JP3676726B2 - 研磨テープおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光コネクタフェルール、半導体ウエハ、金属、セラミックス、カラーフィルター(液晶表示用等)、プラズマディスプレイ、光学レンズ、磁気ディスクあるいは光ディスク基板、磁気ヘッド、光学読取ヘッド等の精密部品の表面、端面等に対する最終仕上げを行うのに好適な研磨テープ、その製造方法および研磨テープ用塗工剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
光コネクタフェルールや半導体ウエハ等の精密部品は、最終仕上げを行う研磨工程での精度により、その品質が左右され、最終仕上げ研磨には、メカニカルポリッシングと呼ばれている研磨が行われている。
【0003】
このメカニカルポリッシングは、次のように行われる。すなわち、まず苛性ソーダ、アンモニア、エタノールアミン等のアルカリ溶液に、5〜300mμの粒子径を有する研磨材粒子を懸濁させてpH9〜12のコロイダル液からなる研磨液を作製する。次にこの研磨液をポリウレタン等の樹脂シートからなる研磨布上に供給しながら、研磨布上で光コネクタフェルールや半導体ウエハ等の精密部品を研磨している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような研磨液と研磨布とを利用するメカニカルポリッシングには、以下のような問題がある。
【0005】
すなわち、研磨中に研磨液中の研磨材粒子の濃度が変化したり、あるいは研磨材粒子の凝集によって研磨材粒子の粒度分布が変化したりするため、光コネクタフェルール、半導体ウエハ等の被研磨体に研磨傷や研磨斑が発生することがある。また研磨終了後に光コネクタフェルール、半導体ウエハ等の被研磨体の表面に付着している研磨材粒子を水洗、除去する工程が必要であり、研磨工程が煩雑である。
【0006】
これに対して、プラスチックフィルムからなる研磨テープ用基材に対して、結合剤(バインダ)用樹脂液中に研磨材粒子を分散させてなる塗工剤を塗工、乾燥することによって研磨層を形成して研磨テープを作製することが考えられている。光コネクタフェルールおよび半導体ウエハ等はこの研磨テープ上で研磨されるが、研磨テープを作製する際、粒子径1μ以下の研磨材粒子をバインダ用樹脂液中に均一に分散させることはむずかしく、最終仕上げ用の研磨テープとしては使用することができない。
【0007】
すなわち、最終仕上げの高精度研磨は、微細な研磨材粒子による研磨によって行われるが、研磨材粒子は粒子径が小さくなるにしたがって表面エネルギーが増大して凝集し易くなるため、微細な研磨材粒子を結合剤中に均一に分散させることはむずかしい。
【0008】
また凝集状態の研磨材粒子を含有する塗工剤によって研磨層を形成した場合、研磨層中に5〜10μの粗大粒子が生成しており、これによる被研磨体表面の研磨傷の発生が避けられない。
【0009】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、研磨層中に粗大粒子からなる研磨材粒子が存在することなく、微細な研磨材粒子のみを存在させて、光コネクタフェルール端面や、半導体ウエハ表面等の精密部品鏡面仕上げを精度良く行うことができる研磨テープ、その製造方法および研磨テープ用塗工剤を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、研磨テープ用基材と、この研磨テープ用基材上に設けられた研磨層とを備え、研磨層は、結合剤用樹脂と、コロイダルシリカ粒子の凝集物からなり、粒子径が凝集した状態で50〜800nmとした研磨材粒子と、からなることを特徴とする研磨テープである。
【0011】
本発明は、平均粒子径10〜100nmのコロイダルシリカ粒子からなる研磨材粒子を結合剤用樹脂液中に分散させた後、結合剤樹脂液中で研磨材粒子の凝集物を生成させ、粒子径50〜800nmとした研磨材粒子を含有する塗工剤とし、次いでこれを研磨テープ用基材に塗工することを特徴とする研磨テープの製造方法である。
【0016】
本発明によれば、平均粒子径10〜100nmの研磨材粒子を結合剤用樹脂液中に分散させた後、結合剤樹脂中で研磨材粒子の凝集物を生成させ、粒子径50〜800nmの研磨材粒子を含有する塗工剤とし、これを研磨テープ用基材に塗工することにより、研磨層中の研磨材粒子の粒子径を小さくかつ粒子径の揃った微細粒子を有する研磨テープを得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1および図2は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0021】
図1において、平板状の精密部品、例えば半導体ウエハ1が示されている。このような半導体ウエハ1に対して、研磨テープ10により最終仕上げ研磨が行われるようになっている(図1参照)。なお、平板状の半導体ウエハ1はシリコン製となっている。
【0022】
また図1に示すように、研磨テープ10は回転金属板16上にエラストマ弾性体15を介して配置される。
【0023】
次に図2により、研磨テープ10について説明する。図2に示すように、研磨テープ10はポリエステルフィルム等からなる研磨テープ用基材11と、研磨テープ用基材11上に設けられエポキシ樹脂、アクリル樹脂またはポリエステル樹脂を主成分とするプライマ層12と、プライマ層12上に設けられた研磨層13とからなっている。ここで研磨テープ10をシート状に形成してもよく、また帯状に形成してもよい。また、上記のプライマ層12は、必ずしも必要とするものではなく、研磨テープ用基剤10と、研磨層13等を構成する素材によってその接着性等を考慮して設けられるものである。
【0024】
このうち研磨層13は研磨テープ用基材11に対して、平均粒子径10〜100mμの研磨材粒子をバインダ用樹脂液(結合剤用樹脂液)中に分散させた塗工剤をプライマ層12上に塗布することにより形成される。なお、プライマ層12は必ずしも設ける必要はない。
【0025】
また研磨テープ用基材11に対して、平均粒子径10〜100mμ(ミリミクロン、以下ナノメータ(nm)ともいう)の研磨材粒子をバインダ用樹脂液中に分散させた塗工剤を塗布することにより研磨層を形成した場合、研磨層13中の研磨材粒子の粒子径は50〜800mμ(nm)となる。
【0026】
