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JP3693650B2 - 免震ダンパー - Google Patents

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JP3693650B2
JP3693650B2 JP2003073248A JP2003073248A JP3693650B2 JP 3693650 B2 JP3693650 B2 JP 3693650B2 JP 2003073248 A JP2003073248 A JP 2003073248A JP 2003073248 A JP2003073248 A JP 2003073248A JP 3693650 B2 JP3693650 B2 JP 3693650B2
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哲美 岡本
貴徳 大家
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は積層ゴム支承等のアイソレータと併用され、鋼材等、金属材料の弾塑性履歴吸収エネルギーにより地震時の振動エネルギーを吸収する免震ダンパーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
免震建物の免震層を挟んで上下に区分される上部躯体と下部躯体との間に積層ゴム支承等のアイソレータと共に設置される免震ダンパーは、地震時の上部躯体と下部躯体との相対変位時に、ダンパー材である鋼材等の金属材料の弾塑性変形による履歴吸収により振動エネルギーを吸収する。
【0003】
免震ダンパーには鋼材として鋼棒や鋼板を使用した形式があり、鋼材は主に曲げモーメントによって塑性変形するように配置されるが、特に図40−(a)、図41−(a)に示すように鋼材の中間部をU字形に湾曲させて上下のプレートに接合した場合(特許文献1参照)は鋼材の塑性化の範囲が広く、エネルギー吸収効率が高い等の利点を有している。図40は鋼材をダンパー材として単独で上部躯体と下部躯体に固定した場合、図41は積層ゴム支承のアイソレータと組み合わせて固定した場合である。
【0004】
特許文献1では、各鋼材の両端部を除く中間部の幅が一定の場合、U字形に湾曲した鋼材を湾曲面内に変形させた場合と湾曲面外に変形させた場合の降伏荷重の比が概ね2:1になるとの実験結果が示されている。しかし、各鋼材の両端部を除く中間部の幅を材軸方向に直線的に変化させることで、湾曲した使用状態での各ダンパー材単体の降伏荷重に、変形させる方向による極端な差を生じさせないようにできるとされている。
【0005】
特許文献1ではまた、U字形に湾曲した鋼材の中間部において、図40−(b)、図41−(b)に示すように湾曲部先端幅Wに対する固定端側の端部幅Wの比(W/W)が2以上になると、最も弱い湾曲部先端部分に歪みが集中して疲労特性が低下する問題と、製造時の材料歩留まりが低下する問題が指摘されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−104787号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
製造時の材料歩留まりのみを考えれば、ダンパー材の中間部の幅を一定にした場合が最良の形であるが、前述のように降伏荷重に方向性が生じる。特許文献1にはダンパー材の中間部の幅を一定にした場合のダンパー材の変形挙動に関する記載がないが、図3に示すような、中間部の幅が一定のU字形ダンパー材に対する本出願の発明者による変形挙動実験によれば、湾曲面内に水平変形を与えた場合、水平変形が大きくなるにつれ、図9及び表1に示すようにダンパー材にその高さ寸法の60〜80%もの鉛直方向の反り変形が生ずることが確認された。この反り変形は免震ダンパーとして使用されたときには図30−(b)、図31−(b)に示すように一方側のダンパー材が鉛直方向下向きに、他方側のダンパー材が鉛直方向上向きに生ずる。
【0008】
【表1】
Figure 0003693650
反り変形が大きくなれば、ダンパー材の特定部分への歪み集中が大きくなるため、疲労特性上、望ましくない。またダンパー材が鉛直方向の大きな反り変形を生ずれば、ダンパー材の上下の空間に配置される配管等の設備や建物躯体と干渉するため、使用する上で支障が生ずる。
【0009】
更にダンパー材の両側の端部はボルトの締め付けによりベースプレートに摩擦接合されるが、ボルトによる摩擦力のみによりダンパー材の端部をベースプレートに完全に固定することは困難であり、作用力が大きくなれば、端部が滑りを生ずることがある。このときの一時的な荷重低下が微小であれば、実用上、支障はないが、顕著であればダンパー特性として好ましくない。
【0010】
この発明はダンパー材の中間部の幅を一定にした場合に生ずる上記反り変形とそれに伴う諸問題を解決する形態の湾曲状ダンパー材を提案するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明ではU字形に湾曲した各ダンパー材をボルト孔の明いた両側の端部2E,2Eと、両側の端部2E,2Eの幅寸法より幅寸法の小さい中間部2Dの3部分から構成し、中間部2Dを更に湾曲前の展開状態において中央に位置する一様幅の中央部2Bと、端部2E寄りに位置する一様幅の端部寄り部分2Aと、中央部2Bと端部寄り部分2Aの中間にあって、湾曲状態でU字形の湾曲部分と直線部分との境界近傍に位置し、中央部2Bの幅寸法と端部寄り部分2Aの幅寸法未満の幅寸法で、且つ一様幅の中央部寄り部分2Cとに区分し、また中央部2Bと中央部寄り部分2Cの間の幅、及び中央部寄り部分2Cと端部寄り部分2Aの間の幅、並びに端部寄り部分2Aと端部2Eの間の幅を連続的に変化させることにより、特に請求項2に記載のように端部寄り部分の幅寸法を中央部の幅寸法と等しくし、中央部寄り部分の幅寸法を中央部の幅寸法と端部寄り部分の幅寸法より小さくすることにより、ダンパー材の上下の反り変形が最も顕著に生ずる方向である湾曲面内方向に水平変形を与えた場合でも、ダンパー材中間部の幅寸法を全域に亘って一定にした場合より反り変形を少なくすることを可能にする。
