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JP3686126B2 - 漁網 - Google Patents

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JP3686126B2
JP3686126B2 JP17325895A JP17325895A JP3686126B2 JP 3686126 B2 JP3686126 B2 JP 3686126B2 JP 17325895 A JP17325895 A JP 17325895A JP 17325895 A JP17325895 A JP 17325895A JP 3686126 B2 JP3686126 B2 JP 3686126B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高比重と高強度、そして実用上十分な耐光性を兼ね備えた複合繊維を網糸の断面積比で50%以上使用した漁網に関するものであり、漁獲性能ならびに網の生産性に優れ、かつ、環境汚染のない安全性の高い漁網に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に漁網には、漁獲性能に大きく影響する海水中での高沈降性や潮流に対する保形性(吹かれが少ない)の他に、耐久性に優れていること、操業性の点から抱水量が少ないことなどが求められている。
この内、とくに高沈降性と保形性が重視され、比重の大きな繊維が使用されてきた。
【0003】
かかる高比重繊維としては、比較的比重の大きな塩化ビニリデン系繊維が広く用いられてきたが、製網技術の発達に伴い、高速製網に安定して供給し得る高強度の繊維が求められるようになってきている。
この要求に対して、(1)樹脂中に高比重物質を均一分散させてなる繊維(例えば特公昭51−37378号公報)、(2)低軟化点樹脂中に高比重物質を分散混合し、さらにこれに強度付与のために別の樹脂を混合した繊維(特公昭57−20407号公報)、(3)低軟化点樹脂と高比重物質の混合物を芯、強度付与を目的とする樹脂を鞘とする芯鞘繊維(特開昭58−4819号公報)、さらには、通常の繊維に高比重物質をコ−ティングした繊維等が提案されている。
【0004】
しかしながら、かかる従来の高比重繊維は、いずれも上記の要求特性のうち比重のみを満足するものであって繊維物性としては不十分なものであった。さらに比重の付与手段にも重大な欠点を有していた。
まず、繊維物性上の問題から説明すると、第1の問題は強度が低いことであり、第2の問題は非常に耐光性に劣ることである。
従来の高比重繊維として公知の塩化ビニリデン系繊維では繊維強度は2g/d程度、ナイロンやポリエステル繊維に高比重物質を担持させた繊維でも1〜2g/d程度にすぎず、強度的な問題があった。
このため、かかる繊維を漁網として使用するには多くの場合、テンションメンバ−として他の補強糸を併用して使用せざるを得ないのが実情であり、工程性及び網の生産性が低下してしまう。
【0005】
また、漁網は多くの場合、使用後、太陽光下でから干しするが、その際、日光の照射により著しい強度劣化を伴い、漁網として長期間使用できなくなるという耐光性の問題もあった。塩化ビニリデン系繊維しかり、ナイロンやポリエステル繊維に高比重物質を担持させた繊維もまたしかりである。前者の場合は、ポリマ−自身が光に対して不安定であり、後者の場合は、その機構は明確でないが、担持した高比重物質(一般に鉛またはその化合物)の作用があるものと見られる。
【0006】
次に、比重の付与手段の欠点について述べる。
それは、その手段が環境汚染を引き起こすという欠点である。
ナイロンやポリエステル繊維に担持させる高比重物質として、一般に毒性の高い鉛またはその化合物(以下、鉛化合物と略称する)が用いられている。
この鉛化合物が、繊維製造または加工工程において、ガイドとの摩擦等により繊維から脱落したり、漁網として使用中に海水中に溶出して鉛公害が発生する可能性があった。さらに、使用済みの漁網を廃棄する場合においても、焼却後に鉛を含む有害成分が残るため、安易に廃棄処分できないという問題を抱えているのである。
一方、鉛化合物を含まない塩化ビニリデン系繊維もまた、焼却時に塩化水素ガスが発生するため、やはり焼却処理が困難である。
このように、環境汚染問題については、高比重糸の繊維物性以上に重要な課題となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、優れた製網工程性と漁獲性能を兼ね備え、長期間使用可能で、かつ環境汚染のない安全性の高い漁網を提供することを目的として鋭意検討を重ねた結果、以下の発明に至った。
【0008】
【発明が解決するための手段】