研磨テープ10を製造するに際し、平均粒子径10〜100mμの研磨材粒子をバインダ用樹脂液中に分散させた後、この分散液中で研磨材粒子の凝集物を生成させ、粒子径50〜800mμの研磨材粒子を含有する塗工剤を作製する。次いで、これを研磨テープ用基材に塗工することにより研磨テープ10が製造される。
【0027】
上記の構成による本発明の研磨テープ10およびその製造方法において、平均粒子径10〜100mμの研磨材粒子としては、シリカゾルやアルミナゾルが使用できる。
【0028】
粒子径1μ以下のシリカやアルミナをバインダ用樹脂液中に分散させると、5〜10μの粗大粒子が生成し易く、これを利用して研磨層13を形成した研磨テープ10は、研磨層13中の粗大粒子が原因となって、被研磨体に研磨傷が発生するようになる。
【0029】
これに対して、平均粒子径が10〜100mμのシリカやアルミナをバインダ用樹脂液中に分散させると、上記の5〜10μの粗大粒子が生成することがなく、この塗工剤による研磨層13を有する研磨テープは、光コネクタフェルール端面や、半導体ウエハ1表面の最終仕上げを行うのに好適な研磨テープになる。
【0030】
最終仕上げを行うのに好適であって、しかも研削性の高い研磨層13にするためには、研磨層13中の研磨材粒子の粒子径が50〜800mμであることが必要である。
【0031】
研磨層13中の研磨材粒子の粒子径が50〜800mμの範囲にある研磨層は、以下の(1)〜(2)の条件を組み合わせることによって得られる。
【0032】
(1)ほぼ球状をなす平均粒子径10〜100mμのシリカやアルミナを、研磨層13形成用の塗工剤を調整する際の研磨材粒子として使用すること。
【0033】
(2)研磨材粒子をバインダ用樹脂液中に分散させて塗工剤を得る工程、あるいは研磨材粒子をバインダ用樹脂液中に分散させた塗工剤を研磨テープ用基材に塗工する工程で、研磨材粒子の凝集を成長させ、粒子径50〜800mμの研磨材粒子にすること。
【0034】
バインダ用樹脂液に分散させたシリカ粒子の粒子径を50〜800mμに調整するには、シリカ粒子をバインダ用樹脂液に分散させた分散液のpHを7〜9に調整し、数時間に亙ってゆるやかに攪拌し、シリカ粒子の凝集を生成させた後、0.8μのフィルタで濾過することにより粗大粒子を除去すればよい。
【0035】
また、バインダ用樹脂液としてSi原子の骨格を有するシリコーン樹脂またはシリコーン系樹脂を有するものを使用すると、研磨層中でのシリカ粒子の粒度分布が狭くなり、より好ましい研磨層13を構成することができる。
【0036】
これは、バインダ用樹脂液となるシリコーン樹脂またはシリコーン系樹脂とシリカ粒子との間の親和性が高いために、研磨層形成用の塗工剤の塗工、乾燥工程で、バインダ用樹脂が固化するときに、シリカ粒子も凝集してゆくためであると推定される。
【0037】
以上の構成による研磨層13が形成される研磨テープ用基材11としては、上述のように機械的強度、寸法安定性、耐熱性等に優れた性質を有する合成紙やプラスチックフィルムが使用され、例えば、ポリエチレンテレフタレート、延伸ポリプロピレン、ポリカーボネート、アセチルセルロースジエステル、アセチルセルローストリエステル、延伸ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート等による厚さ20〜100μ程度のものが好適である。
【0038】
本実施の形態によれば、研磨テープ用基材11に対して、平均粒子径10〜100mμの研磨材粒子をバインダ用樹脂液中に分散させた塗工剤を用い、必要ならばプライマ層を介して塗工し研磨層13を形成したので、研磨層13中に5〜10μの粗大粒子からなる研磨材粒子の生成がない。またこのようにして得られた研磨テープ10によれば、光コネクタフェルール端面や、半導体ウエハ1表面の最終仕上げを、被研磨体表面に研磨傷や研磨斑を生ずることなく行うことができる。
【0039】
また、研磨材粒子の粒子径が50〜800mμの研磨層13を有する研磨テープ10は、光コネクタフェルール端面や、半導体ウエハ1表面等の最終仕上げを行う際の研磨テープ10として好適であり、しかも研削性の高い研磨テープ10になる。
【0040】
第2の実施の形態
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、研磨テープ10のうち研磨層13の構成が異なるのみであり、他は第1の実施の形態と略同一である。
【0041】
すなわち、研磨テープ10はポリエステルフィルム等からなる研磨テープ用基材11と、研磨テープ用基材11上に設けられエポキシ樹脂、アクリル樹脂またはポリエステル樹脂を主成分とするプライマ層12と、プライマ層12上に設けられた研磨層13とからなっている。また、上記のプライマ層12は、必ずしも必要とするものではなく、研磨テープ用基剤10と、研磨層13等を構成する素材によってその接着性等を考慮して設けられるものである。
【0042】
このうち研磨層13は、平均粒子径1〜200mμ(ミリミクロン)の研磨材粒子、例えばコロイダルシリカ粒子と、このシリカ粒子同志を結合する結合剤、例えば有機無機複合ポリマー樹脂とを有している。この場合、有機無機複合ポリマー樹脂は、その構造中にシロキサン結合を有する高分子化合物である。
【0043】
このように研磨層13中において、コロイダルシリカ粒子が平均粒子径1〜200mμを維持したまま凝集することなく分散しているので、研磨層13の全光線透過率は60〜95%となっており、そのヘイズ値は1〜70%となっている。
【0044】
また研磨層13表面の中心線平均粗さ(Ra)は、0.005〜0.5μとなっているが、ほとんどの場合Raは0.007〜0.2μの範囲内に入っている。
【0045】
次に各構成要素の材質について更に詳述する。
(1) 研磨層中の結合剤について
本発明において、結合剤としては、その構造中にシロキサン結合(Si−O結合)を有するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーまたはポリマー等を使用することができ、例えば、ポリシロキサンやその誘導体、その変性物、あるいはそのブレンド物、更にはそのモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマー等を使用することができる。
【0046】
