JP3625217B2 - インクジェット記録シート - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、インクを用いて記録するインクジェット記録シートに関するものであり、特に、印字後のシート表面にうねりが少なく、インクの吸収性に優れ、重色部でのニジミ出しを著しく減少させたインクジェット記録シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像・文字などの記録を行なうものであるが、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像−定着が不要等の特徴があり、漢字を含め各種図形及びカラー画像等の記録装置として種々の用途に於いて急速に普及している。更に、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して、遜色のない記録を得ることが可能である。又、作成部数が少なくて済む用途に於いては、写真技術によるよりも安価であることからフルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
このインクジェット記録方式で使用される記録シートとしては、通常の印刷や筆記に使われる上質紙やコーテッド紙を使うべく、装置やインク組成の面から努力が成されてきた。しかし、装置の高速化・高精細化あるいはフルカラー化などインクジェット記録装置の性能の向上や用途の拡大に伴い、記録シートに対してもより高度な特性が要求されるようになった。即ち、当該記録シートとしては、印字ドットの濃度が高く色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早く印字ドットが重なった場合に於いてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、且つ周辺が滑らかでぼやけないこと等の高い画像再現性が要求される。
【0004】
このような要求に対して、従来からいくつかの提案がなされてきた。例えば支持体表面にシリカ系顔料を主成分とした空隙層となるインク受理層を設けて、インク吸収性を向上させる工夫がなされてきた(特開昭52−9074号公報、同58−72495号公報等)。このインク受理層によってインク吸収性を上げ、高い印字ドット濃度やインク滲みがない印字ドットを得るために、特開昭55−51583号公報及び特開昭56−157号公報には、非膠質シリカ粉末を配合する提案がある。また、色彩性や鮮明性はインク中の染料のインク受理層に於ける分布状態にあることに着目し、染料成分を吸着する特定の剤を用いる提案(特開昭55−144172号公報)もなされてきた。
【0005】
しかし、インク受理層が1〜10g/m2程度の低塗工量の場合は、印字されたインクは、インク受理層のみで受容することが出来ず、支持体にもインク吸収性が必要となる。このことから、支持体は低サイズの特性が必要となるが、低サイズ度の支持体を用いるとインク吸収性は良いものの、インクが支持体の厚さ方向に深く浸透して裏抜けの問題が生じる。さらには、インクが支持体の面方向に拡散して鳥の羽状にギザギザしたフェザリング(Feathering)と呼ばれるドット形状の悪化が生じる。
【0006】
一方、インクの浸透をインク受理層で抑える目的で、塗工量を増やしてインク吸収性を高めると、裏抜けやフェザリングの発生は抑制できるが、インク受理層の接着性低下や粉落ちが生じやすくなる。さらに吸水性を有する支持体表面にインク受理層を設ける塗工工程に於いて、インク受理層塗被組成物中のバインダーや溶媒(主に水)が支持体中に浸透したり、乾燥工程に於いてはインク受理層表面にバインダーが移動したりする。その結果、インク受理層の面方向と厚さ方向のバインダー分布の不均一化が進み、インク吸収も不均一となり、ドット形状が不揃いとなる問題が生じる。また、塗工量が1g/m2未満では、インク受理層の効果が得にくい。
【0007】
また、印字後の記録シート表面にうねりが存在すると、画像再現性に優れても官能的に評価される美観の低下がある。このうねりは、浸透してきたインクによって、支持体層の木材パルプの伸縮に起因した凹凸の発生である。従って、支持体層へのインクの浸透を防止することがうねりを回避する対策となるが、このことは、インク受理層で多量のインクを吸収することと同意であり、インク受理層を増やすと上記した問題の発生がある。
【0008】
また、インク受理層を増やさずに、インクの浸透を抑えることは、インク受理層の空隙量を減らすことと同意となり、その結果、インク受理層の空隙量が減ることによって、インク受理層や支持体へのインクの浸透が遅れ、インクが未乾燥となり、インクが重ねてドット印字される重色部では、ドット周辺にインクが溢れたり、インクジェット記録装置内でのシートの搬送中に、搬送装置周辺の機器と接触して、ドットが擦れ、地汚れと呼ばれるドットの擦れ汚れが発生する。この擦れ汚れが広範囲に発生すると非画線部が汚れて美観を損なうばかりか、極めて狭い範囲であると隣合うドットが接触し合い、ドットの肥大化に伴う鮮明性の低下や混色による色彩性の悪化が生じて、画像再現性を大きく劣ることになる。
【0009】
