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JP3670548B2 - 緑色色材組成物およびその製造方法 - Google Patents

緑色色材組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、緑色色材組成物およびその製造方法に関するものであり、詳細には、高価な原料や危険な有機溶媒を用いずとも、安価かつ安全な方法により製造することができ、インキ、プラスチック・紙用フィラー、トナー、インクジェットプリンター用インク、偽造防止用インキ・トナー、一般塗料、自動車用粉体顔料・塗料、静電塗装用塗料、化粧品、頭髪装飾用、顔料組成物、工芸品・陶芸品など美術品用顔料組成物および塗料、多色性塗料用顔料組成物、繊維着色用(坦持)顔料組成物、玩具用塗料、化粧紙・化粧板用塗料及びフィラー、プラスチックおよび金属用塗料及びフィラー、ディスプレイ用顔料組成物、表示媒体用、磁気記録媒体用塗料、触媒塗料および耐熱塗料用顔料組成物等多種の目的に用いられる緑色色材組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真や印刷の技術分野において、取り扱う画像のカラー化が一般的となり、カラー化に関する技術について様々な検討が行われている。
特に電子写真におけるトナーや印刷における印刷インキなどはその代表的なものである。
この様なトナーや印刷インキ等を総称して、色材組成物ということもある。
カラー画像を得るためには、上記の色材組成物の中でも、特に緑色のものが重要となることがある。緑色は、光の3原色の一つであり、また人に対して心理的に新鮮な若さ、平和、静けさ、また安心感を与える重要な色素である。このような緑色系の色調を有し、かつ特定の機能を有する色材組成物を得ることは産業上大いに意義のあることである。
例えば、電子写真方式によるトナー自身が磁性を備える1成分系現像法では、従来のモノクロでの複写、プリントにおいては、黒い磁性トナーが使われている。また、印刷の分野においても、印刷画像に磁気識別機能を持たせるため磁性粉を含有させ黒い磁性インクとすることがある。
しかし、カラー画像の複写、プリントにおいては、黒色以外に緑色または鮮やかな原色に着色し、かつ磁気特性を保持した磁性トナー、磁性インクとする必要がある。この1成分系カラー磁性トナーやカラー磁性インクにより鮮明なカラー画像を得るには、磁性トナー、インクなどの色材組成物自身を鮮やかな色に着色する必要があるが、その中に含まれる磁性体粒子は一般に黒色であるため、その色材組成物中に直接、顔料、染料を添加したり、該磁性体粒子の表面に直接着色層を設けても全体としては暗い色調の色材組成物となる問題がある。
【0003】
これに対して、本発明者らは、先に基体粒子上に金属膜を形成し、その膜の反射効果により、粉体を白色化する方法(特開平3−271376号公報、特開平3−274278号公報)、金属アルコキシド溶液中に基体粒子を分散し、金属アルコキシドを加水分解することにより、基体粒子の表面に均一な0.01〜20μmの厚みの金属酸化物膜を生成させる方法(特開平6−228604号公報)、表面に金属酸化物からなる薄膜と、金属からなる薄膜とを交互に複数層設けて機能性粉体とすること(特開平7−90310号公報)、金属酸化物膜で多層被覆してなる粉体を熱処理して、より緻密で安定した金属酸化物多層膜を有する粉体を製造すること(国際公開WO96/28269号公報)を提案している。
【0004】
特に、上記に挙げた金属酸化物膜や金属膜を複数層設けた粉体は、各層の膜厚を調整することにより特別の機能を付与することができるものであって、例えば基体粒子の表面に、屈折率の異なる被覆膜を入射光の4分の1波長に相当する厚さずつ設けるようにすると、入射光を全て反射してする粉体が得られる。これを磁性体を基体粒子とするものに適用すると、光を反射して白色のトナー用粉体を製造することができ、更にこの粉体の表面の前記光干渉性多層膜を構成する各単位被覆層が特定の同一波長の干渉反射ピークを有するように、膜厚を設定すると、染料や顔料を用いずとも、単色の粉体にすることができることを示唆している。
上記特開平6−228604号公報、特開平7−90310号公報、国際公開WO96/28269号公報に記載の方法では、膜数や膜厚を多くするほど反射率が上がることにより明度が上がり、膜の特性は顕著になる。しかし膜数や膜厚が多くなるほど、基体粒子の特性は減少する。例えば、基体粒子として、磁性粉を用いた場合は、膜数や膜厚が多くなるほど、磁気特性が劣ってくる。換言すれば、上記の方法で得られる着色粉体は、基体粒子が有する特性を生かすためには膜数、膜厚を少なくする必要があるが、膜数、膜厚を少なくすると所望の着色が得られなくなる恐れもあった。
【0005】
本発明者らは、上記の技術を基に、目的とする特定の色調を有する着色色材組成物を得る技術、詳細には鮮やかな緑色系の色を呈する膜被膜粉体の色を発色させるための条件範囲を確立することを試みた。
本発明者らは、このような観点から検討を行った結果、基体粒子の表面に屈折率の大きい被膜と小さい被膜とが隣合って積層する複数の被覆膜と、該被膜層の外側に顔料および染料が分散された接着樹脂層とを有し、450〜650nmの間にピークを有する反射スペクトルを示す様に該基体粒子及び被覆膜の条件を設定することにより、緑色系の色調を有し、かつ1成分系現像方式でも複合した機能を果たし得るカラートナーが得られることを見い出した(特開平11−24320号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平11−24320号公報に記載の緑色系トナーは、その基体粒子の表面に有する被膜層が金属アルコキシドの加水分解反応によって製膜されたものであった。金属アルコキシドの加水分解反応による製膜方法は、溶媒として、引火性の高い有機系のものを使用し、原料として、高価な金属アルコキシドを使用しなければならない。引火性の高い有機溶媒を用いるためには、製造施設を防爆設備としたり、温度、湿度の管理が厳しく、それを用いて製造した製品の価格も総合的に当然高価なものとなる。
また、上記特開平11−24320号公報に記載の緑色系トナーは、十分な明度を有しておらず、暗い色調のものであった。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記従来技術の欠点を克服し、金属アルコキシドの加水分解による方法を用いずに、高価な金属アルコキシドや引火性の高い有機溶媒を使用することなく、製造施設も防爆設備を必要とせず、温度、湿度の管理も容易であり、総合的に製品の価格も安価に得られる機能性の高い、緑色粉体を含有する緑色色材組成物およびその製造方法を提供することにある。
また本発明のさらなる目的は、明度が高く安定な色調のトナー、インキ、塗料として用いることができ、しかも基体粒子の特性(例えば、磁気特性)を高レベルに保持した緑色色材組成物、詳細には、基体粒子の特性を生かすための、比較的少ない膜数、膜厚であっても、十分な明度が得られる被覆膜を有する緑色粉体を基材とする緑色色材組成物およびその製造方法を提供しようとするものである。
更に本発明の他の目的は、1成分系現像方式でも優れた複合した機能を果たし得る緑色磁性トナーや、優れた磁気特性を発揮することができ、かつ耐候性の優れた緑色磁性印刷用インキ、緑色塗料等に適用できる緑色色材組成物およびその効率的製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、鋭意研究の結果、多層膜被覆粉体を製造する際、基体粒子の表面に有する被覆膜の少なくとも1層が水系溶媒中での金属塩の反応により形成し、膜の組合せ、それぞれの膜の厚さ、また、それらを制御する方法および反応条件(pH、分散条件等)を改良し、更に膜設計において、極大値の波長の範囲を、特定の範囲に限定した。更に加えて被覆膜の少なくとも1層が、結晶化微粒子からなる空隙を有する被覆膜とすることにより、散乱反射による明度向上を計ることにより、鮮やかな緑色系の粉体が得られ、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の緑色色材組成物およびその製造方法は、下記の通りである。
(1)基体粒子の表面に水系溶媒中での金属塩の反応により反応溶液中で固相微粒子を形成させ、該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませることによって形成され、空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成されたものである被覆膜を少なくとも1層有し450〜650nmの間にピークを有する反射スペクトルを示す緑色粉体を含有する緑色色材組成物。
【0010】
(2)前記緑色粉体の水系溶媒中での金属塩の反応により形成された前記被覆膜が、下記式の条件を満たすものであることを特徴とする請求項1記載の緑色色材組成物。
Nd=mλ/4
〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
n:膜を構成する物質の屈折率
d:膜厚
m:自然数
λ:粉体の示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
κ:減衰係数〕
【0011】
(3)前記緑色粉体の基体粒子の表面に有する被覆膜が多層膜であることを特徴とする前記(1)記載の緑色色材組成物。
(4)前記緑色粉体の多層膜の各膜が、全て水系溶媒中での金属塩の反応により形成されたものであることを特徴とする前記(3)記載の緑色色材組成物。
【0012】
(5)前記緑色粉体の多層膜の各膜が、全て下記式の条件を満たすものであることを特徴とする前記(3)記載の緑色色材組成物。
Nd=mλ/4
〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
n:膜を構成する物質の屈折率
d:膜厚
m:自然数
λ:粉体の示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
κ:減衰係数〕
【0013】
(6)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜が、該結晶化微粒子表面と空隙との間で生じる光の散乱反射により明度を付与することができるものであることを特徴とする前記(1)記載の緑色色材組成物。
(7)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜の表面に、該表面の空隙を塞ぐことができる超微粒子で構成された緻密な被覆膜を有することを特徴とする前記(1)記載の緑色色材組成物。
(8)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜が高屈折率膜であることを特徴とする前記(1)記載の緑色色材組成物。
(9)前記緻密膜がシリカ膜であることを特徴とする前記(7)記載の緑色色材組成物。
(10)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜が、該被覆膜を製膜するための反応溶液中で固相微粒子を形成させ該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませた後に焼成することによって形成されたものであることを特徴とする前記(1)記載の緑色色材組成物。
【0014】
(11)前記反応溶液が水溶液であることを特徴とする前記(10)記載の緑色色材組成物。
(12)前記焼成を行う前に、前記固相微粒子を取込ませた被覆膜上を、該被覆膜の表面の空隙を塞ぐ緻密な膜を構成することができる超微粒子で被覆したことを特徴とする前記(10)記載の緑色色材組成物。
(13)前記緑色粉体が、少なくとも結着用樹脂を含む分散媒中に分散されていることを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれかに記載の緑色色材組成物。
(14)前記緑色粉体上に接着樹脂層を有することを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれかに記載の緑色色材組成物。
(15)前記接着樹脂層が体質顔料を含有することを特徴とする前記(14)記載の緑色色材組成物。
【0015】
(16)緑色粉体を含有する緑色色材組成物の製造方法において、該緑色粉体が450〜650nmの間にピークを有する反射スペクトルを示す様に、基体粒子の表面に水系溶媒中での金属塩の反応により反応溶液中で固相微粒子を形成させ、該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませることによって形成され、空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成されたものである少なくとも1層の被覆膜を形成することを特徴とする緑色色材組成物の製造方法。
【0016】
(17)水系溶媒中での金属塩の反応により形成する前記被覆膜を、下記式の条件を満たすように形成することを特徴とする請求項17記載の緑色色材組成物の製造方法。
Nd=mλ/4
〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