【0012】
免震ダンパーは免震建物の免震層を挟んで上下に区分される上部躯体と下部躯体のそれぞれに直接、もしくは間接的に固定されるベースプレートと、両ベースプレート間に架設され、両端部において直接、もしくは間接的に両ベースプレートにボルトにより接合される、弾塑性特性を有する金属材料製のU字形に湾曲した複数本のダンパー材から構成される。
【0013】
図1では端部2Eを除く中間部2Dの端部寄り部分2Aの区間をAで、中央部寄り部分2Cの区間をCで、中央部2Bの区間をBで、端部2Eと端部寄り部分2A(A)の境界の区間、端部寄り部分2A(A)と中央部寄り部分2C(C)の境界の区間、中央部寄り部分2C(C)と中央部2B(B)の境界の区間を※で示している。これらA、B、Cの各幅寸法は設計上、必要とされる降伏耐力に相応しい寸法として決定される。
【0014】
ダンパー材の中間部2Dを上記のように幅寸法が同一でない三つの区分、すなわち端部寄り部分2A(A)、中央部寄り部分2C(C)、中央部2B(B)に区分することの有効性は以下の通りである。
【0015】
中間部の幅寸法を全長に亘って一定にした図3に示すタイプ1のダンパー材に対し、湾曲面内水平方向に強制変形85mmを与えたときの応力分布を表す解析結果例を図7に示すが、この場合、図7に△印で示す湾曲部寄りの直線部の特定部分に応力が集中する。
【0016】
続いて強制変形を120mmに増大させたときには図8に▲印で示すダンパー材下側の端部近傍にも新たに応力集中域が発生し、塑性歪みが累積集中する。その結果、図9に示すようにこの▲印部を中心にダンパー材全体が回転するように鉛直方向下向きに大きな反り変形を生ずる。
【0017】
これに対し、図7における応力集中域(△印部)の近傍の幅寸法を細くし、ダンパー材を図4〜図6に示すような形にすると、図10に示すように同じ強制変形120mmを与えたときでも図8におけるダンパー材下側の端部近傍(▲印部)には応力集中域が発生しないので、上記のような反り変形が生じにくくなる効果が発揮されることが確認された。このことから、比較的小振幅(85mm程度)のときに湾曲部寄り直線部の特定部分(図7の△印部)に発生する応力集中を緩和することがダンパー材の反り変形を抑制する上で有効であると考えられる。
【0018】
図4〜図6に示す形は上記の通り、U字形に湾曲した各ダンパー材をボルト孔の明いた両側の端部2Eと、両側の端部2Eの幅寸法より幅寸法の小さい中間部2Dの3部分から構成し、中間部2Dを更に湾曲前の展開状態で中央に位置する一様幅の中央部2Bと、端部2E寄りに位置する一様幅の端部寄り部分2Aと、中央部2Bと端部寄り部分2Aの中間にあって、湾曲状態でU字形の湾曲部分と直線部分との境界近傍に位置し、中央部2Bの幅寸法と端部寄り部分2Aの幅寸法未満の幅寸法で、且つ一様幅の中央部寄り部分2Cとに区分し、また中央部2Bと中央部寄り部分2Cの間の幅、及び中央部寄り部分2Cと端部寄り部分2Aの間の幅、並びに端部寄り部分2Aと端部2Eの間の幅を連続的に変化させた形に相当する。なお、各領域の境界部(※)の幅を連続的に滑らかに変化させるのは、断面の急変による応力集中を回避するためである。
【0019】
そこで、湾曲部と直線部との境界近傍の幅を減じた形態として最適な形を決定するために、図4〜図6及び図2のモデルを考える。
【0020】
まず図3に示すタイプ1で見られた、湾曲部寄り直線部の応力集中域について幅寸法を減じる区間である、図1における中央部寄り部分2C(領域C)の長さをタイプ1の幅の2倍程度にした形が図4に示すタイプ2である。具体的には図3における中間部を、幅寸法に変化を持たせて、端部寄り部分2Aと、中央部寄り部分2Cと、中央部2Bとに区分し、中央部寄り部分2Cの範囲(長さ)を、湾曲部分と直線部分との境界線から端部寄り部分2Aの方向へ、タイプ1の幅の2倍程度とした場合である。
【0021】
図4における中央部寄り部分2Cの長さをタイプ2と同等程度にしたまま中央部寄り部分2Cを湾曲部内に位置させ、相対的に端部寄り部分2Aの長さを大きくすると共に、図4における中央部2Bの長さを小さくした形が図5に示すタイプ3である。中央部寄り部分2Cを直線部内に位置させ、その長さをタイプ3の2倍程度まで拡張し、一様幅のまま端部寄り部分2Aを中央部寄り部分2Cに取り込んだ形、すなわち中央部寄り部分2Cを一様幅のまま端部寄り部分2Aを含んだ区間まで連続させた形が図6に示すタイプ4である。
【0022】
図2に示すタイプ5は中央部2Bの長さと位置を図5に示すタイプ3と同等程度にすると共に、端部寄り部分2Aの長さと中央部寄り部分2Cの長さを図4に示すタイプ2と同等程度にし、中央部2Bから中央部寄り部分2Cまでの区間の長さを図4に示すタイプ2より大きくした形である。
【0023】
請求項1に記載の発明はタイプ2、タイプ3、タイプ5を含み、タイプ5が請求項2に記載の発明の例に相当する。
【0024】
これらタイプ2〜タイプ5のモデルに湾曲面内で水平変形を与えたときの、水平変位と鉛直方向の反り変形量との関係を図11に示す。縦軸はダンパー材の高さ寸法に対する反り変形量の比である。
【0025】
どのタイプも水平変位の増大に伴って反り変形量が増大する傾向にあるが、タイプ1のダンパー材が最も顕著で、水平変位600mmで最大となり、そのときの反り変形量/高さ寸法比が約0.56となっている。タイプ2の反り変形量/高さ寸法比は水平変位600mmのときでタイプ1より20%弱少ない程度である。タイプ3はタイプ2と大差はなく、タイプ4はタイプ2より反り変形量が大きくなる傾向があり、反り変形量/高さ寸法比を低減する上では逆効果となる。
【0026】
これに対し、タイプ5は他のどのタイプよりも反り変形量が全体的に大幅に減少しており、タイプ1〜タイプ5の中では反り変形量/高さ寸法比を低減する効果が最も大きいことが分かる。
【0027】
