることにより、発生応力が軽減されて耐久性の向上が図られる。加えて、本体ゴム弾性体15の軸方向下端面は、断面形状において、外周側の広い部分(図3中、D2の部分)が、内周側から外周側に行くに従って軸方向下方に向かって傾斜せしめられていることから、初期荷重:Pが入力された際、本体ゴム弾性体15の軸方向下端部に対しても、軸方向下端面の表面積が減少するような弾性変形が生ぜしめられる。それにより、本体ゴム弾性体15における引張応力の発生が軽減されて、耐久性の確保が図られるのである。
【0039】
しかも、かかるすぐり溝40は、初期荷重:Pの入力に際して、内周隅部42を開かれるように変形せしめられることとなり、内周側隅部42の周上の略中心点上に、積極的な応力集中が発生する。その結果、初期荷重:Pの入力方向に大きな荷重や繰返し荷重が及ぼされることにより、図4に示されている如く、本体ゴム弾性体15には、かかる内周側隅部42の略中心点上に、亀裂58が優先的に発生することとなる。また、この亀裂58は、本体ゴム弾性体15における引張応力に略垂直な方向、即ちすぐり溝40の表面に対して略垂直な方向に発生することから、内周側隅部42の二等分線56に略沿う方向に成長することとなる。
【0040】
それ故、本体ゴム弾性体15の軸方向下端面に発生する亀裂58は、内筒金具12に近い内周部分に発生し、内筒金具12に向かって径方向に傾斜して成長することとなり、その大きな成長が、内筒金具12の存在で防止されることから、亀裂58の本体ゴム弾性体15に対する影響が抑えられ、有効なばね特性が維持され得るのである。加えて、本体ゴム弾性体15の内周部分における亀裂58の発生によって、本体ゴム弾性体15の軸方向下端部における発生応力が逃がされて軽減されることから、他の部位、例えば本体ゴム弾性体15の外周部分等における亀裂の発生が積極的に回避されるのであり、それによって、更なる耐久性の向上が図られ得る。
【0041】
因みに、上述の如き実施形態に従う構造とされたキャブマウント10を実際に試作し、その軸方向における荷重−撓み特性を測定した結果を、図5に示す。また、かかるキャブマウントについて、軸方向荷重(P)を変化させた場合の静ばね定数:Ks の値と、動ばね定数:Kd の値について、それぞれ変化率を測定した結果を、図6に示す。なお、図6中、Kd (1)は、振幅:0.1mm,周波数15Hzの入力振動に対する動ばね定数であり、Kd (2)は、振幅:0.05mm,周波数100Hzの入力振動に対する動ばね定数である。更に、比較例として、図7に示されているように、上述の実施形態のものに比べてすぐり溝40の形状だけが異なるキャブマウント60を試作し、その荷重−撓み特性を測定した結果を、図8に示す。なお、比較例のすぐり溝40は、実施形態のものと逆に、内周側隅部の曲率半径を外周側隅部の曲率半径よりも大きく設定することにより、本体ゴム弾性体15の軸方向下端部を、実質的に、外周部分から径方向内方に行くに従って軸方向外方に突出した形状とした。
【0042】
図5に示された結果から、本実施形態のキャブマウント10においては、バウンドストッパ乃至はリバウンドストッパが作用するまでの有効ストローク範囲:Wの全範囲に亘って、線形的なばね特性が発揮されることが認められる。これに対して、比較例のキャブマウント60では、図8に示されているように、特にバウンド方向において、ストッパが作用するまでのストローク範囲でも、次第にばね特性が上昇していることが明らかに認められ、荷重の大きさによってばね特性が変化してしまうことが明らかである。更に、図6に示された結果から、本実施形態のキャブマウント10においては、軸方向の初期荷重:Pが1000N以上の範囲で変化した場合でも、静ばね定数の上昇が抑えられる結果、動ばね定数の上昇も15%以下に抑えられ、目的とする防振性能が、実質的に何等の支障なく、安定して得られることが明らかである。
【0043】