具体的には、例えばポリシロキサンを構成するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーまたはポリマーは勿論のこと、該ポリシロキサンを構成するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーまたはポリマーと、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系またはポリメタクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン共樹脂合体、ポリビニルアセタール系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ−プラスト系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、その他の樹脂を構成するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーまたはポリマーとを混合し、そのブレンド物、あるいは反応変性物等を使用することができる。
【0047】
特に、本発明においては、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等のプレポリマー若しくはオリゴマーあるいはポリマーと、ポリシロキサンのプレポリマー若しくはオリゴマーあるいはポリマーとを混合してなるブレンド物あるいは反応変性物を使用することが好ましい。
【0048】
更に詳しく説明すると、本発明においては、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等のプレポリマー若しくはオリゴマーあるいはポリマーを主鎖とし、その側鎖にポリシロキサンのプレポリマー若しくはオリゴマーあるいはポリマーを、例えば、グラフト重合等によって反応させ、主鎖部分を有機性で構成し、側鎖部分をシロキサン結合からなる無機性で構成してなる有機無機複合ポリマー、そのプレポリマーもしくはオリゴマー等を使用することが望ましいものである。
【0049】
而して、上記のような有機無機複合ポリマーを使用することによって、研磨粒子が、塗工材中、あるいは研磨層中で凝集することなく一次粒子の状態を保持することができ、微細な研磨に適する研磨テープを製造し得ると言う利点を有するものである。
【0050】
本発明において、上記のように研磨粒子が一次粒子の状態を保持し得る理由は、定かではないが、後述するように、結合剤として使用する樹脂中にシロキサン結合(Si−O結合)を含有していると、研磨材粒子として、例えば、コロイダルシリカ粒子を使用する場合、その両者が相互にSi原子を共通とする官能基を有することになり、両者が親和性を有して該研磨材粒子が、塗工材としての組成物の状態、あるいは塗膜状の研磨層の状態においても一次粒子の状態を保持し得ることにより、極めて良好に研磨仕上げできる研磨テープを製造し得るものと推定される。
(2) プライマー層について
本発明において、プライマー層としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系またはポリメタクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン共樹脂合体、ポリビニルアセタール系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ−プラスト系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂、その他の樹脂を構成するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーあるいはポリマーの一種ないしそれ以上をビヒクルの主成分とする組成物を塗布ないし印刷して形成することができる。
【0051】
更に、接着性を上げるために、イソシアネート等の硬化剤を入れてもよい。
(3) 研磨層中の研磨粒子について
本発明において、研磨粒子としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニュウム)、酸化チタン、ジルコニア(酸化ジルコニュウム)、リチウムシリケート、ダイヤモンド、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化鉄、酸化クロム、シリカ(酸化ケイ素)、酸化アンチモン等の無機化合物を使用することができる。
【0052】
而して、本発明においては、微細な研磨に適する研磨シートを製造することから、上記の研磨粒子は、その粒子径が、1乃至300mμ位、好ましくは、1乃至200mμ位で、一次粒子の状態のものを使用することが望ましい。
【0053】
特に、本発明において、研磨粒子としては、結合剤との親和性、相溶性を考慮すると、シリカ(酸化ケイ素)を使用することが最も好ましいものである。
【0054】
また、上記の本発明において、研磨粒子として、例えば、粒子径が5〜50mμ未満のものを使用し、更に、研磨粒子と結合剤との配合割合(重量%)を90:10から60:40の範囲内で使用すると、得られる研磨シートは、全光線透過率が90〜95%、ヘーズ値が2〜15%の範囲内であって、比較的に透明性に富む研磨シートを得ることができ、該研磨シートは、光コネクタフェルール等の精密部品の表面の仕上げ研磨適性を有するものである。
【0055】
また、研磨粒子として、例えば、粒子径が50〜200mμのものを使用し、更に、研磨粒子と結合剤との配合割合(重量%)を90:10から30:70の範囲内で使用すると、得られる研磨シートは、比較的に白濁した白色ないし半透明性に富む研磨テープとなり、上記と同様に、光コネクタフェルール等の精密部品の表面の仕上げ研磨適性を有するものである。
【0056】
上記のような現象は、研磨粒子として、シリカ粒子を使用する場合に、特に顕著なものである。
なお、本発明において、研磨粒子と結合剤との配合割合において、研磨粒子が結合剤より少なくなると、得られる研磨テープの表面仕上げ研磨適性は、やや低下する傾向にある
【0057】
例えば、粒子径が5〜50mμ未満のものを使用し、更に、研磨粒子と結合剤との配合割合(重量%)として、結合剤の量を多くすると、得られる研磨テープの表面仕上げ研磨適性は、かなり低下する傾向を示すものである。
【0058】
この理由は、定かではないが、研磨粒子が結合剤中において表面に露出することがないことから、研磨能力を発揮し得ないことによるものと推定される。