ここで、タイプ1とタイプ5のそれぞれに、単調に0〜740mmの水平変形を与えたとき、ダンパー材の累積塑性歪み平均値に対する累積塑性歪みが最も大きい部分の倍率を計算すると、図12のようになる。図12はダンパー材に与える水平変形の方向を0度(湾曲面内)方向、90度(湾曲面に直交する)方向、及び45度(前記2方向の中間)方向とした場合の倍率である。
【0028】
この図12から、請求項2に記載の発明のタイプ5はどの方向への水平変形に対しても累積塑性歪み集中度がタイプ1より少ないこと、すなわち極端に歪み集中することなく、ダンパー材各部がエネルギーを吸収していることが示されており、疲労特性が向上していると言える。
【0029】
次にタイプ1とタイプ5のそれぞれに、単調に0〜740mmの水平変形を与えたときの荷重と変形の関係を図13〜図15に示す。図13は0度(湾曲面内)方向、図14は45度方向、図15は90度(湾曲面に直交する)方向の結果である。この結果から、0度(湾曲面内)方向(図13)と90度(湾曲面に直交する)方向(図15)において、タイプ1は変位0.1m付近から荷重が減る傾向があり、力学的に不安定挙動が見られるが、タイプ5ではそのような傾向がなく、安定していることが分かる。
【0030】
図13、図15中の実線はそれぞれタイプ5の0度(湾曲面内)方向、90度(湾曲面に直交する)方向の降伏荷重がほぼ等しい関係になるように領域Cと領域Aの幅寸法を決定した場合の解析結果であり、図13、図15共に降伏荷重は60kNとなっている。因みに図13、図15中の破線は図3に示す中間部の幅が一様な場合の荷重−変形関係を示すが、0度(湾曲面内)方向(図13)の降伏荷重は75kN程度、90度(湾曲面に直交する)方向(図15)の降伏荷重は55kNとなっており、両方向の降伏荷重の差が大きいのに対し、本発明では降伏耐力の方向性が少ない効果があることが分かる。
【0031】
更にタイプ5の0度方向、45度方向、90度方向の各方向の荷重−水平変形関係の試験結果を図16〜図18に示すが、ここに示すように0度方向、45度方向、90度方向の各方向の荷重−水平変形関係はほぼ同等(例えば±300mmのループと変位0mmの軸との交点の示す荷重はどれもほぼ60kN)であることから、特許文献1で指摘されていた降伏荷重の方向性を解消する上でも、請求項2に記載の発明では効果があることが試験結果からも確認できる。
【0032】
ダンパー材は両端部においてベースプレートにボルトにより接合されるが、ベースプレートに接合されているダンパー材の両端部がボルトの軸に直交する方向に過大な作用力を受ける結果として、ダンパー材がベースプレートに対して滑りを生ずる問題に対しては、請求項3に記載のように各ダンパー材の両側の端部と、それが対向する各ベースプレートとが接触する面のいずれか一方の面に凸部を、他方の面に前記凸部が嵌合する凹部を形成し、この凸部と凹部を互いに嵌合させた状態でダンパー材の端部をベースプレートに接合することにより、滑りを生じさせる荷重を高く設定してダンパー材を滑りにくくし、滑りに伴う一時的な荷重低下を防止する。この場合、ダンパー材は両端部において直接、両ベースプレートにボルトにより接合される。
【0033】
凸部と凹部はダンパー材端部とベースプレートとの接触する面に直接形成される他、請求項4に記載のようにダンパー材の少なくともいずれか一方の端部と、それが対向する各ベースプレートとの間にフィラープレートを挟み込み、フィラープレートとダンパー材端部との両接触面のいずれか一方の面に凸部を、他方の面に前記凸部が嵌合する凹部を形成する場合もある。
【0034】
この場合、凸部と凹部が互いに嵌合した状態でダンパー材の端部がフィラープレートに接合され、フィラープレートはボルト等によりベースプレートに接合される。ダンパー材は両端部において間接的に両ベースプレートにボルトにより接合される。
【0035】
フィラープレートをボルトによりベースプレートに接合する場合にはダンパー材の端部に作用する力によりフィラープレートとベースプレートとの接触面が滑らないようにボルト本数やボルト間隔等が調整される。
【0036】
ダンパー材の端部とベースプレートをそれぞれに形成した凸部と凹部の嵌合とボルトにより接合した場合(請求項3、もしくは請求項4)と、ボルトのみによって接合した場合の接合効果を図19に示すような部分モデルにおいて実験的に確認した結果を図20に示す。図20では凸部と凹部の嵌合部分に荷重Pによる曲げモーメントを加えたときの荷重と荷重方向の変位との関係を実線で、凸部と凹部の嵌合を併用しない摩擦接合の場合の同じ曲げモーメントを加えたときの荷重と荷重方向の変位との関係を破線で示す。
【0037】
ここではダンパー材2に相当する2枚の平鋼の一方側の端部間にベースプレート1に相当する固定板を挟み込み、2枚の平鋼と固定板をボルト5に相当する高力ボルトで接合すると共に、凸部3と凹部4の嵌合として平鋼と固定板の双方にシアキーを嵌合させ、2枚の平鋼の他方側の端部(加力点側)同士を、間隔を隔てて同じく高力ボルトにより一体化させ、曲げモーメントを図19−(a) に示すように平鋼の幅方向に荷重Pを作用させることにより与えている。凸部と凹部の嵌合を併用しない場合では平鋼と固定板の接触面をショットブラスト処理し、高力ボルトによる摩擦力を確保している。
【0038】
図20より、実線で示す凸部と凹部の嵌合を併用した請求項3、もしくは請求項4の場合には、最大荷重、変形能力共、破線で示す嵌合を併用しない従来の場合より大きく上回っていることが分かる。また従来の場合には19kN近傍で摩擦力が切れ、滑りによる一時的な荷重低下が生じているのに対し、請求項3、もしくは請求項4の場合にはそのような滑りが発生せず、最大荷重まで安定した力学特性を有していることが分かる。
【0039】
以上のことから、曲げモーメントを受けるダンパー材とベースプレートとのボルト接合部分において、凸部と凹部の嵌合を併用することによって併用しない場合より耐力向上、及び滑りによる荷重低下抑制の効果が顕著に表れていることが確認された。
【0040】
ダンパー材は免震ダンパーとしては複数本組み合わせられて使用されるが、降伏荷重や剛性等の方向性がなるべく生じないようにする上では、請求項5に記載のように複数本のダンパー材が平面上、放射状に、または点対称、もしくは線対称となるように配置される。