また、上述の如き本実施形態のキャブマウント10の試作品と、比較例としてのキャブマウント60について、それぞれ、耐久性試験を行って本体ゴム弾性体15の下端部に発生する亀裂について観察したところ、本実施形態のキャブマウント10では、図4に示されている如く、すぐり溝40の内周部分に亀裂58が発生したのに対し、比較例のキャブマウント60では、図7に示されているように、すぐり溝40の略中間部分から亀裂62が発生した。そのために、本実施形態のキャブマウント10における亀裂58よりも、比較例のキャブマウント60における亀裂62の方が、長く成長し、本体ゴム弾性体15の軸方向略中央にまで達した。その結果、本実施形態のキャブマウント10では、亀裂58の発生後も、静ばね定数が初期値の略80%の値を確保し得たのに対し、比較例のキャブマウント60では、亀裂62の発生により、静ばね定数が、初期値の70%以下にまで低下した。このことから、比較例のキャブマウント60では、亀裂58の発生によって、実際の使用に適しない程に特性が大幅に低下してしまうのに対して、本実施形態のキャブマウント10にあっては、亀裂58の発生後も、有効な初期特性が確保され、優れた耐久性が発揮されることが明らかである。
【0044】
次に、図9には、本発明の第二の実施形態としてのキャブマウント70が示されている。なお、本実施形態のキャブマウント70は、第一の実施形態のキャブマウントに比して、すぐり溝40の形態の異なる具体例を例示するものであることから、第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、それぞれ、図中に、第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0045】
すなわち、本実施形態のキャブマウント70にあっては、図10に拡大して示されているように、すぐり溝40の断面形状において、内周側隅部42から接線方向に延びるすぐり溝40の内周壁面48が、内筒金具12の外周面に沿ってマウント中心軸50と略平行に延びる軸方向面とされていると共に、それぞれ略一定の曲率半径:R1′,R2′で円弧状に延びる内周側隅部42と外周側隅部44が、連続的に形成されている。内周側隅部42の曲率半径:R1′は、外周側隅部44の曲率半径:R2′よりも小さく設定されている。また、内周側隅部42の中心角:θ1′が、外周側隅部44の中心角:θ2′よりも小さく設定されており、θ1′<90°<θ2′とされている。
【0046】
これにより、本実施形態のキャブマウント70においては、すぐり溝40の内周側隅部42における円弧の中心点が、第一の実施形態よりも更に内筒金具12に接近して位置せしめられていると共に、かかる中心点から本体ゴム弾性体15の内部に向かって延びる、内周側隅部42の中心角:θ1′の二等分線56が、第一の実施形態よりも更に径方向に大きく傾斜せしめられている。即ち、二等分線56とマウント中心軸50の交角:θ0′が、第一の実施形態における交角:θ0に対して、θ0′>θ0と設定されているのである。
【0047】
このような構造とされた本実施形態のキャブマウント70においては、前記第一の実施形態のものと同様な効果が何れも有効に発揮されることは勿論であり、特に、図9に示されているように、初期荷重等の入力によって本体ゴム弾性体15の軸方向下端部に生ぜしめられる亀裂72が、第一の実施形態のものよりも一層短く抑えられ、それによって、亀裂72の発生に伴う特性の変化がより有利に回避されて、有効な支持性能や防振性能が安定して発揮されるといった利点がある。因みに、本実施形態のキャブマウント70の試作品について、亀裂72の発生に伴う特性変化を実測したところ、亀裂58の発生後も、静ばね定数の初期値の略85%の値を確保し得た。
【0048】
さらに、図11及び図12には、本発明の第三及び第四の実施形態としてのキャブマウント76,78が示されている。これらのキャブマウント76,78は、何れも、外筒金具14が、前記第一及び第二の実施形態としてのキャブマウント10,70と異なる構造とされている。
【0049】
すなわち、これらのキャブマウント76,78においては、何れも、外筒金具14の軸方向上側の筒壁部分80が、周方向において部分的に小径化されている。換言すれば、外筒金具14の軸方向中間部分には、軸方向上方に行くに従って次第に半径寸法が小さくなるテーパ状部82が、周方向で部分的に、且つ周方向に所定長さで形成されている。そして、テーパ状部82が形成されている部分においては、外筒金具14の径寸法が、該テーパ状部82を挟んで軸方向下側に位置する部分と上側に位置する部分で異なっており、以て、大径筒部32と小径筒部30が形成されている。一方、テーパ状部82が形成されていない部分においては、外筒金具14の径寸法が、軸方向全長に亘って一定とされており、本実施形態では、その全長に亘って、大径筒部32と同じ径寸法とされている。