特に、近年のインクジェット記録装置の高速化によって、インクの浸透の早い特性と印字後のシート表面のうねりが少ない美観に優れた特性が必要となっていが、これら相反した特性を向上させる難しさがある。さらに、インクジェット記録シートに要求される画像品位は益々高くなり、特に鮮明性や色彩性に対する要求レベルは急速に高まっているのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状に鑑み、本発明の目的は、印字後のシート表面のうねりが少なく、インクの吸収性に優れ、重色部でのニジミ出しを著しく減少させたコートタイプインクジェット記録シートを得ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、インクジェット記録シートに用いられる支持体を、金属ロールと合成樹脂ロールから成るカレンダー装置でカレンダー処理することによって達成された。即ち、本発明は、支持体上に、少なくとも1層以上のインク受理層が塗設されたインクジェット記録シートに於いて、主成分として木材パルプと顔料から成る支持体が、少なくとも1ニップの金属ロールと合成樹脂ロールを有するカレンダー装置により線圧150〜250Kg/cmでカレンダー処理され、カレンダー処理後の密度が0.80〜1.00g/cm 3 であるものであり、該合成樹脂ロールが、JIS−Z2246規定のショア硬度で、HsD70〜HsD95にあることを特徴するインクジェット記録シートを提供するものである。
【0012】
インクジェット記録装置にて印字されたインクの浸透が、インク受理層を通して支持体まで達することから、インク吸収性の優れた特性を有する支持体が必要となる。しかし、支持体の厚さ方向に深くインクの浸透が進行すると印字後のうねりの発生があり、また、支持体の面方向に進行するとインク滲みやフェザリングが発生する。このことから、支持体には、インク受理層が設けられる支持体を空隙の大きい緻密な構造にすることが望ましいが、支持体全体を緻密(厚さの減少)にすることは、厚さ方向へのインクの浸透が進行し、裏抜けの問題が発生する。このことから、インク受理層が設けられる支持体表面のみを空隙の大きい緻密な構造とすることが望ましい。
【0013】
本発明に係る支持体を金属ロールと合成樹脂ロールから成るカレンダー装置でカレンダー処理することによって、支持体全体の厚さ減少を抑える一方で、支持体表面のみを緻密にして、本発明の目的である、印字後のシート表面のうねりが少なく、インク吸収性に優れ、重色部でのニジミ出しの少ない良好な画像再現性を有する特性の得られることを見い出した。
【0014】
コートタイプインクジェット記録シートに於いては、インク受理層から支持体までインクの溶媒が浸透するために、支持体中に顔料が存在すると、インク受理層を通して浸透するインク溶媒が支持体中の顔料表面に吸着されたり、木材パルプと顔料で構成される空隙に吸収されるため、インク吸収容量が大きくなり、印字濃度が高く、インク吸収性に優れ、重色部でのニジミ出しの少ない良好な画像再現性を有するインクジェット記録シートが得られる。特に顔料含有量が10重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であると本発明の効果は確実となる。
【0015】
インク受理層の塗工量は特に限定されるものではないが、あまり少ないとノンコートタイプインクジェット記録シートと同様にインクの吸収性は良いものの、画像濃度・色彩性・鮮明性が低く、フェザリングが発生する。また、あまり塗工量が多いと塗工又は含浸後の乾燥工程における乾燥負荷が高まり、塗工又は含浸速度の低下に伴う生産性の低下ばかりでなく、高負荷での乾燥では、インク受理層を構成する塗被組成物中のバインダーが、蒸発する溶媒と共にインク受理層表面に移動して、その表面の空隙量を低下させるために、記録時に地汚れなどの発生がある。塗工量の多いインク受理層で生じる問題は、塗被組成物の濃度や乾燥工程の能力に影響されるが、望ましくは、1〜10g/m2である。また、本発明においては、バックコート層を設けても構わない。バックコート層の塗工量は特に限定されるものではなく、塗工又は含浸する装置や乾燥工程の能力に合わせた選択が望ましい。
【0016】
本発明に係る金属ロールと合成樹脂ロールから成るカレンダー装置は、1ニップ方式や複数のロールを組み合わせてなる多ニップ方式を示すが、少なくとも1ニップ以上の金属ロールと合成樹脂ロールのニップを通したカレンダー処理が必要である。また、インク受理層が設けられる支持体表面をカレンダー処理する際には、金属ロール表面の温度は高い方が良いが、300℃を超えると支持体が焼けて白さを失ったり、斑に焼けたりするため外観が損なわれることから、好ましくは、75〜300℃である。金属ロールには、炭鋼材質が多く使用されるが、特に限定されるものでない。さらには、セラミックやクロム等を溶射して、ロール表面を保護しても構わない。また、合成樹脂ロールの材質としては、ウレタン系、エボナイト系、ナイロン系、アラミド系等の合成樹脂が用いられ、硬度としては、JIS−Z2246規定のショア硬度でHsD70〜HsD95が用いられる。合成樹脂ロールは、中央部が鉄芯、表層部が上記材質の合成樹脂層から構成されるが、合成樹脂層が多層となっていても構わない。
【0017】