【0041】
この場合、複数本のダンパー材が平面上、均等に配置されることで、免震ダンパーとしての水平力に対する耐力と剛性の方向性が平均化され、例えば4本のダンパー材が平面上、十字形に配置された場合に、いずれかの方向(X方向)の水平力に対しては各ダンパー材の耐力の発揮と変形の性状は異なるが、各方向のダンパー材がその材軸とX方向とのなす角度に応じた耐力と剛性を発揮する。
【0042】
X方向があるダンパー材の材軸方向に一致した場合、X方向に材軸が一致したダンパー材と、それに直交する方向の2本のダンパー材がそれぞれの耐力を発揮して抵抗し、X方向があるダンパー材の材軸方向と45°の角度をなす場合は4本のダンパー材が均等に耐力を発揮して抵抗し、組み合わせられた複数本のダンパー材全体としては水平力の作用方向に関係なく、独立した4本のダンパー材の耐力と剛性の合計分の耐力と剛性を発揮する。
【0043】
免震ダンパーは上部躯体と下部躯体の間にアイソレータとは独立して設置される他、アイソレータと組み合わせた形で設置される。その場合、ベースプレートは請求項6に記載のようにアイソレータの上下に、アイソレータとは分離する形で、またはアイソレータの上下のフランジを兼ねる形で配置され、複数本のダンパー材はアイソレータの周囲に配置され、アイソレータに一体的に取り付けられる。
【0044】
免震ダンパーのベースプレートがアイソレータのフランジを兼ねる場合は、フランジが省略されるため、フランジ分の鋼材が節減され、製作コストの削減が図られる。また免震ダンパーがアイソレータと一体になることで、免震ダンパーとアイソレータを独立して設置する場合程の設置空間を必要としないため、上部躯体と下部躯体の間の空間の自由度が増す利点がある。更にまた、免震ダンパーとアイソレータが独立した場合よりも、設置箇所数が減るため、施工手間及び据え付け費用の低減にもなる。
【0045】
【発明の実施の形態】
図1及び図2に請求項2に記載の発明の免震ダンパーAの実施形態を示す。免震ダンパーAは弾塑性特性を有する金属材料製の湾曲した複数本のダンパー材2から構成される。
【0046】
請求項2に記載の発明における各ダンパー材2はボルト孔2aの明いた両側の端部2Eと、両側の端部2E,2Eの幅寸法より幅寸法の小さい中間部2Dの3部分からなり、中間部2Dは更に湾曲前の展開状態で中央に位置する一様幅の中央部2B(領域B)と、前記端部2E寄りに位置し、中央部2B(領域B)の幅寸法と等しい幅寸法で、一様幅の端部寄り部分2A(領域A)と、中央部2B(領域B)と端部寄り部分2A(領域A)の中間に位置し、中央部2B(領域B)の幅寸法より小さい幅寸法で、一様幅の中央部寄り部分2C(領域C)とに区分され、中央部2B(領域B)と中央部寄り部分2C(領域C)の間(※)の幅、及び中央部寄り部分2C(領域C)と端部寄り部分2A(領域A)の間(※)の幅、並びに端部寄り部分2A(領域A)と端部2Eの間(※)の幅は連続的に変化している。
【0047】
ダンパー材2は金属材料の板材から切り出した素材を中間部2Dの中央を一様幅部分の中心線を対称軸として冷間、もしくは熱間にてプレス等にて曲げ加工することによりU字状に仕上げられる。その後、過度の残留歪みを除去するための熱処理として焼きならしが施される。
【0048】
上記した端部寄り部分2A(領域A)、中央部2B(領域B)、中央部寄り部分2C(領域C)のそれぞれの幅寸法は設計上必要とされる降伏耐力に応じて決定される。例えば板厚一定とすると、0度(湾曲面内)方向の降伏荷重を主に決定する部分は中央部寄り部分2C(領域C)の板厚であり、90度(湾曲面に直交する)方向の降伏荷重を主に決定する部分は端部寄り部分2A(領域A)であることが構造力学的に分かる。
【0049】
すなわち0度(湾曲面内)方向に変形するときには中央部寄り部分2C(領域C)の板面外の曲げ降伏耐力がこの方向の降伏荷重をほぼ決定付け、90度(湾曲面に直交する)方向に変形するときには端部寄り部分2A(領域A)の最も両端部2E,2E寄りの断面における板面内の曲げ降伏耐力がこの方向の降伏荷重をほぼ決定付けるので、ダンパー材2としての両方向の降伏荷重がほぼ等しくなる幅を選択すればよい。
【0050】
ダンパー材2の完成状態を示す図2では板厚を40mmとしたとき、端部2Eの幅寸法を140mm、端部寄り部分2Aの幅寸法と中央部2Bの幅寸法を84mm、中央部寄り部分2Cの幅寸法を60mmとしている。
【0051】
この図2に示す形状のダンパー材2の0度(湾曲面内)方向、及び90度(湾曲面に直交する)方向の降伏荷重は前記した通り、60kNであり(図13、図15)、降伏耐力の方向性が少ないことが確認されている。
【0052】
複数本のダンパー材2は図29−(a)に示すようにアイソレータ10の設置層を挟んで上下に区分される上部躯体Bと下部躯体Cに直接、もしくは定着板8を挟んで間接的に固定されるベースプレート1,1間に架設され、両側の端部2E,2Eにおいて両ベースプレート1,1にボルト5により接合される。
【0053】
請求項3に記載の発明の免震ダンパーAは各ダンパー材2の両側の端部2E,2Eと、それが対向する各ベースプレート1を互いに対向する方向に嵌合させた状態で、端部2E,2Eをベースプレート1にボルト5により接合した場合である。
【0054】
図21に示すように凸部3は各ダンパー材2の両側の端部2E,2Eと、その側のベースプレート1の両接触面のいずれか一方の面に形成され、他方の面に対向する方向に凸部3が嵌合する凹部4が形成される。
【0055】
各ダンパー材2の両側の端部2E,2Eは凸部3と凹部4が互いに嵌合した状態でボルト5によりベースプレート1に接合される。図21はダンパー材2の材軸に沿った縦断面を、図23は凸部3と凹部4の嵌合前の様子を示す。図22−(a)はダンパー材2の端部2Eの、ベースプレート1に対向する面を、(b)はベースプレート1の、ダンパー材2に対向する面を示す。
【0056】
