JP3620568B2 - 希薄燃焼内燃機関 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、希薄燃焼内燃機関に係り、詳しくは、リッチ空燃比運転時において燃料蒸散ガスを吸気通路にパージする技術に関する。
【0002】
【関連する背景技術】
近年、空燃比を理論空燃比(値14.7)よりも希薄側のリーン空燃比に制御可能なリーンバーンエンジン(希薄燃焼内燃機関)が開発され実用化されている。
ところが、このように空燃比をリーン空燃比とすると、従来の三元触媒ではその浄化特性から排ガス中のNOxを充分に浄化できないという問題があり、最近では、リーン空燃比においてもNOxの浄化を可能とした吸蔵型NOx触媒が開発され実用化されている。
【0003】
吸蔵型NOx触媒は、酸素過剰状態(酸化雰囲気)において排ガス中のNOxを硝酸塩X−NO3として付着させ吸蔵し、該吸蔵したNOxをCO(一酸化炭素)過剰状態(還元雰囲気)でN2(窒素)に還元させる特性(同時に炭酸塩X−CO3が生成される)を有した触媒として構成されている。
従って、吸蔵型NOx触媒を備えたリーンバーンエンジンでは、通常、吸蔵型NOx触媒のNOx吸蔵量が飽和する前に空燃比を理論空燃比またはその近傍値に制御するようなリッチ空燃比運転に定期的に切換え(これをリッチスパイクという)、これにより、COの多い還元雰囲気を生成し、吸蔵したNOxを浄化還元(NOx放出)して吸蔵型NOx触媒の再生を図るようにしている。
【0004】
また、吸蔵型NOx触媒には燃料中のS成分(硫黄成分)が酸化されたSOx(硫黄酸化物)についても硫酸塩として図らずも吸蔵されてしまうため、当該硫酸塩についても、吸蔵型NOx触媒を高温状態とし且つ上記同様にリッチ空燃比運転を定期的に実施して還元雰囲気を生成し除去(S放出)することで吸蔵型NOx触媒の再生を図る必要がある。
【0005】
ところで、このようなリッチ空燃比運転は、燃料噴射量を一時的に増加させるようなものであるため、燃費の悪化を招くという問題がある。
そこで、燃料タンク内に発生する燃料蒸散ガスに着目し、吸蔵型NOx触媒の浄化効率が低下してリッチ空燃比運転の実施が要求された際に当該燃料蒸散ガスを積極的に吸気通路に導入(パージ)するようにして燃焼に寄与させる技術が特開平6−173660号公報等に開示されている。これにより、燃料蒸散ガスを有効に処理でき且つNOx放出処理の際の燃費の悪化が改善可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記公報に開示された技術では、リッチ空燃比運転を実施するときに燃料噴射量は変化させずに燃料蒸散ガスを単純に吸気通路内に導入(パージ)させるのみであり、その燃料蒸散ガスの量については一切把握されていない。つまり、上記公報に開示された技術では、燃料蒸散ガスのパージ時における空燃比を適切な値に管理できないことになる。
【0007】
従って、当該技術では、例えば、外気温(燃料温度)が低く燃料蒸散ガスの発生量が少ないような場合、即ち燃料蒸散ガスを一時的に貯留しておくキャニスタ内に燃料蒸散ガスが少ない場合には、燃料蒸散ガスをパージしたとしても空燃比を十分にリッチ化できずNOx放出或いはS放出を実施できない虞があり、一方、外気温(燃料温度)が高く燃料蒸散ガスの発生量が極めて多いような場合には、燃料蒸散ガスのパージ量が過剰となり空燃比がオーバリッチ化して失火の原因となる虞があり好ましいことではない。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、リッチ空燃比運転時に、燃料蒸散ガスを有効に燃焼に寄与させながら空燃比を適正に保持でき、燃費の悪化を防止可能な希薄燃焼内燃機関を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1の発明では、吸蔵型NOx触媒を備えた希薄燃焼内燃機関において、吸蔵型NOx触媒の排ガス浄化能力の悪化が判別されると、蒸散ガス導入手段によって燃料タンク内に発生した燃料蒸散ガスが吸気通路に導入されることになるが、このとき、燃料の温度に応じて燃料蒸散ガスの導入量が判断され、該燃料蒸散ガスの導入量に応じた分だけ燃料噴射量が補正されるとともに、ブローバイガス導入手段によるブローバイガスの導入量に応じた分だけ燃料噴射量が補正されるようにされている。
【0010】
従って、リッチ空燃比運転時において燃料蒸散ガスとブローバイガスとが有効に使用されるとともに、空燃比が常に適正なリッチ空燃比に保持されるよう燃料噴射量が制御されることになり、燃費の悪化を抑制しながら触媒の再生(NOx放出或いはS放出)が確実に実施されることになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
先ず、実施例1について説明する。
図1を参照すると、車両に搭載された本発明に係る希薄燃焼内燃機関の概略構成図が示されており、以下同図に基づいて本発明に係る希薄燃焼内燃機関の構成を説明する。
【0012】
内燃機関本体(以下、単にエンジンという)1は、例えば、燃料噴射モード(運転モード)を切換えることで吸気行程での燃料噴射(吸気行程噴射モード)または圧縮行程での燃料噴射(圧縮行程噴射モード)を実施可能な筒内噴射型火花点火式直列4気筒ガソリンエンジンとされている。そして、この筒内噴射型のエンジン1は、容易にして理論空燃比(ストイキオ)での運転やリッチ空燃比での運転(リッチ空燃比運転)の他、リーン空燃比での運転(リーン空燃比運転)が実現可能とされており、特に圧縮行程噴射モードでは、超リーン空燃比での運転が可能とされている。
【0013】
同図に示すように、エンジン1のシリンダヘッド2には、各気筒毎に点火プラグ4とともに電磁式の燃料噴射弁6が取り付けられており、これにより、燃焼室8内に燃料を直接噴射可能とされている。
燃料噴射弁6には、燃料パイプ7を介して燃料タンク52が接続されており、該燃料パイプ7には燃料供給装置50が介装されている。より詳しくは、燃料供給装置50には、低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプとが設けられており(共に図示せず)、これにより、燃料タンク52内の燃料を燃料噴射弁6に対し低燃圧或いは高燃圧で供給し、該燃料を燃料噴射弁6から燃焼室8内に向けて所望の燃圧で噴射可能とされている。この際、燃料噴射量は高圧燃料ポンプの燃料吐出圧と燃料噴射弁6の開弁時間、即ち燃料噴射時間とから決定される。
【0014】
シリンダヘッド2には、各気筒毎に略直立方向に吸気ポートが形成されており、各吸気ポートと連通するようにして吸気マニホールド10の一端がそれぞれ接続されている。そして、吸気マニホールド10の他端にはスロットル弁11が接続されており、該スロットル弁11にはスロットル開度θthを検出するスロットルセンサ11aが設けられている。
【0015】
また、上記燃料タンク52の上部からはパージ管54が延びており、その先端は吸気マニホールド10に接続されている。これにより、燃料タンク52の内部に発生した燃料蒸散ガス(以下、単に蒸散ガスという)が吸気マニホールド10内の吸気通路に送給可能とされ、当該蒸散ガスをも燃焼に寄与させることが可能とされている。詳しくは、パージ管54には蒸散ガスを一時的に活性炭層57に吸着させ貯留するキャニスタ56が介装されており、さらに、キャニスタ56と吸気マニホールド10との間には、パージ管54内を流れる蒸散ガスの流量を調節する電磁弁(パージソレノイドバルブ)58が介装されている(蒸散ガス導入手段)。
【0016】
そして、燃料タンク52には、内部に延びるようにして燃料温度を計測する燃温センサ(燃料温度検出手段)53が設けられている。
さらに、シリンダヘッド2には、各気筒毎に略水平方向に排気ポートが形成されており、各排気ポートと連通するようにして排気マニホールド12の一端がそれぞれ接続されている。
【0017】
図中符号13は、クランク角を検出するクランク角センサであり、該クランク角センサ13はエンジン回転速度Neを検出可能とされている。
なお、当該筒内噴射型のエンジン1は既に公知のものであり、その構成の詳細についてはここでは説明を省略する。
同図に示すように、排気マニホールド12には排気管(排気通路)14が接続されており、この排気管14にはエンジン1に近接した小型の近接三元触媒20及び排気浄化触媒装置30を介してマフラー(図示せず)が接続されている。
【0018】
また、排気管14には排気中の酸素濃度を検知することで空燃比を検出可能なO2センサ(空燃比センサ)15が設けられており、さらに、排気温度を検出する高温センサ16が設けられている。