本発明に用いられる支持体は、木材パルプと顔料を主成分として構成される。木材パルプとしては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等のパルプを含み、必要に応じて従来公知の顔料やバインダー及びサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を1種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤ抄紙機等の各種装置で支持体の製造が可能であり、酸性、中性、アルカリ性で抄造できる。また、該支持体にそのままインク受理層を設けても良いし、澱粉、ポリビニルアルコール等でのサイズプレスやアンカーコート層を設けた後にインク受理層を設けても良い。
【0018】
また、該支持体は、本発明に係る金属ロールと合成樹脂ロールから成るカレンダー装置をオンマシン処理することが好ましいが、オフマシン処理しても良く、処理後に、さらにマシンカレンダー、スーパーカレンダー等でカレンダー処理を施して平坦性をコントロールしても良いが、インクの浸透を考慮するとカレンダー処理後の密度は、0.80〜1.00g/cm3 である。
【0019】
本発明に用いられる支持体及びインク受理層やバックコート層には、公知の白色顔料を1種以上用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。上記の中でもインク受理層中に主体成分として含有する白色顔料としては多孔性無機顔料が好ましく、多孔性合成非晶質シリカ、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナ等があげられ、特に細孔容積の大きい多孔性合成非晶質シリカが好ましい。
【0020】
また、接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、シリル変性ポリビニルアルコール等;無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体、アクリル酸及びメタクリル酸の重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;或いはこれらの各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂系等の水性接着剤;ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系接着剤が挙げられ、1種以上で使用される。
【0021】
さらに、その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤等を適宜配合することもできる。
【0022】
本発明の支持体に、インク受理層またはバックコート層を塗工及び含浸する方法は、各種ブレードコータ、ロールコータ、エアーナイフコータ、バーコータ、ロッドブレードコータ、ショートドウェルコータ、サイズプレス等の各種装置をオンマシンあるいはオフマシンで用いることができる。また、塗工又は含浸後には、マシンカレンダー、TGカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダーを用いて仕上げても良い。
【0023】
本発明で云うインクとは、下記の着色剤、液媒体、その他の添加剤からなる記録液体である。
着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料或は食品用色素等の水溶性染料が挙げられる。
【0024】
インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、 sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6 −ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個のアルキレングリコール類;グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。その他の添加剤としては、例えば、PH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤、及び防錆剤等が挙げられる。
【0025】
本発明におけるインクジェット記録シートは、インクジェット記録シートとしての使用に留まらず、記録時に液状であるインクを使用するどのような記録シートとして用いてもかまわない。例えば、熱溶融性物質、染顔料などを主成分とする熱溶融性インクを樹脂フィルム、高密度紙、合成紙などの薄い支持体上に塗布したインクシートを、その裏面より加熱し、インクを溶融させて転写する熱転写記録用受像シート、熱溶融性インクを加熱溶融して微小液滴化、飛翔記録するインクジェット記録シート、油溶性染料を溶媒に溶解したインクを用いたインクジェット記録シート、光重合型モノマー及び無色または有色の染顔料を内包したマイクロカプセルを用いた感光感圧型ドナーシートに対応する受像シートなどが挙げられる。