【0059】
次に研磨テープ10の製造方法について説明する。
まず、ポリエステルフィルム、例えば2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる厚さ10〜200μ、好ましくは50〜100μの研磨テープ用基材11が準備される。次に研磨テープ10上に、必要ならば例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、またはポリエステル樹脂を主成分とするプライマ層12が塗布される。このようにプライマ層12を塗布することにより、光ファイバ2を研磨テープ10によって研磨しても、研磨テープ用基材11から研磨層13が剥離することはない。
【0060】
次に平均粒子径1〜200mμの例えばコロイダルシリカ粒子とイソプロピルアルコール等の研磨材粒子用溶媒とを含んだコロイダルシリカゾル(研磨材粒子液)と、例えば有機無機複合ポリマー樹脂(結合剤)とイソプロピルアルコール等の結合剤用溶媒とを含んだ結合剤用樹脂液とを混合して塗工剤を作製する。
【0061】
この場合、塗工剤中では、コロイダルシリカ粒子が平均粒子径1〜200mμを維持し、凝集することなく分散している。
【0062】
なお、塗工剤中に有機無機複合ポリマー樹脂を硬化させるための硬化剤、例えばスズ化合物等の有機金属溶液を混入してもよく、また塗工剤中にコロイダルシリカ粒子を分散させるための分散剤、例えば非イオン界面活性剤を混入してもよい。
【0063】
塗工剤中に硬化剤を混入する場合、有機無機複合ポリマー樹脂(固形分)に対する硬化剤の溶液としての比率は、90:10であることが好ましい。
【0064】
また塗工剤中におけるP/V重量比、すなわちコロイダルシリカ粒子(固形分)/有機無機複合ポリマーシリコーン樹脂(固形分)=20:80〜95:5(重量比)となっているが、このP/V重量比=50:50〜80:20であることが好ましい。
【0065】
次に研磨テープ用基材11上のプライマ層12に、塗工剤がグラビアリバース法によって塗布される。研磨テープ用基材11上のプライマ層12に塗工剤を塗布した後、研磨テープ用基材11は直ちに110℃〜120℃の温度で30秒間程度加熱され、この間塗工剤中のイソプロピルアルコール等の溶媒が大気中へ飛散する。
【0066】
次に塗工剤中に硬化剤が混入している場合、研磨テープ用基材11は更に80℃で10分間加熱される。他方、塗工剤中に硬化剤が混入していない場合、研磨テープ用基材11は100℃で1時間加熱される。このようにして塗工剤が乾燥し、プライマ層12上に厚さ0.5〜10μ、好ましくは3〜5μの研磨層13が形成されて研磨テープ10が得られる。
【0067】
なお、上記のような条件で塗工剤を乾燥させることにより、コロイダルシリカ粒子は凝集することなく研磨層13中で平均粒子径1〜200mμを維持しながら分散することができる。
【0068】
すなわち、塗工剤を塗布した後、直ちにイソプロピルアルコール等の溶剤を飛散させないと、塗工剤中でコロイダルシリカ粒子が凝集する時間を与えてしまい、コロイダルシリカ粒子の平均粒子径が大きくなる。
【0069】
上述のように塗工剤中のコロイダルシリカ粒子は、塗工剤の作製工程、塗工剤のプライマ層12上へ塗布工程、およびその後の乾燥工程のいずれの工程においても、平均粒子径1〜200mμを維持する。また研磨層13中においてもコロイダルシリカ粒子は平均粒子径1〜200mμを維持する。
【0070】
このようにコロイダルシリカ粒子が、その平均粒子径1〜200mμを維持する理由は、およそ次のとおりである。
【0071】
すなわち、一般に粒子径1μ以下の粒子を、結合剤用樹脂液として広く用いられているポリエステル、ポリエステルウレタン、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体等の結合剤用樹脂液中に分散させて塗工剤を作製すると、凝集により5〜10μの粗大粒子が生成し易くなる。このため、この塗工剤を用いて形成された研磨層を有する研磨テープは、研磨層中の粗大粒子が原因となって、被研磨体に傷を発生させる。
【0072】
これに対して、本発明のように平均粒子径1〜200mμのコロイダルシリカを含むコロイダルシリカゾルと、有機無機複合ポリマー樹脂を含む結合剤用樹脂液とを混合して作製された塗工剤中においては、上記のような5〜10μの粗大粒子が生成することはない。このため、この塗工剤を用いて形成された研磨層を有する研磨シートは、光コネクタフェルール端面や半導体ウエハ1端面の最終仕上げを行うのに好適な研磨シートになる。
【0073】
すなわち本発明によれば、研磨材粒子であるコロイダルシリカがシラノール基を有しており、他方、樹脂液中の有機無機複合ポリマー樹脂がSi原子を骨格としたポリシロキサンオリゴマー等の官能基を有しており、このポリシロキサンオリゴマーはシラノール基に対して親和性の高い官能基となっているので、コロイダルシリカは凝集することなく、結合剤用樹脂液中で分散することができる。また、コロイダルシリカをイソプロピルアルコール等の有機溶媒に安定に分散させたコロイダルシリカゾルと、同様にイソプロピルアルコール等の有機溶媒を含む粘性の低い樹脂液とを混合させて作製された塗工剤中においては、コロイダルシリカゾルと結合剤用樹脂液が同質の有機溶媒を含むので、結合剤用樹脂液中へのコロイダルシリカの分散が容易となり、塗工剤中でのコロイダルシリカの凝集の生成を抑制することができる。これらの有機溶媒としては、イソプロピルアルコールの他、メタノール、エタノール、キシレン・ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコール−モノn−プロピルエーテル、ジメチルアセトアミド、メチルイソブチルケトン等が使用できる。
【0074】
研磨テープ10において研磨テープ用基材11、プライマ層12および研磨層13がいずれも透明性を有している場合、基材面と研磨層面の区別がつきにくいことから、誤使用の可能性がある。これを防止するには、研磨テープ基材に着色加工あるいは文字や図柄の印刷加工を施せば良い。
【0075】
このようにして製造された研磨テープを用いて、光コネクタフェルール端面や半導体ウエハ1の表面が研磨される。次に光コネクタフェルール2の表面の研磨方法について説明する。
【0076】