排気浄化触媒装置30は、吸蔵型NOx触媒30aと三元触媒30bとの2つの触媒を備えて構成されており、三元触媒30bの方が吸蔵型NOx触媒30aよりも下流側に配設されている。
【0019】
吸蔵型NOx触媒30aは、酸化雰囲気においてNOxを一旦吸蔵させ、主としてCOの存在する還元雰囲気中においてNOxをN2(窒素)等に還元させる機能を持つものである。詳しくは、吸蔵型NOx触媒30aは、貴金属として白金(Pt),ロジウム(Rh)等を有した触媒として構成されており、吸蔵材としてはバリウム(Ba)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属が採用されている。
【0020】
また、吸蔵型NOx触媒30aと三元触媒30bとの間にはNOx濃度を検出するNOxセンサ32が設けられている。
さらに、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU(電子コントロールユニット)40が設置されている。
【0021】
ECU40の入力側には、上述したスロットルセンサ11a、O2センサ15、高温センサ16や燃温センサ53等の各種センサ類が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力する。
一方、ECU40の出力側には、上述した点火プラグ4が点火コイルを介して接続されるとともに燃料噴射弁6やパージソレノイドバルブ58等が接続されており、これら燃料噴射弁6、点火コイル、パージソレノイドバルブ58等には、各種センサ類からの検出情報に基づき演算された燃料噴射量、点火時期、開弁量等の最適値がそれぞれ出力される。つまり、各種センサ類からの入力値に基づいて燃料噴射弁6から適正量の燃料が適正なタイミングで噴射されるとともに点火プラグ4によって適正なタイミングで点火が実施され、適正量の蒸散ガスが適正なタイミングで吸気通路に供給される。
【0022】
詳しくは、ECU40では、常時、スロットルセンサ11aからのスロットル開度情報θthとクランク角センサ13からのエンジン回転速度情報Neとに基づいてエンジン負荷に対応する目標筒内圧、即ち目標平均有効圧Peを求めるようにしており、当該目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに基づいて各種制御が行われる。
【0023】
先ず、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとからは燃料噴射モードが設定される。実際には、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに基づいて予め燃料噴射モード設定マップ(図示せず)が設定されており、燃料噴射モードは当該燃料噴射モード設定マップから読み出される。例えば、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとが共に小さいときには、燃料噴射モードは圧縮行程噴射モードとされ、燃料は圧縮行程で噴射され、一方、目標平均有効圧Peが大きくなり或いはエンジン回転速度Neが大きくなると燃料噴射モードは吸気行程噴射モードとされ、燃料は吸気行程で噴射される。
【0024】
さらに、これら目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとに基づいて予め目標空燃比(目標A/F)がマップ化されており、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとに応じて目標A/Fが設定され、該目標A/Fに基づいて燃料噴射量等が決定される。即ち、目標A/Fに基づいて、エンジン1の運転状態がリーン空燃比運転、リッチ空燃比運転或いはストイキオでの運転のいずれかに切り換えられる。
【0025】
また、上記高温センサ16により検出された排気温度情報からは触媒温度Tcatが推定される。詳しくは、高温センサ16と吸蔵型NOx触媒30aが離れて設置されていることによる誤差を補正するために、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに応じて予め実験等により温度差マップ(図示せず)が設定されており、故に触媒温度Tcatは、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとが決まると一義に推定されるようにされている。
【0026】
以下、このように構成された本発明に係る希薄燃焼内燃機関の作用について説明する。つまり、排気通路内の空燃比がリッチ空燃比(還元雰囲気)となるよう目標A/Fをリッチ空燃比として吸蔵型NOx触媒30aに吸蔵されたNOxやSOxを除去(NOx放出、S放出)する制御、即ちリッチ空燃比運転制御(触媒再生手段)の制御手順について説明する。
【0027】
図2を参照すると、リッチ空燃比運転制御ルーチンのフローチャートが示されており、以下当該フローチャートに沿って説明する。
先ず、ステップS10では、リッチ空燃比運転が必要か否かを判別する。つまり、リーン空燃比運転が所定時間以上継続し、吸蔵型NOx触媒30aに吸蔵されたNOxの量が飽和状態に近くなり触媒の浄化能力が低下しNOx放出が必要になったか、或いは燃料噴射弁6からの燃料噴射量の積算値が所定値以上となり吸蔵型NOx触媒30aに吸蔵されたSOxが所定量に達し、即ち触媒がS成分により被毒されて浄化能力が低下しS放出が必要になったか否かを判別する(判別手段)。
【0028】
ステップS10の判別結果が偽(No)でリッチ空燃比運転が必要でない場合には、何もせずに当該ルーチンを抜ける。
一方、ステップS10の判別結果が真(Yes)で、NOx放出或いはS放出が必要とされ、吸蔵型NOx触媒30aの浄化能力を回復(再生)させるためのリッチ空燃比運転が必要と判定された場合には、リッチ空燃比運転を開始する。
【0029】
ところで、当該筒内噴射型のエンジン1では、上述したように目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに基づき圧縮行程噴射モード及び吸気行程噴射モードのいずれか一方が選択されるが、実際には圧縮行程噴射モードでは空燃比のリッチ化には限界があり、つまり空燃比の下限がリーン空燃比の範囲にある値24であり、リッチ空燃比運転はできない。故に、リッチ空燃比運転を行う際には、通常は燃料噴射モードは吸気行程噴射モードとされる。
【0030】
但し、当該筒内噴射型のエンジン1では、燃料噴射を2回に分割し、全体空燃比をリッチ空燃比としながら2回目の噴射(副噴射)を膨張行程で行うような2段噴射によってリッチ空燃比運転を実施することもできる。この際、膨張行程での副噴射量を多く設定した場合には、1回目の噴射(主噴射)による燃料噴射量を少なく設定することになる。故に、当該2段噴射を実施した場合には、当該主噴射の燃料噴射モードを圧縮行程噴射モードとすることも可能である。
【0031】
ステップS12では、蒸散ガスのパージを行う。つまり、リッチ空燃比運転が要求されたら、先ず、パージソレノイドバルブ58を開弁し、燃料タンク52内で発生しキャニスタ56に貯留された蒸散ガスを吸気通路に供給(パージ)するようにする。
詳しくは、パージソレノイドバルブ58の開弁量は、上述の目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに応じてデューティ制御される。つまり、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに基づいてパージソレノイドバルブ58のデューティ率がマップとして設定されており、該マップからデューティ率が読み出されてデューティ制御が実施される。
【0032】
例えば、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとが小さい場合には、吸気管負圧が大きいとみなすことができ、この場合にはデューティ率は小さくされ、故にパージソレノイドバルブ58の開弁量は小さくされ、蒸散ガスが一気に吸気通路に流入しないようにされる。一方、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとが大きい場合には、吸気管負圧は小さいとみなせ、この場合にはデューティ率は大きくされてパージソレノイドバルブ58の開弁量は大きくされ、蒸散ガスが吸気通路に流入し易くされる。