これらの記録シートの共通点は、記録時にインクが液体状態である点である。液状インクは、硬化、固化又は定着までに、記録シートのインク受理層の深さ方向又は水平方向に対して浸透又は拡っていく。上述した各種記録シートは、それぞれの方式に応じた吸収性を必要とするもので、本発明のインクジェット記録シートを上述した各種の記録シートとして利用しても何ら構わない。
更に、複写機・プリンター等に広く使用されている電子写真記録方式のトナーを加熱定着する記録シートとして、本発明におけるインクジェット記録シートを使用しても構わない。
【0026】
【作用】
本発明に係るカレンダー処理に代えて、多段の金属ロールと金属ロールから成るカレンダー装置のみでカレンダー処理を行う際には、印字後のうねりを解消しようとすると支持体の密度上昇があり、インクの裏抜けが発生する。また、コットンロールを合成樹脂ロールに代えてカレンダー処理を行うと、印字前に既にうねりが存在し、さらには、コットンロールの耐久性から、オンマシンで使用することは難しくコスト的に不利になる。これに対して、本発明に係る金属ロールと合成樹脂ロールから成るカレンダー装置によるカレンダー処理では、支持体全体の厚さ減少が少なく、支持体表面が空隙のある緻密な構造となるために、印字後のうねりの発生がなく、インク吸収性に優れ、重色部でのニジミ出しの少ない良好な画像再現性を有する特性を得ることができる。
【0027】
さらに、本発明に係る合成樹脂ロールの硬度が高く、インク受理層が設けられる支持体表面と接触するカレンダー処理時の金属ロールの温度が高いと本発明の効果がいっそう向上する。また、支持体中の顔料含有量が10重量%以上有り、支持体の密度が0.80〜1.00g/cm3となるように、本発明に係るカレンダー装置でカレンダー処理を施したり、その後、金属ロールと金属ロールから成るカレンダー装置でさらにカレンダー処理することも本発明の効果を高める。
【0028】
【実施例】
以下に、本発明の実施例をあげて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。又、実施例に於いて示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り重量部及び重量%を示す。
【0029】
1)支持体中の顔料含有量
支持体の絶乾重量W0を秤量し、ルツボに秤量した支持体を入れ、温度550℃で燃焼させて、ルツボ中の残物の重量Wを秤量後、下記数1で顔料含有量Pを算出した。単位は[%]である。
【0030】
【数1】
P=(W/W0)×100 [%]
【0031】
2)印字ドット径
印字ドット径は、シャープ製(IO−720)インクジェットプリンターにより、マゼンタインク単色、及びシアンインク+マゼンタインク重色で網点を印字して得たドットについて、画像解析装置を用いて、下記数2で示される計算式にしたがってドットの円相当径について算出した。
【0032】
【数2】
HD={(4/π)×A}1/2
なお、HDは、円相当径(Heywood Diameter:単位μm)、Aは、実測面積(単位:μm2)を示す。
【0033】
3)重色にじみ率
重色にじみ率は、マゼンタインク単色ドット径(M)と、シアンインクとマゼンタインクの重色ドット径(CM)の比(CM/M)で、良否を判定した。CM/M値が1.0以上となり、1.0に近い値が、単色ドットと重色ドットの径がより等しく、鮮明性と色彩性が高く、近年高まっている画像品位レベルの確保が可能となる。
【0034】
4)うねり
うねりは印字後のシート面を目視で判定した。品質上問題とならないのは、A及びBの評価である。
A:うねりは判らず、美観を損なわない。
B:うねりは小さく、美観を損なうことはない。
C:うねりは大きく、美観が損なわれる。
【0035】
5)裏抜け
裏抜けは、シャープ製(IO−720)インクジェットプリンターを用いて、青印字(シアン+マゼンタ)の重色ベタ印字を行い、記録画像の裏面側からマゼンタの光学濃度を測定した。光学濃度が0.25以下であれば実使用上特に問題ではないが、0.25を超えると裏側に抜けていることが明確となり実使用上問題となる。
【0036】
実施例1〜4
支持体は、LBKP(濾水度400mlcsf)80部とNBKP(濾水度480mlcsf)20部から成る木材パルプ100部に対して、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウム/タルクの比率が30/35/35の顔料30部、市販アルキルケテンダイマー0.10部、市販のカチオン系アクリルアミド0.05部及び市販カチオン化澱粉1.0部、硫酸バンド0.5部を調整後、長網抄紙機で抄造し、坪量90g/m2、顔料含有量21.3%の支持体を得た。抄造後、表1で示すカレンダー装置を用いて、インク受理層が設けられる支持体面を表1に示す線圧及び表面温度の金属ロールと接触させ、カレンダー処理を行った。
【0037】
インク受理層は、合成非晶質シリカ(ファンシールX37B:徳山曹達社製)100部、ポリビニルアルコール(PVA117:クラレ社製)50部、カチオン性染料定着剤(スミレーズレジン1001:住友化学工業社製)20部を調液し、固形分濃度13%で、エアーナイフコータにより塗工量5g/m2となるように支持体表面に塗工した。さらに、インク受理層の設けられた反対面に、バックコート層を設けた。バックコート層は、カオリン(ハイドラスパース:Huber社製)100部とポリビニルアルコール(Rポリマー1130:クラレ社製)5部及びスチレン・ブタジエン系ラテックス(0617:日本合成ゴム社製)15部を調液し、固形分濃度35%で、エアーナイフコータにより塗工量5g/m2となるようにインク受理層の反対面に塗工した。乾燥後、カレンダー処理を行い、実施例1〜4のインクジェット記録シートを得た。