図22、図23に示すようにダンパー材2の両端部2E,2Eの、ベースプレート1との接合部分にはボルト5が貫通、もしくは螺入するボルト孔2aが形成され、ベースプレート1の、ダンパー材2のボルト孔2aに対応した位置にボルト5が螺入するボルト孔1aが形成される。凸部3、もしくは凹部4はこのボルト孔2a,1aを包囲するように、またはボルト孔2a,1aの近傍に形成される。
【0057】
凸部3は互いに接合される面であるダンパー材2の端部2Eの、ベースプレート1側の面とベースプレート1の、ダンパー材2側の面のいずれか一方、または双方に形成され、凹部4は他方に、または双方に形成される。
【0058】
凹部4は例えば切削や熱間プレス等の方法により形成され、凸部3は図21〜図24に示すように例えば凹部4と同様に形成した凹溝にピン等のシアキーを嵌入させることにより、あるいは図25〜図27に示すように切削や熱間プレス等の方法により凸部3と凹部4が交互に波形状に形成されるが、凸部3と凹部4は水平方向にずれないように互いに密着した状態で、ダンパー材2の端部2Eの板厚方向、すなわちダンパー材2とベースプレート1が対向する方向に嵌合すればよく、それぞれの形成方法は問われない。
【0059】
図21〜図24はダンパー材2の両端部2E,2Eに、材軸方向に並列するボルト孔2a,2aを形成し、その周囲に凹部4を形成し、ベースプレート1のボルト孔1aの周囲に凸部3を形成した場合を示す。
【0060】
ダンパー材2とベースプレート1は図23に示すダンパー材2とベースプレート1の嵌合による接合後、ボルト5によって板厚方向に接合される。ボルト5はダンパー材2とベースプレート1を板厚方向に接合し、両者を密着した状態に維持する役目を持つため、ボルト5には必要によりばね座金その他の緩み止めが付けられる。
【0061】
図25〜図26は前記のようにダンパー材2とベースプレート1のそれぞれに対して凸部3と凹部4が交互に波形状に配列するように凸部3と凹部4を形成した場合を示す。
【0062】
図25はダンパー材2とベースプレート1にそれぞれ1個のボルト孔2a、1aを形成し、この1個のボルト孔2a、1aを包囲するように長方形状の凸部3と凹部4を形成した場合、図26はダンパー材2とベースプレート1にそれぞれ2個のボルト孔2a、1aを形成し、各ボルト孔2a、1aを包囲するように円形状の凸部3と凹部4を形成した場合である。
【0063】
図27、図28は請求項4に記載の発明の免震ダンパーAにおけるダンパー材2とベースプレート1との接合状態を示す。請求項4の免震ダンパーAは各ダンパー材2の少なくともいずれか一方の端部2Eと、それが対向する各ベースプレート1との間にフィラープレート6を挟み込み、フィラープレート6とダンパー材2の端部2Eを互いに嵌合させてダンパー材2をフィラープレート6に接合し、フィラープレート6をボルト7によりベースプレート1に接合したものである。
【0064】
フィラープレート6は各ダンパー材2の少なくともいずれか一方の端部2Eと、それが対向するベースプレート1との間に挟み込まれ、フィラープレート6とダンパー材2の端部2Eとが接触する面のいずれか一方の面に凸部3が、他方の面に凸部3が嵌合する凹部4が形成され、各ダンパー材2の少なくともいずれか一方の端部2Eが凸部3と凹部4が互いに嵌合した状態でフィラープレート6に接合される。
【0065】
フィラープレート6はダンパー材2の両端部2E,2Eに配置される場合と、図28に示すようにいずれか一方の端部2Eにのみ配置される場合がある。フィラープレート6はベースプレート1に、両者を貫通するボルト7により接合される。
【0066】
凸部3と凹部4はダンパー材2とベースプレート1間に作用するせん断力に対してダンパー材2の端部2Eを滑りにくくするために形成されることから、ダンパー材2の端部2Eとフィラープレート6の両接触面に形成されればよく、凸部3と凹部4は主として図27−(a)に示すようにダンパー材2の端部2Eをベースプレート1に接合するボルト5の周囲や近傍に形成される。但し、フィラープレート6がベースプレート1にボルト7で接合されることによるフィラープレート6の滑りを抑制するために、ベースプレート1とフィラープレート6間に凸部3と凹部4を形成することもある。
【0067】
図27に示すように凸部3と凹部4をダンパー材2とフィラープレート6にのみ形成し、フィラープレート6とベースプレート1を凸部3と凹部4の嵌合を併用せず、両者を貫通するボルト7のみによって接合する場合にはフィラープレート6を予めダンパー材2にボルト5により接合しておくことにより、フィラープレート6とベースプレート1との接合を従来通り、ボルト7による接合のみによって行える簡便さがある。
【0068】
また、ボルト7による接合時には、ボルト孔7aとのがたがあるので、凸部3と凹部4を形成した場合のように、凸部3と凹部4の形成上の位置寸法誤差を吸収するための位置調整をする必要がなく、被震後、機能を果たしたダンパー材2に交換の必要が生じたときにも、ダンパー材2をフィラープレート6と共に交換すればよいため、交換時にも凸部3と凹部4の位置寸法誤差をフィラープレート6のボルト孔7aのがたにより吸収できる利点がある。
【0069】
前記のようにダンパー材2のいずれか一方の端部2Eにのみフィラープレート6を配置してもよく、図28はそのような場合を示す。ここでは上部躯体Bに固定される上部のベースプレート1とダンパー材2の上側の端部2Eとの間にフィラープレート6を挟み込み、フィラープレート6とダンパー材2に形成された凸部3と凹部4を嵌合させた状態で、ダンパー材2とフィラープレート6を貫通するボルト5により両者を接合し、フィラープレート6と上部のベースプレート1とをボルト7により接合している。下部躯体Cに固定される下部のベースプレート1とダンパー材2の下側の端部2Eとは、ボルト5のみにより接合している。
【0070】
この場合、フィラープレート6が介在するダンパー材2の端部2Eとベースプレート1との接合は、ボルト孔7aとのがたを有するボルト7による接合のみによって行えるため、予めベースプレート1が上部躯体Bや下部躯体Cに固定されている場合の、ベースプレート1へのダンパー材2の取付作業が単純化される。
【0071】