n:膜を構成する物質の屈折率
d:膜厚
m:自然数
λ:粉体の示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
κ:減衰係数〕
【0017】
(18)基体粒子の表面に形成する前記被覆膜を多層膜とすることを特徴とする前記(16)記載の緑色色材組成物の製造方法。
(19)前記多層膜の各膜を、全て水系溶媒中での金属塩の反応により形成することを特徴とする前記(18)記載の緑色色材組成物の製造方法。
【0018】
(20)前記多層膜の各膜を、全て下記式の条件を満たすように形成することを特徴とする前記(18)記載の緑色色材組成物の製造方法。
Nd=mλ/4
〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
n:膜を構成する物質の屈折率
d:膜厚
m:自然数
λ:粉体の示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
κ:減衰係数〕
【0019】
(21)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜を、該結晶化微粒子表面と空隙との間で生じる光の散乱反射により明度を付与できるように形成することを特徴とする前記(16)記載の緑色色材組成物の製造方法。
(22)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜の表面に、該表面の空隙を塞ぐことができる超微粒子で緻密な膜を形成することを特徴とする前記(16)記載の緑色色材組成物の製造方法。
(23)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜を高屈折率膜とすることを特徴とする前記(16)記載の緑色色材組成物の製造方法。
(24)前記緻密膜をシリカ膜とすることを特徴とする前記(22)記載の緑色色材組成物の製造方法。
(25)空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜を、該被覆膜を製膜するための反応溶液中で固相微粒子を形成させ該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませた後に焼成することによって形成することを特徴とする前記(16)記載の緑色色材組成物の製造方法。
(26)前記反応溶液を水溶液とすることを特徴とする前記(25)記載の緑色色材組成物の製造方法。
【0020】
(27)前記焼成を行う前に、前記固相微粒子を取込ませた被覆膜上を、該被覆膜の表面の空隙を塞ぐ緻密な膜を構成することができる超微粒子で被覆することを特徴とする前記(25)記載の緑色色材組成物の製造方法。
(28)前記緑色粉体が、少なくとも結着用樹脂を含む分散媒中に分散することを特徴とする前記(16)〜(27)のいずれかに記載の緑色色材組成物の製造方法。
(29)前記緑色粉体上に接着樹脂層を設けることを特徴とする前記(16)〜(28)のいずれかに記載の緑色色材組成物の製造方法。
(30)前記接着樹脂層が体質顔料を含有させることを特徴とする請求項29記載の緑色色材組成物の製造方法。
【0021】
本発明の緑色色材組成物中の緑色粉体は製膜反応の際に、以下の操作および作用により、被膜にならない固相の析出が抑えられ、基体粒子の表面に均一な厚さの被膜を、所望の厚さで形成することができると推測する。▲1▼反応溶媒として、緩衡溶液を用い、ある一定のpHとすることにより、酸またはアルカリの影響が和らげられ、基体表面の侵食が防止される;▲2▼超音波分散により、基体粒子、特にマグネタイト粉等の磁性体の分散性を良くするばかりでなく、皮膜成分の拡散性を良くし、更に、皮膜同志の付着を防止し、被覆製膜された磁性体粒子の分散性をも良好にする;▲3▼適当な反応の速さで被膜成分を析出させ、被膜にならない固相の析出を抑制する。
上記の総合的作用により、膜被覆粉体の表面の電荷を一定に維持することができ、電気2重層の働きにより、膜被覆粉体の凝集がなく、分散粒子が得られる。電気2重層の働きを生かすためにpHは、基体の物質と製膜反応により液中で形成される金属化合物の種類の組み合わせにより異なり、また、両者の等電点を避けることが好ましい。
また、基体粒子の表面に有する被覆膜の少なくとも1層を、結晶化微粒子と該結晶化微粒子相互間に空隙を有する結晶化微粒子の集合体からなる膜(以下、単に結晶化微粒子構成膜ともいう)とすることにより、結晶化微粒子表面と空隙との屈折率差を大きくして、光の散乱反射を起こし、反射効果を高め、優れた明度を有する緑色色調の機能性粉体を提供することが可能となった。
【0022】
本発明は上記の作用機構により、水溶性原料を用いるにも係わらず、基体として磁性体を用いた場合でも膜被覆粉体同志が凝集したり固着することがなく、好ましい膜厚制御ができる膜被覆粉体を容易に製造することを可能とすることができた。また、基体粒子の特性(例えば、磁気特性)を高レベルに保持した機能性粉体を提供することが可能となった。
更に、水を溶媒として用いることにより、アルコキシド法に比べ安価な製造コストで製膜できるという効果が得られる。
【0023】
上記のようにして得られた本発明の緑色色材組成物は、顔料、粉末冶金、窯業原料、電子工業などの原料となる緑色系複合原料粉体として有用なものであり、カラーインキ用顔料およびプラスチック・紙用フィラーに用いられている従来の顔料にとって代わる優れた性能を保持し、長期保存においても安定な色調のものとすることができる。
耐熱性を利用して陶器、磁器、ガラス器、工芸品、美術品、装飾品等の着色用顔料組成物として絵付け、意匠、装飾に使用できる。
さらに多色性や反射あるいは透過色を利用して意匠性に富んだ装飾品、陶器、磁器、ガラス器、絵画などの工芸品・美術品用、書籍、自動車・自転車などの塗料緑色多機能性インキ、トナー、塗料、化粧品ができる。
また、触媒作用を持つ酸化チタン膜等によって、耐候性にすぐれ大気・水などの環境浄化性のある塗料ができる。
すなわち、これら基体の特性と膜の特性を兼ね備えた緑色多機能性インキ、トナーおよび塗料等に適用できる。
特に前記機能が磁気、電場、色、粒子形状、蛍光発光、蓄光発光、特定紫外線域反射吸収並びに特定赤外線反射吸収の機能のいずれか2種以上を組み合わせることにより偽造防止用顔料組成物として印刷インキ、トナーとして支持媒体上に所望の画像を形成し、目視による判別、機器による判別対象物とすることが可能である。
【0024】
以下、本発明の結晶化微粒子構成膜について、図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
図1は、基体粒子1の表面に結晶化微粒子構成膜2を有する本発明の緑色色材組成物の一例の断面図であり、図2は、図1の緑色色材組成物が有する結晶化微粒子構成膜2の断面拡大図である。
図1および図2に示す様に、上記結晶化微粒子構成膜2は結晶化微粒子3の間に空隙を有することにより、前記結晶化微粒子3の表面と空隙との屈折率差を大きくし、光の散乱反射を起こさせ、これにより明度の高い粉体とすることができる。上記の散乱反射が強いほど、粉体の明度が増す。
膜2の中に含まれる結晶化微粒子3は、屈折率が高い方が好ましく、また、粒径が揃っていない方が好ましい。
明度の調整は、上記膜内の結晶化微粒子の量および粒子径により調整することができる。
但し、粒子径によっては、散乱と干渉が同時に起こり、その干渉によって緑色以外の色相を呈することがあるので、その設計には注意を要する。
特に、得られた膜被覆粉体がオパールの様に単色スペクトル色の強い場合には、膜中の結晶化粒子径がある大きさ(光の波長の4分の1から1波長程度)で均一になって該結晶化微粒子による干渉が発生している考えられる。
【0025】
この場合、膜内の結晶化微粒子の粒子径は、1〜500nmが好ましく、より好ましくは1〜200nmであり、さらに好ましくは1〜100nmの範囲である。粒子径が1nm未満では、構成膜は光を透過するため下地の基体粒子の色がそのまま出ることがある。逆に500nmより大きい場合には複数の粒子の反射光により前記干渉着色が起こったり、膜が脆くなって、剥離しやすく好ましくない。
また膜内の結晶化微粒子は、他の微粒子や膜と接触していても、粒界など形状で区別できるものである。
【0026】
一方、上記結晶化微粒子構成膜の1層の、好ましい厚さ範囲は、基体となる粒子の大きさによって異なる。基体粒子が0.1μm〜1μmでは0.05μm〜0.5μm、基体粒子が1μm〜10μmでは0.05μm〜2μm、基体粒子が10μm以上では0.05μm〜3μmであることが好ましい。
また、上記結晶化微粒子構成膜の総膜厚の好ましい厚さ範囲も、基体となる粒子の大きさによって異なる。基体粒子が0.1μm〜1μmでは0.1μm〜3μm、基体粒子が1μm〜10μmでは0.1μm〜5μm、基体粒子が10μm以上では0.1μm〜10μmであることが好ましい。
【0027】
更に本発明の緑色色材組成物は、含有されている緑色粉体が、図2に示されるように、空隙を有する結晶化微粒子3で構成された膜2の表面に、該表面の空隙を塞ぐことができる超微粒子4で構成された緻密な被覆膜(以下単に、緻密膜ともいう)を有することが好ましい。
例えば、前述のような結晶化微粒子構成膜を最外層として有する緑色粉体をトナーあるいは塗料等の顔料粉体として用いた場合、トナーの樹脂または塗料のビヒクルがその空隙に入り込み、結晶化微粒子3の表面と空隙との間の屈折率差を小さくして光の散乱反射を弱くし、その結果、明度も低下させる。
前述の緻密膜は上記のような明度の低下を防止するために好適である。
【0028】
なお、特開平4−269804号公報には、表面に無機顔料粒子の被覆層を有する着色粉体が記載されているが、この着色粉体は顔料粒子間の空隙が、表面処理剤と樹脂の混合物によって充填されたものであり、本発明の緑色色材組成物のように、散乱反射が発生するものではなく、顔料粒子そのものの色によって所望の色に着色されるものである。またこの特開平4−269804号公報に記載の着色粉体は、基体粒子表面に顔料粒子が十分に固定されていないことがある。その場合には、基体に付着していた顔料粒子が溶媒と樹脂の混合液中で分離するため、塗料等に適用できないこともある。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の緑色色材組成物について詳細に説明する。
本発明の緑色色材組成物は、基体粒子の表面上に前述の結晶化微粒子構成膜のみならず、光を透過し得る他の構成からなる膜をさらに有する多層膜被覆粉体を含有するものである。
該低屈折率の光透過性の被覆膜として、金属塩等の反応により、金属水酸化物膜あるいは金属酸化物膜等を複数層とする場合において、前記被覆膜(基体粒子を被覆し、光干渉に関与する膜の層)の各層の厚さを調整することにより特別の機能を与えることができる。例えば、基体粒子の表面に、屈折率の異なる交互被覆膜を、次の式(1)を満たすように、被膜を形成する物質の屈折率nと450〜650nmの間にある可視光の波長の4分の1の整数m倍に相当する厚さdを有する交互膜を適当な厚さと膜数設けると、450〜650nmの間にある波長λの光(フレネルの干渉反射を利用したもの)が反射または吸収される。
nd=mλ/4 (1)
【0030】
この作用を利用して、基体粒子の表面に目標とする450〜650nmの間の波長に対し、式(1)を満たすような膜の厚みと屈折率を有する被膜を製膜し、さらにその上に屈折率の異なる膜を被覆することを1度あるいはそれ以上交互に繰り返すことにより450〜650nmの間に反射ピークを有する膜が形成される。このとき製膜する物質の順序は次のように決める。まず核となる基体の屈折率が高いときには第1層目が屈折率の低い膜、逆の関係の場合には第1層目が屈折率の高い膜とすることが好ましい。
【0031】
膜厚は、膜屈折率と膜厚の積である光学膜厚の変化を分光光度計などで反射波形として測定、制御するが、反射波形が最終的に必要な波形になるように各層の膜厚を設計する。例えば、多層膜を構成する各単位被膜の反射波形のピーク位置を450〜650nmの範囲に精密に合わせると、染料や顔料を用いずとも緑色系の単色の着色粉体とすることができる。
【0032】
ただし、実際の基体の場合、基体の粒径、形状、膜物質および基体粒子物質の相互の界面での位相ずれ及び屈折率の波長依存性によるピークシフトなどを考慮して設計する必要がある。例えば、基体粒子の形状が平行平板状である場合には、粒子平面に形成される平行膜によるフレネル干渉は上記式(1)のnを次の式(2)のNに置き換えた条件で設計する。特に、基体の形状が平行平板状である場合でも金属膜が含まれる場合には、式(2)の金属の屈折率Nに減衰係数κが含まれる。なお、透明酸化物(誘電体)の場合にはκは非常に小さく無視できる。
【0033】
N=n+iκ(iは複素数を表す) (2)
【0034】
この減衰係数κが大きいと、膜物質および基体物質の相互の界面での位相ずれが大きくなり、さらに多層膜のすべての層に位相ずれによる干渉最適膜厚に影響を及ぼす。
【0035】
これにより幾何学的な膜厚だけを合わせてもピーク位置がずれるため、特に緑色系に着色する際に色が淡くなる。これを防ぐためには、すべての膜に対する位相ずれの影響を加味し、コンピューターシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるように設計する。