【0033】
なお、ここでは目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに基づいて吸気管負圧を推定し、該推定値に基づいてパージソレノイドバルブ58の開弁量を調節するようにしたが、スロットル開度θthから吸気管負圧を推定してもよい。或いは、吸気マニホールド10に負圧センサを設けるようにして直接吸気管負圧を求め、当該吸気管負圧情報に基づいて開弁量を調節するようにしてもよい。
【0034】
このように蒸散ガスのパージをリッチ空燃比運転時に行うようにすると、一般には燃料噴射量を増量して空燃比をリッチ化すると燃費が悪化することになるのであるが、蒸散ガスが当該空燃比のリッチ化に有効に使用され、当該燃費の悪化が好適に防止されることになる。
そして、次のステップS14では、蒸散ガスパージに基づいて燃料噴射量を算出する。つまり、燃料噴射量を蒸散ガスのパージ量を考慮して決定する。ここでは、次式(1)より燃料噴射量に対応する燃料噴射弁6の開弁時間Tinjを算出する。
【0035】
Tinj=TB・Kspk・Kprg・Kelse …(1)
ここに、TBは燃料噴射弁6の基本開弁時間であり、上記目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとに基づき決定された目標A/Fに対応する量の燃料を噴射可能な時間を意味している。
Kspkは、蒸散ガスのパージを実施しない状態、即ち通常の燃料噴射のみでリッチ空燃比運転を行う場合に、開弁時間Tinjを所定のリッチ空燃比(例えば、値12)に対応した時間にするためのリッチ化補正係数である。なお、この場合、基本開弁時間TBが目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとに応じたものであることから、当該Kspkも目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neに応じてマップより設定される。
【0036】
Kprgは蒸散ガスのパージ量に応じたパージ補正係数であり、該パージ補正係数Kprgによって燃料噴射弁6の燃料噴射量が補正される。詳しくは、蒸散ガスのパージ量が多ければ、燃料噴射量は少なくて良いと判断でき、この場合にはパージ補正係数Kprg(0≦Kprg≦1)は小さな値とされ、開弁時間Tinjは短くされる。一方、蒸散ガスのパージ量が少なければ、燃料噴射量を多くする必要があると判断でき、この場合にはパージ補正係数Kprgは大きな値、つまり値1に近い値とされ、開弁時間Tinjは蒸散ガスのパージが無い場合に近いものとされる。つまり、蒸散ガスのパージ量が多いときには、当該パージ量を見込んで目標A/Fを上記所定のリッチ空燃比(例えば、値12)よりもリーン空燃比寄りに設定する。
【0037】
実際には、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに応じてパージソレノイドバルブ58の開弁量がデューティ制御され、これにより蒸散ガスのパージ量が決定されることから、パージ補正係数Kprgは、当該開弁量に合わせ、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに応じてマップより設定される。なお、この場合にも、上記同様、吸気マニホールド10に負圧センサを設けて直接吸気管負圧を求め、該吸気管負圧情報に基づいてパージ補正係数Kprgを設定するようにしてもよい。
【0038】
また、燃料タンク52内での蒸散ガス発生量は燃料温度に関係するので、燃温センサ53により検出される燃料温度を加味してパージ補正係数Kprgを設定してもよい。つまり、燃料温度が高いときには蒸散ガスがキャニスタ56に多量に貯留されており、蒸散ガスのパージ量は多いと判断でき、この場合にはパージ補正係数Kprgをより一層小さな値としてもよい。実際には、目標平均有効圧Pe、エンジン回転速度情報Ne及び燃料温度に基づいてパージ補正係数Kprgを3次元マップとして設定しておき、該3次元マップよりパージ補正係数Kprgを読み出すようにする。
【0039】
なお、燃料温度は外気温との相関性が高いことから、燃料温度に代えて外気温や吸気温を加味してパージ補正係数Kprgを設定してもよい。
そして、ステップS16において、このように算出された開弁時間Tinjに基づいて燃料噴射を行う。
ステップS18では、当該リッチ空燃比運転制御が開始されてから所定時間tpが経過したか否かを判別する。そして、判別結果が偽(No)で、未だ所定時間tpが経過していないと判定された場合には、当該リッチ空燃比運転制御を継続する。一方、判別結果が真(Yes)で、所定時間tpが経過したと判定された場合には、リッチ空燃比運転制御を終了すべく当該ルーチンを抜ける。
【0040】
以上のように、本発明の希薄燃焼内燃機関では、NOx放出やS放出のためにリッチ空燃比運転を行う際に燃料タンク52内で発生しキャニスタ56に貯蔵された蒸散ガスをパージさせ、これにより蒸散ガスを空燃比のリッチ化に寄与させるようにしており、このとき、さらに、燃料噴射弁6から噴射される燃料噴射量を、蒸散ガス量を考慮し、当該蒸散ガス量分を減量させて設定するようにしている。
【0041】
従って、本発明の希薄燃焼内燃機関では、キャニスタ56に貯蔵された蒸散ガスをリッチ空燃比運転時に有効に使用することができるのみならず、空燃比を適正にリッチ空燃比に保持できるとともに、燃料噴射弁6の燃料噴射量を必要な量に抑えるようにして燃費の悪化をも好適に防止することができることとなる。
次に、実施例2について説明する。
【0042】
当該実施例2は、上記実施例1に対し開弁時間Tinjの算出方法を変更したものであり、故に、ここでは上記実施例1と異なる開弁時間Tinjの算出方法について説明する。
実施例2では、先ず、所定のリッチ空燃比(例えば、値12)に対応する開弁時間Toを次式(2)より求める。
【0043】
To=TB・Kspk・Kelse …(2)
ここに、TB、Kspk、Kelseはそれぞれ上述したとおりである。
そして、次式(3)より最終的に開弁時間Tinjを求めるようにする。
Tinj=To−Kt・P1 …(3)
ここに、Ktは蒸散ガスのパージ量を開弁時間Tinjに変換する変換係数(吸気管負圧とP1に対するマップ)であり、P1は1行程間の蒸散ガスパージ量であって、次式(4)により計算される。
【0044】
P1=P2・(1行程間におけるパージソレノイドバルブの開弁時間) …(4)ここに、P2は単位時間当たりの蒸散ガスパージ量である。詳しくは、当該P2は、キャニスタ56に吸着した蒸散ガスの吸着量P3とスロットル開度θthに基づいて予め設定されマップ化されており、該マップから読み取られる。なお、吸気マニホールド10に負圧センサを設けた場合には、スロットル開度θthに代えて吸気管負圧情報と蒸散ガスの吸着量P3とに基づいてP2を求めることもできる。
【0045】
蒸散ガスの吸着量P3は次式(5)から算出される。
P3=P4−P1(n−1)+P3(n−1) …(5)
ここに、P4はキャニスタ56に流入する蒸散ガス量であり、つまり、蒸散ガスの吸着量P3はキャニスタ56に流入する蒸散ガス量P4とキャニスタ56から流出する蒸散ガス量P1との差及び前回の蒸散ガスの吸着量P3(n−1)(前行程でパージされなかった残りの蒸散ガス)の和として容易に求められる。
【0046】
そして、キャニスタ56に流入する蒸散ガス量P4は、次式(6)により計算される。
P4=P5・(燃料タンクの空間容積)・(1行程間の時間) …(6)
ここに、P5は単位容積、単位時間当たりの燃料タンク52内で発生する蒸散ガスの発生量を示している。当該単位容積、単位時間当たりの蒸散ガスの発生量P5は、燃料温度との相関性が高く、故に燃料温度に基づいて予め設定されマップ化されており、該マップより読み出される。なお、上述したように、燃料温度は外気温や吸気温に置き換えてもよい。また、燃料タンクの空間容積は、燃料タンク容積と燃料残量の差として求められる。
【0047】
つまり、当該実施例2によれば、燃焼に寄与する蒸散ガス量、即ち蒸散ガスパージ量P1がより正確に求められることになる。従って、当該実施例2の場合、燃料噴射弁6の燃料噴射量をより一層適正な量に抑えるようにでき、空燃比をより適正なものに保持しながら燃費の悪化をさらに好適に防止することができることとなる。
【0048】
次に、実施例3について説明する。
上記実施例1及び実施例2では、制御をオープンループ制御としたが、当該実施例3では、空燃比フィードバック制御を実施した場合について説明する。