図29〜図38に請求項1、もしくは請求項2の免震ダンパーAにおける複数本のダンパー材2をベースプレート1,1に取り付けた請求項5に記載の発明の具体例を示す。図29〜図38はダンパー材2の配置を説明するための図であることから、ここでは簡単のため、ダンパー材2を一様幅で表示している。
【0072】
図29は4本のダンパー材2を平面上、十字形に配置し、各端部2Eを2本のボルト5,5で上下のベースプレート1,1に固定した場合を示す。図29−(a)、(b)はダンパー材2の軸を正方形状のベースプレート1の辺に平行に配置した場合、(c)はダンパー材2の軸をベースプレート1の対角線方向に向けて配置した場合を示す。
【0073】
ダンパー材2は水平変形を受けると、ある程度の鉛直方向の反り上がりがあるため、図30−(a)に示すようにダンパー材2の軸と、破線で示す上部躯体Bの梁の軸が一致するような形で配置した場合には、図30−(a)のx−x線断面図である図30−(b)に示すようにダンパー材2が上部躯体Bの梁と干渉しないようにするための隙間h1を確保する必要がある。このため、免震ピットの高さh0が隙間h1だけ高くなり、それだけコスト高となる。
【0074】
そこで、ダンパー材2を図31−(a)に示すように、ベースプレート1の辺とダンパー材2の軸とのなす角度が例えば45度となるように配置することで、ダンパー材2に鉛直方向の反り上がりがあってもダンパー材2が上部躯体Bの梁に干渉することがなくなり、図31−(a)のy−y線断面図である図31−(b)に示すように図30−(b)における隙間h1を確保する必要がなくなる利点がある。図29−(c)はこのような配置に適したベースプレート1とダンパー材2の組み合わせ例である。
【0075】
同様の考え方によりダンパー材2が4本以外の場合にもダンパー材2の軸と上部躯体Bの梁の軸が平行とならない配置にすることは有効である。下部躯体Cの隙間h2は免震ピットに水が溜まった場合に、免震ダンパーAを水から保護する等のためにもともと必要な空間である。
【0076】
ベースプレート1は上部躯体Bと下部躯体Cに直接固定される場合もあるが、図29では、上部躯体Bと下部躯体Cに予め固定された定着板8,8にベースプレート1,1をボルト9等により固定している。定着板8、または上部躯体Bと下部躯体Cに直接固定される場合のベースプレート1は、上部躯体Bと下部躯体Cに対しては例えば図40−(a)に示すようにスタッドボルト等を定着させることにより固定される。
【0077】
図32は4本のダンパー材2を平面上、ベースプレート1の中心に関して点対称に配置した場合、図33は6本のダンパー材2を放射状に配置した場合、図34は8本のダンパー材2を2本一組にし、十字形に配置した場合を示す。
【0078】
図35〜図38は請求項1乃至請求項5の免震ダンパーAにおけるベースプレート1,1を積層ゴム支承等のアイソレータ10の上下に配置し、複数本のダンパー材2をアイソレータ10の周囲に配置した請求項6に記載の発明の具体例を示す。
【0079】
図35、図36はベースプレート1,1をアイソレータ10の上下のフランジとして兼用した場合を示す。図35、図36ではベースプレート1に凸部3や凹部4を形成せずに済むよう、ダンパー材2の両端部2E,2Eとベースプレート1,1との間にフィラープレート6を挟んでいるが、ここでもフィラープレート6はダンパー材2の一方の端部2Eにのみ使用される場合と、全く使用されない場合もある。また、ここでは上部躯体Bと下部躯体Cに固定された定着板8,8にベースプレート1,1をボルト9により固定しているが、ベースプレート1,1は上部躯体Bと下部躯体Cに直接固定される場合もある。
【0080】
また、フィラープレート6は用いるが、凸部3、凹部4を全く形成しない方式も隙間調整として有用である(図37、図38も同様)。
【0081】
図35は正方形状のベースプレート1の各隅角部にダンパー材2を配置した場合、図36はアイソレータ10の周辺に機器が混在するような場合を想定し、1方向に長い多角形状をしたベースプレート1の長軸方向の両側にそれぞれ2本のダンパー材2,2を直交させて配置した場合である。
【0082】
図35、図36のようにベースプレート1をアイソレータ10のフランジとして兼用し、アイソレータ10の周囲にダンパー材2を配置した場合には、アイソレータ10のフランジを省略できる上、上部躯体Bと下部躯体C間にアイソレータ10と免震ダンパーAを独立して設置する場合に比べ、設置空間を占有せずに済む利点がある。
【0083】
図37、図38はベースプレート1,1を、アイソレータ10を上部躯体Bと下部躯体Cに固定するための定着板8,8として兼用し、ダンパー材2の両端部2E,2Eとベースプレート1,1との間にフィラープレート6を挟んでベースプレート1,1をボルト7により定着板8,8に固定した場合を示す。
【0084】
この場合、アイソレータ10は上下のフランジ11,11は定着板8,8としてのベースプレート1,1に固定されることになり、フランジ11,11付きのアイソレータ10の製作と、ダンパー材2の製作を分離して行える利点がある。
【0085】
図37はダンパー材2をベースプレート1から外側へ張り出して配置した場合、図38は免震ダンパーAがコンパクトになるように、ダンパー材2をベースプレート1の内側に配置した場合である。
【0086】
また図39は、端部2Eと同幅のフィラープレート6を用いる場合で、ダンパー材2及びフィラープレート6を、ボルト5,5にて直接ベースプレート1に接合する方法を示しており、アイソレータ10とダンパー材2を一体化させた時に、上下のベースプレート1,1の内法寸法とダンパー材2の高さとのギャップを埋める最も簡易な方法である。なお、この場合、必ずしも凸部3、凹部4の形成は要件ではない。
【0087】
【発明の効果】
請求項1、請求項2に記載の発明によれば、湾曲状ダンパー材に湾曲面内に水平変形を与えたとき、中間部の幅寸法を単純に一定とした場合において顕著に見られた鉛直方向への反り変形を大幅に減らすことができ、その結果、以下の効果を得ることができる。
【0088】
反り変形が減ることで、ダンパー材の特定部分への歪み集中が緩和されるため、疲労特性が向上し、繰り返し変形を受けたときに破断するまでのサイクル数が増大し、ダンパー性能が向上する。