【0038】
実施例5
実施例1〜4と同じ条件で抄造された支持体を、実施例3と同じ条件でカレンダー処理を2回行った。その後、実施例1〜4と同じ条件でインク受理層、バックコート層を設けてカレンダー処理を行い、実施例5のインクジェット記録シートを得た。
【0039】
実施例6
実施例1〜4と同じ条件で抄造された支持体を、実施例3と同じ条件でカレンダー処理を1回行った後、金属ロールと金属ロールから成るカレンダー装置を用いて、線圧50kg/cmの条件で連続に4回(ニップ数4)カレンダー処理を行った。その後、実施例1〜4と同じ条件でインク受理層、バックコート層を設けてカレンダー処理を行い、実施例6のインクジェット記録シートを得た。
【0040】
比較例1
実施例1〜4と同じ条件で抄造された支持体をカレンダー処理せず、実施例1〜4と同じ条件でインク受理層、バックコート層を設けてカレンダー処理を行い、比較例1のインクジェット記録シートを得た。
【0041】
比較例2
実施例1〜4と同じ条件で抄造された支持体を、金属ロールと金属ロールから成るカレンダー装置を用いて、線圧150kg/cmの条件で連続に4回(ニップ数4)カレンダー処理を行った。その後、実施例1〜4と同じ条件でインク受理層、バックコート層を設けてカレンダー処理を行い、比較例2のインクジェット記録シートを得た。
【0042】
比較例3
実施例1〜4と同じ条件で抄造された支持体を、コットンロールと金属ロールから成るカレンダー装置を用いて、線圧200kg/cmの条件で連続に4回(ニップ数4)カレンダー処理を行った。その後、実施例1〜4と同じ条件でインク受理層、バックコート層を設けてカレンダー処理を行い、比較例2のインクジェット記録シートを得た。
【0043】
上記により作製したインクジェット記録シートに使用した支持体のカレンダー処理条件を表1に示す。
なお、表1中の注意書きした*1は、次のとおりである。
*1:インク受理層が塗設される支持体表面の反対面と接触するロールの種類を表1に記載した。ここで、樹脂ロールは、合成樹脂ロールを指し、()内はショア硬度を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
実施例1〜6より明らかなように、金属ロールと合成樹脂ロールから成るカレンダー装置を用いてカレンダー処理を施すと、印字ドット径と重色にじみ率より、ドットの肥大がなく鮮明性に優れ、色彩性も良好であることが判る。また、金属ロールと合成樹脂ロールから成るカレンダー装置でのカレンダー処理を2回施した実施例5から、大幅な密度上昇なしにドット径や重色にじみ率の減少を図ることの可能であることが判る。さらに、金属ロールと金属ロールのカレンダー装置によるカレンダー処理前に、本発明に係る金属ロールと合成樹脂ロールのカレンダー装置を適用した実施例6は、金属ロールと金属ロールのカレンダー装置のみを適用した比較例2と比較して、同密度でありながら、鮮明性や色彩性に優れることが判る。
【0047】
また、比較例1、3から、支持体をカレンダー処理しない場合やコットンロールを適用したカレンダー処理では、うねりの問題とインク滲みを回避することは難しいことが判る。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、印字後のシート表面のうねりの発生がなく、インク吸収性に優れ、重色部でのニジミ出しの少ない良好な画像再現性を有するインクジェット記録シートを得ることができる。
Claims (4)
- 支持体上に、少なくとも1層以上のインク受理層が塗設されたインクジェット記録シートに於いて、主成分として木材パルプと顔料から成る支持体が、少なくとも1ニップの金属ロールと合成樹脂ロールを有するカレンダー装置により線圧150〜250Kg/cmでカレンダー処理され、カレンダー処理後の密度が0.80〜1.00g/cm 3 であるものであり、該合成樹脂ロールが、JIS−Z2246規定のショア硬度で、HsD70〜HsD95にあることを特徴するインクジェット記録シート。
- 支持体が、金属ロールと合成樹脂ロールによるカレンダー処理後に、金属ロールと金属ロールから成るカレンダー装置によりカレンダー処理されたものであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録シート。
- 支持体が、インク受理層の塗設される側の支持体表面を表面温度75〜300℃の金属ロールでカレンダー処理されたものであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録シート。
- 支持体が、該支持体中に10重量%以上の顔料を含有するものであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録シート。
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