さらに、基体表面にある酸化物層のための位相ずれや、屈折率の波長依存性によるピークシフトがある。これらを補正するためには、分光光度計などで、反射ピークが最終目的膜数で目標波長である450〜650nmの範囲になるよう最適の条件を見出すことが必要である。
【0036】
球状粉体などの曲面に形成された膜の干渉は平板と同様に起こり、基本的にはフレネルの干渉原理に従う。したがって、着色方法も緑色系に設計することができる。ただし曲面の場合には、粉体に入射し反射された光が複雑に干渉を起こす。これらの干渉波形は膜数が少ない場合には平板とほぼ同じである。しかし、総数が増えると多層膜内部での干渉がより複雑になる。多層膜の場合もフレネル干渉に基づいて、反射分光曲線をコンピューターシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるよう設計することができる。特に基体粒子表面への被膜形成の場合、基体粒子表面とすべての膜に対する位相ずれの影響を加味し、コンピューターシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるよう設計する。さらに、基体粒子表面にある酸化物層のためのピークシフトや屈折率の波長依存性によるピークシフトも加味する。実際のサンプル製造では設計した分光曲線を参考にし、実際の膜においてこれらを補正するために、分光光度計などで反射ピークが最終目的膜数で450〜650nmの範囲の目標波長になるよう膜厚を変えながら最適の条件を見出さねばならない。
【0037】
不定形状の粉末に着色する場合も多層膜による干渉が起こり、球状粉体の干渉多層膜の条件を参考にし基本的な膜設計を行う。上記の多層膜を構成する各単位被膜のピーク位置は各層の膜厚により調整することができ、膜厚は基体粒子の表面に金属酸化物等の固相成分を形成させる被覆形成条件中、原料組成、固相析出速度および基体量などを制御することにより、精度良く膜厚を制御でき、均一な厚さの被膜を形成することができ、所望の緑色系に着色することができる。
以上のように、反射ピークや吸収ボトムが最終目的膜数で450〜650nmの範囲の目標波長になるよう膜形成溶液などの製膜条件を変えながら最適の条件を見出すことにより、緑色系の粉体を得ることができる。また、多層膜を構成する物質の組合せおよび各単位被膜の膜厚を制御することにより多層膜干渉による発色を調整することができる。これにより、染料や顔料を用いなくても粉体を所望の緑色系に鮮やかに着色することができる。
【0038】
以下に、本発明の緑色色材組成物およびその製造方法についてを詳細に説明する。
本発明の緑色色材組成物およびその製造方法において、その金属酸化物膜等を形成させる対照となる基体粒子は、特に限定されず、金属を含む無機物でも、有機物でもよく磁性体、誘電体、導電体および絶縁体等でもよい。
基体が金属の場合、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム等、どのような金属でもよいが、その磁性を利用するものにおいては、鉄等磁性を帯びるものが好ましい。これらの金属は合金でも良く、前記の磁性を有するものであるときには、強磁性合金を使用することが好ましい。
また、その粉体の基体が金属化合物の場合には、その代表的なものとして前記した金属の酸化物が挙げられるが、例えば、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素等の外、カルシウム、マグネシウム、バリウム等の酸化物、あるいはこれらの複合酸化物でも良い。さらに、金属酸化物以外の金属化合物としては、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属フッ化物、金属炭酸塩、金属燐酸塩などを挙げることができる。
【0039】
さらに、基体粒子として、金属以外では、半金属、非金属の化合物、特に酸化物、炭化物、窒化物であり、シリカ、ガラスビーズ等を使用することができる。その他の無機物としてはシラスバルーン(中空ケイ酸粒子)などの無機中空粒子、微小炭素中空球(クレカスフェアー)、電融アルミナバブル、アエロジル、ホワイトカーボン、シリカ微小中空球、炭酸カルシウム微小中空球、炭酸カルシウム、パーライト、タルク、ベントナイト、合成雲母、白雲母、など雲母類、カオリン等を用いることができる。
【0040】
有機物としては、樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の具体例としては、セルロースパウダー、酢酸セルロースパウダー、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合または共重合により得られる球状または破砕の粒子などが挙げられる。特に好ましい樹脂粒子はアクリル酸またはメタアクリル酸エステルの重合により得られる球状のアクリル樹脂粒子である。
但し、樹脂粒子を基体とする場合、乾燥における加熱温度は樹脂の融点以下でなければならない。
【0041】
基体の形状としては、球体、亜球状態、正多面体等の等方体、直方体、回転楕円体、菱面体、板状体、針状体(円柱、角柱)などの多面体、さらに粉砕物のような全く不定形な粉体も使用可能である。
これらの基体は、粒径については特に限定するものでないが、0.01μm〜数mmの範囲のものが好ましい。
また、基体粒子の比重としては、0.1〜10.5の範囲のものが用いられるが、得られた粉体を液体等に分散させて使用する場合には、流動性、浮遊性の面から0.1〜5.5が好ましく、より好ましくは0.1〜2.8、更に、好ましくは0.5〜1.8の範囲である。得られた粉体を液体等に分散させて使用する場合、基体の比重が0.1未満では液体中の浮力が大きすぎ、膜を多層あるいは非常に厚くする必要があり、不経済である。一方、10.5を超えると、浮遊させるための膜が厚くなり、同様に不経済である。
【0042】
本発明においては、前記のように、上記粉体基体粒子を屈折率が互いに異なる複数の被膜層を用い、各被膜層の屈折率および層厚を適宜選択して被覆することにより、その干渉色により緑色に着色しかつ可視光域以外にも特異的な干渉反射ピークを発現する粉体とすることができる。
前記したように、基体粒子の表面上に金属塩の反応により金属水酸化物膜あるいは金属酸化物膜を析出させるが、固相析出反応の溶媒として、緩衡溶液を用い、ある一定のpHで適当な速さで析出させる。
【0043】
本発明において、金属塩として使用される金属は、鉄、ニッケル、クロム、チタン、亜鉛、アルミニウム、カドミウム、ジルコニウム、ケイ素、錫、鉛、リチウム、インジウム、ネオジウム、ビスマス、セリウム、アンチモン等の他、カルシウム、マグネシウム、バリウム等が挙げられる。また、これら金属の塩としては、硫酸、硝酸、塩酸、シュウ酸、炭酸やカルボン酸の塩が挙げられる。さらにまた、前記金属のキレート錯体も含まれる。本発明において使用される金属塩の種類は、その基体の表面に付与しようとする性質や製造に際して適用する手段に応じてそれに適するものが選択される。
本発明の粉体は基本的に無色透明の膜を形成し、屈折率の異なる膜を積層させて着色するため、前記のような金属とその塩が挙げられているが、干渉による着色だけでは反射及び吸収スペクトルの波形が所望の色にならない場合は、次のような金属コバルト、イットリウム、硫黄、ユーロピウム、ディスプロシウム、アンチモン、サマリウム、銅、銀、金、白金、ロジウム、イリジウム、タングステン、鉄、マンガン等の金属の硫酸、硝酸、塩酸、シュウ酸、炭酸、カルボン酸の塩類が挙げられる。さらに前記金属のキレート錯体も含まれる。これらの金属の膜中の含有率は10ppm〜15%、好ましくは10ppm〜15%、さらに望ましくは50ppm〜5%である。
これらの金属の含有率が小さいときには、着色が不十分となり、多すぎると着色が強すぎて暗い色となり本発明の目標である明るい色の粉体が得られないという不都合が生じる。
【0044】
これらの金属塩による金属酸化物等の膜は、複数層形成してもよく、またそれらの金属酸化物等の膜の上に、必要により金属アルコキシドの加水分解による金属酸化物等、また他の製膜方法による膜を形成することもできる。
このようにして、基体粒子の上に多層の膜を形成することができ、しかもその際、各層の厚さが所定の厚さをもつように形成条件を設定することにより、目的とする特性を得ることができるようにすることができ、また簡単な操作でかつ安価な原料である金属塩を用いて金属酸化物等の膜を多層に形成することができる。特に、高価な金属アルコキシドを原料とすることなく、多重層膜被覆粉体とすることができる点は重要な利点である。
【0045】
本発明の緑色粉体を含有する緑色色材組成物を製造する方法では、多層被覆膜を連続した工程として製作しても良く、また、各被覆膜を1層ずつ製作、あるいは単層製作と複層連続製作を組み合わせるなど種々の方法で製作することができる。
本発明に係わる緑色色材組成物の粒径は、特に限定されず、目的に応じて適宜調整することができるが、通常は0.1μm〜数mm、好ましくは0.1μm〜200μmの範囲である。
【0046】
本発明において、その1回に形成させる金属酸化物膜の膜の厚さとしては、5nm〜10μmの範囲とすることが可能であり、従来の形成法より厚くすることができる。
複数回に分けて形成する金属酸化物膜の合計の厚さとしては、前記したカラー磁性粉体の場合、その干渉による反射率が良い金属酸化物膜を形成するためには、10nm〜20μmの範囲が好ましい、さらに好ましくは20nm〜5μmの範囲とすることである。粒径が制限されるなど特に薄い膜厚で可視光を干渉反射させるためには0.02〜2.0μmの範囲とすることが好ましい。
【0047】
本発明の緑色色材組成物は上記のように、その製造方法における製膜反応の際に、特に水系溶媒中で製膜反応させる場合、製膜反応溶媒としてpH一定条件の水系溶媒を用い、同時に膜被覆反応を超音波分散条件下で、基体の表面への被膜形成反応により形成される。
本願発明では製膜反応を一定にするために、水系溶媒に緩衝剤を添加し緩衝溶液とするかあるいはあらかじめ用意された緩衝溶液が用いられる。また製膜反応の際には緩衝溶液以外の膜原料を添加し製膜する。製膜原料添加により製膜を行う際に、pHが大きく変動する場合には、これを防ぐため、緩衝溶液を追加することが望ましい。
本発明で言うところのpH一定とは、pHが所定のpHの±2以内、好ましくは±1以内、より好ましくは±0.5以内を言う。
【0048】
緩衡溶液は種々の系が用いられ、特に限定されないが、まず基体粒子が十分に分散できることが重要であり、同時に基体の表面に析出した金属水酸化物あるいは金属酸化物の膜被覆粉体も電気2重層の働きで分散でき、かつ上記の緩やかな滴下反応により緻密な被膜が製膜できる条件を満足するように選択する必要がある。
従って、本発明の膜被覆粉体の製造法は従来の金属塩溶液の反応による中和や等電点による析出、または加熱により分解して析出させる方法とは異なるものである。
【0049】
次に、超音波分散条件としては、種々の超音波発振装置が使用でき、例えば、超音波洗浄機の水槽を利用することができ、特に限定されない。しかし本発明の超音波分散の条件としては、発振装置の大きさ、反応容器の形状および大きさ、反応溶液の量、体積、基体粒子の量等によって変化してくるので、それぞれの場合において、適切な条件を選択すればよい。
本発明に使用される緩衡溶液としては、析出させる固相成分に依存し、特に限定されないが、Tris系、ホウ酸系、グリシン系、コハク酸系、乳酸系、酢酸系、酒石酸系、塩酸系等が挙げられる。
【0050】
次に一例として、特に水系溶媒中で製膜反応させる場合、高屈折率の金属酸化物と低屈折率の金属酸化物の交互多層膜を形成する方法について具体的に説明する。まず、酸化チタンあるいは酸化ジルコニウムなどの被膜を形成する場合、酢酸/酢酸ナトリウム系等の緩衡溶液中に基体粒子を浸漬し超音波発振により分散し、チタンあるいはジルコニウムなどの金属塩である硫酸チタン、硫酸ジルコニウム等を原料とし、これら金属塩の水溶液を反応系に緩やかに滴下し、生成する金属水酸化物あるいは金属酸化物を基体粒子のまわりに析出させることにより行うことができる。この滴下反応の間、pHは上記緩衡溶液のpH(5.4)に保持される。
反応終了後、この粉体を固液分離し、洗浄・乾燥後、熱処理を施す。乾燥手段としては真空乾燥、自然乾燥のいずれでもよい。また、不活性雰囲気中で噴霧乾燥機などの装置を用いることも可能である。
なお、この被覆される膜が酸化チタンである場合には、酸化チタンの形成は下記の反応式で示される。
【0051】
Ti(SO42+2H2O→TiO2+4H2(SO42
【0052】
硫酸チタニルのTiO2含有量は5g/リットル〜180g/リットルが好ましく、より好ましくは10g/リットル〜160g/リットルである。5g/リットル未満では製膜に時間がかかりすぎ、また粉体処理量が減り、不経済であり、180g/リットルを超えて高くなると希釈液が添加中に加水分解を起こし製膜成分にならず、共に不適である。
【0053】
続いて、二酸化ケイ素あるいは酸化アルミニウムなどの被膜を形成する場合、KCl/H3BO3系等にNaOHを加えた緩衡溶液中に上記のチタニアコート粒子を浸漬し分散し、ケイ素あるいはアルミニウムなどの金属塩であるケイ酸ナトリウム、塩化アルミニウム等を原料とし、これら金属塩の水溶液を反応系に緩やかに滴下し、生成する金属水酸化物あるいは金属酸化物を基体粒子のまわりに析出させることにより行うことができる。この滴下反応の間、pHは上記緩衡溶液のpH(9.0)に保持される。