本発明は、 非鉛系金属またはその化合物からなる比重3以上の微粒子を50〜85重量%含有する芯ポリマー成分と保護ポリマー成分とが接合されてなり、繊維比重が1.5以上、強度が4.0g/d以上、ポリマ−界面の引き抜き強度が1.1g/d以上であり、かつ保護ポリマー成分が極限粘度0.7以上のポリエステルで、芯ポリマー成分が極限粘度0.45以上のポリエステルであり、更に芯ポリマー成分が保護ポリマー成分よりも少なくとも20℃低い融点又は軟化点を有し、[芯ポリマーの融点または軟化点−80℃]〜[芯ポリマーの融点または軟化点−5℃]の温度条件下で、繊維を2%以上収縮させるという処理を行って得られた複合繊維が網糸の断面積比の50%以上を占め、かつ沈降速度が2.5cm/秒以上であることを特徴とする漁網である。
【0009】
上述の複合繊維は、漁網として用いるに十分な強度と比重を兼備し、従来の高比重繊維のようにテンションメンバ−を併用する必要がない。また、たとえ併用したとしてもその使用量を従来の高比重繊維に比し大幅に低減し得るため、製網性に優れており、加えて比重を高めるための微粒子を含む芯を保護ポリマ−成分で覆っているために通常の繊維と同等の優れた耐光性を有している。かつ、比重を付与する手段として、鉛化合物を使用しないため繊維製造、製網、実地使用、廃棄というサイクルすべてにおいて、環境汚染の問題がない。
【0010】
本発明の漁網の特性は、特殊な網糸(本発明で規定する高比重繊維)から期待されるものであるが、特記すべきは、従来の漁網に比し漁獲性能が高いこと、そして水切れが良好で操業性がよいことであり、これは事前に本発明者等が予想し得なかったことである。その理由については、今後の解析を待たねば明確ではないが、以下のように推察される。
テンションメンバ−を多量に交撚した従来の漁網では、通常、撚りがフジヨリといわれる不均一な状態となっており、これがために強力利用率が低く、網糸をさらに太くせざるを得ず、結果として、網自身の比重は高くても潮流の抵抗を受けやすくなる。加えて抱水量も大きくなり水切れ性が低下する。これに対し、テンションメンバ−を用いないか、またはその使用量を網糸の断面積比の50%未満に低減した本発明の漁網は、従来の漁網と比較して網地の糸径が大略10〜50%も細くなり、潮流に対する抵抗が軽減され、同一比重であっても沈降速度が大きく、また保形性が良好、換言すれば、いわゆる吹かれが少なくなる。加えて抱水量が小さく水切れ性が向上するのである。
すなわち、沈降速度や吹かれといった漁網の特性は、単に網糸の比重だけで規定されるものではなく、網糸の撚糸の均一性、コンパクト性も勘案しなければならない。
【0011】
本発明の漁網に供する繊維は、比重1.5以上、強度3.5g/d以上及びポリマ−界面の引き抜き強度が1.1g/d以上を兼ね備えているものであり、比重が1.5未満の場合は、海水中での高沈降性と漁網の保形性を達成することが困難であり、強度が3.5g/d未満であったり、引き抜き強度が1.1g/d未満の場合は、高速製網時にポリマ−間に界面剥離が生じ、繊維が損傷しやすいので好ましくない。このような観点から、1.55以上の比重と4.0g/d以上の強度と1.1g/d以上の引き抜き強度を有することが望まれる。
本発明においては、繊維を高比重化するために比重3以上の上記微粒子を含有させることが必須であり、該微粒子の種類としては、非鉛系金属の微粒子またはその化合物の微粒子を使用しなければならない。本発明において「非鉛系金属」とは、鉛や錫など環境問題を極めて起こしやすい金属以外の金属を意味しており、具体的には、チタン、鉄、銅、亜鉛、銀、バリウム、ジルコニウム、マンガン、アンチモン、タングステンなどの金属やその酸化物などの化合物を挙げることができる。
【0012】
比重が3未満の微粒子を使用する場合は、目的の繊維比重を達成するために、繊維中の微粒子含有量を高め、しかも芯ポリマー成分の複合比率を大きくしなければならないので、たとえ目的とする繊維比重の繊維が得られたとしても、曳糸性、延伸性などの工程性が不良で、繊維強力も低いものしか得られないので、かかる繊維を漁網として使用するには不適である。
【0013】
また、本発明の漁網に供される繊維において、芯ポリマー成分中の微粒子の含有量は50〜85重量%でなければならない。50重量%未満の場合は目的とする繊維比重を得るためには、芯ポリマー成分の複合比率を大きくしなければならず、繊維強力の低いものしか得られないため好ましくない。一方、85重量%を越える場合は、紡糸時のポリマー溶融流動性が悪くなり、糸切れが頻発してくるため好ましくない。
【0014】
上記の微粒子を芯成分のポリマ−に多量に含有させ円滑に溶融紡糸するには、特に粒子表面の活性に起因する微粒子の熱凝集と、ポリマ−の熱分解に対する配慮が必要である。
かかる現象が生じた場合、糸調子を損なうにとどまらず、配管詰まりに至ることがある。このような事態を避けるためには、微粒子の種類、形状、ポリマ−との組み合わせにおいて適切な選択を行うことが不可欠である。
【0015】