即ち、実施例3では、図3に示すように、上記図2中のステップS14の代わりに、燃料噴射量A/F−F/B制御、即ち空燃比フィードバック制御(ステップS14’)を実施するようにする。以下、当該燃料噴射量A/F−F/B制御について説明する。
【0049】
蒸散ガスのパージが開始されると(ステップS12)、パージソレノイドバルブ58が開弁し、キャニスタ56に貯留された蒸散ガスが吸気通路に供給(パージ)されることになる。
そして、この際、燃料噴射弁6から噴射すべき燃料噴射量、即ち開弁時間Tinjが、O2センサ15からの空燃比情報に基づいて次式(7)より算出され、これによりA/F−F/B制御(PI制御)が実施される。
【0050】
Tinj=TB・Kfbspk・Kelse …(7)
ここに、TB、Kelseはそれぞれ上述したとおりであり、KfbspkがF/B補正係数を示している。
通常、O2センサ15を用いて空燃比フィードバック制御を行う場合には、O2センサ15の特性から目標A/Fは理論空燃比(ストイキオ)とされるのであるが、ここでは、目標A/Fがリッチ空燃比となるように制御を行う。
【0051】
具体的には、当該A/F−F/B制御のうちの積分補正制御において、リッチ空燃比側積分ゲインがリーン空燃比側積分ゲインよりも大きくなるように積分ゲインを設定するようにし、これに基づいてF/B補正係数Kfbspkを求めるようにする。この際、積分補正上限値(リッチ空燃比側)の絶対値は下限値(リーン空燃比側)の絶対値よりも大きくなるように設定される。
【0052】
これにより、蒸散ガスがパージされた後、基本開弁時間TBがO2センサ15からの空燃比情報に基づいて空燃比フィードバック制御されて適正な開弁時間とされ、燃料噴射弁6から噴射される燃料噴射量が蒸散ガスのパージ量を考慮した適切な量に維持される。
なお、ここでは、積分補正制御においてリッチ空燃比側積分ゲインをリーン空燃比側積分ゲインよりも大きくなるように積分ゲインを設定するようにしたが、A/F−F/B制御のうちの比例補正制御において比例ゲインをリッチ空燃比側とリーン空燃比側で別設定するようにしてもよい。
【0053】
また、上式(7)に上述したパージ補正係数Kprgを乗算して次式(8)のようにしてもよい。
Tinj=TB・Kprg・Kfbspk・Kelse …(8)
このようにすれば、パージ開始時点より蒸散ガスのパージ量が見込まれて燃料噴射量が設定されることになり、燃料噴射量が早期にリッチ空燃比に対応した値に収束し、空燃比フィードバック制御が速やかに安定することになる。
【0054】
次に、実施例4について説明する。
当該実施例4では、O2センサ15はリニア空燃比センサとされている。リニア空燃比センサは、上記実施例3で用いた通常のO2センサと異なり、任意の目標A/Fに向けてフィードバック制御可能に構成された空燃比センサである。
従って、当該実施例4の場合には、目標A/Fが所定のリッチ空燃比(例えば、値12)となるように制御することが可能とされている。故に、ここでは次式(9)より開弁時間Tinjを求めるようにする。
【0055】
Tinj=TB・Kspk・Kfbspk・Kelse …(9)
ここに、TB、Kspk、Kfbspk、Kelseは、それぞれ上述したとおりである。つまり、当該実施例4では、開弁時間Tinjをリッチ化補正係数Kspkによって所定のリッチ空燃比(例えば、値12)に対応した時間に設定した後、空燃比が所定のリッチ空燃比に保持されるようF/B補正係数Kfbspkによって補正する。
【0056】
これにより、蒸散ガスがパージされた後、基本開弁時間TBがリニア空燃比センサからの空燃比情報に基づいて所定のリッチ空燃比(例えば、値12)に対応した値となるよう空燃比フィードバック制御(PID制御)されて適正な開弁時間とされる。故に、空燃比が常に適切な値となるよう燃料噴射が行われ、NOx放出或いはS放出が確実に行われることになる。
【0057】
また、上式(9)に上述したパージ補正係数Kprgを乗算して次式(10)のようにしてもよい。
Tinj=TB・Kprg・Kspk ・Kfbspk・Kelse …(10)
このようにすれば、上記実施例3の場合と同様、パージ開始時点より蒸散ガスのパージ量が見込まれて燃料噴射量が設定されることになり、燃料噴射量が早期に所定のリッチ空燃比に応じた値に収束し、空燃比フィードバック制御が速やかに安定することになる。
【0058】
次に、実施例5について説明する。
上記実施例3及び実施例4では、燃料噴射量についてA/F−F/B制御を実施するようにしたが、当該実施例5では、蒸散ガスパージ量についても併せてA/F−F/B制御を実施するようにする。
つまり、当該実施例5では、図4に示すように、上記図3中のステップS14’に加えて蒸散ガスパージ量A/F−F/B制御(ステップS15)を実施するようにする。
【0059】
詳しくは、ステップS15では、O2センサ15からの空燃比情報に基づいてパージソレノイドバルブ58の開弁量を燃料噴射量の場合と同様にフィードバック制御(PI,PID制御)するようにする。
これにより、ステップS14’での燃料噴射弁6の燃料噴射量とともに蒸散ガスのパージ量が併せて調節されることになり、これにより、エンジン1の運転状況等に応じてさらにきめ細かな制御が可能とされる。
【0060】
ところで、上記各実施例では、吸蔵型NOx触媒30aのNOx放出或いはS放出に合わせて蒸散ガスのパージを実施するようにしたが、通常の加速走行時においてもリッチ空燃比運転は実施されるものであるため、当該加速走行によりリッチ空燃比運転が実施されたときに合わせて本発明を適用することも可能である。また、上記各実施例では、吸気マニホールド10内の吸気通路に蒸散ガスを導入するようにしているが、リッチ空燃比運転が吸蔵型NOx触媒30aのNOx放出或いはS放出を目的としたものである場合にあっては、蒸散ガスを吸蔵型NOx触媒30aの上流の排気管14内に導入するようにしてもよい。
【0061】
また、上記各実施例では、蒸散ガスのパージのみについて説明したが、ブローバイガスも蒸散ガスと同様の役割を果たすことから、本発明にブローバイガスを併用して構成することも可能である(ブローバイガス導入手段)。つまり、燃料噴射量を蒸散ガスとブローバイガスの導入量に基づいて補正し排気通路の空燃比をリッチ空燃比にするようにしてもよく(触媒再生手段)、これにより、さらに触媒再生時の燃費悪化を抑制することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の請求項1の希薄燃焼内燃機関によれば、触媒再生を行う際のリッチ空燃比運転時において、燃料蒸散ガスとブローバイガスとを有効に使用できるとともに、空燃比を常に適正なリッチ空燃比に保持するように図りながら噴射弁からの燃料噴射量を制御することが可能となり、触媒の再生を燃費の悪化を抑えながら確実に実施することができる。
以上
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る希薄燃焼内燃機関を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施例1及び実施例2に係る希薄燃焼内燃機関の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例3及び実施例4に係る希薄燃焼内燃機関の制御ルーチンを示すフローチャートのうち上記図2と異なる部分を示す図である。
【図4】本発明の実施例5に係る希薄燃焼内燃機関の制御ルーチンを示すフローチャートのうち上記図2と異なる部分を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン
4 点火プラグ
6 燃料噴射弁
11 スロットル弁
11a スロットルセンサ
13 クランク角センサ
30a 吸蔵型NOx触媒
40 電子コントロールユニット(ECU)
52 燃料タンク
53 燃温センサ
54 パージ管
56 キャニスタ
58 パージソレノイドバルブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、希薄燃焼内燃機関に係り、詳しくは、リッチ空燃比運転時において燃料蒸散ガスを吸気通路にパージする技術に関する。
【0002】
【関連する背景技術】
近年、空燃比を理論空燃比(値14.7)よりも希薄側のリーン空燃比に制御可能なリーンバーンエンジン(希薄燃焼内燃機関)が開発され実用化されている。