反応終了後、この粉体を固液分離し、洗浄・乾燥後、熱処理を施す。この操作により、基体粒子の表面に屈折率の異なる2層の、金属酸化物膜を形成する操作を繰り返すことにより、多層の金属酸化物膜をその表面上に有する粉体が得られる。
なお、この被覆される膜が二酸化ケイ素である場合には、二酸化ケイ素の形成は下記の反応式で示される。
【0054】
Na2SiX2X+1+H2O→XSiO2+2Na++2OH-
【0055】
次に、本発明の緑色色材組成物が含有する緑色粉体が有する結晶化微粒子構成膜は、光を散乱反射し、明度を高めることができるものであれば、どのような物質からなるものでも構わないが、高屈折率を有する物質からなるものが好ましい。
高屈折率を有する物質としては、特に限定されないが、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム等の酸化物を用いることができ、屈折率が高く、汎用である酸化チタン(チタニア)が最も好ましい。
【0056】
上記のような結晶化微粒子構成膜を製膜する方法としては、製膜反応液相中での固相析出による方法等が用いられる。
具体的には、本発明者らが先に提案した特開平6−228604号公報、特開平7−90310号公報、国際公開WO96/28269号公報に記載されている有機溶媒中での金属アルコキシドの加水分解による固相析出法(金属アルコキシド法)や、特願平9−298717号に添付の明細書に記載の水溶液中での金属塩からの反応による固相析出法(水系法)等が挙げられる。
この場合、製膜反応液中で、基体粒子の表面に析出物の膜が成長する速度(線成長速度)よりも、反応液中で固相微粒子が析出する速度が速くなるように、反応溶液濃度、添加触媒量、基体粒子分散量を調整する。
上記のようにして、製膜反応液中に析出した固相微粒子を、基体粒子表面に付着させ、固相微粒子で構成された被覆膜を形成する。
【0057】
なお、この時点で膜にとりこまれた固相微粒子は非晶質であり、該固相微粒子間の空隙も未形成であり、光の散乱反射が生じず、また膜の機械的強度も非常に低いものである。そのため、この固相微粒子で構成された被覆膜を焼成する。この焼成により前記非晶質の固相微粒子は結晶化し、該結晶化微粒子間には空隙も形成され、前述の光を散乱反射する結晶化微粒子構成膜となる。
【0058】
該結晶化微粒子構成膜を形成するためには、前述の金属アルコキシド法よりも、水系法の方が線成長速度と固相析出速度の関係を好適なものとするのに簡易であるため好ましい。
また金属アルコキシド法は原料として高価な金属アルコキシドや、反応溶媒として比較的高価で危険性のある有機溶媒を必要とする。このため、製造装置または設備等も防爆仕様にしなければならず、更に、コストパーフォマンスが悪くなる。この点からも金属アルコキシド法に比べ水系法が好ましい。
また、核粒子が金属や酸化物などでも水に対して、不安定な物質の場合には、金属アルコキシド法で第1層目を形成し安定化することにより、第二層目以降を水系法で被覆する併用法が好ましい。
【0059】
なお、前記焼成は前記固相微粒子で構成された被覆膜を形成した後に行ってもよいが、更に該被覆膜の上に、その被覆膜が結晶化微粒子構成膜となった場合その表面の空隙を塞ぐための緻密膜を形成することができる超微粒子で被覆した後に行うことが、得られる緑色粉体の膜強度の点から望ましい。
焼成は300〜1200℃で行うことが好ましい。
【0060】
本発明の緑色色材組成物において、含有される緑色粉体の上記の結晶化微粒子構成膜は2層以上であってもよい。その場合、2層の結晶化微粒子構成膜の間には、低屈折率の光透過性の被覆膜が存在することが好ましい。該低屈折率の光透過性の被覆膜としては特に限定されないが、金属化合物、有機物等からなるものが挙げられる。
【0061】
前記金属化合物としては、金属酸化物や金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、金属フッ化物を挙げることができる。より具体的には、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化珪素、酸化アンチモン、酸化ネオジウム、酸化ランタン、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化リチウム、酸化鉛、硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化アンチモン、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化アルミニウム3ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム等を好適に使用できる。
【0062】
以下に、前記金属化合物膜の製膜方法について説明する。
製膜方法としては、PVD法、CVD法あるいはスプレードライ法等の気相蒸着法により、基体粒子の表面に直接、蒸着する方法が可能である。
しかしながら、本発明者らが先に提案した前記特開平6−228604号公報、特開平7−90310号公報あるいは国際公開WO96/28269号公報に記載されている金属アルコキシド法や、特願平9−298717号明細書に記載の水系法が好ましい。
この場合、前述の結晶化微粒子構成膜の製膜と異なり、線成長速度は固相析出速度よりも高くして、非晶質の均一膜が形成されるように反応条件を調整する。
【0063】
前記有機物としては、特に限定されるものではないが、好ましくは樹脂である。樹脂の具体例としては、セルロース、酢酸セルロース、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合体または共重合体などが挙げられる。
(1)有機物膜(樹脂膜)を形成する場合、
a.液相中、基体粒子を分散させて乳化重合させることにより、その粒子の上に樹脂膜を形成させる方法(液相中での重合法)や、b.気相中での製膜法(CVD)(PVD)等が採られる。
【0064】
本発明の緑色色材組成物に含有される緑色粉体として、基体粒子上に多層膜を有するものを製造する場合の例を以下に示す。
例えば、前記の基体粒子が高屈折率の物質からなるものであれば、その上に低屈折率の光透過性膜を設け、さらにその上に高屈折率の粒子構成膜、またさらに、その上に低屈折率の光透過性膜と、順次交互に設ける。また、基体粒子が低屈折率のものならば、その上に高屈折率の粒子構成膜、さらにその上に低屈折率の光透過性膜、またさらにその上に、高屈折率の粒子構成膜と、順次設ける。
【0065】
次に、本発明において製膜に使用する具体的原料、特に金属塩について説明する。
高屈折率の膜を製膜するのに使用する原料としては、酸化チタン膜用には、チタンのハロゲン化物、硫酸塩等、酸化ジルコニウム膜用には、ジルコニウムのハロゲン化物、硫酸塩、カルボン酸塩、シュウ酸塩、キレート錯体等、酸化セリウム膜用には、セリウムのハロゲン化物、硫酸塩、カルボン酸塩、シュウ酸塩等、酸化ビスマス膜用には、ビスマスのハロゲン化物、硝酸塩、カルボン酸塩等、酸化インジウム膜用には、インジウムのハロゲン化物、硫酸塩等が好ましい。
また、低屈折率の膜を製膜するのに使用する原料としては、酸化ケイ素膜用には、ケイ酸ソーダ、水ガラス、ケイ素のハロゲン化物、アルキルシリケート等の有機ケイ素化合物とその重合体等、酸化アルミニウム膜用には、アルミニウムのハロゲン化物、硫酸塩、キレート錯体等、酸化マグネシウム膜用には、マグネシウムの硫酸塩、ハロゲン化物等が好ましい。
また、例えば酸化チタン膜の場合には、塩化チタンに硫酸チタンを混合すると、より低温で屈折率の高いルチル型の酸化チタン膜になる等の効果がある。
【0066】
また、被覆の際の反応温度は各金属塩の種類に適した温度に管理して被覆することにより、より完全な酸化物膜を製作することができる。
水系溶媒中での基体の表面への被膜形成反応(固相析出反応)が遅すぎる場合には、反応系を加熱して固相析出反応を促進することもできる。但し、加熱の熱処理が過剰であると、該反応速度が速すぎて、過飽和な固相が膜にならず、水溶液中に析出し、ゲルあるいは微粒子を形成し、膜厚制御が困難になる。
【0067】
被覆膜は製作後、蒸留水を加えながら傾斜洗浄を繰り返して、電解質を除去した後、乾燥・焼成等の熱処理を施し、固相中に含まれた水を除去して、完全に酸化物膜とすることが好ましい。また、製膜後の粉体を回転式チューブ炉などで熱処理することにより、固着を防ぐことができ、分散された粒子を得ることができる。
水酸化物膜あるいは酸化物膜を形成し、それを熱処理するには、各層を被覆する毎に熱処理しても良く、また、目的の多層膜を完成後最後に熱処理しても良い。
熱処理条件は反応系により異なるが、上記の熱処理温度としては200〜1300℃であり、好ましくは400〜1100℃である。200℃以下では塩類や水分が残ってしまう事あり、1300℃を超えて高くなると、膜と基体が反応し別の物質となることがあり、共に不適である。熱処理時間としては0.1〜100時間であり、好ましくは0.5〜50時間である。
【0068】
次に本発明に係る緑色色材組成物を調製する場合の(1)緑色インキあるいは塗料様組成物(流体)および(2)緑色トナー、緑色乾式インキ様組成物(粉体)のそれぞれについて説明する。
(1)本発明において緑色インキあるいは塗料様組成物(流体)の媒質(ビヒクル)としては、カラー印刷用、カラー磁気印刷用、カラー磁気塗料用に用いられる、従来公知のワニスを用いることができ、例えば液状ポリマー、有機溶媒に溶解したポリマーやモノマーなどを粉体の種類やインキの適用方法、用途に応じて適宜に選択して使用することができる。
【0069】
上記液状ポリマーとしては、ポリペンタジエン、ポリブタジエン等のジエン類、ポリエチレングリコール類、ポリアミド類、ポリプロピレン類、ワックス類あるいはこれらの共重合体編成体等を挙げることができる。
有機溶媒に溶解するポリマーとしては、オレフィン系ポリマー類、オリゴエステルアクリレート等のアクリル系樹脂類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイソシアネート類、アミノ樹脂類、キシレン樹脂類、ケトン樹脂類、ジエン系樹脂類、ロジン変性フェノール樹脂、ジエン系ゴム類、クロロプレン樹脂類、ワックス類あるいはこれらの変性体や共重合体などを挙げることができる。
有機溶媒に溶解するモノマーとしては、スチレン、エチレン、ブタジエン、プロピレンなどを挙げることができる。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ケロシン、ベンジン炭化水素類、エステル類、エーテル類あるいはこれらの変性体や共重合体などを挙げることができる。
【0070】
(2)緑色トナー、緑色乾式インキ、緑色乾式塗料様組成物(粉体)は、上記緑色色材多層膜被覆粉体を、樹脂とあるいは必要に応じて調色材とを、スクリュー型押出機、ロールミル、ニーダなどで直接混練し、ハンマミル、カッターミルで粗粉砕したあと、ジェットミルなどで微粉砕し、エルボージェットなどで必要な粒度に分級することにより粉体状緑色色材組成物を得ることができる。また、乳化重合法や懸濁重合法などの重合法を用いて、緑色色材多層膜被覆粉体を粉体状緑色色材組成物とすることもできる。
さらに、緑色多層膜被覆粉体と樹脂、調色剤などの添加剤および溶剤をコロイドミルや3本ロールで液状化しインキ塗料などの液状赤色色材組成物とすることもできる。
明度を上げるための調色材としては、白色顔料(展色材)である、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化珪素、酸化アンチモン、酸化鉛等あるいはこれらの複合酸化物類、また炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩、あるいは硫酸バリウム、硫酸カルシウムのような硫酸塩類、硫酸亜鉛のような硫化物あるいは前記酸化物や炭酸塩および硫酸塩を焼結した複合酸化物、複合含水酸化物類が挙げられる。
【0071】
彩度、色相を調整するため、特にフルカラー用混色で色再現用に使用する場合の調色材としては、クロームグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、含水クロム(ビリジアン)等のクロム系酸化物および含水酸化物、エメラルドグリーン等の銅系酸化物、コバルトグリーン等のコバルト系酸化物等の緑色系無機顔料およびピグメントグリーン、ナフトールグリーンなどのニトロソ顔料、グリーンゴールド等のアゾ系顔料、フタロシアニングリーン、ポリクロム銅フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、マラカイトグリーンレーキ、アシッドグリーンレーキなどのレーキ系染料等の緑色系有機染料および顔料、
また、ウルトラマリン等の酸化物、硫化物複合顔料、鉄青、ミロリーブルー等の銅系群青紺青顔料類コバルトブルー、セルリアンブルーなどの酸化コバルト系複合酸化物類青色顔料、 アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ等のレーキ染料、レーキ系顔料無金属フタロシアニン、銅フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料青色有機染料顔料、