本発明者等の検討結果によれば、微粒子の形状は一次粒子径が0.05〜5μであることが好ましい。0.05μより小さい場合には、粒子の表面活性が大きく熱凝集を起こしやすくなったり、紡糸時にポリマ−溶融ラインの配管中で微粒子の熱凝集が発生して配管が詰まるというトラブルが発生する。また、5μより大きい場合には紡糸、延伸時に糸切れが発生しやすくなる。
さらに微粒子の表面活性を抑制するという観点から、粒子は球状のものが好ましく、加えて有機または無機系化合物で粒子表面をコ−ティングすることも場合によっては有効である。
【0016】
使用する微粒子の種類については、所望に応じて上記した微粒子の中から適宜選択することができる。一般に、漁網は魚に警戒感を与えないように黒色顔料を練り込んだり、製網後染色を施して使用されるが、コストの点からできる限り黒色顔料の使用量を軽減し、あるいは染色工程を省略することが望ましい。本発明においては、このような要望を満足する微粒子として酸化鉄や二酸化チタンを使用することに特に意味がある。
【0017】
まず、酸化鉄を使用する場合について述べる。酸化鉄には、色調が黒色のマグネタイトすなわち磁鉄鉱(Fe3 4 )、茶色のγ形のヘマタイト、赤褐色のα形ヘマタイト等があるが、定置網等の漁網用繊維においては、色相を黒色系とすると魚に警戒感を与えないため、漁獲高に好結果を与えることができ、黒色を呈する磁鉄鉱を使用することが好ましい。この時、使用する微粒子全体の20重量%以上が磁鉄鉱であることが望ましい。磁鉄鉱を使用することにより、染色処理等を簡素化または省略し得るが、かかる場合においても鞘ポリマー成分に原着ポリマーを使用することは何等差し支えない。
また、色相を褐色系とすることによっても魚に警戒感を与えにくいので、ヘマタイト微粒子を使用することもできる。ヘマタイト微粒子を使用する場合においても、使用する微粒子全体の10重量%以上がヘマタイト微粒子であることが望ましい。
【0018】
上記の酸化鉄の粒子形状としては、球状、八面体状、六面体状、多面体状等があり、いずれの形状でも使用できるが、本発明においては球状の酸化鉄微粒子を用いると芯ポリマー成分中での分散性が最も良好となり好ましい。特に、この球状粒子の使用は、本発明のように微粒子をポリマー中へ数十%以上という高添加率で添加する場合に顕著な効果が認められ、かかる粒子を用いた場合、凝集による紡糸時のフイルター詰まりの発生も少なく、しかも紡糸時、延伸時の糸切れ発生も少ない。
【0019】
さらに、酸化鉄微粒子として、有機系または無機系化合物により表面コーティング処理を施した微粒子を使用すると耐熱性や微粒子分散性を更に向上させる事ができるので好ましい。就中、微粒子表面にシリカコーティングされた酸化鉄やフェライトコーティングされた酸化鉄を使用すると好ましい。
【0020】
芯ポリマー成分に配合する微粒子は、酸化鉄微粒子単独でもよいが、芯ポリマー成分中での酸化鉄微粒子の含有量が50重量%以上になると、粒子形状、粒子サイズの適切なものを用いても、前記したような溶融押出時のライン中での熱凝集によるコンタミの発生や、激しい場合には配管の詰まり等のトラブルが起こる場合があり、芯ポリマー成分中の微粒子の含有量を50重量%以上にするため、酸化鉄と他の微粒子とを併用する方が好ましい。
【0021】
特に、細デニールの糸を製造する場合などでは、溶融ポリマーのライン中での滞留時間が長くなり、ライン詰まりのトラブル発生が顕著に起こる。酸化鉄と併用する他の微粒子は、比重が3以上で、かつ平均粒子径が5μ以下、しかも熱凝集性があまりなく、コスト的にも高価ではないものを選ぶ必要がある。例えば、好適な例として二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、アルミナ、フェライト、リトポン、酸化銅、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0022】
本発明において、酸化鉄微粒子と併用可能な無機粒子の中で最も好ましいのは二酸化チタンである。芯ポリマー成分における微粒子合計の含有量が50重量%〜85重量%の範囲で、酸化鉄と二酸化チタンの混合比率を任意に変更しても紡糸性、延伸性良好で大きなトラブルは発生せず、目的とする繊維を得ることができるが、好適な混合比率の例を挙げると、例えば、芯ポリマー成分中の合計の微粒子の含有量が70重量%の場合、酸化鉄を30重量%、二酸化チタンを40重量%にしたり、芯ポリマー成分中の合計の微粒子含有量が60重量%の場合、酸化鉄を30重量%、二酸化チタンを30重量%等の混率にするのが得られた繊維の色相上からも好ましい。酸化鉄と二酸化チタンの配合比率の好ましい範囲としては、酸化鉄/二酸化チタン=1/9〜7/3、特に2/8〜6/4である。
【0023】
ポリマー中の微粒子の含有量が50重量%以上の高含有量でしかも、その中に酸化鉄微粒子を高添加する場合、二酸化チタン粒子を混合することにより、溶融押出時の微粒子の凝集によるライン詰まり等のトラブルもなく、しかもポリマー中の分散性も良好で、工程中の糸切れも少なく、A格率が高い状態で目的とする繊維が得られることは、本発明者らが、種々検討した中で初めて見出されたことである。