ところが、このように空燃比をリーン空燃比とすると、従来の三元触媒ではその浄化特性から排ガス中のNOxを充分に浄化できないという問題があり、最近では、リーン空燃比においてもNOxの浄化を可能とした吸蔵型NOx触媒が開発され実用化されている。
【0003】
吸蔵型NOx触媒は、酸素過剰状態(酸化雰囲気)において排ガス中のNOxを硝酸塩X−NO3として付着させ吸蔵し、該吸蔵したNOxをCO(一酸化炭素)過剰状態(還元雰囲気)でN2(窒素)に還元させる特性(同時に炭酸塩X−CO3が生成される)を有した触媒として構成されている。
従って、吸蔵型NOx触媒を備えたリーンバーンエンジンでは、通常、吸蔵型NOx触媒のNOx吸蔵量が飽和する前に空燃比を理論空燃比またはその近傍値に制御するようなリッチ空燃比運転に定期的に切換え(これをリッチスパイクという)、これにより、COの多い還元雰囲気を生成し、吸蔵したNOxを浄化還元(NOx放出)して吸蔵型NOx触媒の再生を図るようにしている。
【0004】
また、吸蔵型NOx触媒には燃料中のS成分(硫黄成分)が酸化されたSOx(硫黄酸化物)についても硫酸塩として図らずも吸蔵されてしまうため、当該硫酸塩についても、吸蔵型NOx触媒を高温状態とし且つ上記同様にリッチ空燃比運転を定期的に実施して還元雰囲気を生成し除去(S放出)することで吸蔵型NOx触媒の再生を図る必要がある。
【0005】
ところで、このようなリッチ空燃比運転は、燃料噴射量を一時的に増加させるようなものであるため、燃費の悪化を招くという問題がある。
そこで、燃料タンク内に発生する燃料蒸散ガスに着目し、吸蔵型NOx触媒の浄化効率が低下してリッチ空燃比運転の実施が要求された際に当該燃料蒸散ガスを積極的に吸気通路に導入(パージ)するようにして燃焼に寄与させる技術が特開平6−173660号公報等に開示されている。これにより、燃料蒸散ガスを有効に処理でき且つNOx放出処理の際の燃費の悪化が改善可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記公報に開示された技術では、リッチ空燃比運転を実施するときに燃料噴射量は変化させずに燃料蒸散ガスを単純に吸気通路内に導入(パージ)させるのみであり、その燃料蒸散ガスの量については一切把握されていない。つまり、上記公報に開示された技術では、燃料蒸散ガスのパージ時における空燃比を適切な値に管理できないことになる。
【0007】
従って、当該技術では、例えば、外気温(燃料温度)が低く燃料蒸散ガスの発生量が少ないような場合、即ち燃料蒸散ガスを一時的に貯留しておくキャニスタ内に燃料蒸散ガスが少ない場合には、燃料蒸散ガスをパージしたとしても空燃比を十分にリッチ化できずNOx放出或いはS放出を実施できない虞があり、一方、外気温(燃料温度)が高く燃料蒸散ガスの発生量が極めて多いような場合には、燃料蒸散ガスのパージ量が過剰となり空燃比がオーバリッチ化して失火の原因となる虞があり好ましいことではない。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、リッチ空燃比運転時に、燃料蒸散ガスを有効に燃焼に寄与させながら空燃比を適正に保持でき、燃費の悪化を防止可能な希薄燃焼内燃機関を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1の発明では、吸蔵型NOx触媒を備えた希薄燃焼内燃機関において、吸蔵型NOx触媒の排ガス浄化能力の悪化が判別されると、蒸散ガス導入手段によって燃料タンク内に発生した燃料蒸散ガスが吸気通路に導入されることになるが、このとき、燃料の温度に応じて燃料蒸散ガスの導入量が判断され、該燃料蒸散ガスの導入量に応じた分だけ燃料噴射量が補正されるとともに、ブローバイガス導入手段によるブローバイガスの導入量に応じた分だけ燃料噴射量が補正されるようにされている。
【0010】
従って、リッチ空燃比運転時において燃料蒸散ガスとブローバイガスとが有効に使用されるとともに、空燃比が常に適正なリッチ空燃比に保持されるよう燃料噴射量が制御されることになり、燃費の悪化を抑制しながら触媒の再生(NOx放出或いはS放出)が確実に実施されることになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
先ず、実施例1について説明する。
図1を参照すると、車両に搭載された本発明に係る希薄燃焼内燃機関の概略構成図が示されており、以下同図に基づいて本発明に係る希薄燃焼内燃機関の構成を説明する。
【0012】
内燃機関本体(以下、単にエンジンという)1は、例えば、燃料噴射モード(運転モード)を切換えることで吸気行程での燃料噴射(吸気行程噴射モード)または圧縮行程での燃料噴射(圧縮行程噴射モード)を実施可能な筒内噴射型火花点火式直列4気筒ガソリンエンジンとされている。そして、この筒内噴射型のエンジン1は、容易にして理論空燃比(ストイキオ)での運転やリッチ空燃比での運転(リッチ空燃比運転)の他、リーン空燃比での運転(リーン空燃比運転)が実現可能とされており、特に圧縮行程噴射モードでは、超リーン空燃比での運転が可能とされている。
【0013】
同図に示すように、エンジン1のシリンダヘッド2には、各気筒毎に点火プラグ4とともに電磁式の燃料噴射弁6が取り付けられており、これにより、燃焼室8内に燃料を直接噴射可能とされている。
燃料噴射弁6には、燃料パイプ7を介して燃料タンク52が接続されており、該燃料パイプ7には燃料供給装置50が介装されている。より詳しくは、燃料供給装置50には、低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプとが設けられており(共に図示せず)、これにより、燃料タンク52内の燃料を燃料噴射弁6に対し低燃圧或いは高燃圧で供給し、該燃料を燃料噴射弁6から燃焼室8内に向けて所望の燃圧で噴射可能とされている。この際、燃料噴射量は高圧燃料ポンプの燃料吐出圧と燃料噴射弁6の開弁時間、即ち燃料噴射時間とから決定される。
【0014】
シリンダヘッド2には、各気筒毎に略直立方向に吸気ポートが形成されており、各吸気ポートと連通するようにして吸気マニホールド10の一端がそれぞれ接続されている。そして、吸気マニホールド10の他端にはスロットル弁11が接続されており、該スロットル弁11にはスロットル開度θthを検出するスロットルセンサ11aが設けられている。
【0015】
また、上記燃料タンク52の上部からはパージ管54が延びており、その先端は吸気マニホールド10に接続されている。これにより、燃料タンク52の内部に発生した燃料蒸散ガス(以下、単に蒸散ガスという)が吸気マニホールド10内の吸気通路に送給可能とされ、当該蒸散ガスをも燃焼に寄与させることが可能とされている。詳しくは、パージ管54には蒸散ガスを一時的に活性炭層57に吸着させ貯留するキャニスタ56が介装されており、さらに、キャニスタ56と吸気マニホールド10との間には、パージ管54内を流れる蒸散ガスの流量を調節する電磁弁(パージソレノイドバルブ)58が介装されている(蒸散ガス導入手段)。
【0016】
そして、燃料タンク52には、内部に延びるようにして燃料温度を計測する燃温センサ(燃料温度検出手段)53が設けられている。
さらに、シリンダヘッド2には、各気筒毎に略水平方向に排気ポートが形成されており、各排気ポートと連通するようにして排気マニホールド12の一端がそれぞれ接続されている。
【0017】
図中符号13は、クランク角を検出するクランク角センサであり、該クランク角センサ13はエンジン回転速度Neを検出可能とされている。
なお、当該筒内噴射型のエンジン1は既に公知のものであり、その構成の詳細についてはここでは説明を省略する。
同図に示すように、排気マニホールド12には排気管(排気通路)14が接続されており、この排気管14にはエンジン1に近接した小型の近接三元触媒20及び排気浄化触媒装置30を介してマフラー(図示せず)が接続されている。
【0018】
また、排気管14には排気中の酸素濃度を検知することで空燃比を検出可能なO2センサ(空燃比センサ)15が設けられており、さらに、排気温度を検出する高温センサ16が設けられている。
排気浄化触媒装置30は、吸蔵型NOx触媒30aと三元触媒30bとの2つの触媒を備えて構成されており、三元触媒30bの方が吸蔵型NOx触媒30aよりも下流側に配設されている。
【0019】
吸蔵型NOx触媒30aは、酸化雰囲気においてNOxを一旦吸蔵させ、主としてCOの存在する還元雰囲気中においてNOxをN2(窒素)等に還元させる機能を持つものである。詳しくは、吸蔵型NOx触媒30aは、貴金属として白金(Pt),ロジウム(Rh)等を有した触媒として構成されており、吸蔵材としてはバリウム(Ba)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属が採用されている。