【0072】
さらに、鉛、亜鉛およびバリウム等のクロム酸塩(赤口黄鉛、クロムバーミリオン)類、硫化カドミウム等の硫化物類、チタンイエロー等の複合酸化物系顔料等黄色系無機顔料、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントイエロー、等のアゾ系染料および顔料、ファーストイエロー等のファースト染料、オイルイエロー等のオイル染料顔料、メタノールイエロー等アルコール染料顔料等の黄色系有機染料および顔料、
さらに、クロム酸鉛などの酸化物(赤口黄鉛)類およびクロム酸と硫酸鉛からなる複合物(クロムバーミリオン)などの顔料黄色系無機染料および顔料、パーマネントオレンジ、ベンジンオレンジ、ハンザエローなどのアゾ顔料メタノールオレンジ等のアルコール染料顔料、オイルオレンジ等のオイル染顔料等の橙色系有機染料および顔料が挙げられる。しかし本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0073】
この粉体状緑色色材組成物の場合、(a)上記粉砕法で製造する場合の樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、ブタジエン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合体または共重合体などが挙げられる。
(b)重合法の場合、エステル、ウレタン、酢酸ビニル、有機ケイ素、アクリル酸、メタアクリル酸、スチレン、エチレン、ブタジエン、プロピレン等のうち1種あるいは複数の混合物から重合を開始させ、重合体あるいはこれらの共重合体などが形成される。
【0074】
本発明の緑色色材組成物は上記のように、(1)緑色インキあるいは塗料様組成物(流体)および(2)緑色トナー、緑色乾式インキ様組成物(粉体)の形をとる。
また、流体状の場合には、緑色インキ、塗料等であり、前記調色材、乾燥の遅い樹脂には固化促進剤、粘度を上げるために増粘剤、粘性を下げるための流動化剤、粒子同志の分散のために分散剤などの成分を含ませることができる。
一方、粉体の場合には、(a)粉砕法で粉体を製造する場合には、前記調色材、乾燥の遅い樹脂には固化促進剤、混練の際の粘性を下げるためには流動化剤、粒子同志の分散のためには分散剤、紙等への定着のための電荷調整剤、ワックスなどの成分を含ませることができる。
(b)重合法を用いる場合には、前記調色材、重合開始剤、重合促進剤、粘度を上げるためには増粘剤、粒子同志の分散のためには分散剤、紙等への定着のための電荷調整剤、ワックスなどの成分を含ませることができる。
本発明の緑色色材組成物中の多層膜被覆粉体は、単一の粉体ないしは分光特性の異なる複数の粉体の組み合せにより、湿式および乾式カラー印刷や湿式および乾式カラー磁気印刷に適用できるほか、3原色の粉体を用いて、可視光、非可視光(紫外域および赤外域)、蛍光発色および磁気、さらに電気(電場の変化)の6種の組合せの識別機能を持ち、印刷物の偽造防止用カラー磁性インキなどセキュリティ機能を必要とする他の用途に適用することができる。
【0075】
前記本発明の緑色色材組成物を緑色インキあるいは塗料様組成物または緑色トナー、緑色乾式インキ様組成物、緑色乾式塗料組成物として、基材に印刷、溶融転写または被塗装体に塗布する場合、緑色色材組成物中の緑色色材多層膜被覆粉体と樹脂の含有量の関係は、体積比で1:0.5〜1:15である。媒質の含有量が少な過ぎると塗布した膜が被塗装体に固着しない。また、多過ぎると顔料の色が薄くなりすぎ良いインキまたは塗料といえない。
また、緑色インキあるいは塗料組成物中の緑色色材および樹脂を合わせた量と溶剤の量との関係は、体積比で1:0.5〜1:10であり、溶剤の量が少な過ぎると塗料の粘度が高く、均一に塗布できない。また、溶剤の量が多過ぎると塗膜の乾燥に時間を要し塗布作業の能率が極端に低下する。
【0076】
また、基材に印刷、溶融転写または被塗装体に塗料を塗布した際の塗膜の色の濃度は、被塗装体の単位面積当たりに載った顔料の量によって決まる。塗料が乾燥した後の被塗装体上の本発明の緑色色材多層膜被覆粉体の量は、均一に塗布した場合の面積密度で1平方メートルあたり0.1〜300gであり、好ましくは0.1〜100gであれば良好な塗装色が得られる。面積密度が前記の値より小さければ被塗装体の地の色が現れ、前記の値より大きくても塗装色の色濃度は変わらないので不経済である。すなわち、ある厚さ以上に顔料を被塗装体上に載せても、塗膜の下側の顔料にまでは光りが届かない。かかる厚さ以上に塗膜を厚くすることは、塗料の隠蔽力を越えた厚さであるので塗装の効果がなく不経済である。ただし、塗膜の磨耗を考慮し、塗膜の厚さが摩り減るため厚塗りする場合はこの限りではない。また、特定の意匠を部分的に形成する場合もこの限りではない。また、特定の意匠等を部分的に形成する場合にもこの限りではない。
【0077】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕(磁性体を用いた緑色色材組成物1、水系2層被覆)
(第1層シリカ膜の製膜)
(1)緩衡液の調整
1リットルの水に対し、0.4Mの塩化カリウム試薬と0.4Mのほう酸を溶解し、緩衡溶液1とした。
1リットルの水に対し、0.4Mの水酸化ナトリウムを溶解し、緩衡溶液2とした。
250mlの上記緩衡溶液1と115mlの上記緩衡溶液2とを混合均一化し、緩衡溶液3とした。
(2)ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス溶液)
ケイ酸ナトリウム試薬を純水で希釈し、SiO2含有量が10wt%になるように濃度調整した。
【0078】
(3)シリカ製膜
基体粒子として15gのマグネタイト粉末(平均粒径2.3μm)を、あらかじめ準備しておいた184mlの緩衡溶液3(pH:約9.0)に入れ分散液とした。この分散液を入れた容器を、水を張った超音波洗浄機((株)井内盛栄堂製、US−6型)の水槽に入れ、28kHZ、200Wの超音波浴槽中で超音波をかけながら、さらに、マグネタイト粉を緩衡溶液3中で撹拌しながら分散させた。これに、同じくあらかじめ用意しておいた138mlのケイ酸ナトリウム水溶液を40ml/分で添加し、徐々に反応分解させ、表面にシリカ膜を析出させた。
ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに、2時間反応させ、未反応原料をすべて反応させた。製膜反応終了後、シリカ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し、洗浄した。
洗浄後、シリカ製膜粉をバットに入れ、沈降分離し、上液を捨てた後、乾燥機で空気中で150℃、8時間乾燥し、シリカ被覆マグネタイト粉A1を得た。
【0079】
(第2層チタニア膜の製膜)
(1)緩衡液の調整
1リットルの脱イオン水に対し、0.3Mの酢酸、0.9Mの酢酸ナトリウムを溶解し、緩衡溶液4とした。
(2)硫酸チタン水溶液
濃度が0.6M/リットルとなるように硫酸チタンを水に添加し、希釈調整し、硫酸チタン水溶液とした。
【0080】
(3)チタニア製膜
4gの上記粉体A1に対し、436mlの緩衡溶液4(pH:約8.4)を用意し、その緩衡溶液4中に粉体A1を、上記シリカ製膜時と同様に、超音波分散しながら、超音波浴槽中で十分に分散した。その後、液の温度を50〜55℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた硫酸チタン水溶液を総量57mlを1.9ml/分で滴下し、液中で固相微粒子を析出させ液を薄く白濁させた。その後、粉体A1表面に該固相微粒子を固定させるため、滴下速度を1.5ml/分に下げ、未反応分を徐々に析出させた。すると、液中に析出していた固相微粒子が基体粒子表面に固定され、またさらに、基体粒子表面に固定された固相微粒子よりも粒径が小さい超微粒子により、その表面が覆われた。
【0081】
(4)洗浄乾燥
製膜反応終了後、純水でデカンテーションを繰り返し、未反応分と過剩硫酸および反応により形成された硫酸を除き、固液分離を行い、真空乾燥機で乾燥後、乾燥粉を得た。
得られた乾燥粉を、回転式チューブ炉で、650℃で30分加熱処理(焼成)を行い、表面が平滑なシリカ/チタニア被覆マグネタイト粉A2を得た。
この2層膜被覆粉体A2は黄帯緑色であり、その1kOeでの磁化は34.8emu/gであった。この2層膜被覆粉体A2の最大反射ピークは563nmで、明るい緑色となった。
【0082】
上記被覆膜の被覆粉体の分光反射曲線のピーク波長、そのピーク波長での反射率、被覆膜の屈折率および膜厚を下記の方法で測定した。
1)分光反射曲線は、日本分光製、積分球付分光光度計で粉体試料をガラスホルダーに詰め、その反射光を測定した。測定方法はJISZ8723(1988)により、測定した。
2)屈折率と膜厚は、異なる条件で作製した、膜厚の試料の分光反射曲線測定結果を、干渉の式に基づく機器計算の曲線とのフィッティングにより求め評価した。
【0083】
(5)多層膜被覆粉体の表面疎水化処理
得られたシリカ・チタニアコート粉体A210gを、シリコンエトキシド0.2gを溶解したエタノール溶液200ml中に分散し、容器をオイルバスで加熱して液の温度を55℃に保持した。これにアンモニア水(29%濃度)3gを添加し、3時間撹拌後、濾過し、真空乾燥機で100℃で2時間乾燥し、疎水化処理された緑色多層膜被覆粉体A3を得た。
【0084】
(6)接着樹脂層
(ポリスチレン複合粉体、トナー化)
スチレンモノマー100gにあらかじめ前記の表面処理方法で親油化した緑色系多層被覆粉体A3、100gを分散するまで高速攪拌機で攪拌し、均一化した。
このスチレンモノマーと粒子の混合物を、n−ドデシル硫酸ナトリウムを蒸留水500gに溶解した溶液を70℃に温度を保持し、高速攪拌しながら投入し、十分に乳化粒子を微粒子化するまで攪拌した。
これに10%過硫酸アンモニウム水溶液10gを添加し、4時間攪拌して反応させた。
反応終了後、蒸留水2リットルで希釈し、傾斜洗浄で上液を捨て沈澱物を集める。沈澱物をろ紙上で乾燥し、緑色のポリスチレン被覆粉体Aを得た。得られた緑色の粉Aは球状で、また磁場1kOeでの磁化は16emu/gであった。
上記第1〜2層の各屈折率、膜厚、被覆粉体の分光反射曲線のピーク波長およびそのピーク波長での反射率を表1に示す。
【0085】
【表1】
Figure 0003670548
【0086】
〔実施例2〕(磁性体を用いた緑色色材組成物2、水系3層被覆)
(第1層シリカ膜の製膜)
(1)シリカ製膜
基体粒子として、15gの球状マグネタイト粉末(平均粒径2.3μm)を、あらかじめ準備しておいた243mlの前記緩衡溶液3(pH:約9.0)と純水162mlとの混合液に入れ分散液とした。この分散液を入れた容器を、水を張った超音波洗浄機((株)井内盛栄堂製、US−6型)の水槽に入れ、26kHZ、600Wの超音波浴槽中で超音波をかけながら、さらに、マグネタイト粉を含む緩衡溶液3中で撹拌しながら分散させた。これに、同じくあらかじめ用意しておいた130mlのケイ酸ナトリウム水溶液を40ml/分で添加し、徐々に反応分解させ、表面にシリカ膜を析出させた。
【0087】
ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させ、未反応原料をすべて反応させた。製膜反応終了後、シリカ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し、洗浄した。洗浄後、シリカ製膜粉をバットに入れ、沈降分離し、上液を捨てた後、乾燥機で空気中で150℃、8時間乾燥した後、窒素雰囲気中で500℃で30分熱処理(焼成)して、シリカ被覆マグネタイト粉B1を得た。
【0088】
(第2層チタニア膜の製膜)
実施例1と同様に、緩衡溶液4および硫酸チタン水溶液を調製、準備した。
15gの上記粉体B1に対し、1313mlの緩衡溶液4(pH:約8.4)と純水1839mlとの混合液を用意し、その緩衡溶液4中に粉体B1を、上記シリカ製膜時と同様に、超音波分散しながら、超音波浴槽中で十分に分散した。その後、液の温度を50〜55℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた硫酸チタン水溶液総量197mlを1.8ml/分の一定速度で徐々に滴下した。
滴下初期時には、液中に固相微粒子が析出したが、基体粒子表面に固定され、またさらに、基体粒子表面に固定された固相微粒子よりも粒径の小さい超微粒子によりその表面が覆われた、シリカ/チタニア被覆マグネタイト粉B2を得た。この2層膜被覆粉体B2は緑色であり、最大反射ピークは565nmであり、実施例1で得られた粉体A1と同様であった。
この粉体B2の表面は僅かに凹凸があり、部分的にチタニア粒子の凸部もみられた。
【0089】
(第3層シリカ膜の製膜、シリカ薄膜により前記チタニア膜表面を閉じ込めた場合)
実施例1と同様に、緩衡溶液1、2およびケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス溶液)の調製を行った。