【0024】
次に、二酸化チタンを主に併用する場合について述べる。
本発明は、優れた機械的物性と高比重を兼ね備えている漁網を提供すると同時に、種々の色相に対応できる漁網を提供することを目的としているが、該漁網に供する繊維の芯ポリマー成分に磁鉄鉱のような黒色粒子を高添加率で配合した場合、色相を自由に変更することができなくなるが、二酸化チタンは白色であり、このような白色系粒子を芯ポリマー成分に添加し、保護ポリマー成分には所望の色の顔料等を配合することで、芯成分の色に邪魔されることなく目的とする色を発現させることができるのである。しかし、保護ポリマ−成分に顔料を多く添加することは繊維強度の低下をきたす場合があるので、その量には限界がある。また、ヘマタイト微粒子を二酸化チタンと併用する場合は、色相の変化が起こらず、所望の色を発現させることができる。
【0025】
二酸化チタンは、結晶形により、アナターゼ(Anatase)、ルチル(Rutile)及びブルカイト(Brookite)の3つの形態があり、一般に顔料として使用されているのは、アナターゼとルチルである。特に、化学繊維には、二酸化チタンの工程上の摩耗性に及ぼす硬度の関係と溶剤又は分散媒に対する分散性の問題からアナターゼタイプが主として用いられるが、アナターゼタイプの比重が3.9であるのに対し、ルチルタイプは比重が4.2と大きいので、本発明の目的にはルチルタイプの二酸化チタンが好ましく使用される。
【0026】
この場合、ルチルタイプのモース硬度がアナターゼタイプより大きいので、工程上の摩耗等のトラブルが発生する懸念があるが、本発明の複合繊維においては、微粒子を含有する芯ポリマー成分が保護ポリマー成分で実質的に覆われているので、紡糸時のノズル口金の摩耗や加工工程中のガイド類やローラー類の摩耗損傷等の問題もない。
【0027】
さらに、他の微粒子に比して二酸化チタン微粒子は、ポリマー中へ高添加し、ポリマーを溶融押し出しする際に、熱凝集が起こりにくく、溶融ポリマーライン中でのコンタミによる詰まりが発生しにくく、紡糸時のフイルター詰まりも少なく、かつ紡糸、延伸時の糸切れ発生も少ないことから、他の白色系微粒子を使用するよりも二酸化チタンを使用することが好ましい。
【0028】
二酸化チタンは、単独で使用してもよいし、一部を比重が3以上で平均粒径が5μ以下の他の白色系微粒子に置き換えてもよい。ただし、上記したような熱凝集の問題があるので、二酸化チタンを少なくとも15重量%、特に好ましくは40重量%以上使用することが望まれる。他の白色系微粒子としては、例えば、酸化錫(スズ石)等に比して毒性の少ない酸化亜鉛、アルミナ、硫酸バリウム、リトポン、酸化マグネシウム等を使用することができる。
【0029】
次に微粒子を添加する芯ポリマー成分のベースポリマーであるが、保護ポリマー成分の紡糸温度において耐熱性を示す熱可塑性ポリマーが好ましく用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレートなどのポリエステル類から適宜選択することができる。
【0030】
本発明にかかわる複合繊維の製造において特徴的な点は、延伸後の熱処理である。本発明者等の検討結果、熱処理温度としては、毛羽が発生しない範囲で、芯成分の熱可塑性ポリマーの(融点又は軟化点−80)℃以上で鞘成分の熱可塑性ポリマーの(融点又は軟化点−5)℃以下の温度範囲を設定すると、繊維比重が高くかつタフネスの大きいものが得られることが判った。これは芯ポリマー成分の融点又は軟化点に近い温度もしくはそれ以上の温度で加熱されることにより繊維が収縮しつつ延伸時に発生した繊維中の微粒子周辺でのポリマー中のボイドがある程度修復され、また処理温度を高めることにより繊維の機械的性質を発現させる鞘成分の結晶化が促進されるためと推定される。ボイド修復のためには、繊維に少なくとも2%以上の収縮をさせることが好ましい。かかる熱処理の温度が鞘成分ポリマーの(融点又は軟化点−5)℃を越えると断糸が多発し、芯成分ポリマーの(融点又は軟化点−80)℃未満ではボイドを十分に修復することが困難である。好ましい熱処理温度の下限値は、芯成分の熱可塑性ポリマーの(融点又は軟化点−60)℃であり、上限値は鞘成分の熱可塑性ポリマーの(融点又は軟化点−10)℃である。
【0031】
また、延伸を安定化させ、かつ、ボイドの発生を抑制するには、延伸時の加熱を熱ロール等の接触加熱方式に加えてスチームジェットや空気加熱などの非接触加熱方式を併用することが好ましい。これは、芯ポリマー成分よりも十分に高い温度で芯ポリマーの流動性を高めた状態で延伸しようというものであり、例えば、芯ポリマー成分がナイロン6であるときには、350℃以上、好ましくは400℃以上、特に好ましくは430℃以上のスチームジェットを用いて加熱延伸することが好ましい。
尚、かかるスチームジェットの温度は、本発明における熱処理温度そのものを示すものではなく、本発明における熱処理温度とは接触加熱温度を意味するものである。