【0050】
なお、図11及び図12において、マウント中心軸50を挟んで両側に位置する左断面図と右断面図は、外筒金具14の異なる形状部分を示すものであって、必ずしも同じ断面を示すものでない。即ち、外筒金具14におけるテーパ状部82と小径筒部30は、周方向に任意の長さで、任意の位置に、任意の数だけ、形成され得る。また、かかる小径筒部30は、マウント中心軸50回りの円弧板形状とする他、外筒金具14の接線方向に延びる平板形状等をもって形成され得る。また、図11及び図12においては、その理解を容易とするために、前記第一及び第二の実施形態に係るキャブマウントと同様な構造とされた部材および部位に対して、それぞれ、図中に、第一及び第二の実施形態に係るキャブマウントと同一の符号を付しておく。
【0051】
このような構造とされたキャブマウント76,78においては、外筒金具14におけるテーパ状部82と小径筒部30が形成された部分で、内外筒金具12,14の径方向対向面間距離、換言すれば本体ゴム弾性体15の径方向肉厚寸法が、軸方向で変化せしめられていることから、かかる部分において、前記第一及び第二の実施形態に係るキャブマウントと同様、軸方向の荷重入力に伴うばね定数の大幅な増大が回避されて、防振性能の安定化が有効に達成され得るのである。
【0052】
しかも、かかるキャブマウント76,78においては、本体ゴム弾性体15の径方向の肉厚寸法が、外筒金具14における小径筒部30の形成部位と非形成部位で異なることから、小径筒部30の形成部位を適当に設定することによって、マウント径方向のばね特性を調節し、異なる径方向で異なるばね特性を容易に付与することが出来る。
【0053】
なお、上記第三及び第四の実施形態に係るキャブマウント76,78においては、外筒金具14の軸方向上側の筒壁部分80が、周方向で部分的に小径化されて、小径筒部30が形成されていたが、それに代えて、外筒金具14の軸方向下側の筒壁部分を、周方向で部分的に大径化することにより、大径筒部32を、周方向で部分的に形成し、テーパ状部82が形成されていない部分においては、外筒金具14の径寸法を、その全長に亘って、小径筒部30と同じ径寸法とすることも可能である。
【0054】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらは文字通りの例示であって、本発明は、これら実施形態の具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
【0055】
例えば、本体ゴム弾性体15の軸方向寸法や径方向寸法の他、すぐり溝40の深さや幅等は、防振マウントの要求特性や入力荷重等を考慮して、適宜に変更設定されるものであって、何等、限定されるものでない。
【0056】
また、前記実施形態では、本発明を自動車用キャブマウントに適用したものの具体例について説明したが、本発明は、その他、自動車用サブフレームマウントやメンバマウント,ボデーマウント等、或いは自動車以外の各種装置に採用される、軸方向に初期荷重が及ぼされる筒形防振マウントに対して、何れも、有効に適用され得る。
【0057】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0058】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた筒形防振マウントにおいては、軸方向の荷重入力に伴うばね定数の上昇等の大幅な特性変化が軽減乃至は防止されるのであり、それによって、異なる初期荷重が及ぼされた状況下でも、目的とする防振性能が有効に安定して発揮され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態としてのキャブマウントを示す縦断面説明図である。
【図2】図1に示されたキャブマウントの自動車への装着状態を示す縦断面説明図である。
【図3】図1に示されたキャブマウントの要部を拡大して示す断面説明図である。
【図4】図1に示されたキャブマウントにおける亀裂の発生状態を示す説明図である。