上記粉体シリカ/チタニア被覆マグネタイト粉B2、15gにシリカ膜の製膜を行った。緩衝溶液量は上記第1層被覆と同様であったが、ケイ酸ナトリウム水溶液の滴下速度は同じにして滴下量を8mlとして製膜を行い、未反応物がなくなるまで、2時間反応させ、前記と同様に洗浄し、洗浄後、回転式チューブ炉で、窒素雰囲気中で500℃で30分加熱処理(焼成)を行い、シリカ/チタニア被覆マグネタイト粉B3を得た。
【0090】
得られた粉体B3は、表面が平滑なシリカ膜2層の間に、チタニア微粒子が結晶化し、光散乱が大きい緑色の粉体となった。B3の表面は、凹凸がなくなり、ほぼ平滑で、また穴や割れ、くぼみ等はなかった。
透過電子顕微鏡での観察において、シリカ層2層の間に、チタニア微粒子の結晶化が認められ、粒子間に空隙が存在していたため、粒子と空隙の間で散乱反射が大きくなったものと考えられる。
この3層膜被覆粉体B3の最大反射ピークは565nmであった。
【0091】
(接着樹脂層、ポリスチレン複合粉体)
スチレンモノマー100gにあらかじめ前記の表面処理方法で親油化した緑色色材多層被覆粉体B3、100gと同じく親油化した酸化チタン45gを分散するまで高速攪拌機で攪拌し、均一化した。
このスチレンモノマーと粒子の混合物を、n−ドデシル硫酸ナトリウムを蒸留水500gに溶解した溶液を70℃に温度を保持し、高速攪拌しながら投入し、十分に乳化粒子を微粒子化するまで攪拌した。
これに10%過硫酸アンモニウム水溶液10gを添加し、4時間攪拌して反応させた。
反応終了後、蒸留水2リットルで希釈し、傾斜洗浄で上液を捨て沈澱物を集める。沈澱物をろ紙上で乾燥し、緑色のポリスチレン被覆粉体Bを得た。
得られた緑色色材組成物Bの粉体は球状で、磁場1kOeでの磁化は16.2emu/gであった。
上記第1〜3層の各屈折率、膜厚、被覆粉体の分光反射曲線のピーク波長およびそのピーク波長での反射率を表2に示す。
【0092】
【表2】
Figure 0003670548
【0093】
〔実施例3〕(磁性体を用いた緑色色材組成物3、散乱粒子を表面に付着した場合、水系4層被覆)
(第1層シリカ膜の製膜)
基体粒子として、40gのマグネタイト粉(平均粒径0.7μm)を、実施例1と同様に、あらかじめ準備しておいた2874gの緩衡溶液3(pH:約9.0)と純水240mlとの混合液に入れ分散液とし、28kHZ、600Wの超音波浴槽中で超音波をかけながら、さらに、マグネタイト粉を含む緩衡溶液3中で撹拌しながら分散させた。これに、同じくあらかじめ用意しておいた1198mlのケイ酸ナトリウム水溶液を2.67ml/分で徐々に添加し、表面にシリカ膜を析出させた。
ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させ、未反応原料をすべて反応させた。
製膜反応終了後、シリカ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し、洗浄した。
洗浄後、シリカ製膜粉をバットに入れ、沈降分離し、上液を捨てた後、乾燥機で空気中で150℃、8時間乾燥し、シリカ被覆マグネタイト粉C1を得た。
【0094】
(第2層チタニア膜の製膜)
40gの上記粉体C1に対し、4790mlの緩衡溶液4と4790mlの純水との混合液を用意し、その中にC1 を、上記シリカ製膜時と同様に、超音波分散しながら、超音波浴槽中で十分に分散した。その後、液の温度を50〜55℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた、1940mlの硫酸チタニル水溶液(TiO2、15w%)を1.25ml/分の一定速度で徐々に滴下し、液を僅かに白濁させながら滴下を終了させた。
滴下終了後、さらに3時間反応を行い、未反応分を徐々に析出させ、その粒子を膜の中に取り込んだ。
製膜反応終了後、十分な純水でデカンテーションを繰り返し、未反応分と過剰硫酸および反応により形成された硫酸を除き、固液分離を行い、真空乾燥機で乾燥後、乾燥粉を得た。
得られた乾燥粉を、回転式チューブ炉で、650℃で30分加熱処理(焼成)を行い、シリカ/チタニア被覆マグネタイト粉C2を得た。
この2層膜被覆粉体C2は黄色であり、最大反射ピークは607nmでであった。
【0095】
(第3層シリカ膜の製膜)
40gのシリカ/チタニア被覆マグネタイト粉C2に対し、1層目と同様に、あらかじめ準備しておいた3440gの緩衡溶液3(pH:約9.0)と純水287mlとの混合液に入れ、28kHZ、600Wの超音波浴槽中で超音波をかけながら、さらに、マグネタイト粉を含む緩衡溶液3中で撹拌しながら分散させた。これに、同じくあらかじめ用意しておいた1437mlのケイ酸ナトリウム水溶液を2.67ml/分で徐々に添加し、表面にシリカ膜を析出させた。
ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させ、未反応原料をすべて反応させた。
製膜反応終了後、シリカ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し、洗浄した。
洗浄後、シリカ製膜粉をバットに入れ、沈降分離し、上液を捨てた後、乾燥機で空気中で150℃、8時間乾燥し、シリカ被覆マグネタイト粉C3を得た。
【0096】
(第4層チタニア膜の製膜)
40gの上記粉体C3に対し、5747mlの緩衡溶液4と5747mlの純水との混合液を用意し、その中に粉体C3を、上記シリカ製膜時と同様に、超音波分散しながら、超音波浴槽中で十分に分散した。その後、液の温度を50〜55℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた、2328mlの硫酸チタニル水溶液(TiO2、15w%)を1.25ml/分の一定速度で徐々に滴下し、固相微粒子を析出させ液を僅かに白濁させながら滴下を終了させた。
滴下終了後、さらに3時間反応を行い、未反応分を徐々に固相微粒子として析出させ、その微粒子を膜の中に取り込んだ。
製膜反応終了後、十分な純水でデカンテーションを繰り返し、未反応分と過剰硫酸および反応により形成された硫酸を除き、固液分離を行い、真空乾燥機で乾燥後、乾燥粉を得た。
【0097】
得られた乾燥粉を、回転式チューブ炉で、650℃で30分加熱処理(焼成)を行い、シリカ/チタニア被覆マグネタイト粉C4を得た。
この4層膜被覆粉体C4は緑色であり、最大反射ピークは558nmであった。
【0098】
(緑色インキ組成物の調製)
このようにして得られたシリカ/チタニア被覆マグネタイト粉C4、30gを、あらかじめエタノール80gにアクリルポリマー(テクノビット、Kulzer社製)2.5gを溶解した溶液中に分散した後、酸化チタン(シリコン疎水処理品:展色材)20gおよびヒドロキシプロピルセルロース3.2gを加えた混合液を、ジルコニアボールミルで8時間分散処理を行い、緑色色材組成物の塗料分散液CLを得た。
【0099】
(塗布および分光特性)
上記緑色色材組成物の分散液CLを、ブレードコーターで熱転写用プラスチックフィルムに塗布した。緑色色材組成物の塗布量(乾燥後)は59g/m2とした。
乾燥後、得られた塗布紙Cの色は最大反射ピーク波長560nmで、反射率70%の明るい緑色となった。
また、この塗布祇Cの1m2当たりの1kOeでの磁化は457emu/cm2であった。
上記第1〜4層の各屈折率、膜厚、被覆粉体の分光反射曲線のピーク波長およびそのピーク波長での反射率を表3に示す。
【0100】
【表3】
Figure 0003670548
【0101】
〔実施例4〕(磁性体を用いた緑色色材組成物4、金属アルコキシドの加水分解による3層被覆)
(第1層シリカ膜の製膜)
20gのBASF製カーボニル鉄粉(平均粒径1.8μm,10kOeでの磁化は203emu/g)を、あらかじめ158.6gのエタノールに16.1gのシリコンエトキシドを溶解した溶液中で分散した後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいた16.1gのアンモニア水(29%)および21.5gの脱イオン水の混合溶液を添加した。添加後、5時間、常温で反応させた。反応後、十分なエタノールで希釈洗浄し、濾過し、真空乾燥機で110℃、3時間乾燥した。乾燥後、回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気中で800℃で30分熱処理(焼成)を施し、冷却し、シリカコート鉄粉D1を得た。
【0102】
(第2層チタニア膜の製膜)
セパラブルフラスコ中で、20gの上記シリカコート粉体D1を、あらかじめ198.3gのエタノールに12.6gのチタンイソプロポキシドを加えた液中に分散した後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいた21.5gの純水を47.9gのエタノールに混合した溶液を1時間かけて、滴下した。滴下後、5時間、常温で反応させた。反応後、十分なエタノールで希釈洗浄し、濾過し、真空乾燥機で110℃、3時間乾燥し,シリカ/チタニアコート鉄粉D2を得た。
乾燥後のチタニア層を透過電子顕微鏡を用いて層内の粒子状態を観察したところ、1〜10nmの酸化チタン固相微粒子がみられたが、膜の内部には粒子間の空隙はなく均一に充填されていた。
この酸化チタン膜の平均膜厚は95nmであり、548nmに分光反射曲線のピーク波長を有し、淡青色でであった。
【0103】
(第3層シリカ膜の製膜)
20gのシリカ/チタニアコート鉄粉D2を、あらかじめ317.2gのエタノールに2.1gのシリコンエトキシドを溶解した溶液中で分散した後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいた2.1gのアンモニア水(29%)および2.8gの脱イオン水の混合溶液を添加した。添加後、1時間、常温で反応させた。反応後、十分なエタノールで希釈洗浄し、濾過し、真空乾燥機で110℃、3時間乾燥した。乾燥後、更に窒素雰囲気中で500℃で30分熱処理(焼成)を施し、冷却し、シリカ/チタニアコート鉄粉D3を得た。
熱処理後のチタニア層を透過電子顕微鏡を用いて層内の粒子状態を観察したところ、10〜150nmの酸化チタン結晶化微粒子がみられ、それぞれの粒子間には10〜50nm程度の空隙が認められた。
しかし、シリカ層は緻密であり、粒子はなく、また平滑であった。さらに、チタニアとの界面には、空隙が存在していた。
【0104】
この粉体D3の最大反射ピーク波長は545nmで、青味を帯びた緑色となった。
この実施例4から、熱処理(焼成)の有無によりチタニア粒子の結晶粒子化と、粒子化に伴う粒子間およびシリカ膜との間の空隙が見られ、これらの粒子化にともなう散乱反射効果により、緑色化が達成されたと考えられる。
また、この実施例4の緑色色材粉体は最終被覆層に緻密な膜を形成することが特徴の一つである。これまでの最終層のように高屈折率膜という限定でなく、干渉、散乱に影響のない緻密な膜で空隙を被覆する。従来技術では、得られた粉体をトナーや塗料等の顔料として用いる際に、空隙に樹脂やビヒクルが入り込み、干渉あるいは散乱粒子との屈折率の差が小さくなり、フレネル反射率が低下することがあった。しかし、最終層を干渉、散乱に影響のない緻密な膜として、粒子構成膜の空隙を被覆することにより、上記散乱反射の低下を防ぐことができる。
【0105】
(接着樹脂層、ポリスチレン複合粉体)
スチレンモノマー100gに緑色色材多層被覆粉体(シリカ/チタニアコート鉄粉D3)100gと前記親油化した酸化チタン45gを分散するまで高速攪拌機で攪拌し、均一化した。
このスチレンモノマーと粒子の混合物を、n−ドデシル硫酸ナトリウムを蒸留水500gに溶解した溶液を70℃に温度を保持し、高速攪拌しながら投入し、十分に乳化粒子を微粒子化するまで攪拌した。
これに10%過硫酸アンモニウム水溶液10gを添加し、4時間攪拌して反応させた。
反応終了後、蒸留水2リットルで希釈し、傾斜洗浄で上液を捨て沈澱物を集める。沈澱物をろ紙上で乾燥し、緑色のポリスチレン被覆粉体Dを得た。
得られた緑色色材組成物Dの粉体は球状で、磁場1kOeでの磁化は35emu/gであり、磁場10kOeでの磁化は116.3emu/gであった。
上記第1〜3層の各屈折率、膜厚、被覆粉体の分光反射曲線のピーク波長およびそのピーク波長での反射率を表4に示す。
【0106】
【表4】
Figure 0003670548
【0107】
〔実施例5〕(磁性体を用いた緑色色材組成物5、金属アルコキシドの加水分解による5層被覆)
(第1層シリカ膜の製膜)
20gのBASF製カーボニル鉄粉(平均粒径1.8μm,10kOeでの磁化は80emu/g)を、あらかじめ158.6gのエタノールに21.0gのシリコンエトキシドを溶解した溶液中で分散した後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいた21.0gのアンモニア水(29%)および28.0gの脱イオン水の混合溶液を添加した。添加後、5時間、常温で反応させた。反応後、十分なエタノールで希釈洗浄し、濾過し、真空乾燥機で110℃、3時間乾燥した。乾燥後、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気中で600℃で30分熱処理(焼成)を施し、冷却し、シリカコート鉄粉E1を得た。
【0108】
(第2層チタニア膜の製膜)