これらの知見から、芯ポリマー成分のベースポリマーは、保護ポリマー成分より20℃以上、好ましくは30℃以上低い融点又は軟化点を有するものが好適である。このポリマーとしては結晶性の繊維形成性ポリマーが繊維化工程性の見地からは好ましいが、本発明の目的のためには、非晶性ポリマーも使用できる。
【0036】
又、本発明においては芯ポリマー成分のベースポリマーとして低融点ポリエステル系ポリマーも好ましく使用できるが、その場合は極限粘度は0.45以上、特に0.5以上のポリエステルであることが好ましい。また、極限粘度の上限値としては1.2が好ましい。
【0037】
芯ポリマー成分であるベースポリマーへ微粒子を添加させる方法としては、種々の方法が可能であるが、例えば二軸押出機等が好適である。また該ベースポリマーと微粒子を混練する場合には、ステアリン酸金属塩、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等種々の分散剤を添加すると、分散性が良好となり好ましい。
【0038】
本発明の漁網に供する複合繊維は、上述したような微粒子を含有した芯ポリマー成分を一成分とし、繊維形成性の熱可塑性ポリマーを保護ポリマー成分として複合紡糸することにより得られる。複合断面形状としては、繊維表面周長の60%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは100%を保護ポリマー成分が占めていることが望ましい。具体的な芯ポリマー成分と保護ポリマー成分との複合形態としては、種々のものが挙げられるが、代表的なものとしては図1(1)〜(8)のようなものが挙げられる。
【0039】
図1中、(1)は一芯、(2)は三芯、(3)は四芯の芯鞘構造繊維、(4)は三層同心円、(5)および(6)は一部露出タイプの芯鞘構造、(7)および(8)は分割タイプの複合構造である。本発明においては芯ポリマー成分と保護ポリマー成分の親和性が高いので(7)と(8)のように通常界面で剥離が生じやすいといわれている複合形態であっても、特に問題なく採用することができるが、(5)、(6)、(7)及び(8)のような複合形態はガイドやローラー等が摩擦することを十分に解消できない場合があるので、摩耗および糸切れをより一層防ぐことができる点より、(1)〜(4)のような芯ポリマーが鞘ポリマーにより完全に覆われているような芯鞘構造がより好ましい。なお、これらの図中、斜線部分は芯ポリマー成分を示し、斜線のない部分は保護ポリマー成分を示すものである。
【0040】
保護ポリマー成分と芯ポリマー成分との複合重量比率は30:70〜80:20、より好ましくは50:50〜80:20である。保護ポリマー成分の比率が少なすぎると、繊維強度が低下してくるため好ましくない。また保護ポリマー成分の比率が多すぎると繊維比重を高くする効果が十分発揮できないため好ましくない。
【0041】
本発明において保護ポリマー成分は、繊維形成能を有し、芯成分ポリマーとの親和性が良好な熱可塑性ポリマーであり、ポリエステルを挙げることができる。繊維としての実用性能上、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル系ポリマーが好ましい。好適な例としてポリエステル系ポリマーの場合ポリマーに少量の第3成分を共重合したものも用いることができる。例えばポリエステルとして、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン−2,5−ジカルボン酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4’−ジカルボキシジフエニル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、5−スルホイソフタル酸のNa塩などの芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸、ジオール、ヒドロキシ安息香酸等のオキシカルボン酸などから合成される繊維形成性ポリエステル系ポリマーであり、構成単位の80モル%以上、特に90モル%以上がエチレンテレフタレート単位またブチレンテレフタレート単位であるポリエステル系ポリマーが好ましい。また、これらのポリマーは、蛍光増白剤、安定剤などの添加剤を含んでいても良い。
【0042】
そして、本発明にかかわる複合繊維の芯ポリマー成分と保護ポリマー成分の好ましい組み合わせとしては、ポリエステル同志という同種ポリマーの組み合わせがよい。具体的には保護ポリマー成分が極限粘度0.7以上のポリエステルであり、芯ポリマー成分が極限粘度0.45以上のポリエステルである組み合わせが、高比重と高い物性(特に、引き抜き強度)とを兼ね備えさせるうえで好ましく採用される。
【0043】