【0020】
また、吸蔵型NOx触媒30aと三元触媒30bとの間にはNOx濃度を検出するNOxセンサ32が設けられている。
さらに、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU(電子コントロールユニット)40が設置されている。
【0021】
ECU40の入力側には、上述したスロットルセンサ11a、O2センサ15、高温センサ16や燃温センサ53等の各種センサ類が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力する。
一方、ECU40の出力側には、上述した点火プラグ4が点火コイルを介して接続されるとともに燃料噴射弁6やパージソレノイドバルブ58等が接続されており、これら燃料噴射弁6、点火コイル、パージソレノイドバルブ58等には、各種センサ類からの検出情報に基づき演算された燃料噴射量、点火時期、開弁量等の最適値がそれぞれ出力される。つまり、各種センサ類からの入力値に基づいて燃料噴射弁6から適正量の燃料が適正なタイミングで噴射されるとともに点火プラグ4によって適正なタイミングで点火が実施され、適正量の蒸散ガスが適正なタイミングで吸気通路に供給される。
【0022】
詳しくは、ECU40では、常時、スロットルセンサ11aからのスロットル開度情報θthとクランク角センサ13からのエンジン回転速度情報Neとに基づいてエンジン負荷に対応する目標筒内圧、即ち目標平均有効圧Peを求めるようにしており、当該目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに基づいて各種制御が行われる。
【0023】
先ず、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとからは燃料噴射モードが設定される。実際には、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに基づいて予め燃料噴射モード設定マップ(図示せず)が設定されており、燃料噴射モードは当該燃料噴射モード設定マップから読み出される。例えば、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとが共に小さいときには、燃料噴射モードは圧縮行程噴射モードとされ、燃料は圧縮行程で噴射され、一方、目標平均有効圧Peが大きくなり或いはエンジン回転速度Neが大きくなると燃料噴射モードは吸気行程噴射モードとされ、燃料は吸気行程で噴射される。
【0024】
さらに、これら目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとに基づいて予め目標空燃比(目標A/F)がマップ化されており、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとに応じて目標A/Fが設定され、該目標A/Fに基づいて燃料噴射量等が決定される。即ち、目標A/Fに基づいて、エンジン1の運転状態がリーン空燃比運転、リッチ空燃比運転或いはストイキオでの運転のいずれかに切り換えられる。
【0025】
また、上記高温センサ16により検出された排気温度情報からは触媒温度Tcatが推定される。詳しくは、高温センサ16と吸蔵型NOx触媒30aが離れて設置されていることによる誤差を補正するために、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに応じて予め実験等により温度差マップ(図示せず)が設定されており、故に触媒温度Tcatは、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとが決まると一義に推定されるようにされている。
【0026】
以下、このように構成された本発明に係る希薄燃焼内燃機関の作用について説明する。つまり、排気通路内の空燃比がリッチ空燃比(還元雰囲気)となるよう目標A/Fをリッチ空燃比として吸蔵型NOx触媒30aに吸蔵されたNOxやSOxを除去(NOx放出、S放出)する制御、即ちリッチ空燃比運転制御(触媒再生手段)の制御手順について説明する。
【0027】
図2を参照すると、リッチ空燃比運転制御ルーチンのフローチャートが示されており、以下当該フローチャートに沿って説明する。
先ず、ステップS10では、リッチ空燃比運転が必要か否かを判別する。つまり、リーン空燃比運転が所定時間以上継続し、吸蔵型NOx触媒30aに吸蔵されたNOxの量が飽和状態に近くなり触媒の浄化能力が低下しNOx放出が必要になったか、或いは燃料噴射弁6からの燃料噴射量の積算値が所定値以上となり吸蔵型NOx触媒30aに吸蔵されたSOxが所定量に達し、即ち触媒がS成分により被毒されて浄化能力が低下しS放出が必要になったか否かを判別する(判別手段)。
【0028】
ステップS10の判別結果が偽(No)でリッチ空燃比運転が必要でない場合には、何もせずに当該ルーチンを抜ける。
一方、ステップS10の判別結果が真(Yes)で、NOx放出或いはS放出が必要とされ、吸蔵型NOx触媒30aの浄化能力を回復(再生)させるためのリッチ空燃比運転が必要と判定された場合には、リッチ空燃比運転を開始する。
【0029】
ところで、当該筒内噴射型のエンジン1では、上述したように目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに基づき圧縮行程噴射モード及び吸気行程噴射モードのいずれか一方が選択されるが、実際には圧縮行程噴射モードでは空燃比のリッチ化には限界があり、つまり空燃比の下限がリーン空燃比の範囲にある値24であり、リッチ空燃比運転はできない。故に、リッチ空燃比運転を行う際には、通常は燃料噴射モードは吸気行程噴射モードとされる。
【0030】
但し、当該筒内噴射型のエンジン1では、燃料噴射を2回に分割し、全体空燃比をリッチ空燃比としながら2回目の噴射(副噴射)を膨張行程で行うような2段噴射によってリッチ空燃比運転を実施することもできる。この際、膨張行程での副噴射量を多く設定した場合には、1回目の噴射(主噴射)による燃料噴射量を少なく設定することになる。故に、当該2段噴射を実施した場合には、当該主噴射の燃料噴射モードを圧縮行程噴射モードとすることも可能である。
【0031】
ステップS12では、蒸散ガスのパージを行う。つまり、リッチ空燃比運転が要求されたら、先ず、パージソレノイドバルブ58を開弁し、燃料タンク52内で発生しキャニスタ56に貯留された蒸散ガスを吸気通路に供給(パージ)するようにする。
詳しくは、パージソレノイドバルブ58の開弁量は、上述の目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに応じてデューティ制御される。つまり、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに基づいてパージソレノイドバルブ58のデューティ率がマップとして設定されており、該マップからデューティ率が読み出されてデューティ制御が実施される。
【0032】
例えば、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとが小さい場合には、吸気管負圧が大きいとみなすことができ、この場合にはデューティ率は小さくされ、故にパージソレノイドバルブ58の開弁量は小さくされ、蒸散ガスが一気に吸気通路に流入しないようにされる。一方、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとが大きい場合には、吸気管負圧は小さいとみなせ、この場合にはデューティ率は大きくされてパージソレノイドバルブ58の開弁量は大きくされ、蒸散ガスが吸気通路に流入し易くされる。
【0033】
なお、ここでは目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに基づいて吸気管負圧を推定し、該推定値に基づいてパージソレノイドバルブ58の開弁量を調節するようにしたが、スロットル開度θthから吸気管負圧を推定してもよい。或いは、吸気マニホールド10に負圧センサを設けるようにして直接吸気管負圧を求め、当該吸気管負圧情報に基づいて開弁量を調節するようにしてもよい。
【0034】