図3に示すように、回転金属板16上にエラストマ弾性体15を介して本発明による研磨テープ10が配置され、研磨テープ10上において光コネクタフェルール2の表面が水を潤滑剤として約2分間研磨される。上述のように研磨テープ10の研磨層13には凝集による5〜10μの粗粒子がなく、このため光コネクタフェルール2の表面を効率よく研磨できる。
【0077】
すなわち、本発明のように研磨テープ10の研磨層13に凝集による5〜10μの粗粒子を生じさせないようにすることにより、光コネクタフェルール2を均一かつ精度良く研磨することができる。また光コネクタフェルール2に傷を生じさせることなく、また研磨中に他の研磨材を含む研磨液を供給する必要はない。なお、被研摩体によっては研摩加工時に潤滑剤を供給するとさらに効率よく研摩できることがある。潤滑剤としては、水、アルコール、界面活性剤、オイル等一般的に知られているものを用いることができ、この場合、潤滑剤中に研摩材は含まれていない。潤滑剤を使用する場合、研摩材を含む研摩液を使用するメニカカルポリッシングと比較して、取扱いが容易であり作業性が良い。
【0078】
なお、研磨中、研磨テープ10の研磨層13は目詰まりすることなく、全体として徐々に減少していく。このため、研磨テープ10の寿命は研磨層13が存在する限り続くので、研磨テープ10の寿命を長く維持することができる。
【0079】
尚、光コネクタフェルール2の代わりに半導体ウェハ1等の精密部品を研磨しても同様な効果を奏することができるものである。
【0080】
【実施例】
第1の実施例
次に本発明の第1の実施例について説明する。この第1の実施例は第1の実施の形態に対応している。
【0081】
以下、本発明の研磨テープおよびその製造方法の具体的な構成を、実施例に基づいて説明する。
【0082】
[実施例1]
研磨層用の塗工剤
水分散高分子ポリエステル樹脂液[東洋紡績(株):バイロナールMD1200]10重量部に、平均粒子径10〜20mμの水性シリカゾル[日産化学工業(株):スノーテックス30]10重量部を添加した後、攪拌し、粘度100cpsの研磨層用の塗工剤[a]を得た。
【0083】
研磨テープの製造
厚さ50μのポリエチレンテレフタレートフィルム[帝人(株):低熱収縮SGタイプ]からなる研磨テープ用基材の片面に、上記の研磨層用の塗工剤[a]を、3本リバース法によって20g(dry)/m2 に塗工、乾燥し、本発明の実施例品である研磨テープ(A)を得た。
【0084】
この研磨テープ(A)により、5吋シリコンウエハの表面の最終仕上げであるヘイズの除去を行ったところ、研磨傷や研磨斑のない最終仕上げが行えた。
【0085】
[実施例2]
研磨層用の塗工剤
水分散高分子ポリエステル樹脂液[東洋紡績(株):バイロナールMD1200]10重量部と、平均粒子径10〜20mμの水性シリカゾル[日産化学工業(株):スノーテックス30]10重量部との混合液を有機酸によってpH7.5に調整した後、4時間のゆるやかな攪拌を行い、さらに0.8μのフィルタで濾過することにより、粘度100cpsの研磨層用の塗工剤[b]を得た。
【0086】
研磨テープの製造
厚さ50μのポリエチレンテレフタレートフィルム[帝人(株):低熱収縮SGタイプ]からなる研磨テープ用基材の片面に、上記の研磨層用の塗工剤[b]を、3本リバース法によって20g(dry)/m2 に塗工、乾燥し、本発明の実施例品である研磨テープ(B)を得た。
【0087】
研磨テープ(B)における研磨層は白化しており、研磨層中のシリカ粒子の凝集が生じていることが明らかである。
【0088】
なお、研磨テープ(B)の研磨層を電子顕微鏡で観察したところ、研磨層中のシリカ粒子の粒子径が0.1〜0.8μ(100〜800mμ)であることが確認できた。
【0089】
この研磨テープ(B)により、5吋シリコンウエハの表面の最終仕上げであるヘイズの除去を行ったところ、0.1μ以上の研削性能が確認できた。
【0090】
[実施例3]
研磨層用の塗工剤
シリコーン系塗工剤[日本合成ゴム(株):グラスカHPC7502]10重量部に、平均粒子径10〜20mμのイソプロパノールシリカゾル[日産化学工業(株):IPA−ST]10重量部を添加した後、攪拌し、粘度100cpsの研磨層用の塗工剤[c]を得た。
【0091】
研磨テープの製造
厚さ50μのポリエチレンテレフタレートフィルム[帝人(株):低熱収縮SGタイプ]からなる研磨テープ用基材の片面に、上記の研磨層用の塗工剤[c]を、3本リバース法によって20g(dry)/m2 に塗工、乾燥し、本発明の実施例品である研磨テープ(C)を得た。
【0092】
この研磨テープ(C)により、光コネクタフェルールの端面の研磨を行ったところ、研磨傷や研磨斑が殆どない最終仕上げが行えた。
【0093】
[実施例4]
厚さ50μのポリエチレンテレフタレートフィルム[帝人(株):低熱収縮SGタイプ]からなる研磨テープ用基材の片面に、実施例3で使用した研磨層用の塗工剤[c]を、3本リバース法によって30g(dry)/m2 に塗工、乾燥し、本発明の実施例品である厚さ20μの研磨層を有する研磨テープ(D)を得た。
【0094】
この研磨テープ(D)により、光コネクタフェルールの端面の研磨を行なったところ、研磨傷や研磨斑の全くない鏡面仕上げを行なうことができ、信号の減衰特性の良好な光コネクタフェルールが得られた。
【0095】
[実施例5]
研磨層用の塗工剤
水分散系ポリエステル樹脂液[東洋紡績(株):バイロナールMD−1245]に、平均粒子径10〜20mμのコロイダルシリカ[日産化学工業(株):スノーテックス30]を、ポリエステル樹脂/シリカ=1/1(重量比)になるように混合した後、アンモニア水溶液を添加してpH7に調整した。
【0096】
これを2時間攪拌した後、0.8μのフィルタで濾過し、研磨層用の塗工剤[e]を得た。
【0097】
研磨テープの製造
厚さ50μのポリエチレンテレフタレートフィルム[帝人(株):低熱収縮SGタイプ]からなる研磨テープ用基材の片面に、上記の研磨層用の塗工剤[e]を、3本リバース法によって30g(dry)/m2 に塗工、乾燥し、本発明の実施例品である研磨テープ(E)を得た。
【0098】
この研磨テープ(E)により、光コネクタフェルールの端面の研磨を行なったところ、研磨傷や研磨斑の全くない最終仕上げを行なうことができ、信号の減衰特性の良好な光コネクタフェルールが得られた。
【0099】
第2の実施例
次に第2の実施例について説明する。この第2の実施例は第2の実施の形態に対応している。