【0089】
鉛直方向の反り変形が減少することで、ダンパー材の上下空間に配置される配管等の設備や建物躯体との干渉が抑制され、また上部空間が少なくて済むので、コスト低減等、実用面で有利である。
【0090】
与えられる変形の方向による降伏荷重や履歴特性の差が、中間部の幅寸法を単純に一定とした場合のダンパー材に比べ、格段に少なくなり、実用上、免震ダンパーとしての方向性を考慮する必要がないため、設計上の煩雑さがなくなる。
【0091】
請求項3に記載の発明によれば、ダンパー材の両端部とベースプレートとの接触面に凹部と凸部を形成し、嵌合させてボルトを締め付けることにより、ダンパー材が変形を受けたときに、ダンパー材両端部とベースプレートとの接触面における滑り現象が発生しにくくなるため、滑りに伴う一時的な荷重低下を防ぐことができ、免震ダンパーとしての履歴特性が良好になる。
【0092】
請求項4ではダンパー材の端部とベースプレートとの間にフィラープレートを介在させ、ダンパー材端部のフィラープレート側の面と、フィラープレートのダンパー材側の面に凸部と凹部を形成するため、ベースプレートに凸部と凹部を形成する必要がなく、ダンパー材、もしくはフィラープレートとベースプレートとの接合をボルトのみによって行えばよく、凸部と凹部を嵌合させながらボルト接合する場合に、位置寸法の製作及び組み立て誤差を吸収し易くなる。またダンパー材の取り替え時に、上部躯体側と下部躯体側のボルト孔が平面的に大きくずれていた場合には、フィラープレートの孔位置の調整のみで対処し得る。
【0093】
請求項5では複数本のダンパー材を平面上、放射状に、または点対称、もしくは線対称となるように均等に配置することで、免震ダンパーとしての水平力に対する降伏荷重と履歴特性の方向性を平均化することができ、免震ダンパーとしての機能上の方向性が更に少なくなるため、免震建物を設計する場合の方向性を気にする必要がない。
【0094】
請求項6ではベースプレートをアイソレータの上下に、アイソレータのフランジを兼ねる形で配置した場合、複数本のダンパー材をアイソレータの周囲に配置するため、フランジが省略される結果、フランジ分の鋼材が節減され、製作コストの削減が図られる。
【0095】
また免震ダンパーがアイソレータに組み合わせられることで、免震ダンパーとアイソレータを独立して設置する場合に比べ、設置空間を必要としないため、上部躯体と下部躯体の間の空間の自由度が増す。更に設置箇所数が減るので、施工費の抑制につながる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項2に記載の発明であるダンパー材の形状説明のために示した、湾曲前の展開状態の平面図である。
【図2】 (a)は請求項2に記載の発明(タイプ5)の湾曲したダンパー材を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【図3】 (a)は本発明のダンパー材と対比される、中間部の幅寸法を一定にした従来のタイプ1のダンパー材を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【図4】 (a)は請求項2に記載の発明のダンパー材と対比される、ダンパー材解析モデルであるタイプ2のダンパー材を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【図5】 (a)は請求項2に記載の発明のダンパー材と対比される、ダンパー材解析モデルであるタイプ3のダンパー材を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【図6】 (a)は請求項2に記載の発明のダンパー材と対比される、ダンパー材解析モデルであるタイプ4のダンパー材を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【図7】タイプ1のダンパー材の湾曲面内に85mmの水平変形を与えたときの変形状況を示した斜視図である。
【図8】タイプ1のダンパー材の湾曲面内に120mmの水平変形を与えたときの変形状況を示した斜視図である。
【図9】タイプ1のダンパー材の湾曲面内に水平変形を与えたときの変形後の状況を示した立面図である。
【図10】タイプ5のダンパー材の湾曲面内に120mmの水平変形を与えたときの変形状況を示した斜視図である。
【図11】ダンパー材解析モデルのタイプ1〜タイプ5の湾曲面内の水平変位と鉛直方向の変位(ダンパー材高さに対する鉛直方向の変位の比)の関係の解析結果を示したグラフである。
【図12】ダンパー材解析モデルのタイプ1とタイプ5の、累積塑性歪みの集中程度(最大値/平均値)の載荷方向別の関係の解析結果を示したグラフである。
【図13】ダンパー材解析モデルのタイプ1とタイプ5の、荷重と水平変位(0度方向)の関係の解析結果を示したグラフである。
【図14】ダンパー材解析モデルのタイプ1とタイプ5の、荷重と水平変位(45度方向)の関係の解析結果を示したグラフである。
【図15】ダンパー材解析モデルのタイプ1とタイプ5の、荷重と水平変位(90度方向)の関係の解析結果を示したグラフである。
【図16】ダンパー材解析モデルのタイプ5に0度方向に変位漸増繰り返し載荷したときの水平変位と荷重の関係を示したグラフである。
【図17】ダンパー材解析モデルのタイプ5に45度方向に変位漸増繰り返し載荷したときの水平変位と荷重の関係を示したグラフである。
【図18】ダンパー材解析モデルのタイプ5に90度方向に変位漸増繰り返し載荷したときの水平変位と荷重の関係を示したグラフである。
【図19】 (a)はダンパー材とベースプレートの接合に凹部と凸部の嵌合を併用した部分モデルに曲げモーメントを加えるときの様子を示した平面図、(b)は(a)の縦断面図である。
【図20】図19に示すモデルと嵌合を併用しないモデルの荷重と変位の関係を示したグラフである。
【図21】請求項3に記載の免震ダンパーのダンパー材とベースプレートの接合状態を示した縦断面図である。
【図22】 (a)は図21に示すダンパー材の接触面を示した平面図、(b)はベースプレートの接触面を示した平面図である。