本発明において、繊維全体の耐候性すなわち経時的な強力保持率を更に良好なレベルに維持するには、カーボンブラックを含有させても良い。保護ポリマー成分としてポリエステル系ポリマーを使用する場合の重要な用件は、ポリマーの極限粘度〔η〕が0.7以上のものを用いる必要がある。ここで〔η〕は、フェノールとテトラクロルエタン50:50混合溶液を用い30℃の温度下で測定した値である。
【0044】
通常の衣料用繊維においては、ポリエチレンテレフタレートの〔η〕は、0.60〜0.65くらいのものが用られるのに対し、本発明では目的とする繊維強度を発現させるために、通常の重合度より更に重合度の大きいポリエステルを用いたものである。〔η〕が0.7未満では、繊維比重1.5以上、繊維強度3.5g/dr以上を両立することは難しく、保護ポリマー成分と保護ポリマー成分の複合比率を変更し、保護ポリマー成分リッチにすれば繊維比重が目標とするレベルまで至ることができず、逆に芯ポリマー成分リッチにすれば繊維強度が目標とするレベルまで至らない。すなわち、保護ポリマー成分がポリエステルの場合は〔η〕を0.7以上のものを用いることにより、初めて繊維強度と繊維比重の両方を満足するものが得られる。〔η〕の好ましい上限値は1.45である。
【0045】
本発明における極限粘度〔η〕とは、紡糸後の繊維が形成されているポリエステル成分の〔η〕である。すなわち、紡糸時に熱分解または、加水分解等で重合度低下が生じる場合は、その分を見込んだやや高目の重合度のポリマーを用いて繊維化しなければならない事は言うまでもないことである。
【0046】
ところで、基本的には繊維の強度低下を考慮すると、保護ポリマー成分には着色剤を添加しないことが好ましいが、本発明においては、保護ポリマ−成分に着色剤を添加して目的に応じて任意の色相にすることができ、該ポリマー成分の溶融紡糸温度に耐え得る耐熱性を有する有機顔料や無機顔料が適宜使用できる。具体的には、例えば、カーボンブラック、アントラキノン系褐色着色剤、アントラキノン系紫色着色剤、ベンゾキノン系赤色着色剤等、通常の原着用着色剤を使用することができ、これらの顔料を単独または2種以上用いて添加率0.1〜5重量%程度の範囲で保護ポリマー成分に配合すればよい。
ただし、微粒子としてヘマタイト微粒子を用いた場合には該当繊維は褐色に着色されるため、保護ポリマ−成分に着色剤を添加しないことが好ましい。
【0047】
本発明の漁網に供する複合繊維を得るための方法は、特に限定されるものではないが、保護ポリマー成分と芯ポリマー成分を別々の溶融系で加熱溶融しておき、それぞれ通常の押出紡糸装置により紡糸口金まで送り、紡糸口金直前で両成分を前述したような複合形状に合わせて合流させ、押し出して得られる糸条を巻き取り、さらに延伸、熱処理することにより得られる。また、紡糸口金から押出した後、巻き取ることなく直ちに延伸する方法や、紡糸口金から押し出した後、高速で巻き取り、そのまま製品とする方法も用いることができる。
【0048】
具体的には、大略4000m/分以下の速度で引きとり、一旦これを巻取った後に延伸するいわゆるFOYやPOY延伸法、又は巻きとることなく延伸するスピンドロー法、更には4000m/分以上の高速で引きとるDSY法あるいはDSY法においてノズルと引取ローラーの間にヒーターを設け、延伸しながら引きとる方法などが適用しうる。
中でも好ましいのは、300〜4000m/分、更に好ましくは600〜2000m/分で引きとり、延伸し(FOYでもスピンドローでもよい)続いて熱処理する方法である該速度が300m/分未満では、未延伸糸の配向度が低く所望の繊維強度を得るために延伸倍率を上げる必要が生じ、その結果繊維中に多数のボイドが発生し、高比重化が十分に達成できない場合がある。一方4000m/分を越えるいわゆるDSYといわれる領域で引き取る場合は、延伸熱処理操作を実施しなくとも目標物性が得られることもあるが、先述の600〜2000m/分で引きとり延伸熱処理する方法に比し強度が低下することは避けられない。
【0049】
延伸は、一段延伸でも二段延伸でもよい。また延伸倍率は、紡糸速度により様々に変化するので一義的に特定できないが、破断に至る倍率の75〜85%程度の倍率を採用することが好ましい。
【0050】
本発明の漁網は、沈降速度2.5cm/秒以上の特性を有するものである。本発明で規定する「沈降速度」とは、網の海水中での網の沈降及び吹かれ状態を決定づける因子である比重と、水に対する抵抗の双方を同時に評価し得るものである。
その評価方法は、実施例の項に詳述するが、沈降速度が2.5cm/秒未満の場合は、海水に網を投入した場合沈降しにくく、また吹かれが大きいために漁獲性能が著しく損なわれる。したがって、沈降速度は3.0cm/秒以上、とくに3.5cm/秒以上が好ましい。
【0051】
該漁網は特殊な編み立てを行う必要はなく、公知の方法で得ることができる。具体的には、結節網であれば蛙又、二重蛙又、特殊結節あるいは本目網等、無結節網であれば貫通式、千鳥式、亀甲式、さらにはラッシェル網等のいかなる編網方法をも採用することができる。