【0100】
[実施例6]
研磨層用の塗工剤
有機無機複合ポリマーシリコーン樹脂液[日本合成ゴム(株):セラミックコート材グラスカHPC7502、メタノール溶媒、固形分30%]20重量部に、平均粒子径10〜15mμのコロイダルシリカゾル[日産化学工業(株):オルガノシリカゾルIPA−ST、イソプロピルアルコール溶媒、固形分30%]80重量部を添加した後、超音波分散を行い、研磨層用の塗工剤(f)を得た。
【0101】
有機無機複合ポリマーシリコーン樹脂液[日本合成ゴム(株):セラミックコート材グラスカHPC7502、メタノール溶媒、固形分30%]20重量部に、平均粒子径10〜15mμのコロイダルシリカゾル[日産化学工業(株):オルガノシリカゾルIPA−ST、イソプロピルアルコール溶媒、固形分30%]80重量部および硬化剤[日本合成ゴム(株):HPC404H]2重量部を添加した後、超音波分散を行い、研磨層用の塗工剤(g)を得た。
【0102】
有機無機複合ポリマーシリコーン樹脂液[日本合成ゴム(株):セラミックコート材グラスカHPC7502、メタノール溶媒、固形分30%]20重量部に、分散剤[日本合成ゴム(株):カルボン酸系分散剤]3重量部、平均粒子径10〜15mμのコロイダルシリカゾル[日産化学工業(株):オルガノシリカゾルIPA−ST、イソプロピルアルコール溶媒、固形分30%]80重量部および硬化剤[日本合成ゴム(株):HPC404H]2重量部を添加した後、超音波分散を行い、研磨層用の塗工剤(h)を得た。
【0103】
ここで、上記グラスカHPC7502、HPC404HおよびIPA−STの各材料の特性を下表に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
研磨テープの製造法
上記の研磨層用の塗工剤(f)、(g)または(h)を濾過精度1μでフィルタリングを行った。次に厚さ75μのポリエチレンテレフタレートフィルム[アイ・シー・アイ・ジャパン(株):易接着処理Melinex542タイプ]からなる研磨テープ用基材の片面(易接着処理面)に、上記塗工剤(f)、(g)または(h)をグラビアリバース法(斜線版95線、版深80μ)によって5g(dry/m2 )に塗工し、加熱乾燥した後、3μ(dry)厚の研磨層を有する研磨テープ(F)(研磨層用の塗工剤(f)を使用)、(G)(研磨層用の塗工剤(g)を使用)、(H)(研磨層用の塗工剤(h)を使用)を得た。
【0106】
一方、厚さ75μのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡(株):コロナ処理E5100タイプ]からなる研磨テープ用基材の片面(コロナ処理面)に、アンカーコート剤[日本合成ゴム(株):エポキシ系アンカーコート剤]をグラビアリバース法(斜線版200線、版深30μ)によって1g(dry/m2 )塗工してプライマ層を形成した。次にプライマ層上に上記の研磨層用の塗工剤(f)、(g)または(h)を各々グラビアリバース法(斜線版95線、版深80μ)によって5g(dry/m2 )塗工し、乾燥加熱した後、3μ(dry)厚の研磨層を有する研磨テープF′(研磨層用の塗工剤(f)を使用)、G′(研磨層用の塗工剤(g)を使用)、H′(研磨層用の塗工剤(h)を使用)を得た。
【0107】
上記の方法によって得られた研磨テープ(F)、(G)、(H)、(F′)、(G′)、(H′)における研磨層は、研磨材粒子の凝集による5〜10μの粗大粒子を含んでおらず、また研磨層表面の中心線平均粗度(Ra)が約0.1μと微細になっていた。ここで研磨層表面の中心線平均粗度(Ra)は、(株)東京精密:表面粗さ形状測定機サーフコム590Aでカットオフ値0.8mmで測定した(以下実施例7〜13においても同様)。また、研磨テープ(F)の全光線透過率は91%、ヘイズ値は9%と透明性を有していた。
【0108】
[実施例7]
研磨層用の塗工剤
有機無機複合ポリマーシリコーン樹脂液[日本合成ゴム(株):セラミックコート材グラスカHPC7502、メタノール溶媒、固形分30%]30重量部に、平均粒子径10〜15mμのコロイダルシリカゾル[日産化学工業(株):オルガノシリカゾルIPA−ST、イソプロピルアルコール溶媒、固形分30%]70重量部を添加した後、超音波分散を行い、研磨層用の塗工剤(i)を得た。
【0109】
研磨テープの製造法
上記の研磨層用の塗工剤(i)を濾過渡精度1μでフィルタリングを行なった。次に厚さ75μのポリエチレンテレフタレートフィルム[アイ・シー・アイ・ジャパン(株):易接着処理Melinex542タイプ]からなる研磨テープ用基材の片面(易接着処理面)に、上記塗工剤(i)をグラビアリバース法(斜線版95線、版深80μ)によって5g(dry/m2 )に塗工し、加熱乾燥した後、3μ(dry)厚の研磨層を有する研磨テープ(I)を得た。
【0110】
上記の方法によって得られた研磨テープ(I)における研磨層は、研磨材粒子の凝集による5〜10μの粗大粒子を含んでおらず、また研磨層表面の中心線平均粗度(Ra)が約0.2μと微細になっていた。また研磨テープの全光線透過率は92%。ヘイズ値は10%と透明性を有していた。
【0111】
[実施例8]
研磨層用の塗工剤
有機無機複合ポリマーシリコーン樹脂液[日本合成ゴム(株):セラミックコート材グラスカHPC7502、メタノール溶媒、固形分30%]35重量部に、平均粒子径10〜15mμのコロイダルシリカゾル[日産化学工業(株):オルガノシリカゾルIPA−ST、イソプロピルアルコール溶媒、固形分30%]65重量部を添加した後、超音波分散を行い、研磨層用の塗工剤(j)を得た。
【0112】
研磨テープの製造法
上記の研磨層用の塗工剤(j)を濾過渡精度1μでフィルタリングを行なった。次に厚さ75μのポリエチレンテレフタレートフィルム[アイ・シー・アイ・ジャパン(株):易接着処理Melinex542タイプ]からなる研磨テープ用基材の片面(易接着処理面)に、上記塗工剤をグラビアリバース法(斜線版95線、版深80μ)によって5g(dry/m2 )に塗工し、加熱乾燥した後、3μ(dry)厚の研磨層を有する研磨テープ(J)を得た。
【0113】
上記の方法によって得られた研磨テープ(J)における研磨層は、研磨材粒子の凝集による5〜10μの粗大粒子を含んでおらず、また研磨層表面の中心線平均粗度(Ra)が約0.1μと微細になっていた。また研磨テープの全光線透過率は92%。ヘイズ値は13%と透明性を有していた。