【図23】図21の接合前の状態を示した縦断面図である。
【図24】 (a)は図21に示すダンパー材の接触面の別パターンを示した平面図、(b)はベースプレートの接触面を示した平面図である。
【図25】 (a)は免震ダンパーにおける他のダンパー材の接触面を示した平面図、(b)はベースプレートの接触面を示した平面図、(c)はダンパー材とベースプレートの接合状態を示した縦断面図である。
【図26】 (a)は免震ダンパーにおける他のダンパー材の接触面を示した平面図、(b)はベースプレートの接触面を示した平面図である。
【図27】 (a)は請求項4に記載の免震ダンパーにおけるダンパー材とフィラープレート及びベースプレートの接合状態を示した縦断面図、(b)は平面図である。
【図28】 (a)は免震ダンパーのダンパー材とベースプレートの接合状態を示した立面図、(b)は平面図である。
【図29】 (a)は請求項1、もしくは請求項2に記載の免震ダンパーにおけるダンパー材の配置例を示した立面図、(b)は(a)の横断面図、(c)はダンパー材の他の配置例を示した横断面図である。
【図30】 (a)はダンパー材の軸と上部躯体の梁の軸を一致させて(平行にして)ダンパー材を配置した様子を示した平面図、(b)は(a)のx−x線断面図である。
【図31】 (a)はダンパー材の軸と上部躯体の梁の軸とのなす角度が45度となるようにダンパー材を配置した様子を示した平面図、(b)は(a)のy−y線断面図である。
【図32】4本のダンパー材をベースプレートの中心に関して点対称に配置した場合を示した横断面図である。
【図33】6本のダンパー材を放射状に配置した場合を示した横断面図である。
【図34】8本のダンパー材を2本単位で十字形に配置した場合を示した横断面図である。
【図35】請求項1、もしくは請求項2に記載の免震ダンパーをアイソレータと組み合わせて設置した状態を示した立面図、(b)は(a)の横断面図である。
【図36】請求項1、もしくは請求項2に記載の免震ダンパーをアイソレータと組み合わせた場合の、ダンパー材の他の配置例を示した横断面図である。
【図37】 (a)は請求項1、もしくは請求項2に記載の免震ダンパーとアイソレータの他の組み合わせ例を示した立面図、(b)は(a)の横断面図である。
【図38】請求項1、もしくは請求項2に記載の免震ダンパーにおけるダンパー材の他の配置例を示した横断面図である。
【図39】図35〜図38とは別のダンパー材接合方式の説明図であり、(a)は請求項6に記載の免震ダンパーにおけるベースプレートとフィラープレート及びダンパー材の接合状態を示した縦断面図、(b)は平面図である。
【図40】 (a)は鋼材の端部をプレートにボルト接合した従来の免震ダンパーを示した立面図、(b)は(a)の横断面図である。
【図41】 (a)は他の従来の免震ダンパーを示した立面図、(b)は(a)の横断面図である。
【符号の説明】
A……免震ダンパー、1……ベースプレート、1a……ボルト孔、2……ダンパー材、2a……ボルト孔、2E……端部、2D……中間部、2A……端部寄り部分、2B……中央部、2C……中央部寄り部分、3……凹部、4……凸部、5……ボルト、6……フィラープレート、7……ボルト、8……定着板、9……ボルト、10……アイソレータ、11……フランジ、B……上部躯体、C……下部躯体。

Claims (6)

  1. 免震建物の免震層を挟んで上下に区分される上部躯体と下部躯体のそれぞれに直接、もしくは間接的に固定されるベースプレートと、両ベースプレート間に架設され、両端部において直接、もしくは間接的に両ベースプレートにボルトにより接合される、弾塑性特性を有する金属材料製のU字形に湾曲した複数本のダンパー材から構成され、各ダンパー材はボルト孔の明いた両側の端部2E,2Eと、この両側の端部2E,2Eの幅寸法より幅寸法の小さい中間部2Dの3部分からなり、中間部2Dは湾曲前の展開状態において中央に位置する一様幅の中央部2Bと、前記端部2E寄りに位置する一様幅の端部寄り部分2Aと、中央部2Bと端部寄り部分2Aの中間にあって、湾曲状態でU字形の湾曲部分と直線部分との境界近傍に位置し、中央部2Bの幅寸法と端部寄り部分2Aの幅寸法未満の幅寸法で、且つ一様幅の中央部寄り部分2Cとに区分されており、中央部2Bと中央部寄り部分2Cの間の幅、及び中央部寄り部分2Cと端部寄り部分2Aの間の幅、並びに端部寄り部分2Aと端部2Eの間の幅は連続的に変化していることを特徴とする免震ダンパー。
  2. 端部寄り部分2Aの幅寸法は中央部2Bの幅寸法と等しい請求項1記載の免震ダンパー。
  3. 各ダンパー材の両側の端部と、それが対向する各ベースプレートとが接触する面のいずれか一方の面に凸部が、他方の面に前記凸部が嵌合する凹部が形成され、各ダンパー材は前記凸部と凹部が互いに嵌合した状態でベースプレートにボルトにより接合されている請求項1、もしくは請求項2記載の免震ダンパー。
  4. 各ダンパー材の少なくともいずれか一方の端部と、それが対向する各ベースプレートとの間にフィラープレートが挟み込まれ、フィラープレートとダンパー材の端部とが接触する面のいずれか一方の面に凸部が、他方の面に前記凸部が嵌合する凹部が形成されており、各ダンパー材は前記凸部と凹部が互いに嵌合した状態でフィラープレートに接合され、そのフィラープレートはボルトによりベースプレートに接合されている請求項1、もしくは請求項2記載の免震ダンパー。
  5. 複数本のダンパー材は平面上、放射状に、または点対称、もしくは線対称に配置されている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の免震ダンパー。
  6. ベースプレートはアイソレータの上下に配置され、複数本のダンパー材がアイソレータの周囲に配置され、アイソレータに一体的に取り付けられている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の免震ダンパー。
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