セパラブルフラスコ中で、20gの上記シリカコート粉体E1を、あらかじめ198.3gのエタノールに16.4gのチタンイソプロポキシドを加えた液中に分散した後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいた27.9gの純水を60.0gのエタノールに混合した溶液を1時間かけて、滴下した。滴下後、3時間、常温で反応させた。反応後、十分なエタノールで希釈洗浄し、濾過し、真空乾燥機で100℃、8時間乾燥し、シリカ/チタニアコート鉄粉E2を得た。
この酸化チタン膜の平均膜厚は75nmであり、560nmに分光反射曲線のピーク波長を有し、明るい緑色であった。
【0109】
(第3層シリカ膜の製膜)
20gのシリカ/チタニアコート鉄粉E2を、あらかじめ158.6gのエタノールに21.0gのシリコンエトキシドを溶解した溶液中で分散した後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいた21.0gのアンモニア水(29%)および28.0gの脱イオン水の混合溶液を添加した。添加後、5時間、常温で反応させた。反応後、十分なエタノールで希釈洗浄し、濾過し、真空乾燥機で110℃、3時間乾燥した。乾燥後、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気中で500℃で30分熱処理(焼成)を施し、冷却し、シリカ/チタニアコート鉄粉E3を得た。
【0110】
(第4層チタニア膜の製膜)
セパラブルフラスコ中で、20gの上記シリカ/チタニアコート粉E3を、あらかじめ198.3gのエタノールに16.4gのチタンイソプロポキシドを加えた液中に分散した後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいた28.0gの純水を60.0gのエタノールに混合した溶液を1時間かけて、滴下した。滴下後、4時間、常温で反応させた。反応後、十分なエタノールで希釈洗浄し、濾過し、真空乾燥機で100℃、8時間乾燥し、シリカ/チタニアコート鉄粉E4を得た。
【0111】
(第5層シリカ膜の製膜)
20gのシリカ/チタニアコート鉄粉E4を、あらかじめ158.6gのエタノールに2.5gのシリコンエトキシドを溶解した溶液中で分散した後、攪拌しながら、あらかじめ用意しておいた3.0gのアンモニア水(29%)および3.0gの脱イオン水の混合溶液を添加した。添加後、5時間、常温で反応させた。反応後、十分なエタノールで希釈洗浄し、濾過し、真空乾燥機で110℃、3時間乾燥した。乾燥後、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気中で600℃で30分熱処理(熱処理)を施し、冷却し、シリカ/チタニアコート鉄粉E5を得た。
この酸化チタン膜の平均膜厚は75nmであった。また、この鉄粉E5は550nmに分光反射曲線のピーク波長を有し、淡緑色であった。
【0112】
(緑色インキ組成物の調製)
このようにして得られたシリカ/チタニアコート鉄粉E5、30gを、あらかじめエタノール80gにアクリルポリマー(テクノビット、Kulzer社製)2.5gを溶解した溶液中に分散した後、酸化チタン(シリコン疎水処理品:展色材)20gおよびヒドロキシプロピルセルロース3.2gを加えた混合液を、ジルコニアボールミルで8時間分散処理を行い、緑色色材組成物の塗料分散液ELを得た。
【0113】
(塗布および分光特性)
上記緑色色材組成物の分散液ELを、ブレードコーターでアート紙に塗布した。緑色色材組成物の塗布量(乾燥後)は60g/m2とした。
乾燥後、得られた塗布紙Eの色はピーク波長で553nmであり、明るい緑色となった。
また、この塗布紙Eの磁場1kOeでの磁化は2099emu/m2であり、磁場10kOeでの磁化は697.7emu/m2であった。
上記第1〜5層の各屈折率、膜厚、被覆粉体の分光反射曲線のピーク波長およびそのピーク波長での反射率を表5に示す。
【0114】
【表5】
Figure 0003670548
【0115】
〔実施例6〕(乾式被膜磁性体を用いた緑色色材組成物6、水系3層被覆)
(第1層チタニア膜の製膜)
平均粒径1.8ミクロンの鉄粉1kgと平均粒径0.2ミクロンの酸化チタン粒子1.5kgをホソカワミクロン製メカノフュージョン装置を用いて5分間、3回乾式混合粉砕し、膜が形成されたのを確認し、明度が向上した酸化チタン被覆鉄粉をF1を得た。
【0116】
(第2層シリカ膜の製膜)
予め用意した実施例1と同様の緩衝溶液3、207mlに対し、同じく予め用意した純水、164mlを混合し、F1、10gを添加し十分に混合した後、SiO2の混合率10wt%の水ガラス溶液131mlを撹拌しながら徐々に3時間かけて滴下撹拌した後、1時間反応を継続させた。反応後デカンテーションにより固液分離し、粉体を真空乾燥後で8時間乾燥後、回転式チューブ炉を用い、窒素雰囲気で500℃で30分熱処理し、シリカ/チタニア膜被覆鉄粉F2を得た。
【0117】
(第3層チタニア膜の製膜)
さらにシリカ/チタニア膜被覆鉄粉F2、4gに対し、緩衝液4、436mlを加え、十分分散させた後、硫酸チタニルのTiO2、15wt%水溶液、34mlを4時間かけて滴下し、滴下後、1時間反応させ、未反応原料を無くした。反応後デカンテーションにより固液分離し、粉体を真空乾燥機で8時間乾燥後、回転式チューブ炉を用い、窒素雰囲気で500℃で30分熱処理し、シリカ/チタニア膜被覆鉄粉F3を得た。
この粉体のピークは563nmで反射率は46%であり、濃い緑色であった。またこの粉体の磁場1kOeの磁化は34.8emu/gで、10kOeの磁化は108emu/gであった。
【0118】
(トナー化)
スチレンモノマー100gとキシレン30mlに0.3gのオイルグリーンを溶解した液を混合した後、予め得られたF3粉を親油化したもの100gと、酸化チタン10gを加え均一に混合した。
次に、このスチレンモノマーと粒子の混合物を、ドデシル硫酸ナトリウム3gを溶解した水溶液に投入した後、ホモジナイザーで10,000rpmで撹拌し、さらに、5,000rpmで撹拌しながら70℃に温度を保持し、10wt%過硫酸アンモニウム水溶液10gを添加し、3.5時間反応させた。
その後、固形分を濾過し、温水で3回繰り返し洗浄を行い、緑色のポリスチレン被覆粉体FPを得た。この粉体の1kOeでの磁場磁化は16.6emu/gであり、10kOeでの磁化は51.4emu/gとなった。
上記第1〜3層の各屈折率、膜厚、被覆粉体の分光反射曲線のピーク波長およびそのピーク波長での反射率を表6に示す。
【0119】
【表6】
Figure 0003670548
【0120】
〔実施例7〕 (板磁性体を用いた緑色色材組成物7、金属アルコキシド加水分解および水系による3層被覆)(インキ)
(第1層シリカ膜の製膜)
平均粒径2.8ミクロンの板状Ba系フェライト10gに対しエタノール79.5gを加え、十分に分散した後、シリコンエトキシド8gを添加し混合し、さらに、水8g、アンモニア水10.7gを添加して、常温で撹拌しながら、3時間反応させた。反応後デカンテーションにより固液分離し、粉体を真空乾燥後で8時間乾燥後、回転式チューブ炉を用い、窒素雰囲気で500℃で30分熱処理し、シリカ膜被覆Ba系フェライト粒子G1を得た。
【0121】
(第2層チタン膜被覆着色)
シリカ膜被覆Ba系フェライト粒子G1、10gをエタノール159gに十分分散した後チタンイソプロポキシド6.3 gを添加し、十分に混合した後、さらに予め用意しておいた水10.7g、エタノール30gの混合溶液を滴下し5時間反応させた。反応後デカンテーションにより固液分離し、粉体を真空乾燥後で8時間乾燥後、回転式チューブ炉を用い、窒素雰囲気で650℃で30分熱処理し、シリカ/チタニア膜被覆Ba系フェライト粒子G2を得た。
この粉体のピークは560nmで反射率は44%であり、濃い緑色であった。またこの粉体の10kOeの磁化は19.2emu/gであり、残留磁化は12.1emu/gであった。
【0122】
(第3層散乱膜被覆)
予め用意したG2粉を緩衝溶液A500mlに対し、同じく予め用意した緩衝溶液3を875 mlを混合し、これにG2、10gと平均粒径0.2ミクロンの酸化チタン(ルチル型)粉体粒子5gを添加し十分に混合した後、10wt%の水ガラス溶液193ml撹拌しながら1時間撹拌した。デカンテーションを20回繰り返し十分に洗浄したあと、乾燥機で120℃で8時間乾燥した。乾燥後の粉体を回転式チューブ炉を用い、窒素雰囲気で500℃で30分熱処理し、チタニア散乱膜・シリカ膜被覆Ba系フェライト粒子G3を得た。
この粉体のピークは550nmで反射率は68%、淡い緑色であった。
またこの粉体の10kOeの磁化は 14.2emu/gであり、残留磁化は9.3emu/gであった。
上記第1〜3層の各屈折率、膜厚、被覆粉体の分光反射曲線のピーク波長およびそのピーク波長での反射率を表7に示す。
【0123】
【表7】
Figure 0003670548
【0124】
(インキ化)
上記G3粉30gにたいし、あらかじめアクリル樹脂1.5gとヒドロキシプロピルセルロース2.3gを、エタノール溶液80gに分散し、撹拌しながらアルコールを蒸発させ粘度を上昇させた液体GLを得た。
このGLを理想科学製小形印刷機PG10で、熱転写用プラスチック製フィルムに縞模様を形成した。
【0125】
(塗布物)
乾燥後磁気ヘッドを具備した検出装置で、このフィルム上を走査したところ、本磁気粉体GLの印刷された部分では磁気反応が検出されたが、空白部分では磁気反応は出なかった。また塗布物は上方から見ると緑色であったが、角度30度の斜めから見た場合は、青色に見え多色性がみられた。
【0126】
〔実施例8〕(板状鉱物を用いた緑色色材組成物、金属アルコキシド加水分解による3層被覆)(塗膜)
(第1層チタン膜被覆着色)
平均粒径12ミクロンの板状白雲母粉20gをエタノール160gに十分分散した後チタンイソプロポキシドを6.4g添加し、十分に混合した後、さらに予め用意しておいた水10.9g、エタノール30gの混合溶液を滴下し5時間反応させた。反応後デカンテーションにより固液分離し、粉体を真空乾燥後で、8時間乾燥後、回転式チューブ炉を用い、窒素雰囲気で500℃で30分熱処理し、チタニア膜被覆板状白雲母粉H1を得た。
この粉体のピークは550nmで反射率は43%であり、濃い緑色であった。
【0127】
(第2層被覆)
チタニア被覆板状白雲母粉H1、20gをエタノール80gに十分に分散した後、シリコンエトキシド10.7gを添加し混合し、さらに、水10.7g、アンモニア水14.1gを添加して、常温で撹拌しながら、3時間反応させた。反応後デカンテーションにより固液分離し、粉体を真空乾燥後で8時間乾燥後、回転式チューブ炉を用い、窒素雰囲気で500℃で30分熱処理し、シリカ/チタニア被覆板状白雲母粉H2を得た。
【0128】
(第3層着色膜被覆)
シリカ/チタニア被覆板状白雲母粉H2、20gに対しgをエタノール160gに十分分散した後チタンイソプロポキシド8.4gを添加し、十分に混合した後、さらに予め用意しておいた水14.2g、エタノール30gの混合溶液を滴下し5時間反応させた。反応後デカンテーションにより固液分離し、粉体を真空乾燥後で8時間乾燥後、回転式チューブ炉を用い、窒素雰囲気で500℃で30分熱処理し、シリカ/チタニア膜被覆板状白雲母粉H3を得た。
この粉体のピークは555nmで反射率は64%、淡い緑色であった。
上記第1〜3層の各屈折率、膜厚、被覆粉体の分光反射曲線のピーク波長およびそのピーク波長での反射率を表8に示す。
【0129】
【表8】
Figure 0003670548
【0130】
(塗布)
粉H3、15gを撹拌、分散しながらアクリル樹脂2.2gを溶解したエタノール溶液(エタノール50g)を入れ溶解した。
溶媒の一部が分散し粘度が上昇したところで、分散液を平板ガラス板に伸ばしさらにゴムローラーに均一に付着させた後、A4の熱転写用フィルムに、粘性流体HLを塗布し1日放置し乾燥した。
得られた粉体塗布フィルムは垂直に見ると淡緑色の帯がみられ、さらに、板を太陽に向け傾けて見る角度変えると、太陽を背にした場合(ほぼ垂直光)では淡い緑色であったが、太陽と板の角度(入射角)が板から40度になるように見た場合その色は青色を帯び、多色性が認められた。
この性質は多色性表示媒体、化粧品や装飾品あるいはフリップフロップ法に用いることができる。
【0131】
〔実施例9〕(板状導電体を用いた緑色色材組成物、金属アルコキシド加水分解による3層被覆)(塗料)
(第1層チタニア膜の製膜)
平均粒径12ミクロンの板状アルミニウム粉18gをエタノール160gに十分分散した後チタンイソプロポキシド6.4gを添加し、十分に混合した後、さらに予め用意しておいた水10.9g、エタノール160gの混合溶液を滴下し5時間反応させた。反応後デカンテーションにより固液分離し、粉体を真空乾燥後で8時間乾燥後、回転式チューブ炉を用い、窒素雰囲気で500℃で30分熱処理し、チタニア膜被覆板状アルミニウム粉I1を得た。
この粉体のピークは554nmで反射率は43%であり、濃い緑色であった。
【0132】
(第2層シリカ膜の製膜)
チタニア被覆板状アルミニウム粉I1、18gをエタノール160gに十分に分散した後、シリコンエトキシド8.1gを添加し混合し、さらに、水8.4g、アンモニア水14.2gを添加して、常温で撹拌しながら、3時間反応させた。反応後デカンテーションにより固液分離し、粉体を真空乾燥後で8時間乾燥後、回転式チューブ炉を用い、窒素雰囲気で500℃で30分熱処理し、シリカ/チタニア被覆板状アルミニウム粉I2を得た。