【0114】
[実施例9]
研磨層用の塗工剤
シリコーンワニス[信越化学工業(株):KR−220IPA、イソプロピルアルコール溶媒、固形分51%]30重量部に、平均粒子径10〜15mμのコロイダルシリカゾル[日産化学工業(株):オルガノシリカゾルIPA−ST、イソプロピルアルコール溶媒、固形分30%]200重量部を添加した後、超音波分散を行い、研磨層用の塗工剤(k)を得た。
【0115】
研磨テープの製造法
上記の研磨層用の塗工剤(k)を濾過渡精度1μでフィルタリングを行なった。次に厚さ75μのポリエチレンテレフタレートフィルム[アイ・シー・アイ・ジャパン(株):易接着処理Melinex542タイプ]からなる研磨テープ用基材の片面(易接着処理面)に、上記塗工剤をグラビアリバース法(斜線版95線、版深80μ)によって5g(dry/m2 )に塗工し、加熱乾燥した後、3μ(dry)厚の研磨層を有する研磨テープ(K)を得た。
【0116】
上記の方法によって得られた研磨テープ(K)における研磨層は、研磨材粒子の凝集による5〜10μの粗大粒子を含んでおらず、また研磨層表面の中心線平均粗度(Ra)が0.3μ以下と微細になっていた。また研磨テープは透明性を有していた。
【0117】
[実施例10]
研磨層用の塗工剤
有機無機複合ポリマーシリコーン樹脂液[日本合成ゴム(株):セラミックコート材グラスカHPC7502、メタノール溶媒、固形分30%]20重量部に、平均粒子径70〜100mμのコロイダルシリカゾル[日産化学工業(株):オルガノシリカゾルIPA−ST、イソプロピルアルコール溶媒、固形分30%]80重量部を添加した後、超音波分散を行い、研磨層用の塗工剤(l)を得た。
【0118】
研磨テープの製造法
上記の研磨層用の塗工剤(l)を濾過渡精度1μでフィルタリングを行なった。次に厚さ75μのポリエチレンテレフタレートフィルム[アイ・シー・アイ・ジャパン(株):易接着処理Melinex542タイプ]からなる研磨テープ用基材の片面(易接着処理面)に、上記塗工剤をグラビアリバース法(斜線版95線、版深80μ)によって5g(dry/m2 )に塗工し、加熱乾燥した後、3μ(dry)厚の研磨層を有する研磨テープ(L)を得た。
【0119】
上記の方法によって得られた研磨テープ(L)における研磨層は、研磨材粒子の凝集による5〜10μの粗大粒子を含んでおらず、また研磨層表面の中心線平均粗度(Ra)が約0.2μと微細になっていた。また研磨テープの全光透過率は85%、ヘイズ値は61%と半透明性を有していた。
【0120】
[実施例11]
研磨層用の塗工剤
有機無機複合ポリマーシリコーン樹脂液[日本合成ゴム(株):セラミックコート材グラスカHPC7502、メタノール溶媒、固形分30%]30重量部に、平均粒子径70〜100mμのコロイダルシリカゾル[日産化学工業(株):オルガノシリカゾル、イソプロピルアルコール溶媒、固形分30%]70重量部を添加した後、超音波分散を行い、研磨層用の塗工剤(m)を得た。
【0121】
研磨テープの製造法
上記の研磨層用の塗工剤(m)を濾過渡精度1μでフィルタリングを行なった。次に厚さ75μのポリエチレンテレフタレートフィルム[アイ・シー・アイ・ジャパン(株):易接着処理Melinex542タイプ]からなる研磨テープ用基材の片面(易接着処理面)に、上記塗工剤をグラビアリバース法(斜線版95線、版深80μ)によって5g(dry/m2 )に塗工し、加熱乾燥した後、3μ(dry)厚の研磨層を有する研磨テープ(M)を得た。
【0122】
上記の方法によって得られた研磨テープ(M)における研磨層は、研磨材粒子の凝集による5〜10μの粗大粒子を含んでおらず、また研磨層表面の中心線平均粗度(Ra)が約0.2μと微細になっていた。また研磨テープの全光透過率は87%、ヘイズ値は68%と半透明性を有していた。
【0123】
[実施例12]
研磨層用の塗工剤
有機無機複合ポリマーシリコーン樹脂液[日本合成ゴム(株):セラミックコート材グラスカHPC7502、メタノール溶媒、固形分30%]40重量部に、平均粒子径70〜100mμのコロイダルシリカゾル[日産化学工業(株):オルガノシリカゾル、イソプロピルアルコール溶媒、固形分30%]60重量部を添加した後、超音波分散を行い、研磨層用の塗工剤(n)を得た。
【0124】
研磨テープの製造法
上記の研磨層用の塗工剤(n)を濾過渡精度1μでフィルタリングを行なった。次に厚さ75μのポリエチレンテレフタレートフィルム[アイ・シー・アイ・ジャパン(株):易接着処理Melinex542タイプ]からなる研磨テープ用基材の片面(易接着処理面)に、上記塗工剤をグラビアリバース法(斜線版95線、版深80μ)によって5g(dry/m2 )に塗工し、加熱乾燥した後、3μ(dry)厚の研磨層を有する研磨テープ(N)を得た。
【0125】
上記の方法によって得られた研磨テープ(N)における研磨層は、研磨材粒子の凝集による5〜10μの粗大粒子を含んでおらず、また研磨層表面の中心線平均粗度(Ra)が約0.2μと微細になっていた。また研磨テープの全光透過率は89%、ヘイズ値は46%と半透明性を有していた。
【0126】
[実施例13]
研磨層用の塗工剤
有機無機複合ポリマーシリコーン樹脂液[日本合成ゴム(株):セラミックコート材グラスカHPC7502、メタノール溶媒、固形分30%]50重量部に、平均粒子径70〜100mμのコロイダルシリカゾル[日産化学工業(株):オルガノシリカゾル、イソプロピルアルコール溶媒、固形分30%]50重量部を添加した後、超音波分散を行い、研磨層用の塗工剤(o)を得た。
【0127】
研磨テープの製造法
上記の研磨層用の塗工剤(o)を濾過渡精度1μでフィルタリングを行なった。次に厚さ75μのポリエチレンテレフタレートフィルム[アイ・シー・アイ・ジャパン(株):易接着処理Melinex542タイプ]からなる研磨テープ用基材の片面(易接着処理面)に、上記塗工剤をグラビアリバース法(斜線版95線、版深80μ)によって5g(dry/m2 )に塗工し、加熱乾燥した後、3μ(dry)厚の研磨層を有する研磨テープ(O)を得た。
【0128】
上記の方法によって得られた研磨テープ(O)における研磨層は、研磨材粒子の凝集による5〜10μの粗大粒子を含んでおらず、また研磨層表面の中心線平均粗度(Ra)が約0.2μと微細になっていた。また研磨テープの全光透過率は90%、ヘイズ値は20%と透明性を有していた。