【0052】
本発明の漁網において、沈降速度を2.5cm/秒以上にするためには、上述の高比重の複合繊維が、網糸の断面積比で50%以上占めるように編網しなければならない。断面積比が50%未満では網糸の強力利用率が大きく低下し、網糸を太くする必要があり、また沈降速度が低下し、漁獲性能の低下を招く。さらに水切れ性も低下するため操業性が悪化することになる。
【0053】
本発明の漁網は、吹かれが少なくまた水切れもよいためサケ、マス刺網類、トロ−ル網として用いられる曳網類、カツオ、マグロ、サバなどの施網類、サケの定置網に代表される建網類、あるいは敷網類などいずれの用途にも適しているが、特に比重と強度が必要とされる施網類、建網類、敷網類に好適である。
【0054】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何等限定されるものではない。尚、本発明における〔η〕、ナイロンの数平均分子量、微粒子の平均粒径、繊維比重、強度、伸度、引き抜き強度及び沈降速度は以下の方法で求めることができる。
(1) ポリエステルの極限粘度〔η〕
溶剤としてフェノールとテトラクロルエタン1:1の混合溶剤を用い、30℃の温度下で測定した。
(2) ナイロンの数平均分子量
ウォーターズ社製HLC−510によるGPCクロマトグラムにより測定した。
(3) 微粒子の平均粒径
堀場製作所製の遠心式自動粒度分布測定装置CAPA−500により測定した。
(4) 繊維比重
溶剤として四塩化炭素とノルマルヘキサンを用い、密度勾配を作成して、20℃下で測定した。
【0055】
(5) 繊維強度及び伸度
島津製作所社製 引張試験機(オートグラフ5KND)を用い、20℃、65RH%下で、JIS L 1013に準拠して測定した。
(6) 引き抜き強度
ピンセットを用いて複合繊維の鞘部を取り除き芯部を数cm露出させ、芯部の露出開始点から約1cmの長さの露出芯部を確保してその両側をそれぞれ粘着テープで挟むようにして貼り、粘着テープで挟まれた芯鞘部の長さは1mmにカットする。この1mmの芯鞘部は、数mm幅の溝を有する台紙の溝部内に固定される。次いで、露出芯部を挟むようにして貼り付けられた粘着テープ部と芯鞘部が固定された台紙部をそれぞれファイバークランプで挟持し、島津製作所社製 引張試験機(オートグラフ5KND)を用い、引っ張り速度2mm/分、20℃、65RH%下で、1mmの芯鞘部の芯部が鞘部から引き抜かれる時点の強度を測定した。
(7) 網の引張強力
島津製作所社製 引張試験機(オートグラフ5KND)を用い、20℃、65RH%下で、JIS L 1043に準拠して3目7本で測定した。
【0056】
(8) 網の沈降速度
試料作成:網の1節の中心から各1cmの長さに4本の脚を切り、試料とした。
比重液作成:n−ヘプタン/テトラクロロエタン=44/89の体積比で混合、20℃で比重1.3の比重液を作成した。
沈降速度測定:試料を比重液に30分以上浸漬して脱気した。比重液を内径3cm以上、深さ15cm以上の円筒状のガラス管に液深が15cm以上となるように入れ20℃に保った。その液面に、脱気試料を水平にして静かに置き沈降させ、液面より5cmの深さと15cmの深さ、すなわち10cmの沈降距離を試料が通過する時間を測定した。この操作を5回繰り返しその平均時間(t)を求め、10/t(cm/秒)として沈降速度を定義した。
【0057】
実施例1
極限粘度〔η〕0.65のイソフタル酸20モル%共重合ポリエチレンテレフタレートを芯ポリマー成分のベースポリマーとして使用し、かかるポリマー粉末に対して平均粒子径0.2μの球状の磁鉄鉱粉末(戸田工業(株)社製:表面フェライトコート品、比重5.0)を30重量%と平均粒子径0.35μの二酸化チタン(チタン工業(株)社製 比重4.2)40重量%とを混合し、かかる混合物を二軸混練機で溶融混練してストランド状に押出し、ストランドをカットしてペレット化した。
一方、保護ポリマー成分としては、二酸化チタンを0.08重量%含有する極限粘度〔η〕0.80のポリエチレンテレフタレートを常法により溶融重合し、ペレット化したものを使用した。
【0058】
得られた保護ポリマー成分と芯ポリマー成分を別々の押出機で溶融押し出しし、紡糸温度300℃で保護ポリマー成分が鞘となるようにノズル部で合流し、複合重量比(保護ポリマー成分):(芯ポリマー成分)=2:1とし、断面を図1(1)のような芯鞘形状にして、ノズル口径0.8mmφ、96ホールノズルで吐出させた。吐出糸条はノズル直下に設けた20cm長、400℃の加熱体域を通過させた後、25℃、7Nm3 /分の冷却風で冷却し、オイリングロ−ラで紡糸油剤を付与し、600m/分で引き取った。
【0059】
引き続き、該糸条を巻き取ることなく以下の要領で延伸・熱処理を施して巻き取った。
延伸:110℃の熱ロ−ルで加熱後、400℃の加熱蒸気を噴射しつつ、4.6倍に一段延伸。
熱処理:220℃の熱ロ−ルと弛緩ロ−ルとの間で3%熱収縮処理。