このように蒸散ガスのパージをリッチ空燃比運転時に行うようにすると、一般には燃料噴射量を増量して空燃比をリッチ化すると燃費が悪化することになるのであるが、蒸散ガスが当該空燃比のリッチ化に有効に使用され、当該燃費の悪化が好適に防止されることになる。
そして、次のステップS14では、蒸散ガスパージに基づいて燃料噴射量を算出する。つまり、燃料噴射量を蒸散ガスのパージ量を考慮して決定する。ここでは、次式(1)より燃料噴射量に対応する燃料噴射弁6の開弁時間Tinjを算出する。
【0035】
Tinj=TB・Kspk・Kprg・Kelse …(1)
ここに、TBは燃料噴射弁6の基本開弁時間であり、上記目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとに基づき決定された目標A/Fに対応する量の燃料を噴射可能な時間を意味している。
Kspkは、蒸散ガスのパージを実施しない状態、即ち通常の燃料噴射のみでリッチ空燃比運転を行う場合に、開弁時間Tinjを所定のリッチ空燃比(例えば、値12)に対応した時間にするためのリッチ化補正係数である。なお、この場合、基本開弁時間TBが目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neとに応じたものであることから、当該Kspkも目標平均有効圧Peとエンジン回転速度Neに応じてマップより設定される。
【0036】
Kprgは蒸散ガスのパージ量に応じたパージ補正係数であり、該パージ補正係数Kprgによって燃料噴射弁6の燃料噴射量が補正される。詳しくは、蒸散ガスのパージ量が多ければ、燃料噴射量は少なくて良いと判断でき、この場合にはパージ補正係数Kprg(0≦Kprg≦1)は小さな値とされ、開弁時間Tinjは短くされる。一方、蒸散ガスのパージ量が少なければ、燃料噴射量を多くする必要があると判断でき、この場合にはパージ補正係数Kprgは大きな値、つまり値1に近い値とされ、開弁時間Tinjは蒸散ガスのパージが無い場合に近いものとされる。つまり、蒸散ガスのパージ量が多いときには、当該パージ量を見込んで目標A/Fを上記所定のリッチ空燃比(例えば、値12)よりもリーン空燃比寄りに設定する。
【0037】
実際には、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに応じてパージソレノイドバルブ58の開弁量がデューティ制御され、これにより蒸散ガスのパージ量が決定されることから、パージ補正係数Kprgは、当該開弁量に合わせ、目標平均有効圧Peとエンジン回転速度情報Neとに応じてマップより設定される。なお、この場合にも、上記同様、吸気マニホールド10に負圧センサを設けて直接吸気管負圧を求め、該吸気管負圧情報に基づいてパージ補正係数Kprgを設定するようにしてもよい。
【0038】
また、燃料タンク52内での蒸散ガス発生量は燃料温度に関係するので、燃温センサ53により検出される燃料温度を加味してパージ補正係数Kprgを設定してもよい。つまり、燃料温度が高いときには蒸散ガスがキャニスタ56に多量に貯留されており、蒸散ガスのパージ量は多いと判断でき、この場合にはパージ補正係数Kprgをより一層小さな値としてもよい。実際には、目標平均有効圧Pe、エンジン回転速度情報Ne及び燃料温度に基づいてパージ補正係数Kprgを3次元マップとして設定しておき、該3次元マップよりパージ補正係数Kprgを読み出すようにする。
【0039】
なお、燃料温度は外気温との相関性が高いことから、燃料温度に代えて外気温や吸気温を加味してパージ補正係数Kprgを設定してもよい。
そして、ステップS16において、このように算出された開弁時間Tinjに基づいて燃料噴射を行う。
ステップS18では、当該リッチ空燃比運転制御が開始されてから所定時間tpが経過したか否かを判別する。そして、判別結果が偽(No)で、未だ所定時間tpが経過していないと判定された場合には、当該リッチ空燃比運転制御を継続する。一方、判別結果が真(Yes)で、所定時間tpが経過したと判定された場合には、リッチ空燃比運転制御を終了すべく当該ルーチンを抜ける。
【0040】
以上のように、本発明の希薄燃焼内燃機関では、NOx放出やS放出のためにリッチ空燃比運転を行う際に燃料タンク52内で発生しキャニスタ56に貯蔵された蒸散ガスをパージさせ、これにより蒸散ガスを空燃比のリッチ化に寄与させるようにしており、このとき、さらに、燃料噴射弁6から噴射される燃料噴射量を、蒸散ガス量を考慮し、当該蒸散ガス量分を減量させて設定するようにしている。
【0041】
従って、本発明の希薄燃焼内燃機関では、キャニスタ56に貯蔵された蒸散ガスをリッチ空燃比運転時に有効に使用することができるのみならず、空燃比を適正にリッチ空燃比に保持できるとともに、燃料噴射弁6の燃料噴射量を必要な量に抑えるようにして燃費の悪化をも好適に防止することができることとなる。
次に、実施例2について説明する。
【0042】
当該実施例2は、上記実施例1に対し開弁時間Tinjの算出方法を変更したものであり、故に、ここでは上記実施例1と異なる開弁時間Tinjの算出方法について説明する。
実施例2では、先ず、所定のリッチ空燃比(例えば、値12)に対応する開弁時間Toを次式(2)より求める。
【0043】
To=TB・Kspk・Kelse …(2)
ここに、TB、Kspk、Kelseはそれぞれ上述したとおりである。
そして、次式(3)より最終的に開弁時間Tinjを求めるようにする。
Tinj=To−Kt・P1 …(3)
ここに、Ktは蒸散ガスのパージ量を開弁時間Tinjに変換する変換係数(吸気管負圧とP1に対するマップ)であり、P1は1行程間の蒸散ガスパージ量であって、次式(4)により計算される。
【0044】
P1=P2・(1行程間におけるパージソレノイドバルブの開弁時間) …(4)ここに、P2は単位時間当たりの蒸散ガスパージ量である。詳しくは、当該P2は、キャニスタ56に吸着した蒸散ガスの吸着量P3とスロットル開度θthに基づいて予め設定されマップ化されており、該マップから読み取られる。なお、吸気マニホールド10に負圧センサを設けた場合には、スロットル開度θthに代えて吸気管負圧情報と蒸散ガスの吸着量P3とに基づいてP2を求めることもできる。
【0045】
蒸散ガスの吸着量P3は次式(5)から算出される。
P3=P4−P1(n−1)+P3(n−1) …(5)
ここに、P4はキャニスタ56に流入する蒸散ガス量であり、つまり、蒸散ガスの吸着量P3はキャニスタ56に流入する蒸散ガス量P4とキャニスタ56から流出する蒸散ガス量P1との差及び前回の蒸散ガスの吸着量P3(n−1)(前行程でパージされなかった残りの蒸散ガス)の和として容易に求められる。
【0046】
そして、キャニスタ56に流入する蒸散ガス量P4は、次式(6)により計算される。
P4=P5・(燃料タンクの空間容積)・(1行程間の時間) …(6)
ここに、P5は単位容積、単位時間当たりの燃料タンク52内で発生する蒸散ガスの発生量を示している。当該単位容積、単位時間当たりの蒸散ガスの発生量P5は、燃料温度との相関性が高く、故に燃料温度に基づいて予め設定されマップ化されており、該マップより読み出される。なお、上述したように、燃料温度は外気温や吸気温に置き換えてもよい。また、燃料タンクの空間容積は、燃料タンク容積と燃料残量の差として求められる。
【0047】
つまり、当該実施例2によれば、燃焼に寄与する蒸散ガス量、即ち蒸散ガスパージ量P1がより正確に求められることになる。従って、当該実施例2の場合、燃料噴射弁6の燃料噴射量をより一層適正な量に抑えるようにでき、空燃比をより適正なものに保持しながら燃費の悪化をさらに好適に防止することができることとなる。
【0048】
次に、実施例3について説明する。
上記実施例1及び実施例2では、制御をオープンループ制御としたが、当該実施例3では、空燃比フィードバック制御を実施した場合について説明する。
即ち、実施例3では、図3に示すように、上記図2中のステップS14の代わりに、燃料噴射量A/F−F/B制御、即ち空燃比フィードバック制御(ステップS14’)を実施するようにする。以下、当該燃料噴射量A/F−F/B制御について説明する。
【0049】
蒸散ガスのパージが開始されると(ステップS12)、パージソレノイドバルブ58が開弁し、キャニスタ56に貯留された蒸散ガスが吸気通路に供給(パージ)されることになる。
そして、この際、燃料噴射弁6から噴射すべき燃料噴射量、即ち開弁時間Tinjが、O2センサ15からの空燃比情報に基づいて次式(7)より算出され、これによりA/F−F/B制御(PI制御)が実施される。
【0050】
Tinj=TB・Kfbspk・Kelse …(7)