【0133】
(第3層チタニア膜の製膜)
シリカ/チタニア被覆板状アルミニウム粉I2、18gに対しgをエタノール160gに十分分散した後チタンイソプロポキシド8.4gを添加し、十分に混合した後、さらに予め用意しておいた水14.2g、エタノール160gの混合溶液を滴下し5時間反応させた。反応後デカンテーションにより固液分離し、粉体を真空乾燥後で8時間乾燥後、回転式チューブ炉を用い、窒素雰囲気で500℃で30分熱処理し、シリカ/チタニア膜被覆アルミニウム粉I3を得た。
この粉体のピークは556nmで反射率は67%、淡い緑色であった。
【0134】
上記第1〜3層の各屈折率、膜厚、被覆粉体の分光反射曲線のピーク波長およびそのピーク波長での反射率を表9に示す。
【0135】
【表9】
Figure 0003670548
【0136】
(塗布)
長辺80mm、単辺57mm、厚さ1.5mm白色塩化ビニル板に両面粘着テープを幅3mm、長さ57mmの帯状にしたものを7本用意し、板状の単辺に平行に中心に1枚貼った後、中心の帯状テープから3mm間隔で平行に貼り付けた。その後、I3をこのテープが貼られた板に均一になるよう降りかけた。さらにこの白色塩化ビニル板を水平においた一辺10 cm、厚さ1cmの鉄板の上に置き、さらに同じ板を上に置き2枚で挟みこみ、板の中心に1kgの分銅を載せ1時間放置した。
1時間後、板を取り去り、さらに付着しなかった粉を筆で払い落とした。得られた板は垂直に見ると淡緑色の帯がみられ、実施例8と同様に多色性が認められた。
【0137】
(物性)
ホイートストンブリッジと電源および電流計を具備したサーチコイルを、この板の単辺に垂直に走査した結果、塗布部分では電流計に変化があったが、無い部分では変化が見られなかった。電場による検出も可能である。
この性質は多色性表示媒体、化粧品や装飾品あるいはフリップフロップ法に用いることができる。
【0138】
表1〜9より明らかなように、本発明の各実施例の緑色色材組成物は、それぞれ満足すべき結果を得た。また、チタニア粒子の結晶粒子化による空隙を有するチタニア被覆層は1層(第2層)よりも2層(第2層および第4層)に有することにより、高度の緑色化が達成された。
【0139】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の緑色色材組成物は、含有される緑色粉体の製造における製膜反応の際に、水を溶媒として用いることにより、アルコキシド法に比べ安価な製造コストで製膜できるという効果が得られる。
また、基体粒子の表面に有する被覆膜の少なくとも1層を、結晶化微粒子と該結晶化微粒子相互間に空隙を有する結晶化微粒子の集合体とからなる膜(以下、単に結晶化微粒子構成膜ともいう)とすることにより、結晶化粒子表面と空隙との屈折率差を大きくして、光の散乱反射を起こし、反射効果を高め、優れた明度を有する緑色色調の機能性粉体を含有する緑色色材組成物を提供することが可能となった。
【0140】
上記のようにして得られた本発明の緑色色材組成物は、含有される緑色粉体の基体として磁性体を活用すると、基体粒子の特性(例えば、磁気特性)を高レベルに保持した機能性粉体、例えば、1成分系現像方式でも優れた複合した機能を果たし得る緑色磁性トナーや、優れた磁気特性を発揮することができる。また、多色性や反射あるいは透過色を利用して意匠性に富んだ装飾品、陶器、磁器、ガラス器、絵画などの工芸品・美術品用、書籍、自動車・自転車などの塗料緑色多機能性インキ、トナー、塗料、化粧品ができ、さらに触媒作用を持つ酸化チタン膜等により耐候性にすぐれ大気・水などの環境浄化性のある塗料ができ、かつ基体の特性と膜の特性を兼ね備えた緑色多機能性インキ、トナーおよび塗料等に適用できる。特に前記機能が磁気、電場、色、粒子形状、蛍光発光、蓄光発光、特定紫外線域反射吸収並びに特定赤外線反射吸収の機能のいずれか2種以上を組み合わせることにより偽造防止用顔料組成物である印刷インキ、トナーとして支持媒体上に所望の画像を形成し、目視による判別、機器による判別することができる緑色色材組成物およびその効率的製造方法を提供することが可能となった。
これらの優れた機能を有すると共に、含有される緑色粉体の基体として導電体または誘電体を活用すると、電場、の外部要因により反応することにより移動力、回転、運動、発熱などの付加的な作用を発する機能を保持した緑色色材組成物およびその効率的製造方法を提供することが可能であり、産業界に寄与するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の緑色色材組成物に含有される緑色粉体の一例の断面図である。
【図2】図1の緑色色材組成物に含有される緑色粉体が有する結晶化微粒子構成膜2の断面拡大図である。
【符号の説明】
1 基体粒子
2 結晶化微粒子構成膜
3 結晶化微粒子
4 超微粒子

Claims (30)

  1. 基体粒子の表面に水系溶媒中での金属塩の反応により反応溶液中で固相微粒子を形成させ、該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませることによって形成され、空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成されたものである被覆膜を少なくとも1層有し450〜650nmの間にピークを有する反射スペクトルを示す緑色粉体を含有する緑色色材組成物。
  2. 前記緑色粉体の水系溶媒中での金属塩の反応により形成された前記被覆膜が、下記式の条件を満たすものであることを特徴とする請求項1記載の緑色色材組成物。
    Nd=mλ/4
    〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
    n:膜を構成する物質の屈折率
    d:膜厚
    m:自然数
    λ:粉体の示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
    κ:減衰係数〕
  3. 前記緑色粉体の基体粒子の表面に有する被覆膜が多層膜であることを特徴とする請求項1記載の緑色色材組成物。
  4. 前記緑色粉体の多層膜の各膜が、全て水系溶媒中での金属塩の反応により形成されたものであることを特徴とする請求項3記載の緑色色材組成物。
  5. 前記緑色粉体の多層膜の各膜が、全て下記式の条件を満たすものであることを特徴とする請求項3記載の緑色色材組成物。
    Nd=mλ/4
    〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
    n:膜を構成する物質の屈折率
    d:膜厚
    m:自然数
    λ:粉体の示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
    κ:減衰係数〕
  6. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜が、該結晶化微粒子表面と空隙との間で生じる光の散乱反射により明度を付与することができるものであることを特徴とする請求項1記載の緑色色材組成物。
  7. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜の表面に、該表面の空隙を塞ぐことができる超微粒子で構成された緻密な被覆膜を有することを特徴とする請求項1記載の緑色色材組成物。
  8. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜が高屈折率膜であることを特徴とする請求項1記載の緑色色材組成物。
  9. 前記緻密膜がシリカ膜であることを特徴とする請求項7記載の緑色色材組成物。
  10. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成された前記被覆膜が、該被覆膜を製膜するための反応溶液中で固相微粒子を形成させ該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませた後に焼成することによって形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の緑色色材組成物。
  11. 前記反応溶液が水溶液であることを特徴とする請求項10記載の緑色色材組成物。
  12. 前記焼成を行う前に、前記固相微粒子を取込ませた被覆膜上を、該被覆膜の表面の空隙を塞ぐ緻密な膜を構成することができる超微粒子で被覆したことを特徴とする請求項10記載の緑色色材組成物。
  13. 前記緑色粉体が、少なくとも結着用樹脂を含む分散媒中に分散されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の緑色色材組成物。
  14. 前記緑色粉体上に接着樹脂層を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の緑色色材組成物。
  15. 前記接着樹脂層が体質顔料を含有することを特徴とする請求項14記載の緑色色材組成物。
  16. 緑色粉体を含有する緑色色材組成物の製造方法において、該緑色粉体が450〜650nmの間にピークを有する反射スペクトルを示す様に、基体粒子の表面に水系溶媒中での金属塩の反応により反応溶液中で固相微粒子を形成させ、該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませることによって形成され、空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成されたものである少なくとも1層の被覆膜を形成することを特徴とする緑色色材組成物の製造方法。
  17. 水系溶媒中での金属塩の反応により形成する前記被覆膜を、下記式の条件を満たすように形成することを特徴とする請求項17記載の緑色色材組成物の製造方法。
    Nd=mλ/4
    〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
    n:膜を構成する物質の屈折率
    d:膜厚
    m:自然数
    λ:粉体の示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
    κ:減衰係数〕
  18. 基体粒子の表面に形成する前記被覆膜を多層膜とすることを特徴とする請求項16記載の緑色色材組成物の製造方法。
  19. 前記多層膜の各膜を、全て水系溶媒中での金属塩の反応により形成することを特徴とする請求項18記載の緑色色材組成物の製造方法。
  20. 前記多層膜の各膜を、全て下記式の条件を満たすように形成することを特徴とする請求項18記載の緑色色材組成物の製造方法。
    Nd=mλ/4
    〔式中、N=n+iκ(iは複素数を表す)
    n:膜を構成する物質の屈折率
    d:膜厚
    m:自然数
    λ:粉体の示す反射スペクトルが有するピークの波長(但し、λは380〜500nm)
    κ:減衰係数〕
  21. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜を、該結晶化微粒子表面と空隙との間で生じる光の散乱反射により明度を付与できるように形成することを特徴とする請求項16記載の緑色色材組成物の製造方法。
  22. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜の表面に、該表面の空隙を塞ぐことができる超微粒子で緻密な膜を形成することを特徴とする請求項16記載の緑色色材組成物の製造方法。
  23. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜を高屈折率膜とすることを特徴とする請求項16記載の緑色色材組成物の製造方法。
  24. 前記緻密膜をシリカ膜とすることを特徴とする請求項22記載の緑色色材組成物の製造方法。
  25. 空隙を有する結晶化微粒子の集合体として構成する前記被覆膜を、該被覆膜を製膜するための反応溶液中で固相微粒子を形成させ該固相微粒子を該被覆膜中に取込ませた後に焼成することによって形成することを特徴とする請求項16記載の 緑色色材組成物の製造方法。
  26. 前記反応溶液を水溶液とすることを特徴とする請求項25記載の緑色色材組成物の製造方法。
  27. 前記焼成を行う前に、前記固相微粒子を取込ませた被覆膜上を、該被覆膜の表面の空隙を塞ぐ緻密な膜を構成することができる超微粒子で被覆することを特徴とする請求項25記載の緑色色材組成物の製造方法。
  28. 前記緑色粉体が、少なくとも結着用樹脂を含む分散媒中に分散することを特徴とする請求項16〜27のいずれかに記載の緑色色材組成物の製造方法。
  29. 前記緑色粉体上に接着樹脂層を設けることを特徴とする請求項16〜28のいずれかに記載の緑色色材組成物の製造方法。
  30. 前記接着樹脂層が体質顔料を含有させることを特徴とする請求項29記載の緑色色材組成物の製造方法。
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