【0129】
上記の方法によって各研磨テープ(F)、(I)、(J)、(L)、(M)、(N)、(O)の全線透過率ヘイズ値、外観、光コネクタの研磨、特性について評価した結果を以下表2に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
なお、表2中の全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)はスガ試験機(株):カラーコンピュータSM−5で測定した。また、光コネクタの研磨特性は、光コネクタ(ジルコニアフェルール)を(株)精工技術:光ファイバ研磨機SFP120Aで実施例品の研磨テープを用いて最終仕上げ研磨を行なった後、光学顕微鏡および(株)東京精密:三次元表面粗さ形状解析システムサーフコム590A−3DFで傷の有無や光ファイバーのヘコミを検査した結果である。
【0132】
比較例1
線状飽和ポリエステル樹脂[東洋紡績(株):バイロン#530]50重量部とトルエン70重量部とメチルエチルケトン70重量部とを含む樹脂液中に、平均粒子径800mμの酸化アルミニウム微粉末[昭和電工(株):WA#10000]200重量部を添加し、サンドミルで良く分散させた後、これをトルエンとメチルエチルケトンとの等量混合溶剤で希釈することにより、粘度100cpsの研磨層用の塗工剤[p]を得た。
【0133】
厚さ75μのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡(株):コロナ処理E5100タイプ]からなる研磨テープ用基材の片面(コロナ処理面)に、上記の研磨層用塗工剤[p]を3本リバース法によって40g(dry/m2 )塗工、加熱乾燥して比較例品である研磨テープ(P)を得た。
【0134】
比較例2
線状飽和ポリエステル樹脂[東洋紡績(株):バイロン#530]30重量部とトルエン40重量部とメチルエチルケトン40重量部とを含む樹脂液中に、平均粒子径10〜20mμのコロイダルシリカを含むコロイダルシリカゾル[日産化学工業(株):オルガノシリカゾルMEK−ST、メチルエチルケトン溶媒、固形分30%]400重量部を添加した後、これをトルエンとメチルエチルケトンとの等量混合溶剤で希釈することにより、粘度20cpsの研磨層用の塗工剤[q]を得た。
【0135】
厚さ75μのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡(株):コロナ処理E5100タイプ]からなる研磨テープ用基材の片面(コロナ処理面)に、上記の研磨層用の塗工剤[q]をグラビアリバース法(斜線版95線、版深80μ)によって5g(dry/m2 )塗工し、加熱乾燥して、比較例品である研磨テープ(Q)を得た。
【0136】
比較例1、2によって得られた研磨テープ(P)、(Q)を用いて光コネクタフェルール端面の最終仕上げを行なった結果、フェルール端面表面には研磨傷や研磨斑が生じ研磨特性は良好でなかった。
【0137】
以上、上記の方法によって得られた各研磨テープ(F)、(G)、(H)、(F′)、(G′)、(H′)、(I)、(J)、(K)、(L)、(M)、(N)および(O)の研磨テープの研磨層は、いずれも研磨材粒子の凝集による5〜10μの粗大粒子を含んでおらず、また研磨層表面の中心線平均粗度(Ra)が0.3μ以下となっていた。
【0138】
また、使用する研磨剤粒子の粒子径、あるいは研磨剤粒子と結合剤の配合割合によって透明性や白濁した白色ないしは半透明性を有しているが、光コネクタフェルール端面の研磨特性は研磨テープ(P)、(Q)と比較して全て良好であった。つまり光コネクタフェルール端面の最終仕上げを行ったところ、研磨傷や研磨斑の全くない鏡面仕上げを行うことができ、光信号の減衰特性の良好な光コネクタフェルールが得られた。
【0139】
なお、光コネクタフェルールに代えて、半導体ウエハ、金属、セラミックス、カラーフィルター(液晶表示用等)、プラズマディスプレイ、光学レンズ、磁気ディスクあるいは光ディスク基板、磁気ヘッド、光学読取ヘッド等の精密部品に対して同様の最終仕上げ研磨テストを行った。この結果、光コネクタフェルールの場合と同様の結果が得られた。
【0140】
【発明の効果】
本発明によれば、研磨層中の研磨材粒子が、粒子径の小さい粒子径の揃っている微細粒子からなり、かつ研磨層中には5〜10μの粗大粒子が存在していないため、光コネクタフェルールや半導体ウエハ等の精密部品表面等の最終仕上げを、研磨傷や研磨斑を生ずることなく行うことができる。
【0141】
本発明によれば、最終仕上げを行うのに好適で、しかも研削性の高い研磨テープを、容易かつ確実に得ることができる。
【0142】
本発明によれば、研磨層中の研磨材粒子の平均粒子径が1〜200mμに保たれているので、光コネクタフェルールや半導体ウエハ等の精密部品を研磨する際、表面の傷をなくすことができる。
【0143】
本発明によれば、平均粒径が1〜200mμの研磨材を含む塗工剤を得ることができる。
【0144】
本発明によれば、最終仕上げを行うのに好適な研磨テープを容易かつ確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による研磨テープを用いた研磨工程を示す図。
【図2】研磨テープの層構成を示す図。
【図3】光コネクタフェルールの研磨作用を示す図。
【符号の説明】
1 半導体ウエハ
2 光コネクタフェルール
2a 端面
3 光ファイバ
4 被覆部
10 研磨テープ
11 研磨テープ用基材
12 プライマ層
13 研磨層
Claims (3)
- 研磨テープ用基材と、
この研磨テープ用基材上に設けられた研磨層とを備え、
研磨層は、結合剤用樹脂と、コロイダルシリカ粒子の凝集物からなり、粒子径が凝集した状態で50〜800nmとした研磨材粒子と、からなることを特徴とする研磨テープ。 - 平均粒子径10〜100nmのコロイダルシリカ粒子からなる研磨材粒子を結合剤用樹脂液中に分散させた後、結合剤用樹脂液中で研磨材粒子の凝集物を生成させ、粒子径50〜800nmとした研磨材粒子を含有する塗工剤とし、次いでこれを研磨テープ用基材に塗工することを特徴とする研磨テープの製造方法。
- 結合剤用樹脂液は、シリコーン樹脂またはシリコーン系樹脂を有することを特徴とする請求項2記載の研磨テープの製造方法。
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