ここに、TB、Kelseはそれぞれ上述したとおりであり、KfbspkがF/B補正係数を示している。
通常、O2センサ15を用いて空燃比フィードバック制御を行う場合には、O2センサ15の特性から目標A/Fは理論空燃比(ストイキオ)とされるのであるが、ここでは、目標A/Fがリッチ空燃比となるように制御を行う。
【0051】
具体的には、当該A/F−F/B制御のうちの積分補正制御において、リッチ空燃比側積分ゲインがリーン空燃比側積分ゲインよりも大きくなるように積分ゲインを設定するようにし、これに基づいてF/B補正係数Kfbspkを求めるようにする。この際、積分補正上限値(リッチ空燃比側)の絶対値は下限値(リーン空燃比側)の絶対値よりも大きくなるように設定される。
【0052】
これにより、蒸散ガスがパージされた後、基本開弁時間TBがO2センサ15からの空燃比情報に基づいて空燃比フィードバック制御されて適正な開弁時間とされ、燃料噴射弁6から噴射される燃料噴射量が蒸散ガスのパージ量を考慮した適切な量に維持される。
なお、ここでは、積分補正制御においてリッチ空燃比側積分ゲインをリーン空燃比側積分ゲインよりも大きくなるように積分ゲインを設定するようにしたが、A/F−F/B制御のうちの比例補正制御において比例ゲインをリッチ空燃比側とリーン空燃比側で別設定するようにしてもよい。
【0053】
また、上式(7)に上述したパージ補正係数Kprgを乗算して次式(8)のようにしてもよい。
Tinj=TB・Kprg・Kfbspk・Kelse …(8)
このようにすれば、パージ開始時点より蒸散ガスのパージ量が見込まれて燃料噴射量が設定されることになり、燃料噴射量が早期にリッチ空燃比に対応した値に収束し、空燃比フィードバック制御が速やかに安定することになる。
【0054】
次に、実施例4について説明する。
当該実施例4では、O2センサ15はリニア空燃比センサとされている。リニア空燃比センサは、上記実施例3で用いた通常のO2センサと異なり、任意の目標A/Fに向けてフィードバック制御可能に構成された空燃比センサである。
従って、当該実施例4の場合には、目標A/Fが所定のリッチ空燃比(例えば、値12)となるように制御することが可能とされている。故に、ここでは次式(9)より開弁時間Tinjを求めるようにする。
【0055】
Tinj=TB・Kspk・Kfbspk・Kelse …(9)
ここに、TB、Kspk、Kfbspk、Kelseは、それぞれ上述したとおりである。つまり、当該実施例4では、開弁時間Tinjをリッチ化補正係数Kspkによって所定のリッチ空燃比(例えば、値12)に対応した時間に設定した後、空燃比が所定のリッチ空燃比に保持されるようF/B補正係数Kfbspkによって補正する。
【0056】
これにより、蒸散ガスがパージされた後、基本開弁時間TBがリニア空燃比センサからの空燃比情報に基づいて所定のリッチ空燃比(例えば、値12)に対応した値となるよう空燃比フィードバック制御(PID制御)されて適正な開弁時間とされる。故に、空燃比が常に適切な値となるよう燃料噴射が行われ、NOx放出或いはS放出が確実に行われることになる。
【0057】
また、上式(9)に上述したパージ補正係数Kprgを乗算して次式(10)のようにしてもよい。
Tinj=TB・Kprg・Kspk ・Kfbspk・Kelse …(10)
このようにすれば、上記実施例3の場合と同様、パージ開始時点より蒸散ガスのパージ量が見込まれて燃料噴射量が設定されることになり、燃料噴射量が早期に所定のリッチ空燃比に応じた値に収束し、空燃比フィードバック制御が速やかに安定することになる。
【0058】
次に、実施例5について説明する。
上記実施例3及び実施例4では、燃料噴射量についてA/F−F/B制御を実施するようにしたが、当該実施例5では、蒸散ガスパージ量についても併せてA/F−F/B制御を実施するようにする。
つまり、当該実施例5では、図4に示すように、上記図3中のステップS14’に加えて蒸散ガスパージ量A/F−F/B制御(ステップS15)を実施するようにする。
【0059】
詳しくは、ステップS15では、O2センサ15からの空燃比情報に基づいてパージソレノイドバルブ58の開弁量を燃料噴射量の場合と同様にフィードバック制御(PI,PID制御)するようにする。
これにより、ステップS14’での燃料噴射弁6の燃料噴射量とともに蒸散ガスのパージ量が併せて調節されることになり、これにより、エンジン1の運転状況等に応じてさらにきめ細かな制御が可能とされる。
【0060】
ところで、上記各実施例では、吸蔵型NOx触媒30aのNOx放出或いはS放出に合わせて蒸散ガスのパージを実施するようにしたが、通常の加速走行時においてもリッチ空燃比運転は実施されるものであるため、当該加速走行によりリッチ空燃比運転が実施されたときに合わせて本発明を適用することも可能である。また、上記各実施例では、吸気マニホールド10内の吸気通路に蒸散ガスを導入するようにしているが、リッチ空燃比運転が吸蔵型NOx触媒30aのNOx放出或いはS放出を目的としたものである場合にあっては、蒸散ガスを吸蔵型NOx触媒30aの上流の排気管14内に導入するようにしてもよい。
【0061】
また、上記各実施例では、蒸散ガスのパージのみについて説明したが、ブローバイガスも蒸散ガスと同様の役割を果たすことから、本発明にブローバイガスを併用して構成することも可能である(ブローバイガス導入手段)。つまり、燃料噴射量を蒸散ガスとブローバイガスの導入量に基づいて補正し排気通路の空燃比をリッチ空燃比にするようにしてもよく(触媒再生手段)、これにより、さらに触媒再生時の燃費悪化を抑制することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の請求項1の希薄燃焼内燃機関によれば、触媒再生を行う際のリッチ空燃比運転時において、燃料蒸散ガスとブローバイガスとを有効に使用できるとともに、空燃比を常に適正なリッチ空燃比に保持するように図りながら噴射弁からの燃料噴射量を制御することが可能となり、触媒の再生を燃費の悪化を抑えながら確実に実施することができる。
以上
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る希薄燃焼内燃機関を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施例1及び実施例2に係る希薄燃焼内燃機関の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例3及び実施例4に係る希薄燃焼内燃機関の制御ルーチンを示すフローチャートのうち上記図2と異なる部分を示す図である。
【図4】本発明の実施例5に係る希薄燃焼内燃機関の制御ルーチンを示すフローチャートのうち上記図2と異なる部分を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン
4 点火プラグ
6 燃料噴射弁
11 スロットル弁
11a スロットルセンサ
13 クランク角センサ
30a 吸蔵型NOx触媒
40 電子コントロールユニット(ECU)
52 燃料タンク
53 燃温センサ
54 パージ管
56 キャニスタ
58 パージソレノイドバルブ
Claims (1)
- 吸気通路または燃焼室内に燃料を噴射する噴射弁と、
燃料タンク内で発生した燃料蒸散ガスを前記吸気通路に導入する蒸散ガス導入手段と、
前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する燃料温度検出手段と、
ブローバイガスを前記吸気通路に導入するブローバイガス導入手段と、
排気通路に設けられ、酸化雰囲気で排ガス中のNOxを吸蔵する一方、還元雰囲気で前記吸蔵されたNOxを還元放出する吸蔵型NOx触媒と、
前記吸蔵型NOx触媒の排ガス浄化能力の悪化を判別する判別手段と、
前記判別手段により前記吸蔵型NOx触媒の排ガス浄化能力の悪化が判別されると、前記蒸散ガス導入手段により前記燃料蒸散ガスの導入を行うとともに該燃料蒸散ガスの導入量に応じて前記噴射弁の燃料噴射量を補正し前記排気通路内の空燃比をリッチ空燃比とする触媒再生手段とを備え、
前記触媒再生手段は、前記燃料温度検出手段により検出される燃料の温度に応じた前記燃料蒸散ガスの導入量及び前記ブローバイガス導入手段による前記ブローバイガスの導入量に基づいて前記噴射弁の燃料噴射量を補正することを特徴とする希薄燃焼内燃機関。
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