【図5】図1に示されたキャブマウントにおける荷重−撓み特性の実測値を示すグラフである。
【図6】図1に示されたキャブマウントにおける初期荷重の違いによる特性変化率の実測値を示すグラフである。
【図7】比較例としてのキャブマウントを示す縦断面説明図である。
【図8】図7に示されたキャブマウントにおける荷重−撓み特性の実測値を示すグラフである。
【図9】本発明の第二の実施形態としてのキャブマウントを示す縦断面説明図である。
【図10】図9に示されたキャブマウントの要部を拡大して示す断面説明図である。
【図11】本発明の第三の実施形態としてのキャブマウントを示す縦断面説明図である。
【図12】本発明の第四の実施形態としてのキャブマウントを示す縦断面説明図である。
【符号の説明】
10,60,70,76,78 キャブマウント
12 内筒金具
14 外筒金具
15 本体ゴム弾性体
28 中間テーパ筒部
30 小径筒部
32 大径筒部
40 すぐり溝
42 内周側隅部
44 外周側隅部

Claims (6)

  1. 軸部材と、該軸部材の外周側に離間配置された円筒形状の外筒部材が、それらの軸直角方向対向面間に介装された筒状ゴム弾性体で連結されてなり、装着状態下で、それら軸部材と外筒部材に対して、該軸部材を該外筒部材に対して軸方向一方の側に相対変位せしめる初期荷重が及ぼされる筒形防振マウントにおいて、
    前記外筒部材の軸方向中間部分に内径寸法変化部を設けて、該外筒部材における前記初期荷重による前記軸部材の移動方向先端側の内径寸法を該移動方向先端側とは反対側よりも大きくすることにより、該内径寸法変化部を挟むようにして、該外筒部材の軸方向一端側に、該軸部材との径方向対向面間距離が大きな大径部を形成する一方、該外筒部材の軸方向他端側には、該軸部材との径方向対向面間距離が小さな小径部を形成し、そして、該外筒部材を軸方向中間部分で前記大径部側に向かって次第に拡径するテーパ状に傾斜せしめることによって、該テーパ状部分の内周面により、前記内径寸法変化部を構成し、更に、かかる外筒部材を、前記小径部側の軸方向端部で軸方向内方に折り返して外周面に密着して重ね合わせることにより、該小径部側の軸方向端部側部位を内周筒壁と外周筒壁からなる二重筒構造とすると共に、該外周筒壁を、前記外筒部材における前記テーパ状部分の外周面上で軸直角方向外方に屈曲せしめることにより、該外筒部材の外周面上に広がる取付板部を形成したことを特徴とする筒形防振マウント。
  2. 少なくとも前記初期荷重の入力方向において前記軸部材と前記外筒部材の相対変位量を制限するストッパ機構を設けた請求項1に記載の筒形防振マウント。
  3. 前記筒状ゴム弾性体における前記初期荷重による前記軸部材の移動方向後方側の端面において、該初期荷重が入力されていない状態下で、前記軸部材に固着された内周側端部を、前記外筒部材に固着された外周側端部よりも、軸方向外方に突出して位置せしめた請求項1又は2に記載の筒形防振マウント。
  4. 前記筒状ゴム弾性体における前記初期荷重による前記軸部材の移動方向前方側端部において、軸方向端面に開口して周方向に連続して延びる凹溝状のすぐり部を設けると共に、該すぐり部の底面における内周側隅部の曲率半径を、外周側隅部の曲率半径よりも小さくした請求項1乃至の何れかに記載の筒形防振マウント。
  5. 前記筒状ゴム弾性体における前記初期荷重による前記軸部材の移動方向前方側端部において、軸方向端面に開口して周方向に連続して延びる凹溝状のすぐり部を設けると共に、該すぐり部における軸方向の最深部を、該すぐり部における径方向の中心よりも内周側に位置せしめた請求項1乃至の何れかに記載の筒形防振マウント。
  6. 前記筒状ゴム弾性体における前記初期荷重による前記軸部材の移動方向前方側端部において、軸方向端面に開口して周方向に連続して延びる凹溝状のすぐり部を設けると共に、該初期荷重の入力方向への該軸部材の前記外筒部材に対する軸方向の相対変位により、かかる筒状ゴム弾性体における該すぐり部の底面の内周側隅部に対して、内周側に向かって成長する亀裂が、優先的に生ぜしめられるようにした請求項1乃至の何れかに記載の筒形防振マウント。
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