これにより、1500デニ−ル、強度4.8g/d、伸度18%、比重1.62引き抜き強度4.1g/dの繊維を得た。
【0060】
得られた繊維を2本合糸しつつ、Z方向に120t/mで下撚し、ついでこれを4本合糸してS方向に100t/mで上撚し、鉄砲巻きを作成した。これを製網機で目合75mm、100掛の規格で無結節網を製網し、150℃で2分間熱セットした。
かくして得られた網は、比重1.60、引張強度40.0Kg、沈降速度4.1cm/秒で強力、沈降速度共に優れたものであった。
【0061】
実施例2〜3および比較例1〜2
実施例1と同様にして高比重複合繊維を製造した。この繊維と、比重1.38、強度8.8g/d、1500d/96fのポリエステル繊維とをラッシェル型製網機にて、以下のように経編みした。
Figure 0003686126
打ち込みは22コ−ス。
網構成と諸物性を表1に示す。
【0062】
【表1】
Figure 0003686126
【0063】
表1から、強度の高いポリエステル繊維を併用しても、撚糸状態が不均一であるため、強力利用率が低く、網の引張強力は向上せず、とくに複合繊維の断面積比率が低い比較例1において顕著である。
また、網の比重が低いと沈降速度は低下する。したがって比較例の沈降速度が低いのは当然であり、高比重の複合繊維の断面積比率が50%以上という本発明の規定は、一見、網の比重を規定しているかのように見える。しかしながら、沈降速度には比重だけではなく、網の液に対する抵抗も影響するのであって、断面積比率の規定が、単に比重の代用特性ではないことを明確にするために、高比重繊維の比重を変更した実施例を以下に示す。
【0064】
実施例4
実施例1における高比重繊維の製造方法において、芯鞘重量比を芯/鞘=1/3とする以外は同様の方法にて、1500デニ−ル、強度5.8g/d、伸度22%、比重1.51、引き抜き強度3.0g/dの繊維を得た。
該繊維を実施例2と同様にして製網した網は、比重1.50、引張強力26.5Kg、沈降速度3.0cm/秒であった。
この結果と実施例3の結果を比較した場合、網の比重が同一であっても高比重繊維単独で構成され、撚糸状態がより均一な本例のほうが沈降速度が大きくなっている。
また、実施例1と実施例2の結果を比較すると、網の比重はほぼ同一ながら沈降速度が異なるが、これも無結節とラッシェル(経編)という網形態の違いに起因する液に対する抵抗の差である。
このことから、沈降速度が単に比重で規定されないことがわかる。
【0065】
参考例
数平均分子量11,000のナイロン6粉末〔商品名:P1011F、宇部興産(株)社製〕を芯ポリマ−成分のベ−スポリマ−として使用し、かかるポリマ−粉末に対して実施例1と同様にして平均粒子径0.2μの磁鉄鉱粉末30重量%と平均粒子径0.35μの二酸化チタン40重量%を混合した後、溶融混練してペレットを得た。一方保護ポリマ−成分としては、数平均分子量20000のナイロン66〔商品名:2020B、融点260℃、宇部興産(株)社製〕ペレットを使用した。ついで、紡糸温度290℃、複合重量比として保護ポリマ−成分:芯ポリマ−成分=1.8:1とした以外は実施例1と同様にして1500デニ−ル、強度5.1g/d、伸度20%、比重1.61、引き抜き強度3.8g/dの繊維を得た。この繊維を用いて無結節網を製網し、150℃で2分間熱セットした。かくして得られた網は比重1.60、引張強力42.0Kg、沈降速度4.2cm/秒で、工程上のトラブルもなく、強力、沈降速度共に優れたものであった。
【0066】
【発明の効果】
特定の高比重繊維を用いてなる本発明の漁網は、従来の漁網に比し網の生産性が高く、環境汚染を引き起こすことはない。さらに漁獲性能、操業性、耐光性にも優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(1)〜(8)は本発明に供される繊維断面における芯ポリマ−成分と保護ポリマ−成分の代表的な複合形態を示す模式図である。
【符号の説明】
1:芯ポリマ−成分
2:保護ポリマ−成分

Claims (1)

  1. 非鉛系金属またはその化合物からなる比重3以上の微粒子を50〜85重量%含有する芯ポリマー成分と保護ポリマー成分とが接合されてなり、繊維比重が1.5以上、強度が4.0g/d以上、ポリマ−界面の引き抜き強度が1.1g/d以上であり、かつ保護ポリマー成分が極限粘度0.7以上のポリエステルで、芯ポリマー成分が極限粘度0.45以上のポリエステルであり、更に芯ポリマー成分が保護ポリマー成分よりも少なくとも20℃低い融点又は軟化点を有し、[芯ポリマーの融点または軟化点−80℃]〜[芯ポリマーの融点または軟化点−5℃]の温度条件下で、繊維を2%以上収縮させるという処理を行って得られた複合繊維が網糸の断面積比の50%以上を占め、かつ沈降速度が2.5cm/秒以上であることを特徴とする漁網。
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